特許第5974733号(P5974733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974733
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   H02M3/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-183239(P2012-183239)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-42393(P2014-42393A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 崇
(72)【発明者】
【氏名】諸見里 英人
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−268346(JP,A)
【文献】 特開2002−84741(JP,A)
【文献】 特開2008−301581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差分を増幅して誤差増幅信号を出力する誤差増幅器と、
前記誤差増幅信号とソフトスタート電圧とを比較し、いずれか電圧の小さいほうを出力するバッファ回路と、
前記バッファ回路の出力と三角波信号とを比較してパルス幅変調信号を出力するコンパレータと、前記パルス幅変調信号によりスイッチング制御されるスイッチ素子と、
を備えたスイッチング電源装置において、
前記帰還電圧が入力される前記誤差増幅器の反転入力部と、前記バッファ回路の出力部との間に直列接続されたキャパシタ及び整流素子を有し、前記整流素子は、前記キャパシタの充電方向を順方向とするように接続された充電回路と、
前記キャパシタに充電された電圧を放電する放電回路と、
を備えるスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記放電回路は、前記バッファ回路の出力部とグランドとの間で放電電流を流すダイオードを有する、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記放電回路は、前記キャパシタの両端に接続された放電用スイッチ素子を有する、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記バッファ回路の出力部と前記キャパシタとの間に接続され、オフセット電圧を発生させる定電圧素子、
を備える請求項1から3の何れかに記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源投入時における出力電圧のオーバーシュートの発生を防止することができるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスイッチング電源装置は、出力電圧に応じて変動する帰還電圧と基準電圧との誤差電圧を増幅して誤差電圧信号を出力する誤差増幅器を備えている。そして、この誤差電圧信号とランプ波との比較結果に応じたデューティのPWM信号を生成し、このPWM信号を用いてスイッチング制御を行う構成とされている。このようなスイッチング電源装置には、電源投入時にスイッチング電源回路に流れる突入電流を防止する手段として、ソフトスタート回路を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のソフトスタート回路は、電源投入後、帰還電圧が増大するに従い電圧波形の傾きを小さくするようにランプ発振器に指令する。これにより、PWM信号を生成するPWMコンパレータは、電源投入後ではパルス幅が小さいPWM信号を生成し、定常電圧となるとパルス幅の大きいPWM信号を生成することにより、スイッチング電源回路への突入電流を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−220330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ランプ発振器はソフトスタート回路からの指令によってランプ波信号を出力する構成としているが、発振器が内蔵されたモジュールを設計する場合、ランプ波信号を制御することができない。この場合、特許文献1に記載のスイッチング電源回路では、電源投入時のオーバーシュートを常に安定して防止することができない。
【0006】
