特許第5974561号(P5974561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974561光学式センサおよび感度調整制御のための設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974561
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】光学式センサおよび感度調整制御のための設定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20160809BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G01B11/00 H
   G01C3/06 110A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-58349(P2012-58349)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-190378(P2013-190378A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 展玄
(72)【発明者】
【氏名】山川 健太
(72)【発明者】
【氏名】一柳 星文
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−005621(JP,A)
【文献】 特開2011−215036(JP,A)
【文献】 特開2012−032305(JP,A)
【文献】 特開2009−047567(JP,A)
【文献】 特開2010−048578(JP,A)
【文献】 米国特許第05644141(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01C 3/00−3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を投光する投光部と、複数の光電変換素子配列され、受光に伴う電荷を所定時間蓄積してから出力する構成の受光部とが、前記投光部からの光に対する検出対象物からの反射光を前記受光部に入射させることが可能な関係をもって配置され、前記投光部と前記受光部とをタイミングを合わせて動作させると共に、毎時生成される受光量の分布データに基づき前記投光部および前記受光部の感度を調整し、調整後の受光量の分布データを解析してその解析結果を示す信号を外部に出力する制御部を具備する光学式センサにおいて、
前記制御部は、
前記検出対象物への投光が開始されてから前記解析結果を示す信号が出力されるまでの応答時間として許容される時間の長さと、投光および受光ならびに感度の調整処理を含む測定処理の周期の長さとに基づき、前記応答時間内に実行可能な感度調整の最大回数を求める演算手段と、
前記演算手段により求めた最大回数と1回の感度調整処理により調整される受光量に生じる変化の度合いの最大値とにより定まる最大のダイナミックレンジを超えない範囲で感度調整を行うことを条件に、投光および受光に適用される露光時間、前記投光部による投光強度、および前記受光部における受光量の増幅率の各感度パラメータの調整範囲の幅の組み合わせを設定する設定手段とを具備する、光学式センサ。
【請求項2】
前記設定手段は、前記各感度パラメータの調整範囲の大きさを乗算した値が前記最大のダイナミックレンジ以内になるように前記調整範囲の幅の組み合わせを設定すると共に、前記検出対象物から受光する反射光の強さに応じて、少なくとも1つの感度パラメータにつき設定された調整範囲の幅に基づき、その感度パラメータの調整範囲を対応づける数値範囲を調整する、請求項1に記載された光学式センサ。
【請求項3】
前記設定手段は、前記露光時間の調整範囲の最小値および最大値を前記検出対象物から受光する前記反射光の強さに応じて変動させる、請求項2に記載された光学式センサ。
【請求項4】
前記制御部は、
投光および受光を、少なくとも前記受光量の分布データがあらかじめ定めた基準を満たす状態になるまで前記露光時間を変更しながら繰り返し実行し、この処理における露光時間の設定結果に基づき前記演算手段が使用する測定処理の周期の長さを導出する測定周期導出手段を、さらに具備する請求項1〜3のいずれかに記載された光学式センサ。
【請求項5】
前記応答時間として許容される時間の長さを入力するための入力手段を、さらに具備する、請求項1〜4のいずれかに記載された光学式センサ。
【請求項6】
光を投光する投光部と、複数の光電変換素子配列され、受光に伴う電荷を所定時間蓄積してから出力する構成の受光部とが、前記投光部からの光に対する検出対象物からの反射光を前記受光部に入射させることが可能な関係をもって配置され、前記投光部と前記受光部とをタイミングを合わせて動作させると共に、毎時生成される受光量の分布データに基づき前記投光部および前記受光部の感度を調整し、調整後の受光量の分布データを解析してその解析結果を示す信号を外部に出力する制御部を具備する光学式センサに対して実施される設定の方法であって、
前記検出対象物への投光が開始されてから前記解析結果を示す信号が出力されるまでの応答時間として許容される時間の長さと、投光および受光ならびに感度の調整処理を含む測定処理の周期の長さとに基づき、前記応答時間内に実行可能な感度調整の最大回数を求めるステップと、
当該最大回数と1回の感度調整処理により調整される受光量に生じる変化の度合いの最大値とに基づき前記応答時間内における最大のダイナミックレンジを導出するステップと、前記最大のダイナミックレンジを超えない範囲で感度調整を行うことを条件に、投光および受光に適用される露光時間、前記投光部による投光強度、および前記受光部における受光量の増幅率の各感度パラメータの調整範囲の幅の組み合わせを決定するステップと、
