(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面保護層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂混合物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂とを含む樹脂混合物、からなる群から選ばれた一つ以上の樹脂混合物を含む層であること
を特徴とする請求項1に記載の転写箔。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、塗装を用いて表面加飾を行う場合、(1)成形品を成形後に表面装飾加工として塗装工程を行う必要がある、(2)塗装ムラにより外表面に均一な膜厚の表面保護層を形成することが難しく意匠のバラツキが発生する、などの問題があった。
【0009】
また、予め凹凸形状が形成された離型層を備えた転写箔を用いて成形同時加飾法を行う場合、転写箔において、凹凸形状を付与した層上に表面保護層を形成することから、表面保護層を均一な膜厚で形成することが難しく、表面物性のバラツキが発生する、などの問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上述の問題を解決するためになされたものであり、意匠・表面物性のバラツキを抑制しつつ微細な凹凸形状を付与可能な転写箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、離型性フィルム基材上に転写層が形成された転写箔であって、前記離型性フィルム基材は、少なくとも、基材フィルムと、前記基材フィルムより上層に積層された離型層と、を備え、前記転写層は、少なくとも、前記離型層より上層に積層された表面保護層と、前記表面保護層より上層に積層された接着層と、を備え、前記転写層を構成する層のうち少なくとも1つの層は、加熱により発泡する発泡剤を含
み、前記転写層は、前記表面保護層と前記接着層との間に蓄熱層を有する転写層であることを特徴とする転写箔である。
【0012】
また、前記表面保護層は、ポリエステル系樹脂を含む樹脂混合物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂とを含む樹脂混合物、からなる群から選ばれた一つ以上の樹脂混合物を含む層であってもよい。
【0013】
また、前記表面保護層は、メタアクリル酸エステルを含む弾力性微粒子を含む層であってもよい。
【0014】
また、前記転写層は、前記表面保護層と前記接着層との間に絵柄層を有する転写層であってもよい。
【0015】
また、前記転写層は、前記表面保護層と前記接着層との間に隠蔽層を有する転写層であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、上述に記載の転写箔を金型に配置する配置工程と、該金型内部に成形樹脂を射出することにより射出成形する射出成形工程と、を備え、前記射出成形工程にあって、射出成形時の熱により表面保護層の発泡と同時に成形品の表面に転写箔の転写層を転写することを特徴とする加飾成形品製造方法である。
【0018】
本発明の一実施形態は、上述に記載の転写箔
の転写層と、被転写対象物とを積層した加飾成形品であって、外表面に発泡した表面保護層を有する加飾成形品である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の転写箔は、転写層を構成する層のうち少なくとも1つの層が加熱により発泡する発泡剤を含む層であることから、転写時の加熱により、転写層中の発泡剤の発泡および成形品への転写層の転写を同時に行うことが出来る。このとき、転写層中の発泡剤が発泡することによって、加飾成形品表面に微細な凹凸形状を付与することが出来る。このため、(1)成形品を成形後に表面装飾加工を行う必要がない、(2)転写箔の製造時において、転写層を平坦な面で層形成することが出来ることから、各層を均一な膜厚で形成することが出来、意匠・表面物性のバラツキを抑制することが出来る、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の転写箔について説明を行う。
本発明の転写箔は、離型性フィルム基材上に転写層が形成された転写箔である。離型性フィルム基材は、少なくとも、基材フィルムおよび離型層を積層して構成される。転写層は、離型性フィルム基材の離型層側に積層され、転写箔を使用した加飾成形品表面に転写される部位である。転写層は、少なくとも、表面保護層および接着層を積層して構成される。本発明の転写箔は、転写層を構成する層のうち少なくとも1つの層が加熱により発泡する発泡剤を含む層であることから、転写時の加熱により、転写層中の発泡剤の発泡および成形品への転写層の転写を同時に行うことが出来る。
【0022】
<基材フィルム>
基材フィルムは、離型性フィルム基材の基体となる部位である。
【0023】