一方、電源投入時の突入電流を充分に抑制するために、ソフトスタート期間を必要以上に長く設定しておくと、負荷への出力電圧の立ち上がりは遅くなる。また、ソフトスタート期間が短すぎると、又はソフトスタート機能が無いと、負荷への出力電圧の立ち上がりが急峻になり、出力電圧のオーバーシュートが発生するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、出力電圧のオーバーシュートの発生を安定的に防止できるようにしたスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスイッチング電源装置は、出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との差分を増幅して誤差増幅信号を出力する誤差増幅器と、前記誤差増幅信号とソフトスタート電圧とを比較し、いずれか電圧の小さいほうを出力するバッファ回路と、前記バッファ回路の出力と三角波信号とを比較してパルス幅変調信号を出力するコンパレータと、前記パルス幅変調信号によりスイッチング制御されるスイッチ素子とを備えたスイッチング電源装置において、前記帰還電圧が入力される前記誤差増幅器の反転入力部と、前記バッファ回路の出力部との間に直列接続されたキャパシタ及び整流素子を有し、前記整流素子は、前記キャパシタの充電方向を順方向とするように接続された充電回路と、前記キャパシタに充電された電圧を放電する放電回路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成では、バッファ回路の出力がキャパシタ及び整流素子を介して、誤差増幅器の反転入力部に入力(負帰還)される。スイッチング電源装置の電源投入時、出力電圧は低いため、それに応じた帰還電圧も低く、帰還電圧と基準電圧との差分に応じた誤差増幅信号が出力される。この誤差増幅器の出力が、帰還電圧が入力される誤差増幅器の反転入力部に負帰還されることで、誤差増幅器の反転入力部の電圧は、キャパシタ及び整流素子がない場合と比べて大きくなる。このようにして誤差増幅器の反転入力部の電圧が補正されることで、誤差増幅器の反転入力部の電圧は、出力電圧が設定値に達する前に、見かけ上基準電圧に達するため、誤差増幅器が出力する誤差増幅信号は、キャパシタ及び整流素子がない場合のように最大出力電圧に飽和することがなく、定常状態の値に近いレベルに保持される。
【0010】
電源投入後、出力電圧が設定値に達するまでの期間、パルス幅変調信号のオンデューティ比を徐々に大きくしていくことで出力電圧が上昇するが、出力電圧が設定値に達すると、つまり帰還電圧が基準電圧に達すると、誤差増幅器の出力が定常状態まで低下し、オンデューティ比を一定に制御する。キャパシタ及び整流素子がない場合、誤差増幅器の出力が飽和電圧から定常状態に達するまで応答遅れがあるため、その間、不要にオンデューティ比が大きくなり、出力電圧のオーバーシュートが発生するが、キャパシタ及び整流素子がある場合には、電源投入後に誤差増幅器の出力が飽和せず、定常状態に近いレベルに保持されるため、応答遅れがなく、オーバーシュートを防止できる。
【0011】
前記放電回路は、前記バッファ回路の出力部とグランドとの間で放電電流を流すダイオードを有する構成でもよい。
【0012】
この構成では、キャパシタの充電を放電させることで、充電回路をリセットすることができる。このため、スイッチング電源装置の動作を一度停止させた後、短時間で再度開始させた際でもオーバーシュートを防止できる。また、ダイオードにより放電させるため、放電用の制御回路を必要としない。
【0013】
前記放電回路は、前記キャパシタの両端に接続された放電用スイッチ素子を有する構成でもよい。
【0014】
この構成では、キャパシタを含む閉回路を形成するため、ダイオードにより放電する場合と比べて、瞬時に放電させることができため、大容量のキャパシタを採用することができる。
【0015】
前記スイッチング電源装置は、前記バッファ回路の出力部と前記キャパシタとの間に接続され、オフセット電圧を発生させる定電圧素子を備えていてもよい。
【0016】
この構成では、キャパシタと直列に定電圧素子を挿入することで、バッファ回路の出力を定電圧素子の定電圧分だけ嵩上げできる。これにより、バッファ回路の出力と誤差増幅器の反転入力部との電位差が小さい場合、例えば、整流素子の順方向電圧よりも小さい場合でも、オーバーシュートを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バッファ回路の出力がキャパシタ及び整流素子を介して、誤差増幅器の反転入力部に入力(負帰還)される。このため、負荷への出力電圧の立ち上がりにおけるオーバーシュートを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1に係るスイッチング電源装置の回路図。
図2】オーバーシュート防止回路がある場合とない場合とにおける各電圧波形を示す図であり、(A)は、出力電圧Vo、COMP端子電圧Vcomp、帰還電圧Vfbそれぞれの波形、(B)は、ソフトスタート電圧Vss、誤差電圧Verrそれぞれの波形。
図3】実施形態2に係るスイッチング電源装置の回路図。
