(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
販売時に、カップを搬送しながらカップ内で飲料を調理して商品取出口に搬出するとともに、飲料入りのカップを廃棄するカップ廃棄機能を有するカップ式自動販売機であって、
カップが載置されるカップステージと、このカップステージに載置されたカップの左右両側において互いに近づいたり離れたりするように移動自在に構成され、当該カップを把持するための左右の把持アームと、これらの把持アームを互いに近づくように付勢するばねと、を有するカップホルダと、
このカップホルダを水平に移動させることにより、当該カップホルダに保持されたカップを水平に搬送する水平搬送機構と、
この水平搬送機構を制御する制御手段と、
前記水平搬送機構の下方に近接するように配置された平板状のトレイ本体部と、このトレイ本体部に連なるように設けられ、廃棄すべきカップを収容するためのカップ収容部と、を有するトレイと、
前記トレイ本体部の上方に設けられ、前記カップホルダに保持されたカップを当該カップホルダから脱離させるためのカップ脱離部材と、
前記カップホルダに保持されたカップを廃棄すべきか否かを判定するカップ廃棄判定手段と、
を備え、
前記カップ脱離部材は、前後方向に所定長さ延びる延設部と、この延設部の前後方向の中央付近から右方に傾斜した状態で後方に所定長さ延びる傾斜部と、この傾斜部の後端から後方に所定長さ延びる開放保持部と、前記延設部の後端から左方に直角に屈曲するカップ当接部とを有しており、
前記カップホルダに保持されたカップを廃棄すべきと判定されたときに、前記制御手段は、前記カップホルダを前記カップ脱離部材付近に移動させ、前記把持アームを前記カップ脱離部材の前記傾斜部に係合させた状態で、前記カップホルダを後方に移動させることにより、前記把持アームを前記ばねの付勢力に抗して互いに離れさせることによって、前記カップを前記把持アームから解放し、前記把持アームを前記カップ脱離部材の前記開放保持部に係合させた状態で、かつ前記カップを前記カップ脱離部材の前記カップ当接部に当接させながら前記カップホルダをさらに後方に移動させることにより、前記把持アームを開放した状態に保持しながら、当該カップを前記カップステージから前記トレイ本体部上に落下させ、その後、当該トレイ本体部上に落下したカップを、前記水平搬送機構によって押圧することにより、前記カップ収容部に送り出すことを特徴とするカップ式自動販売機。
前記カップ廃棄判定手段は、前記商品取出口に搬出された飲料入りのカップが、所定時間、放置されたときに、当該飲料入りのカップを廃棄すべきと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ式自動販売機。
前記カップ廃棄判定手段は、所定の調理エラーが生じたときに、飲料入りのカップが前記商品取出口に搬出される前に、当該飲料入りのカップを廃棄すべきと判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ式自動販売機。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカップ式自動販売機として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この自動販売機は、カップを自動販売機内で搬送しながらカップ内で飲料を調理し、利用者に飲料入りのカップを提供するとともに、カップ搬送装置を利用して、そのカップを廃棄可能なものである。このカップ搬送装置は、カップを保持するカップホルダと、このカップホルダを前後左右に水平に移動させる水平搬送機構と、飲料入りのカップを廃棄する際に、そのカップを当接させるためのカップ当接プレートなどを備えている。カップホルダは、カップを載置するカップステージと、その載置されたカップを左右両側から把持する左右の把持アームと、これらを駆動する把持アーム駆動機構などを有している。両把持アームは、基部において鉛直軸線回りに回動自在に構成されており、把持アーム駆動機構で開閉するように駆動されることにより、カップを把持したり解放したりするようになっている。
【0003】
上記のカップ搬送装置を備えた自動販売機では、販売時に、カップホルダのカップステージに載置されたカップを、両把持アームによって把持した状態で、所定の原料供給位置や飲料供給位置などに順に搬送し、カップ内で飲料を調理する。そして、飲料の調理完了後、飲料入りのカップを商品取出口に搬出する。この場合、利用者による取り忘れなどによって、飲料入りのカップが商品取出口に所定時間、放置されたときに、そのカップの廃棄処理が実行される。
