特許第5974985号(P5974985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5974985乗客コンベアのリニューアル工法及び該工法に用いる門型揚重装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5974985
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】乗客コンベアのリニューアル工法及び該工法に用いる門型揚重装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20160809BHJP
   B66C 5/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B66B23/00 B
   B66C5/02
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-127527(P2013-127527)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-809(P2015-809A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100141841
【弁理士】
【氏名又は名称】久徳 高寛
(74)【代理人】
【識別番号】100119596
【弁理士】
【氏名又は名称】長塚 俊也
(74)【代理人】
【識別番号】100100099
【弁理士】
【氏名又は名称】宮野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 雅輝
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−070313(JP,A)
【文献】 特開平09−164946(JP,A)
【文献】 特開2008−044684(JP,A)
【文献】 特開2008−179435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
B66C 5/00−11/26
B66C 17/00−23/94
B66D 3/04
B66D 3/26
B60P 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法において、
既設トラス上に少なくとも1つの門型揚重装置を配備する準備工程と、
前記複数のトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく過程で、搬送の対象とするトラスセグメントに、既設トラスの長手方向に延在する上面に配置することが可能な複数の搬送具を取り付け、前記門型揚重装置を用いて、前記複数の搬送具を前記上面に沿って移動させながら、該トラスセグメントを搬送する搬送工程
とを有し、
前記門型揚重装置は、既設トラスの幅方向に跨る門型を呈する門型フレームを具え、該門型フレームを構成する左右2本の脚部材はそれぞれ、互いに鉛直方向に連結された下脚部、中脚部及び上脚部から構成され、左右2本の脚部材の下脚部及び上脚部の内側面の間隔は、トラスセグメントの幅よりも大きく、且つ、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも小さく設定され、左右2本の脚部材の中脚部の内側面の間隔は、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも大きく設定されていることを特徴とする、乗客コンベアのリニューアル工法。
【請求項2】
既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法に用いる門型揚重装置において、
既設トラスの幅方向に跨る門型を呈する門型フレームを具え、該門型フレームを構成する左右2本の脚部材はそれぞれ、互いに鉛直方向に連結された下脚部、中脚部及び上脚部から構成され、左右2本の脚部材の下脚部及び上脚部の内側面の間隔は、トラスセグメントの幅よりも大きく、且つ、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも小さく設定され、左右2本の脚部材の中脚部の内側面の間隔は、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも大きく設定されていることを特徴とする、乗客コンベアのリニューアル工法に用いる門型揚重装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ等の乗客コンベアをリニューアルする工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータにおいて、既設トラスを撤去することなく、既設トラスの内部空間に新設トラスを設置し、既設トラスに新設トラスを合体させるリニューアル工法が知られている(特許文献1)。
係るリニューアル工法によれば、リニューアルの工期を短縮することが可能である。
【0003】
又、この様なリニューアル工法において、新設トラスをその長手方向に複数のトラスセグメントに分割し、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していくリニューアル工法が知られている(特許文献2)。
