特許第5974892号(P5974892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5974892-生体物質検出方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974892
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】生体物質検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20160809BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G01N21/64 F
   G01N33/543 575
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-531879(P2012-531879)
(86)(22)【出願日】2011年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2011069553
(87)【国際公開番号】WO2012029752
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-193154(P2010-193154)
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高梨 健作
(72)【発明者】
【氏名】郷田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 尚大
(72)【発明者】
【氏名】中野 寧
(72)【発明者】
【氏名】権田 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】武田 元博
(72)【発明者】
【氏名】大内 憲明
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−540318(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/074722(WO,A1)
【文献】 特開2009−281760(JP,A)
【文献】 尾島 他16名,HP-157-4 迅速蛍光免疫・HE 二重染色法を用いた新しいリンパ節迅速転移診断法,日本外科学会雑誌,2009年,第110 巻、臨時増刊号2,p. 660
【文献】 勝又 他1名,凍結準超薄切片による免疫組織化学,細胞,1989年, 21(10),pp. 398-402
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FFPE切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
蛍光標識体を用いて前記FFPE切片を免疫染色する工程と、
形態観察のための染色試薬を用いて前記FFPE切片を形態観察染色する工程であって、前記染色試薬としてエオジンを含む染色試薬を使用する工程と、
染色後の前記FFPE切片に励起光を照射して蛍光発光させ、前記FFPE切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記蛍光標識体として、蛍光色素が有機物または無機物の粒子に内包され、かつ、励起波長が前記染色試薬の励起波長域とは異なる領域に存在する蛍光色素内包粒子であって、平均粒径が50〜200nmである前記蛍光色素内包粒子を使用する生体物質検出方法。
【請求項2】
FFPE切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
蛍光標識体を用いて前記FFPE切片を免疫染色する工程と、
形態観察のための染色試薬を用いて前記FFPE切片を形態観察染色する工程であって、前記染色試薬としてエオジンを含む染色試薬を使用する工程と、
染色後の前記FFPE切片に励起光を照射して蛍光発光させ、前記FFPE切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記蛍光標識体として、蛍光体または半導体で組成された蛍光ナノ粒子が有機物または無機物の粒子に内包され、かつ、励起波長が前記染色試薬の励起波長域とは異なる領域に存在する蛍光ナノ粒子内包粒子であって、平均粒径が50〜200nmである前記蛍光ナノ粒子内包粒子を使用する生体物質検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生体物質検出方法において、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記蛍光標識体として、励起波長が350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域に存在し、かつ、抗ヒトER抗体が結合した抗ヒトER抗体結合・蛍光標識体を使用し、
前記FFPE切片を形態観察染色する工程では、前記染色試薬として、励起波長域が350nm未満および450nmを超えかつ550nm未満のエオジンを含む染色試薬を使用する生体物質検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の生体物質検出方法において、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記抗ヒトER抗体結合・蛍光標識体として、発光波長が550〜700nmの波長域に存在する蛍光標識体を使用する生体物質検出方法。
【請求項5】
請求項3に記載の生体物質検出方法において、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記抗ヒトER抗体結合・蛍光標識体として、発光波長が590〜650nmの波長域に存在する蛍光標識体を使用する生体物質検出方法。
【請求項6】
