(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トラップ部は、前記加熱側流出口、前記トラップ部における液体循環方向の上流側端部、および、前記トラップ部における液体循環方向の下流側端部よりも鉛直方向の下方に配置されている下側トラップを持ち、
前記第2の温度センサは前記下側トラップに配置されている請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の加熱装置。
【背景技術】
【0002】
液体を加熱するための加熱装置として、液体を収容する貯槽内にヒータを配置し、ヒータによって液体を加熱するものが知られている。この種の加熱装置において、何らかの理由により貯槽内に液体が供給されず(或いは貯槽内の液体が流出して)ヒータが剥き出しになる場合がある。この場合、ヒータによる空焚きが生じ、加熱装置が過度に昇温する可能性がある。
【0003】
このような空焚きを回避するためには、貯槽内に温度センサを配置して貯槽の温度を検知するのが有効だと考えられる。例えば特許文献1〜3には、液体の貯槽に温度センサを配置し、温度センサにより温度異常を検知することで、貯槽内で空焚きが生じているか否かを判断する技術が開示されている。
【0004】
上述したように空焚き中には貯槽中の液体の量が減少する。つまり空焚き中には、貯槽中には液相と気相とが存在し、ヒータは気相に露出する。特許文献1〜3においては、空焚きの発生を精度高く検知するために、空焚き時に気相になる位置と、空焚き時にも液相が維持される位置と、にそれぞれ別の温度センサを配置している。そして、各温度センサで検知した温度の差(或いは気相側の温度センサで検知した温度の上昇率等)を用いて、空焚きの発生を検知している。空焚きの発生を信頼性高く、かつ、タイムラグなく(または少なく)検知するためには、液相側と気相側とにそれぞれ温度センサを配置し、気相の温度と液相の温度との温度差に基づいて空焚きが発生しているか否かを判断するのが良いと考えられる。空焚き発生時にも、液相は気相に比べて温度変化が少ないため、温度の比較対象として用いるのに適しているためである。
【0005】
ところで、特許文献1〜3の技術によると、貯槽の空焚きを検知することはできるが、貯槽の外部にヒータを含む加熱部を設ける場合には、空焚きを精度高く検知することはできない。例えば、貯槽外部に液体の流路を設けて液体を貯槽の内外に循環させるとともに、この流路にヒータを配置する場合(つまり、貯槽の外部に流路およびヒータを含む加熱部を設ける場合)、液体は流路内で加熱され、貯槽に戻される。この場合、貯槽の液体量減少に伴い流路内の液体量が減少し、流路内に気相が形成されてヒータが気相に露出すると、加熱部に空焚きが生じる。
【0006】
加熱部に空焚きが生じると、流路内の気相および/または流路自体が加熱され、熱伝導により貯槽が加熱されるため、貯槽内の温度センサで温度異常(つまり空焚きの発生)を検知することも可能だと考えられる。しかしこのような場合には、貯槽内に設けた温度センサで加熱部の空焚きを検知可能なタイミングと、実際に加熱部で空焚きが始まるタイミングと、の間にタイムラグが生じる。また、ヒータ近傍を直接センシングする場合と比べて、空焚きの検出精度も低いと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、貯槽外部の液体流路にヒータを配置し、かつ、空焚きを検知できる加熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
貯槽外部の液体流路にヒータを配置した加熱装置において、この流路におけるヒータの近傍に温度センサを配置すれば、貯槽に温度センサを配置する場合に比べて空焚き検知精度は向上すると考えられる。そして、流路内において空焚き発生時に気相が形成される部分と、液相が形成されたままの部分とにそれぞれ温度センサを配置すれば、空焚きの発生を精度高く検知できると考えられる。しかし流路内に形成される液相および気相は、貯槽内における液体の残量と密接に関係する。したがって、貯槽内部における液体の残量が少なくなると、流路全体から液相が消失し、全ての温度センサが気相に露出する可能性がある。この場合、液相の温度を検知することができないため、空焚きの発生を精度高く検知するのが困難になる。
【0010】
本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、貯槽、流路および温度センサを所定の位置関係で配置することで、温度センサによって液相の温度を検知することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の加熱装置は、液体の流路の少なくとも一部を構成するとともに前記液体を加熱する加熱装置であって、