係るリニューアル工法によれば、既設トラスの内部空間を既設トラスに沿って移動させながら、全てのトラスセグメントを既設トラスの内部空間に設置して、これらのトラスセグメントを互いに連結することにより、既設トラスの内部空間に新設トラスを完成することが出来る。
【0004】
又、この様なリニューアル工法において、既設トラスに沿ってトラスセグメントを移動させる工程で、既設トラスの上階側水平部、傾斜部及び下階側水平部のそれぞれに1或いは複数の門型揚重装置を配備し、これらの門型揚重装置に設けられたチェーンブロックを用いて、トラスセグメントを吊り上げつつ、既設トラスの下階側水平部から傾斜部を経て上階側水平部まで移動させる工法が提案されている(特許文献3)。
【0005】
更に又、既設トラスに沿ってトラスセグメントを移動させるリニューアル工法において、トラスセグメントの前後左右に、既設トラスの上面にて転動可能な車輪を具えた4つの搬送具を取り付け、該搬送具によってトラスセグメントを搬送することが提案されている(特許文献4)。
係るリニューアル工法によれば、新設トラスを構成すべき複数のトラスセグメントを既設トラスに沿って容易に搬送することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−152779号公報
【特許文献2】特開2005−314085号公報
【特許文献3】特開2008−44684号公報
【特許文献4】特開2010−70313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
搬送の対象となるトラスセグメントに4つの搬送具を取り付けて、該トラスセグメントを既設トラスに沿って搬送するリニューアル工法において、既設トラス上に少なくとも1つの門型揚重装置を配備し、該門型揚重装置に設けられたチェーンブロックを用いて、トラスセグメントを吊り上げつつ、既設トラスの下階側水平部から傾斜部を経て上階側水平部まで移動させることが考えられる。
【0008】
この場合、門型揚重装置は、既設トラスの幅方向に跨る門型フレームを具えているので、搬送過程のトラスセグメントは、門型フレームを構成する左右2本の脚部材の間を通過する必要がある。
【0009】
しかしながら、トラスセグメントには、左右両側に搬送具が取り付けられて、該搬送具がトラスセグメントの両側面から外方へ突出しているので、トラスセグメントの幅が門型揚重装置の左右2本の脚部材の間隔よりも僅かに小さい構成では、左右両側の搬送具が脚部材と干渉し、トラスセグメントが門型揚重装置の左右2本の脚部材の間を通過することが出来ない問題があった。
【0010】
ここで、門型揚重装置の左右2本の脚部材の間隔を、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも大きく設定すれば、トラスセグメントの通過が可能となるが、左右2本の脚部材は既設トラスの上面に設置されるので、左右2本の脚部材の間隔は既設トラスの幅によって決定され、左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも大きく設定することは出来ない。
【0011】
そこで本発明の目的は、新設トラスがその長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法において、既設トラス上に少なくとも1つの門型揚重装置を配備し、搬送の対象とするトラスセグメントの両側に搬送具を取り付けた状態で、該トラスセグメントが門型揚重装置の左右2本の脚部材の間を通過することが可能な、リニューアル工法及び門型揚重装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法は、既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していくものであって、
既設トラス上に少なくとも1つの門型揚重装置を配備する準備工程と、
前記複数のトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく過程で、搬送の対象とするトラスセグメントに、既設トラスの長手方向に延在する上面に配置することが可能な複数の搬送具を取り付け、前記門型揚重装置を用いて、前記複数の搬送具を前記上面に沿って移動させながら、該トラスセグメントを搬送する搬送工程
とを有している。
【0013】
ここで、前記門型揚重装置は、既設トラスの幅方向に跨る門型を呈する門型フレームを具え、該門型フレームを構成する左右2本の脚部材はそれぞれ、互いに鉛直方向に連結された下脚部、中脚部及び上脚部から構成され、左右2本の脚部材の下脚部及び上脚部の内側面の間隔は、トラスセグメントの幅よりも僅かに大きく、且つ、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の左右両端間の幅よりも小さく設定され、左右2本の脚部材の中脚部の内側面の間隔は、トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具の幅よりも僅かに大きく設定されている。
【0014】
上記乗客コンベアのリニューアル工法においては、搬送の対象とするトラスセグメントの左右両側に搬送具を取り付け、該搬送具を既設トラスの上面に配置した状態で、門型揚重装置を用いて該トラスセグメントを牽引することにより、該トラスセグメントを既設トラスの上面に沿って搬送し、既設トラスの内部空間に順次、設置していく。
【0015】