【0004】
この廃棄処理ではまず、商品取出口に搬出されたカップを、両把持アームで把持し、カップ搬送装置によってカップ当接プレートの付近に搬送する。次いで、把持アーム駆動機構のモータを作動させ、両把持アームを開くように駆動する。これにより、カップホルダに保持されたカップは、両把持アームから解放される。次いで、カップホルダを移動させることにより、カップステージに載置されているカップを、カップ当接プレートに当接させながら、カップステージからパウダトレイ上に落下させる。そして、そのカップを、水平搬送機構によって押圧し、カップ廃棄口に送り出す。これにより、カップは、カップ廃棄口を介して、廃棄用バケツに収容される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の自動販売機のカップ搬送装置では、カップホルダに保持されるカップを、カップステージに載置しかつ両把持アームによって左右両側からしっかりと把持した状態で搬送するので、そのカップを安定して搬送することができる。しかし、飲料入りのカップを廃棄する場合、そのカップをカップ当接プレートの付近に搬送した後、両把持アームからカップを解放するために、把持アーム駆動機構のモータによって、両把持アームを互いに離れるように駆動する必要がある。このように、上記のカップホルダでは、両把持アームを駆動するモータを駆動源として用いるため、その分、カップホルダの製造コストが上昇してしまう。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、飲料入りのカップを廃棄する際に、カップホルダにおいて、モータなどの駆動源を用いることなく、そのカップを、把持アームから解放し、カップホルダから容易に脱離させることができ、カップホルダの製造コストの低減を図ることができるカップ式自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、販売時に、カップを搬送しながらカップ内で飲料を調理して商品取出口に搬出するとともに、飲料入りのカップを廃棄するカップ廃棄機能を有するカップ式自動販売機であって、カップが載置されるカップステージと、このカップステージに載置されたカップの左右両側において互いに近づいたり離れたりするように移動自在に構成され、カップを把持するための左右の把持アームと、これらの把持アームを互いに近づくように付勢するばねと、を有するカップホルダと、このカップホルダを水平に移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを水平に搬送する水平搬送機構と、この水平搬送機構を制御する制御手段と、水平搬送機構の下方に近接するように配置された平板状のトレイ本体部と、このトレイ本体部に連なるように設けられ、廃棄すべきカップを収容するためのカップ収容部と、を有するトレイと、トレイ本体部の上方に設けられ、カップホルダに保持されたカップをカップホルダから脱離させるためのカップ脱離部材と、カップホルダに保持されたカップを廃棄すべきか否かを判定するカップ廃棄判定手段と、を備え、
カップ脱離部材は、前後方向に所定長さ延びる延設部と、この延設部の前後方向の中央付近から右方に傾斜した状態で後方に所定長さ延びる傾斜部と、この傾斜部の後端から後方に所定長さ延びる開放保持部と、延設部の後端から左方に直角に屈曲するカップ当接部とを有しており、カップホルダに保持されたカップを廃棄すべきと判定されたときに、制御手段は、カップホルダをカップ脱離部材付近に移動させ、把持アームをカップ脱離部材
の傾斜部に係合させた状態で、カップホルダを後方に移動させることにより、把持アームをばねの付勢力に抗して互いに離れさせることによって、カップを把持アームから解放し、
把持アームをカップ脱離部材の開放保持部に係合させた状態で、かつカップをカップ脱離部材
のカップ当接部に当接させながらカップホルダをさらに
後方に移動させることにより、
把持アームを開放した状態に保持しながら、カップをカップステージからトレイ本体部上に落下させ、その後、トレイ本体部上に落下したカップを、水平搬送機構によって押圧することにより、カップ収容部に送り出すことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、カップをカップステージに載置するとともに左右の把持アームで把持したカップホルダを、水平搬送機構によって移動させることにより、そのカップホルダに保持されたカップを搬送する。販売時には、カップを搬送しながらカップ内で飲料を調理し、その飲料入りのカップを商品取出口に搬出する。また、カップ廃棄判定手段により、カップホルダに保持された飲料入りのカップを廃棄すべきと判定されたときには、制御手段で水平搬送機構を制御することにより、そのカップの廃棄処理が実行される。