請求項3に記載の生体物質検出方法において、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記抗ヒトER抗体結合・蛍光標識体として、発光波長が590〜630nmの波長域に存在する蛍光標識体を使用する生体物質検出方法。
【請求項7】
請求項1に記載の生体物質検出方法において、
前記蛍光色素内包粒子の内包用の粒子が、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂、多糖のうちの1種以上の物質から構成される生体物質検出方法。
【請求項8】
請求項1に記載の生体物質検出方法において、
前記蛍光色素内包粒子中の蛍光色素が、ローダミン系色素分子、BODIPY系色素分子、Texas Red系色素分子、スクアリリウム系色素分子、シアニン系色素分子、ローダミン系色素分子、オキサジン系色素分子、カルボピロニン系色素分子のうちの1種以上の物質から構成される生体物質検出方法。
【請求項9】
請求項2に記載の生体物質検出方法において、
前記蛍光ナノ粒子内包粒子中の蛍光ナノ粒子が、半導体または酸化物蛍光体から構成される生体物質検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体物質検出方法にかかり、特に蛍光標識を用いて多重に染色された組織染色に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的診断の1つとして、病理診断が行なわれている。病理医は人体から採取した組織片から病気を診断し,治療や手術の要不要を臨床医に伝える。患者の状態と病理診断によって、内科系医師は薬物治療方針、外科系の医師は手術を行うか否かを決定する。
【0003】
病理診断では、臓器摘出や針生検によって得た組織検体を厚さ数ミクロン程度に薄切して組織標本を作成し、様々な所見を得るために光学顕微鏡を用いて拡大観察することが広く行われている。多くの場合、標本は、採取した組織を固定するため脱水し、パラフィンブロック化した後、数μmの厚さに薄切りし、パラフィンを取り除いて作製される。ここで、標本は光を殆ど吸収および散乱せず無色透明に近いため、観察に先立って色素による染色を施すのが一般的である。
【0004】
染色手法としては種々のものが提案されている。
特に組織標本に関しては、標本の形態を観察するための形態観察染色として、ヘマトキシリンおよびエオジンの2つの色素を用いるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)が標準的に用いられている(非特許文献1、特許文献1〜2)。
ヘマトキシリン染色により細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色され、エオジン染色により細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色される。病理医は、染色された組織標本の顕微鏡画像の中で、細胞の核の大きさや形の変化、組織としてのパターンの変化などの形態学的な情報、染色情報、をもとに診断を行っている。
なお、この他の形態観察染色としては、例えば細胞診用いられるパパニコロウ染色(Pap染色)等がある。
【0005】
また、病理診断では、免疫染色と呼ばれる、標本の分子情報の発現を確認するための分子標的染色を施し、遺伝子やタンパクの発現異常といった機能異常を診断する免疫観察が行なわれている。
免疫染色には、例えば、酵素を用いた色素染色法(DAB染色)が用いられる。DAB染色は、色素で染色されるように修飾された抗体を用いて観察対象となる抗原を染色して観察することで抗原量を測るものである。あるいは蛍光標識法が用いられることもある。蛍光標識法は、蛍光色素が修飾された抗体を用いて対象となる抗原を染色して観察することで抗原量を測るものである。
【0006】
現在、標本の形態観察と免疫観察を同時に行うことが試みられており、例えば、形態観察のためのHE染色と免疫観察のためのDAB染色を同時に行なうことが試みられている(特許文献3)。
しかしながら、DAB染色のような酵素標識による染色はHE染色と色が近いため、HE染色による染色と酵素標識による染色の識別がしにくく、同時観察が困難という課題がある。加えて、DAB染色は染色濃度が温度・時間などの環境条件により大きく左右されるため、染色濃度から実際の抗体等の量を見積もることが難しいという課題がある。
【0007】
一方、病理診断に蛍光標識を用いることが行なわれている。
蛍光法はDAB染色と比べて定量性に優れるという特徴がある(非特許文献1)。
しかしながら、蛍光標識を用いて病理診断と形態観察を同時に行う場合、組織染色に用いた染色剤の蛍光の影響を受け易いという課題がある。これに対して例えば、可視光の影響を受けない、赤外励起・発光の蛍光色素を使うことが挙げられる(特許文献4)。例えば、AlexaFluor647(Molecular Probes社)やCY5(GE社)のような赤外発光色素がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2001−525580号公報
【特許文献2】特開2009−115599号公報
【特許文献3】特開2010−134195号公報
【特許文献4】国際公開2008/006006号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「診断に役立つ免疫組織化学」、文光堂
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、現在、蛍光免疫染色では蛍光色素が用いられており、発光強度が低いという課題がある。加えて、赤外励起・発光の色素を用いる場合、発光波長が可視域から外れるため、目視での確認が困難となり、また、検出素子も高価なものとなる。このため、観察には例えば共焦点レーザー顕微鏡のような高価な測定機器が必要となるという課題がある。