ここで、トラスセグメントが門型揚重装置の左右2本の脚部材の間を通過する場合、該トラスセグメントの両側に取り付けられた左右2つの搬送具は、左右2本の脚部材の下脚部及び上脚部の内側面の間を通過させることは出来ないが、左右2本の脚部材の中脚部の内側面の間を通過させることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法及び該工法に用いる門型揚重装置によれば、門型フレームを構成する左右2本の脚部材の間隔が既設トラスの幅に応じて決定されるとしても、トラスセグメントは、その両側に搬送具が取り付けられた状態で、左右2本の脚部材の間を通過することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のリニューアル工法における第1工程を示す斜視図である。
図2図2は、該リニューアル工法における第2工程を示す斜視図である。
図3図3は、該リニューアル工法における第3工程を示す斜視図である。
図4図4は、該リニューアル工法における第4工程を示す斜視図である。
図5図5は、該リニューアル工法における第5工程を示す斜視図である。
図6図6は、該リニューアル工法に用いる搬送具を示す斜視図である。
図7図7は、該搬送具の側面図である。
図8図8は、該搬送具の正面図である。
図9図9は、該搬送具による調整を説明する図である。
図10図10は、本発明のリニューアル工法に用いる門型揚重装置の斜視図である。
図11図11は、該門型揚重装置の門型フレームの正面図である。
図12図12は、本発明のリニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第1の過程を示す一連の側面図である。
図13図13は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第2の過程を示す一連の側面図である。
図14図14は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第3の過程を示す一連の側面図である。
図15図15は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第4の過程を示す一連の側面図である。
図16図16は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第5の過程を示す一連の側面図である。
図17図17は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第6の過程を示す一連の側面図である。
図18図18は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第7の過程を示す一連の側面図である。
図19図19は、門型揚重装置を構成する門型フレームのチェーンブロック取付部に対するチェーンブロック取付位置の一例を示す正面図である。
図20図20は、同上のチェーンブロック取付部に対するチェーンブロック取付位置の他の例を示す正面図である。
図21図21は、既設トラスを示す側面図である。
図22図22は、新設トラスを構成する複数のトラスセグメントを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をエスカレータのリニューアル工法に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。尚、以下の説明では、トラスの長手方向に沿って下階から上階へ向かう方向を「前方」、その逆方向を「後方」と称する。
【0019】
本発明の一実施形態であるエスカレータのリニューアル工法は、既設トラスを撤去することなく既設トラスの内部空間に新設トラスを設置するものであって、先ず、第1工程では、図1及び図21に示す如くエスカレータから既設トラス(1)以外の部品や機器(駆動装置、ステップ、手摺り駆動機構、制御機器等)を撤去し、既設トラス(1)のみを残す。
【0020】
既設トラス(1)は、上階側水平部(11)、傾斜部(12)及び下階側水平部(13)から構成されており、上階側水平部(11)から傾斜部(12)を経て下階側水平部(13)まで延在する上面(1a)を有している。
【0021】
又、図22に示す如く、新設トラス(3)をその長手方向に、上階側水平トラスセグメント(31)と、上階側屈曲トラスセグメント(32)と、複数の中間トラスセグメント(33)(33)と、下階側屈曲トラスセグメント(34)と、下階側水平トラスセグメント(35)に分割する。
【0022】
尚、これらのトラスセグメント(31)〜(35)には、エスカレータを構成すべき複数の部品や機器の内、予め搭載可能な複数の部品や機器(駆動装置、駆動輪、ガイドレール等)が搭載されている。
又、図22は、新設トラス(3)の1つの分割例を示すものであって、新設トラス(3)の全長等に応じて適切な分割形態が採用される。
以下の説明においては、新設トラス(3)を構成するトラスセグメント(31)〜(35)を適宜、トラスセグメント(30)と総称する。
【0023】
次に、第2工程では、図2に示す如く既設トラス(1)の下階側水平部(13)に門型揚重装置(2a)を設置すると共に、既設トラス(1)の上階側水平部(11)に門型揚重装置(2b)を設置する。
【0024】
下階側門型揚重装置(2a)と上階側門型揚重装置(2b)は、互いに同一の構造を有しており、これらの門型揚重装置(2)は図10に示す如く門型フレーム(210)を具え、該門型フレーム(210)は、複数本の鋼材をボルトとナットからなる締結具(29)によって互いに締結することにより、分解が容易に組み立てられている。
