特許第5974946号(P5974946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974946
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/16 20060101AFI20160809BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160809BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H02J7/16 X
   H01M10/44 P
   B60R16/033 C
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-59003(P2013-59003)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-187731(P2014-187731A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】安則 裕通
【審査官】 大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−304393(JP,A)
【文献】 特開2008−148389(JP,A)
【文献】 特開2007−161000(JP,A)
【文献】 特開2008−260384(JP,A)
【文献】 特開2003−092805(JP,A)
【文献】 特開2011−230618(JP,A)
【文献】 特開2006−256481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12、 7/00−13/00、
15/00−15/42、
B60R 16/00−17/02、
H01M 10/42−10/48、
H02J 7/00− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載されたエンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力により充電され、前記エンジンを始動するスタータに電力を供給する第2バッテリとを備える電源装置において、
前記エンジンの作動及び停止を示す信号を取得する取得手段と、
前記第1バッテリの蓄電量を検知する検知手段と、
前記取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行う制御手段と
前記車輌の位置を検出する位置検出装置から前記車輌の位置を取得する第2取得手段と、
該第2取得手段により取得した位置が特定場所から一定距離の範囲内にある場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記車載発電機から前記第1バッテリへ充電する制御を行う第2制御手段と
を備え
前記制御手段は、前記第2取得手段により取得した位置が特定場所を示す場合に、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあ
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
車輌に搭載されたエンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力により充電され、前記エンジンを始動するスタータに電力を供給する第2バッテリとを備える電源装置において、
前記エンジンの作動及び停止を示す信号を取得する取得手段と、
前記第1バッテリの蓄電量を検知する検知手段と、
前記取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行う制御手段と
前記車輌の位置を検出する位置検出装置から前記車輌の位置を取得する第2取得手段と
を備え
前記第1バッテリはリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、
前記制御手段は、前記第2取得手段により取得した位置が特定場所を示す場合に、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあ
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
前記第2バッテリの蓄電量を検知する第2検知手段と、
第2所定量と前記第2検知手段が検知した蓄電量との差分を算出する算出手段とを
備え、
前記第2制御手段は、前記第1バッテリに係る第3所定量に前記差分を加算した蓄電量となるまで前記第1バッテリへ充電するようにしてあることを特徴とする請求項に記載の電源装置。
【請求項4】
車輌に搭載されたエンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力により充電され、前記エンジンを始動するスタータに電力を供給する第2バッテリとを備える電源装置において、
前記エンジンの作動及び停止を示す信号を取得する取得手段と、
前記第1バッテリの蓄電量を検知する検知手段と、
前記取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行う制御手段と
前記車輌に配置された通信装置と無線により通信する携帯無線機が前記通信装置の通信範囲内に存在しない旨を示す信号を取得する第3取得手段と
を備え