【0010】
この廃棄処理ではまず、カップホルダをカップ脱離部材付近に移動させ、そのカップ脱離部材
の傾斜部に把持アームを係合させ
た状態で後方に移動させることにより、両把持アームをばねの付勢力に抗して互いに離れさせることによって、カップを把持アームから解放する。次いで、
把持アームをカップ脱離部材の開放保持部に係合させた状態で、かつカップをカップ脱離部材
のカップ当接部に当接させながらカップホルダをさらに
後方に移動させることにより、
把持アームを開放した状態に保持しながら、カップをカップステージからトレイ本体部上に落下させる。このトレイ本体部は、水平搬送機構の下方に近接するように配置されているので、カップステージからのカップの落下距離が短く、したがって、カップ内の飲料の上方への飛び散りを抑制することができる。その後、トレイ本体部上に落下したカップを、水平搬送機構によって押圧し、カップ収容部に送り出す。以上により、飲料入りのカップの廃棄が完了する。
【0011】
上述したように、飲料入りのカップを廃棄する際に、水平搬送機構によってカップホルダを移動させるだけで、カップホルダの両把持アームを互いに離れさせ、そのカップを解放することができる。このように、カップホルダにおいて、モータなどの駆動源を用いることなく、カップを把持アームから解放し、カップホルダから容易に脱離させることができ、カップホルダの製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のカップ式自動販売機において、水平搬送機構は、前後方向に延びるとともに左右方向に移動自在の可動部を有し、カップホルダを可動部上において、その長さ方向に沿って移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを前後方向に搬送する前後方向搬送機構と、可動部を左右方向に移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを左右方向に搬送する左右方向搬送機構と、を有し、制御手段は、カップホルダに保持されたカップを廃棄する際に、カップを、カップステージから可動部上に落下させてから、トレイ本体部上に落下させるように、前後方向搬送機構及び左右方向搬送機構を制御することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、水平搬送機構が、前後方向搬送機構及び左右方向搬送機構を有している。前後方向搬送機構は、前後方向に延びるとともに左右方向に移動自在の可動部を有しており、この可動部上において、その長さ方向に沿ってカップホルダが移動し、これに保持されたカップを前後方向に搬送する。一方、左右方向搬送機構は、可動部を左右方向に移動させることにより、カップホルダに保持されたカップを左右方向に搬送する。
【0014】
上記の水平搬送機構を備えた自動販売機では、制御手段が前後方向搬送機構及び左右方向搬送機構を制御することにより、飲料入りのカップを廃棄する際に、そのカップを、カップステージから可動部上に一旦落下させてから、トレイ本体部上に落下させる。これにより、カップホルダに保持されたカップを、カップステージからトレイ本体部に直接、落下させる場合に比べて、カップが一度に落下する距離を、より短くすることができ、カップ内の飲料の上方への飛び散りを、より一層抑制することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のカップ式自動販売機において、カップ廃棄判定手段は、商品取出口に搬出された飲料入りのカップが、所定時間、放置されたときに、飲料入りのカップを廃棄すべきと判定することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、商品取出口に搬出された飲料入りのカップが、利用者による取り忘れなどによって、所定時間、放置されたときに、そのカップを廃棄すべきと判定され、その判定結果に基づいて、飲料入りのカップの廃棄処理が実行される。