特許第5974628号(P5974628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5974628-パワーステアリング制御装置 図000002
  • 特許5974628-パワーステアリング制御装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974628
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】パワーステアリング制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20160809BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160809BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20160809BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20160809BHJP
   B62D 127/00 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   F02D29/02 321A
   B62D119:00
   B62D127:00
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-115544(P2012-115544)
(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-241093(P2013-241093A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃原 誠二
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 信
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−173417(JP,A)
【文献】 特開2005−271640(JP,A)
【文献】 特開2012−067702(JP,A)
【文献】 特開2010−115954(JP,A)
【文献】 特開2010−248964(JP,A)
【文献】 特開2001−106107(JP,A)
【文献】 特開2013−147250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00 − 6/10
F02D 29/02
B62D 119/00
B62D 127/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された停止条件を満たしたときには車両が走行するための駆動力を発生するエンジンを停止しそのエンジン停止後に予め設定された再始動条件を満たしたときには前記エンジンを再始動する車両に搭載され前記車両のステアリングホイールに操舵アシスト力を発生させるパワーステアリングモータを制御するパワーステアリング制御装置であって、
前記エンジンが停止状態であるか否かを判定するエンジン停止判定部と、
前記ステアリングホイールにかかる操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、
前記エンジン停止判定部がエンジンが停止状態であると判定しかつ前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクが予め設定された第1しきい値以上であるとき前記パワーステアリングモータを駆動可能状態に維持して、前記第1しきい値未満であるときは前記パワーステアリングモータを駆動停止状態にし、その後、前記エンジン停止判定部がエンジンが停止状態であると判定しかつ前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクが前記第1しきい値以上になったとしても、前記エンジンが再始動するまで前記パワーステアリングモータの前記駆動停止状態を維持するモータ駆動制御部と、
を有することを特徴とするパワーステアリング制御装置。
【請求項2】
前記エンジン再始動条件の少なくとも1つは、前記操舵トルク検出部が検出した操舵ト
ルクが予め設定された第2しきい値以上になることであり、
前記第1しきい値は、前記第2しきい値と同一であることを特徴とする請求項に記載
のパワーステアリング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールに操舵アシスト力を発生させるモータを制御するパワーステアリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーステアリング制御装置は、アイドルストップ状態に移行する条件が成立し、アイドルストップ状態になったと判定した場合、操舵アシスト力を発生するモータ(すなわち、パワーステアリングモータ)の駆動を停止する。ここで、パワーステアリング制御装置は、アイドルストップ信号を受信した場合にアイドルストップ状態に移行する条件が成立したと判定する。このアイドルストップ信号は、アイドルストップ制御装置がアイドルストップ状態に移行する条件が成立したと判定した場合に送信される。また、パワーステアリング制御装置は、エンジン回転速度が所定値未満になった場合に、アイドルストップ状態になったと判定する。
【0003】
また、パワーステアリング制御装置は、操舵トルクを検出し、操舵トルク情報をアイドルストップ制御装置に送信する。アイドルストップ制御装置は、受信した操舵トルク情報を基に操舵トルクが所定値α以上であると判定すると、エンジンを再始動する。ここで、所定値αは、エンジンを再始動させる判定に用いるエンジン再始動判定用しきい値を構成する。
