(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶する記憶手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したピークアシスト機能では、電源装置のみから供給可能な電力の上限値である電源装置上限値が固定的に設定されている。ところが、この電源装置上限値が低い値に設定されていると、電源装置からの電力供給量だけでは足りず、情報処理装置に対してバッテリから電力が供給される機会が多くなる。すると、バッテリの電力残量の減少が著しくなり、バッテリ不足による情報処理装置のダウンや電力キャッピングが発生することによる性能低下という問題が生じる。一方で、電源装置上限値が高い値に設定されている場合には、バッテリによる電力供給機会が減少し、ピークアシスト機能が生かされず、設備の無駄が生じる、という問題が生じる。つまり、ピークアシスト機能を有するシステムにおいて電源装置上限値が適切に設定されない場合には、上述した不都合が生じる。
【0007】
このため、本発明の目的は、ピークアシスト機能を有するシステムにおいて、適切な電源装置上限値が設定されないことによる不都合を解決する、ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態である演算装置は、
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶する記憶手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出する、
という構成をとる。
【0009】
また、本発明の一形態である制御装置は、
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、による情報処理装置への電力の供給を制御する制御手段と、
前記情報処理装置の消費電力量を検出して記憶手段に記憶する検出手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出し、
前記制御手段は、前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、前記計算手段にて算出された前記電源装置上限値を超えないよう制御する、
という構成をとる。
【0010】
また、本発明の一形態である電力供給システムは、
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、を有する電源モジュールと、
前記電源モジュールから情報処理装置への電力の供給を制御する制御手段を有する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記情報処理装置の消費電力量を検出して記憶手段に記憶する検出手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出し、
前記制御手段は、前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、前記計算手段にて算出された前記電源装置上限値を超えないよう制御する、
という構成をとる。
【0011】
また、本発明の一形態であるプログラムは、
演算装置に、
記憶手段に記憶されている、電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値のうち、所定期間における前記消費電力量に基づいて、前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する計算手段、
を実現させる、
という構成をとる。
【0012】
また、本発明の一形態である演算方法は、
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶し、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を、記憶されている所定期間における前記消費電力量に基づいて算出する、
という構成をとる。
【0013】
また、本発明の一形態である電力供給方法は、
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、による情報処理装置への電力の供給を制御する電力制御方法であって、
前記情報処理装置の消費電力量を検出して記憶手段に記憶し、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を、記憶されている所定期間における前記消費電力量に基づいて算出し、
前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、算出された前記電源装置上限値を超えないよう制御する、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成することにより、ピークアシスト機能を有するシステムにおいて、設備の無駄を無くし、性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、
