特許第5974645号(P5974645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974645
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】イオンビーム照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20160809BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H01J37/317 B
   H01L21/265 603D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-127538(P2012-127538)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-251240(P2013-251240A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中澤 喜之
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正敏
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−213845(JP,A)
【文献】 特開2011−081367(JP,A)
【文献】 特開2007−324462(JP,A)
【文献】 特開平04−372151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01L 21/265
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内において基板にイオンビームを照射して処理を施すイオンビーム照射装置であって、
基板を保持しつつ、イオンビームが照射されるイオンビーム照射領域とイオンビームが照射されないイオンビーム退避領域との間を移動可能に設けられた基板保持部材と、
前記基板保持部材を移動させるための駆動装置と、
一端が真空チャンバ側に他端が前記基板保持部材側にそれぞれ接続されて、前記基板保持部材の移動に伴って連動するリンクと、
前記リンクに沿って配線されるとともに、前記駆動装置に電力を供給するケーブルとを備え、
前記リンクの内部には、前記基板保持部材又は前記駆動装置を冷却するための流体を送る流路が設けられて、
前記リンクが、少なくとも1以上の節部と前記節部によって互いに回転可能に連結された複数のリンクメンバーとから成り、
前記ケーブルが、前記節部に巻き付けられていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項2】
前記イオンビーム照射領域において、前記ケーブルが、前記リンクメンバーのイオンビーム照射側の裏側に配線されていることを特徴とする請求項記載のイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記リンクが、前記リンクメンバーの前記ケーブルが配線される片側を覆うように配置される第1カバーと、前記節部の外周を覆うように配置される第2カバーとを有することを特徴とする請求項1又は2記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
前記第1カバーと、前記第2カバーとが、カーボン素材からなることを特徴とする請求項記載のイオンビーム照射装置。
【請求項5】
前記リンクメンバーの前記ケーブルが配線される範囲には、複数の係止部が設けら
れて、
前記ケーブルが、前記係止部に係止されることにより、前記リンクメンバーに沿って湾曲するように配線されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のイオンビーム照射装置。
【請求項6】
前記駆動装置が、前記基板保持部材に保持された基板を傾ける駆動機構と、前記駆動機構を内部に収納する筐体とからなり、
前記筐体の内部が、大気圧であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のイオンビーム照射装置。
【請求項7】
前記リンクには、複数の前記流路が設けられて、
一部の前記流路が、冷却用の水が流れる通水路であり、
一部の前記流路が、冷却用の空気が流れる通気路であり、
前記通気路が、前記通水路からの漏水を検知する漏水検知装置を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のイオンビーム照射装置。
【請求項8】
真空チャンバ内において基板にイオンビームを照射して処理を施すイオンビーム照射装置であって、
基板を保持しつつ、イオンビームが照射されるイオンビーム照射領域とイオンビームが照射されないイオンビーム退避領域との間を移動可能に設けられた基板保持部材と、
