(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975166
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】搬送設備と自動倉庫
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20160809BHJP
B66F 9/07 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
B65G1/04 531D
B66F9/07 G
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-500112(P2015-500112)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2013083771
(87)【国際公開番号】WO2014125727
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-27661(P2013-27661)
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】田中 博
【審査官】
筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−303792(JP,A)
【文献】
特開2001−211630(JP,A)
【文献】
実開平3−113792(JP,U)
【文献】
特開平7−157010(JP,A)
【文献】
特開平2−224993(JP,A)
【文献】
特開2001−301915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 − 1/133
B65G 1/14 − 1/20
B66F 9/00 − 11/04
H02G 11/00 − 11/02
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路と、
同一の走行路に沿って走行する第1の搬送台車と第2の搬送台車と、
先端部が前記第1の搬送台車に取り付けられ、基端部が前記走行路に固定され、基端部と先端部との間でU字状に折り返し、かつ走行路の一側方に配置されて、第1の搬送台車に給電する可撓性の第1のケーブルガイドと、
先端部が前記第2の搬送台車に取り付けられ、基端部が前記走行路に固定され、基端部と先端部との間でU字状に折り返し、かつ走行路の他側方に配置されて、第2の搬送台車に給電する可撓性の第2のケーブルガイドとから成る、搬送設備。
【請求項2】
前記第1のケーブルガイド及び第2のケーブルガイドは、先端部が基端部に対し上方にU字状に折り返すように配置され、
走行路の走行方向中心から見て第2の搬送台車寄りのエリアでかつ前記走行路の一側方に、第1のケーブルガイドを下方から支持する第1の支持部材が設けられ、
走行路の走行方向中心から見て第1の搬送台車寄りのエリアでかつ前記走行路の他側方に、第2のケーブルガイドを下方から支持する第2の支持部材が設けられていることを特徴とする、請求項1の搬送設備。
【請求項3】
前記第1の支持部材と第2の支持部材はそれぞれ、間隔を置いて配置されている複数個のブラケットと、複数個のローラとから成り、前記ローラは前記ブラケットに回転自在に支持されていることを特徴とする、請求項2の搬送設備。
【請求項4】
第1のケーブルガイドの基端部は、走行路の中央部で、かつ前記第1の搬送台車寄りのエリア内の位置に固定され、
第1のケーブルガイドは、第1の搬送台車が前記第1の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、走行路の床面に接する状態からU字状に折り返し、第1の搬送台車が前記第2の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、基端部付近からU字状に折り返して、走行路の床面から浮いた状態で、前記第1の支持部材により支持され、
第2のケーブルガイドの基端部は、走行路の中央部で、かつ前記第2の搬送台車寄りのエリア内の位置に固定され、
第2のケーブルガイドは、第2の搬送台車が前記第2の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、走行路の床面に接する状態からU字状に折り返し、第2の搬送台車が前記第1の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、基端部付近からU字状に折り返して、走行路の床面から浮いた状態で、前記第2の支持部材により支持されていることを特徴とする、請求項2の搬送設備。