図1乃至
図11を参照して説明する。
図1は、実施形態1における情報処理システムの構成を説明するための図である。
図2乃至
図9は、消費電力量やPL値の計算方法の一例を示す図である。
図10乃至
図11は、ピークアシスト制御装置の動作を説明するための図である。
【0017】
本実施形態における情報処理システムは、
図1に示すように、演算装置や記憶装置を備えた情報処理装置であるサーバ10と、当該サーバ10に電力Pを供給する電源モジュール20と、電源モジュール20よるサーバ10への電力の供給を制御するピークアシスト制御装置30と、を備えている。
【0018】
例えば、上記情報処理システムは、ラックサーバの形態で構成されている。つまり、情報処理システム1は、複数の棚を有するラックの各棚に、当該情報処理システムを構成する各装置が収容されて形成されている。一例を挙げると、サーバーラックの各棚を単位とする各ユニットに、複数のサーバ10からなるサーバ群と、電源モジュール20と、ピークアシスト制御装置30を含むラックマネージャと、を搭載して構成されている。ただし、情報処理システムは、ラックサーバの形態で構成されていることに限定されない。
【0019】
上記サーバ10は、電源モジュール20から電力を供給されて作動する。そして、電源モジュール20は、
図1に示すように、交流電源からの電力を直流に変換してサーバ10に供給する電源装置21と、電力を蓄電すると共に当該電力をサーバ10に供給するバッテリ22(電力貯蔵装置)と、を備えている。電源モジュール20は、電源装置21とバッテリ22とが協働して、サーバ10が必要とする電力を供給する。なお、バッテリ22は、キャパシタなど、電力を貯蔵可能であり、当該貯蔵している電力をサーバモジュール40に供給可能な装置であればいかなる装置であってもよい。
【0020】
上記電源モジュール20により、サーバ10が、電源装置21が供給可能な電力より大きい電力を必要としている場合には、電源装置21のみならずバッテリ22からも電力が供給される。このとき、バッテリ22に蓄積されている電力の残量は低下することとなる。また、サーバ10が、電源装置21が供給可能な電力以下の電力を必要としている場合には、電源装置21のみから電力が供給される。このとき、電源装置21から供給可能な残余の電力は、バッテリ22に蓄電されることとなる。このような電力供給状態は、ピークアシスト制御装置30に搭載されたピークアシスト機能が作動することで実現される。
【0021】
ここで、電源モジュール21には、電源装置21からサーバ10に供給される電力量の上限値であるPL値(電源装置上限値)が設定されている。このため、電源装置21は、設定されたPL値を超えない電力量をサーバ10に供給するよう作動する。なお、PL値は、後述するようにピークアシスト制御装置30に設定されるため、当該ピークアシスト制御装置30により、電源装置21からの電力の供給量がPL値を超えないよう制御されていることとなる。換言すると、ピークアシスト制御装置30は、サーバ10の消費電力量がPL値を超えると、電源装置21のみならず、バッテリ22からもサーバ10に電力を供給するよう制御することとなる。
【0022】
上記ピークアシスト制御装置30(制御装置、演算装置)は、演算装置と記憶装置とを有する情報処理装置にて構成されている。そして、ピークアシスト制御装置30は、装備されている演算装置にプログラムが組み込まれることに構築された、電力採取部31、供給上限値計算部32、供給上限値設定部33、キャッピング値計算部34、キャッピング値設定部35、を備えている。また、ピークアシスト制御装置30は、図示していないが、基本機能として、サーバ10への電力供給状態を制御する上述したピークアシスト機能を有する。さらに、ピークアシスト制御装置30は、装備されている記憶装置に形成された電力情報記憶部40を備えている。
【0023】
ここで、本発明におけるピークアシスト制御装置30は、PL値を算出する「学習期間」と、算出されたPL値を設定した後の「運用期間」と、を区別して稼働する。以下、「学習期間」と「運用期間」とにおける各構成の機能と動作を説明する。なお、上記「学習期間」は、例えば、1ヶ月や2ヶ月といった期間を想定するが、いかなる期間であってもよい。
【0024】
上記電力採取部31(検出手段)は、サーバ10による消費電力量を定期的に検出する。本実施形態では、電力採取部31は、電源モジュール20から供給される電力量を、サーバ10による消費電力量として検出する。そして、電力採取部31は、消費電力量を電力情報記憶部40とキャッピング値計算部34とにそれぞれ通知する。なお、電力採取部31は、バッテリ22の電力残量も検出してキャッピング値計算部34に通知する。
【0025】
