特許第5975263号(P5975263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975263
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20160809BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20160809BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F24F7/007 B
   F24F7/06 C
   F24F11/02 P
   F24F11/02 M
   F24F11/02 S
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-101271(P2012-101271)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-228160(P2013-228160A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】沼田 茂生
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−065577(JP,A)
【文献】 特開2007−205610(JP,A)
【文献】 特開平06−117670(JP,A)
【文献】 特開平10−300148(JP,A)
【文献】 特開2012−149787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームに備えられる複数のファンフィルタユニットと、
前記クリーンルームにおける空気清浄度を検出する清浄度センサと、
検出された前記空気清浄度に基づいて前記複数のファンフィルタユニットにおける少なくとも一部の運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を変更するように制御する制御装置とを備え
前記制御装置は、
消費電力が最も高くなると予測されることに応じて消費電力を抑制すべきと設定される節電時間帯において消費電力が許容限度値を超えないようにするため、前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を低くするとともに、前記節電時間帯の直前の一定期間である節電前時間帯において、前記節電時間帯における前記空気清浄度の値が許容限度値を超えないように事前に前記空気清浄度の値を低下させるため、前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を高くするように制御したうえで、前記節電時間帯において前記空気清浄度の値が閾値を超えないように前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を変更する
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記清浄度センサは、前記クリーンルームを分割した複数のエリアごとに備えられ、
前記制御装置は、
前記エリアごとに個別に前記ファンフィルタユニットの運転強度の調整を行う
ことを特徴とする請求項に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記複数のファンフィルタユニットを第1群と第2群とでグループ分けし、前記第1群のファンフィルタユニットについては標準の運転強度により固定的に運転させ、前記第2群のファンフィルタユニットについては前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットとして運転させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記クリーンルームの平面方向において配列される前記複数のファンフィルタユニットのうち、縦方向および横方向において互いに隣接しない複数のファンフィルタユニットを前記第1群のファンフィルタユニットとして運転し、前記第1群以外の複数のファンフィルタユニットを前記第2群のファンフィルタユニットとして運転する
ことを特徴とする請求項に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記クリーンルームに存在する人をその位置とともに検出する人検出装置を備え、
前記制御装置は、
検出された人の数と各人の位置と、検出された前記空気清浄度とに基づいて決定したファンフィルタユニットと運転強度の組み合わせにしたがって、前記複数のファンフィルタユニットのそれぞれを運転する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記人検出装置は、前記クリーンルームを分割した複数のエリアごとに備えられ、
前記制御装置は、
前記エリアごとに検出された人の数と各人の位置と、前記エリアごとに検出された前記空気清浄度とに基づいて決定したファンフィルタユニットと運転強度の組み合わせにしたがって、前記エリアごとに個別に前記ファンフィルタユニットの運転強度を変更する
ことを特徴とする請求項に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、節電意識が高まってきており、例えば、オフィスや工場などでもこれまで以上の節電が求められている状況にある。
