(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DC−DCコンバータには、ひとつの入力電力から、電流及び電圧の少なくとも一方が異なる複数種類の電力を出力させたいという要望がある。この要望に応じたDC−DCコンバータとしては、複数のコンバート部を有するものが考えられる。DC−DCコンバータに、出力電力の電圧及び電流の少なくとも一方が異なる複数種類のコンバート部を設けた場合、コンバート部毎にインダクタのインダクタンス値を異ならせる必要がある。
【0005】
例えば特許文献1に記載のDC−DCコンバータのようにインダクタが設けられたインダクタチップを用いる場合、コイル状導体の積層数が異なる複数種類のインダクタをひとつのインダクタチップ内に設けることが考えられる。しかしながら、コイル状導体の積層数が異なる複数種類のインダクタをひとつのインダクタチップ内に設けた場合、インダクタチップの焼成時に磁性体層積層体内にクラックが生じやすい。このため、コイル状導体の積層数が異なる複数種類のインダクタが設けられたインダクタアレイチップには、安定して製造することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、焼成時にクラックが生じにくく、安定して製造しやすいインダクタアレイチップを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインダクタアレイチップは、磁性体層積層体と、複数のインダクタとを備える。磁性体層積層体は、積層された複数の磁性体層を有する。複数のインダクタは、磁性体層積層体内に配されている。複数のインダクタは、インダクタンス値が相互に異なる。複数のインダクタのそれぞれは、複数のコイル状導体と、ビアホール導体とを有する。複数のコイル状導体は、それぞれ、磁性体層間に配されている。ビアホール導体は、複数のコイル状導体を電気的に接続している。複数のインダクタの少なくとも一つにおいて、当該インダクタが並列に接続された複数のインダクタ部を有するようにビアホール導体が複数のコイル状導体を電気的に接続している。
【0008】
本発明に係るインダクタアレイチップのある特定の局面では、複数のインダクタは、複数のインダクタ部を有する複数のインダクタを含む。複数のインダクタ部を有する複数のインダクタにおいて、複数のインダクタ部の接続態様が相互に異なる。
【0009】
本発明に係るインダクタアレイチップの別の特定の局面では、複数のインダクタの少なくとも一つにおいて、複数のコイル状導体の少なくとも2つは並列に接続されている。
【0010】
本発明に係るインダクタアレイチップの他の特定の局面では、複数のインダクタは、相互に同じ数のコイル状導体を有する。
【0011】
本発明に係るDC−DCコンバータは、本発明に係るインダクタアレイチップを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、焼成時にクラックが生じにくく、安定して製造しやすいインダクタアレイチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係るDC−DCコンバータの略図的回路図である。
【
図2】第1の実施形態に係るDC−DCコンバータの略図的平面図である。
【
図3】第1の実施形態におけるインダクタアレイチップの模式的断面図である。
【
図4】第1の実施形態におけるインダクタアレイチップの一部分の模式的分解斜視図である。
【
図5】第1の実施形態におけるインダクタアレイチップの略図的等価回路図である。
【
図6】第2の実施形態におけるインダクタアレイチップの一部分の模式的分解斜視図である。
【
図7】第2の実施形態におけるインダクタアレイチップの略図的等価回路図である。
【
図8】第3の実施形態におけるインダクタアレイチップの模式的平面図である。
【
図9】第4の実施形態におけるインダクタアレイチップの模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0015】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るDC−DCコンバータの略図的回路図である。まず、
図1を参照しながら、DC−DCコンバータ1の回路構成について説明する。
【0017】
DC−DCコンバータ1は、複数のコンバート部を有する。具体的には、DC−DCコンバータ1は、2つのコンバート部10a、10bを有する。2つのコンバート部10a、10bは、同じ電源に接続される。従って、コンバート部10aに入力される電力の電圧及び電流と、コンバート部10bに入力される電力の電圧及び電流とは、それぞれ等しい。コンバート部10aの出力電力と、コンバート部10bの出力電力とでは、電流及び電圧の少なくとも一方が異なる。具体的には、本実施形態では、2つのコンバート部10a、10bのそれぞれに、同じ入力電圧Vinの電力が入力される。コンバート部10aは、第1の出力電圧Vout1の電力を出力する。コンバート部10bは、第2の出力電圧Vout2の電力を出力する。
【0018】
コンバート部10a、10bは、入力端子11a、11bと、出力端子12a、12bと、第1のグラウンド端子13a、13bと、第2のグラウンド端子14a、14bとを有する。
【0019】
入力端子11a、11bと出力端子12a、12bとの接続点15a、15bと、第1のグラウンド端子13a、13bと第2のグラウンド端子14a、14bとの接続点16a、16bとの間には、入力側コンデンサ17a、17bが接続されている。接続点15a、15bと出力端子12a、12bとの接続点18a、18bと、接続点16a、16bと第2のグラウンド端子14a、14bとの接続点19a、19bとの間には、出力側コンデンサ20a、20bが接続されている。
