(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御器は、組み合わせた前記計測可能領域が、前記計測対象部位の全範囲に対して所定の割合以上を占めた場合、前記計測処理の結果を計測値として確定する、請求項1から3のいずれかに記載の超音波診断装置。
前記制御器は、前記計測可能領域のうち、同一領域が所定数以上の前記計測対象フレームで重複しており、前記同一領域の組み合わせが、前記計測対象部位の全範囲に対して所定の割合以上を占めた場合、前記計測処理の結果を計測値として確定する、請求項1から3のいずれかに記載の超音波診断装置。
前記制御器は、前記計測処理の結果を計測値として確定後、前記超音波診断装置を自動的にフリーズ状態に移行させる、請求項1から5のいずれかに記載の超音波診断装置。
前記制御器は、前記記憶された少なくとも2以上の計測対象フレームのうち、所定の条件に合致した計測対象フレームがあった場合、前記記憶された少なくとも2以上の計測対象フレームを破棄する請求項10に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の超音波診断装置およびそれを用いた計測方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明による超音波診断装置の実施の形態1を示すブロック図である。
【0019】
図1に示す超音波診断装置100は、制御器40を備える。この制御器40は、超音波送受信処理部2、断層像処理部3、心拡張末期検出部4、計測対象フレーム選択部5、計測可能領域抽出部6、計測処理部7、制御部8および画像合成部9を含む。本実施の形態では、超音波診断装置100は探触子1を備えておらず、汎用の探触子1が接続可能である。ただし、超音波診断装置100は探触子1を備えていてもよい。
【0020】
超音波送受信処理部2、計測対象フレーム選択部5、制御部8、画像合成部9は、例えば、種々の電子部品等を用いた公知のハードウエアによって実現される。また、断層像処理部3、心拡張末期検出部4、計測可能領域抽出部6、計測処理部7はソフトウエアによって構成してもよいし、ハードウエアによって構成してもよい。ソフトウエアによりこれらを構成する場合には、超音波送受信処理部2によって生成される受信信号はデジタル信号であってもよい。制御部8は、例えば、マイコンなどの演算器とソフトウエア等によって構成される。
【0021】
探触子1は、超音波振動子を有し、超音波振動子を通じて超音波を、計測対象部位を含む被検体に対して送信するとともに、その反射超音波を受信して電気信号に変換する。なお、実施の形態1では、IMTを計測対象として説明を行うため、ここでいう計測対象部位とは、
図16に示したIMT計測範囲30のことを指す。
【0022】
超音波送受信処理部2は、探触子1が脱着可能に構成されている。探触子1の超音波振動子に所定のタイミングで駆動パルスを供給し、探触子が超音波を送信するように駆動する送信処理を行う。また、反射超音波を受信して変換された電気信号を探触子1から受け取り、その電気信号の増幅、検波などの、超音波の断層像の構築などに必要な受信処理を行うことで受信信号を生成する。超音波送受信処理部2は、送信処理を繰り返し連続して行い、逐次受信信号を生成し、生成した受信信号から複数のフレームを生成する。なお、ここでいうフレームとは、1枚の断層像を構築する上で必要な一つのまとまりの受信信号、あるいは、この一つのまとまりの受信信号に基づき構築された1枚の断層像のことを指す。
【0023】
断層像処理部3は、超音波送受信処理部2で生成した受信信号を受け取り、受信信号の座標変換などを行って、超音波画像の二次元画像である断層像をフレームごとに逐次構築する。例えば、
図16に示すような断層画像を逐次構築する。
図16に示すように、超音波ビームをx方向に走査することによって、超音波ビームの進路である音響線(破線で示す)ごとに反射超音波に基づく受信信号が得られ、1フレーム分の断層画像が構成される。
【0024】
心拡張末期検出部4は、超音波送受信処理部2で生成した受信信号から、心拡張末期のタイミングを検出する。具体的には、まず超音波送受信処理部2で生成した受信信号を処理し、計測対象である血管の拍動情報を抽出する。なお、ここでいう血管の拍動情報とは、例えば、血管の内径変化が挙げられる。また、心拡張末期のタイミングとは、心臓の拡張期の最後のタイミング、すなわち、心臓の収縮が始まる直前のタイミングをいう。
【0025】
計測対象フレーム選択部5は、断層像処理部3で生成した複数のフレームの断層像のうち、IMT計測の対象となる少なくとも2つ以上の計測対象フレームを選択する。実施の形態1においては、心拡張末期検出部4で検出された心拡張末期を含み、その前後の所定期間内に含まれる複数のフレームを計測対象フレームとして選択する。
【0026】
計測可能領域抽出部6は、各々の計測対象フレームにおける計測対象部位のうち、十分に計測処理が可能な領域を計測対象フレームごとに抽出する。
【0027】
計測処理部7は、計測可能領域抽出部6で抽出された計測処理が可能な領域を対象に、所定の計測処理を行う。IMT計測の場合は、まず、IMT計測範囲30において、計測対象となる頸動脈20の内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との2種の血管境界を検出し、検出した内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との間の距離をIMT値として算出することで計測処理を行う。IMT値は、IMT計測範囲30における内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との距離の最大値であるmaxIMT、あるいは、平均値であるmeanIMTであってもよく、他の算術結果や統計処理に基づくIMTであってもよい。
【0028】
制御部8は、各ブロックを制御するとともに、計測処理部7の計測結果をIMT計測値として確定する。また、操作者がIMT計測値の結果を確定した断層像を後述する表示器10で確認できるように、IMT計測値として確定した際に自動的にフリーズ状態に移行するように制御することも可能である。なお、ここでいうフリーズ状態とは、超音波診断装置の分野では一般的に超音波の送受信を停止し、画像表示を静止させた状態のことを指す。本実施の形態では、超音波の送受信を停止して画像表示を静止させた状態に加え、送受信の停止と画像表示の静止のいずれか一方だけを行った状態も意味する。
