特許第5974619号(P5974619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974619エンジン冷却システムの制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974619
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】エンジン冷却システムの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/14 20060101AFI20160809BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F01P7/14 N
   F01P7/14 J
   F01P7/16 504A
   F01P7/16 504E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-107300(P2012-107300)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-234605(P2013-234605A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大古 佳美
(72)【発明者】
【氏名】市原 敬義
(72)【発明者】
【氏名】川本 愛子
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−016364(JP,A)
【文献】 特開2007−291928(JP,A)
【文献】 特開2011−021482(JP,A)
【文献】 特開2002−303137(JP,A)
【文献】 特開2011−127614(JP,A)
【文献】 特開2012−102639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/14
F01P 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動され、冷却水を循環するウォーターポンプと
記冷却水の温度を測定する温度測定手段と、
前記ウォーターポンプより送出され前記エンジンを通過した冷却水を分岐して流す冷却水回路に設けられ、ラジエータに送る冷却水の流量を調整する第1分岐バルブと、ヒータに送る冷却水の流量を調整する第2分岐バルブと、オイルクーラに送る冷却水の流量を調整する第3分岐バルブと、を有する電子制御バルブと、
前記電子制御バルブを制御するバルブ制御手段と、を有し、
前記バルブ制御手段は、
エンジン回転数を取得し、且つ、該エンジン回転数の第1の閾値と、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値と、前記第2の閾値よりも大きい第3の閾値を設定し、
前記エンジン回転数が前記第1の閾値以下で、且つ、前記温度測定手段にて測定される温度が所定温度以下である場合には、前記第1分岐バルブ、第2分岐バルブ、第3分岐バルブを閉とし、
前記エンジン回転数が前記第1の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブまたは第3分岐バルブのうちのいずれか一方を開放し、
前記エンジン回転数が前記第2の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブ、及び第3分岐バルブの双方を開放し、
前記エンジン回転数が前記第3の閾値を超えた場合には、第1分岐バルブ、第2分岐バルブ及び第3分岐バルブを全て開放するように制御すること
を特徴とするエンジン冷却システムの制御装置。
【請求項2】
前記バルブ制御手段は、前記エンジンの回転数の上昇に応じて、前記第2分岐バルブ、及び前記第3分岐バルブのうち少なくとも一方の開度を大きくするように制御することを特徴とする請求項1に記載のエンジン冷却システムの制御装置。
【請求項3】
エンジンにより駆動され、冷却水を循環するウォーターポンプと、前記冷却水の温度を測定する温度測定手段と、
前記ウォーターポンプより送出され前記エンジンを通過した冷却水を分岐して流す冷却水回路に設けられ、ラジエータに送る冷却水の流量を調整する第1分岐バルブと、ヒータに送る冷却水の流量を調整する第2分岐バルブと、オイルクーラに送る冷却水の流量を調整する第3分岐バルブと、を有する電子制御バルブと、前記電子制御バルブを制御するバルブ制御手段と、を備えたエンジン冷却システムを制御する制御方法であって、
エンジン回転数を取得し、且つ、該エンジン回転数の第1の閾値と、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値と、前記第2の閾値よりも大きい第3の閾値を設定し、