前記制御手段は、第3取得手段により存在しない旨を示す信号を取得した場合に、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあ
ことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
前記第1バッテリはリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、
前記第2バッテリは鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2バッテリの蓄電量の検知可否に拘わらず、又は該蓄電量が検知可能である場合に検知された蓄電量の大小に拘わらず、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてある
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載発電機の発電電力により充電され、電気負荷群に電力を供給するバッテリを備える電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輌に搭載される電気負荷は年々増加する傾向にある。例えば、油圧又はエンジン動力で作動させていた機器を電動化して制御性能及び効率の向上を図るべく、電動ブレーキ及び電動パワーステアリング装置等が採用されることで、電気負荷が増加している。また、エンジンにおける燃料消費の効率を向上するために、エンジン出力を補助する電動モータ、及びアイドリングストップ後の再始動用のスタータモータ等の採用によっても、電気負荷が増加する傾向にある。
【0003】
このような電気負荷の増加に対応して、従来の車輌における鉛蓄電池に加えてリチウムイオン蓄電池(以下、リチウム蓄電池と表記する。)を備え、車載発電機により発電した電力を鉛蓄電池及びリチウム蓄電池に供給して充放電する電源装置が開発されるに至っている。リチウム蓄電池は、鉛蓄電池よりも高電圧で充放電が可能であり、一般的に鉛蓄電池よりも充電効率が良く、燃料消費効率の改善に向いている。このような電源装置では、2つのバッテリの使用方法に関して、例えば、鉛蓄電池及びリチウム蓄電池の出力電圧に応じて、負荷への接続状態を切替える方法等が案出されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、電源装置におけるバッテリの性能劣化を抑えて長期間の使用に耐えるようにするための工夫もされている。例えば、特許文献2には、バッテリの蓄電量の使用範囲を決定する第1制御部と、バッテリの蓄電量を検出する検出器と、決定された蓄電量の使用範囲内となるようにバッテリの充放電を制御する第2制御部とを備える従来の電源装置が開示されている。この従来の電源装置は、車輌が長期駐車に近づいてきたときに、第1制御部が決定する蓄電量の使用範囲の上限値を低下させる。バッテリを満充電又は満充電に近い状態、即ち、満充電量に対する現在の蓄電量の比率を表わす充電率(以下、SOC:State of Charge)が高SOC状態のまま、車輌が長期間放置されると、バッテリ容量の劣化が進行し易く、電池寿命が縮まってしまうことが知られている。上述のように、従来の電源装置は、長期駐車を予測して、蓄電量の使用範囲の上限を低下させることで、高SOC状態のまま長時間放置されることを防ぎ、バッテリの性能劣化を抑えて長期間の使用に耐えるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−176958号公報
【特許文献2】特開2009−001049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電源装置は、鉛蓄電池及びリチウム蓄電池等の複数のバッテリを備えることで電気負荷の増加に対応するものであるが、車輌の長期駐車に対するバッテリの性能劣化については考慮されていない。また、特許文献2は、高SOC状態のままバッテリが長時間放置されることを防ぐものの、低SOC状態での長時間の放置についてもバッテリ性能の劣化の要因となるため、車輌の長期駐車時における低SOC側での劣化抑制のための制御が必要となっていた。
【0007】
さらに、特許文献2では、長期駐車が予測されることにより、蓄電量の使用範囲の上限値を低下させるため、低下させた使用範囲の上限値を現在のSOCが超える場合には、車載発電機により発生した電力がバッテリに充電されずに捨てられてしまうため、燃費向上には向かないという問題点があった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車載発電機の発電電力により充電され、電気負荷群に電力を供給するバッテリの長期保管時におけるバッテリ性能の劣化を抑制することができ、更には燃料消費を低減化することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電源装置は、車輌に搭載されたエンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力により充電され、前記エンジンを始動するスタータに電力を供給する第2バッテリとを備える電源装置において、前記エンジンの作動及び停止を示す信号を取得する取得手段と、前記第1バッテリの蓄電量を検知する検知手段と、前記取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行う制御手段と、前記車輌の位置を検出する位置検出装置から前記車輌の位置を取得する第2取得手段と、該第2取得手段により取得した位置が特定場所から一定距離の範囲内にある場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記車載発電機から前記第1バッテリへ充電する制御を行う第2制御手段とを備え、前記制御手段は、前記第2取得手段により取得した位置が特定場所を示す場合に、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、車載発電機が車輌に搭載されたエンジンに連動して発電し、第1バッテリは車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する。