(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974885
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20160809BHJP
G05D 1/02 20060101ALI20160809BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20160809BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20160809BHJP
B62D 11/04 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
B60L15/20 J
G05D1/02 Z
A61G5/04 703
A61G5/04 708
B60L15/00 P
!B62D11/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-275385(P2012-275385)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-121191(P2014-121191A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「生活支援ロボット実用化プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】久米 洋平
(72)【発明者】
【氏名】下田 智大
(72)【発明者】
【氏名】太田 章博
(72)【発明者】
【氏名】塚田 将平
(72)【発明者】
【氏名】河上 日出生
【審査官】
武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−090751(JP,A)
【文献】
特開平05−276610(JP,A)
【文献】
特許第4103814(JP,B2)
【文献】
特開平09−130918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
A61G 1/00−5/04
G05D 1/00−1/12
B62D 9/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が入力した操作方向及び操作量に基づく移動目標値に従って移動する電動車両の制御方法であって、
同じ操作方向に所定値以上の操作量が継続して検出された場合は、操作方向及び操作量を保持データとして保持すると共に操作入力を中心とした領域の不感帯を設定し、前記不感帯内に操作入力が検出されると、前記保持データとして保持した操作方向及び操作量に基づいて前記移動目標値を生成する、
電動車両の制御方法。
【請求項2】
前記不感帯の外に操作入力が検出されると、前記保持データ及び前記不感帯を削除すると共に、検出された前記操作入力の操作方向及び操作量に基づいて前記移動目標値を生成する、
請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項3】
前記不感帯の領域は、前記所定値以上の操作量が同じ方向に継続して検出された時間の経過に従って幅が広くなる、
請求項1または2に記載の電動車両の制御方法。
【請求項4】
前記不感帯の領域は、前記操作入力の操作量が大きい程、幅が広くなる、
請求項1から3いずれか1項に記載の電動車両の制御方法。
【請求項5】
前記不感帯の領域は、前記所定値より操作量が大きい領域に設定される、
請求項1から4いずれか1項に記載の電動車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の操作に基づいて動作する電動車両の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作者の操作入力に基づき動作することで、重量物の搬送を支援する、あるいは、搭乗者の移動を支援する電動車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に開示された従来の電動車椅子を示す図である。従来の電動車椅子101は、操作入力部102に対する操作者の操作入力に基づき生成された移動目標値に従って移動する。従来の電動車椅子101は、このように移動することにより、操作者の操作で自由に移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−106722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電動車椅子101を体幹がうまく保持できない状態で操作した場合、一定の操作入力を与えているつもりであっても、徐々に操作入力がずれてしまい、操作者の意図に反して移動してしまう可能性がある。操作入力がずれた場合、広い場所を移動していれば問題ないが、狭い通路等を移動していると、通路の壁に接触することによる操作者の転落等が発生する恐れがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、徐々に操作入力がずれてしまっても、当初の意図どおりに移動させることができる手段を備えた電動車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の電動車両の制御方法は、操作者が入力した操作方向及び操作量に基づく移動目標値に従って移動する電動車両の制御方法であって、同じ操作方向に所定値以上の操作量が継続して検出された場合は、操作方向及び操作量を保持データとして保持すると共に操作入力