これにより、商品取出口に飲料入りのカップが長時間、放置されることがなくなるとともに、次回の販売時に、そのカップが邪魔になることがなく、販売の継続を確保することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ式自動販売機において、カップ廃棄判定手段は、所定の調理エラーが生じたときに、飲料入りのカップが商品取出口に搬出される前に、飲料入りのカップを廃棄すべきと判定することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、所定の調理エラーが生じたときには、飲料入りのカップが商品取出口に搬出される前に、そのカップを廃棄すべきと判定され、その判定結果に基づいて、飲料入りのカップの廃棄処理が実行される。調理エラーが生じたときには通常、十分な品質を有していない飲料が調理されている可能性が高く、したがって、そのような飲料入りのカップを商品取出口に搬出することなく、廃棄処理を実行することにより、利用者に低品質の飲料が提供されるのを防止することができる。なお、上記の調理エラーとは、例えばコーヒーなどの飲料を抽出によって調理する際に、その抽出が適切に実行されなかったり、粉末原料や湯水をカップに供給することによって飲料を調理する際に、それらの供給が適切に実行されなかったりする場合をいう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるカップ式自動販売機の内部に設置されたカップ搬送装置及びその周辺を示している。この自動販売機は、コーヒーやジュースなどの飲料をカップCに入れて販売するものであり、前面が開放した縦長ボックス状の販売機本体と、その前面に開閉自在に設けられたメインドア(いずれも図示せず)とを備えている。販売機本体内の上下方向のほぼ中央部には、カップ搬送装置1が設置され、メインドアの上下方向のほぼ中央部には、前面に開閉自在に取出口扉(図示せず)を有し、利用者が商品としての飲料入りのカップを取り出すための商品取出口2が設けられている。
【0021】
図1に示すように、カップ搬送装置1は、カップCを保持するカップホルダ3と、これを前後左右に水平に移動させることにより、カップホルダ3に保持されたカップCを水平に搬送する水平搬送機構4と、これを制御するマイクロコンピュータを有する制御装置(制御手段、図示せず)とを備えている。なお、この制御装置は、自動販売機内の図示しない他の機器なども制御するものであり、本発明のカップ廃棄判定手段としても機能する。
【0022】
図2〜
図4に示すように、カップホルダ3は、ボックス状に形成された本体部11と、この本体部11の前面下端部から前方に突出するように設けられ、カップCを載置した状態で支持するカップステージ12と、本体部11の前面上部から前方に突出するように設けられ、カップステージ12に載置されたカップCを左右両側から把持した状態で支持する左右2つの把持アーム13、13とを有している。
【0023】
カップステージ12は、平面形状が矩形の簀の子状に形成されている。一方、左右の把持アーム13、13は、ほぼ左右対称に形成されている。
図4に示すように、各把持アーム13は、カップCを把持するための把持部14と、その後端部から後方に延び、本体部11に回動自在に支持されたアーム部15とを有している。
【0024】
両把持部14、14は、各々の平面形状がほぼ半円状で外方に凸に湾曲するとともに、全体として下方に向かってテーパ状に形成されている。また、右側の把持アーム13には、把持部14の下端部の所定位置から下方に突出し、後述するカップ脱離部材32に係合する係合突起14aが設けられている。
【0025】
一方、アーム部15は、後半部の平面形状がへの字状に形成され、両把持アーム部13、13のアーム部15、15同士が上下に交差するように配置されている。また、両把持アーム13、13は、各々のアーム部15に設けられた支点部15aを中心として回動自在であるとともに、それらの支点部15aの付近に設けられたギヤ部15b、15b同士が噛み合っている。これにより、両把持アーム13、13は、それぞれ対応する支点部15a、15aを中心として同期して回動し、両把持部14、14が互いに近づいたり離れたりするように開閉する。また、両把持アーム13、13のアーム部15、15の後端部間には、引張りばねから成るばね16が取り付けられている。このばね16により、両把持アーム13、13は、両把持部14、14が互いに近づくように、すなわち閉鎖するように付勢されている。
【0026】
図1に示すように、水平搬送機構4は、カップホルダ3を下方から支持した状態で、これを前後方向に移動させることにより、カップホルダ3に保持されたカップCを前後方向に水平に搬送する前後方向搬送機構21と、この前後方向搬送機構21を下方から支持した状態で、カップホルダ3とともに左右方向に移動させることにより、カップホルダ3に保持されたカップCを左右方向に水平に搬送する左右方向搬送機構22とを備えている。