また、特許文献1には、アイドルストップ状態になった場合に、操舵アシスト力を徐々に減少させるパワーステアリング制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−106107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題点1)
ところで、アイドルストップ制御装置は、エンジンを停止状態に移行させる最中であっても、操舵トルクが所定値以上である場合には、エンジン再始動要求を発生する。
しかし、エンジンを停止状態に移行させる処理を中断してエンジンを再始動することはできないため、エンジンが完全に停止した後に、エンジン再始動要求に基づきエンジンが再始動される。このとき、エンジン回転速度が所定値未満になった時点で、パワーステアリングモータは、ON→OFFされる。そして、その後、エンジンが完全に停止し、さらにエンジンが再始動した時点で、パワーステアリングモータは、OFF→ONされる。このように、エンジンを停止状態に移行させる最中にエンジン再始動の要求があると(すなわち、エンジン再始動要求を発生すると)、パワーステアリングモータは、ON→OFF→ONすることになり、操舵フィーリングが悪化する。このとき、運転者は、ステアリングホイールの引っかかり感を覚える。
【0006】
(問題点2)
その一方で、アイドルストップ状態において常にパワーステアリングモータの駆動を許可するように制御すれば、操舵フィーリングが悪化しないようにすることができる。
しかし、このような制御においては、操舵トルクが所定値になった場合にエンジンを再始動させると、操舵アシスト力が発生していないときに比べて操舵アシスト力が発生しているときには、エンジンが再始動するときの操舵角が大きくなる。このため、運転者は、通常操作する操舵角よりも大きな操舵角になるようにステアリングホイールを操作(回転)しないと、エンジンが再始動することはない。したがって、このような制御を導入すると、運転者の使い勝手が悪くなる。
【0007】
(問題点3)
また、前述の特許文献1に開示の制御においては、操舵アシスト力を徐々に減少させている最中にステアリングホイールが操作され操舵トルクが所定値になった場合、エンジンを再始動させることになる。
しかしながら、このような制御では、操舵アシスト力が変化しているため、操舵トルクが所定値となる操舵角が一定にならない。よって、運転者は、エンジンが再始動するときの操舵角が毎回異なるため、違和感を覚える。
本発明の目的は、操舵フィーリングの悪化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、(1)本発明の一態様は、予め設定された停止条件を満たしたときには車両が走行するための駆動力を発生するエンジンを停止しそのエンジン停止後に予め設定された再始動条件を満たしたときには前記エンジンを再始動する車両に搭載され前記車両のステアリングホイールに操舵アシスト力を発生させるパワーステアリングモータを制御するパワーステアリング制御装置であって、前記エンジンが停止状態であるか否かを判定するエンジン停止判定部と、前記ステアリングホイールにかかる操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、前記エンジン停止判定部がエンジンが停止状態であると判定しかつ前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクが予め設定された第1しきい値以上であるとき前記パワーステアリングモータを駆動可能状態に維持するモータ駆動制御部と、を有することを特徴とするパワーステアリング制御装置を提供する。
【0009】
(2)本発明の一態様では、前記エンジン再始動条件の少なくとも1つは、前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクが予め設定された第2しきい値以上になることであり、前記モータ駆動制御部は、前記エンジン停止判定部がエンジンが停止状態であると判定しかつ前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクが前記第1しきい値未満であるとき前記パワーステアリングモータを停止状態にして、その後、前記エンジン停止判定部がエンジンが停止状態であると判定しかつ前記操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクが前記第1しきい値以上になっても、前記エンジンが再始動するまで前記パワーステアリングモータの前記停止状態を維持することが好ましい。
【0010】
(3)本発明の一態様では、前記第1しきい値は、前記第2しきい値と同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
(1)の態様の発明によれば、エンジンが停止状態と判定されかつ操舵トルクが第1しきい値以上であるときパワーステアリングモータを駆動可能状態に維持するため、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0012】
(2)の態様の発明によれば、エンジンが停止状態と判定されかつ操舵トルクが第1しきい値未満であるときパワーステアリングモータを停止状態にして、その後、操舵トルクが第1しきい値以上になっても、エンジンが再始動するまでそのパワーステアリングモータの停止状態を維持するため、エンジンの再始動時の操舵角が大きくなることを抑えることができる。
【0013】
(3)の態様の発明によれば、ステアリング操作された時に常に同一操舵角でエンジンを再始動できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るパワーステアリング制御装置の構成例を示す図である。