【0029】
画像合成部9は、表示器10が接続可能に構成されており、断層像処理部3で生成した断層像と計測処理部7の計測結果とを、接続された表示器10に表示できるように合成する。
【0030】
表示器10は、画像合成部9に接続され、その画像信号を表示するモニタである。
【0031】
次に、実施の形態1に示す超音波診断装置100の動作について、IMT計測を例に説明する。
図2に示すフローチャートは、実施の形態1の超音波診断装置100の典型的な動作を表している。
【0032】
ステップS101において、超音波送受信処理部2は、超音波信号の送信制御、受信制御を行い、探触子1を駆動することにより超音波を送信する。また、被検体である頸動脈から反射して探触子1で受信した反射超音波を、一般的な超音波診断装置同様に信号処理を行って受信信号を生成し、生成した受信信号から1フレーム分の受信信号を構成する。フレームが構成された受信信号は、断層像処理部3および心拡張末期検出部4に送られる。この操作は異なる時間で複数回行われる。つまり逐次、1フレーム分の受信信号が構成される。
【0033】
次に、ステップS102において、超音波送受信処理部2から送られてきた受信信号は、断層像処理部3によって処理され、異なる時間ごとのフレームに対応した断層像が複数構築される。
【0034】
そして、ステップS103において、心拡張末期検出部4は、超音波送受信処理部2から送られてきた受信信号を解析し、血管の拍動情報を抽出し、心拡張末期のタイミングを検出する。検出したタイミングが心拡張末期ではなかった場合は、再度、ステップS101に戻って超音波の送受信処理を継続する。検出したタイミングが心拡張末期であった場合は、次のステップ(ステップS104)に進む。
【0035】
なお、この心拡張末期は、例えば、日本国特許第4189405号に記載された技術を用いて検出することができる。
図3(a)および(b)を参照しながらこの心拡張末期を検出する技術を具体的に説明する。
【0036】
図3(a)は血管の長軸に沿った断面を模式的に示し、(b)は
図3(a)に示すように、血管の前壁21の計測点Aと後壁22の計測点Bとの間の距離の変化である血管の内径変化波形を示している。血管は、その内部を流れる血液の量や流速に対応して収縮する。心臓の収縮期には血流速度が速くなり血圧が高くなるので、この収縮期における血管の内径(上述の計測点Aと計測点Bとの間の距離)は大きくなるとともに、血管壁の厚さは小さくなる。一方、心臓の拡張期には血流速度が遅くなり血圧が低くなるので、拡張期における血管の内径は小さくなり、血管壁の厚さは大きくなる。すなわち、血管壁の厚さは心拍に同期して変化するため、IMT値も計測するタイミングによって変化する。したがって、血管の内壁は、心臓からの血液の拍出によって時間的に変化し、
図3(b)に示すような脈波状の波形が観測される。
【0037】
具体的に、非特許文献1に記載の心拡張末期を取得するために通常使用されるECGのR波トリガタイミング(
図3(b)の下の波形のピーク部分)を基準に説明する。
図3(b)に示すように、心臓からの血液の拍出によって血管の内壁厚さは変化する。ECGのR波トリガタイミング直後、血管の内径は一旦小さくなり、その後、急激に大きくなり、徐々にもとの径に戻っていく。この内径が急激に大きくなる前の、内径が最も小さくなるときが心拡張末期である。なお、ECGのR波トリガタイミングは、心臓における心拡張末期であるとみなされるが、心臓の拍動が頸動脈に伝わるまでには時差が生じることから、頸動脈における心拡張末期は、心臓における心拡張末期に対してズレが生じる。したがって、本実施の形態では、上述のとおり、血管の内径が急激に大きくなる前の、内径が最も小さくなるときのタイミングを心拡張末期と定義している。IMT値は、血管壁の厚さが最大になったときに計測するが推奨されているため、IMT計測をすべき理想的なタイミングは、心拡張末期となる。
【0038】
以上のことから、
図3(a)に示すように、対象となる血管の前壁21と後壁22とに計測点AおよびBを設定し、受信信号の振幅や位相を解析することで、計測点AおよびBの動きを追跡する。動脈は心拍によって収縮拡張を繰り返していることから、計測点AおよびBの間の距離は、
図3(b)に示す周期的な動きをするので、これを血管の内径変化波形として検出する。そして、内径変化波形から内径が急激に大きくなるタイミングを検出し、この一定時間前のタイミングを心拡張末期とすることができる。
【0039】
なお、実施の形態1においては、簡便にIMT計測の最適なタイミングを検出するため、受信信号を用いた心拡張末期の検出する構成を示した。しかし、通常のECGを用いて心拡張末期を検出する構成であってもよい。この場合、
図1における超音波送受信処理部2から心拡張末期検出部4へ信号を送出する必要はなく、心拡張末期検出部4にはECGが接続される。
【0040】
ステップS103において心拡張末期検出部4が心拡張末期のタイミングを検出した場合、ステップS104において、計測対象フレーム選択部5は、心拡張末期検出部4で検出された心拡張末期のタイミングに基づき、心拡張末期を含み、その前後の所定期間内の複数フレームを、IMT計測に用いる計測対象フレームとして選択する。
【0041】
なお、血管壁の厚さが最大になったときにIMT計測することが推奨されていると上述したが、心拡張末期の前後、特に心拡張末期の前(目安としては100ミリ秒程度だが、これに限定されるものではない。)の期間は血管の収縮が比較的緩やかであるため、IMT値もほとんど変化しない。したがって、この期間のフレームは、厳密には心拡張末期のタイミングで取得されていないが、実用上、十分にIMT計測に使用することができる。また、心拡張末期の前後の期間により計測対象フレームを選択するのではなく、心拡張末期の前後の所定の複数のフレームを、計測対象フレームとして選択してもよい。すなわち、例えば、フレームレートが毎秒30フレームであれば、心拡張末期の前の3フレームを選択するようにすれば、上述の心拡張末期の前の100ミリ秒の間のフレームが選択されることになる。このため、心拡張末期の前の所定数のフレームを選択することと、心拡張末期の前後の期間を決定し、決定した期間に取得されるフレームを選択することとは本質的には差異はない。
【0042】
さらに、検出した心拡張末期より前のフレームを計測対象フレームとするには、必要なフレーム数分だけ断層像をメモリなどにバッファリングしておき、心拡張末期が検出された時点でバッファリングされた断層像を選択するように構成すればよい(
