特許第5974704号(P5974704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974704蓄電装置、二次電池、及び、積層型の電極組立体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974704
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】蓄電装置、二次電池、及び、積層型の電極組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20160809BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20160809BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20160809BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/18 Z
   !H01M10/0585
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-162948(P2012-162948)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-22325(P2014-22325A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−045363(JP,A)
【文献】 特開2001−102050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0115020(US,A1)
【文献】 特開2004−095402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−10/0585
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極が両者の間にセパレータが介在する状態で積層された積層型の電極組立体を有する蓄電装置であって、
前記正極及び前記負極は、活物質層を有する本体部及び前記本体部から突出するタブを有し、
前記セパレータは、前記正極及び前記負極の前記本体部より大きく形成されるとともに、前記正極及び前記負極と積層された際に前記タブと重ならない位置に少なくとも2個の孔を有し、
前記正極及び前記負極は前記セパレータに包まれた状態又は単独の状態で、前記セパレータを介して反対の電極の前記活物質層が対向するように配置され、
前記正極前記負極の少なくともいずれか一方は、前記本体部に前記セパレータの前記孔と対向する位置に孔を有し、前記正極、前記負極及び前記セパレータは、前記電極組立体の組立時に前記孔が位置決め棒に挿通された状態で位置決め可能に構成されており、
前記セパレータ及び前記孔を有する本体部には、前記タブが間に位置するように切り込みが形成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、前記タブが前記セパレータから突出する状態で前記セパレータに包まれている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記孔は2個である請求項1又は請求項に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記正極のみが前記セパレータに包まれている請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記正極及び前記負極は前記タブが前記電極組立体の同じ側に突出し、前記孔は前記タブが突出している側に形成されている請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記本体部及び前記セパレータは矩形状で、短辺側に前記孔が形成されている請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置の構成を備えた二次電池。
【請求項8】
正極及び負極の一方がセパレータに包まれた状態で、前記正極及び前記負極が交互に積層された積層型の電極組立体の製造方法であって、
前記セパレータに、前記セパレータに包まれた前記正極及び前記負極の一方と重ならない位置であって、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方のタブと重ならない位置に少なくとも2個の孔を形成し、
前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方には前記セパレータの孔に対応する位置に少なくとも2個の孔を形成し、
前記セパレータ、及び、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方に、前記正極及び前記負極のタブが間に位置するように切り込みを形成し、