【請求項5】
前記走行方向に水平面内で直角な方向である左右方向に沿って、前記第1のケーブルガイドと前記第2のケーブルガイドの中央部に給電線が収容され、
前記ローラは、前記左右方向に沿って、前記ブラケットの左右両側に一対設けられていることを特徴とする、請求項3の搬送設備。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの搬送設備と、
走行路寄りの支柱と、走行路とは反対側の支柱と、棚受とを有する棚とから成り、
前記棚は、前記走行路の一側方と他側方とに、一対設けられ、
各棚の走行路寄りの支柱は棚受の走行路寄りの前端よりも奧側へ後退し、走行路寄りの支柱が後退することによって生じた棚受の下部のスペースに、第1のケーブルガイドと第2のケーブルガイドの各々少なくとも一部が配置されている自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動倉庫等に用いる搬送設備に関し、特に搬送設備への給電に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の走行路上を2台の搬送設備が走行する自動倉庫が知られている(特許文献1 特開2007-1692)。このような自動倉庫では、棚を2台の搬送設備が共にアクセスする共用エリアと、一方の搬送設備のみがアクセスする専用エリアとに分割する。そして共用エリアでの搬送設備間の干渉を回避するように、搬送設備を制御する。
【0003】
ところで搬送設備へケーブルガイドにより給電すると、ケーブルガイド同士の干渉が問題になる。この一方で、ケーブルガイドは幅が大きな部材であり、設置には大きなスペースが必要になる。そこでケーブルガイド同士の干渉を回避しながら、コンパクトに一対のケーブルガイドを設置できるようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-1692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、ケーブルガイド同士の干渉を回避しながら、コンパクトに一対のケーブルガイドを設置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の搬送設備は、走行路と、同一の走行路に沿って走行する第1の搬送台車と第2の搬送台車とを備えている。搬送設備はさらに、先端部が前記第1の搬送台車に取り付けられ、基端部が前記走行路に固定され、基端部と先端部との間でU字状に折り返し、かつ走行路の一側方に配置されて、第1の搬送台車に給電する可撓性の第1のケーブルガイドと、先端部が前記第2の搬送台車に取り付けられ、基端部が前記走行路に固定され、基端部と先端部との間でU字状に折り返し、かつ走行路の他側方に配置されて、第2の搬送台車に給電する可撓性の第2のケーブルガイドとを備えている。
【0007】
この発明では、ケーブルガイドが互いに干渉することがなく、かつケーブルガイドから第1の搬送台車と第2の搬送台車に安定して給電できる。また第1の搬送台車と第2の搬送台車、及び第1のケーブルガイドと第2のケーブルガイドは同じ構造でよいので、製造が容易である。
【0008】
好ましくは、前記第1のケーブルガイド及び第2のケーブルガイドは、先端部が基端部に対し上方にU字状に折り返すように配置され、走行路の走行方向中心から見て第2の搬送台車寄りのエリアでかつ前記走行路の一側方に、第1のケーブルガイドを下方から支持する第1の支持部材が設けられ、走行路の走行方向中心から見て第1の搬送台車寄りのエリアでかつ前記走行路の他側方に、第2のケーブルガイドを下方から支持する第2の支持部材が設けられている。このようにすると上方へ折り返されたケーブルガイドが走行路の床面等と擦れて発塵すると共に摩耗することを防止できる。
【0009】
特に好ましくは、前記第1の支持部材と第2の支持部材はそれぞれ、間隔を置いて配置されている複数個のブラケットと、複数個のローラとから成り、前記ローラは前記ブラケットに回転自在に支持されている。このようにするとケーブルガイドが支持部材と擦れて発塵することを防止でき、特にローラを左右一対設けて、ケーブルガイドの左右両端部を下方から支持すると、ケーブルガイドの中央部に収容されている給電線に力を加えることがない。
【0010】
好ましくは、第1のケーブルガイドの基端部は、走行路の中央部で、かつ前記第1の搬送台車寄りのエリア内の位置に固定され、