なお、上記「学習期間」では、サーバ10の処理状況の変動による消費電力量を計測するため、電力キャッピングが生じないよう稼働させる必要がある。このため、「学習期間」においては、サーバ10が電力不足とならないよう予めPL値を高く設定して電源装置21だけからサーバ10に電力を供給してもよく、あるいは、バッテリ22を含めた電源モジュール20からサーバ10に電力を供給してもよい。
【0026】
そして、上記電力採取部31は、「学習期間」では、検出した消費電力量を、検出時刻とともに電力情報記憶部40に記憶する(
図10のステップS1)。
図2は、検出して記憶した消費電力量の一例を示す図であり、横軸に時間、縦軸に消費電力量を設定している。この図に示すように、サーバ10の処理状況は時間とともに変化するため、消費電力量も時間とともに変化することとなる。
【0027】
なお、
図2に示す電力情報記憶部40に記憶されている消費電力量は、必ずしも電力採取部31で検出されたものであることに限定されない。消費電力量は、なんらかの方法により検出されたりシミュレーションにより算出されたものが、予め電力情報記憶部40に記憶されていてもよい。
【0028】
そして、「学習期間」では、電力情報記憶部40に記憶されている消費電力量のデータを用いて、供給上限値計算部32(計算手段)が以下のようにしてPL値の算出を行う。なお、ここでは、電力採取部31が消費電力量を計測して記憶することと並行して、供給上限値計算部32がPL値の算出を行うこととする。また、以下では、3つの学習期間ST1,ST2,ST3が予め設定されていることとする。
【0029】
まず、供給上限値計算部32は、予め設定された学習期間が経過したか否かを調べる(
図10のステップS2)。このとき、
図3に示すように、現在時刻がt1であり、学習開始時刻t0から学習期間ST1が経過したとする(
図10のステップS2:Yes)。すると、供給上限値計算部32は、かかる学習期間ST1内の消費電力量のデータからPL値を計算する(
図10のステップS3)。
【0030】
ここで、PL値の算出処理(
図10のステップS3)の詳細を、
図11のフローチャートを参照して説明する。ここでは、
図3に示すように、学習期間開始t0から現在時刻t1の学習期間ST1の間の消費電力量のデータを用いてPL値を算出する。具体的には、学習期間ST1の消費電力量のデータから当該学習期間ST1全体におけるバッテリ22に対する充放電量を推定し、かかる充放電量が均衡する、つまり、充電量と放電量とが等しくなるようなPL値を算出する(
図11のステップS11)。
【0031】
図3を参照して説明すると、まず、仮のPL値を推定したときに、かかるPL値よりも消費電力量が小さいときには、PL値に満たない電力が電源装置21からバッテリ22に蓄電されることとなり、かかる蓄電電力が充電量となる(
図3の縦線網掛け部分)。一方、仮のPL値を推定したときに、かかるPL値よりも消費電力量が大きいときには、PL値を超える電力がバッテリ22からサーバ10に供給されることとなり、かかる超過電力が放電量となる(
図3の横線網掛け部分)。つまり、学習期間ST1の充電量、放電量は、仮のPL値を基準に消費電力量Eを積分することで算出することができる。このことを利用して、充電量と放電量とが等しくなるPL値を算出する。
図3の例では、学習期間ST1のPL値として、PL(1)の値が算出されたとする。
【0032】
その後、供給上限値計算部32は、さらに次の計算を行って、必要であれば学習期間ST1における新たなPL値の算出を行う。まず、学習期間ST1の消費電力値に対して、算出したPL値であるPL(1)を設定し、時間の変化に伴うバッテリ22の充電量と放電量を推定して、バッテリ22の蓄電量の残量を算出するシミュレーションを行う(
図11のステップS12)。そして、学習期間ST1において、バッテリ22の残量が不足するか否か、つまり、バッテリ22の残量がサーバ10の消費電力量を抑え込む電力キャッピングが生じるよう設定された閾値(例えば、「0」)以下となるか否かを調べる(
図11のステップS13)。なお、バッテリ22の残量が不足するか否かは、バッテリ22の蓄電量の残量の実測値を閾値と比較することで判断してもよい。
【0033】
仮に、バッテリ22の残量が閾値以下となり電力キャッピングが発生すると判断された場合には(
図11のステップS13:Yes)、かかる学習期間ST1のPL値の再計算を行う(
図11のステップS14,S15)。但し、学習期間ST1では、電力キャッピングが発生しないこととし(
図11のステップS13:No)、PL(1)がかかる学習期間ST1のPL値として算出されたこととする。
【0034】
続いて、供給上限値計算部32は、算出したPL値と、これまでに算出されて保存されているPL値と、を比較して(
図10のステップS4)、値の大きいPL値を保存する(
図10のステップS5)。ここでは、まだ以前にPL値が算出されていないため、今回算出したPL値であるPL(1)を保存する。
【0035】
そして、予め設定されている学習期間の全てが終了した否かを調べる(
図10のステップS6)。ここでは、学習期間が他にST2,ST3と設定されているため、上述した処理を繰り返す(
