(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交差点を含む道路を走行する車両の位置及び該位置の通過時刻を含む走行情報を受信する受信手段と、受信した走行情報に基づく情報を外部の装置へ送信する送信手段とを備える情報通信装置であって、
前記受信手段で受信した走行情報に基づいて前記道路の渋滞の指標となる交通指標を算出する指標算出手段と、
該指標算出手段で算出した交通指標に基づいて前記道路の渋滞の有無を判定する判定手段と、
該判定手段で渋滞があると判定した場合、前記走行情報のうち車両の走行軌跡を特定するための軌跡情報を前記送信手段から送信すべく制御し、渋滞がないと判定した場合、前記指標算出手段で算出した交通指標を前記送信手段から送信すべく制御する送信制御手段と
を備えることを特徴とする情報通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の交通信号制御システムにあっては、交通信号制御機の通信領域に入った全ての車両からプローブ情報が送信されると、信号制御パラメータの決定には不必要な車両のプローブ情報も含まれる場合がある。このことは、車両からのプローブ情報を交通信号制御機ではなく路上通信機で受信する場合も同様である。また、交通信号制御機又は路上通信機で受信した全ての車両のプローブ情報を他の装置(例えば、路上装置又は中央装置など)へ送信する場合には、通信するデータ量が多くなり、通信回線が逼迫して通信不能に陥り交通信号制御をタイムリーに実施することができないおそれもある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、通信回線の逼迫を低減することができる情報通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る情報通信装置は、交差点を含む道路を走行する車両の位置及び該位置の通過時刻を含む走行情報を受信する受信手段と、受信した走行情報に基づく情報を外部の装置へ送信する送信手段とを備える情報通信装置であって、前記受信手段で受信した走行情報に基づいて前記道路の渋滞の指標となる交通指標を算出する指標算出手段と、該指標算出手段で算出した交通指標に基づいて前記道路の渋滞の有無を判定する判定手段と、該判定手段で渋滞があると判定した場合、前記走行情報のうち車両の走行軌跡を特定するための軌跡情報を前記送信手段から送信すべく制御し、渋滞がないと判定した場合、前記指標算出手段で算出した交通指標を前記送信手段から送信すべく制御する送信制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る情報通信装置は、第1発明において、前記指標算出手段は、前記交通指標として車両の平均速度を算出するようにしてあり、前記判定手段は、前記平均速度が所定の閾値速度より小さい場合、渋滞があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る情報通信装置は、第1発明又は第2発明において、前記道路の交通流率を取得する取得手段を備え、前記判定手段は、前記取得手段で取得した交通流率が所定の閾値より大きい場合、渋滞があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る情報通信装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記指標算出手段は、前記交通指標として前記交差点の上流側及び下流側の2地点間の旅行時間を算出するようにしてあり、前記判定手段は、前記旅行時間が所定の閾値時間より長い場合、渋滞があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る情報通信装置は、第4発明において、前記交差点に設けられた信号灯器の信号情報を取得する信号情報取得手段と、該信号情報取得手段で取得した信号情報に基づいて、前記閾値時間を設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る情報通信装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記送信制御手段は、前記判定手段で渋滞があると判定した時点から渋滞がないと判定する時点までの間、前記軌跡情報を送信すべく制御するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る情報通信装置は、第1発明乃至第6発明のいずれか1つにおいて、前記送信制御手段は、前記判定手段で渋滞がないと判定した場合、前記軌跡情報の送信を停止すべく制御するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