【0027】
前後方向搬送機構21は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって構成され、前後方向に所定長さ延びるボックス状の可動レール23(可動部)を有している。図示は省略するが、この可動レール23内には、前端部及び後端部に配置された前後2つのプーリ、及びこれらに巻き掛けられるとともに、カップホルダ3に連結された無端のタイミングベルトが設けられている。可動レール23の底面後端部には、ステッピングモータが設けられており、そのモータによって、後ろ側のプーリが回転駆動されることにより、タイミングベルトが回転し、それに伴い、カップホルダ3が、可動レール23上をこれに沿って前後方向に移動する。なお、上記の可動レール23は、前側の所定部分が左右方向搬送機構22で下方から支持されるとともに、後端部が左右方向に延びる後レール部24に、図示しないローラを介して、摺動自在に係合している。
【0028】
左右方向搬送機構22は、所定形状の金属板を折曲げ加工することなどによって構成され、左右方向に所定長さ延びるボックス状の固定レール25を有している。図示は省略するが、この固定レール25内には、左端部及び右端部に配置された左右2つのプーリ、及びこれらに巻き掛けられるとともに、可動レール23に連結された無端のタイミングベルトが設けられている。固定レール25の底面左端部には、ステッピングモータが設けられており、そのモータによって、左側のプーリが回転駆動されることにより、タイミングベルトが回転し、それに伴い、可動レール23が、カップホルダ3とともに、固定レール25上をこれに沿って左右方向に移動する。
【0029】
以上のように構成されたカップ搬送装置1の下方には、固定レール25の下面に近接するように、合成樹脂製の成形品から成るパウダトレイ26(トレイ)が設けられている。このパウダトレイ26は、飲料調理用の粉末原料や液体(湯水や飲料)が、販売機本体内の下部に配置された機器などに落下して付着するのを防止するためのものであり、平面形状が、カップホルダ3の可動範囲の面積よりも一回り大きく形成されている。具体的には、パウダトレイ26は、平板状のトレイ本体部27と、このトレイ本体部27に連なり、その左前部に設けられたカップ収容部28とで構成されている。
【0030】
トレイ本体部27は、周縁部が上方に屈曲されるとともに、カップ収容部28に向かって前下がりに若干傾斜するように形成されている。一方、カップ収容部28は、廃棄されたカップCを収容するものであり、トレイ本体部27よりも下方に凸に形成され、所定の深さを有している。また、カップ収容部28の底部には、飲料入りのカップCが廃棄される際に、そのカップC内の飲料を排出するための廃液口28aが設けられている。なお、この廃液口28aは、廃液チューブを介して、販売機本体内に設置された廃液バケツ(いずれも図示せず)に接続されており、カップ収容部28内に流入した飲料が、廃液口28a及び廃液チューブを介して、廃液バケツに回収される。
【0031】
また、パウダートレイ26の右前端部には、飲料入りのカップCを廃棄する際に利用されるカップ倒れ防止板31及びカップ脱離部材32が設けられている。カップ倒れ防止板31は、正面形状が縦長矩形状に形成され、後述するように、カップCをカップホルダ3から脱離させる際に、そのカップCが前方に倒れるのを防止するためのものである。一方、カップ脱離部材32は、所定形状の金属板を折曲げ加工することにより、所定形状に形成されている。
【0032】
具体的には、
図3及び
図4に示すように、カップ脱離部材32は、左端部がカップ倒れ防止板31と重なった状態で、これに連結された連結部33と、この連結部33の左端部の下部から直角に屈曲し、後方に所定長さ延びる延設部34と、この延設部34の中央付近に連なり、カップホルダ3の両把持アーム13、13を開放させるための把持アーム開放部35と、延設部34の後端から左方に直角に屈曲し、カップCを当接させるためのカップ当接部36とで構成されている。
【0033】
把持アーム開放部35は、延設部34に対して所定角度(例えば20度)、右方に傾斜し、延設部34から所定長さ延びる傾斜部35aと、この傾斜部35aの後端から後方にかつ延設部34と平行に所定長さ延びる開放保持部35bとを有している。また、この把持アーム開放部35の上端位置は、延設部34の前半部のそれよりも高くなっている。
