特許第5974634号(P5974634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974634
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   B60R19/24 N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-120898(P2012-120898)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-244884(P2013-244884A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 礼男
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−154570(JP,A)
【文献】 実開平04−003856(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00 − 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後端に設置されるリヤバンパーと、該リヤバンパーに取付けられる別部品とを備える車体後部構造において、
前記リヤバンパーは、
車幅方向に延びていて車両の背面にほぼ平行に取付けられる本体部と、
前記本体部に形成された開口部であり車幅方向に延びていて前記別部品が車体側から取付けられている開口部と、
前記本体部の下端から車体側に突出する下面と、
前記下面に形成され車体側に向けて斜め上方に延びるステーであり上端に車体に取付けられる車体用取付座面が形成されたステーとを含み、
当該車体後部構造は、
前記別部品と前記ステーとの間を連結する補強部材をさらに備え、
前記補強部材は、
前記別部品に締結される第1取付座面と、
前記ステーに締結される第2取付座面と、
前記車体用取付座面および前記車体に重ねられこれらに共締めによって締結される第3取付座面とを備えることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記補強部材の前記第1取付座面は、車幅方向に延びる縦壁を形成していて、
前記別部品は、前記第1取付座面にほぼ平行に形成されていて該第1取付座面が車体側から重ねられる縦壁座面を有し、
前記リヤバンパーは、前記開口部の周辺に形成され前記第1取付座面および前記縦壁座面に重ねられて締結される肉厚部を有することを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記第1取付座面は、前記縦壁の車幅方向に沿った両端部から車体後方に延びる一対の側壁を有することを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤバンパーは、前記開口部の端部に車体側に延びていて前記別部品に差し込まれる差込部を有し、
前記補強部材は、前記リヤバンパーの前記差込部の車両前方にて前記別部品に接することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記補強部材は、前記別部品と前記ステーとの間に位置し、側面視で重なるように配置された複数のリブを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後端に設置されるリヤバンパーを備える車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の背面には、車幅方向に延びるリヤバンパーが取付けられる。リヤバンパーは、例えば成形金型を用いて一体成形された樹脂製の部材である。
【0003】
特許文献1には、リヤバンパーの裏面に取付けられた補強部材と、リヤバンパーの裏面に補強部材を押付けるクリップ部材とを備えた補強構造が記載されている。リヤバンパーの裏面には、リヤバンパーの下端から車体側に張り出したフランジと、フランジよりも上方に位置するリブとが設けられている。
【0004】
補強部材は、一端側がフランジに締結され、他端側がリブを跨ぐように当接している。補強部材の他端側は、リブを跨いだ状態でリブを露出する開口部を有する。クリップ部材は、開口部から露出したリブと係合し、補強部材の他端側をリヤバンパーの裏面に押付ける。
【0005】