図2】ECU(Electronic Control Unit)による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、車両が搭載するパワーステアリング制御装置を挙げている。
(構成)
図1は、パワーステアリング制御装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、パワーステアリング制御装置1は、エンジン回転数検出部2、車速検出部3、操舵トルク検出部4、ECU(Electronic Control Unit)10、及びパワーステアリングモータ5を有している。
【0016】
エンジン回転数検出部2は、エンジン回転数を検出する。そして、エンジン回転数検出部2は、検出値をECU10に出力する。
車速検出部3は、車両の速度を検出する。そして、車速検出部3は、検出値をECU10に出力する。
操舵トルク検出部4は、ステアリングホイールにかかる操舵トルクを検出する。そして、操舵トルク検出部4は、検出値をECU10に出力する。
【0017】
ECU10は、例えば、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えている。具体的には、ECU10は、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。ROMには、各種処理を実現する1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。
【0018】
このECU10は、パワーステアリング制御装置1について各種の制御を行う。本実施形態では、ECU10は、エンジン回転数検出部2等からの検出値及びアイドルストップ信号を基に、パワーステアリングモータ5の駆動を制御する。そのため、図1に示すように、ECU10は、アイドルストップ判定部11、アシスト判定部12、及びモータ駆動許可判定部13を有している。
【0019】
ここで、アイドルストップ判定部11には、アイドルストップ信号及びエンジン回転数検出部2の検出値(すなわち、エンジン回転数)がそれぞれ入力される。そして、アイドルストップ判定部11は、入力されたアイドルストップ信号や検出値を基に、アイドルストップ状態である条件が成立したか否かを判定する。
【0020】
また、アシスト判定部12には、車速検出部3の検出値(すなわち、車速)及び操舵トルク検出部4の検出値(すなわち、操舵トルク)がそれぞれ入力される。さらに、アシスト判定部12には、アイドルストップ判定部11による判定結果が入力される。そして、アシスト判定部12は、入力された検出値や判定結果を基に、操舵アシスト力を発生させるか否かを判定する。
【0021】
また、モータ駆動許可判定部13には、アシスト判定部12による判定結果が入力される。そして、モータ駆動許可判定部13は、入力された判定結果を基に、パワーステアリングモータ5の駆動状態(駆動可能状態や停止)を制御する。
図2は、以上のような構成を有するECU10による処理の一例を示すフローチャートである。以下に、この図2に示す処理手順に沿って、図1に示すECU10を構成する各部の処理内容を具体的に説明する。
【0022】
図2に示すように、先ずステップS1では、アイドルストップ判定部11は、アイドルストップ状態である条件が成立したか否かを判定する。具体的には、アイドルストップ判定部11は、アイドルストップ信号を受信しかつエンジン回転速度がエンジン回転速度判定用しきい値未満であるとき、アイドルストップ状態である条件が成立したと判定する。ここで、エンジン回転速度判定用しきい値は、実験的、経験的、又は理論的に予め設定された値である。例えば、エンジン回転速度判定用しきい値は、220rpmである。アイドルストップ判定部11は、このようにアイドルストップ状態である条件が成立していると判定すると、ステップS2に進む。また、アイドルストップ判定部11は、アイドルストップ状態である条件が成立していないと判定すると、ステップS9に進む。
【0023】
ステップS2では、アシスト判定部12は、アイドルストップが実行されていることから、アイドルストップの実行の有無を示すアイドルストップ実行フラグD−ISFlugを1に設定する(D−ISFlug=1)。
次に、ステップS3では、アシスト判定部12は、検出車速Vがしきい値Vth以下であるか否かを判定する。ここで、しきい値Vthは、車両が停車しているか否かを判定するためのしきい値である。例えば、しきい値(以下、停車判定用しきい値という。)Vthは、実験的、経験的、又は理論的に予め設定された値である。アシスト判定部12は、検出車速Vが停車判定用しきい値Vth以下であると判定すると(V≦Vthの場合)、ステップS4に進む。また、アシスト判定部12は、検出車速Vが停車判定用しきい値Vthよりも大きいと判定すると(V>Vthの場合)、ステップS7に進む。
【0024】
ステップS4では、アシスト判定部12は、運転者が操舵していないか否かを判定する。具体的には、アシスト判定部12は、操舵トルクTがしきい値β未満であるか否かを判定する。ここで、しきい値βは、パワーステアリングモータ5を駆動可能状態に保持(又は維持)するか否かを判定するためのしきい値である。例えば、しきい値(以下、モータ駆動可能状態判定用しきい値という。)βは、実験的、経験的、又は理論的に予め設定された値である。また、パワーステアリングモータ5を駆動可能状態するとは、ステアリング操作されたときにはパワーステアリングモータ5を駆動して操舵アシスト力を発生させることができる状態にすることをいう。
【0025】
このステップS4によって、アシスト判定部12は、操舵トルクTがモータ駆動可能状態判定用しきい値β未満であると判定すると(T<β)、ステップS5に進む。また、アシスト判定部12は、操舵トルクTがモータ駆動可能状態判定用しきい値β以上であると判定すると(T≧β)、ステップS7に進む。