【0025】
門型フレーム(210)は、前記既設トラス(1)上に立設されるべき4本の脚部材(21)〜(21)と、これらの脚部材(21)〜(21)の上端に連結された左右2本の竿部材(25)(25)と、これらの竿部材(25)(25)に跨って架設された4本の上フレーム部材(26)〜(26)とから構成されている。
ここで、竿部材(25)は断面U字状の鋼材から形成され、上フレーム部材(26)は断面I字状の鋼材から形成されている。
【0026】
尚、門型フレーム(210)を構成する4本の脚部材(21)〜(21)は、既設トラス(1)の上面に設置されるため、左右2本の脚部材(21)(21)の間隔は、既設トラス(1)の幅によって決定される。
【0027】
脚部材(21)は、図11に示す如く、下脚部(22)、中脚部(23)及び上脚部(24)から構成されている。ここで、下脚部(22)と上脚部(24)は断面U字状の鋼材から形成されている。
又、中脚部(23)は、2枚の帯板状の鋼材を重ね合わせて構成されており、該中脚部(23)の下端部と上端部とがそれぞれL字状の継手部材(28)によって下脚部(22)と上脚部(24)に連結されている。これによって、脚部材(21)の内側面には、中脚部(23)によって凹部Fが形成される。
【0028】
この結果、左右の脚部材(21)(21)の内側には、中脚部(23)(23)に対向する部分が左右に拡大した空間が形成され、該空間をトラスセグメント(30)が通過することになる。
【0029】
門型フレーム(210)を構成する4本の上フレーム部材(26)にはそれぞれ、幅方向の中央位置にチェーンブロック取付部(27)が設けられている。各チェーンブロック取付部(27)は、上フレーム部材(26)に沿って延びる丸軸状に形成され、上フレーム部材(26)に下向きに突設された左右一対のフランジ(27a)(27a)によって水平姿勢に支持されている。
【0030】
このチェーンブロック取付部(27)に、チェーンブロック(20)のフック(20a)を引っ掛けることにより、チェーンブロック(20)を上フレーム部材(26)から吊り下げることが出来、この状態で、該チェーンブロック(20)のワイヤ(20b)によってトラスセグメント(30)を吊り上げ、若しくは牽引することが出来る。
【0031】
続いて第3工程では、図3に示す如く下階側の門型揚重装置(2a)と上階側の門型揚重装置(2b)に設けられているチェーンブロック(20)を用いて、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上面に沿って引き上げる。
ここで、トラスセグメント(30)には、前後左右の4箇所にそれぞれ、搬送具(4)が取り付けられており、該4つの搬送具(4)を既設トラス(1)の全長に亘って延在する上面に配置し、該上面に沿って移動させることにより、トラスセグメント(30)を搬送する。
【0032】
搬送具(4)は、図6に示す如く、トラスセグメント(30)の上面に締結固定されるべき平板状のベース部材(41)と、既設トラス(1)の上面(1a)に沿って滑動可能なそり部材(43)と、ベース部材(41)とそり部材(43)の間に介在する伸縮機構(42)とを具えている。
【0033】
図8に示す如く、ベース部材(41)の裏面には、トラスセグメント(30)の上面に接触可能な取付け面(41a)が形成されている。
又、そり部材(43)は、図7及び図8に示す如く、伸縮機構(42)の下端部にアングル部材(46)を介して固定されている。
【0034】
そり部材(43)は、既設トラス(1)の上面に対向して、図7に示す3つの滑動面(43a)(43b)(43b)を有し、中央の主滑動面(43a)の前後に2つの補助滑動面(43b)(43b)が形成されており、両補助滑動面(43b)(43b)はそれぞれ主滑動面(43a)に対して一定の後退角をもって傾斜している。
【0035】
搬送具(4)が既設トラス(1)の上面の平坦な領域を移動する過程では、そり部材(43)の主滑動面(43a)が既設トラス(1)の上面に摺接するが、搬送具(4)が既設トラス(1)の上面の凸部を乗り越える過程では、先ず、そり部材(43)の前方の補助滑動面(43b)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越え、その後、主滑動面(43a)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越え、最後に後方の補助滑動面(43b)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越えることになる。
【0036】
図7及び図8に示す如く、伸縮機構(42)は、ベース部材(41)の裏面に連結された外筒(421)と、アングル部材(46)の上面に連結された内筒(422)とから構成され、外筒(421)と内筒(422)が筒軸方向に沿って互いに摺動可能に嵌合している。
又、外筒(421)には筒軸方向に長い長孔(48)が開設される一方、内筒(422)にはボルト(47)がねじ込まれ、該ボルト(47)の頭部が長孔(48)に嵌合して、外筒(421)に対する内筒(422)の摺動が案内され、且つ内筒(422)の脱落が防止されている。
【0037】
そして、ベース部材(41)には、第1調整ボルト(44)がねじ込まれ、該第1調整ボルト(44)の先端面が内筒(422)の端面に当接している。
