(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るプレス成形品の使用例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2(A)〜(D)は、本発明に係る製造方法の実施の形態1におけるプレス成形品の成形過程を示す概略図である。
【
図3】同実施の形態1の製造装置における第1絞り成形工程前の概略断面図である。
【
図4】同実施の形態1の製造装置における第1絞り成形工程後の概略断面図である。
【
図5】同実施の形態1の製造装置における第2絞り成形工程前の概略断面図である。
【
図6】同実施の形態1の製造装置における第2絞り成形工程後の概略断面図である。
【
図7】同実施の形態1の製造装置における密着工程前の概略断面図である。
【
図9】同密着工程時のブランク材の要部拡大断面図である。
【
図10】同密着工程後のブランク材の要部拡大断面図である。
【
図11】同実施の形態1の製造装置における仕上げ工程完了時の要部拡大断面図である。
【
図12】本発明に係る製造方法の実施の形態2における第1絞り成形工程完了時のブランク材の断面図である。
【
図13】同実施の形態2の第2絞り成形工程完了時のブランク材の断面図である。
【
図14】同実施の形態2の第1密着工程完了時のブランク材の断面図である。
【
図15】同実施の形態2の第3絞り成形工程完了時のブランク材の断面図である。
【
図16】同実施の形態2の第2密着工程完了時のブランク材の断面図である。
【
図17】同実施の形態2において、複数の環状のリブを中心軸線に対し同軸又は異軸に設けた場合の平面図である。
【
図18】同実施の形態3の第1、第2絞り成形工程完了時の状態を示すブランク材の断面図である。
【
図19】同実施の形態3の第3絞り成形工程完了時の状態を示すブランク材の断面図である。
【
図20】同実施の形態3の第1密着工程完了時の状態を示すブランク材の断面図である。
【
図21】同実施の形態3の第4絞り成形工程完了時の状態を示すブランク材の断面図である。
【
図22】同実施の形態3の第2密着工程完了時の状態を示すブランク材の断面図である。
【
図23】同実施の形態4に係るプレス成形品において第1絞り成形工程完了時のブランク材を示す断面図である。
【
図24】同実施の形態4に係るプレス成形品において第2絞り成形工程完了時のブランク材を示す断面図である。
【
図25】同実施の形態4に係るプレス成形品において密着工程完了時のブランク材を示す断面図である。
【
図26】同実施の形態4に係るプレス成形品において仕上げ工程完了時のブランク材を示す断面図である。
【
図27】同実施の形態4に係るプレス成形品の変形例を示す断面図である。
【
図28】
図28(A)〜(C)は同実施の形態4に係るプレス成形品の変形例を示す断面図である。
【
図29】同実施の形態5に係るプレス成形品を示す断面図である。
【
図30】同実施の形態5に係るプレス成形品の製造装置における第2絞り成形工程前の状態を示す概略断面図である。
【
図31】同実施の形態5に係るプレス成形品の製造装置における第2絞り成形工程完了時の状態を示す概略断面図である。
【
図32】同実施の形態5に係るプレス成形品の製造装置における密着工程完了時の状態を示す概略断面図である。
【
図33】同実施の形態5に係るプレス成形品の製造装置における仕上げ工程完了時の状態を示す概略断面図である。
【
図34】同実施の形態6に係るプレス成形品を示す断面図である。
【
図35】同実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置における第3絞り成形工程前の状態を示す概略断面図である。
【
図36】同実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置における第3絞り成形工程完了時の状態を示す概略断面図である。
【
図37】同実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置における密着工程前の状態を示す概略断面図である。
【
図38】同実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置における密着工程完了時の状態を示す概略断面図である。
【
図39】同実施の形態6に係るプレス成形品の製造装置における仕上げ工程完了時の状態を示す概略断面図である。
【
図40】同実施の形態6に係るプレス成形品の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
(プレス成形品)
図1は本発明に係るプレス成形品の具体的使用例を示す概略断面図である。このプレス成形品は、例えば、電気自動車のモーターケースの中のクラッチ機構に使用されるものである。
図1において、クラッチ機構は、プレス成形品Wに相当する有底円筒状のドラム1を有し、ドラム1は内部にシリンダ状の構造体(リブ)10が中心軸に平行に設けられている。底壁14を貫通しかつ突出したピストン2のロッド21の先端はクラッチ3に取付けられ、クラッチ3を断続するようになっている。
【0020】
