特許第5975196号(P5975196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5975196
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】光学材料用組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/08 20060101AFI20160809BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20160809BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20160809BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20160809BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   C08G75/08
   C08G18/38 076
   C08K5/17
   C08K3/06
   G02B1/04
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-524556(P2016-524556)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2016056153
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-72690(P2015-72690)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】竹村 紘平
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/038654(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/08
C08G 18/38
C08K 3/06
C08K 5/17
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表されるエピスルフィド化合物とを含む組成物であって、式(1)で表される化合物および式(2)で表されるエピスルフィド化合物の総量に対する式(1)で表される化合物の割合が0.001〜5.0質量%である光学材料用組成物。
【化3】
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)
【請求項2】
前記式(2)で表される化合物を40〜99.999質量%含む、請求項1に記載の光学材料用組成物。
【請求項3】
さらにポリチオールを含む、請求項2に記載の光学材料用組成物。
【請求項4】
さらにポリイソシアネートを含む、請求項3に記載の光学材料用組成物。
【請求項5】
さらに硫黄を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の光学材料用組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光学材料用組成物と、前記光学材料用組成物の総量に対して0.0001質量%〜10質量%の重合触媒とを含む、重合硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜5に記載の光学材料用組成物または請求項6に記載の重合硬化性組成物を硬化した光学材料。
【請求項8】
請求項7に記載の光学材料を含む光学レンズ。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の光学材料用組成物に、重合触媒を前記光学材料用組成物の総量に対して0.0001〜10質量%添加し、重合硬化させる工程を含む、光学材料の製造方法。
【請求項10】
前記式(2)で表される重合性化合物と硫黄とを一部重合反応させた後、重合硬化させることを特徴とする、請求項9に記載の光学材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエピスルフィド化合物を含む光学材料用組成物に関し、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、中でもプラスチックレンズに好適に使用される光学材料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは軽量かつ靭性に富み、染色も容易である。プラスチックレンズに特に要求される性能は、低比重、高透明性および低黄色度、光学性能として高屈折率および高アッベ数、高耐熱性、高強度などである。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレンズの色収差を低減する。
近年、高屈折率および高アッベ数を目的として、硫黄原子を有する有機化合物を用いた例が数多く報告されている。中でも硫黄原子を有するポリエピスルフィド化合物は、屈折率とアッベ数とのバランスが良いことが知られている(特許文献1)。また、ポリエピスルフィド化合物は様々な化合物と反応可能であることから、物性向上のため各種化合物との組成物が提案されている(特許文献2〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−110979号公報
【特許文献2】特開平10−298287号公報
【特許文献3】特開2001−002783号公報
【特許文献4】特開2001−131257号公報
【特許文献5】特開2002−122701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらエピスルフィド化合物を含む組成物は、重合硬化した際に透明性、脈理、色調、耐光性等の光学特性が悪化することから、改善が求められていた。特に、これらの改善を簡便に、例えば容易に入手可能な添加剤を加えることで行うことが可能な手法が望まれていた。
すなわち、本発明の課題は、重合硬化した際、高い透明性、低レベルの脈理、優れた色調、優れた耐光性等の品質に優れた光学材料が簡便に得られる光学材料用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれらの光学特性を改善すべく鋭意検討したところ、特定の化合物とエピスルフィド化合物とを含む光学材料用組成物により本課題を解決し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0006】
<1> 下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表されるエピスルフィド化合物とを含む組成物であって、式(1)で表される化合物および式(2)で表されるエピスルフィド化合物の総量に対する式(1)で表される化合物の割合が0.001〜5.0質量%である光学材料用組成物。
【化1】
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)
<2> 前記式(2)で表される化合物を40〜99.999質量%含む、<1>に記載の光学材料用組成物。
