特許第5975147号(P5975147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5975147-付着モルタルリサイクルシステム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5975147
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】付着モルタルリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/42 20060101AFI20160809BHJP
   B28C 7/16 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B28C5/42
   B28C7/16
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-102250(P2015-102250)
(22)【出願日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年11月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515135103
【氏名又は名称】株式会社北斗商販
(72)【発明者】
【氏名】小原 一志
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−068608(JP,A)
【文献】 特開2005−335386(JP,A)
【文献】 特開2009−023291(JP,A)
【文献】 特開2008−168541(JP,A)
【文献】 小原一志ほか,付着モルタルのリサイクル方法の開発〜スラッジの大幅減量化に向けて〜,コンクリートテクノ,日本,2007年11月 1日,第26巻、第11号,第48頁〜第51頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/42
B28C 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックアジテータのドラム内壁、羽根等に付着しているフレッシュモルタルに付着モルタル安定剤を用いてスラリー状にし、新たに積み込むコンクリートと混合して使用するための付着モルタルリサイクルシステムであって、底部に送り出し用のスクリューを設けた、スラリー状モルタルを保存する保存容器と、前記保存容器の下流側にスクイズポンプ又はサンドポンプが接続され、前記スクイズポンプ又はサンドポンプの吐出側から上方に向けて敷設された圧送管と上部にバイブロスクリーンを設け底部に前記保存容器に戻る切替弁の付いた戻り管及び水中ポンプ又はサンドポンプを設けた希釈溶液回収容器と前記バイブロスクリーンの下流側に設けた計量用スクリュー付の付着モルタル回収容器につながるシュートを設置し、前記希釈溶液回収容器底部前記水中ポンプ又はサンドポンプの下方に向けて前記切替弁の切替により既設の水計量槽につながる希釈溶液投入管接続し、前記水計量槽ミキサにつながる計量水投入管を接続し、前記付着モルタル回収容器の底部にミキサにつな付着モルタル導入管を接続してなる付着モルタルリサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レディーミクストコンクリートを運搬するアジテータのドラム内壁、羽根等に付着したモルタルの再使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レディーミクストコンクリート、所謂生コンクリートの運搬には主に傾胴型のドラムを搭載したアジテータが使用されている。内部の生コンクリートは静止状態に置かれると固まるためドラムを常時回転させ、荷卸しを完了し全量を排出した後はドラム内に水を入れて内部に付着したフレッシュモルタルを洗浄し、洗浄排水を全て外部に排出する。
このほか、[特許文献1]及び[特許文献2]がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2005−335386号公報
【特許文献2】 特開2008−068608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アジテータは現場で荷卸しを完了した後、ドラム内壁、羽根などに付着したフレッシュモルタルの固着を防ぐためドラム内を水洗いする。これにより廃棄されるスラッジは年間100万m〜150万m以上にも及ぶ。スラッジは、『管理型産業廃棄物』として処分することを義務付けられているが、最終処分場の数は限られており、また廃棄費用も高額なことから不法投棄の温床となっている。最終処分場の残余年数が残り少ない中で廃棄し続けることは、都市部の廃棄物を地方にツケ回す構図が容易に想像され問題である。本発明の課題は、付着したフレッシュモルタルに水を加えて廃棄するのではなくJISA5308附属書D(以下、附属書Dという。)を実用化した方法で付着したフレッシュモルタルを再使用し、できるだけスラッジ化(産業廃棄物化)させないことである。