ドラム1には、底壁14からシリンダの側壁として機能する環状のリブ10が成形され、このリブ10や周壁15により形成されるシリンダボア内にピストン2が収容されている。ピストン2には、ロッド21の基端が取り付けられ、ロッド21の先端はクラッチ3に取り付けられている。
【0021】
本実施の形態1においてドラム1にあたるプレス成形品Wは、環状のリブ10が側壁となる2枚の板材から構成され、これらが相互に密着状態となるようにプレス成形されている。環状のリブ10は、自動車構造用熱間圧延鋼板(以下、SAPHと称する)からなるブランク材から成形される。
【0022】
環状のリブ10はブランク材の板面から垂下した環状の第1側壁11を成形し、環状の第2側壁12を第1側壁11と対向する所まで曲げを施すことによりU字状連結部13を介して一体に成形している。
【0023】
特に本実施の形態1では、第1側壁11と第2側壁12とを即座に密着させずに、U字状連結部13から破断が起こらないように第2側壁12を第1側壁11と空間部を介して対向する位置まで一度成形した上で近接又は密着を行っている。
【0024】
なお、環状のリブ10の先端部分の曲率半径r1及び根元部分の曲率半径r2、r3については、後述するがいずれも小さな曲率半径としている。
【0025】
このためプレス成形品Wは、本発明に係る製造方法により通常のプレス加工のみで簡単かつ迅速に製造できるため、製造部品の低コスト化を図ることができる。また、プレス成形品Wに設けられたリブ10を密着できる程度にまで狭くできることからスペース的にも設計の自由度を向上させることができる。
【0026】
また、本発明に係るプレス成形品が種々の部品に幅広く使用されることで、各種部品の軽量化に貢献することもできる。
【0027】
(プレス成形品の製造方法と製造装置)
まず上記プレス成形品Wの製造方法を、
図2を用いて概説する。
図2は実施の形態1におけるプレス成形品の成形過程を示す概略図である。なお、
図2において
図1に示す部材と同一部材には同一符号を付しており、ここではプレス金型は省略し、プレス成形品Wのみを示す。
【0028】
実施の形態1に係るプレス成形品Wの製造方法は、第1絞り成形工程においてブランク材Bを深絞りし、第1側壁11及び底壁14を有する凹部16を成形する(
図2A参照)。そして、第2絞り成形工程において底壁14を第1絞り成形とは逆の方向から立ち上がらせ、第1側壁11と第2側壁12がU字状連結部13を介して連結された状態にする(
図2B参照)。
【0029】
そして、密着工程においてU字状連結部13に外力を付与し、第2側壁12を第1側壁11に密着させる(
図2C参照)。そして、仕上げ工程においてリブ10の先端部分及び根元部分を所定形状に仕上げる(
図2D参照)。以下、各工程別に詳述する。
【0030】
(第1絞り成形工程)
図3は本発明に係る製造方法の実施の形態1において使用する製造装置の第1絞り成形工程前の状態を示す概略断面図、
図4は同製造装置の第1絞り成形工程後の概略断面図である。なお、実施の形態1では簡素化のためリブ10を1つ成形する場合について説明する。
【0031】
実施の形態1の製造装置20A(第1プレス部)は、
図3に示すように、ボルスタに取り付けられたダイホルダ21に対し、スライドに取り付けられたパンチプレート23が昇降可能に設けられている。ダイホルダ21上には環状のダイ22が載置され、このダイ22の中心部分にダイ27aが設けられている。
【0032】
パンチプレート23には、ダイ27aに対応する位置に第1パンチ(第1プレス金型)26aが設けられている。第1パンチ26aの周囲には、ダイ22の上面に設置されるブランク材Bを押圧するブランクホルダ24が、パンチプレート23からスプリング25を介して垂下されている。
【0033】
なお、ダイ22、第1パンチ26a、ダイ27aの各高さは、成形するリブ10の高さh(
図1参照)に応じて適宜設定される。
【0034】
製造装置20A(第1プレス部)では、離間した状態の第1パンチ26aとダイ22との間にブランク材Bが搬入されると、
図4に示すように第1パンチ26aがダイ27aに向かって下降し、ブランク材Bを深絞り成形する。これによりブランク材Bには、
図2Aのように第1側壁11及び底壁14からなる凹部16が成形される。
【0035】
なお、第1側壁11の高さによっては、ブランク材Bの成形限界により、ブランク材Bに割れが発生するおそれがあるため、この割れを防止するために第1絞り成形工程を多段階に分けて行ってもよい。
【0036】
(第2絞り成形工程)
図5は実施の形態1に係る製造方法を使用する製造装置の第2絞り成形工程前の概略断面図、
図6は同製造装置の第2絞り成形工程後の概略断面図である。なお、
図3,4と共通する構成には、同一符号を付し説明は省略する。
【0037】
製造装置20B(第2プレス部)は、
図5に示すようにパンチプレート23から薄肉で円筒状をした補助型28及びダイ27bが垂下されており、ダイホルダ21側には、ダイ27bに対応する位置に第2パンチ(第2プレス金型)26bが昇降可能に設けられている。補助型28を取り付けることにより、リブ10の高さhが必要以上に減少することを防止することができる。
【0038】
なお、成形するU字状連結部13の曲率半径の大きさあるいはブランク材B自体の材質などによっては、補助型28を使用しなくてもU字状連結部13から破断が発生せずに環状のリブ10を成形できる場合がある。この場合には補助型28を省略してもよい。
