(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
指ないしはペンで接触操作されるタッチパネルの画面に添って配置された複数の電極によって、前記指ないしはペンが近接したときの静電容量の変化を検出することにより、該指ないしはペンの近接位置を検出する近接位置検出手段と、
前記近接位置検出手段により検出された指ないしはペンの近接位置において、前記電極により検出された静電容量レベルが予め設定したしきい値を超えるか否かにより、指ないしはペンの接触の有無を判断する接触判断手段と、
前記近接位置検出手段により検出された指ないしはペンの近接位置に応じて、前記しきい値を変更可能に設定するしきい値制御手段と、
を備え、
前記近接位置検出手段により複数の近接位置が検出された場合、前記しきい値制御手段は、前記検出された近接位置の数が多い場合は少ない場合よりも小さいしきい値を設定することを特徴とするタッチパネル入力装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、この発明の一実施形態に係るタッチパネル入力装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
図1において、このタッチパネル入力装置は、タッチパネル100と、スキャン回路200と、しきい値制御部201と、接触判断部202と、座標検出部203とを備えている。
【0026】
前記タッチパネル100は、
図2に示すように、X軸方向の複数の電極X(X1〜Xn)とY軸方向の複数の電極Y(Y1〜Yn)とによるマトリクス構成体が画面の内側に配備されており、これら電極X及びYは、前記スキャン回路200に接続されている。
【0027】
前記スキャン回路200は、前記タッチパネル100における電極Xと電極Yを順次スキャンすることにより、操作者が指M(
図3)でタッチパネル100の表面をタッチ操作する際に、その指Mの静電容量の変化を検出して信号を送出する。また、このスキャンによってタッチパネル100の画面に指Mが接近した際の概略位置および近接面積の検出を行う。
【0028】
前記スキャン回路200には、しきい値制御部201、接触判断部202および座標検出部203が接続されている。
【0029】
前記しきい値制御部201は、スキャン回路200で検出した指Mの近接時の位置や面積の情報に基づいて、前記接触判断部202が接触の有無を判断する際のしきい値の可変制御を行うようになっている。
【0030】
前記接触判断部202は、前記スキャン回路200で検出された指Mの近接位置での静電容量値を、しきい値制御部201で設定されたしきい値と比較して、操作者の指Mがタッチパネル100の画面に接触したか否かの判断を行うものでである。
【0031】
前記座標検出部203は、接触判断部202で接触有りと判断された場合の接触検知信号をトリガとし、最終的には、操作者の指Mがタッチパネル100の画面に接触した時の位置の算出を行うものである。
【0032】
なお、しきい値制御部201、接触判断部202および座標検出部203は、CPUを含むコンピュータシステムで構成されてもよい。
【0033】
図2は、スキャン回路200により指Mの近接位置および面積を検出する方法の説明図である。
【0034】
図2において、前記スキャン回路200は、タッチパネル100における電極X(X1〜Xn)と電極Y(Y1〜Yn)をそれぞれ順次スキャンし、操作者の指Mがタッチパネル100の画面に近接した時の電極X,Yの静電容量の変化を検出するようになっている。
【0035】
この時、静電容量が変化する電極の位置に基づき、電極の個数の分解能で近接位置の概略位置検出を行う。また、静電容量が変化する電極の個数によって、近接する指Mの大きさ(面積)Sも同時に検出することが可能となる。
【0036】
図3(A)〜(C)は、タッチパネル100の画面に対する指Mの接触と検出との関係の説明図である。
【0037】
図3(A)における左図(a)では、操作者がタッチパネル100の画面を指Mの腹で押した状態を示している。
【0038】
指Mがタッチパネル100の画面と接触する面積は、指Mの腹で押す場合、
図3(B)の左図に示すように、比較的大きな接触面積Saを得ることができ、タッチパネル100の電極X,Yは、接触面積Saに比例して比較的大きな静電容量値を検出することができる。また、指Mの腹がタッチパネル100の画面に近接した時の近接面積も、接触面積と同様に大きい。
【0039】
これに対して、
図3(A)における右図(b)では、操作者がタッチパネル100の画面を指Mの先(指先)で押した場合を示している。この時、タッチパネル100の画面と接触する面は、