図1では、断層像のバッファリング手段は、省略している。)。
【0043】
IMT値の正確な計測のためには、血管の内腔内膜境界26と中膜外膜境界27とが受信信号上に明瞭に描出されていることが好ましい。このために、ステップS105において、計測可能領域抽出部6は、計測対象フレームから、計測対象部位のうち、計測に使用することができる領域を抽出する。血管壁の厚さを正しく計測するためには、探触子1が血管の短軸断面の中心近傍を捉えていることが好ましい。したがって、計測可能領域抽出部6は、各々の計測対象フレームの計測対象部位のうち、血管の中心近傍を超音波ビームが通ることによって撮影されている領域を抽出する。以下により具体的な説明を行う。
【0044】
図4(a)および(b)は、被検体に配置された探触子と血管の短軸断面との位置関係を示す図である。
【0045】
超音波は組織境界など音響インピーダンスに差異がある境界で反射し、超音波が境界面に垂直にあたるほど強く反射し、明瞭なエコー信号が得られる。したがって、
図4(a)に示すように探触子1が血管の中心近傍を捉えるように探触子1が被検体に当てられているとき(すなわち、波線部で示す超音波の進路が血管の中心近傍を通るとき)、超音波は血管の内腔内膜境界26および中膜外膜境界27に垂直にあたり、両境界で強く明瞭な反射(エコー信号)が得られる。一方、
図4(b)に示すように超音波の進路が血管の中心近傍を通らない場合は、超音波が血管の両境界に垂直にあたらないため、弱く不明瞭な反射(エコー信号)しか得られない。そのため、内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が、ぼやけて分離されずに描出されたり、内腔内膜境界が描出されたりする。
【0046】
したがって、計測対象フレームの計測対象部位のうち、血管の中心近傍を超音波ビームが通ることによって撮影された領域では明瞭なエコー信号が得られ、中心近傍を通らないで撮影された領域では不明瞭なエコー信号が得られる。そのため、不明瞭なエコー信号が得られた領域は計測に使用せず、明瞭なエコー信号が得られた領域を計測に使用することができる領域として抽出する。この処理は、それぞれの計測対象フレームにおいて行われる。
【0047】
より具体的には、計測可能領域抽出部6は、まず、断層像の輝度情報などを基に血管の内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との2種の血管境界を仮検出する。次に、断層像において、
図16に示すように、検出された内腔内膜境界26位置の音響線上において、血管内腔23側から内中膜24側にかけて輝度の立ち上がりが存在するか、検出された中膜外膜境界27位置の音響線において、内中膜24側から外膜側にかけて輝度の立ち上がりが存在するか、および、検出された内腔内膜境界26位置および中膜外膜境界27位置の間の音響線上において輝度の落ち込みがあるかなどを評価する。これにより、血管境界の位置で断層像に内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が明瞭に描出されているか否かを判定する。計測可能領域抽出部6は、この結果に基づき、計測可能領域を決定し、抽出する。
【0048】
なお、上述の2種の境界が明瞭に描出される血管の短軸断面の中心近傍とは、例えば、血管断面の中心から
図4(a)に示す音響線までの距離が0.5mm程度以内をいう。ただし、この値は、被検体や、超音波診断装置の計測精度、計測条件などにも依存するため、厳密に限定されるものではない。
【0049】
さらに具体的な説明を、IMT計測を例に説明する。
【0050】
IMT計測をする場合、IMT計測範囲30として1cmが推奨されるなど、所定の長さを使って計測されることが一般的である。したがって、
図5に示すように1cmのIMT計測範囲30で探触子1が血管の中心近傍を捉えられるように、探触子1を頸動脈20の長軸断面(血管の短軸方向に対する垂直断面)に合わせるように配置する。具体的には、プローブ面の長手方向と頸動脈20の長軸方向とが平行となり、スキャンする超音波ビームによって構成されるスキャン面が頸動脈20の中心軸を含むように探触子1を被検体に対して配置する。
【0051】
図6(a)に示すように頸動脈20の短軸断面の中心近傍31を捉えるように探触子1が頸動脈20の長軸方向に沿って配置された場合、IMT計測範囲30の全範囲において探触子1が頸動脈20の中心近傍31を捉える。これは理想的な状態であるといえる。この場合、断層像には
図6(b)に示すようにIMT計測範囲30の全範囲において内腔内膜境界26と中膜外膜境界27とが明瞭に描出される。したがって、IMT計測範囲30の全範囲でIMTを計測可能であるから、IMT計測範囲30の全範囲が計測可能領域であるとして抽出される。
【0052】
しかしながら、頸動脈20の中心近傍31の範囲に対してIMT計測範囲30は長いため、
図6(a)の示す位置に探触子1を配置するには、十分に訓練を積んだ熟練者でなければ困難である。したがって、通常の操作者が探触子1を配置した場合、例えば、
図7(a)および
図8(a)のようになる。
【0053】
図7(a)は、頸動脈20の長軸方向に対して探触子1が斜めに配置され、IMTの計測範囲30の中央部でのみ探触子1が血管の中心近傍31を捉えた状態を示している。この場合、断層像にはIMT計測範囲30の中央部でのみ内腔内膜境界26と中膜外膜境界27とが明瞭に描出され、端部ではこれらの境界は不明瞭になる。すなわち、
図7(b)に示すように、探触子1が血管の中心近傍31を捉えた部分(内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との実線部分)のみ、境界が明瞭に抽出され、それ以外の部分(内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との破線部分)は、境界が不明瞭になる。したがって、破線部分のIMT計測範囲30の端部では内腔内膜境界26と中膜外膜境界27とが不明瞭でIMTを計測することができない領域とし、実線部分の中央部のみが計測可能領域として抽出される。
【0054】
図8(a)も
図7(a)と同様に頸動脈20の長軸方向に配置された探触子1が頸動脈20の長軸方向に対して斜めに配置され、IMTの計測範囲30の右端部でのみ、探触子1が頸動脈20の中心近傍31を捉えた状態を示している。この場合、