【0039】
また、第2パンチ26bの外径Dbは、第1パンチ26aの外径Daより小径とされ、補助型28の内方領域の底壁14を加圧成形するようになっている。
【0040】
製造装置20Bでは、離間した状態の補助型28とダイ22との間に第1絞り成形後のブランク材Bが搬入されると、
図5に示すように補助型28が下降し、凹部16内に入る。そして、
図6に示すように第2パンチ26bが上昇する。
【0041】
つまり、第2パンチ26bは第1絞り成形時の第1パンチ26aとは逆の方向に移動する。そしてブランク材Bの底壁14を補助型28に沿って立ち上げ、第1側壁11と第2側壁12とがU字状連結部13を介して連結状態となるように、第1側壁11に180度曲げを行う。
【0042】
これによりブランク材Bには、第1側壁11と空間部S(
図2B参照)を介して対向する第2側壁12が成形され、第2側壁12はU字状連結部13を介して第1側壁11と一体的に成形される。第1側壁11及び第2側壁12は後に環状のリブ10となる。
【0043】
環状のリブを成形する場合、第2側壁12は後述する密着工程を経ずに第2絞り成形工程において第1側壁11に密着又は近接させる方がより迅速にリブを成形できるとも考えられる。しかし、プレス成形では上記のように第1絞り成形とは逆の第2絞り成形により第1側壁11と第2側壁12とを密着させようとすると、曲げ点であるU字状連結部13には応力が集中し、破断に至る場合がある。
【0044】
そこで本発明では第2絞り成形工程で一度第2側壁12を第1側壁11と空間部Sが存在する状態に成形した上で、後述の密着工程において第2側壁12を第1側壁11に近接又は密着させている。これにより、成形限界を考慮しつつも少ない工程で第1側壁11と第2側壁12とを密着する程度にまで成形している。
【0045】
また、第1絞り成形、第2絞り成形工程においてブランク材Bの底壁14中心付近の形状は、パンチ26a、26bあるいは補助型28によって引き伸ばされて板厚が減少している。一方で、U字状連結部13より外側部分は、第1絞り成形の際に底壁14周辺の部分が第1側壁11に引き込まれる。従って第1絞り成形と第2絞り成形を終えた段階では、第2側壁12は第1側壁11より板厚が薄くなっている。
【0046】
また、本出願人が設計基準としてJISと同様に規定する14mm以下のSAPHでは、ブランク材Bを約180度まで曲げた際の第1側壁11と第2側壁12との間の空間部Sの180度曲げ保証値隙間を板厚tの大きさである1tまでとしている。
【0047】
しかし、実施の形態1のように深絞り成形において180度曲げを行う場合には、通常の曲げ加工よりも上述のように第1側壁11と第2側壁12とで板厚に差が生じる等の事情により、通常より大きな隙間でも破断に至る場合がある。
【0048】
そこで、実施の形態1では、第1側壁11と第2側壁12との空間部Sの距離は、ブランク材Bの180度曲げ保証値隙間の少なくとも2倍程度、つまり2tとすることで引っ張り応力が集中する部位(
図8のPc)の破断を防止している。なお、180度曲げ保証値隙間は材料により変わるものである。
【0049】
(密着工程)
図7は実施の形態1に係る製造方法を使用する製造装置の密着工程前の状態を示す概略断面図、
図8は
図7の要部拡大断面図、
図9は密着工程時の状態を示す
図7の要部拡大断面図、
図10は密着工程後の状態を示す要部拡大断面図である。
【0050】
製造装置20C(第3プレス部)は、
図7に示すようにパンチプレート23の下面に受け型29がスプリング25を介して取り付けられており、ダイホルダ21側には、第3パンチ(第3プレス金型)26cが昇降可能に設けられている。なお、第3パンチ26cの外径Dcは、第1側壁11と第2側壁12とを密着させることができるように第2パンチ26bの外径Dbより大きく設定されている。
【0051】
製造装置20Cでは、
図7に示すように、離間した状態の受け型29とダイ22との間に第2絞り成形された後のブランク材Bが搬入されると、第3パンチ26cが上昇する。
【0052】
ここにおいて第3パンチ26cの先端肩部は、
図8に示すようにブランク材BのU字状連結部13の先端湾曲部の中でも引っ張り応力が集中する部分Pcに接触して加圧するように円弧状とされている。
【0053】
この点に関しさらに詳述する。上述のように第1側壁11と第2側壁12は、第1絞り成形、第2絞り成形により第1側壁11が厚肉に、第2側壁12が薄肉になっている。
【0054】
この状況で特別の措置を講じずに第1側壁11と第2側壁12とを近接させるプレス成形を行うと、
図8のようにU字状連結部13の先端よりも第2側壁側に変位した位置(例えば、点Pc)には引っ張り応力が発生して集中し、破断するおそれがある。
【0055】
この場合に
図8において引っ張り応力は応力集中点Pcから径方向の時計回り及び反時計回り(
図8の矢印参照)に発生しているため、破断を防止するためには両方の引っ張り応力を相殺することが望ましい。
【0056】
しかし、下方からU字状連結部13を単純にプレスし、第2側壁12を第1側壁11に近接させるだけでは、応力集中点Pcにおける両引っ張り応力を相殺することはできない。当該引っ張り応力を相殺するためには応力集中点Pcに外力を作用させる別のパンチが必要となり、別途パンチを追加すれば製造装置のコストアップとなってしまう。