【0034】
図5は、カップホルダ3に保持されたカップCを、カップ脱離部材32を利用して、カップホルダ3から脱離させる際のカップホルダ3の動作を示している。なお、カップホルダ3からのカップCの脱離を開始する前にはまず、カップホルダ3を、
図4に示すように、カップ脱離部材32の付近に移動させる。具体的には、同図に示すように、把持アーム13の係合突起14aが、把持アーム開放部35よりも若干前側に位置するよう、カップホルダ3をカップ脱離部材32の左方(
図4の上方)に移動させる。
【0035】
この状態から、カップホルダ3を右方(
図4の下方)に移動させ、カップCをカップ倒れ防止板31の真後ろに搬送する。この場合、
図5(a)に示すように、把持アーム13の係合突起14aは、カップ脱離部材32の延設部34を越えた状態に位置する。次いで、カップホルダ3を後方(
図5の右方)に移動させる。この場合、同図(b)に示すように、把持アーム13の係合突起14aが、カップ脱離部材32の把持アーム開放部35に係合し、傾斜部35aに沿って右方(
図5の下方)に移動するのに伴い、両把持アーム13、13が次第に大きく開放し、カップCは、両把持アーム13、13から解放される。またこの場合、カップCは、カップ脱離部材32のカップ当接部36に当接することで、それ以上の後方への移動が阻止される。
【0036】
そして、カップホルダ3が後方へさらに移動することにより、
図5(c)に示すように、把持アーム13の係合突起14aが、把持アーム開放部35の開放保持部35bに係合し、両把持アーム13、13が大きく開放した状態に保持される。またこの場合、カップステージ12がカップ当接部36よりも後方へ移動することにより、カップCは、カップステージ12から脱離し、カップ当接部36の前側に落下する。なお、カップCがカップステージ12から脱離して落下する際に、そのカップCは、前方に傾くことがあるものの、前方のカップ倒れ防止板31に当接することにより、倒れることなく、カップステージ12に載置されていた姿勢のまま、カップ当接部36の前側に落下する。以上のようにして、カップホルダ3から、それに保持されていたカップCが脱落する。
【0037】
なお、図示は省略するが、販売機本体内には、カップ搬送装置1の上方に、各種の飲料を調理するための複数の粉末原料を供給する複数のキャニスタ、及び多数のカップを積み重なった状態で収納するとともに、販売時に最下位のカップを一つずつ下方に払い出し、カップホルダ3に供給するカップ供給装置などが配置されている。
【0038】
次に、
図6〜
図9を参照して、販売時におけるカップ搬送装置1によるカップCの搬送動作及び廃棄処理について説明する。
【0039】
図6(a)は、カップホルダ3が待機位置に位置した状態を示している。販売時に、利用者によって所望の飲料が選択されると、カップホルダ3がカップ供給装置の下方に移動し、供給されたカップCを、カップステージ12に載置するとともに、左右両側から把持アーム13、13で把持することによって保持する。なお、カップホルダ3がカップ供給装置からカップCを受け取る際には、前述したカップ脱離部材32の把持アーム開放部35と同様の機能を有する部材(図示せず)により、両把持アーム13、13が開放されるようになっている。
【0040】
次いで、カップCを保持したカップホルダ3は、前後左右に移動しながら、選択された飲料に応じて、所定の原料供給位置や飲料供給位置などに順に停止し、カップC内で飲料が調理される。飲料の調理完了後、カップホルダ3は、
図6(b)に示すように、商品取出口2の後方に移動し、その後、同図(c)に示すように前方に移動して、カップCを商品取出口2に搬出する。なおこの場合、前述したカップ脱離部材32の把持アーム開放部35と同様の機能を有する部材(図示せず)により、両把持アーム13、13が開放されるようになっている。
【0041】
上記のようにして、商品取出口2に飲料入りのカップCが搬出された後、所定時間が経過しても、そのカップCが商品取出口2から取り出されず、放置されている場合には、前記制御装置により、カップCを廃棄すべきと判定され、廃棄処理が実行される。なお、商品取出口2におけるカップCの有無は、商品取出口2に設けられた光センサ(図示せず)などによって検出されるようになっている。
【0042】
上記の廃棄処理ではまず、カップホルダ3は、
図6(c)の状態から後方へ移動し、カップCを商品取出口2から後方に搬出する(
図6(b)参照)。次いで、カップホルダ3は、
図7(a)に示すように右方へ移動した後、