図8(b)に示すように、左端部で内腔内膜境界26と中膜外膜境界27とが描かれていないが、これは探触子1が血管の中心近傍31から大きく外れており、断層像にこれらの境界が描出されないことを表している。この場合は、IMT計測範囲30の右端部(実線部分)がIMT計測範囲30の中央部が計測可能領域として抽出されるが、それ以外の部分はIMT計測に用いることはできない。
【0055】
以上のようにそれぞれの計測対象フレームに対して計測可能領域を抽出した後、ステップS106に進み、計測処理部7においてIMTの計測処理を行う。
【0056】
計測処理部7は、まず、それぞれの計測対象フレームのIMT計測範囲30において、断層像の輝度情報などを基に血管の内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との2種の血管境界を検出する。このとき、断層像に内腔内膜境界26と中膜外膜境界27とが明瞭に描出されている領域、すなわち、計測可能領域に対してこれらの境界の検出処理を行う。あるいは、計測可能領域抽出部6が仮検出した結果のうち、計測可能領域部分の計測結果を計測処理部7へ出力し、計測処理部7がその出力を用いてIMTの測定を行ってもよい。検出した内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との間の距離からIMT値を算出する。
【0057】
計測処理部7は、各計測対象フレームにおいてIMT値を算出した後、それぞれの計測対象フレームにおける計測可能領域を組み合わせ、最終的なIMT値を決定する。この手順を以下に具体的に説明する。
【0058】
図9は、心拡張末期前後の所定の期間内に取得された3つの計測対象フレームにおける、断層像上の内腔内膜境界26および中膜外膜境界27の検出結果を示している。
図9に示す「セグメント番号」は、IMT計測範囲30において、計測可能領域抽出部6が計測可能領域かどうかを判定する基準単位(長さ)であるセグメントの位置あるいは順番として定義される。例えば、IMT計測範囲30の長さが1cmであり、IMT計測範囲30が20のセグメントに分割されている場合、各セグメントの長さは、0.5mmである。セグメントの長さは、用いる探触子1の分解能や求められるIMT測定の精度に応じて決定することができる。
【0059】
図9において、内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が実線で描画されたセグメントは、これらの境界が明瞭に描出されているセグメントであることを表し、計測可能領域抽出部6において、計測可能領域として抽出された領域である。一方、内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が破線で描画されたセグメントは、これらの境界が不明瞭なセグメントであることを表し、描画されていないセグメントは、これらの境界が検出できなかったセグメントを表す。これらのセグメントは、計測可能領域抽出部6において、計測可能領域として抽出されなかった領域である。
図9に示すように、所定の位置に探触子1を配置して異なる時間で複数のフレームを取得しても、計測可能領域となったり非計測可能領域となったりする理由は、頚動脈を含む体内組織の動きや、操作者が探触子1を固定したとしても実際には微妙なブレが生じていたりするからである。
【0060】
図9に示すように、セグメント1〜6については、計測対象フレーム3においてのみ内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が明瞭に描出されている。このため、これらのセグメントの範囲は、計測対象フレーム3の断層像からIMT値を計測する。
【0061】
セグメント7および8については、計測対象フレーム2および3の両方で内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が明瞭に描出されている。このためこれらのセグメントでは、計測対象フレーム2および3の断層像からIMT値を計測する。2つのフレームを組み合わせるには、両フレームのそれぞれで内腔内膜境界および中膜外膜境界の検出IMT値の算出とを行い、セグメントごとにIMT値の平均を求めればよい。あるいは、セグメントごとに内腔内膜境界26および中膜外膜境界27がより明瞭に描出されているフレームを決定し、決定したフレームを用いて、内腔内膜境界26および中膜外膜境界27の検出とIMT値の算出とを行うようにしてもよい。
【0062】
残りのセグメントについても同様に処理が行われる。具体的には、セグメント9〜14については、計測対象フレーム2の断層像からIMT値を算出する。セグメント15については、計測対象フレーム1および2の断層像からIMT値を算出する。セグメント16〜20については、計測対象フレーム1の断層像からIMT値を算出する。
【0063】
このように計測対象フレーム1〜3の3枚のフレームを組み合わせてIMT値を計測することにより、計測対象フレーム1〜3のいずれもIMT計測範囲30の一部しか計測可能領域がないにも関わらず、実質的にはIMT計測範囲30の全範囲でIMT値を計測することが可能となる。セグメントごとにIMT値が計測を、すべてのセグメントにおける最大値を決定すれば、maxIMTが求められる。また、すべてのセグメントの平均値を求めることにより、meanIMTが求められる。
【0064】
なお、
図9では、計測可能領域抽出部6がそれぞれの計測対象フレームにおいて抽出した計測可能領域を組み合わせることにより、計測処理部7が、全範囲のIMT計測範囲30でのIMT値を計測する例を示した。しかしながら、それぞれの計測対象フレームで抽出された計測可能領域を組み合わせたとしても全範囲のIMT計測範囲30でのIMT値を計測することができない場合がある。この場合は、IMT計測範囲30の抽出された計測可能領域だけを用いて、部分的にIMT計測をすればよい。このとき計測可能領域が広い、すなわち計測可能なセグメントが多いほど、計測されるmaxIMTやmeanIMTの正確性が向上する。
【0065】
図7や
図8に示すように、探触子1が頸動脈20の血管の中心近傍31からずれている場合は、本来、IMT計測範囲30の十分な範囲でIMTを計測することができない。よって、そのずれを修正すべく探触子1の位置調整が必要となるが、頸動脈20のように計測対象が細い場合、
図6に示すように、探触子1が血管の中心近傍31を捉えた状態になるように探触子1の位置を調整するには非常に細かな探触子1の移動が必要であり、熟練者でなければ難しい作業である。また、
図6のような状態にできたとしても、その状態で探触子1を保持するのも困難な作業である。