液体を所定の最小液量以上の液量で収容するとともに開口状をなす加熱側流出口および加熱側流入口を持つ貯槽と、前記加熱側流出口と前記加熱側流入口とを連絡し前記貯槽外部における前記液体の循環経路となる流路部と、前記流路部に存在する前記液体を加熱するヒータと、前記流路部に接続され前記加熱側流出口から前記加熱側流入口に向けて前記液体を送液する循環ポンプと、を持ち、
前記流路部は、前記ヒータにより加熱される加熱部と、前記加熱部よりも液体循環方向の上流側に配置されているトラップ部と、を持ち、
前記加熱側流出口、前記トラップ部における液体循環方向の上流側端部、および、前記トラップ部における液体循環方向の下流側端部は、前記貯槽において前記最小液量となった前記液体の液面が配置される最小液量線よりも、鉛直方向の下方に配置され、
前記加熱部、または、前記流路部のなかで前記加熱部よりも前記下流側に位置する部分には第1の温度センサが配置され、前記トラップ部には第2の温度センサが配置されているものである。
【0012】
本発明によれば、加熱側流出口、トラップ部の上流側端部および下流側端部が貯槽の最小液量線よりも鉛直方向の下側に配置されている。つまり、貯槽内に残存する液体の液面(貯槽内の水位と呼ぶ)が最小液量線にまで下がっても、トラップ部には液体が残存する。したがって、トラップ部に配置した温度センサ(第2の温度センサ)によって、液相の温度を信頼性高く測定できる。また、第1の温度センサは加熱部または流路部のなかで加熱部よりも下流側に位置する部分に配置されている。このため、空焚き時に加熱部またはその下流側部分がヒータにより過剰に加熱されると、第1の温度センサにより温度上昇を検知できる。これらの協働により、本発明の加熱装置によると空焚きの発生を信頼性高く検知でき、空焚きの発生防止を図ることが可能である。
【0013】
換言すると、第1の温度センサは検知側のセンサとして機能し、第2の温度センサは参照側のセンサとして機能する。検知側のセンサ(第1の温度センサ)は、流路部において、ヒータにより加熱される部分の温度を検知する。参照側のセンサ(第2の温度センサ)は、流路部においてヒータの影響が少ない部分(トラップ部)の温度を検知する。上述したように、空焚き発生時にもトラップ部には気相が形成され難く、液相が残存し易い。つまり、空焚き発生時にもトラップ部の温度は大きく昇温し難い。したがって、検知側のセンサで検知した温度と参照側のセンサで検知した温度との温度差は、空焚き発生時において、空焚き発生時以外(通常時と呼ぶ)に比べて非常に大きくなる。よって、本発明の加熱装置によると空焚き発生を精度高く検知可能であり、空焚きの発生防止を図ることが可能である。
【0014】
本発明の加熱装置は、下記の(1)〜(3)の何れか一つを備えるのが好ましく、(1)〜(3)の複数を備えるのがより好ましい。
(1)前記第1の温度センサは、前記流路部のなかで前記加熱部よりも前記下流側に位置する部分に配置されている。
(2)前記トラップ部は、最小液量線よりも鉛直方向の上方に配置されている上側トラップを持つ。
(3)前記トラップ部は、前記加熱側流出口、前記トラップ部における液体循環方向の上流側端部、および、前記トラップ部における液体循環方向の下流側端部よりも鉛直方向の下方に配置されている下側トラップを持ち、
前記第2の温度センサは前記下側トラップに配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加熱装置によれば、貯槽外部の液体流路にヒータを配置し、かつ、空焚きの検知精度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の加熱装置は、種々の液体を加熱するための装置として具現化できる。例えば、貯槽としての貯湯タンクを含み水を加熱する温水器等である。
【0018】
加熱部に配置するヒータは、例えば加熱部の内部に収容して加熱部内の液体を直接加熱しても良いし、加熱部の外部に配置して加熱部(つまり流路部の壁面等)を介して液体を間接的に加熱しても良い。ヒータとしては、電気ヒータやガスバーナ等、種々のものを使用できる。
【0019】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1の加熱装置について説明する。
【0020】
