(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、風環境などについては、建設現場近隣の住民に対する配慮から竣工後のみならず建物の建築中においても気象環境の影響を考慮することが望まれている。一方、建設中の建物は、工事の進捗により状態が変化するので、風環境などの影響も工事の進捗により変化する。このため、建築中の風環境などの影響を事前に確認することは難しいという課題があった。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建設中の施工現場における気象環境の影響を事前に確認することが可能な施工現場の環境シミュレーションシステム、及び、施工現場の環境シミュレーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、構築される
複数の建物の周辺街区及び前記
複数の建物の施工過程の各段階における状態を三次元のデータに基づいてモデル化した三次元モデルデータを生成するモデル化工程、
前記三次元モデルデータと前記
複数の建物の施工現場を含む前記周辺街区における前記
複数の建物の施工期間に対応した気象情報データとを前記各段階の施工時期に基づいて対応付ける気象情報対応付け
工程、
前記三次元モデルデータと対応付けられた前記気象情報データとに基づいて、前記各段階における前記
複数の建物及び前記周辺街区に対する気象の影響をシミュレーションするシミュレーション工程、
及び、
前記シミュレーションした結果に基づいて、前記複数の建物の施工順序を決定する施工順序決定工程、
を有することを特徴とする施工現場の環境シミュレーション方法である。
また、
囲い壁の内側で施工される現場の周辺街区及び前記
現場の施工過程の各段階における状態を三次元のデータに基づいてモデル化した三次元モデルデータを生成するモデル化工程、
前記三次元モデルデータと前記
現場を含む前記周辺街区における前記
現場の施工期間に対応した気象情報データとを前記各段階の施工時期に基づいて対応付ける気象情報対応付け
工程、
前記三次元モデルデータと対応付けられた前記気象情報データとに基づいて、前記各段階における前記
現場及び前記周辺街区に対する気象の影響をシミュレーションするシミュレーション工程、
及び、
前記シミュレーションした結果に基づいて、前記囲い壁の上部を前記現場の側に傾斜する防塵対策工程、
を有することを特徴とする施工現場の環境シミュレーション方法である。
また、
囲い壁の内側で施工される現場の周辺街区及び前記
現場の施工過程の各段階における状態を三次元のデータに基づいてモデル化した三次元モデルデータを生成するモデル化工程、
前記三次元モデルデータと前記
現場を含む前記周辺街区における前記
現場の施工期間に対応した気象情報データとを前記各段階の施工時期に基づいて対応付ける気象情報対応付け
工程、
前記三次元モデルデータと対応付けられた前記気象情報データとに基づいて、前記各段階における前記
現場及び前記周辺街区に対する気象の影響をシミュレーションするシミュレーション工程、
及び、
前記シミュレーションした結果に基づいて、前記囲い壁の前記現場内への出入口を計画する防塵対策工程、
を有することを特徴とする施工現場の環境シミュレーション方法である。
また、構築される建物の周辺街区及び前記建物の施工過程の各段階における状態を三次元のデータに基づいてモデル化した三次元モデルデータを生成するモデル化工程、
前記三次元モデルデータと前記建物の施工現場を含む前記周辺街区における前記建物の施工期間に対応した気象情報データとを前記各段階の施工時期に基づいて対応付ける気象情報対応付け工程、及び、
前記三次元モデルデータと対応付けられた前記気象情報データとに基づいて、前記各段階における前記建物及び前記周辺街区に対する気象の影響をシミュレーションするシミュレーション工程、
を有し、
前記シミュレーションした結果に基づいて、前記三次元モデルデータを変更して新たな三次元モデルデータとし、
前記新たな三次元モデルデータと前記気象情報データとを、前記各段階の施工時期に基づいて対応付けて、前記各段階における前記建物及び前記周辺街区に対する気象の影響をシミュレーションし、