前記各感度パラメータの決定された調整範囲の幅の組み合わせを前記光学式センサの制御部に設定するステップとを、実行する、光学式センサでの感度調整制御のための設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を投光してその光に対する検出対象物からの反射光を受光し、受光の状態に基づいて物体を検出する光学式センサに関する。特に、本発明は、CCDやCMOSなどの電荷蓄積型の受光部を使用して、1次元または2次元の受光量の分布データを生成し、この分布データを解析してその解析結果を示す信号を外部に出力するタイプの光学式センサを対象に、感度を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷蓄積型の受光部が導入された光学式センサとして、物体までの距離を計測するセンサや、あらかじめ定めた基準位置に物体があるか否かを検出する反射型のセンサがある。これらのセンサでは、投光部から投光された光に対する検出対象物からの反射光を受光部により受光し、受光器により生成された受光量分布のピークの位置を抽出する方法により検出を行っている(たとえば特許文献1を参照。)。
【0003】
この種の光学式センサでは、露光時間(受光量の分布データが生成される期間の長さ)などの感度パラメータを調整することにより、受光量のピークを最適な値に調整することができる。たとえば、前出の特許文献1の段落0021には、毎回の測定周期における受光量を最適な値と比較し、受光量が最適値より大きい場合には投光期間をより短くし、受光量が最適値より小さい場合には、投光期間をより長くすることが記載されている。
【0004】
このような調整により、電荷蓄積型の受光部を有する光学式センサでは、電荷を蓄積しないタイプの受光器(単一のフォトダイオードなど)を用いたセンサよりも受光量のダイナミックレンジを広くすることができる。この特性を利用して、受光した反射光の強度に応じて露光時間を調整することにより、反射率が異なる様々な物体を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−58195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感度を調整するには、電荷の蓄積期間が終了した後の受光量の分布データを分析する必要があるので、調整に時間がかかり、応答時間(物体への投光が開始されてから検出結果が出力されるまでの時間をいう。)が長くなる傾向がある。特に、コンベアなどで搬送されるワークを順に検出する目的でセンサが用いられる場合には、応答時間が長くなると、ワークの間の距離を長めに設定したり、搬送の速度を遅くしたりする必要が生じ、生産性を向上するのが困難になる。
【0007】
同一種のワークのみを検出対象とする場合には、あらかじめ、モデルのワークを用いた感度調整処理を行い、その結果に基づき感度を固定することができるが、ダイナミックレンジを広くできる受光部を持つセンサをそのような設定で使用することは、あまり考えられない。反射率の異なる複数種のワークを検出したり、ワークからの反射光と他の箇所(コンベアの搬送面など)からの反射光とを見分けるには、感度の調整をしながら測定を繰り返す動作モードを選択する必要がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に着目し、要求される応答時間を守りながらダイナミックレンジを可能な限り広く設定できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光を投光する投光部と、複数の光電変換素子の配列により受光に伴う電荷を所定時間蓄積してから出力する構成の受光部とが、投光部からの光に対する検出対象物からの反射光を受光部に入射させることが可能な関係をもって配置され、投光部と受光部とをタイミングを合わせて動作させると共に、毎時生成される受光量の分布データに基づき受光素子の持つダイナミックレンジを超えない範囲で投光部および受光部の感度を調整し、調整後の受光量の分布データを解析してその解析結果を示す信号を外部に出力する検出部とを具備する。
【0010】
本発明による光学式センサの制御部は、検出対象物への投光が開始されてから解析結果を示す信号が出力されるまでの応答時間として許容される時間の長さと、投光および受光ならびに感度の調整処理を含む測定処理の周期の長さとに基づき、応答時間内に実行可能な感度調整の最大回数を求める演算手段と、演算手段により求めた最大回数と1回の感度調整処理により調整される受光量に生じる変化の度合いの最大値とにより定まる最大のダイナミックレンジを超えない範囲で感度調整を行うことを条件に、投光および受光に適用される露光時間、投光部による投光強度、および受光部における受光量の増幅率の各感度パラメータの調整範囲の幅の組み合わせを設定する設定手段とを具備する。
【0011】
上記の構成によれば、応答時間として許容される時間を超えない範囲で実現可能な最大のダイナミックレンジを求め、その最大のダイナミックレンジを超えることがない範囲で感度調整のパラメータの値を変動させることができる。
【0012】
上記光学式センサの第1の実施形態では、設定手段は、各感度パラメータの調整範囲の大きさを乗算した値が最大のダイナミックレンジ以内になるように各調整範囲の幅の組み合わせを設定すると共に、検出対象物から受光する反射光の強さに応じて、少なくとも1つの感度パラメータにつき設定された調整範囲の幅に基づき、その感度パラメータの調整範囲を対応づける数値範囲を調整する。このようにすれば、ダイナミックレンジの幅を維持しつつ、検出対象物からの反射光の強度に応じた感度調整を行うことができる。