【0020】
コンバート部10a、10bは、コントローラ23a、23bを有する。コントローラ23a、23bは、接続点15a、15bと、接続点21a、21bとの間のオン/オフをすると共に、接続点15a、15bと接続点18a、18bとの接続点21a、21bと、接続点16a、16bと接続点19a、19bとの接続点22a、22bとの間のオン/オフをする。具体的には、コントローラ23a、23bは、接続点15a、15bと接続点21a、21bとの間をオンとし、接続点21aと接続点22aとの間をオフとする第1の状態と、接続点15a、15bと接続点21a、21bとの間をオフとし、接続点21aと接続点22aとの間をオンとする第2の状態とを選択的に切り替える。
【0021】
接続点21a、21bと接続点18a、18bとの間には、インダクタL1,L2が接続されている。上述のように、第1の出力電圧Vout1と第2の出力電圧Vout2とが異なる。このため、インダクタL1のインダクタンス値と、インダクタL2のインダクタンス値とは異なる。
【0022】
次に、主として
図2を参照しながら、DC−DCコンバータ1の具体的構成について説明する。DC−DCコンバータ1は、インダクタアレイチップ40と、ICチップ30と、コンデンサチップ31a、31b、32a、32bとを備えている。インダクタアレイチップ40は、
図1に示すインダクタL1,L2を構成している。ICチップ30及びコンデンサチップ31a、31b、32a、32bは、それぞれ、インダクタアレイチップ40の上に配されている。ICチップ30は、コントローラ23a、23bを構成している。コンデンサチップ31a、31bは、入力側コンデンサ17a、17bを構成している。コンデンサチップ32a、32bは、出力側コンデンサ20a、20bを構成している。
【0023】
図3は、第1の実施形態におけるインダクタアレイチップ40の模式的断面図である。
図4は、第1の実施形態におけるインダクタアレイチップ40の一部分の模式的分解斜視図である。なお、
図4においては、インダクタアレイチップ40の外層部を構成している磁性体層の描画を省略している。
【0024】
図3及び
図4に示されるように、インダクタアレイチップ40は、磁性体層積層体41を備えている。磁性体層積層体41は、積層された複数の磁性体層42を有する。磁性体層42は、たとえば、フェライトなどの磁性体セラミックス等により構成することができる。磁性体層積層体41を構成している磁性体層42の層数は、インダクタアレイチップ40に要求される特性等に応じて適宜設定することができる。磁性体層積層体41を構成している磁性体層42の層数は、例えば、8〜12程度とすることができる。磁性体層42の厚みも、インダクタアレイチップ40に要求される特性等に応じて適宜設定することができる。磁性体層42の厚みは、例えば、160〜240μm程度とすることができる。
【0025】
磁性体層積層体41内には、インダクタL1,L2が設けられている。インダクタL1,L2は、それぞれ、複数のコイル状導体43a、43bと、ビアホール導体44a、44b(
図4を参照)とを有する。インダクタL1とインダクタL2とは、相互に同じ数のコイル状導体43a、43bを有する。もっとも、本発明において、複数のインダクタにおいてコイル状導体の数量がすべて同じである必要は必ずしもない。なお、
図4において、ビアホール導体44a、44bは、模式的に破線で描画されている。
【0026】
コイル状導体43a、43bは、厚み方向において隣り合う磁性体層42の間に配されている。複数のコイル状導体43a、43bは、ビアホール導体44a、44bによって電気的に接続されている。
【0027】
コイル状導体43a、43bとビアホール導体44a、44bとは、適宜の導電材料によって構成することができる。コイル状導体43a、43bとビアホール導体44a、44bとは、例えば、銀、銅に代表される金属ペーストにより構成することができる。
【0028】
図5及び
図4に示されるように、インダクタL1,L2の少なくとも一つにおいて、そのインダクタが並列に接続された複数のインダクタ部を有するように、ビアホール導体が複数のコイル状導体を電気的に接続している。
【0029】
具体的には、インダクタL2は、単一のインダクタ部により構成されている。一方、インダクタL1は、複数のインダクタ部L1a、L1bを有する。インダクタ部L1aとインダクタ部L1bとは並列に接続されている。インダクタ部L1aは、複数のビアホール導体44a1〜44a4により直列に接続された複数のコイル状導体43a1〜43a5により構成されている。インダクタ部L1bは、複数のビアホール導体44a5〜44a8により直列に接続された複数のコイル状導体43a6〜43a10により構成されている。
【0030】
ところで、一つのインダクタアレイチップに、インダクタンス値が相互に異なる複数のインダクタを設ける場合、複数のインダクタ間でコイル状導体の数を異ならせることが考えられる。すなわち、複数のインダクタ間で巻き数を異ならせることが考えられる。しかしながら、複数のインダクタ間で巻き数を異ならせた場合は、コイル状導体及びビアホール導体を構成するための導電剤を含む部分が偏在する。コイル状導体及びビアホール導体を構成するための導電剤を含む部分と、磁性体層を構成するための磁性体グリーンシートとでは焼成時の収縮率が異なる。このため、焼成時にクラックが発生しやすい。
【0031】