図4】実施形態3に係るスイッチング電源装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るスイッチング電源装置の回路図である。スイッチング電源装置101は、スイッチング制御信号発生回路(以下、信号発生回路という。)1、オーバーシュート防止回路2及びスイッチング回路3を備えている。スイッチング回路3は、後述する信号発生回路1が生成したPWM信号(本発明のパルス幅変調信号)によりPWM制御されるスイッチ素子を備えている。スイッチング回路3は、スイッチ素子がPWM制御されることで、入力端子Piから入力された直流電圧を変換し、出力端子Poから直流電圧Voを出力する。
【0020】
スイッチング回路3が備えるスイッチ素子は、例えばトランジスタであり、このトランジスタのベースに、不図示の駆動回路からベース信号が印加されて、トランジスタがオンオフされる。本実施形態では、前記駆動回路は、信号発生回路1から入力されたPWM信号がハイレベルの時にスイッチ素子をオン状態にし、ローレベルの時にスイッチ素子をオフ状態にする構成としてある。
【0021】
信号発生回路1は、誤差増幅器11、基準電圧源12、コンパレータ13、ランプ波発振器14、誤差増幅器15及びFET16を備えている。
【0022】
誤差増幅器11の非反転入力端(+)には基準電圧源12が接続され、反転入力端(−)にはFB(フィードバック)端子が接続されている。GND端子はグランドに接続されている。FB端子は、出力端子Poに接続される抵抗R2,R3の分圧出力点に接続されている。FB端子には、出力端子Poから出力される出力電圧Voを分圧した帰還電圧Vfbが入力される。誤差増幅器15、FET16及び定電圧源VCCはバッファ回路4を構成している。誤差増幅器11の出力はバッファ回路4を介してCOMP端子に接続されている。
【0023】
バッファ回路4について、より詳しくは、誤差増幅器15の非反転入力端(+)にはSS端子が接続され、反転入力端(−)には誤差増幅器11の出力が接続されている。誤差増幅器15の出力はFET16のゲートに接続されている。FET16のドレインは誤差増幅器11の出力に接続され、ソースはGND端子に接続されている。定電圧源VCCは誤差増幅器11の出力に接続されている。
【0024】
信号発生回路1のCOMP端子からFB端子へのフィードバックラインには、直列接続されたキャパシタC1及び抵抗R1で構成された位相補償回路が接続されている。
【0025】
また、信号発生回路1のCOMP端子には、オーバーシュート防止回路2が接続されている。オーバーシュート防止回路2は、キャパシタC2、ダイオード(本発明の整流素子)D1及びダイオードD2を有している。キャパシタC2の一端はCOMP端子に接続され、他端はダイオードD1のアノードに接続されている。ダイオードD1のカソードは、FB端子に接続されている。また、ダイオードD2は、カソードがキャパシタC2及びダイオードD1の接続点に接続され、アノードがGND端子に接続されている。キャパシタC2及びダイオードD1は本発明の充電回路を構成する。また、ダイオードD2は本発明の放電回路を構成する。
【0026】
誤差増幅器11は、FB端子から入力される帰還電圧Vfbと基準電圧源12の基準電圧Vrefとの差分を増幅した誤差電圧(本発明の誤差増幅信号)Verrを出力する。誤差電圧Verrは、基準電圧Vrefが帰還電圧Vfbよりも高い場合にハイレベルとなる。スイッチング電源装置101の電源投入時、出力電圧Voは低いため、帰還電圧Vfbも低い。このため、誤差増幅器11から出力される誤差電圧Verrは、オーバーシュート防止回路2がない場合には誤差増幅器11の最大出力電圧に飽和する。しかしながら、本発明では、オーバーシュート防止回路2を有するため、後述のように最大出力電圧に飽和することがない。時間経過に伴い、出力電圧が設定値に達すると、誤差増幅器11から出力される誤差電圧Verrは、定常状態の電圧まで低下する。
【0027】
SS端子には、信号発生回路1に内蔵された定電流源5と、信号発生回路1の外部に設けられたキャパシタC3とからなるソフトスタート回路が接続されている。ソフトスタート回路は、定電流源5でキャパシタC3を定電流充電することで、ソフトスタート電圧Vssを生成する構成とされている。ソフトスタート電圧Vssは、時間の経過に伴い上昇する。
【0028】
バッファ回路4は、誤差電圧Verrとソフトスタート電圧Vssとを比較し、いずれか電圧の小さいほうを出力する。ソフトスタート電圧Vssは、時間の経過に伴い上昇する。誤差電圧Verrよりもソフトスタート電圧Vssのほうが小さい場合には、誤差増幅器15は、非反転入力端(+)と反転入力端(−)とを等しくするように作用するため、FET16の制御端子に信号を出力し、FET16の導通が制御されることで、誤差電圧Verrをソフトスタート電圧Vssと同じ電圧とする。結果としてバッファ回路4からはソフトスタート電圧Vssが出力される。
【0029】
誤差電圧Verrがソフトスタート電圧Vssよりも小さくなると、誤差増幅器15の出力はローとなり、FET16は非導通となる。したがってバッファ回路4からは誤差電圧Verrが出力される。
【0030】