図7(b)に示すように前方へ移動し、カップCをカップ脱離部材32の左方に搬送する。次いで、カップホルダ3は、
図7(c)に示すように、右方に移動し、カップCをカップ倒れ防止板31の真後ろに搬送する。この場合、前述した
図5(a)に示すように、右側の把持アーム13の係合突起14aが、カップ脱離部材32の延設部34の右側に位置する。
【0043】
次いで、カップホルダ3は、
図8(a)に示すように、後方に移動し、それにより、前述した
図5(b)に示すように、両把持アーム13、13が開放するとともに、カップCがカップ脱離部材32のカップ当接部36に当接する。そして、カップホルダ3は、
図8(b)及び(c)に示すように、さらに後方に移動し、それにより、前述した
図5(c)に示すように、カップCが、カップステージ12上から脱離し、可動レール23上に落下する。
【0044】
次いで、
図9(a)に示すように、可動レール23が右方に移動する。この場合、可動レール23上のカップCは、カップ脱離部材32の延設部34に当接し、右方への移動が阻止されることにより、可動レール23からパウダトレイ26のトレイ本体部27上に落下する。
【0045】
またこの場合、カップCが可動レール23からトレイ本体部27上に落下する際に、そのカップCは、
図9(a)に示すように、パウダトレイ26のカップ収容部28側に倒れやすい。このようにカップCがトレイ本体部27上で倒れた場合には、カップCの開口部が左方のカップ収容部28側に向き、カップC内の飲料がカップ収容部28に流れる。このように、トレイ本体部27上で倒れるカップCは、その倒れる方向がカップ収容部28側に制御されるとともに、カップC内の飲料が流出する方向及び飛び散る方向も、カップ収容部28側に制御される。なお、カップ収容部28に流入した飲料は、前述したように、廃液口28a及び廃液チューブを介して、廃液バケツに回収される。
【0046】
その後、
図9(b)に示すように、可動レール23が左方に移動し、トレイ本体部27上のカップCを押圧しながら、カップ収容部28に送り出す。これにより、カップCがカップ収容部28に収容され、カップCの廃棄処理が終了する。なお、カップCの廃棄処理終了後、カップホルダ3は、
図9(c)に示すように、次回の販売に備えて、待機位置に戻る。
【0047】
以上詳述したように、本実施形態によれば、飲料入りのカップCを廃棄する際に、水平搬送機構4によってカップホルダ3を移動させるだけで、両把持アーム13、13を開放して、カップホルダ3からカップCを脱離させることができる。このように、カップホルダ3において、モータなどの駆動源を用いることなく、カップCを両把持アーム13、13から解放し、カップホルダ3から容易に脱離させることができ、カップホルダ3の製造コストの低減を図ることができる。また、カップホルダ3に保持された飲料入りのカップCを廃棄する際に、そのカップを、カップステージ12から可動レール23上に一旦落下させてから、トレイ本体部27上に落下させるので、カップステージ12からトレイ本体部27に直接、落下させる場合に比べて、カップCが一度に落下する距離を短くすることができる。これにより、カップ内の飲料の飛び散りを抑制することができる。さらに、商品取出口2に飲料入りのカップCが長時間、放置されることがなくなるとともに、次回の販売時に、そのカップCが邪魔になることなく、販売の継続を確保することができる。
【0048】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、販売時に、飲料入りのカップCが商品取出口2に放置された場合に、廃棄処理を実行したが、これに加えて、飲料の調理中において、所定の調理エラーが生じた場合、例えばコーヒーなどの飲料の抽出が適切に実行されなかったり、粉末原料や湯水のカップCへの供給が適切に実行されなかったりした場合に、カップCを商品取出口2に搬出せずに、廃棄処理を実行するようにしてもよい。この場合には、前記制御装置により、カップCが商品取出口2に搬出される前に、カップCを廃棄すべきと判定され、その判定結果に基づき、前述した
図7(a)〜
図9(c)に示す順に、カップホルダ3が移動する。このように、飲料入りのカップCを商品取出口2に搬出することなく、廃棄処理を実行することにより、利用者に低品質の飲料が提供されるのを防止することができる。
【0049】
また、実施形態で示したカップ搬送装置1のカップホルダ3及び水平搬送機構4や、カップ脱離部材32の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。