図10のステップS6:No)。つまり、次の学習期間ST2となるまで消費電力量の検出と記憶を行い(
図10のステップS1,S2:Yes)、学習期間ST2が経過するとPL値の算出を行う(
図10のステップS3)。
【0036】
図4に示すように、学習期間開始t0から現在時刻t2の学習期間ST2が経過すると、当該学習期間ST2の間の消費電力量のデータを用いてPL値を算出する。具体的には、学習期間ST2の消費電力量のデータから当該学習期間ST2全体におけるバッテリ22に対する充放電量を推定し、かかる充放電量が均衡する、つまり、充電量と放電量とが等しくなるようなPL値を算出する(
図11のステップS11)。すると、
図4の例では、学習期間ST2のPL値として、PL(2)の値が算出されたとする。
【0037】
その後、供給上限値計算部32は、算出したPL値を用いて電力キャッピングが生じるか否かを調べ(
図11のステップS12,S13)、生じる場合には学習期間ST2におけるPL値の再計算を行う(
図11のステップS14,S15)。但し、学習期間ST2では、電力キャッピングが発生しないこととし(
図11のステップS13:No)、PL(2)がかかる学習期間のPL値として算出されたこととする。
【0038】
続いて、供給上限値計算部32は、算出したPL値と、これまでに算出されて保存されているPL値と、を比較して(
図10のステップS4)、値の大きいPL値を保存する(
図10のステップS5)。ここでは、学習期間ST1のPL値であるPL(1)が記憶されているが、今回の学習期間ST2のPL値であるPL(2)の値の方が大きいため、かかるPL(2)の値を保存する。
【0039】
そして、予め設定されている学習期間の全てが終了した否かを調べる(
図10のステップS6)。ここでは、学習期間がさらにST3と設定されているため、上述した処理を繰り返す(
図10のステップS6:No)。つまり、次の学習期間ST3となるまで消費電力量の検出と記憶を行い(
図10のステップS1,S2:Yes)、学習期間ST3が経過するとPL値の算出を行う(
図10のステップS3)。
【0040】
図5に示すように、学習期間開始t0から現在時刻t3の学習期間ST3が経過すると、当該学習期間ST3の間の消費電力量のデータを用いて、PL値を算出する。具体的には、学習期間ST3の消費電力量のデータから当該学習期間ST3全体におけるバッテリ22に対する充放電量を推定し、かかる充放電量が均衡する、つまり、充電量と放電量とが等しくなるようなPL値を算出する(
図11のステップS11)。すると、
図5の例では、学習期間ST3のPL値として、PL(3)の値が算出されたとする。
【0041】
その後、供給上限値計算部32は、算出したPL値を用いて電力キャッピングが生じるか否かを調べ(
図11のステップS12,S13)、生じる場合には学習期間ST3におけるPL値の再計算を行う。具体的に、まず、学習期間ST3の消費電力値に対して、算出したPL値であるPL(3)を設定し、時間の変化に伴うバッテリ22の充電量と放電量を推定して、バッテリ22の蓄電量の残量を算出するシミュレーションを行う(
図11のステップS12)。そして、学習期間ST3において、バッテリ22の残量が不足する、つまり、バッテリ22の残量がサーバ10の消費電力量を抑え込む電力キャッピングが生じるよう設定された閾値(例えば、「0」)以下となるか否かを調べる(
図11のステップS13)。
【0042】
ここでは、
図6の矢印Aで示す時刻に、バッテリ22の残量が閾値(例えば、「0」)以下となり電力キャッピングが発生すると判断されたとする(
図11のステップS13:Yes)。この場合には、電力キャッピングが発生する時刻よりも前の消費電力量のデータを用いて、学習期間ST3のPL値の再計算を行う。
【0043】
具体的に、まず、消費電力量とPL(3)の値から、電力キャッピングが発生する時刻の直前のバッテリ22による一連の放電動作に伴う放電量を推定する。ここでは、
図6の符号Sの横線網掛け部分で示される領域が該当する。また、電力キャッピングが発生する時刻の直前のバッテリ22による一連の放電動作開始時のバッテリ22の電力残量(充電量)を推定する。ここでは、
図6の矢印Bで示す時刻のバッテリ22の残量を推定する。そして、放電開始時のバッテリ22の残量と、放電量とが均衡するよう、学習期間ST3のPL値の再計算を行う。ここでは、
図7の矢印Cに示すように、放電開始時のバッテリ22の残量と放電量Sとの差が「0」(閾値)となるようにPL値を計算する(
図11のステップS14)。すると、
図7に示すように、先のPL(3)の値よりも大きい値であるPL(3’)の値が、学習期間ST3の新たなPL値として算出できる。そして、学習期間ST3におけるPL値を、PL(3)からPL(3’)に置き換える(
図11のステップS15)。
【0044】
なお、上述した新たなPL値は、上述した計算方法で算出されることに限定されず、他の方法で算出されても良い。例えば、放電開始時のバッテリ22の残量から放電量Sを引いた値が閾値以下、つまり、バッテリ22の残量が閾値以下、となるPL値を計算してもよい。