したがって、本発明の主な目的は、形態観察染色と免疫染色とを同時におこなう場合において、赤外・励起発光の蛍光色素を使用しなくても、蛍光標識体を用いて形態観察染色と免疫染色とを識別することができる生体物質検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明の第1の態様によれば、
FFPE切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
蛍光標識体を用いて前記FFPE切片を免疫染色する工程と、
形態観察のための染色試薬を用いて前記FFPE切片を形態観察染色する工程であって、前記染色試薬としてエオジンを含む染色試薬を使用する工程と、
染色後の前記FFPE切片に励起光を照射して蛍光発光させ、前記FFPE切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記蛍光標識体として、蛍光色素が有機物または無機物の粒子に内包され、かつ、励起波長が前記染色試薬の励起波長域とは異なる領域に存在する蛍光色素内包粒子であって、平均粒径が50〜200nmである前記蛍光色素内包粒子を使用する生体物質検出方法が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、
FFPE切片から生体物質を特異的に検出する生体物質検出方法において、
蛍光標識体を用いて前記FFPE切片を免疫染色する工程と、
形態観察のための染色試薬を用いて前記FFPE切片を形態観察染色する工程であって、前記染色試薬としてエオジンを含む染色試薬を使用する工程と、
染色後の前記FFPE切片に励起光を照射して蛍光発光させ、前記FFPE切片から前記生体物質を検出する工程とを、有しており、
前記FFPE切片を免疫染色する工程では、前記蛍光標識体として、蛍光体または半導体で組成された蛍光ナノ粒子が有機物または無機物の粒子に内包され、かつ、励起波長が前記染色試薬の励起波長域とは異なる領域に存在する蛍光ナノ粒子内包粒子であって、平均粒径が50〜200nmである前記蛍光ナノ粒子内包粒子を使用する生体物質検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、形態観察染色と免疫染色とを同時におこなう場合において、赤外・励起発光の蛍光色素を使用しなくても、蛍光標識体を用いて形態観察染色と免疫染色とを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エオジンの蛍光スペクトルと励起スペクトルとを概略的に示すスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明の好ましい実施形態にかかる生体物質検出方法は、病理切片から生体物質を特異的に検出する方法であり、基本的には(1)蛍光標識体を用いて病理切片を免疫染色する工程と、(2)形態観察のための染色試薬を用いて病理切片を形態観察染色する工程と、(3)染色後の病理切片に励起光を照射して蛍光発光させ、その病理切片から生体物質を検出する工程とを、有している。
特に(1)の病理切片を免疫染色する工程では、蛍光標識体として、励起波長が形態観察のための染色試薬の励起波長域とは異なる領域に存在する特殊な蛍光ナノ粒子、蛍光色素内包粒子または蛍光ナノ粒子内包粒子を使用するようになっている。
蛍光標識体の特性や種類、免疫染色、形態観察染色などの詳細は下記のとおりである。
なお、(1)の免疫染色する工程と(2)の形態観察染色する工程とでは、どちらの工程の処理が先に実行されてもよく、その順序(先後)は不問である。
【0017】
〔蛍光標識体〕
HE染色に用いられるエオジンは顕微鏡観察条件によっては蛍光を放つ。エオジン吸収波長は多くの蛍光標識体の励起波長と重複するため、染色に用いたエオジンの発光が蛍光標識体の観察を妨害するという課題があった。エオジンの蛍光スペクトル(励起波長520nm)と励起スペクトル(蛍光波長540nm)を図1に示す。励起スペクトルより、エオジンは350nm未満の波長域および450nmを超えかつ550nm未満の波長域で効率よく励起されることがわかる。
従って、本実施形態にかかる蛍光標識体は、この波長域を回避した350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域で励起される蛍光標識体である必要がある。
また、本実施形態にかかる蛍光標識体の発光波長は、エオジンの吸収・発光の影響や組織自家蛍光との兼ね合いから550nm以上の長波長側であって、蛍光顕微鏡観察時に目視確認できる必要があるため、700nm以下の短波長側であることが好ましい。特に視感度の観点から、本実施形態にかかる蛍光標識体の発光波長は、好ましくは590〜650nm(590nm以上で650nm以下)であり、より好ましくは590〜630nm(590nm以上で630nm以下)である。
【0018】
〔蛍光標識体の種類〕
蛍光標識体の輝度が高い方が、ノイズであるエオジンの蛍光や細胞自家蛍光に対する信号値の比の観点から好ましい。従って、本発明の蛍光標識体としては、蛍光色素と比して輝度が高い、(A)蛍光ナノ粒子や(B)蛍光色素内包粒子、(C)蛍光ナノ粒子内包粒子が好適に用いられる。
【0019】
〔(A)蛍光ナノ粒子〕
本発明で用いられる蛍光ナノ粒子とは、粒子サイズが1〜500nmのものであり、好ましくは10〜200nmである。
蛍光ナノ粒子は半導体または蛍光体から構成される。
半導体は例えばII−VI族半導体であるZnSe、ZnTe、CdSe、CdTe、PbS、PbSe、PbTe等やII−VI族半導体であるAlAs、AlSb、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb等を用いることができ、毒性の観点から、GaPやInPを好適に用いることができる。
蛍光体は、例えば母体にYやYVO、ZnO、ZnS等を用い、発光中心にEuやNd等を用いることができる。