前記基板保持部材を移動させるための駆動装置と、
一端が真空チャンバ側に他端が前記基板保持部材側にそれぞれ接続されて、前記基板保持部材の移動に伴って連動するリンクと、
前記駆動装置に電力を供給するケーブルとを備え、
前記ケーブルが、前記リンクに沿って配線されており、
前記リンクの内部には、前記基板保持部材又は前記駆動装置を冷却するための流体を送る複数の流路が設けられており、
一部の前記流路が、冷却用の水が流れる通水路であり、
一部の前記流路が、冷却用の空気が流れる通気路であり、
前記通気路が、前記通水路からの漏水を検知する漏水検知装置を有していることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板保持部材に保持された基板にイオンビームを照射するイオンビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビーム照射装置として、例えば特許文献1に示すような小型の基板に用いられるイオンビーム照射装置が知られている。特許文献1におけるイオンビーム照射装置では、イオンビームが照射されるイオンビーム照射領域とイオンビームが照射されないイオンビーム退避領域との間を移動可能に設けられた基板保持部材によって基板が保持される。そして、イオンビーム照射領域において、基板保持部材によって基板を傾斜させることで、基板に照射されるイオンビームの照射角度を変更する。この構成により、特許文献1のイオンビーム照射装置では、基板に対して均一にイオンビームを注入することができる。
【0003】
ところで、特許文献1では、基板を傾斜させるために設けられたチルトモータを真空チャンバ内に配置している。そして、電力を供給するケーブルをチルトモータに繋ぐために、真空チャンバ内にケーブルを配線するための配線専用の中空パイプが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−59994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体ウェハのような比較的小型の基板に用いられるイオンビーム照射装置においては、上述した特許文献1の構成でも問題は生じない。しかし、テレビの液晶ディスプレイ等の大型の基板に用いられるイオンビーム照射装置においては、イオンビーム照射装置自体が大型なものとなるため、真空チャンバ内のスペースが制限される。そのため、電力を供給するためのケーブル配線専用の別部材を真空チャンバ内に設けることは難しい。また、大型の装置では、その装置を動かす電力やイオンビームの出力も大きくなり、基板保持部材やモーター(駆動装置)で発生する熱を冷却する必要が生じる。そのため、小型の装置では必要のなかったクーリング配管を別途設けなければならず、さらに真空チャンバ内のスペースが制限されてしまい、ケーブル配線専用の別部材を設けることはより困難なものとなる。
【0006】
一方、真空チャンバ内の非常に限られたスペースの中でケーブルをそのまま配線すると、イオンビーム照射装置が作動する際に、ケーブルが誤ってイオンビーム照射装置に引っ掛かり断線するという問題や、ケーブルにイオンビームが照射されることでケーブルが劣化したり、イオンビームが照射されたケーブルからガスが発生したりするという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、クーリング配管に着目してケーブルを無理なく配線することができ、ケーブルの断線及びケーブルの劣化やケーブルからのガスの発生を防止したイオンビーム照射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
真空チャンバ内において基板にイオンビームを照射して処理を施すイオンビーム照射装置であって、基板を保持しつつ、イオンビームが照射されるイオンビーム照射領域とイオンビームが照射されないイオンビーム退避領域との間を移動可能に設けられた基板保持部材と、前記基板保持部材を移動させるための駆動装置と、一端が真空チャンバ側に他端が前記基板保持部材側にそれぞれ接続されて、前記基板保持部材の移動に伴って連動するリンクと、前記駆動装置に電力を供給するケーブルとを備え、前記リンクの内部は、前記基板保持部材又は前記駆動装置を冷却するための流体を送る流路が設けられて、前記ケーブルが、前記リンクに沿って配線されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、ケーブル配線専用の別部材を設ける必要がないので、無理なくケーブルを配線することができる。また、基板保持部材や駆動装置の冷却のために設けられるリンクに沿ってケーブルが配線されるので、ケーブルがイオンビーム照射装置に引っ掛かって断線することやイオンビームが照射されることによりケーブルが劣化すること及びケーブルからガスが発生することを防止することができる。
【0010】