バッファ回路4の出力は、すなわちCOMP端子電圧となり、オーバーシュート防止回路2のキャパシタC2を充電する。スイッチング電源装置101の電源投入時では、キャパシタC2は無電荷であり、バッファ回路4の出力であるソフトスタート電圧Vssが上昇するのに伴い、キャパシタC2の充電電流がダイオードD1、抵抗R3を介してGNDへと流れる。したがって、FB端子電圧である帰還電圧Vfbには、キャパシタC2の充電電流により抵抗R3に発生する電圧が重畳される。
【0031】
ソフトスタートが開始されて出力電圧Voが設定電圧に達するまでは、キャパシタC2に充電電流が流れるので、FB端子電圧である帰還電圧Vfbには、キャパシタC2の充電電流により抵抗R3に発生する電圧が重畳される。このため、帰還電圧Vfbは、オーバーシュート防止回路2がない場合と異なり、出力電圧Voが設定値に達する前に見かけ上基準電圧Vrefに漸近する。したがって、誤差増幅器11が出力する誤差電圧Verrは、オーバーシュート防止回路2がない場合のように、最大出力電圧に飽和することがなく、誤差増幅器の応答遅れによるオーバーシュートの発生が防止できる。
【0032】
なお、スイッチング電源装置101の電源がオフとなると、キャパシタC2に充電された電圧は、グランドに接続されているダイオードD2を通して放電される。これにより、スイッチング電源装置101が瞬時停電後に復帰した場合であっても、キャパシタC2がリセットされた状態で、スイッチング電源装置101の動作を開始できる。
【0033】
コンパレータ13の非反転入力端子(+)には、ランプ波発振器14が接続されている。ランプ波発振器14は基準三角波電圧(ランプ波電圧)を出力する。また、コンパレータ13の反転入力端(−)にはバッファ回路4が接続され、バッファ回路4の出力が入力される。
【0034】
コンパレータ13は、バッファ回路4の出力と、ランプ波発振器14からのランプ波電圧とを比較し、比較結果に応じたデューティのPWM信号を生成する。コンパレータ13の出力はOUT端子に接続され、コンパレータ13が生成したPWM信号は、OUT端子からスイッチング回路3へ出力される。
【0035】
上述のように、誤差電圧Verrは、出力電圧Voが設定値に達するまでは、定常状態より高い値をとり、出力電圧Voが設定値に達すると、定常状態まで低下する。また、ソフトスタート電圧Vssは、時間の経過に伴い上昇する。すなわち、スイッチング電源装置101の電源投入時、ソフトスタート電圧Vssが誤差電圧Verrより低く、その後、あるタイミング(以下、交差タイミングという)を過ぎると、誤差電圧Verrがソフトスタート電圧Vssより低くなる。バッファ回路4は、誤差電圧Verrとソフトスタート電圧Vssのいずれか電圧の小さいほうを出力する。
【0036】
このため、コンパレータ13は、電源投入時から一定期間、ソフトスタート電圧Vssとランプ波電圧とを比較し、比較結果に応じたデューティのPWM信号を生成する。そして、交差タイミング以降、コンパレータ13は、誤差電圧Verrとランプ波電圧とを比較し、比較結果に応じたデューティのPWM信号を生成する。これにより、誤差電圧Verrとソフトスタート電圧Vssとが交差した後では、PWM信号のパルス幅は帰還電圧Vfbにより制御される。
【0037】
オーバーシュート防止回路2がない場合、ソフトスタート電圧Vssの上昇と共に、出力電圧Voが設定値に達した後、誤差増幅器11の応答遅れにより、交差タイミングが遅くなる結果、スイッチ素子のオンデューティ比が大きくなり過ぎてしまい、オーバーシュートが発生する。
【0038】
しかし、本実施形態では、オーバーシュート防止回路2を設け、FB端子にキャパシタC2を介して、バッファ回路4の出力を負帰還させることで、誤差増幅器11の出力が飽和するのを防ぎ、交差タイミングを早めることができる。このため、出力電圧Voが設定電圧となるまでに、コンパレータ13は、補正された誤差電圧Verrとランプ波電圧とからPWM信号を生成できるため、オンデューティ比が過剰に大きくならず、オーバーシュートの発生を防止できる。
【0039】
なお、バッファ回路4の出力の負帰還量は、キャパシタC2の容量によって調整される。この場合、キャパシタC2に抵抗を接続し負帰還量を調整するようにしてもよい。また、ソフトスタート電圧Vssが上昇する傾きは、キャパシタC3の容量により調整される。
【0040】
図2(A)及び図2(B)は、オーバーシュート防止回路2がある場合とない場合とにおける各電圧波形を示す図であり、図2(A)は、出力電圧Vo、COMP端子電圧Vcomp、帰還電圧Vfbそれぞれの波形を示す。図2(B)は、ソフトスタート電圧Vss、誤差電圧Verrそれぞれの波形を示す。図2(A)及び図2(B)の横軸は時間、縦軸は電圧値である。また、図2(A)及び図2(B)の破線はオーバーシュート防止回路2がない場合、実線はオーバーシュート防止回路2がある場合の電圧波形である。
【0041】