【0013】
上記光学式センサの第2の実施形態では、設定手段は、露光時間の調整範囲の最小値および最大値を検出対象物から受光する反射光の強さに応じて変動させる。このようにすれば、反射率が高い物体、反射率が低い物体のいずれに対しても、同じ長さの調整範囲をもって露光時間を調整することができるので、受光量を解析に適した強度に調整することが容易になる。
【0014】
上記光学式センサの第3の実施形態では、制御部は、投光および受光を、少なくとも受光量の分布データがあらかじめ定めた基準を満たす状態になるまで露光時間を変更しながら繰り返し実行し、この処理における露光時間の設定結果に基づき演算手段が使用する測定処理の周期の長さを設定する測定周期導出手段をさらに具備する。この構成によれば、たとえば主要な検出対象物のモデルを検出対象位置に置いて投光および受光ならびに感度の調整処理を繰り返すことにより、この検出対象物の検出に適した露光時間を割り出し、この露光時間を満たす最小の測定周期を導出することができる。よって、測定周期を可能な限り短くし、これにより応答時間内に実行可能な測定処理の回数を高め、もって最大のダイナミックレンジの値を大きくすることが可能になる。
【0015】
上記光学式センサの第4の実施形態は、応答時間として許容される時間の長さを入力するための入力手段をさらに具備する。この構成によれば、現場の実情に応じた応答時間の長さを入力することにより、その応答時間を満たす範囲でダイナミックレンジが最大になるように、各感度パラメータの調整範囲を定めることが可能になる。
入力手段は、たとえば、センサに設けられた操作部に対する入力操作を受け付ける手段として構成することができる。また、外部の機器より応答時間の長さを示す数値データの送信を受け付ける手段として構成することもできる。
【0016】
上記に対し、入力手段を設けずに、標準的な応答時間に基づく最大ダイナミックレンジの下で各感度パラメータの調整範囲が設定される場合もある、
【0017】
さらに本発明は、光を投光する投光部と、複数の光電変換素子の配列により受光に伴う電荷を所定時間蓄積してから出力する構成の受光部とが、投光部からの光に対する検出対象物からの反射光を受光部に入射させることが可能な関係をもって配置され、投光部と受光部とをタイミングを合わせて動作させると共に、毎時生成される受光量の分布データに基づき受光素子の持つダイナミックレンジを超えない範囲で投光部および受光部の感度を調整し、調整後の受光量の分布データを解析してその解析結果を示す信号を外部に出力する制御部とを具備する光学式センサに対し、感度調整制御のための設定を行う方法を提供する。この方法では、検出対象物への投光が開始されてから解析結果を示す信号が出力されるまでの応答時間として許容される時間の長さと、投光および受光ならびに感度の調整処理を含む測定処理の周期の長さとに基づき、応答時間内に実行可能な感度調整の最大回数を求めるステップと、当該最大回数と1回の感度調整処理により調整される受光量に生じる変化の度合いの最大値とに基づき応答時間内における最大のダイナミックレンジを導出するステップと、最大のダイナミックレンジを超えない範囲で感度調整を行うことを条件に、投光および受光に適用される露光時間、投光部による投光強度、および受光部における受光量の増幅率の各感度パラメータの調整範囲の幅の組み合わせを決定するステップと、各感度パラメータの決定された調整範囲の幅の組み合わせを光学式センサの制御部に設定するステップとを、実行する。
【0018】
上記の各ステップは、光学式センサ内で順に実行してもよいが、感度調整のためのパラメータの調整範囲の幅の組み合わせを決定するステップまでの各ステップをセンサの外で実行した後に、決定された調整範囲の幅の組み合わせを示すデータを光学式センサに送信することにより、センサの制御部に当該調整範囲を設定することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1つの検出対象物あたりの応答時間として要求される時間を守りながら、その応答時間内に実現可能な最大のダイナミックレンジになるまでの範囲で感度を調整することが可能になる。これにより安定した処理を行いながら、反射率が異なる様々な物体に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光学式センサの電気構成を示すブロック図である。
図2】上記の光学式センサにおける検出の原理を示す図である。
図3】上記の光学式センサで実行される検出処理の概略手順を示すフローチャートである。
図4】感度調整処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
図5】センサとワークとの関係(上段)と、毎回の検出処理において生成される受光量分布データの変化(中段)と、センサからの検出信号(下段)とを対応づけて示した図である。
図6】感度パラメータの調整範囲の設定用のテーブルの構成例を示す図である。
図7】ワークからの反射光量と感度調整によるダイナミックレンジが適用される範囲との関係を示す図である。
図8】感度パラメータの調整範囲を設定する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明が適用される光学式センサの電気構成を示す。
この実施例のセンサ1は、発光素子(レーザダイオード)11を含む投光部や、複数の光電変換素子(フォトダイオード)が一次元に配列された構成の撮像素子(CMOS)を含む受光部102を有する。投光部101には、発光素子11のほか、投光制御回路13が含まれる。受光部102には、撮像素子12のほか、この撮像素子12により生成された画像信号を処理するための信号処理回路14やA/D変換回路15が設けられる。