また本発明では、前記リンクが、少なくとも1以上の節部と前記節部によって互いに回転可能に連結された複数のリンクメンバーとから成り、前記ケーブルが、前記節部に巻かれた状態で配線されている。
【0011】
これにより、ケーブルがリンクから抜け落ちる事を防止することができる。このとき、ケーブルが最大限に引っ張られる位置でリンクメンバーが最大限に傾斜する方向にケーブルを巻いておくことで、基板保持部材に連動してリンクが移動しても、ケーブルが引っ張られることによる断線を防止できる。
【0012】
加えて、節部にケーブルを幾重にも巻いておくことで、ケーブルにたるみが生じた際に、そのたるみ長さを節部に巻かれた複数のケーブルで分散することができる。そのため、1つ1つの節部に巻かれたケーブルのたるみを低減し、ケーブルのたるみ部分がリンクからはみ出ることを防ぐことができる。これにより、リンクから、はみ出たケーブルがイオンビーム照射装置に引っ掛かることで、ケーブルが断線することも防止できる。
【0013】
また本発明では、前記イオンビーム照射領域において、前記ケーブルが、前記リンクメンバーのイオンビーム照射側の裏側に配線されている。
【0014】
これにより、ケーブルにイオンビームが照射されることを防ぎ、ケーブルの劣化及びケーブルからのガスの発生を防止できる。
【0015】
さらに本発明では、前記リンクが、前記リンクメンバーの前記ケーブルが配線される片側を覆うように配置される第1カバーと、前記節部の外周を覆うように配置される第2カバーとを有する。
【0016】
そのため、ケーブルにイオンビームが照射されることを確実に防止することができる。なお、上記カバーはカーボン素材からなることが好ましい。
【0017】
また本発明では、前記リンクメンバーの前記ケーブルが配線される範囲には、複数の係止部が設けられて、前記ケーブルが、前記係止部に係止されることにより、前記リンクメンバーに沿って湾曲するように配線されている。
【0018】
これにより、ケーブルがリンクから抜け落ちることを防止できる。また、係止部の数を増減させることで、係止部に引っ掛けられるケーブルを増減させてリンクメンバーにおけるケーブルの長さを調整することができる。そのため、イオンビーム照射装置においてメンテナンスの際に長さの異なるケーブルを用いたとしても、リンクに沿ってケーブルを配線することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0019】
また本発明では、前記駆動装置が、前記基板保持部材に保持された基板を傾ける駆動機構と、前記駆動機構を内部に収納する筐体とからなり、前記筐体の内部が、大気圧である。
【0020】
これにより、駆動機構を大気中で作動することができるので、例えば従来から使用されているモーターを駆動機構として使用でき、イオンビーム照射装置のコストを下げることができる。
【0021】
また本発明では、前記リンクには、複数の前記流路が設けられて、一部の前記流路が、冷却用の水が流れる通水路であり、一部の前記流路が、冷却用の空気が流れる通気路であり、前記通気路が、前記通水路からの漏水を検知する漏水検知装置を有する。
【0022】
これにより、漏水検知装置が作動した場合には、イオンビーム照射装置を迅速に止めることができ、イオンビーム照射装置の安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
このように構成した本発明によれば、ケーブルの配線のために別部材を設ける必要がないので、無理なくケーブルを配線できる。また、ケーブルがリンクに沿って配線されるので、ケーブルがイオンビーム照射装置に引っ掛かり断線することや、イオンビームが照射されることによるケーブルの劣化やケーブルからのガスの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態にかかるイオンビーム照射装置を示す概略図。
図2】本発明の一実施形態にかかるイオンビーム照射装置を示す斜視図。
図3】本発明の一実施形態にかかるイオンビーム照射装置を示す平面図。
図4】本発明の一実施形態にかかるリンクを示す斜視図。
図5】本発明の一実施形態にかかるカバーを外した際のリンクを示す平面図。
図6】本発明の一実施形態にかかるリンクのAA端面図。
図7】本発明の一実施形態にかかるリンクのリンクメンバーを示す斜視図。
図8】本発明の一実施形態にかかるリンクの節部を示す斜視図。
図9】本発明の一実施形態にかかるリンクの節部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明に係るイオンビーム照射装置1の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
本発明のイオンビーム照射装置1は、真空チャンバ内において、フラットパネルディスプレイ等に用いられる大型の基板に対してイオンビームの照射を行い、処理を施すためのものである。ここで、本実施形態にかかる基板とは、例えば、ガラス基板、配向膜付ガラス基板、半導体基板、その他イオンビームが照射される基板を含むものである。また、基板の形状は本実施形態においては矩形形状の薄板形状をなしているが、円形であってもよい。