第1のケーブルガイドは、第1の搬送台車が前記第1の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、走行路の床面に接する状態からU字状に折り返し、第1の搬送台車が前記第2の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、基端部付近からU字状に折り返して、走行路の床面から浮いた状態で、前記第1の支持部材により支持され、
第2のケーブルガイドの基端部は、走行路の中央部で、かつ前記第2の搬送台車寄りのエリア内の位置に固定され、
第2のケーブルガイドは、第2の搬送台車が前記第2の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、走行路の床面に接する状態からU字状に折り返し、第2の搬送台車が前記第1の搬送台車寄りのエリアに位置する際には、基端部付近からU字状に折り返して、走行路の床面から浮いた状態で、前記第2の支持部材により支持されている。
【0011】
このようにすると、比較的短いケーブルガイドで、搬送台車が比較的長い距離を走行できる。また床面から浮いたケーブルガイドが床面に擦れることを確実に防止できる。
【0012】
また好ましくは、前記走行方向に水平面内で直角な方向である左右方向に沿って、前記第1のケーブルガイドと前記第2のケーブルガイドの中央部に給電線が収容され、前記ローラは、前記左右方向に沿って、前記ブラケットの左右両側に一対設けられている。このようにすると、ローラからのストレスが給電線に加わらない。
【0013】
またこの発明の自動倉庫は、前記の搬送設備と、走行路寄りの支柱と、走行路とは反対側の支柱と、棚受とを有する棚とから成り、前記棚は、前記走行路の一側方と他側方とに、一対設けられ、各棚の走行路寄りの支柱は棚受の走行路寄りの前端よりも奧側へ後退し、走行路寄りの支柱が後退することによって生じた棚受の下部のスペースに、第1のケーブルガイドと第2のケーブルガイドの各々少なくとも一部が配置されている。このようにすると、棚受の下部のスペースを利用してケーブルガイドを収容できるので、省スペースである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0016】
図1〜
図3に、実施例の自動倉庫2と搬送台車4,5とを示す。搬送台車4,5は例えばスタッカークレーンであるが、マスト6を備えない他の搬送台車でも良い。搬送台車4,5は同一の構造で、マスト6に沿って昇降する移載装置7を備え、移載装置7を直接昇降させる代わりに、図示しない昇降台に移載装置7を搭載し、昇降台をマスト6に沿って昇降させても良い。搬送台車4には可撓性のケーブルガイド8を、搬送台車5には可撓性のケーブルガイド9を取り付け、地上側の基端部22,23からケーブルガイド8,9を介して搬送台車4,5へ給電する。28,29は、搬送台車4,5に取り付けられたケーブルガイド8,9の先端部である。
【0017】
搬送台車4,5は走行レール10上を走行し、Cはレール中心で、走行レール10の走行方向の中心である。走行レール10とその左右(
図1での上下で、搬送台車4,5の走行方向に水平面内で直角な方向)のスペースとが、搬送台車4,5の走行スペースである。また走行スペースの左右に、例えば左右一対の棚12,13が設けられ、左右一対ではなく、左右一方のみに棚を設けても良い。棚12,13は、走行レール10の中央部にあり搬送台車4,5が共にアクセスする共用エリア14と,走行レール10の一端側にあり搬送台車4のみがアクセスする専用エリア15,及び走行レール10の他端側にあり搬送台車5のみがアクセスする専用エリア16に区分されている。18は、走行レール10から見て、棚12,13の後端の支柱である。また
図3に示すように、前側の支柱36は上下複数段の棚受の内の最下段の棚受38の下部に後退して、最下段の棚受38の下部のスペースの一部をケーブルガイド8,9が利用できるようにする。そして支柱18,36により棚12,13を支持する。
【0018】
ケーブルガイド8は走行レール10の側方で左右一方に、ケーブルガイド9は走行レール10の側方で左右他方に配置され、ケーブルガイド8,9の基端部22,23は、レール中心Cに関して、対称に配置されている。そしてケーブルガイド8は棚12の最下部の棚受の下方のスペースを利用するように配置され、ケーブルガイド9は棚13の最下部の棚受の下方のスペースを利用するように配置されている。また搬送台車4とケーブルガイド8とから成るユニットと、搬送台車5とケーブルガイド9とから成るユニットとは構造が同一で、レール中心Cに関して、マスト6,6が向き合うように、対称に配置されている。このため同一の搬送台車4,5とケーブルガイド8,9とを製作して、自動倉庫2内に設置すれば良く、製造コストを小さくできる。また搬送台車4,5に対して、レール中心C寄りにマスト6,6を配置すると、走行レール10の端部にマスト6,6ではなく移載装置7,7が位置するため、搬送台車4,5がアクセスできる棚の範囲が広くなる。
