(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非導電性の基材と、前記基材上に重ね合わされた熱伝導シートと、前記基材及び前記熱伝導シートの間に配設されて通電により発熱する電熱線が設けられたステアリングホイール用のヒータエレメントであって、
ヒータエレメントをステアリングホイールの芯金に貼付けられた際に上記基材の端部と他の端部との間に隙間が設けられており、前記隙間を覆うように熱伝導シートが基材の端部より延長した延長部を設けたことを特徴とするステアリングホイール用のヒータエレメント。
前記ヒータエレメントは、前記基材上に重ね合わされた前記熱伝導シートとは反対側の面に粘着層を有しており、前記粘着層において前記ステアリングホイールの芯金に貼付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール用のヒータエレメント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒータエレメントをステアリングホイールの芯金に貼付ける際、ヒータエレメントの片側の一端が反対の端部に乗り上げてしまうとウレタン成形後に段差ができてしまいステアリングホイールの外観に不良が生じる可能性がある。
また、上記問題を回避するために芯金にヒータエレメントを貼付けるときの端部と端部の隙を大きくするとヒータエレメントで暖める範囲が狭くなり、乗員に不快感を与えることになる。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗員に不快感を与えることのない車載用のヒータエレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非導電性の基材と、前記基材上に重ね合わされた熱伝導シートと、前記基材及び前記熱伝導シートの間に配設されて通電により発熱する電熱線が設けられたステアリングホイール用のヒータエレメントであって、
ヒータエレメントをステアリングホイールの芯金に貼付けた際に上記基材の端部と他の端部との間に隙間が設けられており、前記隙間を覆うように熱伝導シートが基材の端部より延長した延長部を設けたことを要旨とする。
【0007】
同構成では、ヒータエレメントをステアリングホイールの芯金に貼付けた際に前記基材の端部と他の端部との間に隙間が設けられており、基材同士が重なることがなくウレタン成形後に段差ができるということがなくなる。
また、熱伝導シートに基材の端部より延長させた延長部を設けることでヒータエレメントを芯金に貼付けたときにできる基材の端部と端部の間の隙間を延長部が覆うことができ、乗員がステアリングホイールを握った際の温暖範囲を広くとることができる。
【0008】
このように同構成によれば、ウレタン成形後の不良がなくなるとともに乗員がステアリングホイールを握った際に温暖範囲が広くなるため快適と感じさせることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載用のヒータエレメントにおいて、前記熱伝導シートにおいて切欠き部を有していることを要旨とする。
【0010】
上記の構成によれば、リム部芯金が環状をなし三次元曲面を有しているのに対し、ヒータエレメントが平面状をなしている。そのため、リム部芯金にヒータエレメントを貼付ける際、ヒータエレメントに貼付けに関与しない余剰部分が生じ、皺が入るおそれがある。この点、ヒータエレメントが断熱シート及び熱伝導シートにおいて切欠き部を有している請求項2に記載の発明では、この切欠き部が、上記余剰部分の発生を吸収する。そのため、ヒータエレメントに皺が入りにくい。
また、熱伝導シートに切欠き部を設けることでヒータエレメントをステアリングホイールの芯金に貼付ける作業が容易になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ヒータエレメントは、前記基材上に重ね合わされた前記熱伝導シートとは反対側の面に粘着層を有しており、前記粘着層において前記ステアリングホイールの芯金に貼付けられていることを要旨とする。
【0012】
記の構成によれば、ヒータエレメントがリム部芯金の外形形状に沿って撓ませられて、粘着層がリム部芯金に付着すると、同ヒータエレメントはリム部芯金に貼付けられた状態となる。この粘着層はヒータエレメントの一部として予め設けられたものであるため、ヒータエレメントの貼付け時に、リム部芯金や断熱シートに粘着層を設けなくてもすむ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車載用のヒータエレメントを具体化した一実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両の運転席よりも前方(
図1の左方)には、回転軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)11が、運転席側(
図1の右側)ほど高くなるように傾斜した状態で配設されている。ステアリングシャフト11の後端部には、ステアリングホイール12が一体回転可能に取付けられている。
【0015】
図3は、
図2の3−3線に沿ったリム部13の断面構造、すなわち、リム部13の右側部分の断面構造を示している。なお、リム部13の左側部分の断面構造は、上記左側部分の断面構造と同様
である。そのため、この左側部分の断面構造については説明を省略する。
【0016】
ステアリングホイール12は、リム部(ハンドル部、リング部と呼ばれることもある)13、パッド部14及びスポーク部16(