従って、第1調整ボルト(44)をベース部材(41)に対してねじ込むことにより、該第1調整ボルト(44)の先端面が内筒(422)の端面を押圧し、これによって外筒(421)と内筒(422)とが互いに離間方向に相対移動して、伸縮機構(42)が伸長し、その長さAが大きくなる。
【0038】
逆に、第1調整ボルト(44)をねじ戻すことによって、外筒(421)と内筒(422)とが互いに接近方向に相対移動可能となり、トラスセグメント(30)の重量によって伸縮機構(42)が収縮し、その長さAが小さくなる。
【0039】
又、ベース部材(41)には第2調整ボルト(45)がねじ込まれ、ベース部材(41)を貫通した第2調整ボルト(45)の先端部にはナット(49)(49)が螺合している。
第2調整ボルト(45)は、図9(a)に示す如くベース部材(41)がトラスセグメント(30)の上面に設置された状態で該トラスセグメント(30)を貫通し、その先端部のナット(49)(49)の締め付けによって、ベース部材(41)をトラスセグメント(30)に固定することが出来る。
【0040】
4つの搬送具(4)のベース部材(41)をそれぞれトラスセグメント(30)の前後左右に締結固定した状態で、4つの搬送具(4)のそり部材(43)を既設トラス(1)の上面に沿って滑動させる際には、第1調整ボルト(44)の操作によって図9(a)に示す伸縮機構(42)の長さAを変化させることにより、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔Bを調整する。
これによって、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)と干渉させることなく、既設トラス(1)の内部空間にてトラスセグメント(30)を搬送することが出来る。
【0041】
トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上面(1a)に沿って所定の位置まで搬送した後、ベース部材(41)に対するトラスセグメント(30)の締結を緩めると共に、図9(b)に示す第2調整ボルト(45)を操作して、ベース部材(41)に対するねじ込み量を増減させることによって、既設トラス(1)の内部空間にてトラスセグメント(30)を昇降させ、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔B′を調整する。この際、第1調整ボルト(44)を操作して、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔B′を調整することも可能である。
【0042】
これによって、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の内部空間にて所定の高さ位置に設定することが出来る。
この結果、トラスセグメント(30)を前方の設置済みのトラスセグメント(30)と連結することが可能となる。
【0043】
上記門型揚重装置(2)においては、図11に示す様に、門型フレーム(210)を構成する左右2本の脚部材(21)(21)の下脚部(22)(22)及び上脚部(24)(24)の間隔は、トラスセグメント(30)の幅よりも僅かに大きく、且つ、トラスセグメント(30)の両側に取り付けられた左右2つの搬送具(4)(4)の左右両端間の幅よりも小さく設定されている。
又、左右2本の脚部材(21)(21)の中脚部(23)(23)の内側面の間隔は、トラスセグメント(30)の両側に取り付けられた左右2つの搬送具(4)(4)の幅よりも僅かに大きく設定されている。
【0044】
従って、搬送の対象とするトラスセグメント(30)の両側に取り付けられた左右2つの搬送具(4)(4)は、左右2本の脚部材(21)(21)の下脚部(22)(22)及び上脚部(24)(24)の内側面の間を通過させることは出来ないが、左右2本の脚部材(21)(21)の中脚部(23)(23)の内側面の間は通過させることが出来る。
【0045】
上述の如く、搬送対象となるトラスセグメント(30)に4つの搬送具(4)を取り付け、これら4つの搬送具(4)を既設トラス(1)の上面に沿って移動させながら、各トラスセグメント(30)を搬送し、前後のトラスセグメント(30)(30)どうしを互いに連結することにより、図4に示す如く、既設トラス(1)の内部空間に新設トラス(3)を完成する。
【0046】
最後に、第4工程では、図5の如く既設トラス(1)から下階側門型揚重装置(2a)及び上階側門型揚重装置(2b)を撤去した後、新設トラス(3)に対して必要な部品や機器(ステップ、手摺り、制御機器等)を取り付けることにより、エスカレータのリニューアルを完了する。
【0047】
図12図18は、下階側門型揚重装置(2a)及び上階側門型揚重装置(2b)を用いて、複数のトラスセグメント(30)を順次、既設トラス(1)の上面に沿って移動させて、新設トラス(3)を完成するまでの一連の搬送及び設置作業を示している。
【0048】
即ち、図12(a)〜図13(c)は、上階側水平トラスセグメント(31)の搬送及び設置作業を示し、図13(c)〜図14(c)は、上階側屈曲トラスセグメント(32)の搬送及び設置作業を示し、図15(a)〜(d)は、1つ目の中間トラスセグメント(33)の搬送及び設置作業を示し、図16(a)〜(c)は、2つ目の中間トラスセグメント(33)の搬送及び設置作業を示し、図17(a)〜(d)は、下階側屈曲トラスセグメント(34)の設置作業を示し、図18(a)〜(c)は、下階側水平トラスセグメント(35)の設置作業を示している。
【0049】