【0027】
イオンビーム照射装置1は、図1に示すように、真空チャンバ内部に、イオンビームを基板に照射する処理室100と、処理室100に隣接して処理待ちの基板を処理室100へと搬送する搬送室101と、搬送室101と大気の間において、基板を搬送及び格納するロードロック室102とを備える。各部屋の接続部分は、真空状態を維持するために真空弁(ゲートバルブ)により仕切られている。
【0028】
処理室101には、イオン源から発生したイオンが分析磁石を通過して運動量分析された後スリットを介して帯状に射出されるイオンビームが照射されるイオンビーム照射領域と、イオンビームが照射されないイオンビーム退避領域とが設けられている。イオンビーム照射領域とイオンビーム退避領域との間にはレール18が敷かれており、レール18には、レール18に沿って基板を保持しながら移動する基板保持部材2が設置されている。
【0029】
基板保持部材2は、図2に示すように、4本の櫛歯が一定の間隔で並んだ櫛状形状に設けられて、基板を図示しないクランパー等で保持する基板保持部2aと、基板保持部2aを水平方向から鉛直方向に傾斜可能に支持する支持部2bと、支持部2bをレール18に沿って移動可能に設けるランナー部2cとから構成される。基板保持部材2は、例えば、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属部材あるいはカーボン素材等の板状部材で構成されている。
【0030】
支持部2bには、図3に示すように、駆動装置3が設けられている。駆動装置3は、基板保持部2aを傾斜可能に移動させるためのものであって、本実施形態では駆動装置3は直方体形状の筐体の内部に配置される。そのため、筐体の内部を大気圧にしておくことで大気圧用のモーターを使用することができ、イオンビーム照射装置1のコストを抑えることができる。
【0031】
また、図2及び3に示すように、支持部2bには、内部に基板保持部材2および駆動装置3を冷却するための流路10が設けられたリンク4が配置される。リンク4は、一端が支持部2bに他端が処理室の真空チャンバ側にそれぞれ回転可能に支持されており、基板保持部材2に伴って連動する。リンク4の内部に設けられた流路10は、支持部2bを介して基板保持部材2および駆動装置3に繋がっている。また、リンク4には、駆動装置3に電力を供給するためのケーブル5がリンク4に沿って配線されている。ケーブル5はリンク4の一端が支持されている支持部2bを介して駆動装置3に繋がれている。
【0032】
本発明のイオンビーム照射装置1では、ロードロック室102が真空引きされて真空状態となった後に、イオンビームが未だ照射されていない未処理の基板が、ロードロック室102から搬送室101へと運ばれる。搬送室101では、ロードロック室102から搬送されてきた未処理の基板が、水平に寝かされた状態で処理室100へと運ばれる。処理室100においては、未処理の基板が、基板保持部材2により保持された後、イオンビーム退避領域で基板保持部材2によって水平に寝かされた状態から鉛直方向に起立させられる。そして、基板は、上述したレール18に沿ってイオンビーム退避領域からイオンビーム照射領域へと運ばれて、イオンビーム照射領域を通過する間に基板全面にイオンビームが照射される。イオンビームが照射された基板は、基板保持部材2によってイオンビーム退避領域で再度水平に寝かされた状態となって、搬送室101及びロードロック室102へと運ばれる。
【0033】
ここで、リンク4及びケーブル5の構成について、図4図9を参照しながら、以下詳述する。
【0034】
リンク4は、図4に示すように、円柱形状を有する節部4aと、節部4aによって互いに回転可能に接続されて細長い形状を有するリンクメンバー4bとから構成されている。節部4aの円柱の軸方向の長さは、リンクメンバー4bの該軸方向の長さよりも長くなるように構成されており、節部4aにおいて、リンクメンバー4bは該軸方向に対して互い違いとなるようにそれぞれ配置されている。
【0035】
リンクメンバー4bは、図5及び6に示すように、例えば、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属部材で構成された細長い板状部材であり、その両端には、節部4aと連結するための連結部分が設けられている。
【0036】
リンクメンバー4bの片面には、その長手方向と平行となる中心線に対して互い違いとなるように、一定の距離を隔てて、ケーブル5を配線するための複数の係止部8が設けられている。係止部8は、その長手方向の片側の辺が円弧を描くように形成された略直方体形状の突起であり、円弧を描く側がケーブル5と隣接するように配置されている。長手方向の辺が円弧を描くように構成されていることで、ケーブル5を係止部8に引っ掛からないように配線することができる。