基材フィルムは、可撓性を有する材料から適宜材料を選択して用いてよい。例えば、(1)ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、(2)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン樹脂、(3)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、(4)ポリ塩化ビニル、などを用いてもよい。特に、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムは、耐熱性に優れ、インモールド成形時に射出される樹脂の温度で転写箔が破損するのを防ぐことが出来ることから、本発明の転写箔に用いる基材フィルムとして好ましい。また、基材フィルムは2種以上のフィルムを貼り合わせた複層の複合フィルムであってもよい。
【0024】
また、基材フィルムの厚みは、5μm以上200μm以下程度の範囲内が好ましく、25μm以上100μm以下程度の範囲内にあることがより好ましい。上記範囲内の厚みの基材フィルムは、各種印刷法(例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、など)において好適に取り扱うことの出来る厚みであり、効率よく転写箔を生産することが出来る。ただし、本発明の転写箔において基材フィルムの厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0025】
<離型層>
離型層は、前記基材フィルム上に形成される。転写箔を対象物品と一体化させた後、離型層の部位で基材フィルムおよび離型層を剥離することにより、得られる加飾成形物の最表面を後述する表面保護層とすることが出来る。
【0026】
離型層の材料としては、離型性樹脂や離型剤を含んだ樹脂を適宜選択し、用いてよい。例えば、離型性樹脂として、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、などを用いてもよい。また、例えば、離型剤を含んだ樹脂として、離型剤を添加または共重合させた、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂、などを用いてもよい。このとき、離型剤として、例えば、弗素系樹脂、シリコーン樹脂、又は各種のワックス、などを用いてもよい。また、離型層の材料は、複数の樹脂を混合した樹脂混合物であってもよい。特に、メラミンまたはイソシアネート硬化でなされたアクリル樹脂は、耐熱性に優れ、インモールド成形時に射出される樹脂の温度で転写箔が破損するのを防ぐことが出来ることから、本発明の転写箔に用いる離型層の材料として好ましい。
【0027】
また、離型層の形成は、離型層の材料を溶剤へ分散・溶解させた離型層塗液を調整し、該離型層塗液を適宜公知の塗布形成方法を用いて塗布し、乾燥させることにより、行ってよい。このとき、塗布形成方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコート、などのコーティング方法を用いてよい。
【0028】
また、離型層の厚みは、0.1μm以上5.0μm以下程度の範囲内にあることが好ましく、0.3μm以上2.0μm以下程度の範囲内にあることがより好ましい。上記範囲内の厚みの離型層は、一般的な各種塗布形成方法で均一な膜形成を行うことが出来る。ただし、本発明の転写箔において離型層の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0029】
<表面保護層>
表面保護層は、前記離型層より上層に形成される。表面保護層は、転写箔を対象物品と一体化させた後、得られる加飾成形物の最表面となる。
【0030】
表面保護層の材料としては、耐候性、耐摩耗性、耐傷性、耐薬品性、などの諸物性を考慮し、適宜公知の材料から選択し用いてよい。例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、などを用いてよい。
【0031】
特に、表面保護層の材料として、ポリエステル系樹脂を含む樹脂混合物、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂とを含む樹脂混合物、からなる群から選ばれた一つ以上の樹脂混合物を用いることが好ましい。上記樹脂混合物を用いた場合、優れてソフトフィール感を付与することが出来る。また、転写時の発泡において、発泡剤の発泡を阻害することがない。
【0032】
また、表面保護層の材料には、メタアクリル酸エステルを含む弾力性微粒子を添加してもよい。弾力性微粒子を添加することにより、加飾成形物にソフトフィール感を備えることが出来る。また、転写時の発泡により、弾力性微粒子は表面保護層内で拡散されることから、表面保護層内において弾力性微粒子を均質に配置することが出来る。
【0033】