前記新たな三次元モデルデータの生成と、前記新たな三次元モデルデータに対するシミュレーションとを、予め設定された目標値に至るまで繰り返し、
前記気象情報に配慮した施工計画を選定する
ことを特徴とする施工現場の環境シミュレーション方法である。
また、かかる施工現場の環境シミュレーション方法であって、
前記施工計画は、工事中における風力発電に適した箇所の検討、又は、強風お知らせシステムの検討、又は、風を利用したコミュニケーションツールの検討であることが望ましい。
このような施工現場の環境シミュレーション方法によれば、周辺街区に含まれて段階的に変化する建物の状態を三次元にてモデル化した三次元モデルデータの各段階において、当該各段階の施工時期に基づいて気象情報データを対応づけて、建物及び周辺街区に対する気象の影響をシミュレーションするので、三次元モデルデータにて表される建物及び周辺街区の各段階における気象の影響を事前に容易に確認することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建設中の施工現場における気象環境の影響を事前に確認することが可能な施工現場の環境シミュレーションシステム、及び、施工現場の環境シミュレーション方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の施工現場の環境シミュレーションシステムを用いて実施する施工現場の環境シミュレーション方法を含む建物の設計から竣工までの過程を示すフロー図である。
【
図2】施工現場の環境シミュレーション方法を含む目標設定から施工に至る過程を示すフロー図である。
【
図3】当初の施工計画に基づく三次元モデルデータの概念を示す図である。
【
図4】シミュレーションから最適な施工計画の選定までの処理を示すフロー図である。
【
図5】「Zephyrus」(登録商標)にて、風環境をシミュレーションした結果の一例を説明するための図であり、
図5(a)は、防風対策を施さない状態の風環境を示す図であり、
図5(b)は、防風対策を施した状態の風環境を示す図である。
【
図6】当初の施工計画に基づく三次元モデルデータと風に関する気象情報データとに基づいてシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図7】防風対策の一例として、囲い壁に対する対策を示しており、
図7(a)は、通常の囲い壁を示す図、
図7(b)は、囲い壁を上方に延長した例を示す図であり、
図7(c)は、上部を工事現場側に傾斜させた囲い壁を示す図である。
【
図8】施工時における防塵対策の一例を示しており、
図8(a)は、開閉ゲートの足元にゴムスカートを設置した例であり、
図8(b)は、仮囲いゲートを建設する建物の陰に配置した例であり、
図8(c)は、仮囲いゲートを2方向に向けて設けた例を示し、
図8(d)は、強風領域となる位置に埃収集装置を備えた例を示す図である。
【
図9】解体時における防塵対策の一例を示す図であり、
図9(a)は、解体工事時における通常の囲い壁を示す図であり、
図9(b)は、作業が中断されるおそれがある強風時の状態を示す図であり、
図9(c)は、上部を解体現場側に傾斜させた囲い壁を示す図である。
【
図10】施工順序による風環境の相違を示す図であり、
図10(a)は、竣工時の風環境を示す図であり、
図10(b)は、A棟を先に施工する際の風環境を示す図であり、
図10(c)は、B棟を先に施工する際の風環境を示す図である。
【
図11】建て替えによる風環境の相違を示す図であり、
図11(a)は、建て替え前の風環境を示す図であり、
図11(b)は、建て替え後の風環境を示す図であり、
図11(c)は、建て替え工事中の風環境を示す図である。
【
図12】新たな施工計画に基づく三次元モデルデータの概念を示す図である。
【
図13】新たな三次元モデルデータと風に関する気象情報データとに基づいてシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の施工現場の環境シミュレーションシステム、及び、施工現場の環境シミュレーション方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の施工現場の環境シミュレーションシステムを用いて実施する施工現場の環境シミュレーション方法を含む建物の設計から竣工までの過程を示すフロー図である。