【0037】
また、リンクメンバー4bには、リンクメンバー4bの両端と一定の距離を隔ててケーブル5を節部4aに導くケーブルガイド部9が設けられている。ケーブルガイド部9は、リンクメンバー4bの短手方向と平行となる長さが、節部4a側に向かって短くなるようにテーパが設けられた突起であり、リンクメンバー4bの長手方向と平行となる中心線に対して対称となるように一対設けられている。そのため、一対のケーブルガイド部9は、節部4a側に向かって開口が広がるように構成されている。リンクメンバー4bに係止部8及びケーブルガイド部9が設けられたことにより、リンクメンバー4bに配線されるケーブル5が抜け落ちることを防ぐことができる。
【0038】
リンクメンバー4bの内部には、図6に示すように、基板保持部材2及び駆動装置3を冷却するための流路10が4本設けられている。内側の2つの流路10は冷却用の水が流れる通水路10aであり、外側の2つの流路10は、冷却用の空気が流れる通気路10bである。通気路10bには、図示しない通水路10aからの漏水を検知する漏水検知装置が設けられている。そのため、漏水検知装置が作動した場合には、イオンビーム照射装置1を迅速に止めることができ、イオンビーム照射装置1の安全性を向上することができる。
【0039】
節部4aは、図8に示すように、略円柱形状を有するものであり、同一の中心軸に対してそれぞれ互いに回転可能に嵌合する第1嵌合部13aと、第2嵌合部13bとから構成されている。第1嵌合部13aおよび第2嵌合部13bのリンクメンバー4bと対向する端面および、第1嵌合部13aあるいは第2嵌合部13bと対向するリンクメンバー4bの端面には、4本の流路10(10a、10b)と、流路10からの空気または水が漏れることを防止するために4本の流路10の周囲に配置されるシーリングと、第1嵌合部13aあるいは第2嵌合部13bとリンクメンバー4bとを連結するためのねじ穴が設けられている。
【0040】
なお、本実施形態においては、リンクメンバー4bと第1嵌合部13aあるいは第2嵌合部13bとを別々に設けているが、リンクメンバー4bと第1嵌合部13aあるいは第2嵌合部13bとを一体的に設けても構わない。
【0041】
第1嵌合部13aは、図5及び7に示すように、リンクメンバー4bの厚みと同じ厚みを有する略円柱形状の軸部分と、リンクメンバー4bと連結するために軸部分の一部から突出するように設けられる連結部分と、軸部分から放射線状に突出して、ケーブル5の抜け落ちを防止する棒状形状の5つのガイド部12とから構成されている。連結部分は、軸部分と同じ厚みを有して、軸部分と連続するように一体的に設けられている。
【0042】
第1嵌合部13aの軸部分の片面には、図8に示すように、4本の流路10を第2嵌合部13bに繋げるために内部に図示しない貫通孔が形成された略円柱形状の凸部が設けられている。凸部には複数のOリングが設けられて、凸部から水あるいは空気が漏れることを防いでいる。
【0043】
第2嵌合部13bは、図5及び7に示すように、第1嵌合部13aの凸部を内部に嵌め込むための凹部が設けられた略円筒形状を有する軸部分と、リンクメンバー4bと連結するために、リンクメンバー4bと同じ厚みを有して軸部分の一部から突出するように設けられる連結部分と、連結部分の厚み方向の高さと同じ位置の軸部分から放射線状に突出する棒状形状の5つのガイド部12とから構成されている。連結部分は軸部分と連続するように設けられている。第2嵌合部13bの軸部分の円柱の軸方向の長さは、リンクメンバー4bの厚み方向の長さよりも長くなるように構成されている。また、凹部には、4本の流路10を繋ぐための図示しない貫通孔が形成されている。
【0044】
リンクメンバー4b及び節部4aには、図4及び8に示すように、カバー6が配置される。
リンクメンバー4bには、図4及び8に示すように、ケーブル5が配線される片側を覆うように第1カバー6aが配置されている。また、節部4aの外周には、節部4a全体を覆うように第2カバー6bが配置される。第1カバー6a及び第2カバー6bは、例えば、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属部材で構成されている。また、イオンビーム照射側に配置する第1カバー6a及び第2カバー6bは2重になっており、外側に配置するカバーはカーボンカバー7で構成されている。
【0045】
次に、リンク4に配線されるケーブル5について説明する。
まず、リンクメンバー4bに配線されるケーブル5は、図5及び図7に示すように、リンクメンバー4bの一端側に配置されるケーブルガイド部9からリンクメンバー4bの他端側に配置されるケーブルガイド部9の間を、係止部8に引っ掛かることにより波状形状を描いて湾曲するように配線される。
【0046】