【0045】
続いて、供給上限値計算部32は、算出したPL値と、これまでに算出されて保存されているPL値と、を比較して(
図10のステップS4)、値の大きいPL値を保存する(
図10のステップS5)。ここでは、学習期間ST2のPL値であるPL(2)が記憶されており、今回の学習期間ST3のPL値であるPL(3’)の値の方が小さいため、引き続きPL(2)の値が保存されたままとなる。つまり、
図8に示すように、各学習期間ST1,ST2,ST3でそれぞれ算出されたPL値のうち、最も大きい値であるPL(2)が特定されることとなる。
【0046】
以上のようにして全ての学習期間ST1,ST2,ST3が終了すると、その後は、サーバ10の「運用期間」となる(
図10のステップS6:Yes)。すると、供給上限値設定部33(制御手段)は、上述したように算出され、最も大きい値として特定されたPL値であるPL(2)を、電源モジュール20に設定する(
図10のステップS7)。これにより、電源装置21は、
図9に示すように、以後の運用期間では、設定されたPL値を上限とした電力量をサーバ10に供給するよう作動する。つまり、供給上限設定部33が、電源装置21の電力の供給量がPL値を超えないよう制御することとなる。
【0047】
なお、電源装置21は、サーバ10に供給する電力の供給量を制御する際に、供給する電力量の値(W)や電流の値(A)といった、電力の供給量の特性を表す値で制御してもよい。また、これに応じて、PL値も、電力量の値(W)や電流の値(A)といった、電力の供給量の特性を表す値で設定されていてもよい。なお、電力の供給量の特性を表す値は、電力量や電流の値に限定されず、他の値であってもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態における情報処理システムでは、サーバ10を実際に稼働させたときの消費電力量から、新たなPL値を算出して設定する。これにより、バッテリ22の電力残量の過度の減少を抑制しつつ、バッテリ22の稼働によるピークアシスト機能を有効に活用することができる。その結果、設備を無駄なく効率よく利用することができ、ピークアシスト機能の性能の向上を図ることができる。
【0049】
なお、運用開始後は、上述したように、上記電力採取部31は消費電力量やバッテリ22の電力残量を検出して、電力情報記憶部40とキャッピング値計算部34とにそれぞれ通知する。
【0050】
そして、上記キャッピング値計算部34は、電力採取部31から通知されたバッテリ22の電力残量に応じて、サーバ10の消費電力の上限値(キャッピング値)を計算する。例えば、バッテリ22の電力残量が閾値よりも低くなった場合には、電源装置21のみから供給可能な電力量をキャッピング値として計算する。そして、キャッピング値設定部35は、計算したキャッピング値をサーバ10に設定する。これにより、サーバ10は、キャッピング値以下の電力で稼働することとなるため、処理性能は低下するものの、サーバダウンを抑制することができる。
【0051】
なお、運用開始後に電力情報記憶部40に記憶された消費電力量を用いて、上述したように新たなPL値を算出して設定してもよい。
【0052】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、
図12を参照して説明する。
図12は、本発明における演算装置の構成を示すブロック図である。
【0053】
図12に示すように、演算装置130は、記憶手段131と計算手段132とを備えている。記憶手段131は、電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶している。また、計算手段132は、情報処理装置に対して電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する。具体的に、計算手段132は、所定期間における消費電力量に基づいて電源装置上限値を算出する。なお、上述した計算手段は、演算装置130にプログラムが実行されることで構築される。
【0054】
以上のように、本実施形態における演算装置では、電源装置と電力貯蔵装置とから電力が供給される情報処理装置を実際に稼働させたときの消費電力量から、電源装置の供給電力の上限値である電源装置上限値を算出して設定する。これにより、電力貯蔵装置の電力残量の過度の減少を抑制しつつ、電力貯蔵装置の稼働によるピークアシスト機能を有効に活用することができる。その結果、設備を無駄なく効率よく利用することができ、ピークアシスト機能の性能の向上を図ることができる。
【0055】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、
図13を参照して説明する。
図13は、本発明における電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【0056】