【0022】
このほか、センサ1には、CPU10,メモリ16,表示部17,操作部18,入出力インタフェース19などが設けられる。投光部101および受光部102、ならびにCPU10は、図2に示すセンサヘッド100に収容され、その他の構成は、「アンプ部」と呼ばれる補助筐体(図示せず。)に設けられる。ただし、センサの構成はこれに限らず、全ての構成を1つの筐体内に収容することも可能である。
【0023】
CPU10は、メモリ16に格納されたプログラムに基づき検出処理や感度調整に関わる制御を実行する。検出結果は、表示部17に表示されるほか、入出力インタフェース19を介して外部に出力される。操作部18は、検出処理に先立つ種々の設定を行う場合に用いられる。
【0024】
図2は、センサヘッド100の構成および検出動作の原理を模式的に示す。
センサヘッド100は、発光素子11の光軸をワークWの経路Lの検出対象位置に合わせた状態にして配備される。
発光素子11から出射されたレーザ光は、投光レンズ111を介して出射された後に検出対象の物体で反射し、受光用レンズ122を介して撮像素子12に入射する。撮像素子12では、電荷蓄積処理によって、反射光の入射位置に対応する箇所をピークとする一次元の受光量分布データを生成する。受光量分布データ中のピークの位置は、検査対象エリアの物体からセンサヘッド100までの距離によって変動する。
【0025】
上記の原理に基づき、この実施例のセンサ1の検出処理では、投光動作および受光動作を繰り返しながら、毎回の受光量分布中の最大ピークを検出し、その重心の座標をあらかじめ登録された基準位置と照合することによりワークWが検出対象位置にあるか否かを判定する。また検出の精度を確保するには、受光量分布中の最大ピークを、十分に大きく、鋭い形状にする必要があるので、最大ピークの受光量(以下、「最大受光量」という。)があらかじめ定めた目標値に近似する状態になるまで感度を調整した後に、重心の座標の算出や判定処理を行い、判定結果を出力するようにしている。
【0026】
図3は、上記センサ1のCPU10が実行する処理サイクルの概略手順を示す。
この処理は、電源投入後、各種設定データの読み込みが終了した後に開始され、繰り返し実行される。まず投光および受光を実行し(ステップS1)、撮像素子12が生成した受光量分布データから最大ピークを検出する(ステップS2)。さらにステップS3では、この最大ピークを用いて感度調整処理を実行する。
【0027】
つぎに最大ピークの受光量(最大受光量)を、計測に適した値としてあらかじめ定めた目標値(ユーザではなく、センサの製造者により出荷前に定められたもの)と比較する。ここで、最大受光量と目標値との差が所定の許容値以内であれば、最大受光量は目標値に近似すると判定し(ステップS4が「YES」)、最大ピークの重心gの座標を算出する演算(ステップS5)を実行し、さらにこの重心gと基準位置gsとの差をしきい値と比較する(ステップS6)。両者の差がしきい値以下であれば(ステップS6が「YES」)、検出信号をオン状態(物体ありを示す状態)に設定する(ステップS7)。
【0028】
重心gと基準位置gsとの差がしきい値を上回る場合(ステップS6が「NO」)や、最大受光量と目標値との差が許容値を上回った場合(ステップS4が「NO」)には、検出信号をオフ状態(物体なしを示す状態)に設定する(ステップS8)。
【0029】
つぎに、上記ステップS3の感度調整処理について、詳細に説明する。
感度調整処理では、主として、露光時間(一般には受光期間の長さであるが、投光期間と受光期間とが異なる場合には、両期間が重複する範囲の長さとする。)を調整するが、露光時間の調整範囲を超える調整になる場合には、投光部101から投光されるレーザ光の強度(以下、「投光パワー」という。)や、受光部102内のアンプにおける増幅率(以下、「受光ゲイン」という。)を調整する。
【0030】
図4を参照して、具体的な手順を説明する。
まず、受光量が強すぎるために受光量分布中の最大ピークが飽和した場合(ステップS101が「YES」)には、前回の露光時間を1/10倍した時間を次の露光時間として仮設定する(ステップS103)。一方、あらかじめ認識レベルとして定めた最小限の受光量が得られなかった場合(ステップS102が「NO」)には、前回の露光時間を10倍した値を次の露光時間として仮設定する(ステップS104)。
【0031】
最大ピークの受光量(最大受光量)が認識レベル以上で飽和レベルより低い場合(ステップS101が「NO」でステップS102が「YES」)には、当該最大受光量に対する目標値の倍率(目標値/最大受光量)を前回の露光時間に乗算する演算を行い、算出された値を次の露光時間として仮設定する(ステップS105)。よって、最大受光量が目標値より低い場合には露光時間が引き上げられ、最大受光量が目標値より高い場合には露光時間が引き下げられる。
【0032】
ステップS103,104,105のいずれかにおいて仮設定された露光時間があらかじめ定めた最小値と最大値との間の範囲に入る場合(ステップS106およびステップS107が「YES」)には、この露光時間が確定され、処理終了となる。
【0033】
一方、仮設定の露光時間が最小値より短い場合(ステップS106が「YES」でステップS107が「NO」)や、最大値より長い場合(ステップS106が「NO」)には露光時間を調整可能な範囲に含めるために投光パワーや受光ゲインを調整する。
この実施例では、これらの感度パラメータを、2倍または1/2倍の単位で増減する。
【0034】
