(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンテンツを表示させる表示パネルと、ユーザによってタッチされた位置を検出するタッチセンサと、前記タッチセンサによって検出された位置に応じて前記コンテンツに含まれるオブジェクトを変化させる情報処理部と、前記コンテンツに応じて前記ユーザに対して触力覚を提示可能な触力覚提示装置とを備え、
前記触力覚提示装置は、
パネル状の触力覚提示部材と、
前記触力覚提示部材を保持するための複数のワイヤと、
前記複数のワイヤ毎に設けられ、且つ、対応するワイヤを引張するワイヤ引張部と、
前記ワイヤ引張部それぞれを制御して、前記触力覚提示部材を前記表示パネルの前面に沿って移動させ、それによって前記触力覚を発生させる、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ユーザが前記触力覚提示部材をタッチし、前記タッチセンサによって検出された位置に応じて、前記情報処理部が前記コンテンツに含まれるオブジェクトを変化させた場合に、
前記オブジェクトの変化に応じた前記触力覚を発生させることができるように、且つ、前記ワイヤ引張部それぞれの引張力が最適化されるように、各引張力を算出し、算出した各引張力に基づいて、前記ワイヤ引張部それぞれを制御する、
ことを特徴とする情報端末。
前記情報処理部が、前記オブジェクトを変化させた場合に、前記オブジェクトに仮想空間内で発生した力の大きさとその方向とを検出し、検出した前記大きさと前記方向とを特定するデータを前記制御部に出力し、
前記制御部が、前記データに基づいて、前記各引張力を算出する、
請求項7に記載の情報端末。
パネル状の触力覚提示部材と、前記触力覚提示部材を保持するための複数のワイヤと、前記複数のワイヤ毎に設けられ、且つ、対応するワイヤを引張するワイヤ引張部と、コンピュータとを備え、表示パネルに表示されたコンテンツに応じてユーザに対して触力覚を提示する装置において、
前記コンピュータに、
(X)前記ユーザが前記触力覚提示部材をタッチし、それによって前記コンテンツに含まれるオブジェクトに変化が生じた場合に、
前記触力覚提示部材を前記表示パネルの前面に沿って移動させて、前記オブジェクトの変化に応じた前記触力覚を発生させることができるように、且つ、前記ワイヤ引張部それぞれの引張力が最適化されるように、各引張力を算出する、ステップと、
(Y)算出した各引張力に基づいて、前記ワイヤ引張部それぞれを制御する、ステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における、触力覚提示装置、情報端末、触力覚提示方法、及びプログラムについて、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0019】
[装置構成]
最初に、
図1及び
図2を用いて、本実施の形態1における触力覚提示装置及び情報端末の構成を説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における情報端末の外観を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態1における情報端末の各構成部品を示す分解斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態1における情報端末100は、タブレット型の情報端末である。また、
図2に示すように、情報端末100は、コンテンツを表示させる表示パネル20と、ユーザによってタッチされた位置(以下「タッチ位置」と表記する。)を検出するタッチセンサ30と、検出されたタッチ位置に応じてコンテンツに含まれるオブジェクトを変化させる情報処理部40とを備えている。
【0021】
この構成により、
図1に示すように、ユーザ70が、タッチによって情報端末100に操作入力を行なうと、情報端末100においては、タッチセンサ30によってタッチ位置が検出され、検出された位置が情報処理部40に通知される。そして、情報処理部40は、ユーザの操作入力に応じて各種情報処理を実行し、表示パネル20の表示画面20a上に種々のコンテンツを表示する。
【0022】
また、
図2及び
図3に示すように、情報端末100は、ユーザ70(
図1参照)に対して触力覚を提示する触力覚提示装置10を備えている。触力覚提示装置10は、ユーザ70に触力覚を提示するための触力覚提示部材11と、複数のワイヤ12と、ワイヤ引張部13と、制御部14とを備えている。
【0023】
触力覚提示部材11は、コンテンツを表示させる表示パネル20の前面側に配置されており、パネル状を呈している。また、ワイヤ12は、触力覚提示部材11を保持している。ワイヤ引張部13は、ワイヤ12毎に設けられており、対応するワイヤを引張する。
【0024】
制御部14は、ワイヤ引張部13それぞれを制御して、触力覚提示部材11を表示パネル20の前面に沿って移動させ、それによって触力覚を発生させる。具体的には、制御部14は、ユーザ70が触力覚提示部材11をタッチし、それによってコンテンツに含まれるオブジェクトに変化が生じた場合に、ワイヤ引張部それぞれの引張力を算出し、算出した各引張力に基づいて、ワイヤ引張部13それぞれを制御する。また、制御部14は、その際、オブジェクトの変化に応じた触力覚を発生させることができ、且つワイヤ引張部それぞれの引張力が最適化されるように、各引張力を算出する。
【0025】
このように、触力覚提示装置10は、ユーザ70の指のタッチ位置と表示パネル20に映し出されたコンテンツの動きに連動して、表示パネル20の前面側にある触力覚提示部材11を水平に移動させる。よって、ユーザ70は、実際に仮想物体(仮想空間内のオブジェクト)を触っているかのような感触を感じることができる。
【0026】
図1の例では、表示パネル20に表示された仮想の球に、ユーザ70の指が接触している。これにより、仮想の球と指との位置関係、及び仮想の球の動作状態(スピード、重さ)に応じて、ユーザ70は、指先に、触力覚提示部材11によって、仮想の球からの反発力及び感触を感じることができる。なお、本発明でいう「触力覚」とは、ユーザが感じる、反発力、抵抗力、外力、感触、等を意味する。
【0027】
また、触力覚提示装置10では、触力覚を簡単な構成で提示できることから、装置全体の小型化及び軽量化を促進できる。また、触力覚提示部材11の移動方向の自由度は高く、触力覚の表現力を高めることもできる。
【0028】
ここで、本実施の形態1における情報端末100及び触力覚提示装置10の構成について、