図2(A)に示すように、電源投入から一定時間では、オーバーシュート防止回路2の有無に関わらず、PWM信号はソフトスタート電圧Vssに基づいて生成されるため、出力電圧Voの傾斜は同じとなる。これに対し、帰還電圧Vfbは、オーバーシュート防止回路2のキャパシタC2を介してCOMP端子電圧Vcompが負帰還されるため、オーバーシュート防止回路2がない場合(破線)と異なり、出力電圧Voが設定電圧に達する前に基準電圧Vrefに達する。また、図2(B)に示すように、誤差増幅器11から出力される誤差電圧Verrが、オーバーシュート防止回路2がない場合(破線)、出力できる最大電圧に飽和しているのに対して、オーバーシュート防止回路2がある場合には、定常状態の電圧に近いレベルで保持されている。これにより、交差タイミングが早くなるため、結果として図2(A)に示すように、出力電圧のオーバーシュートが防止されている。
【0042】
<実施形態2>
図3は、実施形態2に係るスイッチング電源装置の回路図である。実施形態2に係るスイッチング電源装置102は、充電回路のキャパシタの充電電圧を放電する放電回路が実施形態1と相違する。
【0043】
本実施形態では、オーバーシュート防止回路2Aは、キャパシタC2、ダイオードD1及びpnpトランジスタ(本発明の放電用スイッチ素子)21を備えている。pnpトランジスタ21は、エミッタ及びコレクタがキャパシタC2の両端に接続されている。pnpトランジスタ21は、スイッチング電源装置102の電源のオンオフに応じたリセット信号Vresetがベースに入力され、オンオフされる。具体的には、スイッチング電源装置102がオン状態のとき、pnpトランジスタ21がオフされ、スイッチング電源装置102がオフ状態のとき、pnpトランジスタ21がオンされる。pnpトランジスタ21がオンされると、キャパシタC2を含む閉回路が形成され、キャパシタC2に充電された電圧が瞬時に放電される。電圧の放電が瞬時に行えることで、キャパシタC2を大容量としても、スイッチング電源装置102の入力電圧の瞬断又は瞬時停電時にキャパシタC2の電荷をリセットできる。
【0044】
<実施形態3>
図4は、実施形態3に係るスイッチング電源装置の回路図である。実施形態3に係るスイッチング電源装置103は、オーバーシュート防止回路2Bが実施形態1,2に係るソフトスタート回路と相違する。本実施形態に係るオーバーシュート防止回路2Bは、キャパシタC2、ダイオードD1,D3、トランジスタ21、ツェナーダイオード(本発明の定電圧素子)22及び抵抗R4を備えている。
【0045】
ダイオードD3のアノードが、信号発生回路1のCOMP端子に接続され、カソードがツェナーダイオード22のアノードに接続されている。ツェナーダイオード22のカソードは、キャパシタC2を介してダイオードD1のアノードに接続されている。ツェナーダイオード22及びダイオードD3の接続点は、抵抗R4を介してグランドに接続されている。また、ツェナーダイオード22とキャパシタC2との接続点には、電流制限用の抵抗R30を介して電源が接続され、電圧Vextが印加される。トランジスタ21は、エミッタ及びコレクタがキャパシタC2の両端に接続されている。このトランジスタ21は、キャパシタC2の放電回路であり、実施形態2に係るトランジスタ21と同様である。
【0046】
電源投入直後、COMP端子から出力される誤差電圧Verrが帰還電圧Vfbに対して充分に高くならない場合、例えば、ダイオードD2の順方向電圧よりも小さい場合、帰還電圧入力部への負帰還が充分に掛からない。この実施形態3はその場合に対応するものである。
【0047】
図4に示すように、キャパシタC2に直列にツェナーダイオード22による定電圧発生回路を挿入することで、誤差電圧Verrがツェナーダイオード22のツェナー電圧(本発明のオフセット電圧)分だけ嵩上げされる。この構成により、オーバーシュートの抑制効果を高めることができる。
【0048】
なお、ツェナーダイオード22及び抵抗R30の間に、ダイオードを接続するようにしてもよい。例えば、オーバーシュート防止回路2Bに印加される電圧Vextが誤差電圧Verrより低くなる場合があり、その場合にはダイオードを挿入することで、ツェナーダイオード22から抵抗R30方向へ電流が流れるおそれを防止できる。
【0049】
以上説明したスイッチング電源装置の具体的構成などは、適宜設計変更可能であり、上述の実施形態に記載された作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1−信号発生回路
2,2A,2B−オーバーシュート防止回路
3−スイッチング回路
4−バッファ回路
5−定電流源
11,15−誤差増幅器
12−基準電圧源
13−コンパレータ
14−ランプ波発振器
16−FET
21−トランジスタ(放電用スイッチ素子)
22−ツェナーダイオード(定電圧素子)
101−スイッチング電源装置
D1−ダイオード(整流素子)
D2−ダイオード
D3−ダイオード
C1,C2,C3−キャパシタ
R1,R2,R3,R4,R30−抵抗
FB−FB端子
SS−SS端子
COMP−COMP端子
Verr−誤差電圧
Vfb−帰還電圧
Vss−ソフトスタート電圧
Vref−基準電圧
Vo−出力電圧
Vreset−リセット信号
図1
図2
図3
図4