蛍光ナノ粒子の粒子サイズ、母体組成、不純物量を調整することで観察に適した励起波長とする。励起波長はエオジンの吸収波長と重複しないよう、350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域で励起される蛍光ナノ粒子である必要がある。
【0020】
〔(B)蛍光色素内包粒子〕
本発明で用いられる蛍光色素内包粒子とは、有機物または無機物でできた粒子に対し、蛍光色素が内包されてなるものである。
内包用の粒子は、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂、多糖、シリカ等であって、安定に蛍光体を内包できるものである。粒子原料であるモノマーに色素分子を結合させて粒子を合成する方法、粒子に色素を吸着させて導入する方法等、粒子への色素の導入はいかなる方法を用いても構わない。粒子サイズは10〜500nmのものであり、好ましくは50〜200nmである。
内包される蛍光色素は、エオジンの吸収波長と重複しないよう、350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域で励起する必要がある。
内包される蛍光色素としては、例えば、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(インビトロジェン社製)系色素分子、Texas Red系色素分子、スクアリリウム系色素分子、シアニン系色素分子、ローダミン系色素分子、オキサジン系色素分子、芳香環系色素分子、カルボピロニン系色素分子等を挙げることができる。
具体的には、5−カルボキシ−ローダミン、6−カルボキシ−ローダミン、5,6−ジカルボキシ−ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X−ローダミン、及びAlexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL,BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、Cy5、Cy5.5、1,3−Bis[4−(dimethylamino)−2−hydroxyphenyl]−2,4−dihydroxycyclobutenediylium dihydroxide, bis、1,3−Bis[4−(dimethylamino)phenyl]−2,4−dihydroxycyclobutenediylium dihydroxide, bis、2−(4−(Diethylamino)−2−hydroxyphenyl)−4−(4−(diethyliminio)−2−hydroxycyclohexa−2,5−dienylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate、2−(4−(Dibutylamino)−2−hydroxyphenyl)−4−(4−(dibutyliminio)−2−hydroxycyclohexa−2,5−dienylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate、2−(8−Hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−1,2,3,5,6,7−hexahydropyrido[3,2,1−ij]quinolin−9−yl)−4−(8−hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−2,3,6,7−tetrahydro−1H−pyrido[3,2,1−ij]quinolinium−9(5H)−ylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate、1−Butyl−2−[5−(1−butyl−1,3−dihydro−3,3−dimethyl−2H−indol−2−ylidene)−penta−1,3−dienyl]−3,3−dimethyl−3eiti−indolium hexafluorophosphate、1−Butyl−2−[5−(1−butyl−3,3−dimethyl−1,3−dihydro−indol−2−ylidene)−3−chloro−penta−1,3−dienyl]−3,3−dimethyl−3H−indolium hexafluorophosphate、3−Ethyl−2−[5−(3−ethyl−3H−benzothiazol−2−ylidene)−penta−1,3−dienyl]−benzothiazol−3−ium iodide、N, N-Di-(2, 6-diisopropylphenyl)-1, 6, 7, 12-(4-tert.butyl-phenoxy)-perylen-3, 4, 9, 10-tetracarbonacid diimide、N,N-Bis(2,6-diisopropylphenyl)-1,6,7,12-tetraphenoxyperylene-3,4:9,10-tetracarboxdiimide、N,N'-Bis(2,6-diisopropylphenyl)perylene-3,4:9,10-bis(dicarbimide)、Benzenesulfonic acid, 4,4',4'',4'''-[[2,9-bis[2,6-bis(1-methylethyl)phenyl]-1,2,3,8,9,10-hexahydro-1,3,8,10-tetraoxoanthra[2,1,9-def:6,5,10-d'e'f']diisoquinoline-5,6,12,13-tetrayl]tetrakis(oxy)]tetrakis-、Benzeneethanaminium, 4,4',4'',4'''-[[2,9-bis[2,6-bis(1-