図3(B)の右図に示すように、比較的小さい面積Sbとなり、タッチパネル100の画面の電極で得られる静電容量値も小さい値となる。また、指Mの先がタッチパネル100画面に近接した時の近接面積も、接触面積と同様に小さい。
【0040】
また、指Mがタッチパネル100の画面に接触した時のみ座標検出を行うが、この時の指Mの接触検出は、タッチパネル100の画面に指Mが接触した時に発生する静電容量値が予め設定したしきい値Lを超えるか否かで判断される。
【0041】
図3(C)は、検出された静電容量値のレベルを示すものであり、左図の場合には、検出された静電容量値がしきい値Lを超えているので、タッチパネル100の画面に対して指Mが接触状態であると判断する。
【0042】
これに対して、
図3(C)の右図では、静電容量値がしきい値Lを超えていないので、タッチパネル100の画面に対して指Mが非接触状態であると判断する。
【0043】
図4は、タッチパネル100が操作者から見て前方側が高く操作者側が低い姿勢で、一定の高さ、角度に固定されている場合における指Mの操作位置と指Mの接触検出との関係を示す図である。
【0044】
図4の右側(a)は、操作者がタッチパネル100の画面上部側を押す時の指姿勢を示し、
図4の左側(b)は操作者がタッチパネル100の画面下部側を押す時の指姿勢を示している。
【0045】
このようにタッチパネル100の画面に一定の角度がある場合、操作者の手首、腕、肩などを支点Qとした場合、タッチパネル100の画面の下部側である程、
図4の左側(b)に示すように、操作者は指Mの先側で押す操作状態となる。
【0046】
図4の右側(a)では、タッチパネル100の画面の上部側に対して操作者が指Mの腹で押して操作できるため(指の姿勢上)、画面上部側に対する接触面積Saが比較的大きくなり、結果として得られる静電容量値も大きくなる。
【0047】
図4の左側(b)では、タッチパネル100の画面の下部側に対して操作者が指Mの先で押して操作することになり、画面下部側に対する接触面積Sbが比較的が小さくなり、得られる静電容量値は小さくなる。
【0048】
この時に、指Mの接触検出を行うしきい値Lが固定である場合、
図4の右側(a)では、しきい値Lを超えた接触状態と判断するが、左側(b)では、しきい値Lを超えないため、非接触の状態と判断される場合がある。つまり、同じ操作力でタッチパネル100の画面を指Mを押していても、画面を押す位置や領域によっては指Mの接触を検知できない場合もあり、結果として応答性に劣ると感じてしまう。
【0049】
図5(A)〜(C)は、タッチパネル100が一定の高さ、角度に固定されている場合における指Mの操作位置と指Mの接触検出の説明図である。
【0050】
図5(A)は、タッチパネル100の画面に対して操作者が指Mで操作した際の接触面積を示し、
図5(B)は、指Mの接触による検出静電容量値を示す。また、
図5(C)は、指Mの接触判断を示す信号波形図である。
【0051】
図5(A)の左側(a)は、操作者が指Mでタッチパネル100の画面上部の領域を押す時を示し、タッチパネル100の画面下部の領域を押す時を示している。この場合、操作者は、
図4の右側(a)と同様に指Mの腹でタッチ操作できるため、タッチパネル100の画面に対する接触面積Saは比較的大きく、結果として得られる静電容量値も
図5(B)の左側に示すように、大きくなる。
【0052】
一方、
図5(A)の右側(b)は、
図4の左側(b)と同様に、タッチパネル100の画面に対して指Mの先での操作となるため、タッチパネル100の画面に対する接触面積Sbは小さくなり、得られる静電容量値も、
図5(B)の右側に示すように、小さくなる。
【0053】
そこで、この実施形態では、指Mの接触検出の判断基準となるしきい値Lを指の近接位置情報に応じて変化させるようになっている。
【0054】
具体的には、タッチパネル100の画面上部(ユーザから見て画面前方側)に対して下部側(ユーザから見て画面手前側)に移行する程しきい値Lを小さく(低く)することにより、
図5(A)の右側(b)の状態であっても、小さな静電容量値でありながら指Mの接触が判定される。これにより、結果として、タッチパネル100の操作位置によって検出応答性が不均一になることがなくなる。
【0055】
図6(A)は、タッチパネル100の画面としきい値Lの設定値を決める領域Z(Zone)を示す図であり、
図6(B)は、タッチパネル100の上下方向の領域Z毎にしきい値を可変にして制御する方法の説明図である。
【0056】
図6(A)において、指Mの近接位置の検出方法は
図2で説明したように、タッチパネル100の画面にマトリクス構成に配置される電極X,Yを順次スキャンし、静電容量変化のある電極から近接位置を特定するため、近接位置の分解能は電極X,Yの配置数によって決まる。
【0057】