特許文献1の補強構造では、リヤバンパーに対する補強を行いリヤバンパーの変形を抑制し、また、補強部材の取付作業を簡略化できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−334499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、リヤバンパーには、例えば商品価値を高めるために装飾パーツ等の別部品がオプションとして付けられる場合がある。例えばユーザの希望に合わせて、リヤバンパーの色とは異なる色が設定された別部品を、リヤバンパーの意匠面に形成された開口部に取付ける場合がある。
【0008】
このような場合、リヤバンパーの開口部が車幅方向に長く車両上下方向に短い形状であれば、リヤバンパーの剛性が低くなる。このため、リヤバンパーは、意匠面側から荷重を受けると、形状が容易に変形し、商品価値が損なわれてしまう。
【0009】
特許文献1の補強構造は、単に、リヤバンパーの裏面に補強部材およびクリップ部材を設けた構成に過ぎず、別部品が開口部に取付けられた状態でのリヤバンパーの剛性については考慮されていない。
【0010】
なお、別部品を取付けずマスキング塗装によってリヤバンパーの意匠面に異なる色を設定することも考えられる。この場合には、リヤバンパーに開口部を形成する必要がないので、リヤバンパーの剛性は低下しない。しかし、マスキング塗装をリヤバンパーの車幅方向に沿って直線的に行う場合、例えばマスキングテープを車幅方向に沿って所定の位置に直線的に確実に貼ることは困難である。そのため、マスキング塗装では、色の境界線(色見切り)が歪む可能性もあり、品質管理にコストがかかってしまう。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み、別部品が開口部に取付けられるリヤバンパーの変形を抑制できる車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、車体の後端に設置されるリヤバンパーと、リヤバンパーに取付けられる別部品とを備える車体後部構造において、リヤバンパーは、車幅方向に延びていて車両の背面にほぼ平行に取付けられる本体部と、本体部に形成された開口部であり車幅方向に延びていて別部品が車体側から取付けられている開口部と、本体部の下端から車体側に突出する下面と、下面に形成され車体側に向けて斜め上方に延びるステーであり上端に車体に取付けられる車体用取付座面が形成されたステーとを含み、車体後部構造は、別部品とステーとの間を連結してステーを車体に取付ける補強部材をさらに備え、補強部材は、別部品に締結される第1取付座面と、ステーに締結される第2取付座面と、車体用取付座面および車体に重ねられこれらに共締めによって締結される第3取付座面とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成において、リヤバンパーは、車幅方向に延びる開口部を有しているので剛性が低い。このため、リヤバンパーの意匠面側(車両後方)から荷重を受けた場合、リヤバンパーは形状が変形する可能性がある。そこで、上記構成では、リヤバンパーの開口部に取付けられた別部品とリヤバンパーの一部であるステーとの間を補強部材で連結した。これにより、リヤバンパーの意匠面側からの荷重に抗して、補強部材は、別部品を車体後方に押し付ける。つまり、補強部材は、別部品を介して間接的にリヤバンパーを車体後方に押付けることになり、リヤバンパーの変形を抑制できる。
【0014】
また、補強部材は、車体に取付けられる前に、予め第1取付座面および第2取付座面に別部品およびステーをそれぞれ取付けることができる。そして、補強部材は、リヤバンパーへの組付が完了した後、第3取付座面に車体を取付けることができる。このように、補強部材は、事前にリヤバンパーに部組された状態で車体に取付けられるので、車体への組付工数が増えず、また、作業手順も複雑にならない。
【0015】
上記の補強部材の第1取付座面は、車幅方向に延びる縦壁を形成していて、別部品は、第1取付座面にほぼ平行に形成されていて第1取付座面が車体側から重ねられる縦壁座面を有し、リヤバンパーは、開口部の周辺に形成され第1取付座面および縦壁座面に重ねられて締結される肉厚部を有するとよい。これにより、リヤバンパーの意匠面側からの荷重に抗して、補強部材の第1取付座面は、別部品の縦壁座面を介してリヤバンパーの肉厚部を車両後方に押し付ける。第1取付座面は、車幅方向に延びる縦壁を形成しているので、車幅方向に沿った広い範囲でリヤバンパーを車両後方に押し付ける。よって、補強部材は、リヤバンパーの変形をより広い範囲で抑制できる。
【0016】