methylethyl)phenyl]-1,2,3,8,9,10-hexahydro-1,3,8,10-tetraoxoanthra[2,1,9-def:6,5,10-d'e'f']diisoquinoline-5,6,12,13-tetrayl]tetrakis(oxy)]tetrakis[N,N,N-trimethyl-、ROX (X-Rhodamine,Rhodamine Red X)、DY-590、5-ROX、Spectrum Red、PYRROMETHENE650、Texas Red、BODIPY TR、DyLight 594、AlexaFluor 594、HiLyte594、HiLyteFluor TR、Cresyl violet、ATTO590、MFP590、DY-610、ATTO610、DY-615、Oxazine170、ATTO620、C-Phycocyanin、AlexaFluor 633、Phycocyanin、ATTO633、DY-630、DY-632、DY-633、MFP631、DyLight633、NorthernLights637、DY-631、DY-634、Nile Blue、APC(Allophycocyanin)、APC-XL、EVOblue30、SRfluor 680-CarboxylateLD700 PERCHLORATE、ATTO 655等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。
【0021】
〔(C)蛍光ナノ粒子内包粒子〕
本発明で用いられる蛍光ナノ粒子内包粒子とは、有機物または無機物でできた粒子に対し、上記(A)で説明した蛍光ナノ粒子が内包されてなるものである。
粒子原料であるモノマーに蛍光ナノ粒子を結合させて粒子を合成する方法、粒子に蛍光ナノ粒子を吸着させて導入する方法等、粒子への蛍光ナノ粒子の導入はいかなる方法を用いても構わない。
内包される蛍光ナノ粒子の粒子サイズ、母体組成、不純物量を調整することで観察に適した励起波長とする。
励起波長はエオジンの吸収波長と重複しないよう、350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域で励起される蛍光ナノ粒子である必要がある。例えば前述の蛍光ナノ粒子の項に記載の蛍光体である。
蛍光ナノ粒子内包粒子のサイズは10〜500nmのものであり、好ましくは50〜200nmである。
【0022】
〔形態観察染色〕
形態観察染色のうち、特に組織標本に関しては、標本の形態を観察するための形態観察染色として、ヘマトキシリンおよびエオジンの2つの色素を用いるヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)が標準的に用いられているが、これに限定されるものではない。他の形態観察染色としては、例えば細胞診に用いられるパパニコロウ染色(Pap染色)等がある。
また、HE染色では、ヘマトキシリン染色により細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色され、エオジン染色により細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色されるが、これに限定されるものではない。ヘマトキシリン類縁体やヘマトキシリンと同様の吸収波長を持つ色素により細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色〜淡青色に染色され、エオジン類縁体やエオジンと類似の吸収波長を持つ色素により細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤〜濃赤色に染色されても良い。
【0023】
〔免疫染色〕
免疫組織染色の方法としては蛍光染色法が好適に用いられる。
蛍光染色法は抗原部を蛍光標識体で染色する方法である。蛍光染色法以外の方法として例えば酵素を用いた色素染色法(DAB染色)があるが、これは感度の点で蛍光染色法に劣る。
染色の際には、蛍光標識体と1次抗体を直接結合した標識を作製し、抗原を染色する方法(1次抗体法)、蛍光標識体と2次抗体を直接結合した標識を作製し、抗原に1次抗体を結合したものを染色する方法(2次抗体法)、蛍光標識体とビオチンを直接結合した標識を作製し、抗原に1次抗体とアビジンあるいはストレプトアビジン修飾した2次抗体を結合したものを染色する方法(ビオチン−アビジン法またはサンドイッチ法)等を用いることができる。
染色に用いる1次抗体はいかなるものでも構わない。免疫組織染色を行ないたい対象によって変わる。例えばHER2抗原の染色を行なう場合には、抗HER2抗体を用いる。また、2次抗体は如何なるものを用いても構わない。1次抗体によって変わり、例えば抗マウス・ラビット・牛・ヤギ・羊・犬・チキンが挙げられる。
蛍光標識体と抗体やビオチンの結合は既存の如何なる方法を用いても構わない。例えば、アミンとカルボン酸の反応によるアミド化、マレイミドとチオールの反応によるスルフィド化、アルデヒドとアミンの反応によるイミン化、エポキシとアミンの反応によるアミノ化等を用いることができる。
なお、上記では組織染色について示したが、これに限定するものではなく、細胞染色にも使用可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
[サンプルの作製]
(サンプル1:蛍光ナノ粒子)
末端がアミノ基となっているPEG修飾CdSe/ZnS蛍光ナノ粒子(インビトロジェン社Qdot655)を抗体結合用の蛍光ナノ粒子として準備した。
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することによりシリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記の抗体結合用の蛍光ナノ粒子と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応抗体等を除去し、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を得た。
【0026】
(サンプル2:蛍光ナノ粒子)