同一発明人による[特許文献1][特許文献2]があるが、それらにおける欠点は、スラリー状モルタルに含まれる安定剤希釈溶液を、新たに積み込むコンクリートの練混ぜ量の一部とするためその量を計量水量から差し引くこととなっている。このためオペレーターは希釈溶液と同量の計量水量を手動操作により水計量槽に残す作業を行わなければならない。JISA5308では、単位水量の動荷重範囲はプラスマイナス1%以内で管理することが求められており、このような手動操作は正確性を欠く作業なため合理的な方法を示すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
トラックアジテータのドラム内壁、羽根等に付着しているフレッシュモルタルに付着モルタル安定剤を用いてスラリー状にし、新たに積み込むコンクリートと混合して使用するための付着モルタルリサイクルシステムであって、底部に送り出し用のスクリューを設けた、スラリー状モルタルを保存する保存容器と、前記保存容器の下流側にスクイズポンプ又はサンドポンプが接続され、前記スクイズポンプ又はサンドポンプの吐出側から上方に向けて敷設された圧送管と上部にバイブロスクリーンを設け底部に前記保存容器に戻る切替弁の付いた戻り管及び水中ポンプ又はサンドポンプを設けた希釈溶液回収容器と前記バイブロスクリーンの下流側に設けた計量用スクリュー付の付着モルタル回収容器につながるシュートを設置し、前記希釈溶液回収容器底部前記水中ポンプ又はサンドポンプの下方に向けて前記切替弁の切替により既設の水計量槽につながる希釈溶液投入管接続し、前記水計量槽ミキサにつながる計量水投入管を接続し、前記付着モルタル回収容器の底部にミキサにつな付着モルタル導入管を接続してなる付着モルタルリサイクルシステム。
【発明の効果】
【0006】
附属書Dでは、付着モルタルの容積は新たに積み込むコンクリートの容積の一部として考慮してはならないが希釈溶液は練混ぜ量の一部として考慮することになっている。このため本発明では、専用の保存容器に受け入れたスラリー状モルタルを分級後、付着モルタルは直接ミキサへ投入するが希釈溶液は既設の水計量槽へ計量水が計量完了するまでに投入し、新たに積み込むコンクリートの練混ぜ量の一部とするのでオペレーターは希釈溶液と同量の水量を手動操作により水計量槽に残す等の困難な手間が無くなり新たなコンクリートを製造する際の品質管理を合理的に行える。
【0007】
本発明を実施すると、年間100万m〜150万m以上発生しているスラッジを大幅に抑制することが可能となり、最終処分場の残余年数を引き延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
附属書Dでは、普通コンクリート及びこれを流動化したコンクリートの荷卸しを完了し、全量を排出した後のアジテータのドラム内壁、羽根などに付着しているフレッシュモルタルに付着モルタル安定剤を用いてスラリー状にし、新たに積み込むコンクリートと混合して使用することが認められている。附属書Dでは、スラリー状モルタルをアジテータのドラム内に保存する場合とアジテータのドラムから取り出して専用の容器で保存する場合の2通りが規定されており、本発明ではアジテータのドラムから取り出して専用の容器で保存する場合とした。
【0010】
専用の容器に保存されたスラリー状モルタルを使用するには、まずスクイズポンプ又はサンドポンプを作動させ、希釈溶液を循環させてから保存容器内に設置されたスクリューコンベアを作動させ、保存容器内の付着モルタルをスクイズポンプ又はサンドポンプに送り込み、混合してプラント内に設置されたバイブロスクリーンに送り込む。
【0011】
送り込まれたスラリー状モルタルは、バイブロスクリーンで分級後、付着モルタル回収容器及び希釈溶液回収容器に回収される。
【0012】
回収された付着モルタル及び希釈溶液はオペレーターが手元操作ボックスで使用量を設定し、新たなコンクリートを製造する直前に付着モルタルはミキサへ、希釈溶液は既設の水計量槽へ投入する。
【0013】
附属書Dでは、新たに積み込むアジテータ1台分のコンクリートに適用するスラリー状モルタルの量は、これが排出されたアジテータ1台分と同量又はこれを超えない量とし、1回の計量ごとにその量を均等に分けて計量することになっている。又、付着モルタルのスラリー化は、コンクリートの練混ぜから3時間以内に行うこととスラリー状モルタルの保存は24時間以内と規定されていることから、翌日が休日の場合などを考慮して事前に使用の可否を判断しなければならない。