【0019】
搬送台車5とケーブルガイド9とを例に、搬送台車4,5の位置とケーブルガイド8,9の姿とを
図2に示し、搬送台車4とケーブルガイド8では、レール中心Cに関し
図2と対称になる。搬送台車5は専用エリア16の最も奧まで走行でき、搬送台車4は専用エリア15の最も奧まで走行できる。ケーブルガイド8,9は、基端部22,23と先端部28,29との間で、U字状に折り返すU字部26を有し、U字部26の位置は搬送台車4,5の走行によって変化する。搬送台車5がレール中心Cから専用エリア16側へ走行する際には、ケーブルガイド9は走行路の床面に接した状態からU字部26で折り返し、レール中心Cから専用エリア15側へ走行する際には、ケーブルガイド9は基端部23の付近からU字状に折り返し、走行路の床面から浮いた状態で先端部29へと延びている。そしてケーブルガイド8,9が垂れて自動倉庫2の床面と擦れると発塵し、またケーブルガイド8,9を傷めるので、搬送台車4用に支持部材20を、搬送台車5用に支持部材21を走行レール10の側方に設けて、ケーブルガイド8,9の下部を支持する。搬送台車4側の支持部材20はレール中心Cよりも専用エリア16寄りに、搬送台車5側の支持部材21はレール中心Cよりも専用エリア15寄りに、各々適宜の間隔を開けて配置する。
【0020】
棚12,13の在庫と、搬送台車4,5の動作は、地上側の制御部24により制御され、搬送台車4,5と地上側の制御部24とは、ケーブルガイド8,9を介して、あるいは光通信等の無線通信により通信する。そして制御部24は搬送台車4,5の干渉を回避するように、搬送作業を指令する。
【0021】
図3は、搬送台車4を例にケーブルガイド8と棚12,13の配置とを示し、30は駆動輪、31は走行モータ、32は移載装置を昇降させるための昇降モータである。各支持部材20には、C字状のブラケットの2側辺33に例えば左右一対のローラ34,34が回転自在に支持され、ローラ34はケーブルガイド8の左右両端付近を下方から支持する。これによってケーブルガイド8の底面が床面と擦れることを防止できる。なお支持部材21の構造は支持部材20と同一で、レール中心Cに関し、支持部材20と例えば点対称に配置されている。一対のローラ34,34は、ケーブルガイド8,9の中央部に収容されている給電線を外すように、ケーブルガイド8,9を支持する。
【0022】
棚受38には、フラットパネルディスプレイの基板を収容したカセット、半導体ウェファーを収容したカセット等の荷物39が載置され、後端の支柱18は
図1に示すように配置され、前側の支柱36は棚受38の前端よりも奧へ後退した位置に配置されている。このため支柱36よりも走行レール10寄りのスペースを、ケーブルガイド8,9が利用できる。
図3では、棚受38の下部のスペースにケーブルガイド8が一部を残して収容されているが、ケーブルガイド8の全体を収容しても良い。
【0023】
実施例では1本の走行レール10を用いたが、2本の走行レールを配置し、左右方向に沿って2本の走行レールの外側に、ケーブルガイド8,9を配置しても良い。また実施例で搬送設備とは、搬送台車4,5と、ケーブルガイド8,9、ローラ34を備える支持部材20,21、それらの設置スペースとから成る設備である。
【0024】
実施例では以下の効果が得られる。
1) ケーブルガイド8,9間の干渉を回避でき、またレールからの給電と異なり搬送台車4,5に安定して給電できる。
2) 棚12,13の下部のスペースをケーブルガイド8,9が利用するので、省スペースである。
3) 搬送台車4,5とケーブルガイド8,9を同一の構造とするので、製造コストを小さくできる。
4) 支持部材20,21により、ケーブルガイド8,9が床面と擦れることを防止し、ローラ34によりケーブルガイド8,9を滑らかに運動させることができる。従ってクリーンルーム用の自動倉庫に特に適している。
【符号の説明】
【0025】
2 自動倉庫 4,5 搬送台車 6 マスト 7 移載装置
8,9 ケーブルガイド 10 走行レール 12,13 棚
14 共用エリア 15,16 専用エリア 18 支柱
20,21 支持部材 22,23 基端部 24 制御部
26 U字部 28,29 先端部 30 駆動輪
31 走行モータ 32 昇降モータ 34 ローラ
36 支柱 38 棚受 39 荷物 C レール中心