第2バッテリは車載発電機が発電した電力により充電され、エンジンを始動するスタータに電力を供給する。取得手段によりエンジンの作動及び停止を示す信号を取得し、検知手段により第1バッテリの蓄電量を検知し、取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、制御手段は、第2バッテリから第1バッテリへ充電する制御を行う。これにより、第1バッテリが充電され、長期保管時におけるバッテリ性能の劣化を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る電源装置は、車輌に搭載されたエンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力により充電され、前記エンジンを始動するスタータに電力を供給する第2バッテリとを備える電源装置において、前記エンジンの作動及び停止を示す信号を取得する取得手段と、前記第1バッテリの蓄電量を検知する検知手段と、前記取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行う制御手段と、前記車輌の位置を検出する位置検出装置から前記車輌の位置を取得する第2取得手段を備え、前記第1バッテリはリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、前記制御手段は、前記第2取得手段により取得した位置が特定場所を示す場合に、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、車輌の位置を検出する位置検出装置から車輌の位置を第2取得手段により取得し、制御手段は、第2取得手段により取得した位置が特定場所を示す場合に、第2バッテリから第1バッテリへ充電する制御を行う。これにより、例えば自宅や仕事場等の特定場所を設定しておくことで、第1バッテリが長期保管状態となることを確実に検知することができる。
【0014】
本発明にあっては、第2取得手段により取得した位置が特定場所から一定距離の範囲内にある場合に、検手段が検した蓄電量が所定量以下であるとき、第2制御手段により車載発電機から第1バッテリへ充電する制御を行う。これにより、車載発電機が発電した電力を有効に利用でき、燃料消費が低減される。
【0015】
本発明に係る電源装置は、前記第2バッテリの蓄電量を検知する第2検知手段と、第2所定量と前記第2検知手段が検知した蓄電量との差分を算出する算出手段とを備え、前記第2制御手段は、前記第1バッテリに係る第3所定量に前記差分を加算した蓄電量となるまで前記第1バッテリへ充電するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、第2検知手段により第2バッテリの蓄電量を検知し、第2所定量と第2検知手段が検知した蓄電量との差分を算出手段により算出する。第2制御手段は、第1バッテリに係る第3所定量に前記差分を加算した蓄電量となるまで第1バッテリへ充電する。これにより、第1バッテリにより大きな電力を蓄電しておき、第1バッテリから第2バッテリへ充電することができ、更に電力を有効に利用することができる。
【0017】
本発明に係る電源装置は、車輌に搭載されたエンジンに連動して発電する車載発電機と、該車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する第1バッテリと、前記車載発電機が発電した電力により充電され、前記エンジンを始動するスタータに電力を供給する第2バッテリとを備える電源装置において、前記エンジンの作動及び停止を示す信号を取得する取得手段と、前記第1バッテリの蓄電量を検知する検知手段と、前記取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、前記検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行う制御手段と、前記車輌に配置された通信装置と無線により通信する携帯無線機が前記通信装置の通信範囲内に存在しない旨を示す信号を取得する第3取得手段を備え、前記制御手段は、第3取得手段により存在しない旨を示す信号を取得した場合に、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、車輌に配置された通信装置と無線により通信する携帯無線機が前記通信装置の通信範囲内に存在しない旨を示す信号を第3取得手段により取得し、制御手段は、第3取得手段により存在しない旨を示す信号を取得した場合に、第2バッテリから第1バッテリへ充電する制御を行う。これにより、第1バッテリが長期保管状態となることを確実に検知することができる。
【0019】