前記少なくとも2個の孔の間隔で平行に配置された位置決め棒に対して、前記セパレータを前記少なくとも2個の孔において吊り下げる操作と、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方を前記少なくとも2個の孔において吊り下げる操作とを交互に行って、予め設定された所定の数の前記セパレータと、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方とを前記位置決め棒に前記孔において吊り下げ、
吊り下げられた前記セパレータと、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方とを前記位置決め棒に沿って移動させて寄せ集める積層工程を備えている積層型の電極組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置二次電池、及び、積層型の電極組立体の製造方法に係り、詳しくは積層型の電極組立体を有する蓄電装置二次電池、及び、積層型の電極組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。積層型の二次電池は、略矩形状の正極と負極とをセパレータが間に介在する状態で交互に積層した構造の電極組立体を有し、正極及び負極のそれぞれのタブを対応する正極端子あるいは負極端子に接続した構成となっている。積層された正極シート、セパレータ及び負極シートの間で位置ずれが生じると、正極シートと負極シートとが短絡したり、電池の性能が低下したりする。
【0003】
そのため、電極組立体の製造工程において、正極と負極とをセパレータが間に介在する状態で精度良く積層する必要があり、積層位置がずれないように、例えば、カメラで位置を検出して一枚ずつ積層するため積層に時間とコストがかかる。また、正極、負極及びセパレータの周縁と当接する位置決めピン等で位置決めしながら一枚ずつ積層していく方法もある。しかし、リチウムイオン二次電池では、正極が負極より小さいため、位置決めピンでは精度良く位置決めすることができない。そこで、正極と負極の大きさが異なっていたとしても積層ずれを防止して、正極及び負極を精度良く位置決めする方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の方法では、正極及び負極は、位置決め用の孔を有するタブが正極あるいは負極の重心線に対して線対称に配置されている。そして、位置決め用の孔が軸に挿通された状態で、正極及び負極をタブの部分で吊り下げて位置決めを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−165620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、タブを正極あるいは負極の重心線に対して線対称の位置に設ける必要があり、正極及び負極のタブ同士が接触しないようにするためには、正極及び負極の少なくとも一方は、タブを2箇所に設ける必要がある。また、タブが1箇所では、タブの孔の部分で吊り下げて位置決めを行う場合に、回転方向の規制を行うためにはタブを2箇所に設ける必要がある。
【0007】
金属箔のタブに孔を形成すると、タブの強度が弱くなり、正極あるいは負極を吊り下げる際にタブが損傷し易い。また、金属箔のタブを正極端子あるいは負極端子に電気的に接続する場合、溶接した方が電気抵抗を低減できるが、タブに孔があいていると電流の経路が狭くなる。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、積層型の電極組立体を構成する正極及び負極の積層位置がずれないように積層することができ、しかも、タブを流れる電流経路を狭くすることがない蓄電装置二次電池、及び、積層型の電極組立体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、正極及び負極が両者の間にセパレータが介在する状態で積層された積層型の電極組立体を有する蓄電装置であって、前記正極及び前記負極は、活物質層を有する本体部及び前記本体部から突出するタブを有し、前記セパレータは、前記正極及び前記負極の前記本体部より大きく形成されるとともに、前記正極及び前記負極と積層された際に前記タブと重ならない位置に少なくとも2個の孔を有し、前記正極及び前記負極は前記セパレータに包まれた状態又は単独の状態で、前記セパレータを介して反対の電極の前記活物質層が対向するように配置され、前記正極及び前記負極は、前記本体部に前記セパレータの前記孔と対向する位置に孔を有し、前記正極前記負極の少なくともいずれか一方は、前記電極組立体の組立時に前記孔が位置決め棒に挿通された状態で位置決め可能に構成されており、前記セパレータ及び前記孔を有する本体部には、前記タブが間に位置するように切り込みが形成されている。ここで、「単独の状態」とはセパレータに包まれていない状態を指す。また、「セパレータに包まれた」とは、タブの突出側を除いた辺が接合されて袋状のセパレータに正極あるいは負極の本体部が収容されている状態に限らず、セパレータがシートを二つ折りにして形成され、かつシートの折り曲げ部と反対側の辺が接合されたものや、2枚のシートが対向する2辺で接合されたセパレータに収容されていてもよい。