図1及び
図2に加えて、
図3を用いて更に具体的に説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、
図1及び
図2に示した情報端末のワイヤ引張部の具体的な構成を示す図である。また、
図3(a)は平面図であり、
図3(b)は側面図である。
【0029】
図2に示すように、情報端末100は、大きく分けて4つの層によって構成されている。最もユーザ側の層を第1層として以下に説明する。まず、第1層は、カバー50と、タッチセンサ30とを備えている。カバー50は、後述する第4層を構成する筐体60に取り付けられる。また、カバー50は、タッチセンサ30を保持すると共に、タッチセンサ30といった情報端末100の内部構成をユーザから見えないようにする役目も果たしている。
【0030】
タッチセンサ30は、本実施の形態1では、複数の発光素子と、それぞれに対応する受光素子とを備えた光学式のタッチセンサである。具体的には、タッチセンサ30は、枠状のフレーム30aと、対向する2辺のうちの一方の辺に平行に配置された複数の発光素子30bと、他方の辺に平行に配置された複数の受光素子30cとを備えている。
【0031】
更に、発光素子30bの一部は、画面の垂直方向に沿って光を照射可能に配置され、残りは画面の水平方向に沿って光を照射可能に配置されている。このため、触力覚提示部材11の面上をなぞるユーザ70の指によって、照射されている光の一部が遮断されると遮断された部分がタッチ位置として検出される。そして、タッチセンサ30は、検出したタッチ位置を特定するデータ(以下、「タッチ検出データa」と表記する。)を情報処理部40に出力する(
図4参照)。
【0032】
また、本実施の形態1において、タッチセンサ30は、光学式のタッチセンサに限定されず、静電容量式又は感圧式のタッチパネルセンサであっても良い。なお、タッチセンサ30としてタッチパネルセンサを用いる場合は、タッチセンサ30は、後述する第2層の触力覚提示部材11と表示パネル2との間に配置される。
【0033】
第2層は、触力覚提示部材11と、ワイヤ12とを備えている。本実施の形態1において、触力覚提示部材11は、アクリル樹脂等の透明な樹脂によって形成された矩形の板である。また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、触力覚提示部材11の第3層側の面には、断面が半円形を呈する凸部11a及び11bが、各辺に沿って伸びるように形成されている。凸部11a及び凸部11bの機能については後述する。
【0034】
また、本実施の形態1では、4本のワイヤ12が用いられており、各ワイヤ12は、触力覚提示部材11の角付近に、そこに設けられた貫通孔11cを介して、取り付けられている。この構成により、触力覚提示部材11は4本のワイヤ12によって四方に引張され、引張力のバランスにより、任意の水平面方向へ移動し、触力覚を提示することができる。
【0035】
また、上述したカバー50は、各ワイヤ12がユーザ70から見えないようにも形成されているので、表示パネル20に表示された画像がワイヤ12で隠されている状態が見えてしまわないようになっている。また、ワイヤ12にユーザが触れてしまい、それによって装置が故障するといった事態も回避される。
【0036】
第3層は、支持パネル23と、表示パネル20とを備えている。本実施の形態1では、表示パネル20としては、液晶表示パネルが用いられているが、これに限定されず、薄型の表示パネルであれば表示方式は特に限定されるものではない。
【0037】
支持パネル23は、アクリル樹脂等の透明な樹脂によって、表示パネル20を覆うように形成された矩形の板である。また、支持パネル23は、触力覚提示部材11と表示パネル20との間に配置され、触力覚提示部材11の支持と表示パネル20の保護とを行なっている。
【0038】
また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、支持パネル23と触力覚提示部材11との間には、凸部11a及び11bによって空間が設けられ、ワイヤ12は、この空間を介してワイヤ引張部13へと導かれる。更に、上述したように、凸部11a及び11bの断面は半円形を呈し、凸部11a及び11bは支持パネル23に線で接触するので、触力覚提示部材11の移動によって、支持パネルの表面が傷つくのが防止される。
【0039】
第4層は、ワイヤ引張部13と、制御部14と、情報処理部40と、これらを収納する筐体60とを備えている。このうち、制御部14及び情報処理部40は、それぞれ、マイコン等のコンピュータによって実現されている。また、両者は、それぞれ別々のコンピュータによって実現されていても良いし、同一のコンピュータによって実現されていても良い。
【0040】
また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、本実施の形態1では、各ワイヤ引張部13は、アクチュエータとして機能するモータ13aと、ワイヤ12の巻取り用のプーリ13bと、張力方向変換プーリ13cとを備えている。この構成により、モータ13aによる回転力が、引張力として、ワイヤ12を介して触力覚提示部材11に伝達され、この結果、触力覚提示部材11が引っ張られて、ユーザ70に触力覚が提示される。
【0041】
具体的には、まず、モータ13aの回転力は、ワイヤ1
2を巻き取るプーリ13bにより、筐体60の側面に沿った直線方向の引張力に変換される。次に、筐体60の四隅に配置された張力方向変換プーリ13cにより、引張力は、筐体の側面に沿った直線方向から、触力覚提示部材11の貫通孔11cから筐体60の隅へと向かう方向へと変換される。よって、モータ13aが起動すると、発生した引張力により、触力覚提示部材11は、張力方向変換プーリ13cに向けて引っ張られる。
【0042】
本実施の形態1では、このように、ワイヤ12を用いた伝達機構によって、触力覚提示部材11を移動させることができる。そして、このような伝達機構は、軽量な部品で構成でき、しかも単純な構成とできるので、上述したように、装置全体の小型化及び軽量化を促進できる。更に、ワイヤ12が用いられるため、動力源となるモータ13aの配置についての制約が小さく、設計の自由度が高められる。
【0043】
また、ワイヤ引張部13では、触力覚提示部材11から張力方向変換プーリ13cに向かう引張力の方向は、一方向に固定されておらず、可変可能である。更に、各ワイヤ12の長さも可変可能である。このため、上述したように、触力覚提示部材11の移動方向の自由度は高くなり、触力覚の表現力が高められることになる。なお、本明細書では、「ワイヤ12の長さ」とは、貫通孔11cから巻取り用のプーリ13bに接触するまでの長さを意味する。