上記の第1取付座面は、縦壁の車幅方向に沿った両端部から車体後方に延びる一対の側壁を有するとよい。これにより、第1取付座面は、別部品の縦壁座面およびリヤバンパーの肉厚部を、縦壁および一対の側壁で囲むことができる。このため、補強部材を別部品に取付ける際の位置決めが容易となる。
【0017】
上記のリヤバンパーは、開口部の端部に車体側に延びていて別部品に差し込まれる差込部を有し、補強部材は、リヤバンパーの差込部の車両前方にて別部品に接するとよい。これにより、リヤバンパーの意匠面側からの荷重に抗して、補強部材は、剛性が低く変形し易いと考えられる開口部の端部に位置する差込部を、別部品を介して車両後方に押し付ける。よって、補強部材は、リヤバンパーの変形をより確実に抑制できる。
【0018】
上記の補強部材は、別部品とステーとの間に位置し、側面視で重なるように配置された複数のリブを有するとよい。これにより、補強部材は、全体としての剛性が向上し、リヤバンパーの意匠面側からの荷重を効果的に分散させ、リヤバンパーの変形をより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、別部品が開口部に取付けられるリヤバンパーの変形を抑制できる車体後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における車体後部構造に含まれるリヤバンパーの裏側を見た状態を示す図である。
図2図1のリヤバンパーの要部を拡大して示す図である。
図3図1のリヤバンパーの裏面に補強部材が取付けられた状態を示す図である。
図4図3の補強部材を含む車体後部構造を斜め上方から見た状態を示す図である。
図5図4の車体後部構造を車両前方から見た状態を示す図である。
図6図5の車体後部構造の断面図である。
図7図5の車体後部構造の他の断面図である。
図8図5の車体後部構造がリヤバンパーの意匠面側からの荷重を受けた場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態における車体後部構造に含まれるリヤバンパーの裏側を見た状態を示す図である。図2は、図1のリヤバンパーの要部を拡大して示す図である。図2(a)は、図1の点線で囲まれた領域を拡大して示す図である。図2(b)は、図1(b)から別部品を取り外した状態を示す図である。
【0023】
リヤバンパー100は、一体成形される樹脂製の成形品であり、不図示の車体の背面を成すバックパネルに設置される。リヤバンパー100は、本体部102と、図2(b)に示す開口部104と、ステー106と、肉厚部108とを有する。
【0024】
本体部102は、図1に示すように、車幅方向に延びていて車体の背面にほぼ平行に取付けられる縦壁を形成している。開口部104は、図2(b)に示すように、本体部102の内部に形成されていて、車幅方向に長く車両上下方向に短い形状を有する。
【0025】
ステー106は、図2(a)および図2(b)に示すように、本体部102の下端から車体側に突出する下面110に形成されていて、斜め上方に延びている。また、ステー106の上端112には、車体に取付けられる車体用取付座面114が形成されている。この車体用取付座面114には、車体下側からクリップなどが挿入される孔部114aが形成されている。
【0026】
肉厚部108は、図2(b)に示すように、開口部104の周辺に形成されていて、ボス形状を有する。また、肉厚部108には、車体側からスクリューなどが捻じ込まれるネジ穴108aが形成されている。
【0027】
ところで、リヤバンパー100は、一般に車体パネルの色(車体色)と同じ色が設定される。しかし、商品価値を高めるため、あるいはユーザの希望に合わせてリヤバンパー100の意匠面の一部に車体色と異なる色を設定する場合がある。ここでは、車体色と異なる色が設定された別部品(ガーニッシュ116)を、図1および図2(a)に示すようにリヤバンパー100の開口部104に取付けることで、見栄えのよいリヤバンパー100を得ている。
【0028】
ガーニッシュ116は、図1に示すように、リヤバンパー100の開口部104の形状に対応していて、車幅方向に長く車両上下方向に短い形状を有している。ガーニッシュ116は、リヤバンパー100の開口部104に対して裏面側から取付けられる。また、ガーニッシュ116は、図2(a)に点線で示すボス形状の肉厚部108を車体側から覆うカバー部分118を有する。カバー部分118は、車体側に位置していて、縦壁からなる縦壁座面120を有する。縦壁座面120には、肉厚部108のネジ穴108aと重なる孔部120aが形成されている。
【0029】