また、表面保護層の材料には、添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、減摩剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、などが挙げられる。
【0034】
また、表面保護層の材料として、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂を用いてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂は、活性エネルギー線を照射することにより、樹脂内の官能基同士が架橋し、硬化する樹脂である。例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂として、少なくともアクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する樹脂、などが挙げられる。
表面保護層の材料として活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた場合、転写箔を対象物品と一体化させた後に活性エネルギー線を照射することにより、(1)表面保護層に熱可塑性を維持したまま対象物品の表面形状に追従させつつ転写することが出来、かつ、(2)転写箔の成形後、架橋硬化を行うことで装飾成形品の最表面部位の表面強度を向上させることが出来る。このため、表面保護層の材料として活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることにより、成形性および充分な耐擦傷性を両立させることができる。特に、本発明の転写箔の転写において、転写時に表面保護層が熱可塑性を維持している場合、発泡剤の発泡効果による形状変化にも容易に追従することから、触感としてのソフトフィール感が向上し、好ましい。
【0035】
また、表面保護層の材料として活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた場合、表面保護層を塗布形成後、(1)完全架橋しない程度の活性エネルギー線を照射、(2)加熱、などを行い、表面保護層を不完全(一部分)架橋状態としてもよい。表面保護層を不完全(一部分)架橋状態とすることにより、(1)未架橋状態に比べてより完全に乾燥させることが出来、転写箔の取り扱い性が向上する、(2)対象物品への転写時の熱や応力による表面保護層の流動を抑制することが出来る、などの効果を奏する。
【0036】
また、表面保護層の形成は、表面保護層の材料および発泡剤を溶剤へ分散・溶解させた表面保護層塗液を調整し、該表面保護層塗液を適宜公知の塗布形成方法を用いて塗布し、乾燥させることにより、行ってよい。このとき、塗布形成方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコート、などのコーティング方法、グラビア印刷、スクリーン印刷、などの印刷方法、などを用いてよい。また、表面保護層の硬化方法は、選択した表面保護層の材料の組成に応じて行ってよい。例えば、1液硬化タイプ、硬化剤を用いる2液硬化タイプ、活性エネルギー線照射による硬化タイプ、などの硬化を行ってよい。
【0037】
また、表面保護層の厚みは、5μm以上50μm以下程度の範囲内にあることが好ましい。ただし、本発明の転写箔において表面保護層の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0038】
<接着層>
接着層は、前記表面保護層より上層に形成される。接着層は、転写箔を対象物品と一体化させたとき、対象物品と接触し、転写箔を対象物品に接着させる部位となる。
【0039】
接着層に用いる材料は、常温・加熱時において対象物品の表面材料との接着性・粘着性を備える材料から、適宜選択してよい。具体的には、接着剤、粘着剤、ホットメルト、などとして知られた材料から適宜選択してよい。例えば、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、イソシアネート系、シリコーン系、スチレン−ブタジエン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリエステル系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系、ポリウレタン系などの樹脂を単独で使用、またはこれらの混合物を主成分とするエマルジョン系樹脂、有機溶剤型樹脂、水溶性樹脂、などを用いてもよい。
【0040】
また、接着層の形成方法としては、接着層に用いる材料に応じて適宜公知の塗布形成方法を用いて塗布し、乾燥させることにより、行ってよい。例えば、塗布形成方法として、(1)グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷方法、(2)ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコート、押出しコートなどのコーティング方法、などを用いてよい。