本発明に係る電源装置は、前記第1バッテリはリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、前記第2バッテリは鉛蓄電池であることを特徴とする。
本発明にあっては、第1バッテリはリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、第2バッテリは鉛蓄電池である。これにより、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池の長期保管時におけるバッテリ性能の劣化を抑制することができる。
【0020】
本発明に係る電源装置は、前記制御手段は、前記第2バッテリの蓄電量の検知可否に拘わらず、又は該蓄電量が検知可能である場合に検知された蓄電量の大小に拘わらず、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ充電する制御を行うようにしてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車載発電機が車輌に搭載されたエンジンに連動して発電し、第1バッテリは車載発電機が発電した電力により充電され、電気負荷群に電力を供給する。第2バッテリは車載発電機が発電した電力により充電され、エンジンを始動するスタータに電力を供給する。取得手段によりエンジンの作動及び停止を示す信号を取得し、検知手段により第1バッテリの蓄電量を検知し、取得手段により停止を示す信号を取得した場合に、検知手段が検知した蓄電量が所定量以下であるとき、制御手段は、第2バッテリから第1バッテリへ充電する制御を行う。このため、第1バッテリが充電され、長期保管時におけるバッテリ性能の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る電源装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】リチウム蓄電池のSOCの時間変遷を示すグラフである。
図3】鉛蓄電池の充電可能電力を説明するための模式図である。
図4】制御部による長期駐車予測に基づく充電制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】長期駐車予測の処理手順を示すフローチャートである。
図6】長期駐車後の充電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る電源装置10の概略構成を示すブロック図である。電源装置10は、車輌100に搭載されており、リチウム蓄電池1、鉛蓄電池2、オルタネータ3(図1ではALT3と略記する)、DC/DCコンバータ6(図1ではDC/DC6と略記する)、制御部7を備え、電動ブレーキ、電動パワーステアリング装置、補助用電動モータ及び再始動用スタータ等の電気負荷4(図1では負荷4と略記する)並びにスタータ5(図1ではST5と略記する)に電力を供給する。オルタネータ3は車輌100の走行動力源であるエンジン(図示略)に連結された発電機であり、エンジン出力軸の回転によって発電する。オルタネータ3が発電し整流した直流電力は並列接続されたリチウム蓄電池1、鉛蓄電池2及び電気負荷4に供給される。オルタネータ3は車輌100が減速しているときに発電する回生制御を行うことで、エンジン出力軸の回転に対する負荷となって車輌100に制動力を与えるとともに、発電した電力で各バッテリを充電し、電気負荷4へ電力を供給する。
【0024】
スタータ5は、図示しないエンジンのクランク軸を回転し、点火装置によって燃料に点火することでエンジンを始動する。スタータ5は、主として鉛蓄電池2から電力供給を受けて動作するが、エンジン始動時の鉛蓄電池2のSOCが低い場合には、鉛蓄電池2にリチウム蓄電池1を並列接続し、リチウム蓄電池1及び鉛蓄電池2からスタータ5に電力供給して動作させることもできる。オルタネータ3は本発明における車載発電機として機能する。
【0025】
リチウム蓄電池1は、オルタネータ3、及びDC/DCコンバータ6を介して電気負荷4に接続されており、オルタネータ3により充電され及び電気負荷4へ放電する。リチウム蓄電池1は、充放電が行われる使用時において制御目標とするSOCの範囲(以下、目標SOC範囲と表記する。)、例えば、SOCが30%から80%までの範囲で制御されることにより、バッテリ性能の劣化を抑えられ、長期間使用が可能となる。また、一般的にリチウム蓄電池1は、鉛蓄電池2に比べて充電効率が良いことから、リチウム蓄電池1から主として電力を供給して電気負荷4を動作させることで、エンジンの負荷となるオルタネータ3による発電が抑制され、車輌100の燃費が向上すると考えられる。リチウム蓄電池1から電気負荷4へ電力を供給するためには、リチウム蓄電池1の出力電圧が鉛蓄電池2の出力端子における鉛蓄電池2の出力電圧よりも高くなるように設定すればよい。尚、リチウム蓄電池1は本発明における第1バッテリとして機能する。
【0026】
一方、車輌100が長期駐車状態となると、リチウム蓄電池1は、オルタネータ3による充電及び電気負荷4への放電が行われなくなる。充放電が行われない状態で保管され、バッテリ性能の劣化を抑えて長期間使用を可能とするために、リチウム蓄電池1のSOCは、長期駐車時の目標SOC範囲内に制御する。長期駐車時の目標SOC範囲は、一般的に使用時の目標SOC範囲に比べて狭く、例えば、SOCが70%から80%までの範囲である。
【0027】