【0044】
また、本実施の形態1においては、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、各モータ13aには、モータ
13aの回転数を検出するためのセンサ15が設けられている。センサ15は、検出した回転数を特定するデータを制御部14(
図2参照)に出力する。なお、センサ15の具体例としては、光学式のロータリエンコーダが挙げられる。
【0045】
ところで、モータ13aの回転数が分かれば、プーリ13bの周長が既知であることから、ワイヤ12の長さも分かる。そして、各ワイヤ12は弛んでいないとすると、各ワイヤ12の長さが分かれば、これらから、触力覚提示部材11の位置を特定することが可能となる。このため、後述するように、制御部14は、センサ15が出力したデータ(以下「位置検出データc」と表記する。)に基づいて、触力
覚提示部材11の位置を特定する。
【0046】
続いて、
図4を用いて、情報端末100でやり取りされるデータについて説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における情報端末の構成を示すブロック図である。
【0047】
図4に示すように、情報処理部40は、表示パネル20、タッチセンサ30、及び制御部14に接続されている。また、制御部14は、情報処理部40に加えて、ワイヤ引張部13を構成するモータ13aと、センサ15とに接続されている。
【0048】
この構成では、ユーザ70(
図1参照)がディスプレイの前面側に配置された触力覚提示部材1
1をタッチすると、タッチセンサ30は、ユーザの指のタッチ位置を検出し、タッチ位置を特定するタッチ検出データaを情報処理部40に出力する。
【0049】
情報処理部40は、タッチ検出データaを受け取ると、コンテンツデータ41を参照し、タッチ位置とコンテンツ内のオブジェクトの動きとを連動させる処理を行ない、その処理内容が反映されたコンテンツの表示情報を表示データeとして表示パネル20に出力する。
【0050】
コンテンツデータ41の具体例としては、ゲームプログラム、シミュレーションプログラムなどの、仮想空間を提供するアプリケーションプログラムのデータ、更にはWebサイトのデータが挙げられる。また、コンテンツデータ41は、情報端末100に備えられた記憶装置に格納されていても良いし、インターネットで接続された別の機器(コンピュータ)に格納されていても良い。
【0051】
また、このとき、情報処理部40は、オブジェクトに仮想空間内で発生した力を算出し、算出した力を特定するデータb(以下「提示データb」と表記する。)を、制御部14に出力する。この算出された力は、オブジェクトに発生した反発力等であり、ユーザに伝達すべき触力覚に相当する。
【0052】
制御部14は、提示データbを受け取ると、各センサ15から出力されてきた位置検出データcを用いて、提示データbによって特定される触力覚がユーザ70に伝達されるように、各ワイヤ引張部13が出力すべき引張力を計算する。
【0053】
そして、制御部14は、各モータ13aに引張力を発揮させる制御データdを生成し、これを各モータ13aに出力する。具体的には、制御部14は、電源回路(図示せず)を用いて、モータ13aを駆動するためのパルス信号を生成し、これを制御データdとして出力する。これにより、各モータ13aは、計算された引張力で触力覚提示部材11を引っ張り、ユーザ70の指先には、提示データbによって特定される触力覚が提示される。
【0054】
[動作]
次に、本発明の実施の形態1における情報端末100及び触力覚提示装置10の動作について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の実施の形態1における情報端末100の動作示すフロー図である。なお、以下の説明においては、適宜
図1〜
図4を参酌する。また、本実施の形態1では、触力覚提示装置10を動作させることによって、触力覚提示方法が実施される。よって、本実施の形態1における触力覚提示方法の説明は、以下の触力覚提示装置10の動作説明に代える。
【0055】
最初に、ユーザ70は、触力覚提示部材11越しに、表示パネル20に表示されたコンテンツを視認し、そして、コンテンツが提供する仮想空間内でオブジェクトを操作するため、触力覚提示部材11(
図1及び
図2参照)をタッチする。これにより、
図5に示すように、タッチセンサ30は、ユーザ70によるタッチ位置を検出し、検出したタッチ位置を特定するタッチ検出データaを、情報処理部40に出力する(ステップS101)。
【0056】
次に、情報処理部40は、ステップS101で出力されたタッチ検出データaを受け取ると、コンテンツデータ41を参照し、タッチしている位置に合わせてオブジェクトを変化させる処理(コンテンツ連動処理)を実行する(ステップS102)。
【0057】
また、ステップS102では、情報処理部40は、コンテンツ連動処理の内容が反映されたコンテンツの表示情報を、表示データeとして表示パネル20に出力する。更に、ステップS102では、情報処理部40は、オブジェクトに仮想空間内で発生した力を算出し、算出した力を特定する提示データbを、制御部14に出力する。
【0058】
次に、触力覚提示装置10において、制御部14は、各モータ13aに設けられた各センサ15が出力した位置検出データcを取得すると、取得した位置検出データcを用いて、触力覚提示部材11の位置を検出する(ステップS103)。
【0059】
次に、制御部14は、ステップS102で出力された提示データbを受け取ると、これと、ステップS103で検出した触力覚提示部材11の位置とに基づいて、各ワイヤ引張部13が出力すべき引張力を計算する(ステップS104)。また、ステップS104では、更に、制御部14は、各モータ13aが計算した引張力を発生するように制御データdを生成し、これを各モータ13aに出力する。
【0060】
ステップS104が実行されると、触力覚提示装置10は、ユーザ70の指先に、触力覚を提示する(ステップS105)。また、表示パネル20の表示画面20aには、ステップS102で情報処理部40が出力した表示データeに基づいて、コンテンツ連動処理後のコンテンツが表示される(ステップS106)。なお、ステップS105とステップS106とは、同時に実行されても良い。
【0061】