前記エンジン回転数が前記第1の閾値以下で、且つ、前記温度測定手段にて測定される温度が所定温度以下である場合には、前記第1分岐バルブ、第2分岐バルブ、第3分岐バルブを閉とし、
前記エンジン回転数が前記第1の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブまたは第3分岐バルブのうちのいずれか一方を開放し、
前記エンジン回転数が前記第2の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブ、及び第3分岐バルブの双方を開放し、
前記エンジン回転数が前記第3の閾値を超えた場合には、第1分岐バルブ、第2分岐バルブ及び第3分岐バルブを全て開放するように制御すること
を特徴とするエンジン冷却システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエンジン冷却システムを制御する制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるラジエータへ供給する冷却水の水量を制御するために、従来のワックス式サーモスタットに代わり、例えば、特許文献1に開示されているように、モータ等の電動アクチュエータを用いて冷却水の流量を制御する電子制御弁が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−90480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された従来例は、エンジン冷却水の温度が所定温度以上となるまでは、暖機促進のため電子制御弁を全閉とすることにより、ラジエータ等の放熱器への冷却水量を絞っている。しかし、エンジンの回転数が増大すると冷却水の圧力が増大することを考慮していないため、冷却水の温度が低い状態でエンジン回転数が高くなった場合には、冷却回路等に冷却水の圧力による負荷がかかる恐れがある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エンジンの暖機効率の低下を抑えつつ、且つ、冷却系統の配管に大きな水圧が加えられることを防止できるエンジン冷却システムの制御装置、及びエンジン冷却システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、エンジン回転数を取得し、且つ、該エンジン回転数の第1の閾値と、第1の閾値よりも大きい第2の閾値と、第2の閾値よりも大きい第3の閾値を設定する。エンジン回転数が第1の閾値以下で、且つ、温度測定手段にて測定される温度が所定温度以下である場合には、第1分岐バルブ、第2分岐バルブ、第3分岐バルブを閉とし、エンジン回転数が第1の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブまたは第3分岐バルブのうちのいずれか一方を開放し、エンジン回転数が第2の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブ、及び第3分岐バルブの双方を開放し、エンジン回転数が第3の閾値を超えた場合には、第1分岐バルブ、第2分岐バルブ及び第3分岐バルブを全て開放するように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、エンジン回転数が上昇した場合、或いは上昇すると予想される場合には、冷却水の温度に関わらず電子制御バルブを開放して冷却水を循環させるので、エンジンの暖機効果の低下を抑制しつつ、冷却水回路内に負担がかかることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジン冷却システム、及び制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係り、図1に示した電子制御バルブ4の詳細な構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係り、エンジン回転数と冷却水の水圧との関係を示す特性図である。
図4】本発明の一実施形態に係り、エンジン回転数と冷却水の水圧との関係を示す特性図である。
図5】本発明の一実施形態に係り、エンジン回転数と通水抵抗係数との関係を示す特性図である。
図6】本発明の一実施形態に係るエンジン冷却システムの制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン冷却システムの制御装置の構成を模式的に示す説明図である。図1に示すように、このエンジン冷却システムは、冷却水を循環させるウォーターポンプ8と、該ウォーターポンプ8の出力側に接続され、エンジン1に設けられてエンジン1を冷却する冷却水回路3と、該冷却水回路3のエンジン出口近傍に設けられ、冷却水回路3を3つの系統に分岐する電子制御バルブ4と、冷却水回路3のエンジン出口近傍に設けられ冷却水の温度を測定する水温センサ(温度測定手段)14と、を備えている。