それに対して、インダクタアレイチップ40では、上述のように、複数のインダクタL1,L2の少なくともひとつが、並列に接続されたインダクタ部L1a、L1bを有する。このような構成を採用することにより、インダクタL1のインダクタンス値とインダクタL2のインダクタンス値とが異ならされている。すなわち、複数のインダクタL1,L2の少なくとも一つにおいて、並列に接続されたコイル状導体を設けることによって、インダクタL1のインダクタンス値とインダクタL2のインダクタンス値とが異ならされている。このため、インダクタL1が有するコイル状導体43aの数と、インダクタL2が有するコイル状導体43bの数との差を少なくすることができる。よって、コイル状導体43a、43b及びビアホール導体44a、44bを構成するための導電剤を含む部分の偏在度が低い。従って、インダクタアレイチップ40は、焼成時にクラックが生じにくく、安定して製造しやすい。
【0032】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0033】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態におけるインダクタアレイチップの一部分の模式的分解斜視図である。
図7は、第2の実施形態におけるインダクタアレイチップの略図的等価回路図である。
【0034】
第2の実施形態に係るインダクタアレイチップは、第1の実施形態に係るインダクタアレイチップ40と、インダクタL1の構成において異なる。
図7及び
図6に示されるように、インダクタL1は、インダクタ部L1c〜L1gを有する。インダクタL1cとインダクタL1dとは並列に接続されている。インダクタL1cは、コイル状導体43a1により構成されている。インダクタL1dは、コイル状導体43a2により構成されている。インダクタL1fとインダクタL1gとは並列に接続されている。インダクタL1fは、コイル状導体43a9により構成されている。インダクタL1gは、コイル状導体43a10により構成されている。インダクタL1c及びインダクタL1dと、インダクタL1eと、インダクタL1f及びインダクタL1gとは、直列に接続されている。インダクタL1eは、ビアホール導体44aにより直列に接続されたコイル状導体43a3〜43a8により構成されている。
【0035】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が奏される。このように、インダクタを構成している複数のインダクタ部は、少なくとも2つのインダクタ部が並列に接続されている限りにおいて、接続態様は特に限定されない。
【0036】
また、第1及び第2の実施形態では、2つのインダクタのうちの1つのみが複数のインダクタ部を有する例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、2つのインダクタ部の両方が複数のインダクタ部を有していてもよい。その場合、複数のインダクタ部を有する複数のインダクタにおいて、複数のインダクタ部の接続態様が異なることが好ましい。たとえば、インダクタアレイチップに、第1の実施形態におけるインダクタL1と第2の実施形態におけるインダクタL2とが設けられていてもよい。
【0037】
(第3及び第4の実施形態)
図8は、第3の実施形態におけるインダクタアレイチップの模式的平面図である。
図9は、第4の実施形態におけるインダクタアレイチップの模式的平面図である。
【0038】
第1の実施形態では、DC−DCコンバータ1が2つのコンバート部10a、10bを有しており、インダクタアレイチップ40が2つのインダクタL1,L2を有する例について説明した。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。
【0039】
例えば、DC−DCコンバータがコンバート部を3つ以上備える場合には、インダクタアレイチップに3つ以上のインダクタが設けられていてもよい。例えば、コンバート部を4つ有するDC−DCコンバータに用いられる場合には、
図8に示されるように、インダクタアレイチップ40に4つのインダクタL11,L12,L13,L14を設けてもよい。例えば、コンバート部を6つ有するDC−DCコンバータに用いられる場合には、
図9に示されるように、インダクタアレイチップ40に6つのインダクタL21,L22,L23,L24,L25,L26を設けてもよい。
【0040】
(他の実施形態)
インダクタアレイチップに設けられた複数のインダクタで、コイル状導体の太さ(断面積)、巻き数及びコイル径の少なくともひとつが相互に異なっていてもよい。ここで、コイル状導体のコイル径とは、コイル状導体の中心を通る直線上でコイル状導体幅の最も太い箇所の内径である。
【0041】
焼成前に、コイル状導体を構成するための少なくとも一つの導電性ペースト層の上に、カーボンなどからなる消失層を設けることにより、少なくともひとつのコイル状導体の上に空洞を形成してもよい。その場合において、複数のインダクタにおいて、空洞が上に設けられたコイル状導体の数が異なっていてもよい。換言すれば、空洞が上に設けられたコイル状導体の数を異ならせることによってインダクタのインダクタンス値が異ならされていてもよい。通常、空洞が上に設けられたコイル状導体の数が多くなるほど、インダクタのインダクタンス値が大きくなる。
【0042】
第1の実施形態では、隣り合う磁性体層間に、ひとつのインダクタを構成するコイル状導体が一つのみ設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、隣り合う磁性体層間に、ひとつのインダクタを構成するコイル状導体が複数設けられていてもよい。このようにすることにより、例えば、コイル状導体が設けられた層数を同じにしつつ、インダクタに含まれるコイル状導体の数量を変化させ、インダクタンス値を変化させることができる。