【0041】
また、接着層の厚みは、1μm以上10μm以下程度の範囲内にあることが好ましい。ただし、本発明の転写箔において接着層の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
【0042】
<発泡剤>
発泡剤は、加熱により発泡する材料であり、前記転写層を構成する層のうち少なくとも1つの層に含有される。転写層を構成する層のうち少なくとも1つの層が加熱により発泡する発泡剤を含む層であることから、転写時の加熱により、転写層中の発泡剤の発泡および成形品への転写層の転写を同時に行うことが出来る。このとき、転写層中の発泡剤が発泡することによって、加飾成形品表面に微細な凹凸形状を付与することが出来る。このため、(1)成形品を成形後に表面装飾加工を行う必要がない、(2)転写箔の製造時において、転写層を平坦な面で層形成することが出来ることから、各層を均一な膜厚で形成することが出来、意匠・表面物性のバラツキを抑制することが出来る、という効果を奏する。
【0043】
例えば、表面保護層に発泡剤を含む場合、転写時の加熱により、表面保護層の発泡および成形品への転写層の転写を同時に行うことが出来る。このとき、表面保護層が発泡することによって、表面保護層に微細な凹凸形状を付与することが出来る。また、例えば、接着層に発泡剤を含む場合、転写時の加熱により、発泡および対象物品への転写層の転写を同時に行うことが出来る。このとき、接着層にて発泡した気体が転写表面側に到達し、表面保護層に微細な凹凸形状を付与することが出来る。
【0044】
発泡剤は、加熱により発泡する発泡剤であればよく、適宜選択して用いてよい。例えば、(1)炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミドといった化学反応により気体を発生して発泡する発泡剤、(2)ポリアクリロニトリルやポリ塩化ビニリデン等から生成される外殻を持ち、外殻内に常温で液体の炭化水素(例えば、ノルマルペンタン、イソペンタンなど)を充填することで生成される熱膨張マイクロカプセル、などを用いてもよい。特に、熱膨張マイクロカプセルは、発泡後においても外殻成分などが化学変化することがないことから、物性が安定しており、本発明の転写箔に用いる発泡剤として好ましい。また、発泡剤の添加量は所望する触感などの仕様に応じて適宜調整し、決定してよい。
【0045】
なお、本発明の転写箔は、転写層を構成する層のうち少なくとも1つの層が加熱により発泡する発泡剤を含む層である構成であれば、求める効果を奏する。このため、転写層を構成する層のうち一つの層が発泡剤を含む層であってもよいし、転写層を構成する層のうち複数の層が発泡剤を含む層であってもよい。
【0046】
また、本発明の転写箔は、各層の層界面において、更に、別途、機能層を追加した構成であってもよい。このとき、転写層に追加した機能層は、加熱により発泡する発泡剤を含む層であってもよい。
【0047】
<絵柄層>
例えば、機能層として、前記表面保護層と前記接着層との間に、絵柄層が設けられていてもよい。絵柄層を設けることにより、多彩な図柄を付与することが出来、意匠性を向上させることが出来る。
【0048】
絵柄層は、所望する絵柄に応じて材料を選択し、選択した材料に応じた形成方法を用いて形成してよい。例えば、絵柄層は、印刷絵柄層、金属光沢層、金属調印刷層、などであってもよい。
【0049】
絵柄層が印刷絵柄層の場合、絵柄層に用いる材料は、適宜公知のインキから選択して用いてよい。例えば、ビヒクルに染料または顔料等の着色剤、体質顔剤を添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加し、溶剤、希釈剤等で充分に希釈、攪拌して調整したインキであってもよい。また、絵柄層が印刷絵柄層の場合、絵柄層の形成方法は、絵柄層に用いる材料にて選択したインキの物性に応じて適宜公知の印刷方法より選択して用いてよい。例えば、印刷方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷、などを用いてもよい。
【0050】
絵柄層が金属光沢層あるいは金属調印刷層の場合、絵柄層に用いる材料は、光沢を有する材料から適宜選択して用いてよい。また、絵柄層が金属光沢層あるいは金属調印刷層の場合、絵柄層の形成方法は、絵柄層に用いる材料にて選択した金属光沢を有する材料の物性に応じて適宜公知の薄膜形成方法より選択して用いてよい。例えば、(1)アルミニウム、スズ、クロム、ニッケル、金、白金、銀、銅、インジウム、チタニウム、亜鉛などの金属やその酸化物、および、これらの合金または化合物、などの金属薄膜層、(2)アルミフレーク等の金属製顔料を含有するインキを用いて形成された印刷図柄層、などを金属光沢層あるいは金属調印刷層としてもよい。このとき、金属薄膜層の形成方法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、などを用いてもよい。また、印刷図柄層の形成方法として、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷、などの印刷方法を用いてもよい。