受光量が高いために仮設定の露光時間が最小値より短くなった場合(ステップS107が「NO」)には、受光ゲインを優先して調整する。具体的には、受光ゲインが最小レベルでなければ(ステップS108が「NO」)、受光ゲインを1/2倍に設定すると共に、露光時間を2倍に設定する(ステップS110)。受光ゲインが最小レベルである場合(ステップS108が「YES」)には、投光パワーが最小レベルでないことを条件として(ステップS109が「NO」)、投光パワーを1/2倍に設定すると共に、露光時間を2倍に設定する(ステップS111)。
【0035】
仮設定の露光時間が最小値より短く、受光ゲインおよび投光パワーがともに最小レベルである場合(ステップS107が「NO」でステップS108およびS109が「YES」)には、受光ゲインや投光パワーによる調整は不可能であるので、次の露光時間を最小値に設定する処理(ステップS112)によって対応する。
【0036】
受光量が低いために仮設定の露光時間が最大値より大きくなった場合(ステップS106が「NO」)には、投光パワーを優先的に調整する。具体的には、投光パワーが最大レベルでなければ(ステップS113が「NO」)には、投光パワーを2倍にすると共に露光時間を1/2倍に設定する(ステップS115)。投光パワーが最大レベルに達している場合(ステップS113が「YES」)には、受光ゲインが最大レベルに達していないことを条件として(ステップS114が「NO」)、受光ゲインを2倍に設定すると共に、露光時間を1/2倍に設定する。
【0037】
仮設定の露光時間が最大値より大きく、受光ゲイン、投光パワーが共に最大レベルとなる場合(ステップS106が「NO」でステップS113,S114が「YES」)には、受光ゲインや投光パワーによる調整は不可能であるので、次の露光時間を最大値に設定する処理(ステップS117)によって対応する。
【0038】
図2の事例によれば、ワークWが検出対象エリアにない場合には、ワークWの搬送路L(たとえばコンベア)の上面にレーザ光が照射されるため、搬送路Lからの反射光に応じて感度の調整が行われる。このため、ワークWが検出対象エリアに入った当初は、受光部102に入射する光量が大きく変化するので、最大受光量を目標値またはこれに近似する値(以下、目標値のほか、近似する値も含めて「目標値」という。)にするには、数回の感度調整処理が必要になる場合がある。
【0039】
図5は、センサ1とワークWとの関係(上段)と、毎回の検出処理において生成される受光量分布データの変化(中段)と、センサ1からの検出信号(下段)とを対応づけて示したものである。中段の受光量分布データは、撮像素子12の画素配列上の位置を横軸とし、受光量を縦軸に設定したグラフとして示されている。
【0040】
図5の上段の(A)は、ワークWが検出対象エリアに到達していない状態を示し、(B)はワークWが検出対象エリアに入った状態を示す。
(A)の状態における受光量分布データ(a)によると、ワークWの搬送用コンベアは反射率がきわめて低いため、受光部102には殆ど反射光が入射しない。この場合、図4の手順によれば、図4のステップS104の処理(露光時間を10倍する。)によって露光時間が引き上げられ、場合によっては受光ゲインや投光パワーも引き上げられて、高感度状態に設定される可能性がある。この結果、ワークWが検出対象エリアに入った当初の受光量データ(b)では、最大ピークが飽和する状態になる。
【0041】
このように飽和が生じると、図4のステップS103の処理(露光時間を1/10倍する。)が実行されることになる。図5の例では、この処理を2回実行することにより(図5の(c)(d))、最大ピークは飽和しない状態となる。しかし、2回目の調整で最大ピークが過度に引き下げられ、目標値を大きく下回る(図5の(d))ので、つぎのサイクルでは、受光量データ(d)の最大受光量に対する目標値の倍率p(p=目標値/最大受光量)により露光時間が調整される。この結果、図5(e)に示すように、最大受光量は目標値に調整される。
【0042】
最大受光量が目標値に達すると、演算処理(図3のステップS5,S6,S7を含む。)が実行され、検出信号がオフ状態からオン状態に切り替えられる。この後も、ワークWにレーザ光が照射されている間は最大受光量は目標値付近で維持される(図5の(f)(g)(h))ので、同様の演算処理によりオン状態の出力が維持される。
【0043】
以下、図5の下段に示すように、検出対象エリアに入ったワークWに初めて光が照射されてから上記のオン状態の検出信号が出力されるまでにかかる時間を、センサ1の応答時間と定義する。応答時間には、最大受光量が目標値に調整されるまでの感度調整に要する時間と演算処理に要する時間とが含まれる。
【0044】
この実施例では、露光時間、投光パワー、受光ゲインという3種類の感度パラメータの調整により受光量のダイナミックレンジを広く設定することができるが、ワークWが検出対象位置にない場合の調整の倍率を大きくしすぎると、ワークWが検出対象位置に達した後の受光量を目標値に調整するまでに何回もの感度調整が必要になり、応答時間が長くなってしまう。応答時間には、ワークWの搬送速度や各ワーク間の間隔、不良のワークが検出された場合の処理など、現場の生産の実情に応じた限界がある。生産の効率を低下させないためには、この許容時間を守る必要がある。
【0045】
そこで、この実施例では、ユーザから応答時間として許容できる時間長さを示すデータの入力を受け付け、その許容時間を守ることができる範囲で最大の感度調整をすることができるように、各感度パラメータの調整範囲を定める。
【0046】
この調整範囲を決定するための方法を説明する。
まず、定められた応答時間を守るには、その応答時間内に最大受光量を目標値に調整して、演算処理(最大ピークの重心の検出および判定処理を含む。)を実行する必要がある。最大受光量が目標値になるまでは、投光および受光と、受光量信号の処理(増幅、A/D変換、最大ピークの検出を含む。)と、感度調整処理とが繰り返し実行される。以下、これらの処理が一巡する期間の周期を「測定周期」という。