【0066】
しかし、本発明によれば、探触子1を適切に保持できず、探触子1が血管の中心近傍31を捉えている領域(セグメント)が変化したとしても、複数の計測対象フレームを組み合わせることによって計測可能領域がIMT計測範囲30の十分な割合を占める場合には、適切にIMT値を計測することができる。よって、熟練者でなくともIMT値を容易に計測することが可能となる。
【0067】
ここで、IMT計測範囲30のうちの所定の範囲以上でIMT値が計測できたら、ここから求められるmaxIMTやmeanIMTが十分な正確性があると考えて、IMT計測値を確定し、計測を完了するように制御することもできる。以下、この制御について
図2を参照して詳しく説明する。
【0068】
上述したようにステップS106において、IMT計測範囲30の各セグメントにおいて、IMT値を測定したのち、ステップS107において、制御部8が、計測処理部7のIMT計測処理で使われたそれぞれの計測対象フレームの計測可能領域の合計が、IMT計測範囲30のうち、所定の割合を占めるか否かを判定する。この際、所定の割合を満たされなかった場合は、ステップS101に戻って計測を継続する。一方、計測可能領域の合計が所定の割合以上である場合、ステップS108に進み、制御部8がIMT計測値を確定する。また、その際に、装置を自動的にフリーズ状態に移行させることで、操作者がIMT計測値の結果が確定した断層像を表示器10上で確認することができる。
【0069】
IMT計測値を確定するために必要な計測可能領域の合計の割合は、100%としてもよいし(IMT計測範囲30の全領域(例えば1cm)、1より小さい一定の割合であってもよい。この割合を大きくすればIMT値の正確性が向上し、割合を小さくすれば適切な位置から多少ずれていてもIMT計測が可能となるため、操作性が向上する。例えば、割合を、IMT計測範囲30の75%とすれば、計測可能領域が合わせて7.5mm以上であれば、IMT計測値が確定される。上述の1cm幅のIMT計測範囲30を0.5mmずつの20個のセグメントに分割する例では、計測可能なセグメントが15個以上あれば、IMT計測値が確定されることになる。
【0070】
また、より正確性を向上させるために、同一領域における計測可能領域が、所定数以上の計測対象フレームで重複し、その重複した計測可能領域の割合が、IMT計測範囲30のうち、所定の値以上であれば、IMT計測値を確定し、計測を完了するように制御することも可能である。
【0071】
具体的に
図10を用いて説明する。
図10におけるセグメントや、実線や点線の意味するところは、
図9と同じである。ここでは、IMT計測範囲30の75%以上(15個以上のセグメント)において、2以上の計測対象フレームでIMT計測可能な場合、IMT計測値を確定し、計測を完了するものとして説明する。
【0072】
図10に示すように、セグメント1および2では計測対象フレーム3の1フレームのみでIMT計測可能、セグメント3〜7では計測対象フレーム2および3の2フレームでIMT計測可能、セグメント8および9では計測対象フレーム1〜3の3フレーム全てでIMT計測可能、セグメント10〜18では計測対象フレーム1および2の2フレームでIMT計測可能、セグメント19および20では計測対象フレーム1の1フレームのみでIMT計測可能である。結局、2以上の計測対象フレームでIMT計測可能なのは、セグメント3〜18の16個のセグメントであり、これはIMT計測範囲30の75%以上(15個以上のセグメント)である。このため、制御部8はIMT計測値を確定し、計測を完了する。
【0073】
一方、仮に同じ条件(IMT計測範囲30の75%以上で、2以上の計測対象フレームにおけるIMT計測が可能なときに、IMT計測値を確定し計測を完了)を
図9の例に用いる場合、セグメント7、8および15の3個のセグメントにおいてのみ、2以上の計測対象フレームでIMTの計測が可能である。したがって、
図9に示す結果が得られた場合には、IMT計測値を完了せずにステップS101に戻って計測を継続する。
【0074】
このような手順によってIMT計測を行う場合、計測対象フレームのうち一つのフレームでIMT計測可能であればIMT計測値を確定する場合と比べて、より正確な計測値を得ることができる。なお、
図2には図示していないが、画像合成部9で、計測処理部7で計測されたIMT計測値と断層像処理部3で構築された断層像とを合成して、表示器10に出力することによって、診断画像と計測結果を操作者が確認できる。
【0075】
本実施の形態では、頸動脈のIMT計測を例に本発明を説明した。しかし、本発明はこれに限らず、その他の計測にも適用可能である。例えば、大腿動脈におけるIMT計測にも応用可能である。また、腹部大動脈の血管径の計測において、血管の前壁と後壁が明瞭に描出されている領域を計測可能領域として本実施の形態を用いてもよい。さらに、胎児計測などの場合も、例えば大腿骨などの計測部位が明瞭に描出されている領域を計測可能領域として本実施の形態を用いてもよい。
【0076】
(実施の形態2)
図11は、本発明の超音波診断装置の実施の形態2を示すブロック図である。実施の形態1と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付与し、説明を省略する。また、頸動脈のIMT計測を例として本実施の形態を説明する。
【0077】
超音波診断装置101は、制御器41を備える。この制御器41は、超音波送受信処理部2、断層像処理部3、心拡張末期検出部4、計測対象フレーム選択部50、フレーム記録部11、計測可能領域抽出部6、計測処理部7、制御部80および画像合成部9を含む。
【0078】
計測対象フレーム選択部50は、実施の形態1の計測対象フレーム選択部5と同様に、断層像処理部3で生成した複数フレームの断層像のうち、IMT計測の対象となる複数の計測対象フレームを選択する。ただし、実施の形態1の計測対象フレーム選択部5は、心拡張末期検出部4で検出された心拡張末期の前後の所定期間内に含まれる複数のフレームを計測対象フレームとして選択した。これに対し、本実施の形態の計測対象フレーム選択部50は、心拡張末期検出部4で一心周期中に検出されたそれぞれの心拡張末期のタイミングで得られるフレームを計測対象フレームとして選択する。
【0079】
フレーム記録部11は、計測対象フレーム選択部50で選択された心拡張末期のフレームの断層像を記録するとともに、記録済みの複数の断層像を読み出して、計測対象フレームとして計測可能領域抽出部6に受け渡す。