【0026】
ステップS5では、アシスト判定部12は、運転者が操舵していないため、運転者による操舵状態の有無を示す操舵状態フラグS−ISFlugを1に設定する(S−ISFlug=1)。そして、アシスト判定部12は、ステップS6に進む。
また、ステップS7では、アシスト判定部12は、操舵状態フラグS−ISFlugが1であるか否かを判定する。アシスト判定部12は、操舵状態フラグS−ISFlugが1であると判定すると(S−ISFlug=1)、すなわち例えば、運転者が一度でも操舵するのを止めている場合、ステップS6に進む。また、アシスト判定部12は、操舵状態フラグS−ISFlugが1でないと判定すると(S−ISFlug=0)、すなわち、運転者が操舵操作を継続中の場合、ステップS8に進む。
【0027】
ステップS6では、モータ駆動許可判定部13は、第1モータ駆動処理を行う。そして、ECU10は、当該図2に示す処理を終了する。
ここで、第1モータ駆動処理は、パワーステアリングモータ5を停止する処理となる。
ステップS8では、モータ駆動許可判定部13は、第2モータ駆動処理を行う。そして、ECU10は、当該図2に示す処理を終了する。
【0028】
ここで、第2モータ駆動処理は、パワーステアリングモータ5を駆動可能状態に保持する処理となる。この第2モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5は、アイドルストップが実行される前から継続してアイドルストップ中にも駆動可能状態に保持(又は維持)される。
【0029】
一方、ステップS9では、アシスト判定部12は、アイドルストップ実行フラグD−ISFlugが1であるか否かを判定する。アシスト判定部12は、アイドルストップ実行フラグD−ISFlugが1であると判定すると(D−ISFlug=1)、すなわち、アイドルストップを実行していた場合又はアイドルストップを停止させた場合、ステップS10に進む。また、アシスト判定部12は、アイドルストップ実行フラグD−ISFlugが1でないと判定すると(D−ISFlug=0)、すなわち、アイドルストップを未だ実行していない場合、当該図2に示す処理を終了する。
【0030】
ステップS10では、アシスト判定部12は、アイドルストップ実行フラグD−ISFlugを0に設定する(D−ISFlug=0、すなわち、D−ISFlugを初期化する)。続いて、ステップS11では、アシスト判定部12は、操舵状態フラグS−ISFlugを0に設定する(S−ISFlug=0、すなわち、S−ISFlugを初期化する)。
【0031】
次に、ステップS12では、モータ駆動許可判定部13は、第3モータ駆動処理を行う。そして、ECU10は、当該図2に示す処理を終了する。
ここで、第3モータ駆動処理は、パワーステアリングモータ5を駆動可能状態にする処理となる。
【0032】
(動作、作用等)
次に、パワーステアリング制御装置1における動作、及びその作用等を説明する。
パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中であり(前記ステップS1の判定処理で「Yes」の場合)、車両が停車状態にあり(V≦Vthの場合)、かつ運転者が操舵していない場合(T<βの場合)、第1モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5を停止する(前記ステップS6)。
【0033】
また、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中であり(前記ステップS1の判定処理で「Yes」の場合)、車両が停車以外の車両状態にある場合(V>Vthの場合)、これまでの操舵状態の状態を判定する(前記ステップS7)。そして、パワーステアリング制御装置1は、運転者が操舵操作を継続している場合(S−ISFlug=0の場合)、第2モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5の駆動可能状態を保持する(前記ステップS8)。つまり、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ期間中(前記ステップS1の判定処理で「Yes」の場合)、操舵トルクTがモータ駆動可能状態判定用しきい値β以上に維持されている場合(前記ステップS4の判定処理で「No」かつ前記ステップS7の判定処理で「No」の場合)には、第2モータ駆動処理によってパワーステアリングモータ5を駆動可能状態に保持することで操舵アシスト力を発生させる。
【0034】
また、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中にいったん操舵していない状態が生じると(前記ステップS4の判定処理で「Yes」の場合)、その後、操舵しても(前記ステップS4の判定処理で「No」の場合でも前記ステップS7の判定処理で「Yes」となるため)、第1モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5の停止状態を維持する(前記ステップS6)。
【0035】
また、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ状態でない場合(前記ステップS1の判定処理で「No」の場合)、その直前のアシスト判定部12の判定結果に基づき(前記ステップS9の判定結果に基づき)、例えばアイドルストップ状態であったときには(D−ISFlug=1の場合)、第3モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5を駆動可能状態にする(前記ステップS12)。
【0036】