実施形態1の加熱装置は、コージェネレーションシステムの一部を構成する。具体的には、コージェネレーションシステムは発電ユニット1を含み、燃料により作動するエンジン3により、電気エネルギを発生させる(発電する)とともに、エンジン3の排熱を利用する。このシステムは、発電ユニット1と、熱源機7とを持つ。熱源機7は、床暖房機器や室内設置暖房機器等の暖房機器75に使用されるクーラント(実施形態では水)を加熱する熱源となる。実施形態1の加熱装置は、発電ユニット1におけるエンジン3の冷却水の流路の一部を構成し、エンジン冷却水回路50と、エンジン冷却水ポンプ51と、バッファタンク52と、逆潮防止ヒータ55とを含む。エンジン冷却水回路50は、本発明の加熱装置における流路部に相当する。エンジン冷却水ポンプ51は本発明の加熱装置における循環ポンプに相当する。バッファタンク52は本発明の加熱装置における貯槽に相当する。逆潮防止ヒータ55は本発明の加熱装置におけるヒータに相当する。以下、コージェネレーションシステム全体の概要を説明する。
【0021】
発電ユニット1は、ハウジング2と、エンジン3と、発電機39と、エンジン冷却水循環系5と、排熱回収系6と、熱交換器59と、制御装置100とを持つ。エンジン3は駆動軸3aを持ち、発電機39はエンジンの駆動軸3aにより回転駆動されて発電する。エンジン冷却水循環系5には、エンジン3に流通するエンジン冷却水が循環する。排熱回収系6は、熱交換器59によりエンジン冷却水循環系5と熱交換可能であり、かつ、熱源機7に流通する。排熱回収系6は、エンジン3が高温となったときに、エンジン冷却水の排熱を回収して熱源機7を補助する。
【0022】
エンジン3は、油圧スイッチ30と、エンジン3の回転数を検知する回転センサ31とを持つ。参考までに、発電機39は、基本的には、エンジン3の作動が安定する定常運転において発電するものであり、エンジン3の作動の安定性が必ずしも充分ではない暖機促進制御においては発電しない。
【0023】
図1に示すように、ハウジング2および熱源機7には燃料流路8が導入されている。燃料流路8は、ガスメータ105の下流側に接続され、ハウジング2に向かいガス燃料をエンジン3に供給する第1流路8aと、熱源機7に向かいガス燃料を後述する加熱部7aに供給する第2流路8bとに分岐している。
【0024】
第1流路8aには、電磁弁80a,80b、ガバナ81、サージタンク82、燃料弁83、スロットル弁84が設けられている。また、ハウジング2には、第1流路8aとは別に、エンジン3に空気を供給させる空気通路85が設けられている。空気通路85は、エアクリーナ86、スロットル弁84を介してエンジン3の吸気ポートに接続されている。第1流路8aを経て導入された燃料ガスと、空気通路85を経て導入された空気との混合気は、スロットル弁84およびエンジン3の吸気ポートを介してエンジン3の燃焼室に供給される。この混合気が燃焼室内で燃焼することにより、エンジン3のピストンが動作する。エンジン3の排気ポートには、ハウジング2の外部に至る排気通路90が接続されている。排気通路90は、エンジン3の排気ポートから排出される高温の排気ガスを外気に放出させるための通路である。排気通路90には、エンジン冷却水回路50に流通するエンジン冷却水を排気ガスの熱により加熱するための排気熱交換器91、排気サイレンサー92、ドレントラッパ93が接続されている。
【0025】
図1に示すように、エンジン冷却水循環系5は発電ユニット1のハウジング2に内蔵されており、エンジン冷却水回路50、エンジン冷却水ポンプ51およびバッファタンク52を持つ。エンジン冷却水回路50は、閉鎖循環型の回路であり、エンジン3と熱交換して加熱されるエンジン冷却水が流通する。エンジン冷却水回路50中のエンジン冷却水は、エンジン冷却水ポンプ51により循環する。
【0026】
エンジン冷却水回路50は、通路50a〜50cと、バッファタンク52を迂回するバイパス通路53と、サーモバルブ54とを持つ。バッファタンク52はエンジン冷却水を溜め得る容量を持ち、エンジン冷却水の貯槽となる。サーモバルブ54は、エンジン冷却水の温度に応じてポート54a〜54cを開閉させることにより、エンジン冷却水の流路をバイパス通路53側またはバッファタンク52側に切り替える。エンジン冷却水をバイパス通路53に流す(バッファタンク52を迂回させるように切り替える)ことで、例えばエンジン3の始動時等において、エンジン冷却水を早期に暖め得る。なお、通路50aは排気熱交換器91に連通しており、エンジン3の排気ポートから排出され排気通路90に流通する高温の排気ガスにより加熱される。このため通路50aを流通しひいてはエンジン冷却水回路50を流通するエンジン冷却水は、排気熱交換器91で加熱される。なお、発電ユニット1のハウジング2内にはインバータ201および制御基板202が設けられている。