【0010】
この発明では、電極組立体として、正極及び負極のいずれもがセパレータに包まれた状態のものと、正極及び負極の一方がセパレータに包まれた状態のものと、正極及び負極のいずれもセパレータに包まれていないものの4種類がある。そして、正極及び負極を両者の間にセパレータが介在する状態に積層する際に、セパレータが有する孔及び本体部が有する孔を位置決め用に使用して積層することにより、積層型の電極組立体を構成する正極及び負極の積層位置がずれないように積層することができる。具体的には、位置決め棒に孔が挿入された状態で正極、セパレータ及び負極が吊り下げられた後、それらが位置決め棒に沿って寄せ集められて積層体となる。蓄電装置の状態では、タブに孔が形成されていないため、タブを流れる電流経路が狭くならない。したがって、積層型の電極組立体を構成する正極及び負極の積層位置がずれないように積層することができ、しかも、タブを流れる電流経路を狭くすることがない蓄電装置及び二次電池を提供することができる。
また、セパレータや本体部が有する孔を利用して積層時に位置決めを行う構成で、正極又は負極がセパレータに包まれた構成の場合、セパレータはタブの基端を覆った状態であるため、タブが突出する側の辺に孔が形成されている場合は、少なくとも孔を設けるスペースの分、本体部やセパレータがタブの突出側に長くなる。そのため、電極組立体が蓄電装置のケース内に収容される構成では、ケースにその分のデッドスペースが必要になる。しかし、切り込みが形成されている場合は、孔が形成された部分を折り曲げることにより、わざわざデッドスペースを設ける必要がなくなる。その際、タブは折り曲げる必要がなく、タブ同士を重ねて導電部材に電気的に接合するために支障を来さない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、前記タブが前記セパレータから突出する状態で前記セパレータに包まれている。正極及び負極のいずれもセパレータで包まれていない場合は、正極、負極及びセパレータの枚数の回数、それらを位置決め棒に挿通する作業を行う必要がある。しかし、正極及び負極の少なくとも一方が、セパレータに包まれている場合は、それらを位置決め棒に挿通する回数が約2/3になり、工数が低減される。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載の発明において、前記孔は2個である。孔が2個の場合は、孔を3個以上設ける場合に比べて、製造時の工数を低減することができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記正極のみが前記セパレータに包まれている。リチウムイオン二次電池では、デンドライトと呼ばれるリチウムの針状物の析出を抑制するため、負極が正極より大きく形成される場合が多い。その場合、負極をセパレータで包むと、セパレータが同じ大きさだと、負極はセパレータに包まれない場合より小さくなり、電極組立体の大きさが同じ場合、電池の容量が小さくなる。即ち、正極がセパレータで包まれている方が容量的に有利である。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記正極及び前記負極は前記タブが前記電極組立体の同じ側に突出し、前記孔は前記タブが突出している側に形成されている。セパレータは正極と負極との短絡を避けるための代を有し、正極及び負極より大きく形成される。代は孔が形成されない辺にもある。そのため、タブが突出している側に孔が形成されれば、代のスペースの一部を、孔を形成するスペースに利用することにより、結果として電極組立体の小型化に寄与する。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記本体部及び前記セパレータは矩形状で、短辺側に前記孔が形成されている。電極の大きさが同じ場合、電極が有する活物質層の面積が大きい方が二次電池の容量が大きくなる。本体部に形成される活物質層の形状は矩形が一般的であり、孔は活物質が塗布されていない部分に形成される。そのため、同じ大きさの本体部で、孔を本体部の短辺側に形成した方が、長辺側に形成した場合に比べて、活物質層の面積が大きくなる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の蓄電装置の構成を備えた二次電池である。したがって、この発明の二次電池は請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の発明と同様の効果を有する。