【0080】
制御部80は、実施の形態1の制御部8と同様、各ブロックを制御するとともに、計測処理部7の計測結果をIMT計測値として確定する。また、操作者がIMT計測値の結果を確定した断層像を表示器10で確認できるように、IMT計測値として確定した際に自動的にフリーズ状態に移行するように制御することも可能である。実施の形態1の制御部8と異なる点は、所定の条件に合致した場合に、フレーム記録部11に記録されたフレーム(断層像)を破棄する制御を行う。
【0081】
次に、実施の形態2に示す超音波診断装置101の動作について、IMT計測を例に説明する。
図12に示すフローチャートは、実施の形態2の超音波診断装置101の典型的な動作を表している。
【0082】
探触子1、超音波送受信処理部2、断層像処理部3、心拡張末期検出部4の動作は、実施の形態1と同様であり、
図12に示すステップS201、ステップS202、ステップS203は、それぞれ
図2のステップS101、ステップS102、ステップS103に対応する。
【0083】
ステップS203は、ステップS103と同様、心拡張末期検出部4が検出したタイミングが心拡張末期ではなかった場合は、ステップS201に戻って超音波の送受信処理を継続する。一方、心拡張末期検出部4の検出したタイミングが心拡張末期であった場合は、次のステップS204に進む。
【0084】
ステップS204において、計測対象フレーム選択部50が、心拡張末期検出部4によって検出された各心周期における心拡張末期のタイミングに基づき、心拡張末期のタイミングに対応するフレームの断層像が、IMT計測に用いる計測対象フレームとして選択される。
【0085】
次いで、ステップS209において、フレーム記録部11が、計測対象フレーム選択部50で選択された心拡張末期のフレームの断層像を記録する。そして、フレーム記録部11に記録済みの所定の心拍数分の心拡張末期のフレーム(例えば、所定の心拍数が3心拍である場合は3フレーム)の断層像を読み出して、計測対象フレームとして計測可能領域抽出部6に出力する。
【0086】
ここで、フレーム記録部11に記録済みのフレーム数が、上記の所定のフレーム数(例えば、3フレーム)に満たない場合は、記録済みのフレームだけで計測対象フレームとしてもよいし、
図12には図示していないが、ステップS201に戻って超音波の送受信処理を継続するようにしてもよい。
【0087】
計測可能領域抽出部6および計測処理部7の動作は、実施の形態1と同様であり、ステップS205、S206では、それぞれ実施の形態1のステップS105、S106と同様に処理する。ただし、計測対象フレームは、フレーム記録部11から読み出された複数心拍分の心拡張末期のフレームとなる。
【0088】
ステップS207において、制御部80が、実施の形態1のステップS107の制御部8と同様に処理して、計測処理部7のIMT計測処理で使われた計測対象フレームの計測可能領域の合計が、IMT計測範囲30のうちの所定の領域以上を占めるかどうかを判定する。この条件が満たされた場合は、実施の形態1のステップS108の制御部8と同様に、ステップS208で制御部80がIMT計測値を確定させる。また、このとき装置を自動的にフリーズ状態に移行させるように制御することができることも同様である。
【0089】
ステップS207で所定の条件が満たされなかった場合は、ステップS210において、制御部80は、フレーム記録部11に記録されたフレーム(断層像)を破棄するか否かを判定する。この判定条件としては、例えば、以下のような条件が考えられる。
【0090】
第1に、最新の心拍の計測対象フレームに計測可能領域がまったく存在しないとき、フレーム記録部11に記録されたフレームを破棄するようにできる。計測可能領域がまったく存在しないということは、そこで血管の中心近傍31から探触子1の位置が完全にずれたということであり、計測が途切れたと考えることができる。よって、それ以前のフレームは、以降の計測に使わないように破棄する。
【0091】
第2に、操作者によって所定の操作がなされ、その操作イベントを制御部80が受け付けたときに、フレーム記録部11に記録されたフレームを破棄するようにできる(操作部および操作部から制御部80へのパスは
図11では省略)。所定の操作としては、計測領域の変更や、超音波送受信処理部2における超音波の送受信に関するパラメータ(例えば、走査線密度、並列受信の有無または並列受信数、送信周波数、送信パワー、送信間隔)の変更、断層像処理部3における断層像構築に関するパラメータ(ゲイン、ダイナミックレンジ、フィルタ処理の有無または特性)の変更などがある。これらの変更があった場合はそれ以前と計測条件が変わったということなので、それ以前のフレームは、以降の計測に使わないように破棄する。
【0092】
第3に、探触子1が操作者によって大きく動かされたことを検知したら、フレーム記録部11に記録されたフレームを破棄するようにできる(探触子1の移動の検知部および検知部から制御部80へのパスは
図11では省略)。探触子1の移動を検知する手段としては、断層像の変化から判定する方法や、探触子1に角度センサなどのセンサを設ける方法などがある。探触子1が大きく動いたということは、それ以前と計測部位が異なるということなので、それ以前のフレームは、以降の計測に使わないように破棄する。
【0093】
以上のような条件に合致する場合には、ステップS211で、フレーム記録部11に記録済みのフレームを破棄する。そして、ステップS210で条件に合致する場合、しない場合ともに、ステップS201に戻って計測を継続する。
【0094】
図13を用いて上述の手順をより具体的に説明する。
図13は、計測対象フレームとして選択された6心拍分の心拡張末期のフレーム(心拡張末期フレーム1〜6)の、各断層像における内腔内膜境界と中膜外膜境界の描出結果の一例を示している。ここでは、説明を容易にするため、心拡張末期フレーム1より前のフレームは考慮しないこととする。
図13におけるセグメントや、実線や点線の意味するところは、実施の形態1における
図9と同じである。ステップS207における判定条件は、計測対象フレームのうちいずれかのフレームで、IMT計測範囲30の全範囲(20個すべてのセグメント)でIMT計測可能なときにIMT計測値を確定し、計測を完了するものとする。
【0095】