トラスセグメント(30)を門型揚重装置(2)によって吊り上げ、若しくは牽引するべく、図11の如く門型フレーム(210)の上フレーム部材(26)に設けられているチェーンブロック取付部(27)にチェーンブロック(20)のフック(20a)を吊り下げる際、フック取付位置の鉛直下方にトラスセグメント(30)の重心Gが配置される様に、チェーンブロック取付部(27)に対するフック(20a)の位置を調節する。
【0050】
即ち、トラスセグメント(30)が、図19の如くチェーンブロック取付部(27)の幅Hを二等分する中心線Jの延長線上に重心Gを有する場合は、チェーンブロック取付部(27)の幅方向の中心位置にチェーンブロック(20)のフック(2a)を吊り下げる。
これに対して、トラスセグメント(30)が、図20の如く中心線Jから何れか片方へ距離Kだけ偏った位置に重心Gを有する場合は、チェーンブロック取付部(27)の中心から前記距離Kと同じ距離I(最大80mm)だけずれた位置にチェーンブロック(20)のフック(20a)を吊り下げる。
【0051】
これによって、トラスセグメント(30)の重心位置に拘わらず、トラスセグメント(30)を重心位置にてチェーンブロック(20)により吊り上げ、若しくは牽引することが出来る。従って、トラスセグメント(30)は、左右に傾くことなく吊り上げられ、若しくは4つの搬送具(4)が既設トラス(1)の上面に配置された姿勢を変えることなく、スムーズに搬送されることになる。
【0052】
新設トラス(3)を構成する各トラスセグメント(30)の設置時には、トラスセグメント(30)の高さ調整を行なった後、該トラスセグメント(30)を前方の設置済みのトラスセグメント(30)と連結すると共に、必要に応じて該トラスセグメント(30)を既設トラス(1)と連結する。
【0053】
そして、トラスセグメント(30)の引き上げ及び設置が終了する度に、又は、トラスセグメント(30)の引き上げ及び搬送が全て終了した後、該トラスセグメント(30)に取り付けられている4つの搬送具(4)を取り外す。
この際、搬送具(4)の伸縮機構(42)を収縮させれば、搬送具(4)は容易に取り外すことが出来る。
【0054】
この様にして、全てのトラスセグメント(30)が互いに連結されることにより、既設トラス(1)の内部空間に新設トラス(3)が完成する。
【0055】
上記エスカレータのリニューアル工法によれば、トラスセグメント(30)に4つの搬送具(4)を取り付けて、該搬送具(4)のそり部材(43)を既設トラス(1)の上面に沿って滑動させることにより、トラスセグメント(30)を移動させることが出来るので、トラスセグメント(30)の搬送は容易なものとなる。
【0056】
又、門型揚重装置(2)の内側をトラスセグメント(30)が通過する場合、図11に示す如く、トラスセグメント(30)の左右に取り付けられた搬送具(4)(4)が、門型フレーム(210)を構成する脚部材(21)(21)の中脚部(23)(23)によって形成される凹部F、Fを通過することが出来るので、搬送具(4)の取り付けによってトラスセグメント(30)の全幅が左右の脚部材(21)(21)の間隔よりも大きくとも、トラスセグメント(30)の通過が可能である。
従って、トラスセグメント(30)を通過させる度に4つの搬送具(4)を取り外す必要はない。
【0057】
又、門型揚重装置(2)は、上述如く、門型フレーム(210)が複数本の鋼材を締結具(29)により互いに締結して組み立てられているので、締結具(29)による締結を解除することによって容易に分解することが出来、組立も容易である。
そして、門型揚重装置(2)の組立においては、門型フレーム(210)が前後及び左右を逆転させても同じ構造となるので、組立の際に前後左右の向きを考慮する必要はない。
【0058】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、搬送具(4)の履体として、そり部材(43)を用いているが、これに限らず、車輪を用いることも可能である。
【0059】
又、上記実施形態では、既設トラス(1)に沿って新設トラス(3)の各トラスセグメント(30)を順次、下から上へ引き上げているが、各トラスセグメント(30)を順次、上から下へ降ろしていく工法を採用することも可能である。
【0060】
更に又、上記実施形態では、工場にて新設トラス(3)を完成させた後、該新設トラス(3)を複数のトラスセグメント(30)に分割し、これらのトラスセグメント(30)をリニューアル工事の現場に搬入することとしているが、新設トラス(3)を構成すべき複数のトラスセグメント(30)を工場にて別々に製造した後、工場ではこれらのトラスセグメント(30)を組み立てることなく、リニューアル工事の現場に搬入することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
(1) 既設トラス
(2a) 下階側門型揚重装置
(2b) 上階側門型揚重装置
(20) チェーンブロック
(210) 門型フレーム
(21) 脚部材
(22) 下脚部
(23) 中脚部
(24) 上脚部
(25) 竿部材
(26) 上フレーム部材
(27) チェーンブロック取付部
(28) 継手部材
(29) 締結具
(3) 新設トラス
(30) トラスセグメント
(4) 搬送具
(41) ベース部材
(42) 伸縮機構
(43) そり部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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