また、本実施の形態1においては、ステップS101〜S106は、繰り返し実行される。よって、ユーザ70が、ある点から別の点までをドラッグ操作した場合は、ドラッグの開始から終了までの間に、ステップS101〜S106は繰り返し実行されるので、その間、ユーザ70は、連続して、触力覚の提示を受けることができる。
【0062】
ここで、
図5に示したステップS101〜ステップS106までの各ステップについて、
図6〜
図8を用いて更に詳細に説明する。
【0063】
[ステップS101及びS102]
まず、
図6を用いて、ステップS101及びS102について具体的に説明する。
図6は、本発明の実施の形態1において用いられるコンテンツの一例を示す図である。
図6の例では、コンテンツはエアホッケーゲームであり、ユーザ70は、指先のタッチによって、仮想空間内に存在している仮想マレット21を操作して、仮想パック22を打撃する。
【0064】
まず、ユーザ70が、触力覚提示部材11をタッチすると、タッチセンサ30は、ステップS101を実行し、タッチ位置を特定するタッチ検出データaを、情報処理部40に出力する。
【0065】
そして、ステップS102において、情報処理部40は、コンテンツ連動処理を実行して、実空間内での動作である指の動きと仮想空間内の仮想マレット21及び仮想パック22の動きとを連動させる。
【0066】
具体的には、情報処理部40は、ユーザ70の指の動きに追従して、仮想のマレット21を動かして、仮想空間内の仮想オブジェクトと実空間の物体(ユーザ70の指)とのインタラクション(相互作用)を取る。このとき、情報処理部40は、仮想空間内の物理シミュレーターを用いて、仮想マレット21と仮想パック22とが接触した際の位置の変化及び接触力をシミュレートする。
【0067】
また、情報処理部40は、タッチ検出データaを受け取ると、指定されたタッチ位置に仮想マレット21を移動させるが、このとき、仮想マレット21をタッチ位置に不連続に移動させると、仮想オブジェクト同士が互いに重複してしまう可能性がある。この場合、正確なシミュレートが困難となる。
【0068】
そのため、情報処理部40は、仮想マレット21からタッチ位置までの距離と仮想マレット21の速度とに比例した力を仮想マレット21に加えていくPD(Proportional-Deferential)制御を実行しながら、仮想マレット21を移動させる。そして、情報処理部40は、仮想マレット21と仮想パック22とが接触すると、仮想マレット21及び仮想パック22の仮想空間での物理係数に応じて、仮想マレット21と仮想パック22との接触で両者に生じた反力を計算する。なお、物理係数としては、仮想マレット21及び仮想パック22それぞれの、質量、速度、加速度、接触方向、反発係数等が挙げられる。
【0069】
また、この計算された反力のうち、仮想マレット21が仮想パックから受けた反力が、触力覚提示部材11によってユーザ70に提示すべき触力覚に相当する(
図6及び
図7参照)。よって、仮想マレット21が仮想パックから受けた反力を「提示力F」とすると、情報処理部40は、触力覚提示部材11によって提示力Fが提示されるようにするため、提示力Fを特定する提示データbを制御部14に出力する。また、情報処理部40は、仮想マレット21と仮想パック22との動きを表示するためのデータを、表示情報である表示データeとして表示パネル20に出力する。
【0070】
[ステップS103]
次に、
図7を用いて、ステップS103について具体的に説明する。
図7は、
図5に示した触力覚提示部材の位置検出処理を説明する図である。本実施の形態1におけるステップS103では、制御部14は、センサ15が出力した位置検出データcに基づいて、触力覚提示部材11の中心の座標(x,y)を算出する。
【0071】
図7の例では、座標の原点(0,0)は、四角形Sの中心に設定されている。また、
図7中の触力覚提示部材11では、ワイヤ12を取り付けるための貫通孔11cは各角に位置しているとする。更に、
図7に示した四角形Sは、
図7中の触力覚提示部材11の角から矩形Sの対応する角までの距離が、各ワイヤ12の長さ(貫通孔11cからプーリ13bに接触するまでの長さ)に相当するように設定されている。つまり、四角形Sの4つの角は、ワイヤ引張部13それぞれの巻取り用のプーリ13bの位置関係を表わしていることになる。
【0072】
また、
図7において、Hは四角形Sの縦の長さを示し、Wは四角形Sの横の長さを示している。また、hは触力覚提示部材11の縦の長さを示し、wは触力覚提示部材11の横の長さを示している。
【0073】
ステップS103では、まず、各センサ15から位置検出データcが出力されてくると、位置検出データcはモータ13aの回転数を示していることから、制御部14は、これらを元に各ワイヤ12の長さl
1〜l
4を計算する。そして、
図7において、H、W、h、wは既知の長さであるため、制御部14は、これらとl
1〜l
4とを用いて座標(x,y)を算出する。また、制御部14は、ステップS103において、ステップS104での引張力の計算に利用する各ワイヤ12の角度(φ
1〜φ
4)も計算する。
【0074】
ここで、座標(x,y)の算出処理について更に具体的に説明する。
図7において、長さがl
1のワイヤ12と四角形Sの短辺とのなす角をφ
A1とすると、余弦定理により、下記の数1及び数2が成立する。
【0077】
従って、制御部14は、ワイヤの長さl
1及びl
2を数1及び数2に適用してφ
A1を算出し、更に、下記の数3を用いてφ
1を算出する。また、制御部14は、算出したφ
A1を下記の数4に適用して、座標(x,y)を算出する。また、φ
2〜φ
4も同様の手順で算出される。
【0080】
[ステップS104]
次に、
図7を用いてステップS104について具体的に説明する。
図7において、触力覚提示部材11の4つの頂点の位置は、その重心位置を基準とした位置ベクトル、即ち、r
1、r
2、r
3、r
4によって表わされている。
【0081】
触力覚提示部材11が四角形である場合は、位置ベクトルr
1、r
2、r
3、r
4それぞれの方向は、触力覚提示部材11の縦の長さhと横の長さwとによって決定される。また、重心位置から各頂点までの距離は同一となるので、各位置ベクトルの量は同一となる。更に、
図7において、Mは、触力覚提示部材11をその重心を中心に回転させるモーメントであり、モーメントMは、引張力τ
1〜τ
4のバランス関係に応じて発生する。
【0082】
ステップS104では、制御部14は、ステップS102で出力された提示データbと、ステップS103で算出した座標(x,y)及びφ