<3> さらにポリチオールを含む、上記<2>に記載の光学材料用組成物。
<4> さらにポリイソシアネートを含む、上記<3>に記載の光学材料用組成物。
<5> さらに硫黄を含む、上記<1>から<4>のいずれかに記載の光学材料用組成物。
<6> 上記<1>から<5>のいずれかに記載の光学材料用組成物と、前記光学材料用組成物の総量に対して0.0001質量%〜10質量%の重合触媒とを含む、重合硬化性組成物。
<7> 上記<1>から<5>のいずれかに記載の光学材料用組成物または上記<6>に記載の重合硬化性組成物を硬化した光学材料。
<8> 上記<7>に記載の光学材料を含む光学レンズ。
<9> 上記<1>から<5>のいずれかに記載の光学材料用組成物に、重合触媒を前記光学材料用組成物の総量に対して0.0001〜10質量%添加し、重合硬化させる工程を含む、光学材料の製造方法。
<10> 前記式(2)で表される重合性化合物と硫黄とを一部重合反応させた後、重合硬化させることを特徴とする、上記<9>に記載の光学材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高屈折率を有する光学材料を製造する際、高い透明性、低レベルの脈理、優れた色調、優れた耐光性等の品質に優れた光学材料が得られる光学材料組成物を簡便に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、本願の優先権主張の基礎となる日本国特許出願である特願2015-072690号(2015年3月31日出願)の特許請求の範囲、明細書、および図面の開示内容を包含する。
本発明は、下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表される化合物とを含む光学材料用組成物、及びさらに前記式(2)で表される化合物と重合可能な化合物を含む光学材料用組成物である。
【化2】
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)
本発明の光学材料用組成物における前記式(1)で表される化合物の割合は、式(1)で表される化合物および前記式(2)で表されるエピスルフィド化合物の総量に対して0.001〜5.0質量%であるが、より好ましくは0.005〜3.0質量%、特に好ましくは0.01〜1.0質量%である。式(1)で表される化合物が0.001質量%を下回ると重合硬化した際に脈理が発生したり、離型性が悪化する場合があり、5.0質量%を超えると十分な光学特性が得られない場合がある。
本発明の光学材料用組成物中の前記式(2)で表される化合物の割合は、40〜99.999質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜99.995質量%であり、特に好ましくは60〜99.99質量%である。40質量%未満では、エピスルフィド化合物の優れた光学特性を十分に活かせない。
以下、前記式(1)で表される化合物、および前記式(2)で表されるエピスルフィド化合物について詳細に説明する。
【0009】
前記式(1)で表される化合物は既知の物質であり、各試薬メーカーより簡便に購入できる。
【0010】
本発明の光学材料用組成物では重合性化合物として少なくとも1種以上の前記式(2)で表されるエピスルフィド化合物を用いる。式(2)のエピスルフィド化合物の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタンなどのエピスルフィド類が挙げられる。式(2)のエピスルフィド化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
中でも好ましい化合物は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド(式(2)でn=0)、およびビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド(式(2)でm=0、n=1)であり、最も好ましい化合物は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド(式(2)でn=0)である。
【0011】
上述のように、本発明の光学材料用組成物は前記式(2)で表される化合物と重合可能な化合物をさらに含んでもよい。重合可能な化合物としては、前記式(2)で表される化合物以外のエピスルフィド化合物、ポリチオール化合物、ビニル化合物、メタクリル化合物、アクリル化合物、アリル化合物が挙げられる。好ましい重合可能な化合物はポリチオール化合物であり、さらにポリチオール化合物と反応可能なポリイソシアネート化合物、硫黄を含むことはより好ましい。
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の加熱時の色調を改善するためポリチオール化合物を重合性化合物として含んでも良い。ポリチオール化合物は、分子中に2個以上のチオール基を含む化合物である。ポリチオール化合物の含有量は、光学材料用組成物の合計を100質量%とした場合、通常は1〜25質量%であり、好ましくは2〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。ポリチオール化合物の含有量が1質量%以上であればレンズ成型時の黄変が抑制され、25質量%以下であれば耐熱性の低下が防止されうる。本発明で使用するポリチオール化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
その具体例としては、メタンジチオール、メタントリチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルオキシ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,4−ジメルカプトブタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,4−ジメルカプトメチル−1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1−チアン、2,5−ジメルカプトエチル−1−チアン、2,5−ジメルカプトメチルチオフェン、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4、4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−メルカプトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)スルホン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,4−チオフェンジチオール、1、1、3、3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを挙げることができる。