【0027】
熱源機7は、室内または室外の暖房機器75に供給される水を加熱する給湯式の熱源機であり、燃焼式の加熱部7aと、加熱部7aで加熱した水を暖房機器75に向けて搬送させるポンプ7bとを持つ。加熱部7aは、第2流路8bを経て供給された燃料ガスを燃焼させて水を加熱する。さらに、熱源機7は、ポート70a,70bをもつ中間吐出部として機能する暖房吐出ヘッダ70と、ポート72a,72b,72c,72dをもつ中間戻り部として機能する暖房戻りヘッダ72とを持つ。熱源機7の加熱部7aで加熱された水は、ポンプ7bにより、第1給湯通路73、ポート70aから暖房吐出ヘッダ70に至り、ポート70bから吐出され、第2給湯通路74を介して暖房機器75に供給されて暖房に使用される。暖房機器75から帰還した水は、第1帰還通路76、ポート72aを介して暖房戻りヘッダ72に至り、ポート72bから第2帰還通路77を介して帰還ポート7cから熱源機7に帰還する。熱源機7に帰還した水は熱源機7の加熱部7aで再び加熱され、ポンプ7bにより、第1給湯通路73、暖房吐出ヘッダ70および第2給湯通路74を介して暖房機器75に再び供給され、暖房に使用される。
【0028】
排熱回収系6は発電ユニット1と熱源機7とに接続されている。排熱回収系6は、水が流通する排熱回収回路60と、排熱回収回路60に流通する水を循環させるための排熱ポンプ62とを持つ。排熱回収回路60は、通常運転時においてエンジン3の排熱をエンジン冷却水回路50および熱交換器59を介して回収するための回路である。排熱回収回路60は、暖房戻りヘッダ72のポート72cに繋がる往路60aと、暖房戻りヘッダ72のポート72dに繋がる復路60cとをもつ。熱交換器59は発電ユニット1に内蔵されており、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水と排熱回収回路60の水とを熱交換させる。熱交換器59は、エンジン冷却水回路50において逆潮防止ヒータ55の下流に配置されており、且つ、バッファタンク52およびバイパス通路53の上流に配置されている。逆潮防止ヒータ55は電気ヒータであり、電力負荷で消費される電力が急激に低下して発電機39が発電した電力の一部が余剰になるとき、余剰の電力を消費させるために発熱するヒータである。逆潮防止ヒータ55は商用電源104に接続されている。このため逆潮防止ヒータ55は商用電源104から得られた電力を用いて発熱することも可能である。例えば冬期や寒冷地においては、外気温が低いために、エンジン3が始動し難い傾向がある。この場合、エンジン3の始動前において、商用電源104から逆潮防止ヒータ55に通電を行い、逆潮防止ヒータ55を発熱させて、エンジン冷却水循環系5に流通するエンジン冷却水を加熱し、エンジン3を暖機することができる。
【0029】
制御装置100は、発電ユニット1の機器を制御するための第1制御部101と、熱源機7を制御するための第2制御部102と、第1制御部101および第2制御部102に接続されている入力部103とを持つ。制御装置100は商用電源104から給電されて作動する。第2制御部102は信号を第1制御部101に出力する。入力部103は、発電ユニット1および熱源機7の外部(一般的には家屋等の建物の内部)に配置され、第1制御部101および第2制御部102に発電ユニット1および熱源機7の運転信号を出力する。
【0030】
以下、実施形態1の加熱装置について詳説する。以下、鉛直方向の上方を単に上方と略し、鉛直方向の下方を単に下方と略する。また、液体循環方向の上流側を単に上流側と略し、液体循環方向の下流側を単に下流側と略する。
【0031】
図2に示すように、バッファタンク52は上方に開口する容器状をなし、内部に液体であるエンジン冷却水を収容する。したがってバッファタンク52の内部には、エンジン冷却水からなる液相Xと、空気からなる気相Yと、が形成されている。気相Yは液相Xの上方に形成されている。バッファタンク52の底部には、開口状の加熱側流出口52aが形成されている。バッファタンク52上部の開口は、後述する加熱側流入口52bとして機能する。
図2に示すように、加熱側流出口52aは、バッファタンク52における最小液量線L1よりも下方に配置されている。なお、バッファタンク52の液量は、後述する第1の温度センサ56aおよび第2の温度センサ56bとは別の液量センサにより検知されている。バッファタンク52の水位が最小液量線L1未満になると、液量センサから制御装置100に信号が出力される。すると、制御装置100の制御により、バッファタンク52に水道水が供給される。
