【0020】
〔(B)蛍光色素内包粒子〕
本発明で用いられる蛍光色素内包粒子とは、有機物または無機物でできた粒子に対し、蛍光色素が内包されてなるものである。
内包用の粒子は、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂、多糖、シリカ等であって、安定に蛍光体を内包できるものである。粒子原料であるモノマーに色素分子を結合させて粒子を合成する方法、粒子に色素を吸着させて導入する方法等、粒子への色素の導入はいかなる方法を用いても構わない。粒子サイズは10〜500nmのものであり、好ましくは50〜200nmである。
内包される蛍光色素は、エオジンの吸収波長と重複しないよう、350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域で励起する必要がある。
内包される蛍光色素としては、例えば、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(インビトロジェン社製)系色素分子、Texas Red系色素分子、スクアリリウム系色素分子、シアニン系色素分子、ローダミン系色素分子、オキサジン系色素分子、芳香環系色素分子、カルボピロニン系色素分子等を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、及びAlexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL,BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、Cy5、Cy5.5、1,3−Bis[4−(dimethylamino)−2−hydroxyphenyl]−2,4−dihydroxycyclobutenediylium dihydroxide, bis、1,3−Bis[4−(dimethylamino)phenyl]−2,4−dihydroxycyclobutenediylium dihydroxide, bis、2−(4−(Diethylamino)−2−hydroxyphenyl)−4−(4−(diethyliminio)−2−hydroxycyclohexa−2,5−dienylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate、2−(4−(Dibutylamino)−2−hydroxyphenyl)−4−(4−(dibutyliminio)−2−hydroxycyclohexa−2,5−dienylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate、2−(8−Hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−1,2,3,5,6,7−hexahydropyrido[3,2,1−ij]quinolin−9−yl)−4−(8−hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−2,3,6,7−tetrahydro−1H−pyrido[3,2,1−ij]quinolinium−9(5H)−ylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate、1−Butyl−2−[5−(1−butyl−1,3−dihydro−3,3−dimethyl−2H−indol−2−ylidene)−penta−1,3−dienyl]−3,3−dimethyl−3eiti−indolium hexafluorophosphate、1−Butyl−2−[5−(1−butyl−3,3−dimethyl−1,3−dihydro−indol−2−ylidene)−3−chloro−penta−1,3−dienyl]−3,3−dimethyl−3H−indolium hexafluorophosphate、3−Ethyl−2−[5−(3−ethyl−3H−benzothiazol−2−ylidene)−penta−1,3−dienyl]−benzothiazol−3−ium iodide、N, N-Di-(2, 6-diisopropylphenyl)-1, 6, 7, 12-(4-tert.butyl-phenoxy)-perylen-3, 4, 9, 10-tetracarbonacid diimide、N,N-Bis(2,6-diisopropylphenyl)-1,6,7,12-tetraphenoxyperylene-3,4:9,10-tetracarboxdiimide、N,N'-Bis(2,6-diisopropylphenyl)perylene-3,4:9,10-bis(dicarbimide)、Benzenesulfonic acid, 4,4',4'',4'''-[[2,9-bis[2,6-bis(1-methylethyl)phenyl]-1,2,3,8,9,10-hexahydro-1,3,8,10-tetraoxoanthra[2,1,9-def:6,5,10-d'e'f']diisoquinoline-5,6,12,13-tetrayl]tetrakis(oxy)]tetrakis-、Benzeneethanaminium, 4,4',4'',4'''-[[2,9-bis[2,6-bis(1-
methylethyl)phenyl]-1,2,3,8,9,10-hexahydro-1,3,8,10-tetraoxoanthra[2,1,9-def:6,5,10-d'e'f']diisoquinoline-5,6,12,13-tetrayl]tetrakis(oxy)]tetrakis[N,N,N-trimethyl-、ROX (X-Rhodamine,Rhodamine Red X)、DY-590、5-ROX、Spectrum Red、PYRROMETHENE650、Texas Red、BODIPY TR、DyLight 594、AlexaFluor 594、HiLyte594、HiLyteFluor TR、Cresyl violet、ATTO590、MFP590、DY-610、ATTO610、DY-615、Oxazine170、ATTO620、C-Phycocyanin、AlexaFluor 633、Phycocyanin、ATTO633、DY-630、DY-632、DY-633、MFP631、DyLight633、NorthernLights637、DY-631、DY-634、Nile Blue、APC(Allophycocyanin)、APC-XL、EVOblue30、SRfluor 680-CarboxylateLD700 PERCHLORATE、ATTO 655等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