これらのなかで好ましい具体例は、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、4、8−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、4、7−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、5、7−ジメルカプトメチル−1、11−ジメルカプト−3、6、9−トリチアウンデカン、1、1、3、3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート)、およびトリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネートであり、より好ましくは、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ビス(2−メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、およびペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートであり、特に好ましい化合物は、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、および4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタンである。
【0012】
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の強度を改善するためポリイソシアネート化合物を重合性化合物として含んでも良い。ポリイソシアネート化合物は分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。特に、光学材料用組成物はポリチオール化合物とともにポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とポリチオール化合物のチオール基とは容易に熱硬化反応して高分子量化し、光学材料の機械的強度が向上しうる。ポリイソシアネート化合物の含有量は、光学材料用組成物の合計を100質量%とした場合、通常は1〜25質量%であり、好ましくは2〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。ポリイソシアネート化合物の含有量が1質量%以上であれば強度が向上し、25質量%以下であれば色調の低下を抑制できる。本発明で使用するポリイソシアネート化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
その具体例としては、ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,6−ビス(イソシアネートメチル)デカヒドロナフタレン、リジントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、3−(2’−イソシアネートシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,2’−ビス(4−イソシアネートフェニル)プロパン、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビス(ジイソシアネートトリル)フェニルメタン、4,4’,4’’−トリイソシアネート−2,5−ジメトキシフェニルアミン、3,3’−ジメトキシベンジジン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,1’−メチレンビス(4−イソシアネートベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−メチル−4−イソシアネートベンゼン)、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアネート−2−プロピル)ベンゼン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ナフタレン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアネートメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルネン、ビス(イソシアネートメチル)アダマンタン、チオジエチルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ビス〔(4−イソシアネートメチル)フェニル〕スルフィド、2,5−ジイソシアネート−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアネートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアネートメチルチオフェン、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネートを挙げることができる。
【0013】
しかしながら、本発明の対象となるポリイソシアネート化合物に関してはこれらに限定されるわけではなく、また、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわない。
これらのなかで好ましい具体例は、ジイソシアネート化合物であり、さらに好ましくはイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルネン、および2,5−ジイソシアネートメチル−1,4−ジチアンの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であり、中でも好ましい化合物は、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジイソシアネートであり、特に好ましい化合物は、イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンである。
【0014】
さらに、光学材料用組成物中に含まれるポリイソシアネート化合物のNCO基の総数に対するポリチオール化合物のSH基の総数の割合、即ち[組成物中のSH基数/組成物中のNCO基数](SH基/NCO基)は、好ましくは1.0〜2.5であり、より好ましくは1.25〜2.25であり、さらに好ましくは1.5〜2.0である。上記割合が1.0を下回るとレンズ成型時に黄色く着色する場合があり、2.5を上回ると耐熱性が低下する場合がある。
【0015】
本発明の光学材料用組成物は、得られる樹脂の屈折率を向上するため硫黄を重合性化合物として含んでも良い。硫黄の含有量は、光学材料用組成物の合計を100質量%とした場合、通常は0.1〜15質量%であり、好ましくは、0.2〜10質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%である。0.1質量%以上であれば屈折率向上に寄与し、15質量%以下であれば重合成組成物の粘度を制御できる。また、本発明の光学材料の製造法においては硫黄を均一に混合させるため前記式(2)で表される化合物と硫黄とを予め一部重合反応させておくこともできる。