【0051】
<隠蔽層>
また、例えば、機能層として、前記表面保護層と前記接着層との間に、隠蔽層が設けられていてもよい。隠蔽層を設けることにより、本発明の転写箔を用いた加飾成形品において、隠蔽層より内部側の色味の影響を最外表面から観察したとき抑制することが出来る。このため、特に、転写箔を転写する対象物品の基材の色味の影響を抑制することが出来る。
【0052】
隠蔽層は、隠蔽したい色味に応じて材料を選択してよく、適宜公知のインキから選択して用いてよい。また、隠蔽層の形成方法は、隠蔽層に用いる材料にて選択したインキの物性に応じて適宜公知の印刷方法より選択して用いてよい。例えば、印刷方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷、などを用いてもよい。
【0053】
<蓄熱層>
また、例えば、機能層として、前記表面保護層と前記接着層との間に、蓄熱層が設けられていてもよい。蓄熱層を設けることにより、転写時に転写箔に掛かる熱を蓄えることができる。熱が掛かってから転写が完了するまで時間がある場合、蓄熱層に蓄えられた熱源を基に発泡体の発泡効果を充分発現することが可能となる。このため、発泡時に生じる変形をより効果的に表面保護層側に伝えることができ、触感の向上が期待できる。
【0054】
蓄熱層は、転写箔を転写する際に掛かる熱量を一時的に蓄えることができる材料であればよく、熱伝導性の低い材料など、適宜公知の材料から選択してよい。例えば、中空ビーズや中空ナノシリカを分散させた樹脂層などが利用できる。この場合、樹脂層の材料としては中空材料が均質に分散できるものであることが望ましく、例えば表面保護層に用いる材料と同種のものを使用できる。
【0055】
また、蓄熱層の形成方法は、蓄熱層に選択した材料に応じて、適宜公知の薄膜形成方法から選択して用いてよい。例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、などを用いて形成してよい。
【0056】
図1に、本発明の転写箔の一例を示す。
図1に示す本発明の転写箔1は、転写層3に離型性フィルム基材2が積層された構成である。離型性フィルム2は、基材フィルム21に離型層22が積層されてなる。また、転写層は、接着層5の上層に表面保護層4が積層されている。また、表面保護層4の内部には熱により発泡する発泡剤6が内包されている。
転写箔1を転写後、離型性フィルム基材2は剥離され、得られた加飾成形品の最表面は転写層3の表面保護層4となる。このとき、表面保護層4内部の発泡剤6は転写時の熱により発泡し、得られた加飾成形品の最表面である表面保護層4は微細な凹凸形状を有する。これにより、得られた加飾成形品は優れた触感を有する。
【0057】
図2に、絵柄層および隠蔽層を形成した本発明の転写箔の一例を示す。
図2に示す本発明の転写箔1は、転写層3に離型性フィルム基材2が積層された構成である。離型性フィルム2は、基材フィルム21に離型層22が積層されてなる。また、転写層は、接着層5の上層に隠蔽層8、隠蔽層8の上層に絵柄層7、絵柄層7の上層に表面保護層4が積層されている。また、表面保護層4の内部には熱により発泡する発泡剤6が内包されている。
【0058】
図3に、隠蔽層および蓄熱層を形成した本発明の転写箔の一例を示す。
図3に示す本発明の転写箔1は、転写層3に離型性フィルム基材2が積層された構成である。離型性フィルム2は、基材フィルム21に離型層22が積層されてなる。また、転写層は、接着層5の上層に蓄熱層9、蓄熱層9の上層に隠蔽層8、隠蔽層8の上層に表面保護層4が積層されている。また、表面保護層4の内部には熱により発泡する発泡剤6が内包されている。
【0059】
図4に、絵柄層、隠蔽層、および蓄熱層を形成した本発明の転写箔の一例を示す。
図4に示す本発明の転写箔1は、転写層3に離型性フィルム基材2が積層された構成である。離型性フィルム2は、基材フィルム21に離型層22が積層されてなる。また、転写層は、接着層5の上層に蓄熱層9、蓄熱層9の上層に隠蔽層8、隠蔽層8の上層に絵柄層7、絵柄層7の上層に表面保護層4が積層されている。また、表面保護層4の内部には熱により発泡する発泡剤6が内包されている。
【0060】
以下、本発明の装飾成形品について説明を行う。
本発明の装飾成形品は、上述に記載の転写箔を用いた装飾成形品である。本発明の転写箔を対象物品に転写し、離型性フィルム基材を剥離することにより、表面保護層が最表面となった装飾成形物を得ることが出来る。
【0061】