鉛蓄電池2は、広く車輌100に搭載されている蓄電池であり、例えば出力端子で12.7V〜12.8V(SOC換算で例えば88%〜92%)の範囲内で充放電が制御されることにより、長寿命化が図られる。鉛蓄電池2の出力端子はスタータ5に接続されており、エンジン始動時にスタータ5に電力供給して動作させる。また、鉛蓄電池2の出力端子はDC/DCコンバータ6を介してリチウム蓄電池1及びオルタネータ3に接続されている。鉛蓄電池2はDC/DCコンバータ6を介してオルタネータ3から電力供給されて充電される。尚、鉛蓄電池2は本発明における第2バッテリとして機能する。
【0028】
DC/DCコンバータ6は、例えばチョッパ及びコイル等で構成されており、リチウム蓄電池1及び鉛蓄電池2の出力端子間に介装され、出力端子間の一方から他方に向けて昇圧するとともに、これとは逆に他方から一方へ向けて降圧も行う。上述のようにリチウム蓄電池1は、鉛蓄電池2に比較して高電圧で充放電が可能であり、燃料消費効率の改善に寄与することから、リチウム蓄電池1の出力端子が高電位となるように充放電を制御することが好ましい。リチウム蓄電池1の出力端子が鉛蓄電池2の出力端子に比べて高電位で有る場合、DC/DCコンバータ6は、リチウム蓄電池1の出力端子側から鉛蓄電池2の出力端子側に向けて降圧するように制御される。
【0029】
また、リチウム蓄電池1から電気負荷4へ電力供給することでリチウム蓄電池1の蓄電量が低下し、これに伴ってリチウム蓄電池1の出力端子の電位が下がる。リチウム蓄電池1の出力端子の電位が鉛蓄電池2の出力端子の電位より低くなった場合でも、リチウム蓄電池1の出力端子側から鉛蓄電池2の出力端子側に向けて昇圧するようにDC/DCコンバータ6を制御することで、鉛蓄電池2の出力端子におけるリチウム蓄電池1側の電位を高く設定し、リチウム蓄電池1から電気負荷4へ電力を供給することが可能である。
【0030】
また、鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1へ充電する場合には、リチウム蓄電池1の出力端子における鉛蓄電池2側の電位を高くするべく、鉛蓄電池2の出力端子側からリチウム蓄電池1の出力端子側に向けて昇圧するようにDC/DCコンバータ6を制御する。DC/DCコンバータ6の昇圧/降圧の切替え制御、及びDC/DCコンバータ6の出力電圧/電流制御等は制御部7によって行われる。
【0031】
制御部7は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically EPROM)等の不揮発性メモリを利用したROMと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等のメモリを利用したRAMとを備え、ROMに記憶した制御プログラムをCPUで実行することによりDC/DCコンバータ6等を制御する。CPUは制御プログラムの実行の過程で生じたデータをRAMに一時記憶させる。制御部7は、入出力部75により信号線又は車輌100内の通信ネットワークを介してイグニッションスイッチ(以下、IGスイッチと表記する。)81、ナビゲーション装置82、無線キー制御装置83等に接続されており、これらの装置から制御に必要なデータを取得する。尚、入出力部75は、例えばデータバッファ、ネットワーク規格に従う通信制御回路等(図示略)を備え、制御部7から出力されるデータを信号線又は通信ネットワークへ送出し、信号線又は通信ネットワークから入力されたデータを制御部7へ送出する。
【0032】
また、制御部7には、電圧検出器71及び72、並びに電流検出器73及び74が接続されている。電圧検出器71はリチウム蓄電池1の出力電圧値を検出し、電圧検出器72は鉛蓄電池2の出力電圧値を検出する。電流検出器73はリチウム蓄電池1に入出力される電流量を検出し、電流検出器74は鉛蓄電池2に入出力される電流量を検出する。制御部7は、電圧検出器71から入力されたリチウム蓄電池1の出力電圧値、及び電流検出器73から入力されたリチウム蓄電池1に入出力される電流量に基づきリチウム蓄電池1の蓄電量を推定する。また、制御部7は、電圧検出器72から入力された鉛蓄電池2の出力電圧値、及び電流検出器74から入力された鉛蓄電池2に入出力される電流量に基づき鉛蓄電池2の蓄電量を推定する。更に他の方法で蓄電量を検知するようにしてもよい。
【0033】
制御部7は検知した蓄電量に基づいて制御を行うが、検知した蓄電量を物理量のまま制御に用いてもよいし、蓄電量をSOCで表わして制御に用いてもよい。以下に示す制御部7による制御に関する実施形態では、蓄電量をSOCで表わして用いる例について説明する。尚、制御部7は本発明における制御手段、第2制御手段、検知手段及び第2検知手段として機能する。検知手段及び第2検知手段は、ハードウェア的に制御部7と別体で構成するようにしてもよい。また、入出力部75は本発明における第1、第2及び第3取得手段として機能する。第1、第2及び第3取得手段はハードウェア的に一体であっても別体であってもよい。
【0034】
制御部7は、IGスイッチ81、ナビゲーション装置82及び無線キー制御装置83から取得するデータに基づいて、車輌100が長期駐車するかを予測する長期駐車予測処理を行う。また、制御部7は、長期駐車予測処理に基づいて、リチウム蓄電池1及び鉛蓄電池2について検出したSOCに基づいてDC/DCコンバータ6に対して昇圧/降圧の切替え制御、及び出力電圧制御等を行う。さらに、制御部7は、リチウム蓄電池1から電気負荷4へ電力を供給するべく、電圧検出器71及び72が検出する各出力電圧に基づいて、DC/DCコンバータ6に対して昇圧/降圧の切替え制御、及び出力電圧制御等を行う。
【0035】