【0032】
バッファタンク52の加熱側流出口52aには、流路部すなわちエンジン冷却水回路50が接続されている。エンジン冷却水回路50は、トラップ部57、加熱部58a、および戻し部58bを持つ。トラップ部57の上流側端部57aはバッファタンク52の加熱側流出口52aに接続され、トラップ部57の下流側端部57bは加熱部58aの上流側端部58cに接続されている。トラップ部57の中間部にはエンジン冷却水ポンプ51が接続されている。トラップ部57の下流側部分(エンジン冷却水ポンプ51よりも下流側の部分)はS字状に湾曲している。より具体的には、トラップ部57のなかでS字状をなす部分は、最小液量線L1よりも上方に配置されている上側トラップ57uと、最小液量線L1よりも下方に配置されている下側トラップ57lとを持つ。下側トラップ57lは、上側トラップ57uよりも下流側に配置され、加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよびトラップ部57の下流側端部57bよりも下方に配置されている。
【0033】
加熱部58aは、鉛直方向に沿って延びるよう配置されている。加熱部58aの下流側端部58dは加熱部58aの上流側端部58cよりも上方に配置されている。加熱部58aの内部には、逆潮防止ヒータ55が収容配置されている。逆潮防止ヒータ55は、制御装置100を介して商用電源104から給電される電気ヒータである。逆潮防止ヒータ55は、加熱部58aの内部に流通する液体を加熱する。加熱部58aの上流側端部58cはトラップ部57の下側トラップ57lに接続され、加熱部58aの下流側端部58dは戻し部58bに接続されている。戻し部58bは最小液量線L1よりも上方に配置されている。戻し部58bの上流側端部58e(つまり、戻し部58bのなかで加熱部58a側に存在する端部)には第1の温度センサ56aが配置され、下側トラップ57lには第2の温度センサ56bが配置されている。第1の温度センサ56aおよび第2の温度センサ56bは、制御装置100に接続されている。戻し部58bの下流側端部58hは、バッファタンク52の加熱側流入口52bに接続されている。
【0034】
図2に示すように、通常時においては、バッファタンク52における液体の水位は最小液量線L1よりも上方に配置され、エンジン冷却水回路50の内部は液体(エンジン冷却水)で満たされている。バッファタンク52内部の液体は、冷却水ポンプ51によって輸送され、バッファタンク52→冷却水回路50(トラップ部57→冷却水ポンプ51→トラップ部57→加熱部58a→戻し部58b)→バッファタンク52の順に循環する。したがって、第2の温度センサ56bは逆潮防止ヒータ55で加熱される前の液体の温度を検知し、第1の温度センサ56aは逆潮防止ヒータ55で加熱された後の液体の温度を検知する。この温度情報は制御装置100に伝送される。制御装置100は、第1の温度センサ56aおよび第2の温度センサ56bから得た温度情報を基に、加熱部58aに空焚きが発生しているか否かを判断する。
図2に示す通常時においては、第2の温度センサ56bで検知した加熱前の液温は低く、第1の温度センサ56aで検知した加熱後の液温もまた比較的低いため、加熱前液温と加熱後液温との差は比較的小さい。このため制御装置100は空焚きが発生していないと判断する。
【0035】
バッファタンク52の内部と加熱部58aの内部とはエンジン冷却水で満たされたトラップ部57により連絡している。したがって、
図3に示すように、何らかの理由によりバッファタンク52内の液体の水位が下がると、加熱部58a内もまたバッファタンク52内の水位と同じ水位になる。このとき加熱部58aの上側部分には、戻し部58bを通じて、バッファタンク52内の空気が流入する。したがって、このとき加熱部58aの上側部分には気相Yが形成される。このように加熱部58a内の水位が下がり、逆潮防止ヒータ55が露出すると、空焚きが発生する。空焚き時において、加熱部58aの内部は液体が非常に少ない(或いは液体がない)状態で逆潮防止ヒータ55により加熱される。したがって、加熱部58a内部の温度は大きく上昇する。第1の温度センサ56aは、加熱部58aを含む冷却水回路50の下流側部分に配置されている。このため、このとき第1の温度センサ56aにより検知した加熱部58aの温度は比較的高温であり、通常時における加熱後の液温を上回る。
【0036】