図2参照)を備えている。リム部13は、運転者によって把持されて回転操作(操舵)される部分であり、上記回転軸線L1を中心とした略円環状をなしている(
図2参照)。
【0017】
パッド部14は、リム部13によって囲まれた空間に配置されている。パッド部14の前側部分はロアカバー15によって構成されている(
図1参照)。スポーク部16は、リム部13及びパッド部14間に複数本(ここでは3本)設けられている。
【0018】
なお、回転操作(操舵)されるリム部13における周方向の位置を特定するために、本実施形態では、車両が直進しているときの状態(中立状態)を基準に、「上」、「下」、「左」、「右」を規定するものとする。
【0019】
ステアリングホイール12の上記リム部13、スポーク部16及びパッド部14の各内部には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金等によって形成された芯金が配設されている。この芯金のうち、リム部13内に位置するものはリム部13の骨格部分をなすものであって、運転者側から見て略円環状をなしており、リム部芯金20と呼ばれる。
【0020】
リム部芯金20は、リム部13の表面から内方へ離れた箇所に配置されている。
図3に示すように、リム部芯金20は、上記回転軸線L1を中心とする円環状の外環状部21と、回転軸線L1を中心とする内環状部22と、回転軸線L1を中心とする円環状をなし、かつ上記外環状部21及び内環状部22をそれらの後部で繋ぐ連結環状部23とを備えている。そして、外環状部21、内環状部22及び連結環状部23によって囲まれた空間は、リム部芯金20の前面において開口する溝部24となっている。この溝部24は、リム部13の略全周にわたって設けられている。こうした溝部24を有する構造を採ることで、リム部芯金20は略U字形の断面形状を有している。
【0021】
連結環状部23は、後方へ膨らむように湾曲する曲面部25を有している。外環状部21は、前方へ膨らむように湾曲する曲面部26を前端に有している。外環状部21において、上記両曲面部25,26によって挟まれた箇所には、2つの平面部27が形成されている。内環状部22は、前方へ膨らむように湾曲する曲面部28を前端に有している。内環状部22において、上記両曲面部25,28によって挟まれた箇所には、2つの平面部29が形成されている。さらに、溝部24の内壁面は、相対向する一対の平面部31を有している。
【0022】
先の
図2に破線で示すように、リム部13の周方向について、多くの運転者が握る箇所である左右両側部にはヒータエレメント40が組込まれている。より詳細には、ヒータエレメント40は、リム部芯金20を覆うように貼付けられている。
【0023】
以下、本実施形態におけるヒータエレメント40の構造を説明する。
図4に、ヒータエレメント40の断面構造を示す。また、
図5に、ヒータエレメント40を展開した状態での平面図を示す。
【0024】
これら
図4及び
図5に示すように、ヒータエレメント40は、断熱シート41、熱伝導シート43、発熱体45及び粘着層47を備えている。
【0025】
図4に示すように、断熱シート41は、可撓性を有する非導電性の断熱材料によって、厚みが均一(本実施形態では2〜3mm程度)な板状に形成されている。この断熱材料としては、弾性を有していて柔軟な樹脂材料、例えば、ウレタン、ゴム等が適している。ちなみに、断熱性を高めるうえでは断熱シート41は発泡体であることが好ましい。そこで本実施形態では、発泡ウレタンによって断熱シート41が形成されている。なお、この断熱シート41は、上記基材を構成する。
【0026】
熱伝導シート43は、発熱体45から発せられる熱を素早く拡散するためのものであり、上記断熱シート41よりも厚みが薄く、熱伝導率の高い材料によって形成されている。熱伝導シート43は、上記断熱シート41と同様にリム部芯金20に沿って撓ませられるものであるため、厚みの薄いものであることが好ましい。本実施形態では、熱伝導シート43が導電性のアルミ箔によって形成されている。この熱伝導シート43は、上記断熱シート41上に重ね合わされ、接着等の固定手段によって同断熱シート41に固定されている。
【0027】
発熱体45は、断熱シート41及び熱伝導シート43の間に配設されて通電により発熱する電熱線45aと、この電熱線45a及び熱伝導シート43の間を電気的に絶縁する絶縁層45bとで構成されている。
【0028】
電熱線45aは、通電により発熱するものであればよく、例えば、電気抵抗が大きく、通電により発熱する線材によって形成されている。また、
図5に示すように、発熱体45(電熱線45a)は、ヒータエレメント40の長手方向(
図5の上下方向)に波状をなすように繰り返し曲げられて配置されている。
【0029】
絶縁層45bは、非導電性の樹脂等で形成されており、電熱線45aの外周面を被覆している。
粘着層47は、断熱シート41の発熱体45とは反対側の面において、その全面に渡って均一の厚みに形成されている。
【0030】
図5に示すように、ヒータエレメント40は、展開された状態では長尺状をなしている。このヒータエレメント40は、相対向した状態で長手方向に延びる一対の対向縁部48を有している。一対の対向縁部48のうち、一方の対向縁部48には延長している延長部48aが設けられている。ヒータエレメント40における断熱シート41及び熱伝導シート43には、各対向縁部48の複数箇所から対向する対向縁部48側へ向けて延びる切欠き部49が形成されている。ここでは、各切欠き部49は、各対向縁部48から遠ざかるに従い幅狭となるように形成されている。これら切欠き部49により、ヒータエレメント40をリム部芯金20に貼付けた状態において、同ヒータエレメント40には、皺が入りにくくなる。