【0014】
本実施形態においては、構築される建物と、その建物の周辺街区とにおいて、気象情報データとして風に関する情報に基づいて風環境の影響を確認しつつ対策を検討して施工計画を決定する際における建築中の施工現場の風環境の影響を事前に確認するための施工現場の環境シミュレーションシステム、及び、施工現場の環境シミュレーション方法について説明する。すなわち、建築中の建物の状態は工事の進捗により変化するため、竣工後の建物のみならず、工事の全過程を建物の状態に応じて段階的に分け、各段階において風環境の影響を確認し、予め設定した目標値となるように風環境に配慮した施工計画を策定するものである。
【0015】
この施工現場の環境シミュレーションシステムは、例えば、建物が建設される敷地の周辺街区、及び、設計した建物の三次元のデータに基づいて三次元モデルを生成可能な、所謂、三次元CADデータが記憶されたCADデータ記憶領域と気象情報データが記憶された気象情報記憶領域とを備え、CADデータ記憶領域の三次元CADデータに基づいて生成された三次元モデルと気象情報記憶領域の気象情報データとに基づいて、所定の演算処理を実行して建物及び周辺街区に対する気象環境の影響をシミュレーション可能なシミュレーションソフトウェアを備えたコンピュータシステムにより実現される。このようなソフトウェアの一例としては、例えば、風環境シミュレータ「Zephyrus」(登録商標)が挙げられる。また、このコンピュータシステムには、三次元CADデータから生成される三次元モデルとして、建物が施工計画に沿って施工される過程の所定のタイミングにおける建物の状態のモデルを生成することが可能な、例えば、BIM(Building Information Modeling)等がインストールされている。BIMにより生成された三次元モデルは、施工計画及び施工の過程においてモデル化するタイミング(段階)を適宜変更して、各段階に応じた建物の状態をモデル化することが可能である。尚、ここに示すシステムは一例であり、記憶領域などの構成や使用するソフトウェアはこれに限るものではなく、建物の施工過程の各段階における建物の状態を、周辺街区とともに三次元モデル化するとともに、三次元モデル(三次元モデルデータ)と気象情報データとに基づいて気象環境の影響をシミュレーションすることが可能なシステムであれば構わない。
【0016】
建物を施工する際には、
図1に示すように、まず、設計される建物が竣工した後に、竣工した建物に法令等による風の影響評価が必要か、否かが判断され(S100)、必要な場合には風環境に配慮した設計が行われる(S200)。また、このとき法令等による影響評価が必要でない場合であっても、たとえば、次のような技術の適用範囲であれば、風環境に配慮した設計を行うこととしている(S300)。技術の適用範囲は、たとえば、(1)概ね高さ50m以上の高層建物や大規模施設等、建設により著しく風環境への影響が見込まれるもの(2)計画建物の高さが30〜50m程度で、周囲に概ね高さ50m以上の高層建物や大規模施設等があり、複合的な要因で風環境への影響が懸念されるもの(3)鉄道、高速道路等に近接し、風環境の影響に対して安全の確認が必要なもの(4)周囲に住宅街、病院、学校などが存在し、風環境への影響に対して配慮が求められるもの、等である。
【0017】
そして、法令及び技術の適用範囲に照らし合わせても風環境に配慮して設計する必要がない場合には、工事に着工する(S500)。
【0018】
一方、法令及び技術の適用範囲に照らし合わせて風環境に配慮して設計する必要がある場合には、本願発明の施工現場の環境シミュレーションシステムを用いて実施する施工現場の環境シミュレーション方法にて施工計画を策定し、策定した施工計画に基づいて工事に着工する(S300)。
【0019】
図2は、施工現場の環境シミュレーション方法を含む目標設定から施工に至る過程を示すフロー図である。
【0020】
施工現場の環境シミュレーション方法は、