【0057】
そこで、実施の形態1では、
図8及び
図9のように引っ張り応力が高くなる部位Pcに第3パンチ26cの先端肩部が圧接するように、第3パンチ26cを軸方向に移動させるのみで密着成形を可能にしている。
【0058】
この結果、パンチ26cの上昇により引っ張り応力が集中している部位Pcでの応力状態を、引っ張り応力と反対方向から外力を作用させることで緩和させることができる。また当該引っ張り応力の緩和により、破断の発生を防止しつつ、第1側壁11と第2側壁12とを上述した180度曲げ保証値隙間の2倍以下にまで近接させ、又は
図10のように密着させることができる。
【0059】
この際に第1側壁11と第2側壁12とを近接させる第3パンチ26cの先端肩部の曲率半径R1は、ブランク材Bの板厚tの4倍程度とすることが望ましい。この4倍は、第3パンチ26cとブランク材Bとの位置ズレや、各々の形状バラつき等を考慮する必要があるためである。また、先端肩部の曲率半径R1が小さすぎれば、応力集中点Pcに先端肩部を圧接させたとしても、応力集中点Pcの周辺に応力集中が転移してしまい、破断を十分に防止することが出来なくなるためでもある。
【0060】
(仕上げ工程)
図11は実施の形態1に係る製造方法を使用する製造装置の仕上げ工程完了時の要部拡大断面図である。
【0061】
仕上げ工程では、
図11のようにブランク材Bをダイ22d及び受け型29により挟持した状態で、リブ10の先端部分及び根元部分の曲率半径r1、r2、r3をダイ22d及び第4パンチ26dによって小さく成形し、リブ10を完成させる。
【0062】
本仕上げ工程は、リブ10の先端部分及び根元部分の曲率半径r1、r2、r3を小さくすることで
図1のようにピストン2を摺動させる場合の摺動距離を拡大させるための工程である。従って、リブ10をピストンの摺動部分として使用しない場合には、上記のようにリブの先端や根元部分の曲率半径をあえて小さくしなくてもよい。
【0063】
上述した実施の形態1は、以下の効果を奏する。
【0064】
(a)実施の形態1に係る環状のリブ10を有するプレス成形品Wの製造方法及び当該製造方法を使用する製造装置によれば、ブランク材Bに第1絞り成形により第1側壁11を成形する。そして、第1絞り成形と方向が異なる第2絞り成形により第1側壁11と空間部Sを介して対向する第2側壁12を成形する。
【0065】
そして、第2側壁12を第1側壁11に密着させることで環状のリブ10を成形している。
【0066】
このため、プレスの成形限界を考慮しても3工程という少ない工程数で環状のリブを有するプレス成形品を簡単かつ迅速に製造することができる。また、少ない工程で迅速にプレス成形品が製造できることでプレス成形品のコスト低減にも貢献できる。
【0067】
また、従来ではローラ等を使用し、何段階にも亘る工程を経て成形していたリブをプレス金型のみにより簡単かつ迅速に成形でき、加工工数を低減することができる。
【0068】
(b)密着工程において使用するプレス金型はU字状連結部の中でも破断が起こるU字状連結部13の第2側壁側の部分に圧接させている。
【0069】
このため、単純にプレス金型により絞り成形を行えば応力集中部位から破断が生じる所を、応力集中部位にプレス金型を当接させて外力をかけ、応力集中を緩和させることで破断の発生を防止することができる。
【0070】
また、当該部分の破断の発生を防止することで第1側壁11と第2側壁12とを密着する程度に近接させることができる。
【0071】
また、第1側壁11と第2側壁12との密着は、第3パンチ26cの軸方向移動によって可能にしたため、製造装置に別途金型部品を追加することなく側壁同士を近接又は密着させることができる。
【0072】
(c)実施の形態1に係る密着工程前の第2絞り成形工程において、第1側壁11と第2側壁12との距離は180度曲げ保証値隙間の2倍以上としている。
【0073】
このため、通常の180度曲げとは異なり、第1側壁11と第2側壁12に肉厚の差が生じるような場合であっても、U字状連結部13から破断が生じることなく、安定して第1側壁11と第2側壁12とを密着する程度にまで成形することができる。
【0074】
(d)密着工程において使用する第3パンチ26cの先端肩部の曲率半径R1は、ブランク材の板厚の4倍程度確保するようにしている。このため、バラつきを考慮しても引っ張り応力集中部位に第3パンチ26cの先端肩部を圧接させることができ、また周辺部位に応力が転移することを防止することもできる。
【0075】
(e)密着工程では破断が生じるU字状連結部13の付近である第2側壁12から第3パンチ26cにより第1側壁11に近接させるようにしている。このため、引っ張り応力により破断の生じる部位に当該引っ張り応力を緩和させる外力を付与することができ、第1側壁11と第2側壁12とを密着する程度に近接させることができる。
【0076】
(f)環状のリブ10の側壁をシリンダとして利用し、内部でピストンを摺動させる場合には、リブ先端および根元部分の曲率半径の大きさを仕上げ工程にて密着工程完了時より小さく成形することで摺動部分をより拡大させることができる。
【0077】
(g)実施の形態1に係る製造方法により製造したプレス成形品は、環状のリブが別部材ではなく、同一のブランク材から成形されている。このため、別部材を溶接しなくても環状のリブを有するプレス成形品を製造でき、部品コストの低減に貢献することができる。