[サンプルの作製]
(サンプル1:蛍光ナノ粒子)
末端がアミノ基となっているPEG修飾CdSe/ZnS蛍光ナノ粒子(インビトロジェン社Qdot655)を抗体結合用の蛍光ナノ粒子として準備した。
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することによりシリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記の抗体結合用の蛍光ナノ粒子と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応抗体等を除去し、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を得た。
【0026】
(サンプル2:蛍光ナノ粒子)
サンプル1と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
なお、後述の観察において、サンプル1に対しては励起波長375nm、サンプル2に対しては励起波長575nmで観察を行なった。サンプル1,2に対しては、同一の蛍光ナノ粒子を使用し、励起波長だけを変えて観察した。
【0027】
(サンプル3:蛍光ナノ粒子)
末端がアミノ基となっているPEG修飾CdSe/ZnS蛍光ナノ粒子(インビトロジェン社Qdot605)を抗体結合用の蛍光ナノ粒子として用いた。
それ以外はサンプル1と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
【0028】
(サンプル4:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素CY5−SE(ロシュ社製)9.9mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLとをDMF中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mlを、48mlのエタノール、0.6mlのTEOS(テトラエトキシシラン)、2mlの水、2mlの28%アンモニア水と3時間混合した。上記工程で作製した混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を2回ずつ行った。得られたテトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子のSEM観察を行ったところ、平均粒径は104nm、変動係数は12%であった。
得られた蛍光体内包シリカナノ粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用の蛍光色素内包粒子を得た。
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することによりシリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記で得られた抗体結合用の蛍光色素内包粒子と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗ヒトER抗体結合・蛍光色素内包粒子を得た。
【0029】
(サンプル5−1:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTAMRA色素(PCC社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0030】
(サンプル5−2:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0031】
(サンプル5−3:蛍光色素内包粒子)
サンプル4の作製において、蛍光色素としてオキサジン170色素(シグマアルドリッチ社製)を用いるとともに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)に代えて3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-Glycidyloxypropyltrimethoxysilane、TCI社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0032】
(サンプル5−4:蛍光色素内包粒子)
オキサジン170(シグマアルドリッチ社製)2.5mgを水22.5mlに加えた後、ホットスターラ―上において60℃で20分間加熱し、ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)1.5gを加え、さらに5分間加熱撹拌した。
その後、上記溶液にギ酸100μlを加え、60℃で20分間加熱攪拌し、室温放冷した。
冷却後、反応混合物を、遠心用チューブに入れて遠心分離機にセットし、12000rpmで20分間遠心分離し、その上澄みを除去した。
その後、上澄みを除去した反応混合物を、エタノールと水で洗浄した。
得られた粒子を、サンプル4と同様に、SM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を用いて抗ヒトER抗体修飾を行ない、抗体結合用の蛍光色素内包粒子を得た。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0033】
(サンプル5−5:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてフェノール樹脂を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0034】