1〜φ
4とを用いて、各ワイヤ引張部13が出力すべき引張力τ
1〜τ
4を計算する。そして、制御部14は、提示すべき提示力Fを発生させるため、各ワイヤ
引張部13に対して、計算した引張力を発生させる制御データdを出力する。
【0083】
本実施の形態1では、制御部14は、下記の(a)〜(d)の条件が満たされるように、引張力τ
1〜τ
4を計算する。
(a)引張力τ
1〜τ
4の合力が、オブジェクト(仮想マレット21:
図6参照)に仮想空間内で発生した力、即ち、ステップS102で計算した提示力Fと一致すること。
(b)引張力τ
1〜τ
4によって触力覚提示部材11に生じるモーメントMが、仮想空間内でオブジェクトに発生したモーメントに一致すること。
(c
)引張力τ
1〜τ
4それぞれが、ワイヤ12が弛まない最小の引張力τ
minから、設定された最大の引張力τ
maxまでの範囲内となること。
(d)引張力τ
1〜τ
4の合計値が、条件(a)〜(c)が満たされる範囲内で最小値となること。
【0084】
ところで、本実施の形態1においては、触力覚提示部材11を拘束するための条件の自由度は3となるが、ワイヤ引張部13によって出力できる引張力は4自由度を持っており、冗長である。このため、最適化計算手法によって、引張力τ
1〜τ
4を最適化する必要があり、上記の条件(d)が設定されている。以下に、条件(a)〜(d)について具体的に説明する。
【0085】
条件(a)は、下記の数5によって表わすことができる。数5に示すように、引張力τ
1〜τ
4の合力は、各ワイヤ引張部13の引張力と、対応するワイヤ12の角度と、の内積の和である。よって、内積の和と目的となる提示力Fとが一致することが必要となる。
【0087】
条件(b)におけるモーメントMは、本実施の形態1では0(ゼロ)に設定される。よって、条件(b)は、下記の数6によって表わすことができる。数6に示すように、モーメントMは、位置ベクトルr
1〜r
4それぞれと、各引張力における触力覚提示部材11の各角から重心に向かう方向の成分と、の外積の和である。この外積の和が0(ゼロ)となることが必要となる。なお、触力覚提示部材1
1に、設定されたモーメントを発生させたい場合には、Mの値に任意の値を代入し、得られた数6を用いれば良い。
【0089】
条件(c)は、いずれかのワイヤが弛んで、触力覚提示部材11が、xy平面に対して平行に移動できなくなることを防ぐために、設定されている。また、引張力が大きすぎると、ワイヤが切断されるおそれがあるため、条件(c)では、引張力の最大値が設定される。条件(c)は、下記の数7によって表わすことができる。
【0091】
条件(d)は、上述したように引張力τ
1〜τ
4を最適化するため、即ち、各ワイヤ引張部13での消費エネルギを最小限に抑えるために設定されている。条件(d)が設定されていない場合は、引張力τ
1〜τ
4が無駄に大きくなる可能性がある。
【0092】
条件(d)は、下記の数8によって表わすことができる。数8に示す関数は、各ワイヤ引張部13の効率化を図りつつ、これらによる引張力の総和を最小化させることを目的としている。Jは、最適化を行なうため設定される目的関数値である。Jが最小化するように引張力τ
1、τ
2、τ
3、τ
4が算出される。数8に示す関数を用いることで、最適化計算手法の1つである線形計画法が実行される。
【0094】
以上に述べた条件(a)〜(d)が満たされるように、引張力τ
1〜τ
4を算出すれば、これらの値は、目的となる提示力Fを提示するにあたっての最適な値となる。但し、各ワイヤ引張部13は、ワイヤ12を介して力を伝達しており、引張することのみでしか力を提示できない構成となっている。よって、ワイヤ引張部間の位置関係により、触力覚提示部材11の位置によっては、提示できる触力覚に制限が与えられる場合がある。この場合、制御部14は、後述する例外処理を実行する。
【0095】
ここで、
図8を用いて、提示可能な触力覚に制限が与えられる場合について説明する。
図8は、本発明の実施の形態1において触力覚の提示に制限が与えられる場合を説明する図である。
【0096】
図8の例では、触力覚の提示に制限が与えられる場合が、斜線を付した領域によって示されている。即ち、触力覚提示部材11が、その一部でも、斜線を付した領域内に入った場合に、提示できる触力覚が制限される。
【0097】
具体的には、
図8に示すように、提示すべき提示力が「F」であるとすると、触力覚提示部材11が四角形Sの中心付近に位置している場合は、引張力τ
1〜τ
4の合力によって、提示力Fを提示することが可能である。
【0098】
一方、触力覚提示部材11が、
図8中の四角形Sの右端近くの位置にあり、その一部が斜線を付した領域に入っているとする。この場合、τ
3を出力するワイヤ引張部13とτ
4を出力するワイヤ引張部13との位置関係から、τ
3及びτ
4に求められる値は、各ワイヤ引張部13で発生可能な引張力の最大値を超えてしまい、提示すべき提示力Fを出力できなくなる。
【0099】
更に、
図8中の任意の向きに力を提示不可能な領域は、触力覚提示部材11の位置(x,y)、提示すべき提示力Fの大きさ、各ワイヤ引張部13の位置関係、更には、各ワイヤ引張部13で出力可能な引張力の最大値及び最小値に依存し、領域範囲は変化する。
【0100】
ところで、特開2003−172662号公報は、従来からの触力覚提示装置を開示している。この特開2003−172662号公報に開示された触力覚提示装置(以下「従来の触力覚提示装置」と表記する。)では、球状の触力覚提示部材が、表示パネルの前面の実空間内に三次元的に配置されている。この場合も、触力覚提示部材は、ワイヤによって保持され、各ワイヤには引張力がかけられている。
【0101】
そして、この従来からの触力覚提示装置においても、任意の向きに力を提示可能な領域と不可能な領域とが存在するが、引張力のトルクの正確性の比重を決定する係数γ
tが設定されているので、二つの領域の境界において、計算結果は連続的に変化することになる。つまり、従来の触力覚提示装置では、提示可能な領域と不可能な領域との境界において、引張力の算出結果が不連続に変わることが抑制されるとも考えられる。
【0102】
しかしながら、従来からの触力覚提示装置においては、任意の向きに力を提示可能な領域と不可能な領域との境界での安定性と、提示すべき提示力Fの正確性とは、トレードオフの関係にある。よって、従来の触力覚提示装置では、係数γ
tを用いて安定性を求める算出を実行すると、提示すべき提示力Fの正確性が低下してしまうという問題が発生してしまう。
【0103】