【0078】
また、第1側壁11と第2側壁12との距離を通常では出来ないブランク材Bの材料の180度曲げ保証値隙間の2倍以下にまで近接させている。このため、実施の形態1に係るプレス成形品を従来よりも幅広く使用することが可能となり、設計の自由度を向上させることができる。また、本発明に係るプレス成形品が種々の部品に幅広く使用できることで、各種部品の軽量化に貢献することもできる。
【0079】
(実施の形態2)
図12から
図16は実施の形態2に係る各製造工程におけるブランク材Bの成形状態を示す断面図である。なお、符号は実施の形態1と共通する部材は同一符号とし、実施の形態2に係るプレス成形品の製造装置は、基本的に実施の形態1と同様であるため省略する。
【0080】
実施の形態1ではリブ10をブランク材Bに1つ成形したが、実施の形態2では、以下のようにブランク材Bの一方の板面に複数成形するようにしている。
【0081】
(第1絞り成形工程)
第1絞り成形工程では、
図12の矢印のように上方から下方に第1絞り成形を行って2つの第1側壁11a、11bと、底壁14a,14bを成形する。第1側壁11a、11bは段差付の金型を使用して1度に成形してもよく、2段階に分けて行ってもよい。
【0082】
ここで、2つの第1側壁11a、11bの間隔は、少なくともブランク材Bの板厚の8倍以上確保する必要がある。
【0083】
図15のように第3パンチ26cの先端肩部の曲率半径R1として板厚tの4倍と、第2側壁分の板厚と、第1側壁11bと第2側壁12bとの間の距離として板厚の2倍と、第1側壁分の板厚とを加えた間隔が少なくとも必要になるためである。
【0084】
なお、
図15では板厚や絞り成形の際の絞り深さにより第1側壁11bと第2側壁12bの板厚が変動するため、第1側壁11bと第2側壁12bの板厚を便宜的に絞り成形前の1tで図示している。上述のように絞り成形により第1側壁11bは厚肉に、第2側壁12bは薄肉になるため、その点も考慮して第1側壁11a、11bの間隔はブランク材の板厚の8倍以上とする必要がある。
【0085】
(第2絞り成形工程)
第2絞り成形工程では、
図13の矢印のように底壁14aを下方から上方に立ち上げて第2側壁12aを成形する。
【0086】
(第1密着工程)
第1密着工程では、
図14の矢印のようにパンチを第2側壁12aの下方から上方に向かって移動させ、第2側壁12aを第1側壁11aに密着させて第1リブ10aを成形する。
【0087】
(第3絞り成形工程)
第3絞り成形工程では、
図15の矢印のように底壁14bを下方から上方に絞り成形を行い、第2側壁12bを成形する。その際に使用するパンチ及びそれ以外の金型部品は、既に成形された第1リブ10aを潰さないために、形状が複雑になってもできるだけブランク材の形状と一致させる必要がある。
【0088】
(第2密着工程)
第2密着工程では、
図16の矢印のようにパンチを第2側壁12bの下方から上方に向かって移動させ、第2側壁12bが第1側壁11bに密着するように第2側壁12bを第1側壁11bに近接させて第2リブ10bを成形する。
【0089】
(仕上げ工程)
仕上げ工程は図示しないが、実施の形態1と同様に第1リブ10a及び第2リブ10bの先端及び根元部分の曲率半径を密着工程完了時に成形された曲率半径より小さく成形する。
【0090】
なお、リブを複数成形する場合の成形順序は内側からであっても外側からであってもよい。但し、型の形状は寸法安定性を考慮してできるだけ成形形状に一致させ、既に成形されたリブを潰さない点に留意する必要がある。
【0091】
図17は環状のリブを中心位置が同軸で設けた場合と異なって設けた場合の平面図である。環状のリブ10を複数設ける場合に、複数の環状のリブ10の中心軸線は
図17(A)のように同軸であってもよく、また
図17(B)のように異軸であってもよい。環状リブを成形する場合、ピッチを上述のようにブランク材の板厚の8倍以上設定すれば、中心軸線が異軸の場合でも成形でき、設計の自由度を向上させることができる。
【0092】
上述した実施の形態2は、以下の効果を奏する。
【0093】
(a)実施の形態2に係る環状のリブ10a、10bを有するプレス成形品Wの製造方法及び当該製造方法を使用する製造装置によれば、既に成形したリブ10aを潰さずに成形形状に一致したパンチ及び金型部品を使用して成形を行っている。このため、環状のリブ10が複数突出するプレス成形品を、簡単かつ迅速に成形することができる。
【0094】
(b)隣接する第1側壁11a、11bのピッチとして、上述のようにブランク材の板厚の8倍以上のピッチを取ることにより、環状のリブを複数成形することができる。
【0095】
(c)環状のリブを実施の形態2に係る方法により複数有するプレス成形品は、部品強度やレイアウト等の様々な要求に対応してリブを複数成形することができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0096】
(d)上記方法によりプレス成形品の複数のリブを、中心軸線と同軸又は異軸に成形できることで、様々な位置にリブが配置されたプレス成形品ができるため、設計の自由度をさらに向上させることができる。
【0097】
(実施の形態3)
図18から