この予備的な重合反応の条件は、好ましくは−10℃〜120℃で0.1〜240時間、より好ましくは0〜100℃で0.1〜120時間、特に好ましくは20〜80℃で0.1〜60時間である。予備的な反応を進行させるために触媒を用いることは効果的であり、好ましい例として2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、3,5−ジメチルピラゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフィンアミド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,3−ジフェニルグアジニン、1,1,3,3−テトラメチレングアニジン、アミノグアニジン尿素、トリメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、ジメチルエチルチオ尿素、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリウム等が挙げられる。さらには、この予備的な重合反応により硫黄を10%以上(反応前を100%とする)消費させておくことが好ましく、20%以上消費させておくことがより好ましい。予備的な反応は、大気、窒素等の不活性ガス下、常圧もしくは加減圧による密閉下等、任意の雰囲気下で行ってよい。なお、予備的な反応の進行度を検知するために液体クロマトグラフィーや屈折率計を用いることも可能である。
本発明で用いる硫黄の形状はいかなる形状でもかまわない。具体的には、硫黄は、微粉硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、結晶硫黄、昇華硫黄等であるが、好ましくは、粒子の細かい微粉硫黄である。
本発明に用いる硫黄の製法はいかなる製法でもかまわない。硫黄の製法は、天然硫黄鉱からの昇華精製法、地下に埋蔵する硫黄の溶融法による採掘、石油や天然ガスの脱硫工程などから得られる硫化水素等を原料とする回収法等があるが、いずれの製法でもかまわない。
本発明に用いる硫黄の粒径は10メッシュより小さいこと、即ち硫黄が10メッシュより細かい微粉であることが好ましい。硫黄の粒径が10メッシュより大きい場合、硫黄が完全に溶解しにくい。このため、第1工程で好ましくない反応等が起き、不具合が生じる場合がある。硫黄の粒径は、30メッシュより小さいことがより好ましく、60メッシュより小さいことが最も好ましい。
本発明に用いる硫黄の純度は好ましくは、98%以上であり、より好ましくは、99.0%以上であり、さらに好ましくは99.5%以上であり、最も好ましくは99.9%以上である。硫黄の純度が98%以上であると、98%未満である場合に比べて、得られる光学材料の色調がより改善する。
【0016】
本発明の光学材料用組成物を重合硬化して光学材料を得るに際して、重合触媒を添加することが好ましい。すなわち、本発明の組成物は前記光学材料用組成物と重合触媒とを含む重合硬化性組成物でありうる。重合触媒としてはアミン、ホスフィン、またはオニウム塩が用いられるが、特にオニウム塩、中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、および第2級ヨードニウム塩が好ましく、中でも光学材料用組成物との相溶性の良好な第4級アンモニウム塩および第4級ホスホニウム塩がより好ましく、第4級ホスホニウム塩がさらに好ましい。より好ましい重合触媒としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい重合触媒は、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、およびテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
重合触媒の添加量は、組成物の成分、混合比および重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は光学材料用組成物の合計100質量%に対して、0.0001質量%〜10質量%、好ましくは0.001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.01質量%〜1質量%、最も好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。重合触媒の添加量が10質量%より多いと急速に重合する場合がある。また、重合触媒の添加量が0.0001質量%より少ないと光学材料用組成物が十分に硬化せず耐熱性が不良となる場合がある。したがって、本発明の好ましい一形態において、光学材料の製造方法は重合触媒を前記光学材料用組成物総量に対して0.0001〜10質量%添加し、重合硬化させる工程を含む。
【0017】
また、本発明の光学材料を製造する際、光学材料用組成物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合調整剤、ブルーイング剤、顔料等の添加剤を加え、得られる光学材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。すなわち、本発明の光学材料用組成物は紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合調整剤、ブルーイング剤、顔料等の添加剤を含み得る。
紫外線吸収剤の好ましい例としてはベンゾトリアゾール系化合物であり、特に好ましい化合物は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3、5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、および2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。
これら紫外線吸収剤の添加量は、通常、光学材料用組成物の合計100質量%に対してそれぞれ0.01〜5質量%である。
【0018】
光学材料用組成物を重合硬化させる際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて重合調整剤を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。これらのうち好ましいものは、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物であり、より好ましいものはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。さらに好ましい化合物は、ジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、およびトリフェニルアンチモンジクロライドであり、最も好ましい化合物は、ジブチルスズジクロライドである。重合調整剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。