ここで、従来の触力覚提示装置において、上記問題が発生する理由を検討する。まず、従来の触力覚提示装置では、モータによる引張力の合力と提示すべき提示力Fとの差分を最小にすることが、最適化の目的関数として扱われている。更に、その差分の値が負にならないようにするために、2次の目的関数も設定されている。つまり、従来の触力覚提示装置においては、任意の向きに力を提示可能な領域は、計算上では定義されておらず、結果、上記の問題を解決することは困難となる。
【0104】
また、従来の触力覚提示装置では、上述したように2次の目的関数が設定され、2次計画法にて最適な引張力が計算されるので、繰り返しの計算により最適計算値に収束させることが必要になり、計算時間がかかる。また、繰り返しの回数により必ず収束して真の最適計算値が算出するとは限らないため、得られた収束値が、提示すべき提示力Fを出力できる引張力になっていることは保証できない状態にある。
【0105】
それに対して、上述したように、本実施の形態1では、制御部14は、目的関数が1次の線形計画法による算出を行なうため、任意の向きに力を提示可能な領域に、触力覚提示部材11があることは、制約条件(条件(a)〜(d))を満たす解が存在していることと同義である。このため、制御部14は、制約条件を満たす解が存在しない場合に、任意の向きに力を提示不可能な領域に触
力覚提示部材11が存在している、と判定できる。
【0106】
よって、制御部14は、触
力覚提示部材11の位置が、任意の向きに力を提示不可能な領域と重なった場合には、例外処理によって、境界域における解の不連続性に対応することが可能である。制御部14によって、このような処理が可能になったのは、各ワイヤ引張部13による引張力の合力と提示すべき提示力Fとが一致することを制約条件とし、更にワイヤ引張部13の効率を目的関数として、線形計画法によって引張力の分配計算を行なっているからである。
【0107】
また、線形計画法による場合は、最適計算値は必ず一意に決まるため、触
力覚提示部材11が、任意の向きに提示力を提示可能な領域内にある場合には、各ワイヤ引張部13による引張力の合力と提示すべき提示力Fとが一致する。よって、この場合には、常に、正確に触力覚を提示することが可能となる。また、線形計画法による場合には、有限回の反復により解が求められることもわかっているため、計算コストが小さくユーザへの触力覚提示の反応速度を速くすることも可能となる。
【0108】
また、制御部14は、例外処理では、例えば、各引張力を設定値とし、設定値に基づいて、ワイヤ引張部13それぞれを制御することができる。
【0109】
つまり、任意の向きに力を提示可能な領域と不可能な領域との境界域では、提示力Fの大きさに関わらず、触
力覚提示部材11から近い位置にある2つのワイヤ引張部13は最大の引張力を出力する。また、境界域では、触
力覚提示部材11から遠い位置にある2つのワイヤ引張部13は最小の引張力を出力する。
【0110】
このため、任意の向きに力を提示不可能な領域では、触
力覚提示部材1
1の各ワイヤ引張部13からの位置関係に応じて出力値を固定すれば、境界域における解の連続性を保つことが可能になる。結果、触
力覚提示部材11が、境界域上にあるときでも、ユーザに対して連続で安定した触力覚提示を行なうことができる。
【0111】
また、本実施の形態1では、任意の向きに力を提示可能な領域と不可能な領域との境界における例外処理は、ワイヤ引張部13の出力が連続して変化するような処理であれば良く、処理方法を限定するものではない。
【0112】
例えば、触
力覚提示部材11が任意の向きに力を提示可能な領域から不可能な領域に移動し、最適解であるワイヤ引張部13の引張力τ
1、τ
2、τ
3、τ
4を算出できなくなったとする。この場合に、制御部14は、例外処理として、各ワイヤ引張部13が、最適解を算出できていた時の最新の引張力を保持するように制御を行なっても良い。
【0113】
[ステップS105及びステップS106]
次に、ステップS105及びS106について具体的に説明する。上述したように、ステップS105では触力覚の提示が行なわれ、ステップS106ではコンテンツ連携処理後のコンテンツの表示が行なわれる。具体的には、表示パネル20は、情報処理部40がステップS102で出力した表示データeを受けて、その表示画面上に、オブジェクトが変化したコンテンツを表示させる。また、各ワイヤ引張部13が、ステップS104で計算された引張力τ
1〜τ
4を発生させると、対応するワイヤ12が引張されて触力覚提示部材11が動き、ユーザ70の指先に提示力Fが提示される。これにより、ユーザ70は、指先にオブジェクトを実際に触っているかのような感触を感じることができる。
【0114】
[プログラム]
本実施の形態1におけるプログラムは、コンピュータに、
図5に示すステップS103〜S105を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態1における触力覚提示装置10と触力覚提示方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、制御部14として機能し、処理を行なう。
【0115】
また、触力覚提示装置10を実現可能なコンピュータは、特に限定されず、上述したマイコンであっても良いし、汎用のパーソナルコンピュータであっても良い。更に、触力覚提示装置10を実現可能なコンピュータは、携帯電話、スマートフォン、又はタブレット型の情報端末に備えられているコンピュータであっても良い。
【0116】
また、本実施の形態1におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供されても良いし、インターネット介して送信されても良い。なお、記録媒体の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記憶媒体、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記憶媒体が挙げられる。
【0117】
[実施の形態1における効果]
本実施の形態1では、ワイヤを利用する触力覚提示機構を用いたことと、触力覚を発生させるために最適化計算手法を用いたこととによって、以下の効果が得られている。
【0118】
まず、本実施の形態1では、アクチュエータからの伝達機構としてワイヤを用いるため、触力覚提示装置を構成する部材として軽量な部材を用いることができ、更に、伝達機構の構造を単純化できる。よって、本実施の形態1によれば、装置全体の小型化及び軽量化を達成できる。