前記の目的を達成するため、請求項8に記載の発明は、正極及び負極の一方がセパレータに包まれた状態で、前記正極及び前記負極が交互に積層された積層型の電極組立体の製造方法であって、前記セパレータに、前記セパレータに包まれた前記正極及び前記負極の一方と重ならない位置であって、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方のタブと重ならない位置に少なくとも2個の孔を形成し、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方には前記セパレータの孔に対応する位置に少なくとも2個の孔を形成し、前記セパレータ、及び、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方に、前記正極及び前記負極のタブが間に位置するように切り込みを形成し、前記少なくとも2個の孔の間隔で平行に配置された位置決め棒に対して、前記セパレータを前記少なくとも2個の孔において吊り下げる操作と、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方を前記少なくとも2個の孔において吊り下げる操作とを交互に行って、予め設定された所定の数の前記セパレータと、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方とを前記位置決め棒に前記孔において吊り下げ、吊り下げられた前記セパレータと、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方とを前記位置決め棒に沿って移動させて寄せ集める積層工程を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層型の電極組立体を構成する正極及び負極の積層位置がずれないように積層することができ、しかも、タブを流れる電流経路を狭くすることがない蓄電装置二次電池、及び、積層型の電極組立体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は二次電池の断面図、(b)は(a)のB−B線で切断した導電部材と電極組立体との関係を示す模式部分拡大断面図。
図2】(a)はセパレータに包まれた正極の正面図、(b)は負極の正面図。
図3】(a)は正極、負極及びセパレータ積層方法を示す概略斜視図、(b)は位置決め棒と孔の大きさの関係を示す模式図。
図4】別の実施形態の電極組立体の正面図。
図5】別の実施形態の電極組立体の正面図。
図6】別の実施形態の二次電池の断面図。
図7】別の実施形態の電極組立体のタブと孔との関係を示す概略正面図。
図8】別の実施形態の正極、負極及びセパレータの関係を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を蓄電装置としての二次電池に具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース本体11a及び蓋11bで構成されたケース11内に収容された積層型の電極組立体12を有する。蓋11bには正極端子13及び負極端子14が絶縁リング15を介して固定されている。正極端子13及び負極端子14は、雄ねじ部13a,14aを有し、蓋11bから突出する雄ねじ部13a,14aに螺合するナット16により、蓋11bに締め付け固定されている。なお、ナット16と蓋11bとの間には図示しない絶縁部材が介装されている。
【0021】
電極組立体12は、正極のタブ17cの積層体17pが正極用の導電部材18を介して正極端子13に電気的に接続されており、負極のタブ19cの積層体19nが負極用の導電部材20を介して負極端子14に電気的に接続されている。積層体17pは導電部材18に溶接され、積層体19nは導電部材20に溶接されている。図1(b)に示すように、積層体17pは各タブ17cの先端側が電極組立体12の端面と平行に延びる状態で導電部材18に溶接されている。また、積層体19nも同様に、各タブ19cの先端側が電極組立体12の端面と平行に延びる状態で導電部材20に溶接されている。
【0022】
図1(b)に示すように、電極組立体12は、正極17及び負極19が両者の間にセパレータ21が介在する状態で積層されている。図1(a),(b)及び図2(a)に示すように、正極17は、金属箔22の両面に活物質層17bを有する本体部17a及び本体部17aから突出するタブ17cを有する。図1(b)及び図2(b)に示すように、負極19は、金属箔22の両面に活物質層19bを有する本体部19a及び本体部19aから突出するタブ19cを有する。本体部17a,19aは矩形状に形成され、矩形の一方の長辺からタブ17c,19cがそれぞれ突出している。
【0023】
図1(a)及び図2(a)に示すように、セパレータ21も矩形状に形成され、セパレータ21は、正極17及び負極19の本体部17a,19aより大きく形成されている。正極17はタブ17cがセパレータ21から突出する状態でセパレータ21に包まれている。この実施形態では、セパレータ21はタブ17cが突出する側が開放された袋状に形成されている。即ち、この実施形態では、電極組立体12は、正極17を収容した袋状のセパレータ21と、負極19とが交互に積層されることにより、正極17及び負極19が両者の間にセパレータ21が介在する状態で積層されている。セパレータ21は、周縁に、正極17と負極19との短絡を避けるための代21dを有する。