次に節部4aに配線されるケーブル5は、図9に示すように、リンクメンバー4bの間に配置する節部4aの周囲に螺旋を描くように配線される。より具体的には、一方のリンクメンバー4bから導かれたケーブル5が、ケーブル5は第2嵌合部13bの筒部の周囲に螺旋を描くように配線されて、他方のリンクメンバー4bに導かれる。ケーブル5は、第1嵌合部13aに設けられたガイド部12と第2嵌合部13bに設けられたガイド部12との間に配線されるので、節部4aにおいてケーブル5が抜け落ちることを防ぐことができる。
【0047】
ここで、同一の節部4aにおいて、第1嵌合部13aに連結されるリンクメンバー4bと、第2嵌合部13bに連結されるリンクメンバー4bとは、係止部8及びケーブルガイド9が設置された面が互いに向き合うように配置される。そのため、第1嵌合部13aに連結されたリンクメンバー4bに配線されるケーブル5と、第2嵌合部13bに連結されたリンクメンバー4bに配線されるケーブル5とは、互いに対向するように配線されている。
【0048】
そのため、図5に示すように、節部4aの円柱の軸方向から見ると、イオンビーム照射側にケーブル5が配線されるリンクメンバー4bと、イオンビーム照射側とは反対側にケーブル5が配線されるリンクメンバー4bとが節部4aを介して交互に配置されることとなる。そこで、イオンビーム照射領域におけるリンクメンバー4bのケーブル5が、イオンビーム照射側とは反対側となるように配線を行うことによって、ケーブル5にイオンビームが照射されることにより、ケーブル5が劣化することやケーブル5からガスが発生することを防止することができる。
【0049】
このように構成されたイオンビーム照射装置1においては、基板保持部材2や駆動装置3の冷却のために設けられるリンク4に沿ってケーブル5が配線されるので、ケーブル5配線専用の別部材を設ける必要がない。これにより、無理なくケーブル5を配線でき、ケーブル5がイオンビーム照射装置1に引っ掛かって断線することやケーブル5にイオンビームが照射されることによりケーブル5が劣化することやケーブル5からガスが発生することを防止することができる。
【0050】
また、節部4aの円柱の軸方向から見て、節部4aを介したリンクメンバー4bが一直線に並んだ状態を基準状態とすると、節部4aにケーブル5を配線する際に、ケーブル5が節部4aの第1嵌合部13aに連結されたリンクメンバー4bと、第2嵌合部13bに連結されたリンクメンバー4bとによって最大限に引っ張られる位置で、リンクメンバー4bが基準状態から最大限に傾斜する方向にケーブル5を配線しておくことで、基板保持部材2の移動に連動してリンク4が移動しても、ケーブル5が引っ張られることによる断線を防止できる。
【0051】
加えて、節部4aにケーブル5を幾重にも螺旋状に巻いておくことで、ケーブル5にたるみが生じた際に、そのたるみ長さを節部4aに巻かれた複数のケーブル5で分散することができる。そのため、1つ1つの節部4aに巻かれたケーブル5のたるみを低減し、ケーブル5のたるみ部分がリンク4からはみ出ることを防ぐことができる。これにより、リンク4から、はみ出たケーブル5がイオンビーム照射装置1に引っ掛かることで、ケーブル5が断線することも防止できる。
【0052】
また、リンクメンバー4bに設置される係止部8の数を増減させることで、係止部8に引っ掛けられるケーブル5を増減させてリンクメンバー4bにおけるケーブル5の長さを調整することができる。そのため、イオンビーム照射装置1においてメンテナンスの際に長さの異なるケーブル5を用いたとしても、リンク4に沿ってケーブル5を配線することができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0053】
さらに、リンクメンバー4bに設置されるケーブルガイド部9が、節部4a側に向かって開口が広がるように構成されていることで、ケーブルガイド部9と節部4aとの間に配置されるケーブル5は動作の自由度が高くなる。そのため、リンクメンバー4bと節部4aとの間おいて、ケーブル5が引っ掛かることを防止して、ケーブル5を無理なく節部4aの周囲に巻かれるように配線することができる。
【0054】
そして、リンクメンバー4b及び節部4aにそれぞれ第1カバー6a及び第2カバー6bが配置されていることにより、ケーブル5にイオンビームが照射されてケーブル5が劣化することを防ぐことができる。また、イオンビーム照射側に配置する第1カバー6a及び第2カバー6bの外側にカーボンカバー7を配置することによって、金属部材で構成されるカバーにイオンビームが照射されることによって、金属カバーがスパッタリングされることも防ぐことができる。
【0055】
なお、本発明は本実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・イオンビーム照射装置
2・・・基板保持部材
3・・・駆動装置
4・・・リンク
4a・・・節部
4b・・・リンクメンバー
5・・・ケーブル
10(10a、10b)・・・流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9