転写箔を転写する対象物品の材料は、転写箔の接着層に選択した材料と接着可能な材料であればよく、特に限定されるものではない。例えば、対象物品の材料は、(1)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、フェノール樹脂、などの樹脂類、(2)アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮等の金属或いは金属化合物類、(3)木質合板、木質単板、中密度繊維板(MDF)等の木材類、ガラス、陶磁器等のセラミック類、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、スラグセメント等のセメント、ケイ酸カルシウム、紙、布帛、不織布、などであってもよい。
【0062】
また、転写箔を転写する対象物品の形状は、特に限定されるものではない。例えば、対象物品の形状は、シート(フィルム)、平板、曲面板、棒状体、立体物、などの形状であってもよい。
【0063】
転写箔を転写する転写方法は、転写時に発泡剤に選択した材料に適した熱が発生する転写方法であればよく、適宜公知の転写方法から選択して用いてよい。例えば、インモールド成形、ロール熱転写方式、などの転写方法を用いてもよい。特に、インモールド成形は、転写箔と成形物を一体化して装飾成形品を製造する成形同時加飾法であり、3次元的な形状(曲面形状、凹凸形状、有孔形状など)を持った物品に対し、好適に意匠を付与することが出来ることから、本発明の装飾成形品製造方法にて採用する転写方式として好ましい。
【0064】
<発泡効果の発現>
以下に、本発明における発泡剤の発泡効果発現機構について説明する。
本発明によれば、転写層中に導入された発泡剤が、転写時にかかる熱によって発泡することで表面の形状変化が引き起こされる。例えばロール熱転写方式により加工をする場合、離型性フィルム基材側から掛けられた熱により発泡剤が発泡し、転写とともに該フィルム基材を剥離することで表面保護層に発泡効果が現れる。また、インモールド成形により転写加工を行なう場合、成形直後は発泡剤の発泡効果が金型内で抑えられているが、金型が開くと、離型性フィルム基材の剥離とともに射出樹脂の圧力が解放されるので、本来の発泡効果が発現し表面保護層の形状変化が引き起こされる。この時、転写層中に熱源を蓄えることのできる蓄熱層を設けていれば、転写時に転写箔にかかった熱を効率的に発泡剤に伝えることができるため好ましい。いずれの場合も、転写箔の離型性フィルム基材を剥離し、転写層が転写される時に、熱により発泡した発泡剤の発泡効果が表面形状の変化として現れる。
【実施例】
【0065】
<実施例1>
以下、本発明の転写箔および加飾成形品について具体的に実施の一例を挙げながら説明を行う。
【0066】
(転写箔の製造方法)
まず、基材フィルム上に離型層を形成した。
このとき、基材フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm)を用いた。また、離型層の材料は、メラミン樹脂系を用いた。また、離型層の形成には、グラビアコート法を用いた。また、離型層の乾燥厚みは2.0μmであった。
【0067】
次に、離型層上に表面保護層を形成した。
このとき、表面保護層の材料は、発泡剤を添加した2液硬化タイプのウレタン系樹脂を用いた。また、表面保護層の形成には、スクリーン印刷を用いた。また、表面保護層の乾燥厚みは30.0μmであった。また、添加した発泡剤は、熱膨張マイクロカプセル(英国EXPANCEL社「EXPANCEL 920−40」)とした。
【0068】
次に、表面保護層上に絵柄層を形成した。
このとき、絵柄層の材料として、紫外線硬化タイプのシルバーインキ(アルミペーストを含む)を用いた。これにより、絵柄層は、印刷絵柄層としての金属調印刷層となった。また、絵柄層の形成は、スクリーン印刷にて絵柄層の材料の塗工後、紫外線を照射して絵柄層の材料架橋硬化させることにより形成した。このとき、紫外線を照射条件は、高圧水銀灯120W/cmを用いて、積算光量が500mJ/cm
2となる条件とした。
【0069】
次に、絵柄層上に接着層を形成した。
このとき、接着層の材料として、1液硬化タイプのアクリル樹脂系接着剤を用いた。また、接着層の形成には、グラビア印刷を用いた。また、接着層の乾燥厚みは、5.0μmであった。
【0070】
以上より、基材フィルム/離型層/表面保護層/絵柄層/接着層がこの順で積層された本発明の転写箔を製造することが出来た。
【0071】
(加飾成形品製造方法)
上述にて製造された本発明の転写箔を金型に配置し、転写箔の接着層側へ樹脂を射出し、金型から樹脂成形物を取り出し、転写箔の離型層の部位で基材フィルムおよび離型層を樹脂成形物から剥離し、本発明の加飾成形品を得た(インモールド成形)。
【0072】
得られた加飾成形品の最表面は表面保護層であり、最表面の表面保護層は成形時の発泡効果により表面に凹凸形状が付与されていた。よって、ソフトフィール感を有する加飾成形品を得ることが出来た。