図6(A)に示すように、縦方向の電極Yがn個配置されている場合、縦方向では、n個の領域Z1,Z2,・・・Znに分割することができる。指Mの近接時にどの領域Zに近接したかの情報に応じてしきい値を決定する。
【0058】
この例では、タッチパネル100の画面最上部の領域Z1が最もしきい値が大きく、最下部の領域Znが最もしきい値が小さい設定となる。その間の領域Zは、
図6(B)に示すように、Z1からZnまでの間で階段状となるしきい値に設定される。なお、設定されたしきい値は、しきい値テーブルとして図示しない記憶部に保存され、検出された接触位置に対応するしきい値が呼び出される。
【0059】
図7は、タッチパネル100の画面を操作する操作者の指Mの接触判断の処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理は、しきい値制御部201、接触判断部202および座標検出部203が、CPUを含むコンピュータシステムで構成されている場合は、コンピュータによって実行される。
【0060】
まず、ステップS1では、最初に操作者の指Mの近接を判断するためにマトリクス電極X,Yのスキャンを行い、ステップS2では、そのスキャンによって電極X,Y上に指Mの近接による静電容量値の変化があるか否かを判断する。
【0061】
ここで、各マトリクス電極について、静電容量変化がない場合には(ステップS2でNO)、指Mの近接はないと判定し、ステップS1に戻ってマトリクスのスキャンを繰り返す。静電容量の変化がある場合には(ステップS2でYES)、指Mの近接があると判定し、ステップS3では、静電容量の変化があった電極から指Mの近接位置を算出する。必要に応じて近接面積も算出する。
【0062】
ステップS3で指Mの近接位置が算出されると、ステップS4では、算出結果に対応するしきい値が、予め設定するしきい値設定テーブルから決定される。
【0063】
ステップS5では、再度、ステップS3で検出した近接位置の静電容量値とステップS4で設定したしきい値との比較を行ない、ステップS6では、指Mの接触判断を行うために、静電容量値がステップS4で設定したしきい値を超えているか否かを判断する。
【0064】
ステップS3で検出した近接位置の静電容量値がしきい値を超えている場合には(ステップS6でYES)、ステップS7で指Mは接触状態にあると判定し処理を終了する。静電容量値がしきい値を超えていない場合には(ステップS6でNO)、指Mは接触状態にないと判定し、ステップS1のマトリクス電極X,Yのスキャンに戻る。
【0065】
以上のような制御を行うことにより、タッチパネル100の画面に対する指Mの操作角度に起因する接触面積の変動に応じてしきい値Lが設定されるので、指Mのタッチパネル100の画面に対するタッチ検出の失敗や、スクロール中の誤リリースを防ぐことが可能となる。
【0066】
ところで、MFP等の画像処理装置では、タッチパネル100の角度(傾斜角度ともいう)を可変に構成したものが多くあり、その場合、しきい値の設定に対してタッチパネル100の角度を考慮する必要がある。
【0067】
図8は、角度が可変に構成されたタッチパネル100の角度と該タッチパネル100の画面を操作する指Mの接触の関係を示す図である。
【0068】
図8において、タッチパネル100の角度が小さい(角度a)状態と角度が大きい(角度b)状態とでは、タッチパネル100の画面の同じ位置を指Mで操作しても、その指Mの接触角度が異なる。つまり、タッチパネル100の角度bの方が角度aの場合よりも指Mの先の方で押す傾向にあり、接触面積も小さく、静電容量も小さい。このため、同じしきい値Lで指Mの接触判断を行うと、角度によっては指Mの接触を検出できないことが起きる。
【0069】
このため、タッチパネル100の角度が可変できる構成のものでは、タッチパネル100の角度情報も含めてしきい値Lを設定する必要がある。
【0070】
図9は、タッチパネル100の角度情報を反映した時のタッチ位置としきい値設定との関係を示す図である。
【0071】
図9において、タッチパネル100の角度が小さい(角度a)状態では、操作者の指Mの支点Qとなる手首や腕を移動しやすく、タッチパネル100の画面位置による指Mの操作角度の変化が小さい。このため、操作位置による変化量が少ない特性αのしきい値Lに設定する。
【0072】
逆に、タッチパネル100の角度が大きい(角度b)状態では、タッチパネル100の画面の上部であっても指先操作となり、接触面積も小さいので、タッチパネル100の角度が小さい(角度a)状態に較べて、しきい値Lも相対的に小さく、かつタッチパネル100の画面上部から下部側に至る程変化量も大きい特性βのしきい値Lが設定される。
【0073】