【0024】
セパレータ21は2個の孔21aを有し、孔21aは円形で、本体部17aと対向する位置より開放側の両端に形成されている。セパレータ21には、正極17のタブ17cが間に位置するように切り込み21bが形成されている。また、負極19のタブ19cが間に位置するように切り込み21cが形成されている。切り込み21b,21cはタブ17c,19cの突出方向に延びるように、セパレータ21内に収容された正極17の本体部17aよりセパレータ21の開放側に形成されている。
【0025】
図2(b)に示すように、負極19は本体部19aがセパレータ21と同じ大きさに形成されている。負極19の活物質層19bはタブ19cの突出方向の長さが正極17の活物質層17bと同じに形成され、活物質層19bの面積は正極17の活物質層17bの面積より大きく形成されている。負極19は、タブ19cの突出側に活物質層19bの辺に沿って延びる活物質非塗布部19dを有する。
【0026】
負極19の活物質非塗布部19dには、セパレータ21の切り込み21b,21cと対応する位置にそれぞれ切り込み19eが形成されている。また、活物質非塗布部19dの両端には、セパレータ21の孔21aと対応する位置に孔19fを有する。孔19fは円形で孔21aと同じ大きさに形成されている。
【0027】
次に、電極組立体12の製造方法を説明する。製造方法は正極17が収容された袋状のセパレータ21と、負極19とを正極17及び負極19の活物質層17b,19bの位置関係が精度良く位置決めされた状態で積層する積層工程が従来と異なるため、積層工程について主に説明する。
【0028】
積層工程では、図3(a)に示すように、水平に所定間隔で平行に配置された一対の位置決め棒30を使用する。位置決め棒30は断面円形で、図3(b)に示すように、位置決め棒30の直径は負極19及びセパレータ21の孔19f,21aの直径より小さく形成されている。
【0029】
そして、別の工程で製造された、正極17が収容されたセパレータ21及び負極19を孔21a,19fが位置決め棒30に挿通される状態で交互に、位置決め棒30に吊り下げる。所定枚数のセパレータ21及び負極19が吊り下げられた状態で、セパレータ21及び負極19を両側から、位置決め棒30に沿って移動させて寄せ集め、積層体にする。積層体は、図示しない治具で把持された状態で溶接工程に搬送される。溶接工程ではすでに正極端子13に溶接された導電部材18に、タブ17cの積層体17pが溶接され、負極端子14に溶接された導電部材20に、タブ19cの積層体19nが溶接されて電極組立体12が完成する。
【0030】
次に前記のように構成された二次電池10の作用を説明する。
二次電池10は、単体でも使用されるが、一般には複数の二次電池10が直列あるいは並列に接続されて構成された組電池として使用される。そして、二次電池10は種々の用途に使用されるが、例えば、車両に搭載されて走行用モータの電源や他の電気機器の電源としても使用される。 走行用モータの電源に使用した場合、大電流での充・放電が必要になる。従来技術のように電極とセパレータとの積層の際の位置決め用の孔をタブに形成した場合は、タブを流れる電流の経路が狭くなり、発熱し易くなる。しかし、この実施形態の電極組立体12は、負極19とセパレータ21との積層の際の位置決め用に使用可能な孔19f,21aはタブ17c、19cには形成されず、負極19の活物質非塗布部19d及びセパレータ21に形成されているため、タブ17c、19cを流れる電流の経路が狭くならず、発熱が抑制される。また、電極組立体12は、正極17が袋状のセパレータ21に収容されているため、車両の走行中、二次電池10に振動が加わって、セパレータ21と負極19とが多少位置ずれしても、短絡が生じることは回避される。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)二次電池10は、正極17及び負極19が両者の間にセパレータ21が介在する状態で積層された積層型の電極組立体12を有する蓄電装置である。正極17及び負極19は、活物質層17b,19bを有する本体部17a,19a及び本体部17a,19aから突出するタブ17c,19cを有し、正極17はタブ17cがセパレータ21から突出する状態でセパレータ21に包まれている。セパレータ21は正極17の本体部17aと対向する位置より開放側の両端に2個の孔21aを有する。負極19は本体部19aの活物質非塗布部19dにセパレータ21の孔21aと対向する位置に孔19fを有し、正極17、負極19及びセパレータ21は、電極組立体12の組立時に孔19f,21aが位置決め棒30に挿通された状態で位置決め可能に構成されている。したがって、積層型の電極組立体12を構成する正極17及び負極19の積層位置がずれないように積層することができ、しかも、余分なタブの形成が不要で、タブ17c,19cを流れる電流経路を狭くすることがない。また、正極17及び負極19のいずれもセパレータ21で包まれていない場合は、電極組立体12の製造工程において、正極17、負極19及びセパレータ21の枚数の回数、それらを位置決め棒30に挿通する作業を行う必要がある。しかし、正極17が、セパレータ21に包まれているため、それらを位置決め棒30に挿通する回数が約2/3になり、工数が低減される。