図22は実施の形態3に係る各製造工程におけるブランク材Bの成形状態を示す断面図である。実施の形態2ではリブをブランク材Bの下面、つまり同一面側に成形したが、上下両面に成形することも可能である。
【0098】
(第1、第2絞り成形工程)
第1絞り成形では、
図18の矢印のように下方から上方に絞り成形を行い、第1側壁11c及び底壁14cを成形する。第2絞り成形では上方から下方に絞り成形を行い、第1側壁11d及び底壁14dを成形する。第1絞り成形と第2絞り成形は形状が再現できれば順序が逆転してもよい。
【0099】
(第3絞り成形工程)
第3絞り成形工程では、
図19の矢印のように底壁14cを上方から下方に押し下げて、空間部Sを介して第1側壁11cと対向する第2側壁12cを成形する。
【0100】
(第1密着工程)
第1密着工程では、
図20の矢印のように第2側壁12cの上方からパンチを下降させ、第2側壁12cを第1側壁11cに密着させて第1リブ10cを成形する。
【0101】
(第4絞り成形工程)
第4絞り成形工程では、
図21の矢印のように底壁14dを下方から上方に立ち上げて、空間部Sを介して第1側壁11dと対向する第2側壁12dを成形する。
【0102】
(第2密着工程)
第2密着工程では、
図22の矢印のように第2側壁12d付近からパンチを上昇させ、第2側壁12dを第1側壁11dに密着させて第2リブ10dを成形する。
【0103】
実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法によれば、ブランク材Bの板面において上下両面に突出するリブを成形することができる。
【0104】
上述した実施の形態3は、以下の効果を奏する。
【0105】
(a)実施の形態3に係る環状のリブ10を有するプレス成形品Wの製造方法及び当該製造方法による製造装置によれば、複数の絞り成形を行う方向を変えることで環状のリブ10が上下に突出したプレス成形品を簡単かつ迅速に成形することができる。
【0106】
(b)実施の形態3に係る製造方法により成形されたプレス成形品は、平板部の両面からリブを配置できるため、強度やレイアウト等の様々な要求に対応でき、使用範囲が拡大し、設計の自由度を向上させることができる。
【0107】
(実施の形態4)
図23〜
図26は実施の形態4に係るプレス成形品の製造方法の説明に供する断面図、
図27及び
図28(A)〜(C)は実施の形態4のプレス成形品の変形例を示す断面図である。実施の形態2では、
図2(D)に示すように環状のリブ10の径方向内側に形成された底壁14と環状リブ10の径方向外側に形成されたフランジ部18a、18bとが同一高さとなるプレス成形品について説明した。しかしながら、環状リブ10から底壁14とフランジ部18a、18bとは、
図26に示すように同一高さに形成されなくてもよい。
【0108】
(第1絞り成形工程)
実施の形態4に係るプレス成形品は以下のように成形する。なお、実施の形態4に係るプレス成形品の製造装置の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0109】
まず、第1絞り成形工程では実施の形態1と同様に、
図3及び
図4に示す第1パンチ26aとダイ22との間にブランク材Bを搬入し、パンチ26aをダイ27aに向かって下降させ、絞り成形を行う。これによってブランク材Bには
図23に示すようにフランジ部18cと、第1側壁11e及び底壁14eからなる凹部16と、が形成される。
【0110】
(第2絞り成形工程)
次に、第2絞り成形工程において、
図5に示すように補助型28とダイ22との間に第1絞り成形後のブランク材Bを搬入し、補助型28を下降させ、凹部16内に進入させる。そして、パンチ26bを上昇させ、第1側壁11eと第2側壁12eとがU字状連結部13eを介して連結状態となるように第1側壁11eに180度曲げを行う。
【0111】
実施の形態1では、
図2(D)に示す底壁14とフランジ部18a、18bとが同一高さになるまで絞り成形を行った。これに対し、実施の形態4ではダイ27bの高さを調整し、ダイ27bを凹部16内に進入する高さに形成してパンチ26bを上昇させ、絞り成形を行う。これによって底壁14eは
図24に示すようにフランジ部18cよりも低い高さの位置にまで絞り成形が行なわれる。
【0112】
(密着工程、仕上げ工程)
密着工程及び仕上げ工程は実施の形態1と同様であるため詳細な説明は省略するが、密着工程では
図25に示すようにパンチ26cを用いて第2側壁12eを第1側壁11eに近接乃至密着させる。そして、仕上げ工程において
図26に示すように環状リブ10eの先端部分及び根元部分の曲率半径を密着工程時に成形された曲率半径よりも小さく成形する。
【0113】
図26では底壁14eがフランジ部18cよりも低くなるように形成されるが、ダイ27bをフランジ部18cの上面から上方に離間する高さに形成し、第2絞り成形を行ってもよい。これによって、
図27に示すように底壁14eがフランジ部18cよりも高いプレス成形品を成形することもできる。
【0114】
さらにプレス成形品の底壁14eの部分を打ち抜くことも可能である。つまり、
図25に示す密着工程後のブランク材Bに第2側壁12eと同径の打ち抜きパンチを用いて打ち抜き加工を行う。これによって、