次にIGスイッチ81、ナビゲーション装置82及び無線キー制御装置83について説明する。IGスイッチ81は、運転者がボタンを押下することによってエンジンを始動させる押しボタン式のスイッチ等である。IGスイッチ81は、後述するように無線キー制御装置83と無線キー84との間で行われる識別情報に基づく認証処理により無線キー84が正規であるとされた場合に切替えが許可される。IGスイッチ81は、ユーザの押し操作(長押し操作を含む)によって、オフ位置、アクセサリ位置(以下、ACC位置と表記する。)、オン位置、及びエンジン始動位置に段階的に切り替えられ、スイッチの位置を示すデータを出力する。なお、ここでの位置とは物理的な位置ではなく、機能的な状態を示す。
【0036】
一般的にオフ位置ではヘッドライト等の照明装置(図示略)等が動作可能であり、ACC位置ではナビゲーション装置82等が動作可能となる。このように、オフ位置及びACC位置では電力消費量の小さい一部の車載機器のみが動作可能である。一方、オン位置では窓開閉装置、空気調和装置のほかターンランプ、ワイパー、メータ機器(図示略)等の多くの車載機器が動作可能となる。さらにエンジン始動位置ではスタータ5が動作し、点火装置により燃料に点火してエンジンが始動し、エンジン始動後はオン位置に戻る。IGスイッチ81がエンジン始動後のオン位置からACC位置又はオフ位置に操作されることでエンジンが作動状態から停止状態へ移行する。制御部7はIGスイッチ81が出力したデータを入出力部75を介して取得し、該データに基づき、IGスイッチ81がオン位置からオフ位置又はACC位置に切替えられた場合に、エンジンが停止されたと判定する。
【0037】
ナビゲーション装置82は、GPS(Global Positioning System)により提供される測位のための電波を受信し、車輌100の現在位置を測定し、測定した現在位置を地図情報とともにディスプレイ上に表示する。ナビゲーション装置82は、地図情報データベースを有しており特定場所を指定することが可能となっている。例えば、タッチ操作を受け付けるディスプレイ上に地図情報を表示した状態で、自宅や仕事場等の長期駐車する可能性が高い特定場所をタッチ入力し、又は該特定場所の住所をキー入力することで、特定場所の位置情報を記録する。ナビゲーション装置82は、車輌100の位置情報及び指定された特定場所の位置情報を出力する。制御部7はナビゲーション装置82が出力したデータを入出力部75を介して取得し、該データに基づいて長期駐車予測処理を行う。尚、ナビゲーション装置82は本発明における位置検出装置として機能する。
【0038】
無線キー制御装置83は、無線キー84との間で行われる識別情報に基づく認証処理により無線キー84が正規であるとされた場合に車輌100のドアの施解錠を行う。無線キー制御装置83は、無線キー84を呼び出す呼出信号を送信し、この呼出信号に対して無線キー84から送信されるべき応答信号を受信しなかった場合に、無線キー84が通信範囲内にないと判断する。無線キー制御装置83の通信範囲は、例えば車輌100の車室内及び車外の数mの範囲としてある。無線キー制御装置83は、無線キー84が通信範囲内にあるか否かを示すデータを出力する。制御部7は無線キー制御装置83が出力したデータを入出力部75を介して取得し、該データに基づいて長期駐車予測処理を行う。尚、無線キー制御装置83は本発明における通信装置として機能し、無線キーは本発明における携帯無線機として機能する。
【0039】
次に制御部7による長期駐車予測処理に基づくバッテリの充電制御の動作について説明する。図2はリチウム蓄電池1のSOCの時間変遷を示すグラフであり、図3は鉛蓄電池2の充電可能電力を説明するための模式図である。時刻t1において自宅や仕事場等の長期駐車の可能性がある特定場所に近づくことで、制御部7にて長期駐車予測が検出される。長期駐車予測が検出された後、オルタネータ3が発電する回生電力が電気負荷4の電力消費より大きい場合には、リチウム蓄電池1への充電が行われて、図に示すAの経路で時間変遷する。
【0040】
リチウム蓄電池1に充電する蓄電量は、元来保管時の目標SOC(例えば70%〜80%)の範囲内であるが、後に鉛蓄電池2へ充電することを考慮して、上限値を拡大する。図3に示すように、鉛蓄電池2の目標SOC範囲における上限SOC(92%)と現在のSOCとの差分が鉛蓄電池2への充電可能電力となる。制御部7は、リチウム蓄電池1の保管時の目標SOCにおける上限SOCに鉛蓄電池2への充電可能電力を加算した拡大SOC上限値を求め、リチウム蓄電池1の蓄電量が該拡大SOC上限値になるまで充電を続ける。制御部7は、リチウム蓄電池1の蓄電量が該拡大SOC上限値になる時刻t2時点で、リチウム蓄電池1への充電を停止する。リチウム蓄電池1への充電停止は、オルタネータ3の回生を停止し、又はリチウム蓄電池1との接続を遮断すればよい。
【0041】
時刻t4において、制御部7はIGスイッチ81からのデータに基づきエンジンが停止されたと判定し、長期駐車が開始された状態になったと判断する。制御部7は、エンジン停止の判定の後、更に無線キー制御装置83からのデータに基づいて無線キー84が通信範囲内にあるか否かを判定し、無線キー84が通信範囲内にないと判定したときに長期駐車が開始された状態になったと判断するようにしてもよい。その後、制御部7は時刻t5からt6の期間でリチウム蓄電池1から鉛蓄電池2へ充電し、充電後のリチウム蓄電池1のSOCは、保管時の目標SOC内に設定される。リチウム蓄電池1から鉛蓄電池2への充電の際、制御部7は、鉛蓄電池2の出力端子において、リチウム蓄電池1側の電位が高くなるようにDC/DCコンバータ6を制御する。リチウム蓄電池1を鉛蓄電池2より高電圧側で使用することを考慮すると、制御部7は、リチウム蓄電池1の出力端子から鉛蓄電池2の出力端子に向かって降圧するようにDC/DCコンバータ6を制御してもよいし、電位差が小さいようであれば、昇圧/降圧を行わずに接続するように制御してもよい。