サンプル1と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
なお、後述の観察において、サンプル1に対しては励起波長375nm、サンプル2に対しては励起波長575nmで観察を行なった。サンプル1,2に対しては、同一の蛍光ナノ粒子を使用し、励起波長だけを変えて観察した。
【0027】
(サンプル3:蛍光ナノ粒子)
末端がアミノ基となっているPEG修飾CdSe/ZnS蛍光ナノ粒子(インビトロジェン社Qdot605)を抗体結合用の蛍光ナノ粒子として用いた。
それ以外はサンプル1と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
【0028】
(サンプル4:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素CY5−SE(ロシュ社製)9.9mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)3μLとをDMF中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mlを、48mlのエタノール、0.6mlのTEOS(テトラエトキシシラン)、2mlの水、2mlの28%アンモニア水と3時間混合した。上記工程で作製した混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を2回ずつ行った。得られたテトラメチルローダミン内包・シリカナノ粒子のSEM観察を行ったところ、平均粒径は104nm、変動係数は12%であった。
得られた蛍光体内包シリカナノ粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用の蛍光色素内包粒子を得た。
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することによりシリカ粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記で得られた抗体結合用の蛍光色素内包粒子と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗ヒトER抗体結合・蛍光色素内包粒子を得た。
【0029】
(サンプル5−1:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTAMRA色素(PCC社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0030】
(サンプル5−2:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0031】
(サンプル5−3:蛍光色素内包粒子)
サンプル4の作製において、蛍光色素としてオキサジン170色素(シグマアルドリッチ社製)を用いるとともに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimetoxysilane、信越シリコーン社製、KBM903)に代えて3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-Glycidyloxypropyltrimethoxysilane、TCI社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0032】
(サンプル5−4:蛍光色素内包粒子)
オキサジン170(シグマアルドリッチ社製)2.5mgを水22.5mlに加えた後、ホットスターラ―上において60℃で20分間加熱し、ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)1.5gを加え、さらに5分間加熱撹拌した。
その後、上記溶液にギ酸100μlを加え、60℃で20分間加熱攪拌し、室温放冷した。
冷却後、反応混合物を、遠心用チューブに入れて遠心分離機にセットし、12000rpmで20分間遠心分離し、その上澄みを除去した。
その後、上澄みを除去した反応混合物を、エタノールと水で洗浄した。
得られた粒子を、サンプル4と同様に、SM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を用いて抗ヒトER抗体修飾を行ない、抗体結合用の蛍光色素内包粒子を得た。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0033】
(サンプル5−5:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてフェノール樹脂を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0034】
(サンプル5−6:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてポリフランを用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0035】
(サンプル5−7:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/GMA複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0036】
(サンプル5−8:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/PMMA複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0037】
(サンプル5−9:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/アクリロニトリル複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0038】