【0047】
応答時間を守るには、応答時間から判定出力のための演算の時間を差し引いた時間内に、感度の調整を終える(最大受光量を目標値に調整する)必要がある。また、測定周期のサイクルの途中でワークWが検出エリアに入ってくる可能性があるので、少なくとも1周期分の余裕時間が必要である。
【0048】
したがって、応答時間内に実行可能な感度調整の最大回数(以下、「感度調整最大回数」という。)は、以下の式により導出されると考えられる。
感度調整最大回数={(応答時間−演算時間)/測定周期}−1 ・・・(1)
以下、この(1)式により求められる感度調整最大回数をNとする。
【0049】
つぎに、図4に示した感度調整処理によれば、1回の感度調整処理により変化する受光量の倍率は、最大で10倍となる。仮に、N回の感度調整の全てにこの最大倍率が適用されたとすると、それらの処理を経た受光量は10倍となる。これが応答時間内に認められる感度調整により実現する最大のダイナミックレンジであると考えられる。
【0050】
実際のダイナミックレンジは、露光時間、投光パワー、受光ゲインによる調整を、それぞれに設定された最大の調整幅で実行した場合に得られるものになる。
すなわち、露光時間によるダイナミックレンジをDR1、投光パワーによるダイナミックレンジをDR2、受光ゲインによるダイナミックレンジをDR3とすると、これらの値を乗算した値DR(DR=DR1×DR2×DR3)が現実に実現するダイナミックレンジとなる。
【0051】
したがって、 DR=DR1×DR2×DR3≦10 ・・・(2)
という関係を満たすことを条件に、DRが最大になるように、DR1,DR2,DR3の値を定め、それに基づき各感度パラメータの調整範囲を設定すれば、応答時間内に認められる回数分の感度調整によるダイナミックレンジを最大にすることができる。よって、感度調整の自由度が確保され、応答時間内に感度調整を完了できる確率を高めることができる。
【0052】
上記の考察に基づき、この実施例では、複数とおりの応答時間と測定周期との組み合わせについて、上記(2)式による条件を満足する範囲で最大のダイナミックレンジを得るための感度パラメータの調整範囲を定めた設定テーブルを作成し、これをメモリ16に登録している。
【0053】
図6は、この設定テーブルの例を示す。
測定周期は露光時間によって変動する。検出対象物の反射率が低くなるほど露光時間を長くする必要があり、応答時間も長めになると予想される。これを考慮して、図6(1)(2)に示す設定テーブルT,Tでは、1ms,10ms,50msの3通りの応答時間にそれぞれ200μs,1500μs,5000μsの測定周期を対応づけ、さらにこれらの組み合わせから導出される感度調整最大回数Nに基づく最大ダイナミックレンジ10(10は1回の調整で受光量に課される最大の倍率)を対応づけている。さらに各組み合わせには、露光時間、投光パワー、受光ゲインの各感度パラメータの調整範囲と、これらの調整範囲により実現するダイナミックレンジとが対応づけられている。
【0054】
各感度パラメータの調整範囲は、先の(2)式や図4に示した感度調整処理のルールに基づき、それぞれの調整範囲によるダイナミックレンジDRが最大ダイナミックレンジ10を超えない範囲で最大になるように設定されたものである。
たとえば、図6の例では、感度が調整された後の演算時間を200μsとして、感度調整最大回数Nを割り出しているので、応答時間が1msで測定周期が200μsのときの最大ダイナミックレンジは、10=1000倍となる。これを受けて、図6(1)のテーブルTでは、1msの応答時間に対し、露光時間のダイナミックレンジDR1を100倍とし、投光パワーのダイナミックレンジDR2を2倍とし、受光ゲインのダイナミックレンジDR3を4倍とすることにより、実際のダイナミックレンジDRを800倍としている。
【0055】
また、各感度パラメータの調整範囲は、(2)式の関係を満たす範囲で様々に変更することができる。図6(2)の設定テーブルTでは、応答時間と測定周期との組み合わせは図6(1)の設定テーブルTと同じであり、各感度パラメータにより実現するダイナミックレンジも設定テーブルTによる値と同値であるが、各感度パラメータの調整範囲の設定は設定テーブルTとは異なる内容になっている。
【0056】
具体的には、露光時間に関しては、調整範囲の幅長さ(ダイナミックレンジDR1)には差異がないが、設定テーブルTにおける露光時間の最小値および最大値は設定テーブルTによる値の1/10になっている。投光パワーに関しては、設定テーブルTによる調整範囲(ダイナミックレンジDR2)は設定テーブルTによる範囲より広くなっているが、調整範囲の最小値の倍率は設定テーブルTによる倍率の1/4になっている。受光ゲインに関しては、設定テーブルTでは、調整可能な倍率の最大値が設定テーブルTによる倍率より低いため、調整範囲(ダイナミックレンジDR3)も設定テーブルTより狭くなっている。
【0057】
先に説明したように、感度の調整処理では、主として露光時間を調整する。図6の設定テーブルTによる設定では露光時間が長くなるので、反射光量が低いワークを対象とする場合に適した設定となる。これに対し、設定テーブルTでは、露光時間を短くすることができるので、反射率が高いワークに適した感度調整を行うことができる。
【0058】
図7は、ワークWからの反射光量と感度調整によるダイナミックレンジが適用される範囲との関係を模式的に示す。