この第3モータ駆動処理と前述の第1モータ駆動処理との関係から、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中にパワーステアリングモータ5をいったん停止させてしまうとその停止状態を維持するため、エンジンの運転状態がアイドルストップ以外の運転状態になるまで操舵アシスト力を発生させないようになる。
【0037】
ここで、前述のように、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中にモータ駆動可能状態判定用しきい値β以上の操舵トルクTを常に検出できていれば、第2モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5を駆動可能状態に保持する(前記ステップS8)。
【0038】
このため、前述の問題点1のような、エンジンを停止状態に移行させる最中に操舵トルクがエンジン再始動判定用しきい値α以上であることでエンジン再始動要求が発生するような状況でも、本実施形態では、モータ駆動可能状態判定用しきい値β以上の操舵トルクTを常に検出できていれば、パワーステアリングモータ5は、駆動可能状態に保持される。これによって、本実施形態では、エンジンを停止状態に移行させる最中にパワーステアリングモータ5がON→OFF→ONとならないため、操舵フィーリングの悪化を防止できる。なお、この場合、モータ駆動可能状態判定用しきい値βは、エンジン再始動判定用しきい値α以下であれば良い(β≦α)。
【0039】
一方、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中に操舵トルクTがモータ駆動可能状態判定用しきい値β未満になると、第1モータ駆動処理によって、パワーステアリングモータ5を停止する(前記ステップS6)。
そして、パワーステアリング制御装置1は、パワーステアリングモータ5を停止させた後に操舵トルクTがモータ駆動可能状態判定用しきい値β以上になっても、いったん操舵トルクTがモータ駆動可能状態判定用しきい値β未満になっていることから(前記ステップS7の判定処理で「Yes」であるため)、エンジンが再始動するまで(アイドルストップ状態から抜け出すまで)、パワーステアリングモータ5を停止状態に保持する(前記ステップS6)。
【0040】
このようなことから、モータ駆動可能状態判定用しきい値βは、エンジン再始動判定用しきい値α以上であれば良い(β≧α)。その一方で、前述のように操舵フィーリング悪化防止のためには、モータ駆動可能状態判定用しきい値βは、エンジン再始動判定用しきい値α以下である必要がある(β≦α)。これらを考慮して、モータ駆動可能状態判定用しきい値βは、エンジン再始動判定用しきい値αと等しい値とする(β=α)。
【0041】
このため、アイドルストップ状態への移行直後にエンジンを再始動させるような限られた状況以外では、パワーステアリングモータ5は、直ちに停止されるようになり、エンジン再始動時の操舵角は、適切となり(すなわち、操舵角が大きくなることはなく)、一定に保たれる。
【0042】
以上のように、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中にパワーステアリングモータ5の駆動状態(駆動可能状態又は停止)をアイドルストップ中の操舵トルク情報を基に決定している。この結果として、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ中に操舵操作されたことに対応してエンジンを直ぐに再始動できない状況においても、パワーステアリングモータ5の駆動を維持できるようになり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0043】
そして、パワーステアリング制御装置1は、アイドルストップ直後にエンジンを再始動させるような限られた状況以外では、パワーステアリングモータ5の駆動を即座に停止させることができるため、操舵操作によってエンジンを再始動させる際の操舵角(すなわち、エンジン再始動時操舵角)を常に適切かつ一定に保つことができる。
また、本実施形態では、既存の車両構成部品で対応可能になるため、コストアップをしないで前述のような構成を実現できる。
【0044】
また、本実施形態では、第1モータ駆動処理及び第2モータ駆動処理を同一ロジックを用いて定数の変更等で処理の切り替えを行うこともできる。これによって、本実施形態では、アイドルストップの仕様によって同一処理などへの変更が可能になる。
また、前述の実施形態の説明では、アイドルストップ判定部11は、例えば、エンジン停止判定部を構成する。また、アシスト判定部12及びモータ駆動許可判定部13は、例えば、モータ駆動制御部を構成する。また、モータ駆動可能状態判定用しきい値βは、例えば、第1しきい値に相当する。また、エンジン再始動判定用しきい値αは、例えば、第2しきい値に相当する。
【0045】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、前記ステップS4の停車状態の判定を減速中の判定に換えることもできる。この場合、アシスト判定部12は、ステップS4で減速中であると判定すると、前記ステップS4に進む。また、アシスト判定部12は、ステップS4で減速中でないと判定すると、前記ステップS7に進む。このような処理によって、パワーステアリング制御装置1は、減速中のアイドルストップについても、パワーステアリングモータ5の駆動状態を制御することができる。
【0046】
また、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0047】
1 パワーステアリング制御装置、2 エンジン回転数検出部、3 車速検出部、4 操舵トルク検出部、5 パワーステアリングモータ、10 ECU、11 アイドルストップ判定部、12 アシスト判定部、13 モータ駆動許可判定部
図1
図2