まず、最初の心拍の心拡張末期では、計測対象フレーム選択部50が心拡張末期フレーム1を選択し、フレーム記録部11にそのフレームのデータが記録される。そして、フレーム記録部11から心拡張末期フレーム1が読み出されて、計測可能領域抽出部6に出力される。計測可能領域抽出部6は、セグメント10〜20を計測可能領域として抽出し、計測処理部7は抽出された計測可能領域のセグメントを用いてIMTを計測する。次いで、制御部80は、計測可能領域が所定の割合以上かどうか判定する。心拡張末期フレーム1だけでは11個のセグメントでのみIMT計測可能であるため、まだIMT計測値は確定されない。
【0096】
次に、2心拍目の心拡張末期では、計測対象フレーム選択部50が心拡張末期フレーム2を選択し、フレーム記録部11にそのフレームのデータが記録される。そして、フレーム記録部11から心拡張末期フレーム1および2が読み出されて、計測可能領域抽出部6に出力される。最初の心拍と同様に、計測可能領域抽出部6および計測処理部7は上述した動作を実行し、制御部80は、計測可能領域が所定の割合以上かどうか判定する。心拡張末期フレーム1および2を組み合わせてもセグメント8〜20の13個のセグメントでのみIMT計測可能なので、まだIMT計測値は確定されない。
【0097】
3心拍目の心拡張末期でも同様に、計測対象フレーム選択部50が心拡張末期フレーム3を選択し、フレーム記録部11にフレームデータが記録される。そして、フレーム記録部11から心拡張末期フレーム1〜3が読み出される。計測可能領域抽出部6および計測処理部7は上述した動作を実行する。
図13に示すように、心拡張末期フレーム3には、計測可能なセグメントが一つも存在しない。このため制御部80は、上述したようにフレーム記録部11に記録済みのフレームを破棄する条件に合致すると判定し、フレーム記録部11に、心拡張末期フレーム1〜3のデータを破棄するように指示する。その結果、心拡張末期フレーム1〜3を組み合わせても、まだIMT計測値は確定されず、計測を繰り返す(ステップS210、S211、S201)。
【0098】
4心拍目の心拡張末期では、計測対象フレーム選択部50が心拡張末期フレーム4を選択し、フレーム記録部11にそのフレームデータが記録される。フレーム記録部11において以前のフレームは破棄されているので、フレーム記録部11から心拡張末期フレーム4のみが読み出される。以下、同様の処理が行われ、制御部80は、計測可能領域が所定の割合以上かどうか判定する。心拡張末期フレーム4でセグメント15〜20の6個のセグメントでのみIMT計測可能なので、制御部80は、まだIMT計測値を確定しない。
【0099】
5心拍目の心拡張末期でも同様に、計測対象フレーム選択部50が心拡張末期フレーム5を選択し、フレーム記録部11にそのフレームデータが記録される。そして、フレーム記録部11から心拡張末期フレーム4および5が読み出される。心拡張末期フレーム4および5を組み合わせてもセグメント7〜20の14個のセグメントでのみIMT計測可能なので、制御部80は、まだIMT計測値を確定しない。
【0100】
6心拍目の心拡張末期では、計測対象フレーム選択部50が心拡張末期フレーム6を選択し、フレーム記録部11にそのフレームデータが記録される。そして、フレーム記録部11から心拡張末期フレーム4〜6が読み出される。計測可能領域抽出部6および計測処理部7が上述した動作を実行しIMT値が計測される。心拡張末期フレーム4〜6を組み合わせるとセグメント1〜20のすべてでIMT計測可能となるので、制御部80は計測可能領域が所定割合以上であると判定し、計測処理部7で計測されたIMT値をIMT計測値として確定する、これにより、計測が完了する。このとき、実施の形態1と同じく、装置を自動的にフリーズ状態に移行させるように制御することもできる。
【0101】
以上、説明したように本実施の形態によれば、1つの心拍の心拡張末期のフレームにおける計測可能領域がIMT計測範囲30の十分な割合を占めていなくても、複数の心拍の心拡張末期のフレームを組み合わせることによって計測可能領域がIMT計測範囲30の十分な範囲を満たせば、適切にIMTを計測することができる。よって、IMTを容易に計測することが可能となる。
【0102】
なお、本実施形態の計測対象フレーム選択部50は、実施の形態1の計測対象フレーム選択部5のように、心拡張末期の前後の複数のフレーム(例えば、3フレーム)を計測対象フレームを選択してもよい。この場合、フレーム記録部11は選択された3フレームを一度に記録する。計測可能領域抽出部6、計測処理部7および制御部8は、1心拍あたり3つの計測対象フレームを用いて上述の処理を行う。
【0103】
また、この場合、制御部80は、1心拍の3つの計測対象フレームのうち、いずれのフレームにも計測可能領域がまったく存在しないとき、フレーム記録部11に記録されたフレームを破棄するように判定してもよい。あるいは、1心拍の3つの計測対象フレームのうち、少なくとも1つまたは2つのフレームに計測可能領域がまったく存在しないとき、フレーム記録部11に記録されたフレームを破棄するように判定してもよい。
【0104】
本実施の形態の超音波診断装置は、実施の形態1と同様、頸動脈のIMT計測以外の様々な計測に用いることができる。
【0105】
(実施の形態3)
図14は、本発明による超音波診断装置の実施の形態3を示すブロック図である。実施の形態1と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付与し、説明を省略する。また、実施の形態3においても、IMT計測を例に説明する。
【0106】
実施の形態1は断層像からIMT計測を行っていたが、本実施の形態は受信信号からIMT計測を行う点が実施の形態1と異なる。また、本実施の形態では、受信信号そのものからIMT計測を行うが、受信信号から生成する断層像を構築するための情報(例えば、輝度情報)からIMT計測を行う構成であっても良い。
【0107】
超音波診断装置102は、制御器42を備える。この制御器42は、超音波送受信処理部2、断層像処理部3、心拡張末期検出部4、計測対象フレーム選択部51、計測可能領域抽出部61、計測処理部71、制御部81および画像合成部9を含む。
【0108】
超音波送受信処理部2は、生成した受信信号を、断層像処理部3および心拡張末期検出部4に加えて、計測対象フレーム選択部51に出力する。
【0109】
計測対象フレーム選択部51は、超音波送受信処理部2で生成した複数のフレームの受信信号のうち、IMT計測の対象となる少なくとも2つ以上の計測対象フレームを選択する。本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、心拡張末期検出部4で検出された心拡張末期を含み、その前後の所定期間内に含まれる複数のフレームを計測対象フレームとして選択する。