(サンプル5−6:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてポリフランを用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0035】
(サンプル5−7:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/GMA複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0036】
(サンプル5−8:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/PMMA複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0037】
(サンプル5−9:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/アクリロニトリル複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0038】
(サンプル5−10:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/アセトニトリル/GMA複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0039】
(サンプル6:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot655)10μLを準備し、テトラエトキシシラン40μLを混合した。これとは別に、エタノール4mL、14%アンモニア水1mLを混合し、室温下で撹拌した。ここに先ほどのCdSe/ZnSデカン分散液とテトラエトキシシランの混合液を加え、添加から12時間、撹拌を続け、蛍光ナノ粒子内包粒子を得た。反応液を10000Gで30分遠心分離を行ない、上澄みを除去した。これにエタノールを加えて再分散後、再度遠心分離を行ない、蛍光ナノ粒子内包粒子の洗浄を行なった。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行なった。得られた蛍光ナノ粒子内包粒子のSEM観察を行ったところ、平均粒径は120nm、変動係数は12%であった。
得られた蛍光ナノ粒子内包粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用の蛍光ナノ粒子内包粒子を得た。
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することにより蛍光ナノ粒子内包粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記で得られた抗体結合用の蛍光ナノ粒子内包粒子と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を得た。
【0040】
(サンプル7:蛍光ナノ粒子内包粒子)
サンプル6と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
なお、後述の観察において、サンプル6に対しては励起波長375nm、サンプル7に対しては励起波長575nmで観察を行なった。サンプル6,7に対しては、同一の蛍光ナノ粒子内包粒子を使用し、励起波長だけを変えて観察した。
【0041】
(サンプル8:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot605)を用いた。
それ以外はサンプル6と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
【0042】
(サンプル9:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot705)を用いた。
それ以外はサンプル6と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
【0043】
(サンプル11:蛍光色素)
サンプル1と同様の方法で、抗ヒトER抗体にCY5色素(インビトロジェン社製)を結合したものを作製した。
【0044】
(サンプル12:蛍光色素)
サンプル1と同様の方法で、抗ヒトER抗体にTAMRA色素(PCC社製)を結合したものを作製した。
【0045】
(サンプル13:蛍光色素)
サンプル1と同様の方法で、抗ヒトER抗体にFITC色素(PCC社製)を結合したものを作製した。
【0046】
(サンプル14:蛍光ナノ粒子)
サンプル1と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
なお、サンプル14に対しては、後述の観察時の励起波長を300nmに変更している。
【0047】
(サンプル15:蛍光ナノ粒子)
サンプル1と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
なお、サンプル15に対しては、後述の観察時の励起波長を500nmに変更している。
【0048】
(サンプル16:蛍光ナノ粒子)
末端がアミノ基となっているPEG修飾CdSe/ZnS蛍光ナノ粒子(インビトロジェン社Qdot565)を抗体結合用の蛍光ナノ粒子として用いた。
それ以外はサンプル1と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
【0049】
(サンプル17:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてFITC色素(PCC社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0050】
(サンプル18:蛍光ナノ粒子内包粒子)
サンプル6と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
なお、サンプル18に対しては、後述の観察において励起波長300nmで観察を行なった。