【0031】
ここで、リム部芯金20は
図1の矢印C方向から見た場合に円環状をなしている。また、リム部芯金20は、外環状部21、内環状部22及び連結環状部23を備えて、断面U字状をなしている(
図3参照)。このように、リム部芯金20は三次元曲面を有している。これに対し、リム部芯金20への貼付け前には、ヒータエレメント40は平面状をなしている(
図5参照)。また、ヒータエレメント40の構成部材のうち、特に、熱伝導シート43は断熱シート41よりも伸びにくい。そのため、リム部芯金20にヒータエレメント40を貼付ける際、同ヒータエレメント40の貼付けに関与しない余剰部分が生じ、皺が入るおそれがある。この点、ヒータエレメント40における断熱シート41及び熱伝導シート43の複数箇所に切欠き部49が設けられている本実施形態では、これらの切欠き部49が上記余剰部分を吸収する。そのため、リム部芯金20に貼付けられた状態では、ヒータエレメント40に皺が入りにくい。
【0032】
リム部芯金20にヒータエレメント40を貼付けた後には断熱シートの対向縁部と対向縁部との間に隙間Sが生じるように設定されている。この隙間Sをあらかじめ設定しておくことでヒータエレメントの対向縁部の一方が他方に乗り上げることがなくなる。また、この隙間Sを覆うように熱伝導シート43の一方の対向縁部48先端から長手方向に直交する方向に延長部48aが設けられている。延長部48aはリム部芯金20にヒータエレメント40を貼付け後に生じる隙間Sを覆うように延長部48aが設けられていない対向縁部側に向かって巻きつけることによって隙間Sが覆われる。延長部48aの長さは隙間Sの幅より長いため確実に隙間Sを覆うことができヒータエレメントの温暖範囲の減少を防止することができる。
【0033】
そして、上記ヒータエレメント40の貼付けにより、リム部芯金20の周りに、断熱部として機能する断熱シート41、発熱体45、及び熱伝導部として機能する熱伝導シート43が順に配置される。従って、リム部芯金20の周りに断熱部を成形によって形成する必要がない。また、上記粘着層47はヒータエレメント40の一部として予め設けられたものであるため、ヒータエレメント40の貼付け時に、別途接着剤を用いる必要がない。
【0034】
さらに、上記ヒータエレメント40の貼付けられたリム部芯金20が、インサートとして金型(図示略)内に配置され、この金型内に未硬化のウレタン材料が供給されて成形が行なわれる。この際、金型内は減圧されており、ウレタン材料の多くが、ヒータエレメント40の周りに供給される。その後ウレタン材料が反応硬化することで、ヒータエレメント40の周りに被覆部35が形成される(
図3参照)。また、ウレタン材料の一部は、リム部芯金20の溝部24内及び隙間Sにも充填される(
図3参照)。この充填された溝部24内のウレタン材料が反応硬化することで、充填部51、53が形成される。
【0035】
また、上記被覆部35及び充填部51を形成する上記樹脂材料は、断熱シート41と同種であって、断熱シート41に対し相溶性を有する樹脂材料(この場合、ウレタン)からなる。そのため、充填部51は、断熱シート41に付着して一体となった状態となる。表現を変えると、被覆部35は充填部51を介して断熱シート41に付着した状態となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ヒータエレメントをステアリングホイールの芯金に取り付けた際に前記基材の端部と他の端部との間に隙間ができるようになっている。また、熱伝導シートに基材の端部より延長させた延長部を設けることでヒータエレメントを芯金に巻きつけたときにできる基材の端部と端部の間の隙間を延長部が覆うことができる。そのため基材同士が重なることがなくウレタン成形後に段差ができるということがなくなるとともに乗員がステアリングホイールを握った際の温暖範囲を広くとることができる。
【0037】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・絶縁層45bは、電熱線45aの外周面を被覆するように設けられていた。この他、電熱線45a及び熱伝導シート43の間を電気的に絶縁するように設けられているのであれば、他の配設態様であってもよい。
【0038】
・熱伝導シート43は、発熱体45が発した熱を素早く拡散できるものであればよく、アルミ箔とは異なる材料によって形成されたものが熱伝導シート43として用いられてもよい。例えば、熱伝導シート43は、銅箔からなるものであってもよい。
【0039】
・発熱体45は通電により発熱するものであればよく、上述した電熱線45aとは異なるものが発熱部材として用いられてもよい。例えば、絶縁シート上に抵抗体層が形成されたものが発熱体45とされてもよい。
【0040】
・発熱体45は、上記実施形態とは異なる態様で、断熱シート41及び熱伝導シート43間に配置されてもよい。例えば、発熱体45は、ヒータエレメント40の短手方向に波状をなすように繰り返し曲げられて配置されてもよい。
【0041】
・ヒータエレメント40における粘着層47を省略してもよい。この場合には、ヒータエレメント40は、例えば接着剤によってリム部芯金20に貼付けられてもよい。
【0042】
・切欠き部49は、上記実施形態とは異なる形状に形成されてもよい。また、切欠き部49を省略してもよい。
・本発明にかかるヒータエレメントは、上述したステアリングホイール12に限らず、シフトノブ、座席等の他の車載用部材のヒータエレメントに適用することもできる。