図2に示すように、まず、法令及び技術範囲に基づいて、風環境に対する目標値を設定する(目標設定工程 S310)。このとき、設定する風環境の目標値は、施工計画地の使用用途や周辺状況により異なるが、例えば、(a)ビューフォート風力階級、(b)村上周三氏らの提案による風環境評価尺度、(c)風工学研究所の提案による風環境評価指標、(d)施工計画地が属する行政が定める基準、等に基づいて設定されることが望ましい。本実施形態においては、防風対策が必要な強風領域が建設現場の敷地外に影響を及ぼす箇所を、施工の全過程において12箇所以下になることを目標として設定した例について説明する。
【0021】
次に、建物を設計し、設計した建物の施工計画を策定するとともに設計データに基づいてモデル化した三次元モデルデータを生成する(モデル化工程 S320)。このとき生成される三次元モデルデータは、建物の周辺街区のモデルとともに、策定された施工計画に基づいて建物の施工過程の各段階における建物の状態が段階毎に表現できるように生成されている。
【0022】
図3は、当初の施工計画に基づく三次元モデルデータの概念を示す図である。
図3では、作用効果をよりわかりやすくするために、正面図と平面図とで示しているが、施工現場及び周辺街区の状態は3D画像にて表現されている。
【0023】
図3に示すように、本実施形態の建物の施工計画では、例えば建物として敷地内に東西方向に並べて建築される22階建てのA棟とB棟との間に4階建てのC棟が、着工から2年間で竣工に至るように計画されていることとする。この建物の三次元モデルデータは、風環境の変化、すなわち、風の向きや風の発生頻度の変化が季節により生じることを想定し、例えば、着工から、季節が変わる3ヶ月毎に各段階の建物の状態がモデル化されている。
【0024】
この建物の当初の施工計画では、まずA棟が建設され、次にB棟が建設され、最後にC棟が建設されるように計画されているものとする。具体的には、
図3に示すように、1年目の3月に着工し5月までの3ヶ月間にてA棟の6階までが建設され、次の3ヶ月(6月〜8月)でA棟の12階までが、その次の3ヶ月(9月〜11月)でA棟の17階までが建設され、さらにその次の3ヶ月(12月〜2月)にて、A棟が完成するとともにB棟の3階分が建設されるように計画された三次元モデルが生成されている。その後も、着工から21ヶ月目までにB棟が完成し、22〜24ヶ月目までの3ヶ月間にてC棟が完成するような三次元モデルが生成されている。
【0025】
モデル化工程S320の後に、完成した三次元モデルデータに、例えば、気象庁などが保有する気象情報データを各段階の施工時期に基づいて対応付ける(気象情報対応付け工程 S330)。この気象情報データは、例えば、施工現場において春の3ヶ月(3月〜5月)には、南北方向に南及び北からいずれも風が吹き、夏(6月〜8月)には春より南風が吹く頻度が高く、秋(9月〜11月)には、南北に吹く風のうち南風より北風の方が吹く頻度が高く、冬(12月〜2月)には北風が吹く頻度が高いという、風に関する気象情報データである。このため、着工から3ヶ月間には春の気象情報データが対応づけられ、4〜6ヶ月の3ヶ月間には夏の気象情報データが対応づけられる、というように着工から3ヶ月毎に各季節の気象情報データが着工から24ヶ月まで対応づけられる。このとき、台風、豪雨、豪雪のような風以外の気象情報データについても対応付け(S340)、施工計画において、台風、豪雨、豪雪のような気象が大きく影響する可能性がある場合には、施工計画を見直し、見直した施工計画に基づいて各段階の建物の状態をモデル化した三次元モデルデータを生成する(見直し工程 S322、S330)。このとき、防風対策としては、一般的な仮囲いなどの対策を盛り込んでおく。
【0026】
図4は、シミュレーションから最適な施工計画の選定までの処理を示すフロー図である。
次に、施工計画に基づく各段階の三次元モデルデータと、各段階に対応づけられた風に関する気象情報データとに基づいて、例えば風環境シミュレータ「Zephyrus」(登録商標)を用いて、施工過程の各段階における風環境をシミュレーションする(シミュレーション工程 S361)。
図5は、「Zephyrus」(登録商標)にて、風環境をシミュレーションした結果の一例を説明するための図であり、