(サンプル5−10:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてTexasRed色素(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
内包用の粒子としてPS/アセトニトリル/GMA複合体を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0039】
(サンプル6:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot655)10μLを準備し、テトラエトキシシラン40μLを混合した。これとは別に、エタノール4mL、14%アンモニア水1mLを混合し、室温下で撹拌した。ここに先ほどのCdSe/ZnSデカン分散液とテトラエトキシシランの混合液を加え、添加から12時間、撹拌を続け、蛍光ナノ粒子内包粒子を得た。反応液を10000Gで30分遠心分離を行ない、上澄みを除去した。これにエタノールを加えて再分散後、再度遠心分離を行ない、蛍光ナノ粒子内包粒子の洗浄を行なった。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行なった。得られた蛍光ナノ粒子内包粒子のSEM観察を行ったところ、平均粒径は120nm、変動係数は12%であった。
得られた蛍光ナノ粒子内包粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl−[(N−maleomidopropionamid)−dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。この混合液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗体結合用の蛍光ナノ粒子内包粒子を得た。
一方、抗ヒトER抗体を1Mジチオスレイトール(DTT)で還元処理を行い、ゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去することにより蛍光ナノ粒子内包粒子に結合可能な還元化抗体溶液を得た。
上記で得られた抗体結合用の蛍光ナノ粒子内包粒子と還元化抗体とを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を得た。
【0040】
(サンプル7:蛍光ナノ粒子内包粒子)
サンプル6と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
なお、後述の観察において、サンプル6に対しては励起波長375nm、サンプル7に対しては励起波長575nmで観察を行なった。サンプル6,7に対しては、同一の蛍光ナノ粒子内包粒子を使用し、励起波長だけを変えて観察した。
【0041】
(サンプル8:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot605)を用いた。
それ以外はサンプル6と同様にして、抗ヒト抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
【0042】
(サンプル9:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot705)を用いた。
それ以外はサンプル6と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
【0043】
(サンプル11:蛍光色素)
サンプル1と同様の方法で、抗ヒトER抗体にCY5色素(インビトロジェン社製)を結合したものを作製した。
【0044】
(サンプル12:蛍光色素)
サンプル1と同様の方法で、抗ヒトER抗体にTAMRA色素(PCC社製)を結合したものを作製した。
【0045】
(サンプル13:蛍光色素)
サンプル1と同様の方法で、抗ヒトER抗体にFITC色素(PCC社製)を結合したものを作製した。
【0046】
(サンプル14:蛍光ナノ粒子)
サンプル1と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
なお、サンプル14に対しては、後述の観察時の励起波長を300nmに変更している。
【0047】
(サンプル15:蛍光ナノ粒子)
サンプル1と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
なお、サンプル15に対しては、後述の観察時の励起波長を500nmに変更している。
【0048】
(サンプル16:蛍光ナノ粒子)
末端がアミノ基となっているPEG修飾CdSe/ZnS蛍光ナノ粒子(インビトロジェン社Qdot565)を抗体結合用の蛍光ナノ粒子として用いた。
それ以外はサンプル1と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子を作製した。
【0049】
(サンプル17:蛍光色素内包粒子)
蛍光色素としてFITC色素(PCC社製)を用いた。
それ以外はサンプル4と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光色素内包粒子を合成した。
【0050】
(サンプル18:蛍光ナノ粒子内包粒子)
サンプル6と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
なお、サンプル18に対しては、後述の観察において励起波長300nmで観察を行なった。
【0051】
(サンプル19:蛍光ナノ粒子内包粒子)
サンプル6と同一の抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
なお、サンプル19に対しては、後述の観察において励起波長500nmで観察を行なった。
【0052】
(サンプル20:蛍光ナノ粒子内包粒子)
蛍光ナノ粒子としてCdSe/ZnSデカン分散液(インビトロジェン社Qdot565)を用いた。