【0051】
(サンプル19:蛍光ナノ粒子内包粒子)
サンプル6と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
なお、サンプル19に対しては、後述の観察において励起波長500nmで観察を行なった。
【0052】
(サンプル20:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot565)を用いた。
それ以外はサンプル6と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
【0053】
[組織染色による評価]
サンプル1〜9,11〜20を用いて、ヒト乳房組織の免疫染色と形態観察染色(HE染色)とを行なった。
染色切片はコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。組織アレイスライドを脱パラフィン処理後、水に置換洗浄、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の不活化処理を行った。抗原の不活化処理後の組織アレイスライドはPBS緩衝液を用いて洗浄後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した各サンプル1〜9,11〜20を組織切片と3時間反応させた。各サンプル1〜9,11〜20と反応後、組織アレイスライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄した。
【0054】
免疫染色後、形態観察染色(HE染色)を行なった。
免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行なった後、流水水洗(約45℃)を3分間行なった。次に、1%エオジン液で5分間染色してエオジン染色を行なった後、純エタノールに5分間つける操作を4回行ない、洗浄・脱水を行なった。続いてキシレンに5分間つける操作を4回行ない、透徹を行なった。最後に、封入剤エンテランニュー(Merck社製)を用いて封入し観察用サンプルスライドとした。
【0055】
サンプル1〜9,11〜20で免疫染色してその後に形態観察染色した組織切片に対し、励起光を照射して蛍光発光させ、その組織切片から、倒立型蛍光顕微鏡(カールツァイス社製)を用いて画像を取得した。
励起波長(nm)・蛍光波長(nm)は光学フィルターにより設定した(表1〜表4では、光学フィルターの励起波長・蛍光波長の中心値を記している。)。顕微鏡画像取得時の露光条件は、各励起波長において、焦点付近でのトータルの照射エネルギーが50Jとなるようにした。
Image-Jを用いて取得画像より各画素の輝度を算出し、蛍光標識体で染色した部位(標識部)の平均輝度(標識部輝度)を算出した。当該平均輝度は信号値(S)に対応する。輝度は「0」を黒(一番暗い)と、「255」を白(一番明るい)としている。同時に、蛍光標識された細胞近傍の、蛍光標識されておらず且つエオジン染色された部位(エオジン染色部)についても平均輝度(エオジン染色部輝度)を算出した。当該平均輝度はノイズ値(N)に対応する。
標識部輝度とエオジン染色部輝度との比をS/N比として、S/N比が1.5以上であれば、標識部とエオジン染色部との判別が容易であったことから、S/N比1.5を判断値とした。
顕微鏡画像取得時には目視による蛍光観察も行ない、目視視認性の評価を行なった。
【0056】
用いたサンプル1〜9,11〜20によってこれら評価実験を「実験例1〜9,11〜20」とし、各実験例1〜9,11〜20における蛍光標識体の種類,励起波長,蛍光波長,標識部輝度,エオジン染色部輝度,S/N比,判別性(S/N比評価),蛍光標識発光色視認性(目視視認性)を、表1〜表4に示す。
判別性(S/N比評価)については、S/N比が1.5以上で標識部とエオジン染色部の判別が容易となるので、1.5以上の場合を「○(適)」と、1.5未満の場合を「×(不適)」とした。
蛍光標識発光色視認性(目視視認性)については、目視による蛍光観察で見易いものを「○」と、見えにくいものを「△」と、全く見えないものを「×」とした。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表1〜表4に示すとおり、実験例1〜9と実験例11〜13とでは、蛍光ナノ粒子・蛍光色素内包粒子・蛍光ナノ粒子内包粒子を用いた場合と蛍光色素のみを用いた場合とを比較している。蛍光ナノ粒子・蛍光色素内包粒子・蛍光ナノ粒子内包粒子を用いた場合は、蛍光色素のみを用いた場合に比して、標識部輝度とエオジン染色部輝度との差が大きく、蛍光標識体のS/N比が高いことが分かる。その一方、蛍光色素のみを用いた場合は、S/N比が低くなっており、標識部を目視では視認性できない結果となった。
【0062】
実験例1〜3,14〜16では、蛍光ナノ粒子を用いた場合であって、励起波長がエオジンの励起波長とずれているとき(実験例1〜3)と、励起波長がエオジンの励起波長と合致しているとき(実験例14〜16)とを比較している。励起波長がエオジンの励起波長とずれているときは、合致しているときと比較して、S/N比が高くなっている。この関係は、蛍光色素内包粒子を用いた実験例4〜5,17や、蛍光ナノ粒子内包粒子を用いた実験例6〜9,18〜20でも、同様となっている。
【0063】
以上から、蛍光標識体として、エオジンの励起波長域(350nm未満の領域および450nmを超えかつ550nm未満の領域)を回避した波長域(350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域)に励起波長が存在する特殊な蛍光ナノ粒子,蛍光色素内包粒子,蛍光ナノ粒子内包粒子を使用すれば、S/N比の値が高く、免疫染色と形態観察染色とを識別できることがわかる。
【0064】
なお、実験例7〜8,9では、蛍光波長が異なっており、蛍光標識発光色視認性を比較しているが、実験例9では、発光波長(蛍光波長)が近赤外領域に近いため、標識部を目視では視認しにくい結果となった。標識部を目視で確認する上では、蛍光標識体として、発光波長が550〜700nmの標識体を使用するのが好ましい。