第1発明にあっては、指標算出手段は、受信した走行情報に基づいて道路の渋滞の指標となる交通指標を算出する。走行情報は、いわゆるプローブ情報(アップリンク情報)である。交通指標は、例えば、車両の平均速度、道路の所定の2点間の旅行時間などである。判定手段は、算出した交通指標に基づいて道路の渋滞の有無を判定する。送信制御手段は、渋滞があると判定した場合、走行情報のうち車両の走行軌跡を特定するための軌跡情報を外部の装置(例えば、信号制御機、中央装置、路上装置など)へ送信すべく制御する。軌跡情報は、走行情報の中で、例えば、車両ID、車両の位置、当該位置での時刻、車両の方位、速度などの情報を含み、車両が走行した軌跡を特定することができる情報である。また、送信制御手段は、渋滞がないと判定した場合、算出した交通指標を外部の装置へ送信すべく制御する。
【0015】
上述の構成により、渋滞が発生していない場合には、交通指標を送信することにより、受信した走行情報よりも少ない情報を外部の装置へ送信する。また、渋滞が発生している場合には、渋滞の発生原因を特定するのに必要となる車両の軌跡情報を送信するので、受信した走行情報をそのまま全て送信する場合に比べて、外部の装置との通信回線の逼迫を低減することができる。また、渋滞発生時には、必要な軌跡情報を送信するので、通信回線の逼迫を低減しつつ渋滞の原因を特定するための情報を提供することができる。このように、渋滞状況を活用して走行情報をフィルタすることにより、不必要な走行情報の送信を避けて必要な走行情報だけを送信することができるので、通信回線の逼迫を低減することができる。また、不必要な走行情報を受信して処理する必要がないので、外部の装置での不要な処理を軽減することができ、本来必要な処理速度を向上させることができる。
【0016】
第2発明にあっては、指標算出手段は、交通指標として車両の平均速度を算出する。判定手段は、平均速度が所定の閾値速度より小さい場合、渋滞があると判定する。これにより、受信した走行情報に基づいて渋滞の有無を判定することができる。
【0017】
第3発明にあっては、判定手段は、取得手段で取得した交通流率が所定の閾値より大きい場合、渋滞があると判定する。これにより、さらに精度良く渋滞の有無を判定することができる。
【0018】
第4発明にあっては、指標算出手段は、交通指標として交差点の上流側及び下流側の2地点間の旅行時間を算出する。なお、地点には、所要範囲の領域も含まれる。判定手段は、旅行時間が所定の閾値時間より長い場合、渋滞があると判定する。これにより、受信した走行情報に基づいて渋滞の有無を判定することができる。また、渋滞が発生する場合(例えば、近飽和、過飽和などの状態)、道路の上流側の地点を通過する車両の軌跡情報は、道路の下流側の地点で旅行時間(リンク旅行時間)を算出するのに重要なものである。一方で、渋滞が発生していない場合(例えば、閑散、自由流などの状態)、車両の軌跡情報はそれほど重要なものではない。渋滞が発生した場合に、軌跡情報を送信することにより、通信回線の逼迫を低減することができる。
【0019】
第5発明にあっては、信号情報取得手段は、交差点に設けられた信号灯器の信号情報を取得する。設定手段は、取得した信号情報に基づいて、閾値時間を設定する。例えば、道路の上流側の地点を通過する車両が、交差点を通過して道路の下流側の地点を通過する場合に、車両が2点間を通過する間に交差点の信号灯が赤になるような場合には、旅行時間に車両が停止せざるを得ない停止時間が加わる。このため、車両の停止時間を相殺すべく閾値時間を信号情報に応じて設定することで正確な旅行時間を算出することができる。
【0020】
第6発明にあっては、送信制御手段は、判定手段で渋滞があると判定した時点から渋滞がないと判定する時点までの間、軌跡情報を送信すべく制御する。例えば、渋滞が発生した時点から、渋滞の発生原因を特定するために必要な軌跡情報を送信する。そして送信された軌跡情報に基づいて渋滞緩和の処理が行われ、渋滞が解消した時点で軌跡情報の送信を停止するので、軌跡情報を送信するタイミングの適正化を図ることができる。また、渋滞が一旦発生して渋滞が解消した後も軌跡情報を続けて送信する事態を防止することができ、通信回線の逼迫を低減することができる。
【0021】
第7発明にあっては、送信制御手段は、判定手段で渋滞がないと判定した場合、軌跡情報の送信を停止すべく制御する。これにより、不必要な軌跡情報は送信されないので、通信回線の逼迫を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、渋滞状況を活用して走行情報をフィルタすることにより、不必要な走行情報の送信を避けて必要な走行情報だけを送信することができるので、通信回線の逼迫を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る情報通信装置の実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態の情報通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、情報通信システムは、情報通信装置としての路上通信機100、外部の装置としての路上装置1、交通信号制御機2及び中央装置4などを備える。また、情報通信システムは、情報中継装置3を備えることもできる。路上通信機100は、例えば、交差点を含む道路の所要の通信可能領域内の車両200との間で情報の送受信を行うことができる。