それ以外はサンプル6と同様にして、抗ヒトER抗体結合・蛍光ナノ粒子内包粒子を作製した。
【0053】
[組織染色による評価]
サンプル1〜9,11〜20を用いて、ヒト乳房組織の免疫染色と形態観察染色(HE染色)とを行なった。
染色切片はコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。組織アレイスライドを脱パラフィン処理後、水に置換洗浄、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の不活化処理を行った。抗原の不活化処理後の組織アレイスライドはPBS緩衝液を用いて洗浄後、湿潤箱中で1時間1%BSA含有PBS緩衝液を用いてブロッキング処理を行った。ブロッキング処理後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに希釈した各サンプル1〜9,11〜20を組織切片と3時間反応させた。各サンプル1〜9,11〜20と反応後、組織アレイスライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄した。
【0054】
免疫染色後、形態観察染色(HE染色)を行なった。
免疫染色した切片をマイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行なった後、流水水洗(約45℃)を3分間行なった。次に、1%エオジン液で5分間染色してエオジン染色を行なった後、純エタノールに5分間つける操作を4回行ない、洗浄・脱水を行なった。続いてキシレンに5分間つける操作を4回行ない、透徹を行なった。最後に、封入剤エンテランニュー(Merck社製)を用いて封入し観察用サンプルスライドとした。
【0055】
サンプル1〜9,11〜20で免疫染色してその後に形態観察染色した組織切片に対し、励起光を照射して蛍光発光させ、その組織切片から、倒立型蛍光顕微鏡(カールツァイス社製)を用いて画像を取得した。
励起波長(nm)・蛍光波長(nm)は光学フィルターにより設定した(表1〜表4では、光学フィルターの励起波長・蛍光波長の中心値を記している。)。顕微鏡画像取得時の露光条件は、各励起波長において、焦点付近でのトータルの照射エネルギーが50Jとなるようにした。
Image-Jを用いて取得画像より各画素の輝度を算出し、蛍光標識体で染色した部位(標識部)の平均輝度(標識部輝度)を算出した。当該平均輝度は信号値(S)に対応する。輝度は「0」を黒(一番暗い)と、「255」を白(一番明るい)としている。同時に、蛍光標識された細胞近傍の、蛍光標識されておらず且つエオジン染色された部位(エオジン染色部)についても平均輝度(エオジン染色部輝度)を算出した。当該平均輝度はノイズ値(N)に対応する。
標識部輝度とエオジン染色部輝度との比をS/N比として、S/N比が1.5以上であれば、標識部とエオジン染色部との判別が容易であったことから、S/N比1.5を判断値とした。
顕微鏡画像取得時には目視による蛍光観察も行ない、目視視認性の評価を行なった。
【0056】
用いたサンプル1〜9,11〜20によってこれら評価実験を「実験例1〜9,11〜20」とし、各実験例1〜9,11〜20における蛍光標識体の種類,励起波長,蛍光波長,標識部輝度,エオジン染色部輝度,S/N比,判別性(S/N比評価),蛍光標識発光色視認性(目視視認性)を、表1〜表4に示す。
判別性(S/N比評価)については、S/N比が1.5以上で標識部とエオジン染色部の判別が容易となるので、1.5以上の場合を「○(適)」と、1.5未満の場合を「×(不適)」とした。
蛍光標識発光色視認性(目視視認性)については、目視による蛍光観察で見易いものを「○」と、見えにくいものを「△」と、全く見えないものを「×」とした。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表1〜表4に示すとおり、実験例1〜9と実験例11〜13とでは、蛍光ナノ粒子・蛍光色素内包粒子・蛍光ナノ粒子内包粒子を用いた場合と蛍光色素のみを用いた場合とを比較している。蛍光ナノ粒子・蛍光色素内包粒子・蛍光ナノ粒子内包粒子を用いた場合は、蛍光色素のみを用いた場合に比して、標識部輝度とエオジン染色部輝度との差が大きく、蛍光標識体のS/N比が高いことが分かる。その一方、蛍光色素のみを用いた場合は、S/N比が低くなっており、標識部を目視では視認性できない結果となった。
【0062】
実験例1〜3,14〜16では、蛍光ナノ粒子を用いた場合であって、励起波長がエオジンの励起波長とずれているとき(実験例1〜3)と、励起波長がエオジンの励起波長と合致しているとき(実験例14〜16)とを比較している。励起波長がエオジンの励起波長とずれているときは、合致しているときと比較して、S/N比が高くなっている。この関係は、蛍光色素内包粒子を用いた実験例4〜5,17や、蛍光ナノ粒子内包粒子を用いた実験例6〜9,18〜20でも、同様となっている。
【0063】
以上から、蛍光標識体として、エオジンの励起波長域(350nm未満の領域および450nmを超えかつ550nm未満の領域)を回避した波長域(350〜450nmの波長域かまたは550nm以上の長波長域)に励起波長が存在する特殊な蛍光ナノ粒子,蛍光色素内包粒子,蛍光ナノ粒子内包粒子を使用すれば、S/N比の値が高く、免疫染色と形態観察染色とを識別できることがわかる。
【0064】
なお、実験例7〜8,9では、蛍光波長が異なっており、蛍光標識発光色視認性を比較しているが、実験例9では、発光波長(蛍光波長)が近赤外領域に近いため、標識部を目視では視認しにくい結果となった。標識部を目視で確認する上では、蛍光標識体として、発光波長が550〜700nmの標識体を使用するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、形態観察染色と免疫染色とを同時におこなう場合において、病理切片から生体物質を特異的に検出するのに利用することができる。
図1