【0032】
(2)正極17がセパレータ21に包まれている。リチウムイオン二次電池では、デンドライトと呼ばれるリチウムの針状物の析出を抑制するため、負極19が正極17より大きく形成される場合が多い。その場合、負極19をセパレータ21で包むと、セパレータ21が同じ大きさだと、負極19はセパレータ21に包まれない場合より小さくなり、電極組立体12の大きさが同じ場合、二次電池10の容量が小さくなる。しかし、この実施形態では正極17がセパレータ21に包まれているため、容量的に有利である。
【0033】
(3)セパレータ21にはタブ17c,19cが間に位置するようにそれぞれ一対の切り込み21b,21cが形成され、負極19の活物質非塗布部19dには、セパレータ21の切り込み21b,21cと対応する位置にそれぞれ切り込み19eが形成されている。セパレータ21はタブ17c,19cの基端を覆った状態であり、タブ17c,19cが突出する側の辺に孔21aが形成されているため、少なくとも孔21aを設けるスペースの分、セパレータ21がタブ17c,19cの突出側に長くなる。切り込み21b,21cが無い場合は、電極組立体12がケース11内に収容される構成では、ケース11にその分のデッドスペースが必要になる。しかし、切り込み21b,21cが形成されているため、タブ17c,19c同士を重ねて導電部材18,20に電気的に接合することに支障を来さずに、孔21aが形成された部分を折り曲げることにより、わざわざデッドスペースを設ける必要がなくなる。
【0034】
(4)セパレータ21及び負極19は、孔21a,19fをそれぞれ2個有する。孔21a,19fが2個の場合は、孔21a,19fをそれぞれ3個以上設ける場合に比べて、製造時の工数を低減することができる。
【0035】
(5)正極17及び負極19はタブ17c,19cが電極組立体12の同じ側に突出し、孔21a,19fはタブ17c,19cが突出している側に形成されている。セパレータ21は正極17と負極19との短絡を避けるための代21dを有し、正極17及び負極19より大きく形成される。代21dは孔21aが形成されない辺にもある。そのため、タブ17c,19cが突出している側に孔21aが形成されれば、代21dの一部を、孔21aを形成するスペースに利用することが可能になり、結果として電極組立体12の小型化に寄与する。
【0036】
(6)電極組立体12の製造方法において、正極17、負極19及びセパレータ21を精度良く位置決めされた状態で積層する方法として、負極19及びセパレータ21を、孔19f,21aを介して位置決め棒30に吊り下げる方法が採用されている。そして、位置決め棒30の断面形状及び孔19f,21aが円形で、孔19f,21aは、位置決め棒30の断面形状より大きく形成されている。位置決め棒30の断面形状が多角形で、孔19f,21aが同じ大きさの多角形の場合、孔19f,21aが正確に所定の位置に形成されていれば、位置決めは精度良く行われる。しかし、一対の多角形の中心位置が正確でも、多角形が目的の位置に対して多少傾いて形成されると、孔19f,21aを位置決め棒30に挿通させる際に孔19f,21aが損傷する。また、孔19f,21aが多角形の場合、金属箔22製の活物質非塗布部19dに形成された孔19fは、僅かの力で角部に亀裂が入り易い。しかし、この実施形態では、孔19fが円形のため、亀裂が入り難い。そして、位置決め棒30が孔19f,21aより小さな直径の円形のため、孔19f,21aを位置決め棒30に挿入し易く、しかも吊り下げることで正確に位置決めを行うことができる。
【0037】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 本体部17a,19a及びセパレータ21が矩形状の場合、図4に示すように、短辺側に孔19f,21aを有してもよい。電極の大きさが同じ場合、電極が有する活物質層の面積が大きい方が二次電池10の容量が大きくなる。本体部17a,19aに形成される活物質層17b,19bの形状は矩形が一般的であり、孔19fは活物質非塗布部19dに形成される。そのため、同じ大きさの本体部19aで、孔19fを本体部19aの短辺側に形成した方が、長辺側に形成した場合に比べて、活物質層17b,19bの面積が大きくなる。
【0038】
○ 本体部17a,19a及びセパレータ21が矩形状の場合、活物質非塗布部19dを矩形の短辺側に設けて、タブ17c,19cも短辺側から突出させてもよい。
図5に示すように、孔19f,21aはタブ17c,19cの突出側と反対側の辺に設けてもよい。しかし、負極19及びセパレータ21の外形が同じ場合、タブ17c,19cの突出側に設ける方が、二次電池10の容量の観点からは有利になる。
【0039】