重合調整剤の添加量は、光学材料用組成物の総計100質量%に対して、0.0001〜5.0質量%であり、好ましくは0.0005〜3.0質量%であり、より好ましくは0.001〜2.0質量%である。重合調整剤の添加量が0.0001質量%以上であれば、得られる光学材料において充分なポットライフを確保でき、重合調整剤の添加量が5.0質量%以下であれば、光学材料用組成物が充分に硬化し、得られる光学材料の耐熱性の低下を抑制できる。
【0019】
このようにして得られた光学材料用組成物または重合硬化性組成物はモールド等の型に注型し、重合させて光学材料とする。これにより、本発明の光学材料用組成物または重合硬化性組成物を硬化した光学材料が得られる。
本発明の組成物の注型に際し、0.1〜5μm程度の孔径のフィルター等で不純物を濾過し除去することは、本発明の光学材料の品質を高める上からも好ましい。
本発明の組成物の重合は通常、以下のようにして行われる。即ち、硬化時間は通常1〜100時間であり、硬化温度は通常−10℃〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間保持する工程、0.1℃〜100℃/hの昇温を行う工程、0.1℃〜100℃/hの降温を行う工程によって、又はこれらの工程を組み合わせて行う。なお、硬化時間は昇温冷却過程も含む重合硬化時間を指し、所定の重合(硬化)温度で保持する工程に加えて、所定の重合(硬化)温度へと昇温・冷却工程を含む。
また、硬化終了後、得られた光学材料を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行うことは、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに得られた光学材料に対して、必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等の表面処理を行ってもよい。
本発明の光学材料は光学レンズとして好適に用いることができる。本発明の組成物を用いて製造される光学レンズは、高い透明性、低レベルの脈理、優れた色調、優れた耐光性等の光学特性に優れるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせによって球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.透明性の評価方法
以下の実施例および比較例に記載の方法で、−4Dのレンズを10枚作製し、暗室内で蛍光灯下、観察した。すべて白濁が観測されないものをA、7から9枚白濁が観測されないものをB、白濁が観測されないものが6枚以下をCとした。A,Bが合格レベルである。
2.脈理の評価方法
以下の実施例および比較例に記載の方法で−15Dのレンズを10枚作製し、シュリーレン法により目視で観察した。すべて脈理が観測されないものをA、7から9枚脈理が観測されないものをB、脈理が観測されないものが6枚以下をCとした。A,Bが合格レベルである。
3.初期色調の評価方法
以下の実施例および比較例に記載の方法で、3.0mm厚の平板を作製し、カラーテクノシステム社製色彩計JS−555を用い、YI値を測定した。この値が1.0未満をA、1.0以上1.5未満をB、1.5以上をCとした。A、Bが合格レベルである。
なお、表1における色調とはこの方法で評価された初期色調のことを指す。
4.耐光性の評価方法
(1)初期色調の測定
以下の実施例および比較例に記載の方法で、3.0mm厚の平板を作製し、カラーテクノシステム社製色彩計JS−555を用い、YI値を測定した。この値をpとする。
(2)光による色調変化の測定
初期値を測定後、カーボンアーク燃焼光に60時間照射し、その後のYI値を測定した。この値をqとする。
(q−p)/pの値を算出し、この値が1.0未満をA、1.0以上2.0未満をB、2.0以上をBとした。A、Bが合格レベルである。
5.離型性の評価方法
以下の実施例および比較例に記載の方法で−15Dのレンズを作製し、重合硬化後のモールドからの離型性を評価した。離型が容易であるものをA、離型するがやや困難なものをB、離型が困難なものをCとした。A、Bが合格レベルである。
【0021】
実施例1〜6、比較例2
前記式(2)で表されるエピスルフィド化合物であるビス(β−エピチオプロピル)スルフィド(以下「化合物a」)と前記式(1)で表される化合物(以下「化合物b」)とを混合し、化合物bの割合が表1の割合となる組成物を調製した。得られた組成物93質量部に、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド7質量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量部、重合触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.05質量部を添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4D、−15Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。平板について色調および耐光性評価を行い、−4Dレンズについて透明性評価を行い、−15Dレンズについて脈理、離型性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0022】
比較例1
化合物aと化合物bとを混合した組成物の代わりに化合物aを用いた以外は実施例1と同様に行い、成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表1に示す。
【0023】
実施例7〜12、比較例4
前記式(2)で表されるエピスルフィド化合物であるビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド(以下、「化合物c」)と化合物bとを混合し、化合物bの割合が表1の割合となる組成物を調製した。得られた組成物93質量部に、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド7質量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量部、重合触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.05質量部を添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4D、−15Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表1に示す。
【0024】
比較例3
化合物cと化合物bとを混合した組成物の代わりに化合物cを用いた以外は実施例7と同様に行い、成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から、化合物aまたはcと化合物bとを含み、化合物aまたはcと化合物bとの総量に対する化合物bの割合が0.001〜5.0質量%である光学材料用組成物を用いた場合には、透明性、脈理、色調、耐光性、離形性に優れることが確認される。一方、化合物bを含まない組成物を用いた比較例1や比較例3では透明性や離形性が不十分であり、かつ、脈理が発生した。また、化合物bの含有量が多い比較例2および比較例4では色調および耐光性が不十分であった。