図28(A)に示すように打ち抜き加工により形成された端面14fがフランジ部18cよりも低く形成されたプレス成形品を成形することができる。
【0115】
また、打ち抜き加工前の底壁14eの高さを
図25よりも高く形成し、打ち抜き加工を行うことによって、
図28(B)に示すように端面14fとフランジ部18cとが同一高さとなるプレス成形品を成形することもできる。さらに
図27に示す底壁14eがフランジ部18cよりも高く形成されたブランク材Bを打ち抜くことによって、
図28(C)に示すように端面14fがフランジ部18cよりも高く形成されたプレス成形品を成形することもできる。
【0116】
上述した実施の形態4は以下の効果を奏する。
【0117】
第2絞り成形工程においてダイ27bの高さを調整することによって底壁14eとフランジ部18cの高さが異なるプレス成形品を成形することができる。
【0118】
このように実施の形態4に係るプレス成形品を用いることによって、軸方向に高さの異なる底壁が形成された部品にもスペーサー等を用いることなく取り付けが可能になる。上述のように底壁14eとフランジ部18cの高さを調整できることによって設計の自由度が向上し、別部品を溶接しなくても底壁の高さが異なる環状リブを有するプレス成形品を成形できることによってコスト低減にも寄与することができる。
【0119】
また、プレス成形品の底壁14eの部分を打ち抜くことによって、相手部品を挿通させて取付けるようなプレス成形品であっても本実施形態に係る方法により成形が可能となり、設計の自由度をさらに向上させることができる。
【0120】
(実施の形態5)
図29は実施の形態5に係るプレス成形品を示す断面図、
図30〜
図33は実施の形態5に係るプレス成形品の製造方法の説明に供する断面図である。実施の形態1〜4では環状のリブ10の径方向外側に
図2に示すフランジ部18a、18bを有するプレス成形品について説明した。しかしながら、本実施形態に係る方法によって
図29に示すようなフランジ部を有さないプレス成形品を成形することも可能である。
【0121】
(第2絞り成形工程)
本実施形態では、
図30に示すように、既に絞り成形が行われて第1側壁11fが成形され、第1側壁11fよりも径方向外側にフランジ部を有さないブランク材Bを用意する。第1側壁11fを成形する工程は実施の形態1における第1絞り成形工程と同様であるため説明を省略する。また、フランジ部をトリムするトリミング加工は公知に属するため、ここでは説明を省略し、第2絞り成形工程から説明を行うこととする。
【0122】
第2絞り成形工程のプレス部20Bを構成するダイ27bは、
図30に示すように第1側壁11fの内径と同程度の外径の凸部を有する。また、ブランクホルダ24は絞り成形を行った際に第1側壁11fが外側に変形することを防止するために、第1側壁11fの外径と同程度の内径を有するように形成されている。
【0123】
このようにダイ27b及びブランクホルダ24が構成されることによって、プレス成形品にフランジ部が形成されなくてもブランク材Bを固定した状態で絞り成形を行うことができる。
【0124】
第2絞り成形工程では、
図30に示すようにダイ27b及びブランクホルダ24によってブランク材Bを固定し、パンチ26bをダイ27bに向けて下降させ、絞り成形を行う。これによって、
図31に示すようにブランク材Bに第2側壁12f及びU字状連結部13fが形成される。
【0125】
(密着工程)
密着工程におけるプレス部20Cを構成するダイ29は、
図32に示すように第1側壁11fの内径と同程度の凸部を有し、ブランクホルダ24は第1側壁11fの外径と同程度の内径を有するように形成されている。
【0126】
このような状態でダイ29にブランク材Bが載置されると、ブランクホルダ24が下降してブランク材Bを固定する。そしてパンチ26cが実施の形態1と同様にU字状連結部13fにおける第2側壁側の円弧状板部を押しながら絞り成形を行うことによって、
図32に示すように第2側壁12fが第1側壁11fに近接乃至密着する。
【0127】
(仕上げ工程)
仕上げ工程では、
図33に示すようにブランク材Bをブランクホルダ24及びダイ29によって固定した状態で、環状リブ10の先端部分及び根元部分の曲率半径をパンチ26dによって密着工程時よりも小さい曲率半径に成形する。
【0128】
上述した実施の形態5は以下の効果を奏する。
【0129】
フランジ部のないブランク材Bをダイホルダ24及びダイ29によって固定した状態で第2絞り成形工程において第2側壁12f及びU字状連結部13fを成形する。
【0130】
そして、密着工程において第2側壁12fを第1側壁11fに近接乃至密着させ、仕上げ工程を行うことによって、フランジ部を有さないプレス成形品を鋳造や鍛造によらずに成形することができる。このように本実施形態に係る方法によってフランジ部のないプレス成形品を製造できることによって設計の自由度をさらに向上させることができる。
【0131】
(実施の形態6)
図34は実施の形態6に係るプレス成形品を示す断面図、
図35〜
図39は実施の形態6に係るプレス成形品の製造方法の説明に供する断面図、
図40は実施の形態6に係るプレス成形品の変形例を示す断面図である。実施の形態1〜5では、
図8に示すように密着工程においてプレス成形品における径方向内側からパンチ26cをU字状連結部13の第2側壁側の部位に当接させて絞り成形を行った。しかしながら、