図13に示すように、電力供給システムは、情報処理装置210と、電源装置221と、電力貯蔵装置222と、制御装置230と、を備えている。制御装置130は、装備された演算装置にプログラムが実行されることで構築された、検出手段231と、計算手段232と、制御手段233と、を備えている。また、制御装置は、記憶手段240を備えている。
【0057】
上記検出手段231は、情報処理装置210の消費電力量を検出して記憶手段240に記憶する。上記計算手段232は、情報処理装置210に対して電源装置221から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を、記憶されている所定期間における消費電力量に基づいて算出する。上記制御手段233は、電源装置221と、当該電源装置221が供給する電力により充電される電力貯蔵装置222と、による情報処理装置210への電力の供給を制御する。特に、制御手段233は、電源装置221からの電力の供給量の特性を表す値を、算出された電源装置上限値を超えないよう制御する。なお、電源装置221と電力貯蔵装置222とは電源モジュールを構成している。
【0058】
以上のように、本実施形態における電力供給システムでは、電源装置221と電力貯蔵装置223とから電力が供給される情報処理装置210を実際に稼働させたときの消費電力量から、電源装置221の供給電力の上限値である電源装置上限値を算出して設定する。これにより、電力貯蔵装置222の電力残量の過度の減少を抑制しつつ、電力貯蔵装置222の稼働によるピークアシスト機能を有効に活用することができる。その結果、設備を無駄なく効率よく利用することができ、ピークアシスト機能の性能の向上を図ることができる。
【0059】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における演算装置、制御装置、プログラム、電力供給システム、演算方法、電力制御方法の構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0060】
(付記1)
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶する記憶手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0061】
(付記2)
付記1に記載の演算装置であって、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量と前記電力貯蔵装置に対する電力の充放電量とに基づいて前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0062】
(付記3)
付記2に記載の演算装置であって、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電力貯蔵装置に対する電力の充放電量を推定し、当該充放電量に基づいて前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0063】
(付記4)
付記2又は3に記載の演算装置であって、
前記計算手段は、前記電力貯蔵装置の充放電量が均衡するよう前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0064】
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の演算装置であって、
前記計算手段は、前記電力貯蔵装置の充電量が閾値以下となったときに、それ以前の前記消費電力量に基づいて所定期間における新たな前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0065】
(付記6)
付記1乃至4のいずれかに記載の演算装置であって、
前記計算手段は、算出した前記電源装置上限値を用いて、前記消費電力量に基づいて時間の変化に伴う前記電力貯蔵装置の充電量及び放電量を推定し、前記推定した充電量が閾値以下となったときに、それ以前の前記消費電力量に基づいて所定期間における新たな前記電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0066】
(付記7)
付記5又は6に記載の演算装置であって、
前記計算手段は、前記電力貯蔵装置の充電量が閾値以下となったときよりも前における前記電力貯蔵装置の放電量に基づいて、前記新たな電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0067】
(付記8)
付記7に記載の演算装置であって、
前記計算手段は、前記電力貯蔵装置の充電量が閾値以下となったときに対して、直前の前記電力貯蔵装置による一連の放電動作に伴う放電量に基づいて、前記新たな電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0068】
(付記9)
付記8に記載の演算装置であって、