【0014】
以下に本発明のシステムを図1に基づいて説明する。
図1はシステムの全体構成を示している。1はトラックアジテータがコンクリートの荷卸しを完了し、全量排出後のドラム内壁、羽根などに付着しているフレッシュモルタルにJISA5308附属書Dに規定する付着モルタル安定剤を上水道水で所定の割合にした希釈溶液でスラリー化し、2の保存容器に排出する。
【0015】
2の保存容器の下流側には4のスクイズポンプがありこれが稼働すると最初に希釈溶液が5の圧送管を通じて8の流出口から6のバイブロスクリーンに送り込まれる。
【0016】
6のバイブロスクリーンを通過した希釈溶液は、8の希釈溶液回収容器から14の戻り管を通って2の保存容器へと戻された後、3の送り出し用スクリューが稼働し、4のスクイズポンプに付着モルタルが送り込まれ、希釈溶液と混合して6のバイブロスクリーンに送り込まれる。
【0017】
2の保存容器内の付着モルタルが無くなるか、11の付着モルタル回収容器内の付着モルタルが満了になった時に3の送り出し用スクリューは停止し、13の切替弁が切り替わり循環は終了する。
【0018】
4のスクイズポンプは、3の送り出し用スクリューの停止後1分間稼働し続け、5の圧送管内にある付着モルタルが6のバイブロスクリーンに送り込まれてから停止するか、8の希釈溶液回収容器が満了になった時に停止する。
【0019】
6のバイブロスクリーン上を下流側に移動した付着モルタルは、18のシュートから11の付着モルタル回収容器に回収される。
【0020】
11の付着モルタル回収容器に回収された付着モルタルは、オペレーターの操作により1バッチ当たりの投入量が設定され、15の計量用スクリューによって16の付着モルタル導入管に落とし込まれ20のミキサに投入される。
【0021】
一方、8の希釈溶液回収容器に回収された希釈溶液は、オペレーターの操作により1バッチ当たりの投入量が設定され、10の水中ポンプによって17の希釈溶液投入管から12の水計量槽に落とし込まれ、新たなコンクリートを製造する際の計量水の内割りとして計量され、19の計量水投入管を経てミキサに投入される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、JISA5308附属書Dに従い、合理的且つ適正に品質管理された方法で、適用した希釈溶液と同量を計量水量の一部に置き換えることができるシステムである。本システムは、生コンクリート製造工場に設置し、荷卸しを終えたトラックアジテータのドラム内に付着したモルタルを廃棄せずに新たに積み込むコンクリートと混合して使用することができるので、未だに廃棄され続けるスラッジを大幅に減量化することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 トラックアジテータ
2 保存容器
3 送り出し用スクリュー
4 スクイズポンプ
5 圧送管
6 バイブロスクリーン
7 金網
8 希釈溶液回収容器
9 流出口
10 水中ポンプ
11 付着モルタル回収容器
12 水計量槽
13 切替弁
14 戻り管
15 計量用スクリュー
16 付着モルタル導入管
17 希釈溶液投入管
18 シュート
19 計量水投入管
20 ミキサ
【要約】
【課題】附属書Dでは、普通コンクリート及びこれを流動化したコンクリートの荷卸しを完了し、全量を排出した後のアジテータのドラム内壁、羽根などに付着しているフレッシュモルタルを、希釈溶液を用いてスラリー状にし、新たに積み込むコンクリートと混合して使用する方法が規定されている。
ここでは、スラリー状モルタルに含まれる付着モルタルの容積は、新たに積み込むコンクリートの容積の一部として、これを考慮してはならないが、希釈溶液は練混ぜ量の一部として考慮しなければならない。
【解決手段】トラックアジテータのドラム内壁、羽根等に付着しているフレッシュモルタルに付着モルタル安定剤を用いてスラリー状にし、新たに積み込むコンクリートと混合して使用する方法において、スラリー状モルタルを底部に送り出し用のスクリューを設けた保存容器と下流側にスクイズポンプ又はサンドポンプが接続され、該ポンプの吐出側から上方に向けて敷設された圧送管と上部にバイブロスクリーンを設け底部に前記保存容器に戻る切替弁の付いた戻り管及び水中ポンプ又はサンドポンプを設けた希釈溶液回収容器と前記バイブロスクリーンの下流側に設けた計量用スクリュー付の付着モルタル回収容器をつなぐシュートを設置し、前記希釈溶液回収容器底部の前記水中ポンプ又はサンドポンプの2次側から下方に向けて前記切替弁の切替により既設の水計量槽につながる希釈溶液投入管と接続し前記水計量槽からミキサに接続された計量水投入管及び前記付着モルタル回収容器の底部にミキサにつなげる導入管を接続して新たなコンクリートを製造する際に必要な他の材料と共にミキサへ投入して使用する。
図1