図34に示すように側壁を3枚以上積層して環状リブを形成する場合、径方向外側からパンチを当接させて密着工程を行うことも可能である。
【0132】
本実施形態においては、
図34に示すように第1側壁11g、第2側壁12gに加えて第1側壁11gの径方向外側に第3側壁19を形成し、第1側壁11g、第2側壁12g、及び第3側壁19からなる環状リブ10gを成形する。第1側壁11g及び第2側壁12gまでの成形方法は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。また、第3側壁19を形成する工程を第3絞り成形工程と称する。
【0133】
(第3絞り成形工程)
第3絞り成形工程におけるプレス部20Eを構成するパンチ26eは、
図35に示すように第1側壁11gの径方向外側に第3側壁19を形成できるように凹部を有する。パンチ26eの凹部の径は、上述のように絞り成形を行う際にブランク材Bに破断が生じないように、180度曲げ保証値隙間である2tと新たに形成される第3側壁19の板厚とを加えた3t以上第1側壁11gの外径から離間している。
【0134】
ダイ29は第2側壁12gの内径と同程度の外径の凸部を有し、凸部の高さはブランク材Bの高さと同程度となるように構成されている。
【0135】
第3絞り成形工程では、ブランク材Bを
図35に示すようにダイ29に載置して固定し、パンチ26eを下降させ、絞り成形を行う。これによって第1側壁11gよりも外側には
図36に示すように第3側壁19及びU字状連結部13gが形成される。
【0136】
(密着工程)
密着工程におけるプレス部20Cを構成するダイ29は、
図37に示すように、ブランク材Bを固定できるように第2側壁12gと同程度の内径を有する凸部を有する。凸部の高さは実施の形態5と同様にブランク材Bの高さと同程度に形成されている。また、パンチ26cは、
図38に示すように、第3側壁19を第1側壁11gに密着できるように第1側壁11gの外径にブランク材Bの板厚を加えた程度の内径の凹部を有する。
【0137】
第3側壁19を第1側壁11g及び第2側壁12gに近接乃至密着させる場合、本密着工程では第1側壁11g及び第2側壁12gを第3側壁19に近接させるのではなく、第3側壁19を第1側壁11g及び第2側壁12gに近接させるように絞り成形を行う。
【0138】
実施の形態1では、第1側壁11よりも第2側壁12の方が板厚が薄く形成されることによって、
図8に示すU字状連結部13よりも内側である第2側壁側の部位Pcに応力が集中すると説明した。
【0139】
これに対し、本実施形態において密着工程時には第1側壁11gと第2側壁12gとが既に密着しており、第1側壁11gと第2側壁12gとは一体化されているものと考えることができる。第1側壁11gと第2側壁12gとが一体化されたものと第3側壁19の板厚を比較すれば第3側壁19の板厚の方が薄い。そのため、第1側壁11g及び第2側壁12gを第3側壁19に近接させようとすると、U字状連結部13gにおける第3側壁19側の部位Pcが相対的に薄く形成されているため、部位Pcに応力が集中して破断してしまうおそれがある。
【0140】
そこで、本実施形態では
図37に示すように、パンチ26cの先端肩部R2をU字状連結部13gの中でも応力が集中する第3側壁側の部位Pcに当接させる。そしてパンチ26cを下降させて絞り成形を行い、
図38に示すように第3側壁19を第1側壁11gに密着させることによって環状リブ10gを成形する。
【0141】
(仕上げ工程)
仕上げ工程では、
図39に示すようにブランク材Bをダイ29により固定した状態で、上記実施の形態と同様に環状リブ10gの先端部分及び根元部分の曲率半径をパンチ26dによって密着工程時よりも小さく成形する。
【0142】
なお、本実施形態に係る側壁が3枚以上積層されたプレス成形品に、
図40に示すように、実施の形態4において説明した打ち抜き加工を図中下方から上方に向けて行ってもよい。また、環状リブ10gにおける側壁の積層枚数は3枚でなくてもよい。
【0143】
上述した実施の形態6は以下の効果を奏する。
【0144】
第1側壁11gの径方向外側に第3側壁19を形成し、U字状連結部13gにおける第3側壁19側の部位Pcに径方向外側からパンチ26cを当接させ、絞り成形を行う。これによって新たに成形された第3側壁19に亀裂を生じさせることなく、側壁を3枚以上積層させて環状リブ10gを形成することができる。このように本実施形態に係る製造方法を用いれば、ブランク材の板厚より十分に大きい厚さのリブを有するプレス成形品であっても製造することができ、他の部品を溶接等する必要がない分、コスト低減に寄与することができる。
【0145】
また、3枚以上の側壁からなるプレス成形品についても実施の形態4と同様に底壁部分を打ち抜けることによって、本実施形態に係る製造方法の適用範囲を拡大でき、部品の軽量化、コスト低減に寄与することができる。
【0146】
なお、実施の形態1から6に係る製造方法は、回転体形状の部品に利用する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、回転体形状でない部品に環状のリブを成形することも可能である。また、多角形状、直線状、円弧状など、環状ではないリブを成形する際にも、本発明を適用することができる。