【0025】
車両200は、不図示の車載装置が搭載されている。車両200は、所定の周期(例えば、0.1秒〜1秒など)毎に自身の位置(位置座標情報)及び当該位置における時刻などの情報を蓄積する。複数の車両200は、所定時間(例えば、0.1秒〜1秒)の都度、蓄積した情報を走行情報として路上通信機100へ送信する。
【0026】
路上通信機100は、例えば、UHF帯の周波数帯域を使用するITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)用の無線通信機能を備えた路上通信装置(基地局)であり、車両200の車載装置との間で情報の送受信を行うことができる。すなわち、路上通信機100は、通信可能領域内に存在する車両200から、当該車両の位置情報を含む走行情報を取得する。走行情報は、いわゆるプローブ情報(アップリンク情報)又はフローティングカーデータとも称される。走行情報には、車両ID、位置座標情報、時刻、速度、方位、車両操作情報(例えば、ブレーキ、アクセル、ウィンカー、ワイパーなどの操作情報)などを含めることができる。
【0027】
路上通信機100は、各車両200から走行情報を取得すると、取得したすべての走行情報を外部の装置(路上装置1、交通信号制御機2又は中央装置4)に送信するのではなく、それぞれの外部の装置が所要の時点で必要とする情報だけを送信する。これにより、中央装置4、情報中継装置3、路上通信機100、路上装置1及び交通信号制御機2の間の通信回線が多量のデータで逼迫する事態を未然に防止することができる。以下、詳細に説明する。
【0028】
図2は本実施の形態の路上通信機100の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、路上通信機100は、制御部10、通信部11、記憶部12、指標算出部13、渋滞判定部14などを備える。
【0029】
通信部11は、受信手段としての機能を有し、車両200から走行情報を受信する。また、通信部11は、受信した走行情報に基づく情報(それぞれの外部の装置が所要の時点で必要とする情報)を外部の装置(路上装置1、交通信号制御機2又は中央装置4)へ送信する送信手段としての機能を有する。ここで、路上通信機100が送信する情報については後述する。
【0030】
また、通信部11は、信号情報取得手段としての機能を有し、交通信号制御機2又は中央装置4から交差点に設けられた信号灯器の信号情報を取得する。
【0031】
記憶部12は、通信部11を介して受信した各車両200の走行情報、信号灯器の信号情報などを記憶する。
【0032】
指標算出部13は、指標算出手段としての機能を有し、受信した走行情報に基づいて道路の渋滞の指標となる交通指標を算出する。交通指標は、例えば、車両の平均速度、道路の所定の2点間の旅行時間などである。車両の平均速度は、1台の車両が道路の所定範囲内を走行した際の当該所定範囲内での平均速度でもよく、複数の車両の速度の平均値でもよい。また、平均速度は、個々の速度の平均値だけでなく、個々の速度の中央値、あるいは最頻値などの統計値を含む。また、旅行時間は、1台の車両の旅行時間でもよく、複数台の車両の個々の旅行時間の平均値、中央値、最頻値などの統計値でもよい。
【0033】
渋滞判定部14は、判定手段としての機能を有し、指標算出部13で算出した交通指標に基づいて道路の渋滞の有無を判定する。
【0034】
制御部10は、送信制御手段としての機能を有し、渋滞判定部14で渋滞があると判定した場合、走行情報のうち車両の走行軌跡を特定するための軌跡情報を中央装置4へ送信すべく制御する。軌跡情報は、走行情報の中で、例えば、車両ID、車両の位置、当該位置での時刻、車両の方位、速度などの情報を含み、車両が走行した軌跡を特定することができる情報である。この場合、中央装置4は、路上通信機100が送信した軌跡情報に基づいて渋滞発生の原因を診断(判定)する。
【0035】
また、制御部10は、渋滞判定部14で渋滞がないと判定した場合、指標算出部13で算出した交通指標を中央装置4へ送信すべく制御する。
【0036】