【0119】
また、本実施の形態1では、伝達機構であるワイヤの伝達方向及び長さの設計自由度が高いため、アクチュエータとその他の構成部品とが干渉しない部品レイアウトを容易に実現できる。
【0120】
更に、本実施の形態1では、触力覚を発生させるための最適化計算を線形計画法によって行なうことができる。よって、計算コストを小さくできると共に、ユーザに触力覚を提示する際の反応速度を高めることもできる。
【0121】
また、各ワイヤ引張部13の位置関係により、触力覚提示部材11の位置によって、提示可能な触力覚(提示力)に制限が与えられる場合がある。しかし、本実施の形態1では、このような場合とそうでない場合とを区別できるので、これらの境界においても連続で安定した触力覚の提示を行なうことができる。
【0122】
また、本実施の形態1では、触力覚提示部材11は、ワイヤによって四方向から引っ張られ、加えて、各ワイヤの引張方向は一方向に固定されておらず、可変可能である。このため、触力覚提示部材11が移動可能な領域を広くとることができる。
【0123】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における、触力覚提示装置、情報端末、触力覚提示方法、及びプログラムについて、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明の実施の形態2における情報端末の各構成部品を示す分解斜視図である。
【0124】
図9に示すように、本実施の形態2における触力覚提示装置80は、触力覚提示部材81の構成の点で、
図1〜
図3に示した実施の形態1における触力覚提示装置10と異なっている。本実施の形態2では、触力覚提示部材81が表示パネル82を含む構成が採用されている。
【0125】
具体的には、本実施の形態2では、コンテンツを表示させる表示パネル82が触力覚提示部材81として機能している。また、タッチセンサとしてタッチパネル83が用いられており、タッチパネル83は、コンテンツを表示させる表示パネル82の前面に固定される。従って、タッチパネル83も、表示パネル82と共に、触力覚提示部材81として機能する。
【0126】
各ワイヤ12は、それぞれ、表示パネル82の四隅に取り付けられ、各ワイヤ引張部13は、実施の形態1と同様に、対応するワイヤ12を引張する。よって、制御部14は、実施の形態1と同様に、ワイヤ引張部13それぞれを制御することにより、触力覚提示部材81である表示パネル82を移動させることができるので、本実施の形態2においてもユーザに触力覚が提示される。
【0127】
本実施の形態2では、このように、表示パネル82が筐体60に対して移動するため、そのままでは、表示画面も一緒に移動してしまう。よって、情報処理部40は、ユーザから見て、コンテンツ映像が表示パネル82に連動して動かないようにするため、表示パネル82の移動方向と逆の方向にコンテンツ映像を移動させて表示する、といった処理を実行できる。
【0128】
また、本実施の形態2において、情報処理部40及び制御部14の動作は、実施の形態1と同様であり、
図5に示したステップS101〜S106が実行される。そして、触力覚提示装置80において、ステップS103〜S105が実行されることにより、本実施の形態2における触力覚提示方法が実施される。また、本実施の形態2におけるプログラムも、コンピュータに、
図5に示すステップS103〜S105を実行させるプログラムであれば良い。
【0129】
そして、本実施の形態2を用いた場合は、上述したように、表示パネル82を触力覚提示部材として用いることができるため、実施の形態1に比べて構造を簡略化でき、製造コストの削減を推進できる。また、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、ワイヤを利用する触力覚提示機構と最適化計算手法とが採用されるため、実施の形態1で述べた効果を得ることができる。
【0130】
(変形例)
続いて、上述した実施の形態1及び実施の形態2の各種変形例について以下に説明する。
【0131】
上述した実施の形態1及び2において、ワイヤ引張部13のアクチュエータは、モータに限定されるものではなく、ワイヤ12を引張可能な構成を備えていれば良い。その他のアクチュエータとしては、ワイヤ形状に近い形状を呈し、且つ、伸張動作を行なう、アクチュエータ、例えば、人工筋肉アクチュエータ、繊維状の形状記憶合金アクチュエータなどが挙げられる。
【0132】
また、上述した実施の形態1及び2では、
図3に示したように、ワイヤ12を筐体60側へと引っ張る際において引張の開始点となる張力方向変換プーリ13cそれぞれは、これらを結んだときに、筐体60の形状に合致する矩形が形成されるように配置されている。しかしながら、実施の形態1及び2において、引張の開始点の位置は特に限定されず、各引張の開始点は、これらを結んだときに、例えば、平行四辺形、台形が形成されるように配置されていても良い。また、各引張の開始点は、同一平面内に位置していなくても良いし、個数は4点である必要もない。
【0133】
また、上述した実施の形態1及び2では、4本のワイヤによって触力覚提示部材を駆動しているが、ワイヤの本数は特に限定されるものではない。例えば、平面上の任意の方向に触力覚提示部材を移動させて、触力覚を提示する場合であれば、ワイヤ12は少なくとも3本あれば良い。
【0134】
更に、触力覚提示部材を直線上で任意の方向に移動させて、触力覚を提示するのであれば、ワイヤは2本あれば良い。また、触力覚提示部材を、重力等の外部力とのつり合いを利用して移動させて、触力覚を提示する場合であれば、ワイヤは1本あれば良い。加えて、触力覚提示部材11を、平面上及び三次元空間内の任意の方向に移動又は回転させて、触力覚を提示するのであれば、ワイヤは4本以上であっても良い。
【0135】
また、上述した実施の形態1及び2では、ユーザの指の動きに連動して、仮想空間内でオブジェクトが移動した場合に、触力覚が提示される例が示されているが(
図6参照)、これに限定される趣旨ではない。実施の形態1及び2は、オブジェクトが移動以外の変化を行なう場合、例えば、オブジェクトの形状、色、大きさ等が変化した場合にも適用できる。また、ユーザによる操作の対象となったオブジェクトに応じて、提示される触力覚が異なっていても良い。
【0136】