図5(a)は、防風対策を施さない状態の風環境を示す図であり、
図5(b)は、防風対策を施した状態の風環境を示す図である。風環境シミュレータを使用することにより、
図5に示すように、通路1に防風壁3を設けることにより、弱風領域5(色の濃い領域)が形成されるような、風環境の変化を確認することが可能である。
【0027】
図6は、当初の施工計画に基づく三次元モデルデータと風に関する気象情報データとに基づいてシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図6では、風の向きと風が吹く頻度の高低を矢印にて示し、強風領域をピッチの細かなハッチングにて、弱風領域をピッチが粗いハッチングにて示している。また、防風対策要検討箇所には★印を付し、防風対策箇所をグレーに着色して示している。
【0028】
図6に示すように、着工から3ヶ月、すなわち春の間は、6階まで施工されたA棟の四隅に僅かに強風領域が発生し、12階まで構築される夏の間は風向きが変わることによりA棟の南の2つの角部にて強風領域が発生するが、敷地の外側まで影響を及ぼさないというシミュレーション結果が得られている。1年目の秋及び冬には、13階以上の高さとなるA棟の東西の脇に南北方向に吹く強風領域が発生し、敷地の外側まで強風が影響するというシミュレーション結果が得られている。このとき、A棟の東側に発生する強風領域は、C棟の建設予定現場である。
【0029】
2年目の春に、B棟が約1/3の高さまで施工されると、A棟の東西の脇の他にB棟の東側の脇にも強風領域が発生する。B棟の東側に発生する強風領域は敷地の外側には影響していない。2年目の夏及び秋になりB棟の高さが半分を超える頃になると、A棟、B棟の東西の脇、すなわち、A棟の西側、B棟の東側、A棟とB棟との間に強風領域が発生する。このとき、A棟とB棟との間、すなわち、C棟の建設予定現場は特に強い強風領域となる。
【0030】
そして、2年目の冬にC棟が完成し、A棟の西側とB棟の東側とに防風対策として植栽が設けられると、植栽が植えられた辺りには、未だ強風領域が残る領域はあるものの敷地外に影響を及ぼすことはないというシミュレーション結果が得られている。また、今回のシミュレーション結果では、施工過程において防風対策要検討箇所が19箇所あることが示される。このとき、防風対策必要箇所12箇所以下という、予め設定した目標値を達成していないので(S362)、シミュレーション結果を分析し(S363)、強風発生や防風植栽などの改善策を検討する(S364〜S366)。
【0031】
図7は、防風対策の一例として、囲い壁に対する対策を示しており、
図7(a)は、通常の囲い壁を示す図、
図7(b)は、囲い壁を上方に延長した例を示す図であり、
図7(c)は、上部を工事現場側に傾斜させた囲い壁を示す図である。
【0032】
防風対策としては、例えば、
図7(a)に示す通常の囲い壁10と比較して
図7(b)に示すように高さを高くしたり、
図7(c)に示すように囲い壁10の上部10aを施工現場側に傾斜させて風を巻き返す形状として粉塵の拡散を抑えてもよい。また、本施工現場の環境シミュレーションシステム及び施工現場の環境シミュレーション方法にてシミュレーションした結果に基づいて、埃等の拡散を抑える防塵対策も検討することができる。
【0033】
図8は、施工時における防塵対策の一例を示しており、
図8(a)は、開閉ゲートの足元にゴムスカートを設置した例であり、
図8(b)は、仮囲いゲートを建設する建物の陰に配置した例であり、
図8(c)は、仮囲いゲートを2方向に向けて設けた例を示し、
図8(d)は、強風領域となる位置に埃収集装置を備えた例を示す図である。
図9は、解体時における防塵対策の一例を示す図であり、
図9(a)は、解体工事時における通常の囲い壁を示す図であり、
図9(b)は、作業が中断されるおそれがある強風時の状態を示す図であり、
図9(c)は、上部を解体現場側に傾斜させた囲い壁を示す図である。
【0034】
防塵対策としては、
図8(a)に示すように、囲まれた工事現場内への出入口となる開閉ゲート13の足元にゴムスカート16を設けたり、
図8(b)、
図8(c)のように仮囲いゲート14の位置や向きを変更したりする。具体的には、