そこで、例えば特許文献1のように、過去の実績から求めた空調部分負荷特性と室内熱容量特性に基づいて、空調電力量の目標値を実現する設定温度を決定し、この設定温度となるように空調機を制御する需要家エネルギーマネジメントシステムが知られている。これにより、例えば、オフィスなどの室内の構造や配置物や在室状況などによる影響を考慮して、空調電力量の目標値を実現する設定温度を高い精度で求めることができ、また、需要家の快適性などへの影響も少なくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−36084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、半導体集積回路などの精密装置や非常に高い衛生的品質が求められる食品などを製造する工場などでは、所要の空気清浄度が確保されたクリーンルーム内で製品の製造を行う。
このようなクリーンルームは、その室内の空気清浄度を維持するためにファンフィルタユニットを備える。ファンフィルタユニットは、フィルタとファンが一体化された空調機器である。ファンフィルタユニットは、ファンを回転させることによりクリーンルームから一旦排気された空気をクリーンルーム内に排気させる。この際に、空気中に浮遊している塵がフィルタにより濾過されることで、クリーンルーム内の空気が清浄化される。
【0005】
ファンフィルタユニットは、細かい粒子の塵埃を濾過する必要がある必要から、そのフィルタの目も相当に細かい。このために、フィルタに空気を通過させる際の圧力損失が大きい。そこで、吸排気量を確保するためには、ファンの回転を高くしたり、ファンフィルタユニットの設置数を増加させたりする必要がある。これにより、ファンフィルタユニット全体としての消費電力は相当に高くなってしまっている。
【0006】
クリーンルームにおける消費電力の低減のためには、ファンフィルタユニットの運転強度を制御することが有効である。しかし、現状においては、空気清浄度の確保を優先しているために、ファンフィルタユニットは、許容限度の空気清浄度を確実に満足するように予め定められた運転強度によって定常的に運転されているというのが実情である。
また、特許文献1は、あくまでもオフィスにおける冷暖房、換気などの空調機器を、空調電力量の目標値以下とするように電力制御を行うものであるために、空気清浄度の厳密な管理が要求されるクリーンルームに適用することは難しい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、クリーンルームの空調機器に適した空調制御が行える電力制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様としての電力制御システムは、クリーンルームに備えられる複数のファンフィルタユニットと、前記クリーンルームにおける空気清浄度を検出する清浄度センサと、検出された前記空気清浄度に基づいて前記複数のファンフィルタユニットにおける少なくとも一部の運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を変更するように制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、消費電力が最も高くなると予測されることに応じて消費電力を抑制すべきと設定される節電時間帯において消費電力が許容限度値を超えないようにするため、前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を低くするとともに、前記節電時間帯の直前の一定期間である節電前時間帯において、前記節電時間帯における前記空気清浄度の値が許容限度値を超えないように事前に前記空気清浄度の値を低下させるため、前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を高くするように制御したうえで、前記節電時間帯において前記空気清浄度の値が閾値を超えないように前記運転強度変更対象のファンフィルタユニットの運転強度を変更する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、クリーンルームの空調機器に適した電力制御が可能な電力制御システムを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態における電力制御システムの構成例を示す図である。
図2】ファンフィルタユニットの風量と消費電力との関係を示す図である。
図3】第1の実施形態におけるクリーンルーム内のファンフィルタユニットの配置例と、ファンフィルタユニットについてのグループ分けの例を示す図である。
図4】第1の実施形態における運転制御結果に応じた空気清浄度とファンフィルタユニットの消費電力の時間経過に応じた変化例を示す図である。
図5】第1の実施形態における制御装置が実行する処理手順例を示す図である。
図6】第1の実施形態の変形例1における運転制御結果に応じた空気清浄度とファンフィルタユニットの消費電力の時間経過に応じた変化例を示す図である。
図7】第1の実施形態の変形例2に対応するクリーンルームのエリア分割例を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態における電力制御システムの構成例を示す図である。
図9】第2の実施形態における制御パターンテーブル作成のための手順例を示す図である。
図10】第2の実施形態における制御装置が実行するファンフィルタユニット運転制御のための処理手順例を示す図である。
図11】第2の実施形態における制御装置による運転制御結果の一例を示す図である。
図12】第2の実施形態における制御装置による運転制御結果の一例を示す図である。
図13】第2の実施形態において、クリーンルーム内での作業のスケジュール変更に応じた空気清浄度とファンフィルタユニットの消費電力の変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
[電力制御システムの構成]
図1は、本発明の第1の実施形態における電力制御システムの構成例を示している。
本実施形態の電力制御システムは、クリーンルーム200における空調機器を制御するものである。