【0010】
電子制御バルブ4は、図2に示すように、第1分岐バルブ4aと、第2分岐バルブ4b、及び第3分岐バルブ4cを備えており、各分岐バルブ4a〜4cの開度を調節することにより、冷却水回路3より送られる冷却水を3つの系統に分岐して送出する。
【0011】
第1分岐バルブ4aで分岐される系統は、第1冷却水回路3a(分岐冷却水回路)を介してラジエータ5を通過し、ウォーターポンプ8の入口側に接続されている。即ち、第1冷却水回路3aに冷却水を流入させることにより、ラジエータ5を冷却することができる。
【0012】
第2分岐バルブ4bで分岐される系統は、第2冷却水回路3b(分岐冷却水回路)を介してヒータ9、及びEGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ10を通過し、ウォーターポンプ8の入口側に接続されている。即ち、第2冷却水回路3bに冷却水を流入させることにより、ヒータ9、及びEGRクーラを冷却することができる。
【0013】
第3分岐バルブ4cで分岐される系統は、第3冷却水回路3c(分岐冷却水回路)を介してエンジンオイルクーラ6、及びトランスミッションオイルクーラ7を通過し、ウォーターポンプ8の入口側に接続されている。即ち、第3冷却水回路3cに冷却水を流入させることにより、エンジンオイルクーラ6、及びトランスミッションオイルクーラ7を冷却することができる。
【0014】
更に、冷却水回路3の出口部は、エンジン出口部にて冷却水回路3dに接続され、該冷却水回路3dは、ターボチャージャー11、及びスロットルチャンバ12を通過してEGRバルブ13に接続されている。該EGRバルブ13は、ウォーターポンプ8の入口側に接続されている。従って、EGRバルブ13の開度を調節することにより、冷却水回路3dに流入する冷却水量を調節することができる。
【0015】
また、電子制御バルブ4に設けられる各分岐バルブ4a〜4cの開度を調整するために、バルブ制御装置(バルブ制御手段)21が設けられている。該バルブ制御装置21は、電子制御バルブ4、及び水温センサ14に接続されている。
【0016】
バルブ制御装置21は、各分岐バルブ4a〜4cの開度を検出するバルブ位置検出部22と、車両の走行状態(エンジン1の回転数の情報や、イグニッションがオンとされているか否かの情報等)を取得し、該走行状態データと、各分岐バルブ4a〜4cの開度状態に基づいて、冷却水回路3内を循環する冷却水の圧力を予測する水圧予測部23と、該水圧予測部23で予測された水圧、及び水温センサ14で測定される冷却水温度に基づいて、各分岐バルブ4a〜4cの開度を調節するバルブ開度制御部24と、を備えている。
【0017】
なお、バルブ制御装置21は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0018】
ここで、ベルト駆動のメカウォータポンプが搭載されている車両では、エンジン1の回転数が上昇すると、これに伴ってウォーターポンプ8の回転数が上昇し、冷却水回路3を循環する冷却水の水圧が上昇する。また、暖機のために電子制御バルブ4が閉じているとき(4a〜4cが全閉のとき)には、より一層水圧が上昇してしまう。具体的な例を挙げると、図3に示すように、電子制御バルブ4が全開の場合には、冷却水の水圧はエンジン1の回転数の上昇に伴って曲線q2に示すように変化し、電子制御バルブ4が全閉の場合には、水圧はエンジン1の回転数の上昇に伴って曲線q1に示すように変化する。即ち、電子制御バルブ4が全閉の場合には、全開の場合と対比して水圧が大きく増加するように変化する。従って、本実施形態では、エンジン1の回転数が増大し、これに伴って冷却水の水圧が増大して水圧の許容値を超えると予想される場合には、各分岐バルブ4a〜4cを適宜開放することにより、過度な水圧の上昇を抑制するように制御する。
【0019】
例えば、水圧の許容値を350[KPa]とした場合を例に挙げる。各分岐バルブ4a〜4cを全て全閉状態とすると、エンジン1の回転数が4800[rpm]に達した場合に水圧が上記の許容値を超える。この特性は、図4の曲線q1(図3のq1と同一)に示すように変化する。
【0020】
また、第2分岐バルブ4bのみを全開とし、第1分岐バルブ4a及び第3分岐バルブ4cを全閉状態とすると、エンジン1の回転数が4900[rpm]に達した場合に水圧が許容値を超える。この特性は、図4の曲線q3に示すように変化する。
【0021】