前記計算手段は、前記電力貯蔵装置の充電量が閾値以下となったときに対して、直前の前記電力貯蔵装置による一連の放電動作に伴う放電量と、当該一連の放電動作開始前の充電量と、が均衡するよう前記新たな電源装置上限値を算出する、
演算装置。
【0069】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の演算装置であって、
前記計算手段は、所定期間毎にそれぞれ前記電源装置上限値を算出し、最も大きい値の前記電源装置上限値を特定する、
演算装置。
【0070】
(付記11)
付記10に記載の演算装置であって、
前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、前記計算手段にて特定された最も大きい値の前記電源装置上限値を超えないよう制御する制御手段を備えた、
演算装置。
【0071】
(付記12)
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、による情報処理装置への電力の供給を制御する制御手段と、
前記情報処理装置の消費電力量を検出して記憶手段に記憶する検出手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出し、
前記制御手段は、前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、前記計算手段にて算出された前記電源装置上限値を超えないよう制御する、
制御装置。
【0072】
(付記13)
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、を有する電源モジュールと、
前記電源モジュールから情報処理装置への電力の供給を制御する制御手段を有する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記情報処理装置の消費電力量を検出して記憶手段に記憶する検出手段と、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を算出する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、所定期間における前記消費電力量に基づいて前記電源装置上限値を算出し、
前記制御手段は、前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、前記計算手段にて算出された前記電源装置上限値を超えないよう制御する、
電力供給システム。
【0073】
(付記14)
演算装置に、
記憶手段に記憶されている、電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値のうち、所定期間における前記消費電力量に基づいて、前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する計算手段、
を実現させるためのプログラム。
【0074】
(付記15)
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶手段に記憶し、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を、記憶されている所定期間における前記消費電力量に基づいて算出する、
演算方法。
【0075】
(付記16)
電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、による情報処理装置への電力の供給を制御する電力制御方法であって、
前記情報処理装置の消費電力量を検出して記憶手段に記憶し、
前記情報処理装置に対して前記電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値である電源装置上限値を、記憶されている所定期間における前記消費電力量に基づいて算出し、
前記電源装置からの電力の供給量の特性を表す値を、算出された前記電源装置上限値を超えないよう制御する、
電力供給方法。
【0076】
なお、上述したプログラムは、記憶装置に記憶されていたり、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されている。例えば、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び、半導体メモリ等の可搬性を有する媒体である。
【0077】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【解決手段】本発明の演算装置130は、電源装置と、当該電源装置が供給する電力により充電される電力貯蔵装置と、により電力が供給されるよう構成される情報処理装置の消費電力量の値を記憶する記憶手段131と、上記情報処理装置に対して電源装置から供給される電力の供給量の特性を表す値の上限値として設定される電源装置上限値を算出する計算手段132と、を備える。そして、上記計算手段132は、所定期間における消費電力量に基づいて電源装置上限値を算出する。