上記のリヤバンパー100は、見栄えがよいものの、車幅方向に延びる開口部104を有しガーニッシュ116が取付けられたものであり、剛性が低い。このため、リヤバンパー100の意匠面側(車体後方)から荷重を受けた場合には、リヤバンパー100は、容易に変形し見栄えが損なわれる可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、ガーニッシュ116の裏面とリヤバンパー100の一部であるステー106との間を補強部材で連結している。以下、図3図7を参照して、補強部材が取付けられた車体後部構造について説明する。なお、補強部材は、樹脂製あるいは金属製のいずれでもよいが、軽微な衝突を想定すると弾性を有する樹脂製が好ましい。
【0031】
図3は、図1のリヤバンパー100の裏面に補強部材130が取付けられた状態を示す図である。図3(a)は、本実施形態における車体後部構造140を車体側(車体前方)から見た状態を示している。図3(b)は、図3(a)の車体後部構造140に含まれる補強部材130の周辺を拡大して示す図である。図4は、図3の補強部材130を含む車体後部構造140を斜め上方から見た状態を示す図である。図5は、図4の車体後部構造140を車両前方から見た状態を示す図である。
【0032】
図6は、図5の車体後部構造140の断面図である。図6(a)は、図5の車体後部構造140のA−A断面図である。図6(b)は、図5の車体後部構造140のB−B断面図である。図7は、図5の車体後部構造140の他の断面図である。図7(a)は、図5の車体後部構造140のC−C断面図である。図7(b)は、図5の車体後部構造140のD−D断面図である。ただし、図6(b)および図7(a)では、図5では省略した車体の一部も示している。
【0033】
車体後部構造140は、図3(a)および図3(b)に示すように、リヤバンパー100の車幅方向のほぼ中央付近に配置された樹脂製の補強部材130を備える。補強部材130は、図4および図5に示すように、第1締結部材(スクリュー142)によりガーニッシュ116のカバー部分118に取付けられる第1取付座面144を有している。第1取付座面144は、車幅方向に延びる縦壁の両端から車体後方に延びる一対の側壁146a、146bを有していて、カバー部分118を車体側から囲んでいる。
【0034】
スクリュー142は、図6(a)に示すように、第1取付座面144とカバー部分118の上記縦壁座面120とがほぼ平行に重ねられた状態で、第1取付座面144の孔部144aとカバー部分118の上記縦壁座面120の孔部120aとを挿通し、さらにリヤバンパー100の肉厚部108のネジ穴108aに捻じ込まれる。このようにして、補強部材130は、ガーニッシュ116に取付けられる。
【0035】
また、第1取付座面144の上記一対の側壁146a、146bは、図4および図5に示したようにカバー部分118を囲んでいるので、補強部材130をガーニッシュ116に取付ける際の位置決めを容易に行うことができる。
【0036】
補強部材130は、図3(b)および図5に示すように、第2締結部材(スクリュー148)によりステー106に取付けられる。特に図6(b)に示すように、補強部材130は、ステー106に重ねられスクリュー148が捻じ込まれる第2取付座面150を有している。このようにして、補強部材130は、ステー106に取付けられる。
【0037】
また、第2取付座面150は、図示のように位置決めピン152を有する。位置決めピン152は、図6(b)に示すように、ステー106に重ねられた状態でステー106を貫通し、図示のようにスクリュー142よりも下方に位置する。
【0038】
さらに、補強部材130は、特に図6(b)に示すように、第3締結部材(クリップ154)により、車体に取付けられる第3取付座面156を有している。ここでの車体とは、車体の背面を成すバックパネル158である。バックパネル158は、下端から車体後方に張り出したフランジ160を有する。
【0039】
図6(b)に示すように、第3取付座面156、ステー106の上端112に形成された車体用取付座面114およびバックパネル158のフランジ160は、ほぼ平行に重ねられていて、車体下方から挿入されるクリップ154によって共締めされる。このようにして、補強部材130は、車体に取付けられる。
【0040】
つまり、補強部材130は、ガーニッシュ116とステー106の上端112との間を連結して、ステー106を車体に取付ける。ここで補強部材130の取付手順を説明すると、まず、補強部材130の位置決めピン152をステー106に貫通させ、位置決めを行う。その後で例えば、スクリュー142により第1取付座面144をガーニッシュ116に取付け、また、スクリュー148により第2取付座面150をステー106に取付ける。このようにして、補強部材130は、ガーニッシュ116が組付けられたリヤバンパー100に部組される。
