特許第5974597号(P5974597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974597
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ターボチャージャー用転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20160809BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20160809BHJP
   F02B 39/14 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F16C33/66 Z
   F02B39/00 H
   F02B39/00 R
   F02B39/14 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-88148(P2012-88148)
(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2013-217436(P2013-217436A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晋弘
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−264526(JP,A)
【文献】 特開昭52−046246(JP,A)
【文献】 特開2003−003856(JP,A)
【文献】 実開平02−087933(JP,U)
【文献】 実開昭60−043137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 39/14
F16C 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジングに対し、一端部にタービンホイールが配設され他端部にコンプレッサインペラが配設されるターボチャージャーの回転軸を、タービン側の第1の転がり軸受とコンプレッサ側の第2の転がり軸受を介して回転可能に支持するターボチャージャー用転がり軸受装置であって、
前記軸受ハウジングのタービン側端部には、前記タービンホイール側に向けて突出する延長ハウジング部が形成され、
前記延長ハウジング部には、前記回転軸の外周面に向けて潤滑油を供給する給油孔が形成される一方、
前記回転軸の前記給油孔に対向する軸部分の外周面には、前記給油孔から噴出される潤滑油を前記第1の転がり軸受側と前記タービンホイール側とに分配する分配鍔部が形成されており、
前記分配鍔部は、軸方向の両端から中央部に向けてしだいに大径に形成されて軸方向断面が山形状に形成され、
前記分配鍔部の最大径をなす頂部が前記給油孔に臨んでいることを特徴とするターボチャージャー用転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はターボチャージャー用転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボチャージャー用転がり軸受装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。
このようなターボチャージャー用転がり軸受装置において、図4に示すように、軸受ハウジング110の両端部には、ターボチャージャーの回転軸103を回転可能に支持するタービン側の第1の転がり軸受120と、コンプレッサ側の第2の転がり軸受130とがそれぞれ配設される。
また、軸受ハウジング110には、軸受空間内の第1の転がり軸受120の近傍に位置する部分に、潤滑油を第1の転がり軸受120に向けて噴出するジェット給油孔(ノズル孔)109が形成されている。
そして、ジェット給油孔109から噴出される潤滑油によって、第1の転がり軸受120が潤滑され、焼き付きが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来のターボチャージャー用転がり軸受装置においては、軸受ハウジング110のジェット給油孔109から第1の転がり軸受120に向けて潤滑油が直接的に噴出される構造上、例えば、エンジンが高回転域にあるとき状態において、ジェット給油孔109から第1の転がり軸受120に向けて噴出される潤滑油の噴出量が過大となることが想定される。
この場合には、第1の転がり軸受120における潤滑油の攪拌抵抗によるトルク損失が大きくなる恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、タービン側の第1の転がり軸受における潤滑油の攪拌抵抗によるトルク損失を軽減することができるターボチャージャー用転がり軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るターボチャージャー用転がり軸受装置は、軸受ハウジングに対し、一端部にタービンホイールが配設され他端部にコンプレッサインペラが配設されるターボチャージャーの回転軸を、タービン側の第1の転がり軸受とコンプレッサ側の第2の転がり軸受を介して回転可能に支持するターボチャージャー用転がり軸受装置であって、前記軸受ハウジングのタービン側端部には、前記タービンホイール側に向けて突出する延長ハウジング部が形成され、前記延長ハウジング部には、前記回転軸の外周面に向けて潤滑油を供給する給油孔が形成される一方、前記回転軸の前記給油孔に対向する軸部分の外周面には、前記給油孔から噴出される潤滑油を前記第1の転がり軸受側と前記タービンホイール側とに分配する分配鍔部が形成されてされており、
前記分配鍔部は、軸方向の両端から中央部に向けてしだいに大径に形成されて軸方向断面が山形状に形成され、前記分配鍔部の最大径をなす頂部が前記給油孔に臨んでいることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、軸受ハウジングの延長ハウジング部に形成された給油孔から噴出される潤滑油は、回転軸の分配鍔部において第1の転がり軸受側とタービンホイール側とに分配されるため、従来の軸受ハウジングのジェット給油孔から第1の転がり軸受に向けて潤滑油が直接的に噴出される場合と比べ、第1の転がり軸受に対する潤滑油の供給量が過大となることが抑制される。