図8(b)に示すように建設している建物の陰となる位置に仮囲いゲート14を設けたり、
図8(c)に示すように矩形状をなす囲い壁10の直交する2つの壁面に各々仮囲いゲート14a、14bを設け、風向きと交差している仮囲いゲート(メインゲート)14aの使用を避け、風向きと平行に設けられている仮囲いゲート(サブゲート)14bを使用する。このとき、
図8(d)に示すように、風向きと交差する囲い壁10には、埃収集装置18を設けておくと防風対策ばかりでなく防塵対策も施すことが可能である。
【0035】
また、解体工事の際には、
図9(a)に示すような通常の囲い壁10では、
図9(b)に示すように強風が吹いた際に粉塵が拡散されてしまう虞があるが、
図9(c)に示すように最上階よりも高い位置にて囲い壁10の上部10aに防音パネルや防音シートを解体現場側に傾斜させあり、飛散防止ネットを設けて粉塵の拡散を抑える。
【0036】
図10は、施工順序による風環境の相違を示す図であり、
図10(a)は、竣工時の風環境を示す図であり、
図10(b)は、A棟を先に施工する際の風環境を示す図であり、
図10(c)は、B棟を先に施工する際の風環境を示す図である。
【0037】
図10(b)、
図10(c)に示すように、A棟より先にB棟を建設することにより強風領域の範囲を小さくすることができることを、施工前に認識することが可能である。すなわち、施工する建物の順序によっても風環境は変化するので、防風、防塵対策としてはシミュレーション結果に基づいて施工する建物の順序を変更することも考えられる。
【0038】
図11は、建て替えによる風環境の相違を示す図であり、
図11(a)は、建て替え前の風環境を示す図であり、
図11(b)は、建て替え後の風環境を示す図であり、
図11(c)は、建て替え工事中の風環境を示す図である。
【0039】
図11(a)、
図11(b)に示すように、建て替えの前後においては、大きな強風領域は発生していないが、
図11(c)に示すように、建て替え工事中には、工事中の建物の位置、すなわち、建設中の建物と隣接する1つの既存建物間において大きな強風領域が発生していることを建て替え工事の前にシミュレーションにより認識することが可能である。
【0040】
本実施形態においては、最初のシミュレーションの結果にて、大きく突出する建物が施工されると、その建物の周りにおいて強風領域が発生することが確認されたので、できるだけ建物が突出しないような新たな施工計画を策定し、策定した施工計画に基づいて各段階の建物の状態をモデル化した新たな三次元モデルデータを生成する(S322)。このときも生成される新たな三次元モデルデータは、建物の周辺街区のモデルとともに、新たな施工計画に基づいて建物の施工過程の各段階における建物の状態が段階毎に生成されている。
【0041】
図12は、新たな施工計画に基づく三次元モデルデータの概念を示す図である。
具体的には、新たな三次元モデルデータは、
図12に示すように、1年目の3月に着工し5月までの3ヶ月間にてA棟とB等を並行して3階まで施工し、次の3ヶ月でA棟及びB等を4階まで施工するとともに、A棟とB棟との間にC棟を施工して完成させる。その後は、A棟及びB棟をほぼ同じ階数ずつ施工して、着工から2年間でA棟及びB棟も完成するように計画された3次元モデルがモデル化されている。
【0042】
新たな三次元モデルデータのモデル化工程(S322)の後に、完成した新たな三次元モデルデータに当初と同様の気象情報データを各段階の施工時期に基づいて対応付け(モデル気象対応工程 S330)、施工計画に基づく各段階の新たな三次元モデルデータと、各段階に対応づけられた風に関する気象情報データとに基づいて、風環境シミュレータ「Zephyrus」(登録商標)を用いて、施工過程の各段階における風環境を評価する(シミュレーション工程 S361)。
【0043】