【0110】
計測可能領域抽出部61は、実施の形態1の計測可能領域抽出部6と同様に、各々の計測対象フレームにおける計測対象部位のうち、十分に計測処理が可能な領域を計測対象フレームごとに抽出する。ただし扱うフレームのデータは断層像の輝度情報ではなく、受信信号そのものである。このため、抽出される計測可能領域は、断層像上の領域ではなく、フレームを構成する受信信号群のうち計測処理が可能な部分である。
【0111】
計測処理部71は、実施の形態1の計測処理部7と同様に、計測可能領域抽出部61で抽出された計測処理が可能な領域を対象に、所定の計測処理を行う。ただし各フレームのデータは断層像の輝度情報ではなく、受信信号そのものを用いて計測処理を行う。
【0112】
計測可能領域抽出部61および計測処理部71は、断層像の輝度情報の代わりにフレームを構成する受信信号の振幅情報を用い、上述した処理を行う。これにより、それぞれ実施の形態1の計測可能領域抽出部6および計測処理部7と同様の処理が行われる。具体的には、計測可能領域の抽出処理において、断層像に内腔内膜境界26および中膜外膜境界27が明瞭に描出されているか否かを判定する代わりに、受信信号上に内腔内膜境界26および中膜外膜境界27に対応する振幅の変化が明瞭に現れているかが判断される。また、IMT計測処理において、受信信号の振幅情報に基づいて、計測可能領域すなわちフレームを構成する受信信号群のうち計測処理が可能な部分から、血管の内腔内膜境界26と中膜外膜境界27との2種の血管境界が検出される。
【0113】
制御部81は、実施の形態1の制御部8と同様、各ブロックを制御するとともに、計測処理部71の計測結果をIMT計測値として確定する。また、操作者がIMT計測値の結果を確定した断層像を表示器10で確認できるように、IMT計測値として確定した際に自動的にフリーズ状態に移行するように制御することも可能である。
【0114】
実施の形態3に示す超音波診断装置102の動作は、上述の断層像の輝度情報の代わりにフレームを構成する受信信号の振幅情報を用いること以外、実施の形態1の
図2に示すフローチャートを参照して説明した動作と同じである。
【0115】
本実施の形態によれば、断層像ではなく受信信号の振幅情報を用いて計測可能領域の抽出や計測処理を行う。このため、実施の形態1と異なり、断層像を構築する際の設定やパラメータに依存せずに処理することができる。
【0116】
なお、実施の形態1と同様、本実施の形態の超音波診断装置は、頸動脈のIMT計測以外の様々な計測に用いることができる。
【0117】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4における超音波診断装置のブロック図である。実施の形態1〜3と同じ機能を有するブロックには同じ番号を付与し、説明を省略する。また、本実施の形態においても、頸動脈のIMT計測を例に説明する。
【0118】
実施の形態2は断層像からIMT計測を行う構成であるのに対し、本実施の形態は、受信信号からIMT計測を行う点で実施の形態1と異なる。また、本実施の形態では、受信信号そのものからIMT計測を行うが、実施の形態3と同じく、受信信号から生成する断層像を構築するための情報(例えば、輝度情報)からIMT計測を行う構成であっても良いことはいうまでもない。
【0119】
超音波診断装置103は、制御器43を備える。この制御器43は、超音波送受信処理部2、断層像処理部3、心拡張末期検出部4、計測対象フレーム選択部52、計測可能領域抽出部61、計測処理部71、制御部82および画像合成部9を含む。
【0120】
超音波送受信処理部2は、生成した受信信号を、断層像処理部3および心拡張末期検出部4に加えて、計測対象フレーム選択部52に出力する。
【0121】
計測対象フレーム選択部52は、超音波送受信処理部2で生成した複数のフレームの受信信号のうち、IMT計測の対象となる2つ以上の計測対象フレームを選択する。本実施の形態においては、実施の形態2と同様に、心拡張末期検出部4で検出された心拡張末期のタイミングのフレームを計測対象フレームとして選択する。
【0122】
フレーム記録部12は、計測対象フレーム選択部52で選択された心拡張末期のフレームの受信信号を記録するとともに、記録済みの複数のフレームの受信信号を読み出して、計測対象フレームとして計測可能領域抽出部61に出力する。フレーム記録部12の動作は、断層像の輝度情報の代わりにフレームを構成する受信信号を記録すること以外、実施の形態2のフレーム記録部11と同様である。
【0123】
計測可能領域抽出部61および計測処理部71の動作は、実施の形態3と同様である。
【0124】
制御部82は、実施の形態2の制御部80と同様、各ブロックを制御するとともに、計測処理部71の計測結果をIMT計測値として確定する。また、所定の条件に合致した場合に、フレーム記録部12に記録されたフレーム(受信信号)を破棄する制御を行う。操作者がIMT計測値の結果を確定した断層像を表示器10で確認できるように、IMT計測値として確定した際に自動的にフリーズ状態に移行するように制御することも可能である。
【0125】
実施の形態4に示す超音波診断装置103の動作は、上述の断層像の輝度情報の代わりにフレームを構成する受信信号の振幅情報を用いること以外、実施の形態2の
図12に示すフローチャートを用いて説明した動作と同様である。
【0126】
本実施の形態によれば、断層像ではなく受信信号の振幅情報を用いて計測可能領域の抽出や計測処理を行う。このため、実施の形態2と異なり、断層像を構築する際の設定やパラメータに依存せずに処理することができる。
【0127】
なお、実施の形態1と同様、本実施の形態の超音波診断装置は、頸動脈のIMT計測以外の様々な計測に用いることができる。
【0128】
このように、実施の形態1〜4の超音波診断装置によれば、熟練者でなくても、簡便で正確にIMTの計測や、血管径の計測、胎児の計測等、被験者の体内の種々の部位の計測を行うことができる。
【0129】
また、本実施の形態1〜4によれば、複数の時間で取得した複数のフレームの受信信号または断層像に基づき、それぞれの計測可能領域を抽出し、それを組み合わせることで計測処理を行うので、3Dプローブや4Dプローブといった複雑なプローブを用いなくても、上述の計測を行うことが可能である。つまり、一般的な簡易なプローブである、一次元方向に振動子を配列したアレイプローブを用いても正確な計測が実現できる。