上述の構成により、渋滞が発生していない場合には、交通指標を送信することにより、受信した走行情報よりも少ない情報を外部の装置へ送信する。また、渋滞が発生している場合には、渋滞の発生原因を特定するのに必要となる車両の軌跡情報を送信するので、受信した走行情報をそのまま全て送信する場合に比べて、外部の装置との通信回線の逼迫を低減することができる。また、渋滞発生時には、必要な軌跡情報を送信するので、通信回線の逼迫を低減しつつ渋滞の原因を特定するための情報を提供することができる。このように、渋滞状況を活用して走行情報をフィルタすることにより、不必要な走行情報の送信を避けて必要な走行情報だけを送信することができるので、通信回線の逼迫を低減することができる。また、不必要な走行情報を受信して処理する必要がないので、外部の装置での不要な処理を軽減することができ、本来必要な処理速度を向上させることができる。
【0037】
次に、交通状況の変化に応じて走行情報の送信制御方法について説明する。まず、交通指標として平均速度などの交通量が変化する場合について説明する。
【0038】
図3は交通量の変化を判定する判定領域の一例を示す模式図である。
図3に示すように、交差点5で主道路と従道路とが交差している。交差点5付近には、路上通信機100を設置してある。主道路の交差点5への流入路のうち、交差点5の停止線位置(不図示)から上流側数百m程度の地点までの範囲を判定領域S1としている。路上通信機100は、判定領域S1を通過する各車両200から走行情報を受信することができる。なお、
図3では、簡便のため判定領域S1を1つ例示しているが、各流入路に設けることができる。また、判定領域S1の上流端付近には、車両感知器6を設けることもできる。
【0039】
車両感知器6は、判定領域S1の上流側地点を通過する車両を感知し、感知データを路上通信機100へ送信する。感知データに基づいて流入路の交通流率(車両台数/単位時間)を算出することができる。なお、交通流率の算出は、車両感知器6又は他の外部の装置で行って路上通信機100へ送信してもよく、路上通信機100で交通流率を算出してもよい。
【0040】
図4は交通量の変化の様子の一例を示す説明図である。
図4では交通量の変化を示す交通指標として車両の平均速度V及び交通流率Qを例示している。渋滞判定部14は、
図4Aに示すように、平均速度Vが比較的大きく、例えば、所定の閾値速度より大きい場合には、渋滞なし(例えば、閑散)と判定する。また、車両感知器6が設置されている場合に、流入路の交通流率が比較的小さく、例えば、所定の閾値より小さい場合、渋滞なしと判定する。
【0041】
一方、
図4Bに示すように、渋滞判定部14は、平均速度Vが比較的小さく、例えば、所定の閾値速度より小さい場合には、渋滞あり(例えば、近飽和、過飽和)と判定する。また、渋滞判定部14は、流入路を走行する車両200の平均速度Vを監視することにより、渋滞なしから渋滞ありへの変化時点、あるいは渋滞ありから渋滞なしへの変化時点を特定することができる。これにより、受信した走行情報に基づいて渋滞の有無を判定することができる。
【0042】
また、交通流率Qを取得することができる場合には、渋滞判定部14は、交通流率Qが比較的大きく、例えば、所定の閾値より大きい場合には、渋滞ありと判定する。また、渋滞判定部14は、流入路の交通流率Qを監視することにより、渋滞なしから渋滞ありへの変化時点、あるいは渋滞ありから渋滞なしへの変化時点を特定することができる。これにより、さらに精度良く渋滞の有無を判定することができる。
【0043】
図5は路上通信機100が交通状況の変化に応じて送信する情報の一例を示す説明図である。
図5に示すように、渋滞がある場合(近飽和又は過飽和の状態)、路上通信機100は、判定領域S1内の各車両200の軌跡情報を、例えば、中央装置4へ送信する。軌跡情報は、例えば、車両ID、車両の位置、当該位置での時刻、車両の方位、速度などの情報である。
【0044】
また、渋滞がない場合(閑散の状態)、路上通信機100は、判定領域S1内の各車両200の平均速度Vなどの交通指標を、例えば、中央装置4へ送信する。
【0045】
渋滞が発生していない正常時には、路上通信機100で算出した交通量の結果(交通指標としての平均速度Vなど)を中央装置4へ送信することにより、各車両200から受信した走行情報よりも少ないデータ量の情報を送信することになるので、通信回線の逼迫を抑制することができる。また、交通量に変化が生じ、渋滞が発生した場合に各車両200の軌跡情報を中央装置4へ送信することにより、各車両200の走行軌跡、すなわち交通流を診断することができ、渋滞発生の原因(例えば、右折あふれ等)を判定することが可能となり、適切な信号制御を行うことができる。
【0046】
次に、交通指標として旅行時間が変化する場合について説明する。
【0047】
図6は旅行時間の変化を判定する判定領域の一例を示す模式図である。
図6に示すように、交差点5で主道路と従道路とが交差している。主道路の交差点5への流入路の上流側に所要の判定領域S2を設け、主道路の交差点5からの流出路の下流側に所要の判定領域S3を設けている。旅行時間は、判定領域S2を通過した車両200が、判定領域S3を通過するまでの時間である。