更に、第3分岐バルブ4cのみを全開とし、第1分岐バルブ4a及び第2分岐バルブ4bを全閉状態とすると、エンジン1の回転数が4900[rpm]に達した場合に水圧が許容値を超える。この変化は、図4の曲線q3に示すように変化する。なお、第2分岐バルブ4bのみを全開とした場合と、第3分岐バルブ4cのみを全開とした場合の特性は、同一ではないが、ほぼ一致しているので、図4では、煩雑さを避けるため同一の曲線q3として示している。
【0022】
また、第2分岐バルブ4b及び第3分岐バルブ4cを共に全開とし、第1分岐バルブ4aを全閉状態とすると、エンジン1の回転数が5000[rpm]に達した場合に水圧が許容値を超える。この特性は、図4の曲線q4に示すように変化する。
【0023】
従って、エンジン1を始動した後、エンジン回転数が4800[rpm]未満であると予想される場合には各分岐バルブ4a〜4cを全て全閉状態とする。また、エンジン回転数が4800[rpm]を超えると予想される場合には、第2分岐バルブ4bまたは第3分岐バルブ4cのうちのいずれか一方を全開とする。エンジン回転数が4900[rpm]を超えると予想される場合には、第2分岐バルブ4b及び第3分岐バルブ4cの双方を全開とする。更に、エンジン回転数が5000[rpm]を超えると予想される場合には、第2,第3分岐バルブ4b,4cに加えて、第1分岐バルブ4aを開放する。
【0024】
また、第1分岐バルブ4aを開放する場合には、エンジン回転数と、第1分岐バルブ4aの開度との関係を予め設定しておき、第1分岐バルブ4aが適切な開度となるように制御する。例えば、図5に示すように、エンジン回転数と通水抵抗係数との関係を示すマップを予め用意し、更に、通水抵抗係数と第1分岐バルブ4aの開度との関係を予め設定する。そして、エンジン回転数が予測された場合に、この予測したエンジン回転数に基づいて第1分岐バルブ4aの開度が求められ、この開度となるように第1分岐バルブ4aの開度を調節すれば良い。
【0025】
こうすることで、エンジン1の回転数の上昇に伴い、冷却水回路3を循環する冷却水の水圧が上昇した場合でも、水圧が許容値(例えば、350[KPa])以下となるように調節することができる。
【0026】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係るエンジン冷却システムの制御装置による処理手順について説明する。なお、以下に示す処理は、水温センサ14で検出される冷却水の温度が予め設定した閾値温度以下である場合の処理動作を示している。
【0027】
初めに、ステップS11において、バルブ制御装置21は、走行状態検出信号に基づき、車両のアクセル開度が所定値よりも大きいことを検知する。即ち、アクセル開度が大きくなると、これに伴ってエンジン回転数が増加するので、アクセル開度に基づいてエンジン回転数を推定し、エンジン回転数が増大したことを検知する。エンジン回転数を直接検出せずにアクセル開度を用いる理由は、エンジン回転数の増大を検知してからではその後の処理対応に遅れが生じるためである。また、エンジン回転数の推定は、例えばアクセル開度とエンジン回転数との対応関係を示すマップを用いることで実行できる。
【0028】
ステップS12において、バルブ位置検出部22は、電子制御バルブ4に設けられる各分岐バルブ4a〜4cの開度を検出する。これにより、各分岐バルブ4a〜4cの現在の開度を認識することができる。
【0029】
ステップS13において、バルブ制御装置21は、分岐バルブ4a〜4cのうちのいずれかを開く必要があるか否かを判断する。具体的には、各分岐バルブ4a〜4cの開度と、推定したエンジン回転数との関係から、冷却水の水圧が予め設定したの閾値圧力(例えば、35[KPa])に達するか否かを判断する。この判断は、前述したように、エンジン回転数が4800[rpm](第1の閾値;所定回転数)に到達するか否かにより判断することができる。閾値圧力に達すると判断された場合には、ステップS14に処理を進め、閾値圧力に達しないと判断された場合には、本処理を終了する。
【0030】
ステップS14において、バルブ制御装置21は、アクセル開度の変化に応じて再度エンジン回転数を予測する。そして、ステップS15において、第2分岐バルブ4b、或いは第3分岐バルブ4cのうちのいずれか一方を開放する。この操作により、第2冷却水回路3b、或いは第3冷却水回路3cのうちのいずれか一方に冷却水が流れるので、冷却水回路3に生じる水圧を低減することができる。
【0031】
その後、ステップS16において、バルブ制御装置21は、第2分岐バルブ4b、及び第3分岐バルブ4cの双方を開放する必要があるか否かを判断する。具体的には、前述したように、エンジン回転数が4900[rpm](第2の閾値)を上回るか否かを判断する。
【0032】