を中心とした領域の不感帯を設定し、前記不感帯内に操作入力が検出されると、前記保持データとして保持した操作方向及び操作量に基づいて前記移動目標値を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、徐々に操作入力がずれてしまっても、意図どおりに移動させることができる電動車両の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる電動車椅子の平面図
【
図3】本実施の形態1にかかる電動車椅子の制御ブロック図
【
図4】本実施の形態1にかかる電動車椅子のフローチャート
【
図5】(a)〜(f)本実施の形態1にかかる電動車椅子の操作入力と不感帯の関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0011】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、電動車両の一例として、電動車椅子11を例として説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電動車椅子11の平面図である。
図2は、本実施の形態1にかかる電動車椅子11の斜視図である。理解を容易にするために、電動車椅子11に、電動車椅子11と共に動く車両座標系Σ
r(互いに直交する三つのx
r軸、y
r軸、z
r軸を有する座標系)を設定する。x
r軸とy
r軸から構成される平面は地面に対して平行な水平面であり、x
r軸は電動車椅子11の前方を向いているとする。x
r軸方向を電動車椅子11の前後方向とし、y
r軸方向を電動車椅子11の左右方向とする。
図3は、本発明の実施の形態1にかかる電動車椅子11の制御ブロック図である。
【0012】
図1、
図2に示すように、電動車椅子11は、複数の車輪21及び複数のアクチュエータ22を有する車体部12と、座面部23と、操作入力部13と、バッテリー18と、制御部30を備える。また、
図3に示すように、電動車椅子11の制御部30は、操作入力補正部14と、移動目標値生成部15と、車輪駆動部17とを有する。バッテリー18は、アクチュエータ22や車輪駆動部17等に電気エネルギーを供給する。
【0013】
車体部12は、回転軸の方向がy
r軸と一致すると共に対向する2つの車輪21及び2つのアクチュエータ22と、4隅で車体部12を支えることで転倒を防止するための4つのキャスター20を有する。電動車椅子11は、それぞれのアクチュエータ22が独立して車輪21を回転させることで、車体部12を前後方向、回転方向に移動させることができる。
【0014】
座面部23は、腰ボトム23aと、腰ボトム23aの後方に立たせた状態で設けた背ボトム23bと、腰ボトム23aの左右に立たせた状態で設けたアームレスト23c、23dと、腰ボトム23aの前方に下方に垂らして設けた第1脚ボトム23e及び第2脚ボトム23fとを有する。
【0015】
操作入力部13は、アームレスト23cの上面に配置され、操作者が入力する操作方向と操作量を検出できるジョイスティック13aを有する。電動車椅子11は、ジョイスティック13aの傾き方向及び傾き量によって、操作方向及び操作量を検出する。
【0016】
操作入力補正部14は、操作入力部13で検出した操作方向及び操作量を補正し、新たな操作方向及び操作量として出力する。
【0017】
移動目標値生成部15は、操作入力補正部14が出力した操作方向及び操作量より車体部12を移動させる移動目標値を生成する。移動目標値は、x
r軸方向の並進目標速度と原点周りの回転目標速度から構成される。並進目標速度は、ジョイスティック13aの操作量(傾き量)のx
r軸方向成分の大きさに応じて生成され、回転目標速度は、ジョイスティック13a操作量(傾き量)のy
r軸方向成分の大きさに応じて生成される。なお、本実施の形態1では、電動車椅子11の並進移動及び回転移動に関する見かけの粘性係数D1、D2を設定し、操作量のx
r軸方向成分の大きさに1/D1(粘性係数)を乗じた値を並進目標速度の大きさとし、操作量のy
r軸方向の大きさに1/D2(粘性係数)を乗じた値を回転目標速度の大きさとする。ただし、y
r軸方向の操作量が正の場合は反時計周りの回転、負の場合は時計周りの回転とする。
【0018】
車輪駆動部17は、移動目標値生成部15で生成された移動目標値に従って複数のアクチュエータ22を制御して、車体部12を移動させる。