一方、このとき加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bは、最小液量線L1よりも下方に配置されている。したがって、このときトラップ部57には液体が残存し、トラップ部57内の温度は比較的低い。第2の温度センサ56bはトラップ部57の内部に配置されているため、このとき第2の温度センサ56bにより検知したトラップ部57内の温度は、空焚き時の加熱部58aの温度(第1の温度センサ56aの検知温度)を大きく下回る。このため、空焚き時における第1の温度センサ56aの検知温度と第2の温度センサ56bの検知温度との差は比較的大きく、制御装置100は空焚きが発生していると判断できる。
【0037】
実施形態1の加熱装置によると、液体の流路部50に、空焚き時に気相Yが形成される部分(加熱部58aまたはその下流側部分)と、空焚き時にも液相Xが維持される部分(トラップ部57)とを設け、空焚き時におけるこの2つの部分の温度差が、通常時におけるこの2つの部分の温度差よりも大きくなるようにした。そして、この二つの部分のなかで高温側の部分(加熱部58aまたはその下流側部分)に検知側のセンサである第1の温度センサ56aを配置し、低温側の部分(トラップ部57)に参照側のセンサである第2の温度センサ56bを配置した。このため、空焚き時における第1の温度センサ56aおよび第2の温度センサ56bの温度差は、通常時における第1の温度センサ56aおよび第2の温度センサ56bの温度差を大きく上回る。よって実施形態1の加熱装置によると、空焚きの発生を精度高く検知できる。
【0038】
なお、
図1に示すように、バッファタンク52と逆潮防止ヒータ55との間には弁(サーモバルブ54)や熱交換器(熱交換器59、排気熱交換器91)等の種々の部材を介在させる可能性が高い。したがって、バッファタンク52と逆潮防止ヒータ55とは近くに配置し難く、バッファタンク52と逆潮防止ヒータ55とを連絡する流路部すなわちエンジン冷却水循環系5の配管も、これら各種の部材の配置に応じて種々に設定する必要がある。つまり、本発明の加熱装置において、貯槽(バッファタンク52)と流路部(エンジン冷却水回路50)との鉛直方向における位置関係は、その他の部材の位置関係に応じて決定する可能性があり、望み通りに配置できない可能性がある。しかしこのような場合にも、少なくとも加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bを、最小液量線L1よりも下方に配置することで、空焚き発生時にもトラップ部57に液体が残存する可能性が高くなり、第1の温度センサ56aおよび第2の温度センサ56bによって空焚きの発生を精度高く検知することが可能である。つまり、
図3に示すように、この3つの部分を最小液量線L1よりも下方に配置することで、トラップ部57の一部(上側トラップ57u)を最小液量線L1よりも上側に配置しても、サイフォンの原理によりトラップ部57は液体で満たされる。したがって、液体の緩衝作用により、トラップ部57内の温度は上昇し難い。
【0039】
なお、加熱部58a全体を最小液量線L1よりも鉛直方向の下方に配置しても良い。この場合には、バッファタンク52内の水位が最小液量線L1にまで達した場合にも、加熱部58aの全体が液体で満たされる。このため、この場合には空焚き自体が発生し難くなる利点がある。
【0040】
また、エアの巻き込み等によりトラップ部57に気相Yが発生することも考えられるが、トラップ部57に上側トラップ57uを設けることで、気相Yの発生による影響を抑制できる。つまり、
図4に示すように、最小液量線L1よりも上方に位置する上側トラップ57uを設けることで、トラップ部57に発生した気相Yを上側トラップ57uに回収でき、トラップ部57におけるその他の部分には液相Xが残存する可能性が高い。このため、第2の温度センサ56b付近における温度上昇を抑制でき、空焚きの発生をより精度高く検知できる。
【0041】
第1の温度センサ56aは、加熱部58a、または、流路部(エンジン冷却水回路50)における加熱部58aの下流側に配置すれば良いが、流路部における加熱部58aの下流側に配置するのが好ましい。加熱部58aはヒータ(逆潮防止ヒータ55)が存在する部分であり、通常時においても比較的高温である。このため、通常時における第1の温度センサ56aの検知温度と空焚き時における第1の温度センサ56aの検知温度との温度差を大きくするために、加熱部58aを避けて第1の温度センサ56aを配置するのが良いためである。
【0042】