そして、上回ると判断された場合には(ステップS16でYES)、ステップS17において、バルブ開度制御部24は、第2分岐バルブ4b、及び第3分岐バルブ4cの双方を開放する。具体的には、ステップS15の処理で第2分岐バルブ4bが開放されている場合には、これに加えて第3分岐バルブ4cを開放し、第3分岐バルブ4cが開放されている場合には、これに加えて第2分岐バルブ4bを開放する。これにより、エンジンの回転数の上昇に伴う水圧の上昇を低減させることができる。
【0033】
次いで、ステップS18において、バルブ制御装置21は、第1分岐バルブ4aを開放する必要があるか否かを判断する。具体的には、前述したように、エンジン回転数が5000[rpm](第3の閾値)を上回るか否かを判断する。そして、上回ると判断された場合には(ステップS18でYES)、第1冷却水回路3aに冷却水を流す必要があるので、ステップS19において、前述した図5に示した特性曲線に基づいて、第1分岐バルブ4aの開度を算出する。
【0034】
ステップS20において、バルブ開度制御部24は、第1分岐バルブ4aの開度をステップS19の処理で算出した開度となるように制御する。これにより、冷却水が第2,第3冷却水回路3b,3cに加えて、第1冷却水回路3aにも流れることになり、冷却水の水圧をより一層低減し、冷却水の水圧が水圧閾値(例えば、350[KPa])に達することを防止することができる。
【0035】
また、上述した実施形態では、エンジン回転数に応じて第2分岐バルブ4b、及び第3分岐バルブ4cを全開、或いは全閉にする例について説明したが、回転数の大きさに応じて各分岐バルブ4b,4cの開度が大きくなるように制御することも可能である。
【0036】
このようにして、本実施形態に係るエンジン冷却システムの制御装置、及びエンジン冷却システムの冷却方法では、エンジン回転数が所定値を超えた場合、或いは超えると予想される場合には、電子制御バルブ4に設けられる各分岐バルブ4a〜4cのうちの少なくとも一つを開放して冷却水を流すので、冷却水回路3内の水圧が許容値(例えば、35[KPa])を上回ることを事前に防止することができ、冷却水回路3内に加わる負担を抑制することができる。また、エンジンの暖機効率が急激に低下することを回避できる。
【0037】
また、エンジン回転数が大きくなるほど、開度が大きくなるように制御することにより、水圧の許容値ギリギリとなるように冷却水の水圧を微調整することができ、エンジンの暖機効率の低下を抑えつつ、且つ、冷却系統の配管に大きな水圧が加えられることを抑制することができる。
【0038】
更に、複数の分岐バルブ4a〜4cを有し、エンジン回転数に応じて各分岐バルブ4a〜4cの開度を適宜制御するので、エンジン回転数に応じた適切なバルブ制御が可能となる。
【0039】
また、検出または推定されたエンジン回転数に基づき、エンジン回転数が第1の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブ4bまたは第3分岐バルブ4cのうちのいずれか一方を開放し、エンジン回転数が第2の閾値を超えた場合には、第2分岐バルブ4b、及び第3分岐バルブ4cの双方を開放し、エンジン回転数が第3の閾値を超えた場合には、全ての分岐バルブ4a〜4cを開放するように制御するので、エンジン回転数に応じた適切なバルブの開閉制御が可能となり、エンジンの暖機効率を抑えつつ、水圧上昇を抑制することが可能となる。
【0040】
以上、本発明のエンジン冷却システムの制御装置、及び制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、電子制御バルブ4に3個の分岐バルブ4a、4b、4cが設けられることについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1個、2個、或いは4個以上の分岐バルブが設けられる場合についても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、エンジン冷却水の水圧上昇を抑制することに利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン
3 冷却水回路
3a 第1冷却水回路
3b 第2冷却水回路
3c 第3冷却水回路
4 電子制御バルブ
4a 第1分岐バルブ
4b 第2分岐バルブ
4c 第3分岐バルブ
5 ラジエータ
6 エンジンオイルクーラ
7 トランスミッションオイルクーラ
8 ウォーターポンプ
9 ヒータ
10 クーラ
11 ターボチャージャー
12 スロットルチャンバ
13 EGRバルブ
14 水温センサ
21 バルブ制御装置
22 バルブ位置検出部
23 水圧予測部
23 該水圧予測部
24 バルブ開度制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6