【0048】
指標算出部13は、交通指標として交差点5の上流側の地点(判定領域S2)と下流側の地点(判定領域S3)との2地点間の旅行時間を算出する。なお、地点には、所要範囲の領域も含まれる。
【0049】
渋滞判定部14は、指標算出部13で算出した旅行時間が所定の閾値時間Thより長い場合、渋滞があると判定する。また、渋滞判定部14は、指標算出部13で算出した旅行時間が所定の閾値時間Thより短い場合、渋滞がないと判定する。これにより、受信した走行情報に基づいて渋滞の有無を判定することができる。
【0050】
なお、指標算出部13での旅行時間の算出、渋滞判定部14での渋滞の有無の判定は、例えば、下流の路上装置1(路上通信機)又は中央装置4からの指示、あるいは予め設定された交通流率に基づいて開始することができる。
【0051】
図7は路上通信機100が交通状況の変化に応じて送信する情報の他の例を示す説明図である。
図7に示すように、渋滞がある場合(近飽和又は過飽和の状態)、路上通信機100は、判定領域S3を通過する各車両200の軌跡情報を、例えば、下流側の路上装置1(路上通信機を含む)へ送信する。軌跡情報は、例えば、車両ID、車両の位置、当該位置での時刻、車両の方位、速度などの情報である。
【0052】
また、渋滞がない場合(閑散の状態)、路上通信機100は、算出した旅行時間などの交通指標を、例えば、下流側の路上装置1へ送信する。なお、この場合、算出した旅行時間を中央装置4へ送信してもよい。
【0053】
渋滞が発生していない場合(例えば、閑散、自由流などの状態)、車両の軌跡情報はそれほど重要なものではない。一方で、渋滞が既に発生している場合(過飽和の状態)、あるいは渋滞しかけている場合(近飽和の状態)には、道路の上流側の地点を通過する車両の軌跡情報は、道路の下流側の地点で旅行時間(リンク旅行時間)を算出するのに重要なものである。そこで、渋滞が発生している状態、渋滞が発生しそうな状態においては、路上通信機100が受信することができた各車両200の走行情報を送信するのではなく、交差点の流出側である判定領域S3内を通過した車両200の軌跡情報を下流側の路上装置1(路上通信機を含む)へ送信することにより、通信回線の逼迫を低減することができる。この場合、下流側の路上装置1は、路上通信機100から上流側の車両の軌跡情報を受信することができるので、下流側の路上装置1で旅行時間を算出することができる。
【0054】
旅行時間に基づいて渋滞の有無を判定する場合に、交差点5での信号待ち時間を考慮することもできる。制御部10は、設定手段としての機能を有し、通信部11を介して取得した信号情報に基づいて、閾値時間Thを設定する。例えば、道路の上流側の地点である判定領域S2を通過する車両が、交差点5を通過して道路の下流側の地点である判定領域S3を通過する場合に、車両が2点間を通過する間に交差点5の信号灯が赤になるような場合には、旅行時間に車両が停止せざるを得ない停止時間が加わる。このため、車両の停止時間を相殺すべく閾値時間Thを信号情報に応じて設定することで正確な旅行時間を算出することができる。
【0055】
上述の実施の形態において、制御部10は、渋滞があると判定された時点から渋滞がないと判定される時点までの間、軌跡情報を送信すべく制御することもできる。例えば、渋滞が発生した時点から、渋滞の発生原因を特定するために必要な軌跡情報を送信する。そして送信された軌跡情報に基づいて渋滞緩和の処理が行われ、渋滞が解消した時点で軌跡情報の送信を停止するので、軌跡情報を送信するタイミングの適正化を図ることができる。また、渋滞が一旦発生して渋滞が解消した後も軌跡情報を続けて送信する事態を防止することができ、通信回線の逼迫を低減することができる。なお、渋滞があると判定された時点から渋滞がないと判定される時点までの間、軌跡情報を送信する構成に代えて、渋滞があると判定された時点から所定の時間だけ軌跡情報を送信するようにしてもよい。
【0056】
また、制御部10は、渋滞がないと判定された場合、軌跡情報の送信を停止すべく制御することもできる。これにより、不必要な軌跡情報は送信されないので、通信回線の逼迫を低減することができる。
【0057】
上述の実施の形態において、送信する情報を切り替える代わりに、送信する情報の頻度を変更するようにしてもよい。例えば、渋滞が発生していない場合でも、軌跡情報をサンプル又は参考用として必要とする場合がある。この場合には、軌跡情報の情報量は少なくてよい。一方、渋滞発生時においても平均速度等の交通指標を確認したい場合がある。この場合には、交通指標のデータ量は少なくてよい。すなわち、閑散時には、交通指標の収集の頻度を多くし、軌跡情報の収集の頻度を少なくする。一方、渋滞時には、交通指標の収集の頻度を少なくし、軌跡情報の収集の頻度を多くする。
【0058】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。