【0042】
一方、時刻t1にて長期駐車予測が検出された後、例えば車輌100が低速度で走行するなどしてオルタネータ3の回生電力が大きくならず、電気負荷4によるリチウム蓄電池1の電力消費が進んだ場合には、図3に示すBの経路で時間変遷する。時刻t3において電気負荷4による電力消費がなくなり、その後、制御部7は、時刻t4に上述のように長期駐車が開始された状態になったと判断する。その後、制御部7は時刻t5からt6の期間で鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1へ充電し、充電後のリチウム蓄電池1のSOCは、保管時の目標SOC内に設定される。鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1への充電の際、制御部7は、リチウム蓄電池1の出力端子において、鉛蓄電池2側の電位が高くなるようにDC/DCコンバータ6を制御する。具体的には、制御部7は、鉛蓄電池2の出力端子からリチウム蓄電池1の出力端子に向かって昇圧するようにDC/DCコンバータ6を制御する。
【0043】
次に制御部7による長期駐車予測に基づく充電制御の処理手順について説明する。図4は制御部7による長期駐車予測に基づく充電制御の処理手順を示すフローチャートであり、図5は長期駐車予測の処理手順を示すフローチャートであり、図6は長期駐車後の充電制御の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートにて、制御部7は長期駐車予測処理を行う(ステップS1)。制御部7は、図5に示す長期駐車予測処理を開始し、ステップS11にて現在の車輌100の位置をナビゲーション装置82から入出力部75を介して取得する。制御部7は、上述の特定場所を予めナビゲーション装置82から取得しており、ステップS12により現在の車輌100の位置と特定場所との間の距離を算出する。制御部7は、ステップS13により特定場所から一定距離範囲内に車輌100が位置しているか否かを判定する。一定距離は、リチウム蓄電池1へ充電が十分行えるようにある程度大きな値とすればよいが、大きな値とした場合には、長期駐車予測の精度が落ちる可能性がある。また、車輌100の通常の運行形態にも依存する。例えば、一回の運行で平均的に移動する距離の10分の1程度の距離を一定距離として設定するなどすればよく、自宅と仕事場等とを往復する車輌100の運行形態がほとんどである場合には長期駐車予測の精度は高くなる。
【0044】
一定距離範囲内であると判定された場合(S13:YES)、更にステップS14により車輌100が特定場所に接近しているか否かを判定する。ここで、車輌100が特定場所に接近しているとは、特定場所に近づくように移動していることを意味する。車輌100が特定場所に接近しているか否かは、時系列的に複数回に亘って算出した現在の車輌100の位置と特定場所との間の距離により判定できる。特定場所に接近していると判定された場合(S14:YES)、制御部7は、ステップS15により予測フラグの値を「1」として制御部7内に一時記憶する。一方、一定距離範囲内にないと判定した場合(S13:NO)、及び特定場所に接近していないと判定された場合(S14:NO)には、制御部7は、ステップS16により予測フラグの値を「0」として制御部7内に一時記憶する。ステップS15及びS16の後、制御部7は長期駐車予測処理を終える。
【0045】
制御部7は図4に示すステップS1による長期駐車予測処理の後、ステップS2により長期駐車の予測があるか否かを制御部7内に一時記憶した予測フラグの値により判定する。予測フラグの値が「0」であり、長期駐車の予測がない場合(S2:NO)、制御部7は、ステップS1に戻って、長期駐車予測処理を行う。予測フラグの値が「1」であり、長期駐車の予測がある場合(S2:YES)、制御部7は、ステップS3により、リチウム蓄電池1及び鉛蓄電池2の現在のSOCを検知し、ステップS4により、鉛蓄電池2の充電可能電力を算出する。また、制御部7は、ステップS5により、リチウム蓄電池1の保管時の目標SOC範囲における上限値に充電可能電力を加算して拡大SOC上限値を算出する。
【0046】
制御部7は、ステップS6により、オルタネータ3が回生しているか否かを判定する。尚、回生しているか否かの情報は、オルタネータ3に対する回生制御処理において既知となっているものとする。回生していると判定された場合(S6:YES)、更に制御部7は、ステップS7により、リチウム蓄電池1のSOCが拡大SOC上限値以上であるか否かを判定する。リチウム蓄電池1のSOCが拡大SOC上限値以上であると判定された場合(S7:YES)、制御部7はステップS8によりリチウム蓄電池1への充電を停止し、ステップS1に戻る。また、リチウム蓄電池1のSOCが拡大SOC上限値未満であると判定された場合(S7:NO)、制御部7はステップS9によりリチウム蓄電池1への充電を継続し、ステップS1に戻る。
【0047】