【0041】
リヤバンパー100に部組された補強部材130は、第3取付座面156がステー106の車体用取付座面114に重ねられた状態になっている。そこで、第3取付座面156および車体用取付座面114を、バックパネル158のフランジ160にさらに重ねて、車体下方からクリップ154を挿入して共締めを行う。したがって、補強部材130は、事前にリヤバンパー100に部組された状態で車体に取付けられるので、作業手順も複雑にならず、車体への組付工数も増えない。
【0042】
補強部材130は、図6(a)に示すように、ガーニッシュ116を介してリヤバンパー100の開口部104の下側端部162を車体後方に押し付けている。また、補強部材130は、図6(b)および図7(a)に示すように、ガーニッシュ116を介して開口部104の上側端部164を車体後方に押し付けている。なお、補強部材130には、図7(a)に示すように、ガーニッシュ116とステー106との間に後述するリブ166aが形成されている。
【0043】
リヤバンパー100は、図6(b)および図7(a)に示すように、開口部104の下側端部168から車体側に延びていて、ガーニッシュ116に差し込まれ係合する爪部170を有する。補強部材130は、図7(b)に示すように、車体上下方向に延びる縦壁172を有する。補強部材130の縦壁172は、ガーニッシュ116を介して、リヤバンパー100の開口部104の上側端部174および下側端部176を車体後方に押し付けている。つまり、補強部材130は、ガーニッシュ116を介して間接的にリヤバンパー100を車体後方に押し付けている。ここで、リヤバンパー100の開口部104の上側端部164、174および下側端部162、176は、ガーニッシュ116に差し込まれる差込部に相当する。よって、補強部材130は、車両前方側からガーニッシュ116を介して、これらの差込部を車体後方に押付ける。
【0044】
また、補強部材130は、複数のリブ形状を有している。補強部材130は、例えば図4および図5に示すように、上記リブ166aに対向するリブ166bと、補強部材130の車幅方向の側面を形成する一対のリブ178a、178bと、リブ178a、178bの下方に延びる一対のリブ180a、180bとを備える。以下、図8を参照して、各リブについて説明する。
【0045】
図8は、図5の車体後部構造140がリヤバンパー100の意匠面側からの荷重を受けた場合を説明する図である。ここでは、図5の車体後部構造140を矢印E(車幅方向)に示す方向から見て、さらにリブ178a、180aの一部を切欠いた状態を示すものとする。
【0046】
補強部材130では、図8に示すように、すべてのリブ166a、166b、178a、178b、180a、180bが車幅方向から見て互いに重なり合っている。また、各リブは、リヤバンパー100のステー106とガーニッシュ116の裏面との間に位置している。このため、車体後部構造140では、リヤバンパー100の意匠面側に荷重Fがかかった場合、荷重Fは、各リブによって矢印Gに示すように効率的にステー106および車体のバックパネル158に伝達され分散される。
【0047】
つまり、車体後部構造140では、リヤバンパー100の意匠面側からの荷重Fに抗して、リブ形状を有する補強部材130がステー106とガーニッシュ116との間で突っ張り、ガーニッシュ116を車体後方に押し付ける。これにより、補強部材130は、車幅方向に延びるガーニッシュ116を介して間接的にリヤバンパー100を車体後方に押付けることになり、リヤバンパー100の変形を広い範囲で抑制できる。
【0048】
仮に、ガーニッシュ116を介さず、補強部材130が直接リヤバンパー100を車体後方に押付ける構成にすると、リヤバンパー100のうち補強部材130に押し付けられた箇所が局所的に変形する可能性がある。また、補強部材130を別体とせず、ガーニッシュ116と一体成形した場合には、成型金型の構造が複雑になってしまう。特に、補強部材130に相当する部分を車幅方向に沿って延びる形状としリヤバンパー100を広い範囲で押付ける構成としなれば、リヤバンパー100の形状を局所的に変形させてしまう。
【0049】