また、上述した実施の形態1及び2では、コンテンツ表示のための処理を行なう情報処理部40は、表示パネル、タッチセンサ、及び触力覚提示装置と共に、同じ筐体に収容されているが、これに限定されるものではない。実施の形態1及び2では、情報処理部40は、外部のパーソナルコンピュータといったコンピュータによって実現されていても良い。また、この場合、制御部14も、情報処理部を実現するコンピュータによって実現されていても良い。
【0137】
(適用例)
続いて、上述した実施の形態1及び実施の形態2の各種適用例について以下に説明する。
【0138】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、移動のナビゲーションに適用できる。例えば、触力覚提示装置は、歩行中のユーザに目的地をナビゲーションする際に、ユーザのタッチしている指に、進行すべき方向を触力覚により提示することができる。この場合、ナビゲーションの方向がコンテンツとして提示したい情報になる。
【0139】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、スクロールする画面の動きに連動した触力覚を提示することで、より実体的な操作感をユーザに提供できる。例えば、画面のスクロールにおいて、これ以上の情報が無くてスクロールができない場合に、表示画面をスクロール方向においてバウンドさせてスクロールできないことを知らせる表示方法が知られている。この表示方法が採用される場合に、表示画面のバウンドに連動して触力覚が提示されるようにすれば、ユーザは、より実体的に、情報を素早く正確に受け取ることが可能になる。
【0140】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、表示されているコンテンツがwebサイトである場合において、タッチしている指の下にLinkボタン等があることを触力覚により提示することができる。この場合、ユーザは、表示情報だけでは得にくい情報を受け取ることができる。更に、触力覚提示装置は、Link先に有害なサイトが含まれる場合は、ユーザがLinkボタンを押しにくくなるように、触力覚の提示によって警告を行なうこともできる。
【0141】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、仮想のオブジェクト(仮想物体)との連動に限らず、マスタ・スレーブのロボットアームなどの入力操作の動作反応に利用可能である。例えば、ユーザが画面を見ながらロボットアームを遠隔操作して実物体を操作する場合において、触力覚提示装置は、障害物に接触したことの反応、障害物に接触する前の警告等として、触力覚を提示することができる。この場合、ユーザは、より安全で正確に、ロボットアームを操作することができる。
【0142】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、触地図などの状態把握に利用可能である。つまり、触力覚提示装置は、視覚障がい者における地図把握として利用できる。また、一般ユーザが3D迷路等において壁及び道順を理解する際に、触力覚提示装置によって、壁及び道に対応する触力覚を提示させれば、ユーザにおける形状及び状態の把握が容易となる。
【0143】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、文字学習における漢字書き順の情報提示に利用可能である。子どもが漢字学習における文字の書く順番理解のため、触力覚提示装置によって、書き順序、とび、はね等が不正確であるときに、正しい入力方向以外の入力に抵抗力を触力覚として提示すれば良い。触力覚提示装置は、文字学習の補助に有用である。
【0144】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、機器操作の際のクリック感覚のフィードバックとして、表示パネルに平行な方向に動かされた触力覚提示が可能である。また、入力のためのキー操作において、触力覚によるフィードバックは重要であるため、触力覚提示装置は、ユーザにとって理解しやすいように、フィードバックを変更することもできる。更に、触力覚提示装置は、ユーザの入力が変化した場合は、従来のクリック感覚とは異なるフィードバックを返すことにより、ユーザに入力変化を気付かせることもできる。
【0145】
また、タッチパネルによる文字の入力方式として、フリック方式と呼ばれる入力方式が知られている。フリック方式では、指がタッチした位置と指をスライドさせた方向とにより入力文字が決定される。このフリック方式に、実施の形態1及び2おける触力覚提示装置を適用した場合は、スライドさせる方向にのみ指がスライドしやすくなり、スライドにより選択できない方向への指の動きに抵抗が生じるように、触力覚を提示できる。この場合、ユーザが文字の選択時に誤った動きをしないようにでき、文字の入力が容易となる。
【0146】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、ピアノなどの楽器操作のシミュレーション、手術のシミュレーション、粘土造形のシミュレーションにおいて、フィードバック装置として利用可能である。つまり、触力覚提示装置は、機器使用の事前学習、エンタテイメントのひとつとして、入力に対する機器のフィードバックとして触力覚提示をすることができる。
【0147】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、Webサイト及びテレビといった実店舗以外での商品の購入において、商品の状態認識に利用可能である。実店舗での商品購入と異なり、Webサイト及びテレビでの商品購入においては、商品の実感が問題となる。このため、触力覚提示装置を利用すれば、ユーザは、商品に触った際の触覚情報を得る事が出来るので、より商品を理解したうえで購入を行なうことができる。
【0148】
実施の形態1及び2における触力覚提示装置は、錯視絵の理解などエンタテイメントとして利用可能である。この場合、触力覚提示装置は、視覚情報と一致しない触力覚を提示情報としてユーザに与えることにより、ユーザに違和感を提示する。例えば Maurits CornelisEscher作の螺旋階段が続く錯視絵は、実物としては触ることができないが、触力覚提示装置を用いれば、仮想空間内の物体の感触を提示できるので、ユーザは、錯視絵に触れることもできる。
【0149】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0150】
この出願は、2011年12月5日に出願された日本出願特願2011−266323を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。