ステップS6により回生していないと判定された場合(S6:NO)、図6に示すように、制御部7はステップS21によりエンジンが停止されたか否かをIGスイッチ81からのデータに基づいて判定する。エンジンが停止されていないと判定された場合(S21:NO)、制御部7は図4に示すステップS1に処理を戻す。エンジンが停止されたと判定された場合(S21:YES)、制御部7は、ステップS22により、リチウム蓄電池のSOCが、保管時の目標SOC範囲における下限値未満であるか否かを判定する。下限値未満であると判定された場合(S22:YES)、制御部7は、ステップS23により、DC/DCコンバータ6を制御することにより、鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1へ充電する。一方、下限値未満ではないと判定された場合(S22:NO)、制御部7は、ステップS24により、リチウム蓄電池のSOCが、保管時の目標SOC範囲における上限値より大きいか否かを判定する。上限値より大きいと判定された場合(S24:YES)、制御部7は、ステップS25により、DC/DCコンバータ6を制御することにより、リチウム蓄電池1から鉛蓄電池2へ充電する。制御部7は、ステップS23及びS25の後、ステップS26により、リチウム蓄電池1のSOCが保管時の目標SOC範囲内であるか否かを判定する。保管時の目標SOC範囲内ではないと判定された場合(S26:NO)、制御部7はステップS22へ処理を戻す。保管時の目標SOC範囲内であると判定された場合(S26:YES)、及び上限値より小さいと判定された場合(S24:NO)、制御部7は処理を終了する。
【0048】
以上より、本実施形態によれば、オルタネータ3が車輌100に搭載されたエンジンに連動して発電し、リチウム蓄電池1はオルタネータ3が発電した電力により充電され、電気負荷4に電力を供給する。鉛蓄電池2はオルタネータ3が発電した電力により充電され、エンジンを始動するスタータ5に電力を供給する。入出力部75によりエンジンの作動及び停止を示す信号をIGスイッチ81から取得する。制御部7は、電圧検出器71が検出したリチウム蓄電池1の出力電圧値に基づいて蓄電量(SOC)を検知する。入出力部75により停止を示す信号を取得した場合に、リチウム蓄電池1の蓄電量が所定量としての保管時の目標SOC範囲における下限値以下であるとき、制御部7は、鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1へ充電する制御を行う。これにより、リチウム蓄電池1の蓄電量が保管時の目標SOC範囲における下限値以上となるように充電され、長期保管時におけるバッテリ性能の劣化を抑制することができる。
【0049】
さらに、入出力部75によりナビゲーション装置82から車輌100の位置を取得し、制御部7は、車輌100の位置が特定場所を示す場合に、鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1へ充電する制御を行うようにしてもよい。これにより、例えば自宅や仕事場等の特定場所を設定しておくことで、リチウム蓄電池1が長期保管状態となることを確実に検知することができる。
【0050】
また本実施形態によれば、入出力部75によりナビゲーション装置82から取得した車輌100の位置が特定場所から一定距離の範囲内にある場合に、リチウム蓄電池1の蓄電量が所定量以下であるとき、制御部7は、オルタネータ3からリチウム蓄電池1へ充電する制御を行う。これにより、オルタネータ3が発電した電力を有効に利用でき、燃料消費が低減される。
【0051】
また本実施形態によれば、制御部7は、電圧検出器72が検出した鉛蓄電池2の出力電圧値に基づいて蓄電量(SOC)を検知する。制御部7は、第2所定量としての鉛蓄電池2の目標SOC範囲における上限値と、検知した鉛蓄電池2の蓄電量との差分(充電可能電力)を算出する。制御部7は、リチウム蓄電池1の保管時の目標SOC範囲における上限値(第3所定量)に充電可能電力を加算した蓄電量となるまでリチウム蓄電池1へ充電する。これにより、リチウム蓄電池1により大きな電力を蓄電しておき、リチウム蓄電池1から鉛蓄電池2へ充電することができ、更に電力を有効に利用することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、無線キー84が無線キー制御装置83の通信範囲内に存在しない旨を示す信号を入出力部75により取得し、制御部7は、無線キー84が通信範囲内に存在しない旨を示す信号を取得した場合に、鉛蓄電池2からリチウム蓄電池1へ充電する制御を行う。これにより、リチウム蓄電池1が長期保管状態となることを確実に検知することができる。
【0053】
上述の実施形態ではリチウム蓄電池1を用いたが、リチウム蓄電池1に代えてニッケル水素蓄電池を用いてもよい。この場合、ニッケル水素蓄電池の長期保管時におけるバッテリ性能の劣化を抑制することができる。
【0054】
以上、発明を実施するための形態について説明したが、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 リチウム蓄電池(第1バッテリ)
2 鉛蓄電池(第2バッテリ)
3 オルタネータ(車載発電機)
4 電気負荷(電気負荷群)
5 スタータ
6 DC/DCコンバータ
7 制御部(制御手段、第2制御手段、検知手段及び第2検知手段)
75 入出力部(第1、第2及び第3取得手段)
81 IGスイッチ
82 ナビゲーション装置(位置検出装置)
83 無線キー制御装置(通信装置)
84 無線キー(携帯無線機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6