【0027】
実施例13〜18、比較例6
化合物aと化合物bとを混合し、化合物bの割合が表2の割合となる組成物を調製した。得られた組成物60質量部に、チオール化合物としてビス(2−メルカプトエチル)スルフィド20質量部、イソシアネート化合物としてm−キシリレンジイソシアネート15質量部、硫黄(純度98%以上の微粉末硫黄)5質量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量部、重合触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.05質量部を添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4D、−15Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。平板について色調および耐光性評価を行い、−4Dレンズについて透明性評価を行い、−15Dレンズについて脈理、離型性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0028】
比較例5
化合物aと化合物bとを混合した組成物の代わりに化合物aを用いた以外は実施例13と同様に行い、成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表2に示す。
【0029】
実施例19〜24、比較例8
化合物cと化合物bとを混合し、化合物bの割合が表2の割合となる組成物を調製した。得られた組成物60質量部に、チオール化合物としてビス(2−メルカプトエチル)スルフィド20質量部、イソシアネート化合物としてm−キシリレンジイソシアネート15質量部、硫黄5質量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量部、重合触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド0.05質量部を添加後、20℃でよく混合し均一とした。ついで1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4D、−15Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表2に示す。
【0030】
比較例7
化合物cと化合物bとを混合した組成物の代わりに化合物cを用いた以外は実施例19と同様に行い、成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2から、化合物aまたはcと化合物bとを含み、化合物aまたはcと化合物bとの総量に対する化合物bの割合が0.001〜5.0質量%である光学材料用組成物を用いた場合には、透明性、脈理、色調、耐光性、離形性に優れることが確認される。一方、化合物bを含まない組成物を用いた比較例5や比較例7では透明性や離形性が不十分であり、かつ、脈理が発生した。また、化合物bの含有量が多い比較例6および比較例8では色調および耐光性が不十分であった。
【0033】
実施例25〜30、比較例10
化合物aと化合物bとを混合し、化合物bの割合が表3の割合となる組成物を調製した。得られた組成物79質量部に、硫黄14質量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量部に重合触媒としてメルカプトメチルイミダゾール0.5質量部を添加後、60℃で予備的に重合反応させた。その後20℃に冷却した後、チオール化合物としてビス(2−メルカプトエチル)スルフィド7質量部、重合調整剤としてジブチルスズジクロライド0.2質量部、重合触媒としてテトラメチルホスホニウムブロマイド0.03質量部の混合液を加え、均一に混合した後、1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4D、−15Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表3に示す。
【0034】
比較例9
化合物aと化合物bとを混合した組成物の代わりに化合物aを用いた以外は実施例25と同様に行い、成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表3に示す。
【0035】
実施例31〜36、比較例12
化合物cと化合物bとを混合し、化合物bの割合が表3の割合となる組成物を調製した。得られた組成物79質量部に、硫黄14質量部、紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール1.0質量部、重合触媒として2−メルカプト−1−メチルイミダゾール0.5質量部を添加後、60℃で予備的に重合反応させた。その後20℃に冷却した後、チオール化合物としてビス(2−メルカプトエチル)スルフィド7質量部、重合調整剤としてジブチルスズジクロライド0.2質量部、重合触媒としてテトラメチルホスホニウムブロマイド0.03質量部の混合液を加え、均一に混合した後、1.3kPaの真空度で脱気を行い、2枚のガラス板とテープから構成されるモールド(3.0mm厚の平板用および−4D、−15Dのレンズ用)へ注入し、30℃で10時間加熱し、100℃まで10時間かけて一定速度で昇温させ、最後に100℃で1時間加熱し、重合硬化させた。放冷後、モールドから離型し、110℃で60分アニール処理して成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表3に示す。
【0036】
比較例11
化合物cと化合物bとを混合した組成物の代わりに化合物cを用いた以外は実施例31と同様に行い、成型板(3.0mm厚の平板および−4D、−15Dのレンズ)を得た。評価結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3から、化合物aまたはcと化合物bとを含み、化合物aまたはcと化合物bとの総量に対する化合物bの割合が0.001〜5.0質量%である光学材料用組成物を用いた場合には、透明性、脈理、色調、耐光性、離形性に優れることが確認される。一方、化合物bを含まない組成物を用いた比較例9や比較例11では透明性や離形性が不十分であった。また、化合物bの含有量が多い比較例10および比較例12では色調および耐光性が不十分であった。
【要約】
本発明は、重合硬化した際、高い透明性、低レベルの脈理、優れた色調、優れた耐光性等の品質に優れた光学材料が得られる光学材料用組成物を提供する。
下記式(1)で表される化合物と下記式(2)で表されるエピスルフィド化合物とを含む組成物であって、式(1)で表される化合物および式(2)で表されるエピスルフィド化合物の総量に対する式(1)で表される化合物の割合が0.001〜5.0質量%である光学材料用組成物により、高屈折率を有する光学材料を製造する際、透明性、脈理、色調、耐光性等の品質に優れた光学材料が得られる光学材料組成物を提供することが可能になった。
【化4】
(式中、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)