また、上述したように、空焚き時にもトラップ部57にはサイフォンの原理により液体が満たされる可能性が高いが、貯槽(バッファタンク52)および/または流路部に何らかの問題が生じ、貯槽の水位が最小液量線L1よりも下がる可能性も僅かにある。この場合にも、加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57a、およびトラップ部57の下流側端部57bよりも下方に、下側トラップ57lを配置することで、たとえ貯槽中の液体が全て失われても、下側トラップ57lには液相Xが残存する可能性がある。このため、空焚き時にも第2の温度センサ56b付近における温度上昇を抑制可能であり、空焚きの発生を精度高く検知できる。
【0043】
なお、実施形態1の加熱装置において、最小液量線L1は単に想定されているだけであり、貯槽に物理的に(可視的に)設けられているものではない。最小液量線L1は単なる基準であるため、可視的であっても良いし、不可視的であっても良い。
【0044】
(実施形態2)
実施形態2の加熱装置は、エンジン冷却水回路50の形状以外は実施形態1の加熱装置と同じものである。
図5に示すように、実施形態2の加熱装置において、バッファタンク52と加熱部58aとは、トラップ部57およびトラップ連絡部157により連絡されている。また、加熱部58aは有底筒状をなし、加熱部58aの鉛直方向における下端部58fは閉口している。加熱部58aにおける下端部58fよりもやや上側の位置には開口58gが形成されている。この開口58gにはトラップ連絡部157が接続されている。トラップ連絡部157にはトラップ部57の下流側端部57bが接続されている。トラップ部57の上流側端部57aはバッファタンク52の加熱側流出口52aに接続されている。加熱部58aの内部には、実施形態1と同様に、逆潮防止ヒータ55が配置されている。
【0045】
加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bは、鉛直方向において略同位置に配置されている。また、加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bは、最小液量線L1よりも下方に配置されている。一方、トラップ連絡部157は、鉛直方向において、加熱側流出口52aおよび最小液量線L1よりも上方に配置されている。トラップ部57は、加熱側流出口52a、上流側端部57aおよび下流側端部57bよりも下方に配置されている下側トラップ57lを持つ。第2の温度センサ56bは、下側トラップ57lに配置されている。
【0046】
実施形態2の加熱装置のエンジン冷却水回路50においては、加熱部58aとバッファタンク52とを連絡する部分の一部(トラップ連絡部157)が、最小液量線L1よりも上方に位置している。しかし、エンジン冷却水回路50の他の一部であるトラップ部57は、最小液量線よりも下方に配置されている下側トラップ57lを持ち、第2の温度センサ56bはこの下側トラップ57lに配置されている。下側トラップ57lには、空焚き発生時においても液相Xが残存する。したがって実施形態2の加熱装置は、実施形態1の加熱装置と同様に、空焚きの発生を精度高く検知できる。
【0047】
(実施形態3)
実施形態3の加熱装置は、エンジン冷却水回路50の形状以外は実施形態1の加熱装置と同じものである。
図6に示すように、実施形態3の加熱装置において、バッファタンク52と加熱部58aとはトラップ部57により連絡されている。トラップ部57は直管状をなし、加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bは、鉛直方向において略同位置に配置されている。また、加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bは最小液量線L1よりも下方に配置されている。トラップ部57には第2の温度センサ56bが配置されている。
【0048】
実施形態3の加熱装置は下側トラップ57lを持たないが、加熱側流出口52a、トラップ部57の上流側端部57aおよび下流側端部57bを最小液量線L1よりも下方に配置したため、空焚き発生時においてもトラップ部57には液相Xが残存する。したがって実施形態3の加熱装置は、実施形態1の加熱装置と同様に、空焚きの発生を精度高く検知できる。
【0049】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば実施形態の加熱装置では、流路部がコージェネレーションシステムのエンジン冷却水回路であり、流路部に流通する液体がエンジン冷却水であり、液体がヒータ(逆潮防止ヒータ)以外の熱源すなわちエンジンによっても加熱されたが、本発明の加熱装置は液体をヒータのみで加熱するものに適用することも可能である。