但し、タッチパネル100の設置位置や操作者の身長等によって必ずしも上記制御が当てはまらない場合もある。よって、指Mの接触判断後も継続して指Mの近接位置と近接面積都を検出し、近接面積に変化がない場合には、前述の近接位置とタッチパネル100の角度から算出したしきい値をデフォルト値に再設定するような制御を行ってもよい。
【0074】
なお、タッチパネル100の角度検出は、例えば、タッチパネル100の回動支点部の回転量を測定すること等により行えばよい。
【0075】
指Mの接触を検出するしきい値については、小さく設定してあれば応答は良くなるが、逆に、小さく設定し過ぎると、指Mが非接触状態でも接触有りと判断されたり、リリース時のリリース判断が遅れる懸念があり、指Mの近接面積に応じたしきい値Lを設定することが必要である。
【0076】
図10は、タッチパネル100の画面に表示されるキーのサイズに応じてしきい値を可変設定する例の説明図である。
【0077】
図10において、タッチパネル100の画面には、面積の大きいキーKと面積の小さいキーkが表示されているとする。
【0078】
この場合、大きなキーKに対しては、操作者は、通常の画面操作と同様に指Mの腹を使って確実に押そうとするが、小さなキーkは指Mの先で押す操作となる。このため、小さなキーkが画面上部にある場合には、画面上部であっても指先での操作となるので、
図11に示すように、指Mの接触面積Sbが比較的小さく、このためキーサイズに応じたしきい値が予め設定されている。
【0079】
そして、指Mの近接時に、近接位置と予めGUIで設定されるキーK,kの位置情報を照会し、キーK,kのサイズ毎に設定されているしきい値が設定される。
【0080】
図12は、タッチパネル100の画面に表示されたキー等に対する操作方法に応じてしきい値を可変する例の説明図である。
【0081】
図12において、タッチパネル100の画面には、例えば複数のキーK(k)が集合的に配置されているキーエリアKEと、ピンチやローテーション操作を行なうためのプレビューエリアPEと、スクロールバーSBとが表示されている。
【0082】
前記キーエリアKEについては、指1本のタップ操作を行うキーK(k)であるので、前述したしきい値の設定を行うことにより、指Mの接触検出を安定的に行うことが可能となるが、プレビューエリアPEでは、ピンチやローテンション操作等、指M2本での操作が主体となる。
【0083】
指2本でのピンチやローテンション操作では、
図13に示すように、指Mの押圧力が分散するために、キーK(k)に対する指1本のタップ操作時に比べて、各指Mの押圧力が少なくなり、結果として指Mの接触面積Sbおよび近接面積が小さくなる。
【0084】
よって、このような操作を行う場合には、指Mの近接位置が1点か2点以上かの判断を行い、近接位置が2点以上である場合には、しきい値を下げる補正を行なって指Mの接触判断を行うのが良い。
【0085】
また、スクロールバーSBについては、接触有りと判断された後も継続して近接位置検出を行い、近接位置が変化する場合にはしきい値の可変設定を行う。
【0086】
つぎに、タッチパネル100の画面に対してペン操作を含めた場合のしきい値の制御について説明する。
【0087】
図14(A)〜(D)は、タッチパネル100の画面に対して指Mで操作する場合とペンPで操作する場合の各接触面積と検出静電容量値との関係を示す図である。
【0088】
ペンPの場合は、指Mよりも誘電率が低いので、同じ位置を同じ押圧で操作し、
図14(B)に示すように同じ接触面積Saであっても、ペン操作の方が指操作に比べて電極で得られる静電容量値は小さくなる。このため、
図14(B)に示すように、指Mの検出位置により決定したしきい値を用いると、ペンPで押した場合には、得られる静電容量値が小さいので、接触有りを判断できないことがある。
【0089】
このような問題に対処するために、この発明では、指M近接位置で決定したしきい値で、ペンPの接触検知ができない場合、近接面積が所定の面積以上であれば、
図14(C)に示すように、しきい値Lをしきい値L1に下げて設定したのち再度、ペンPの接触検出を行えば、
図4(D)に示すように、ペンPの接触を示す信号が出力される。
【0090】
このように、指Mよりも誘電率の低いペン操作時でも、上記のようなしきい値の制御を行うことにより、安定した接触検出が可能となる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。例えば、近接位置とともに近接面積を検出し、かつ接触有りと判断された後も継続して指ないしはペンの近接位置検出及び近接面積検出を行い、検出された近接面積が所定面積以上であれば、接触面積も大きいことが予想されしきい値の可変設定を行う必要がないものと判断して、しきい値の可変設定を中止し、一定のしきい値を適用しても良い。