この結果、第1の転がり軸受における潤滑油の攪拌抵抗によるトルク損失を軽減することができる。
【0009】
また、前記構成によると、軸方向断面が山形状に形成された分配鍔部の頂部が給油孔に臨むことで、給油孔から噴出される潤滑油を、第1の転がり軸受側とタービンホイール側とに二分して分配することができる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施例1に係るターボチャージャー用転がり軸受装置を示す縦断面図である。
図2】ターボチャージャー用転がり軸受装置を拡大して示す縦断面図である。
図3】給油孔から噴出される潤滑油が、分配鍔部によって第1の転がり軸受側とタービンホイール側とに二分して分配される状態を示す説明図である。
図4】従来のターボチャージャー用転がり軸受装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1を図1図3にしたがって説明する。
図1図2に示すように、ターボチャージャーの本体ケース1には、軸受ハウジング組付部2が形成され、この軸受ハウジング組付部2には、その内周面との間にオイルフィルムを構成する環状の隙間をもって軸受ハウジング10が組み付けられる。
軸受ハウジング10には、ターボチャージャーの回転軸3が第1の転がり軸受20と第2の転がり軸受30とを介して回転可能に支持される。
なお、ターボチャージャーの回転軸3の一端部にはタービンホイール4が配設され、他端部にはコンプレッサインペラ5が配設される。
【0013】
軸受ハウジング10は、円筒状に形成され、その一端部内周面には、タービン側の第1の転がり軸受20が嵌込まれるハウジング部11が形成され、他端部内周面には、コンプレッサ側の第2の転がり軸受30が嵌込まれるハウジング部12が形成されている。
【0014】
図2に示すように、第1の転がり軸受20は、内輪21と、外輪22と、これら内・外輪21、22の間の環状空間に保持器24によって保持された状態で転動可能に配設される複数の転動体(図では玉)23とを備える。
また、第2の転がり軸受30は、第1の転がり軸受20と同一形状大きさに形成された内輪31と、外輪32と、複数の転動体33と保持器34とを備える。
そして、第1、第2の両転がり軸受20、30は、各内輪21、31の間にスペーサ部材40が配設された状態で、各外輪22、32が軸受ハウジング10のハウジング部11、12に嵌挿されて固定される。
【0015】
図1図2に示すように、軸受ハウジング10の外周面の両端部寄り部分には、縦断面V溝状の環状溝(油溝)15、16がそれぞれ形成されている。なお、本体ケース1には油路1aが形成されている。
【0016】
図2図3に示すように、軸受ハウジング10のタービン側のハウジング部11の端部には、タービンホイール4側に向けて突出する延長ハウジング部13が形成されている。
延長ハウジング部13には、回転軸3の外周面に向けて潤滑油を供給する給油孔17が形成されている。この給油孔17は、軸受ハウジング10のタービン側の環状溝15に連通溝18を介して連通されている。
また、連通溝18は、軸受ハウジング10のタービン側の環状溝15の部分から延長ハウジング部13の外周面の軸方向にわたって形成されている。
【0017】
一方、給油孔17に対向する回転軸3の軸部分の外周面には、給油孔17から噴出される潤滑油を第1の転がり軸受20側とタービンホイール4側とに分配する分配鍔部6が形成されている。
この実施例1において、分配鍔部6は、軸方向の両端から中央部に向けてしだいに大径に形成されて軸方向断面が山形状に形成されている。
そして、分配鍔部6は、最大径をなす頂部6aと、両傾斜面7、8とを有し、頂部6aが給油孔17の中心部に臨んでいる。
【0018】
また、この実施例1において、図2に示すように、軸受ハウジング10のコンプレッサインペラ5側の端面の径方向には、第2の転がり軸受30に対し潤滑油を供給する油溝25が形成されている。
また、軸受ハウジング10の下部の両ハウジング部11、12の間に位置する部分(この実施例1では軸方向中央部)には、潤滑油の排出孔19が形成されている。
【0019】
この実施例1に係るターボチャージャー用転がり軸受装置は上述したように構成される。
したがって、ターボチャージャーの作動時において、本体ケース1の油路1aに供給される潤滑油は、軸受ハウジング10のタービン側の環状溝15及び連通溝18を経た後、軸受ハウジング10の延長ハウジング部13の給油孔17から回転軸3の分配鍔部6に向けて噴出される。
そして、給油孔17から噴出される潤滑油が回転軸3の分配鍔部6の両傾斜面7、8に衝突して跳ね返ることで、第1の転がり軸受20側とタービンホイール4側とに分配される。
このため、従来の軸受ハウジングのジェット給油孔から第1の転がり軸受に向けて潤滑油が直接的に噴出される場合と比べ、第1の転がり軸受20に対する潤滑油の供給量が過大となることが抑制される。
この結果、第1の転がり軸受20における潤滑油の攪拌抵抗によるトルク損失を軽減することができる。
【0020】
また、この実施例1において、軸方向断面が山形状に形成された分配鍔部6の頂部6aが給油孔17の中心部に臨むことで、給油孔17から噴出される潤滑油を、分配鍔部6の両傾斜面7、8によって第1の転がり軸受20側とタービンホイール4側とに二分して分配することができる。
【0021】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 本体ケース
3 回転軸
6 分配鍔部
6a 頂部
7、8 傾斜面
10 軸受ハウジング
11、12 ハウジング部
13 延長ハウジング部
15、16 環状溝
17 給油孔
20 第1の転がり軸受
30 第2の転がり軸受
40 スペーサ部材
図1
図2
図3
図4