さらに、リヤバンパー100のステー106を利用せず、車体とガーニッシュ116の裏面を補強部材130で直接押す構成にすると、補強部材130がステー106に固定されず、補強部材130をリヤバンパー100に部組することができない。そして、この構成では、補強部材130を車体側に強固に設置しなければ、補強部材130がガタついて異音の原因となるため、製造ライン上で車体に補強部材130を取付ける工程が必要となり、工数が増えてしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態の車体後部構造140では、ガーニッシュ116とステー106との間を連結して、ステー106を車体のバックパネル158に取付ける補強部材130を配置した。補強部材130は、リヤバンパー100の意匠面側からの荷重に抗して、車幅方向に延びるガーニッシュ116を介して間接的にリヤバンパー100を車体後方に押付けるので、リヤバンパー100の変形を抑制できる。なお、車体後部構造140では、荷重に伴うリヤバンパー100の変形だけでなく、リヤバンパー100の成型時での形状の変形についても矯正できる。
【0051】
また、補強部材130は、車体のバックパネル158に取付けられる前に、予めスクリュー142、148を用いて、第1取付座面144および第2取付座面150にガーニッシュ116およびステー106をそれぞれ取付けることができる。そして、補強部材130は、リヤバンパー100への組付が完了した後、クリップ154を用いて第3取付座面156に車体を取付けることができる。このように、車体後部構造140では、補強部材130が事前にリヤバンパー100に部組された状態で車体に取付けられるので、車体への組付工数が増えず、また、作業手順も複雑にならない。
【0052】
また、車体後部構造140では、図6(a)に示すように、車幅方向に延びる縦壁を形成する補強部材130の第1取付座面144が、リヤバンパー100の意匠面側からの荷重に抗して、ガーニッシュ116の縦壁座面120を介してリヤバンパー100の肉厚部108を車両後方に押し付ける。よって、車体後部構造140では、リヤバンパー100の変形をより広い範囲で抑制できる。
【0053】
また、車体後部構造140では、図6(b)および図7(a)に示すように、リヤバンパー100の開口部104から車体側に延びていてガーニッシュ116に差し込まれる差込部が、車両前方から補強部材130により車体後方に押し付けられる。したがって、車体後部構造140では、リヤバンパー100の開口部104の端部に位置し剛性が低く変形し易いと考えられる差込部を、補強部材130によりガーニッシュ116を介して車両後方に押し付ける。よって、車体後部構造140では、リヤバンパー100の変形を抑制できる。
【0054】
また、車体後部構造140では、ガーニッシュ116をリヤバンパー100の裏面から組付け、さらに補強部材130が車体側からガーニッシュ116を押付けている。このため、ガーニッシュ116をリヤバンパー100の意匠面側から組付ける場合に比べて、組付時にガーニッシュ116あるいはリヤバンパー100に傷が付くことがなく、部品間の隙間を小さく設定できる。よって、ガーニッシュ116が組み付けられたリヤバンパー100は、ガーニッシュ116との間の隙間が小さく、見栄えが損なわれず商品価値が高い。
【0055】
さらに、車体後部構造140では、補強部材130がガーニッシュ116とステー106との間に位置し、側面視で重なるように配置された複数のリブ166a、166b、178a、178b、180a、180bを有する。このため、補強部材130は、全体としての剛性が向上するとともに、リヤバンパー100の意匠面側からの荷重を効果的に分散させ、リヤバンパー100の変形をより確実に抑制できる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、車体の後端に設置されるリヤバンパーを備える車体後部構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100…リヤバンパー、102…本体部、104…開口部、106…ステー、108…肉厚部、110…下面、112…上端、114…車体用取付座面、116…ガーニッシュ、118…カバー部分、120…縦壁座面、130…補強部材、140…車体後部構造、142、148…スクリュー、144…第1取付座面、146a、146b…側壁、150…第2取付座面、152…位置決めピン、154…クリップ、156…第3取付座面、158…バックパネル、160…フランジ、162、168、176…下側端部、164、174…上側端部
図1
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図5
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図8