図6(1)(2)に示した数値による設定には正確には対応していないが、説明の便宜のために、設定テーブルTによって応答時間内に目標値に調整することができる範囲が棒グラフ(A)により表され、反射率が比較的高いワーク用の設定テーブルTによって応答時間内に感度調整ができる範囲が棒グラフ(B)により表されているものとする。各グラフが示すダイナミックレンジの幅は、いずれも一定値DRであるが、グラフ(A)が示す数値範囲はグラフ(B)が示す数値範囲よりも低くなる。
【0059】
テーブルT,Tのいずれによる感度調整でも、仮に反射光が殆ど入射しないために受光量がゼロレベルになっても、その受光量に乗算される倍率は、選択されたテーブルの設定によるダイナミックレンジの上限値までとなる。よって、ワークWが検出対象エリアに入って反射光量が増加したことにより受光量が飽和する状態に変動しても、実際の反射光量が選択中のテーブルに対応するグラフが示す数値範囲に入っているならば、感度調整最大回数であるN回までの調整によって最大受光量を目標値に調整することができる。
【0060】
外乱光などによる非常に強い光が入射して受光量が飽和した場合にも、その受光量を低減させるための倍率は、選択されたテーブルの設定によるダイナミックレンジの下限値までに収められる。よって、ノイズが消失してワークWからの反射光を正常に受光できる状態になったときに、直前の低い倍率により受光量が著しく低くなったとしても、実際の反射光量が選択中のテーブルに対応するグラフが示す数値範囲に入っているならば、最大N回までの調整によって最大受光量を目標値に調整することができる。
【0061】
したがって、投光部101からのレーザ光に対するワークWからの反射光の強度がグラフ(A)が示す範囲に含まれる場合には、テーブルTを選択することによって、ワークWからの反射光による受光量を応答時間内に目標値に調整することができる。また、投光部101からのレーザ光に対するワークWからの反射光の強度がグラフ(B)が示す範囲に含まれる場合には、テーブルTを選択することによって、ワークWからの反射光による受光量を応答時間内に目標値に調整することができる。いずれのテーブルが使用される場合でも、ダイナミックレンジは一定で可能な限り大きくすることができるので、応答時間内に感度を調整することができる範囲を十分に広くすることができる。
【0062】
上記の構成の設定テーブルT,Tにおいて、各応答時間と標準的な測定周期とが一対一の関係で対応づけられているものとすると、たとえば、応答時間として許容できる時間についてユーザからの入力を受け付けると共に、反射率が高いワークと反射率が低いワークとのいずれを処理するかの選択を受け付けることによって、各感度パラメータの調整範囲を決めることができる。つまり、反射率が高いワークが選択された場合にはテーブルTから、反射率が低いワークが選択された場合にはテーブルTから、入力された応答時間に対応する登録情報が読み出され、その情報が示す各感度パラメータの調整範囲が感度調整処理の定義情報として登録されることになる。
【0063】
ただし、設定テーブルに登録される応答時間は3通りに限らず、4通り以上の応答時間に対する情報を登録することもできる。また各応答時間に対応づける測定周期も1つに限らず、複数とおりの測定周期を対応づけし、応答時間と測定周期との組み合わせ毎に、感度パラメータの調整範囲を示すデータを登録することができる。1つの応答時間に様々な測定周期を組み合わせる場合には、その測定周期に合わせて露光時間の調整範囲を設定することができるので、設定テーブルを1つに統一してもよい。
【0064】
また、検出に適した測定周期を知るためには、ワークWのモデルを用いた試験的な測定処理を行い、そのワークに適した測定周期を導出する処理(いわゆるティーチング)を実施するとよい。
【0065】
図8は、上記のティーチングの結果に基づき感度パラメータの調整を行う場合の処理手順を示す。
この処理では、まず、ユーザから応答時間の入力を受け付け(ステップ11)、ティーチング処理に入る。ティーチング処理では、検出対象エリアにワークWのモデルが設置されていることを前提として、最大受光量が目標値の付近で安定する状態になるまで露光時間を種々に変更しながら投光および受光を繰り返す(ステップS12〜S14)。最大受光量が安定すると(ステップS13が「YES」)、その安定期間中の露光時間の中の最大値を、ワークWの検出に必要な最大露光時間として決定する(ステップS15)。さらにこの最大露光時間に受光量信号の処理に要する時間を加えた時間長さをワークWの検出に必要な最小の測定周期として決定する(ステップS16)。
【0066】
ステップS16の処理によりティーチングが終了すると、つぎのステップS17では、ステップS11で受け付けた応答時間とティーチング処理により取得した測定周期との組み合わせにより設定テーブルを照合し、この組み合わせに最も値が近い応答時間および測定周期の組み合わせ(ただし、応答時間は入力された値以下とし、測定周期はティーチングで取得した値以上とする。)に対応する登録情報を読み出す。そして、読み出された情報が示す各感度パラメータの調整範囲を採用することを決定する。
【0067】
この後は、各感度パラメータにつき決定した調整範囲を、メモリ16の動作定義を格納するエリアに登録し(ステップS18)、処理を終了する。
【0068】
感度パラメータの調整範囲を決定する方法は、テーブルを参照する方法に限定されるものではなく、演算処理によって決定してもよい。たとえば、応答時間を入力し、ティーチングにより測定周期を決定した後に、両者の値から感度調整最大回数Nおよび最大ダイナミックレンジを算出する。さらに、前出の(2)式の条件を満たす範囲で、DR1,DR2,DR3に様々な値の組み合わせを設定して、その中から乗算値DR(DR1×DR2×DR3)が最大になる組み合わせを選択する。そして、選択された組み合わせによるDR1,DR2,DR3に基づき、各感度パラメータの調整範囲を決定する。