【0019】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる電動車椅子のフローチャートである。
図5は、本実施の形態1にかかる電動車椅子の操作入力と不感帯の関係を説明する図である。
図4、
図5を用いて、本実施の形態1における電動車椅子11の動作について説明する。
【0020】
まず、操作入力部13にてジョイスティック13aの操作方向及び操作量を検出して、操作入力があるか否かを判定する(ステップS01)。例えば、
図5(a)に示す状態は、ジョイスティック13aを前方に操作量Fで2秒間操作し続けた場合であるので、この状態は操作入力がある(ステップS01の「Yes」)と判定される。なお、操作入力がない(ステップS01の「No」)場合は、電動車椅子11が操作されていないとして終了する。
【0021】
次に、制御部30で、同じ操作方向において、所定値a以上の操作量が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS02)。ここで、例えば、所定値aは操作量の最大値の75%であり、所定時間は2秒である。
【0022】
ステップS02の条件を満たす場合(ステップS02の「Yes」)は、操作入力補正部14が、そのときの操作方向及び操作量のデータを保持データとして保持する(ステップS03)と共に、
図5(b)に示すように操作入力の不感帯24を設定する(ステップS04)。
図5(b)には、操作方向がX
r軸方向で操作力がFの操作入力に対して、この操作入力を中心として設定された不感帯24を示している。ここでは、所定値a以上の操作量を基準としているため、不感帯24は、操作量が所定値aより大きい部分に設定される。なお、本実施の形態1では、不感帯24の領域の幅は、操作入力が継続している時間だけ大きく設定している。例えば、
図5(b)の不感帯24は2秒以上継続した場合であり、
図5(d)の不感帯24は10秒以上継続した場合である。なお、本実施の形態1では、さらに、操作量が大きい領域の方が、不感帯の領域の幅が広くなるように設定している。
【0023】
そして、
図5(b)〜
図5(d)に示すように操作方向及び操作量が不感帯24内に存在する(操作入力のベクトルの先端が不感帯24内に位置する)場合(ステップS05の「Yes」)は、ステップS03で保持された操作方向及び操作量の保持データに基づいて、移動目標値を生成する(ステップS06)。ここで、
図5(c)、
図5(d)の状態は、体幹がうまく保持できない状態で操作してしまい、一定の操作入力を与えているつもりであっても、操作入力がずれてしまっている状態を想定したものである。
【0024】
一方、
図5(e)、
図5(f)に示すように操作方向及び操作量が不感帯24の外に存在する(操作入力のベクトルの先端が不感帯24の外に位置する)場合(ステップS05の「No」)は、ステップS03で保持した操作方向及び操作量の保持データ及び不感帯のデータを削除する(ステップS07)と共に、ステップS01で検出された操作入力(操作方向及び操作量)に基づく移動目標値を生成する(ステップS08)。なお、
図5(e)は、操作量が所定値aより小さいため操作入力が不感帯24の外に存在する場合であり、
図5(f)は、操作方向が不感帯24とずれているため操作入力が不感帯24の外に存在する場合である。
【0025】
そして、ステップS06又はステップS08で生成された移動目標値に基づき、車輪が駆動して、電動車椅子11が移動する(ステップS09)。その後、ステップS01に戻って、操作入力がある限り、これらステップS01〜S09を繰り返す。
【0026】
本実施の形態1は、このようにして、同じ方向に所定値以上の操作量が継続する場合に不感帯を設定すると共に、この不感帯を用いて操作方向及び操作量を補正している。これにより、体幹がうまく保持できない操作者が電動車椅子11を操作して、徐々に操作入力がずれてしまった場合でも、当初の意図どおりに移動させることができ、狭い通路等での操作でも通路の横に接触することなく、安全に操作することを可能とする。
【0027】
なお、本実施の形態1では、2つの車輪21と4つのキャスター20を有する車体部12を用いて説明したが、2次元平面上を移動できる車輪構成であれば、その限りではない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、体幹がうまく保持できずに徐々に操作入力がずれてしまっても、当初の意図どおりに移動させることができるものであるため、病院施設、介護施設等で利用される電動車椅子等に有用である。
【符号の説明】
【0029】
11 電動車椅子
12 車体部
13 操作入力部
13a ジョイスティック
14 操作入力補正部
15 移動目標値生成部
17 車輪駆動部
18 バッテリー
20 キャスター
21 車輪
22 アクチュエータ
23 座面部
23a 腰ボトム
23b 背ボトム
23c、23d アームレスト
23e 第1脚ボトム
23f 第2脚ボトム
24 不感帯
30 制御部