○ 正極17を袋状のセパレータ21に収容する代わりに、負極19を袋状のセパレータ21に収容してもよい。この場合、正極17は活物質層17bに沿って活物質非塗布部を有し、その活物質非塗布部に孔が設けられる。一方、負極19は活物質層19bを有さずにタブ19cが本体部19aから突出する。
【0040】
○ 正極17あるいは負極19がセパレータ21に包まれている構成としては、正極17あるいは負極19が袋状のセパレータ21に収容された構成に限らない。例えば、セパレータ21がシートを二つ折りにして形成され、かつシートの折り曲げ部と反対側の辺が接合されたものや、2枚のシートが対向する2辺で接合されたセパレータ21に収容されていてもよい。
【0041】
○ 正極17及び負極19を共にセパレータ21に包まれている構成にしてセパレータ21にのみ孔21aを設けてもよい。この場合、正極17及び負極19に孔を形成する必要がなく、金属箔22に孔を形成する必要がない。
【0042】
○ 電極組立体12の積層体17pと導電部材18との溶接及び積層体19nと導電部材20との溶接は、積層体17p及び積層体19nの先端側を電極組立体12の端面に沿って屈曲させた状態で行わずに、図6に示すように、積層体17p及び積層体19nの先端側が蓋11bに向かって延びる状態で行ってもよい。
【0043】
図7に示すように、正極17のタブ17cと負極19のタブ19cとが電極組立体12の異なる端部から突出する構成にしてもよい。この構成は、例えば、ラミネート型の二次電池で採用される。
【0044】
○ 正極17及び負極19のいずれもセパレータ21に包まれている構成にせずに、図8に示すように、正極17、負極19及びシート状のセパレータ21を交互に積層する構成にしてもよい。正極17及び負極19はそれぞれ活物質非塗布部17d,19dを備え、活物質非塗布部17d,19dはそれぞれセパレータ21の孔21aと対応する位置に孔17f,19fを有する。正極17、負極19及びセパレータ21はそれぞれ切り込み17e,19e,21b,21cを有する。この場合、セパレータ21の孔21aが正極17及び負極19の孔17f,19fより小さい方が、正極17と負極19との電気的絶縁性を確保するのに好ましい。
【0045】
○ 活物質非塗布部17d,19d及びセパレータ21の切り込み17e,19e,21b,21cは必須ではなく、省略してもよい。
○ 正極17あるいは負極19に孔17f,19fを設ける場合、活物質層17b,19bに孔17f,19fを設けてもよい。その場合、孔17f,19fはセパレータ21の孔21aより小さく形成する方が、セパレータ21による正極17と負極19との電気的絶縁を確保し易い。
【0046】
○ タブ17c,19cが電極組立体12の同じ側に突出する構成の場合、両タブ17c,19cが線対称の位置に配置される必要はない。例えば、タブ17cを正極17の幅方向の中央に設け、タブ19cは負極19が電極組立体12を構成した状態でタブ17cと干渉しない位置に設けてもよい。
【0047】
○ 位置決め棒30の断面形状及び孔19f,21aの形状は円形に限らず、三角形、四角形等の多角形や楕円等であってもよい。
○ セパレータ21や正極17あるいは負極19に設けられる孔21a,17f,19fは少なくとも2個あればよく、2個に限らず3個以上設けてもよい。しかし、2個の方が、製造の工数などの点で好ましい。
【0048】
○ 蓄電装置は、二次電池10に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0049】
(1)正極及び負極の一方がセパレータに包まれた状態で、前記正極及び前記負極が交互に積層された積層型の電極組立体の製造方法であって、
前記セパレータには前記セパレータに包まれた前記正極及び前記負極の一方と重ならない位置に少なくとも2個の孔を形成し、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方には前記セパレータの孔に対応する位置に少なくとも2個の孔を形成し、前記少なくとも2個の孔の間隔で平行に配置された位置決め棒に対して、前記セパレータを前記少なくとも2個の孔において吊り下げる操作と、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方を前記少なくとも2個の孔において吊り下げる操作とを交互に行って、予め設定された所定の数の前記セパレータと、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方とを前記位置決め棒に前記孔において吊り下げ、吊り下げられた前記セパレータと、前記セパレータに包まれない前記正極及び前記負極の他方とを前記位置決め棒に沿って移動させて寄せ集める積層工程を備えている積層型の電極組立体の製造方法。
【符号の説明】
【0050】
10…蓄電装置としての二次電池、12…電極組立体、17…正極、17a,19a…本体部、17b,19b…活物質層、17c,19c…タブ、17e,19e,21b,21c…切り込み、17f,19f,21a…孔、19…負極、21…セパレータ、30…位置決め棒。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8