図13は、新たな三次元モデルデータと風に関する気象情報データとに基づいてシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図13に示すように、着工から3ヶ月、すなわち春の間は、3階まで施工されたA棟及びB棟の四隅に僅かに強風領域が発生し、A棟及びB棟が4階まで施工されC棟が完成する夏の間は、C棟によりA棟とB棟との間を風が通りにくくなるため、A棟の西側とB棟の東側に強風領域が発生するが、風向きが変わることによりA棟及びB棟の南の角部にて強風領域が発生するが、敷地の外側まで影響を及ぼさないというシミュレーション結果が得られている。そして1年目の秋までの、A棟からC棟までの高さがほぼ同じ状態では、秋の風が南北双方向から吹くために、A棟の西側とB棟の東側とに建物に沿って強風領域が発生するが、敷地の外側まで影響を及ぼさないというシミュレーション結果が得られている。その後1年目の冬から2年目の冬までの間は、A棟及びB棟がC棟より上方に突出する状態となり、季節により変化する風向きと風の発生頻度に応じて強風領域が変化してA棟の西側とB棟の東側に発生し、敷地の外側まで強風が影響するというシミュレーション結果が得られている。また、新たな三次元モデルデータによるシミュレーションにおいては、A棟とB棟との間において強風領域の発生が抑えられるというシミュレーション結果が得られている。また、今回のシミュレーション結果では、施工過程において防風対策要検討箇所が12箇所あることが示される。このとき、防風対策必要箇所12箇所以下という、予め設定した目標値を達成しているので工事に着工する(S370、S380)。このとき、目標値を達成していなければ、再びシミュレーション結果を分析し(S363)、さらなる防風対策を検討し(S364〜S366)、新たな三次元モデルデータを生成し(S322)、生成した新たな三次元モデルデータと風情報とに基づいてシミュレーションを実行する(S361)。
【0044】
このとき、工事の着工に当たっては、たとえば、工事中における風力発電に適した箇所の検討(S367)、強風お知らせシステム等の検討(S368)、風を利用したコミュニケーションツールの検討(S369)、なども行い、風環境に配慮した最適な施工計画を選定しても良い。
【0045】
本実施形態の施工現場の環境シミュレーションシステムによれば、三次元モデルデータには、構築されていく建物の周辺街区と、建物の施工過程の各段階における状態とが段階的にモデル化されているので、周辺街区に含まれて段階的に変化する建物の状態を三次元のモデルとして把握することが可能である。この三次元モデルデータの各段階において、当該各段階の施工時期に基づいて対応づけられた気象情報データを用いて、建物及び周辺街区に対する気象の影響をシミュレーション(S361)するので、三次元モデルデータにて表される建物及び周辺街区の各段階における気象の影響を事前に確認することが可能である。すなわち、建設中の施工現場の気象環境の影響を事前に確認することが可能である。
【0046】
また、シミュレーションした結果(S361)、予め設定した目標値を達成していない場合には、シミュレーション結果を分析し(S363)、強風発生や防風植栽などの改善策を検討し(S364〜S366)、新たな三次元モデルデータを生成し(S322)、新たな三次元モデルデータと、気象情報データとを、各段階の施工時期に基づいて対応付けてシミュレーション(S361)するので、三次元データに施した変更の環境の影響を確認することが可能である。このため、たとえば、環境に対する対策を変更として三次元モデルデータに施すことにより、対策が適切か否かを事前に容易に確認することが可能である。
【0047】
また、新たな三次元モデルデータの生成(S322)と、新たな三次元モデルデータへのシミュレーション(S361)とを、予め設定された目標値に至るまで繰り返すので、建物及び周辺街区に対する気象の影響を、予め設定した目標値に目標値に抑えることが可能である。
【0048】
上記実施形態においては、シミュレーションする気象情報データを風に関する情報として、風環境に適した施工現場を実現するための施工現場の風環境を事前に確認する例について説明したが、これに限るものではない。たとえば、粉塵や雪の吹きだまりなどの情報と三次元モデルデータとに基づいて、建物及び周辺街区に対する粉塵や雪の吹きだまりなどの影響を確認することが可能である。
【0049】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。