なお、上記のDR1,DR2,DR3の組み合わせを求める処理に際しては、あらかじめDR1,DR2,DR3の値をそれぞれ複数登録しておき、これら登録された値の組み合わせの中から(2)式の条件を満たす範囲で乗算値DRを最大にする組み合わせを選択してもよい。
【0069】
感度パターンの調整範囲を決定する処理では、露光時間については、ティーチング処理で求めた最大露光時間が調整範囲に含まれるようにする。たとえば、DR1に対してあらかじめ定めた比率(たとえばDR1の70%)に相当する時間がティーチング処理で求めた最大露光時間になるようにする。
投光パワーについては、上記の方法により設定された露光時間の値に応じて投光パワーの最小倍率を定め、その最小倍率にDR2を乗算した値を最大倍率に設定するとよい。たとえば、露光時間の最小値をあらかじめ定めたしきい値と比較し、露光時間の最小値がしきい値より大きい場合(検出対象のワークの反射率が低いことを意味する。)には、投光パワーの最小倍率を1倍とし、最大倍率をDR2とする。また、露光時間の最小値がしきい値以下の場合(検出対象のワークの反射率が高いことを意味する。)には、投光パワーの最小倍率を1倍より低いq倍とし(たとえばq=0.25)、最大倍率をDR×qとする。一方、受光ゲインは、露光時間に関係なく、常に最小倍率を1倍として、最大倍率をDR3とする。
【0070】
以下、本発明の範囲に含まれる光学式センサとして、考えられる変形例をあげる。
まず、判定処理の精度を高めるためにパルスカウント方式の検出処理を行う場合がある。パルスカウント方式とは、1周期分の測定結果ではなく、m回(m>1)続けて同様の測定結果が得られたことを条件に判定出力を切り替える方法であるが、mの値を大きくしすぎると、応答時間内に検出処理を完了するのが困難になる可能性がある。
【0071】
上記の問題を解決するには、応答時間内に(2)式による条件を満たす最大のダイナミックレンジDRが確保される感度調整を実行した後の残りの時間で実行可能な測定回数をmとする必要がある。すなわち、10(N−m)≦DR を満たす最大のmを求める。このようにすれば、応答時間を守り、ダイナミックレンジを確保できる範囲で最も精度の良い判定処理を実行することが可能になる。
【0072】
ただし、mとして最低限確保したい回数が決まっている場合には、(2)式に代えて、DR≦10(N−m)を満たすことを条件として、この条件を満たす最大のDRが得られるように、各感度パラメータの調整範囲を設定してもよい。
【0073】
判定処理の精度を高めるために、過去の所定数の測定処理で求めた計測データの平均値を求める移動平均演算を実行し、その平均値を用いた判定処理を行う場合がある。この場合にも、パルスカウント方式の検出処理と同様に、感度パラメータの調整範囲の設定から導き出されるダイナミックレンジDRに対し、10(N−dn)≦DR を満たす最大のdnを移動平均演算のデータ数とすることにより、応答時間を守り、ダイナミックレンジを確保できる範囲で最も信頼度の高い平均値を求め、精度の良い判定処理を実行することが可能になる。
【0074】
ただし、移動平均演算のデータ数dnとして最低限確保したい回数がある場合には、(2)式に代えて、DR≦10(N−dn)を満たすことを条件として、この条件を満たす最大のDRが得られるように、各感度パラメータの調整範囲を設定してもよい。
【0075】
測定周期が短いために感度調整処理の時間が不足するなどの理由で、感度調整処理を1周期おきに行う場合がある。この場合の感度調整最大回数は、(1)式に代えて下記の式により算出する。
感度調整最大回数=[{(応答時間−演算時間)/測定周期}−1]/2
【0076】
応答時間の許容値の入力は、操作部18による入力操作によって行うことができるが、これに限らず、入出力インタフェース19を介して外部の装置から応答時間の許容値を送信してもよい。一方で、応答時間の許容値を固定値とし、その固定の応答時間を様々な値の測定周期とを組み合わせて感度調整最大回数Nを求め、そのNの値から割り出される最大ダイナミックレンジに基づき各感度パラメータの調整範囲を定めてもよい。
【0077】
外部の装置で応答時間の入力を受け付けると共に、検出対象のワークの材質に適合する標準的な測定周期を割り出し、入力された応答時間と測定周期とにより感度調整最大回数および最大ダイナミックレンジを算出し、その算出結果に基づき各感度パラメータの調整範囲を決定してもよい。この場合には、決定された調整範囲を、感度調整の定義データとして外部装置からセンサ1に送信すれば、センサ1のメモリ16に当該定義データを登録することができる。
【0078】
または、センサ1と外部装置との間で通信を行いながら、処理を進めることも可能である。たとえば、センサ1で図8のステップS12〜S16と同様のティーチングを行って測定周期を決定して、これを外部装置に送信し、外部装置において、ユーザから入力した応答時間と上記測定周期とを用いて各感度パラメータの調整範囲を決定し、この決定内容を示す定義データをセンサ1に送信することができる。
【0079】
上記の実施例のセンサ1では、判定結果として検出対象物の有無を示すON/OFFの2値信号を出力したが、これに限らず、検出対象物までの距離を計測してその計測値を出力するタイプの変位センサにおいても、上記に述べた種々の方法を適用して感度パラメータの調整範囲を設定することができる。
【符号の説明】
【0080】
W ワーク
1 光学式センサ
10 CPU
11 投光素子(LD)
12 撮像素子(CMOS)
18 操作部
101 投光部
102 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8