建屋100は、その内部にクリーンルーム200が設置される。建屋100内におけるクリーンルーム200の外部空間は、換気のための空気が流通するプレナム101として使用される。
【0012】
また、プレナム101には顕熱除去のためのドライコイル110が備えられる。
クリーンルーム200は、予め定められた空気清浄度が確保された環境の部屋である。このクリーンルーム200においては、所定数の生産装置210が備えられる。生産装置210は、所定の製品を生産する装置である。一例として、生産装置210は、例えば半導体集積回路、液晶パネルなどの精密部品であるとか、高い衛生品質が求められる食品などを生産する。
【0013】
また、クリーンルーム200においては、その天井部分において複数のファンフィルタユニット220が備えられる。ファンフィルタユニット220は、ファンとフィルタが一体化された空調機器である。
【0014】
また、クリーンルーム200においてそれぞれが異なる所定の位置に対して複数の清浄度センサ230が備えられる。清浄度センサ230は、周囲の空気の清浄度を検出する。
【0015】
クリーンルーム200における空気は、以下のようにして清浄化される。
ドライコイル110は、プレナム101内下層の空気を吸引し顕熱を除去した後プレナム101に排出する。そして、ファンフィルタユニット220は、ファンを回転させることにより、プレナム101における空気を再びクリーンルーム200に供給する。このとき、空気はファンフィルタユニット220のフィルタを通過するが、このフィルタによってプレナム101内に浮遊していた塵埃が濾過され、クリーンルーム200には塵埃が除去された清浄な空気が供給される。クリーンルーム200に供給された空気は、このクリーンルーム200において上方から下方へ送られ、さらにクリーンルーム200の下端からプレナム101に排出される。このように空気が循環することにより、クリーンルーム200内の空気は清浄化された状態を維持する。
【0016】
また、建屋100の外部には、制御装置300と中央監視装置400が備えられる。
制御装置300は、清浄度センサ230により検出された空気清浄度に基づいて複数のファンフィルタユニット220における少なくとも一部のファンフィルタユニット220の運転強度を変更するように制御する。
なお、本実施形態の制御装置300は、クリーンルーム200におけるファンフィルタユニット220の運転を個別に制御することができる。
【0017】
中央監視装置400は、制御装置300と通信を行うことによりクリーンルーム200の空調制御を監視する。
【0018】
[ファンフィルタユニットの特性]
ファンフィルタユニット220は、一般的には、必要な空気清浄度を確実に確保できる運転強度(例えば風量に相当する)を予め定めておき、この定められた運転強度により定常的に運転するようにされている。しかし、ファンフィルタユニット220は、フィルタによる圧力損失が大きいため、これを補填するために、ファンフィルタユニット220の運転強度を高く設定したり、その設置数を増加させるなどしている。このような理由から、クリーンルーム200における消費電力のうち、ファンフィルタユニット220の消費電力の占める割合は比較的大きい。
【0019】
図2は、ファンフィルタユニット220の風量と消費電力の関係を示している。風量は、ファンフィルタユニット220により吸排気される空気の量であり、例えばファンの回転速度が高くなるのに応じて増加する。そして、この風量またはこれに応じたファンの回転速度は、運転強度にも相当する。
この図から理解されるように、ファンフィルタユニット220の消費電力は、風量が少なくなるのに応じて減少する。つまり、ファンの回転速度が低くなって運転強度が低下するのに応じて減少する。
【0020】
[電力制御のための構成]
そこで、本実施形態の電力制御システムは、クリーンルーム200の消費電力を削減するために、以下のようにファンフィルタユニット220の運転強度を変更する。
まず、本実施形態の電力制御システムは、ファンフィルタユニット220の運転制御を行うにあたり、以下のように、クリーンルーム200におけるファンフィルタユニット220を区分する。
【0021】
図3は、クリーンルーム200におけるファンフィルタユニット220(220−1、220−2)の配置態様例を模式的に示している。ファンフィルタユニット220は、クリーンルーム200の天井において、同図に示すように平面方向において配列される。
そのうえで、本実施形態の電力制御システムにおいては、このように配列されるファンフィルタユニット220について、第1群のファンフィルタユニット220−1と第2群のファンフィルタユニット220−2との2つにグループ分けする。
第1群のファンフィルタユニット220−1は、クリーンルーム200に配列されたファンフィルタユニット220のうちで、縦方向および横方向において互いに隣接しないように配置されている。つまり、第1群のファンフィルタユニット220−1は、千鳥格子状に配列されている。
また、第1群のファンフィルタユニット220−1以外から成る第2群のファンフィルタユニット220−2も、同様に千鳥格子状に配列されている。
そのうえで、第1群のファンフィルタユニット220−1については、予め定めた標準の運転強度(風量)によって固定的に運転する。一方、第2群のファンフィルタユニット220−2については、運転強度を変更する。
【0022】
つまり、本実施形態においては、電力制御にあたり、すべてのファンフィルタユニット220の運転強度を変更するのではなく、その一部のファンフィルタユニット220−2のみの運転強度を変更する。
【0023】
すべてのファンフィルタユニット220の運転強度を変更するように運転制御を行うと、クリーンルーム200内の空気が必要以上に攪拌されることなどが原因となって、過剰に空気清浄度を劣化させてしまう場合がある。そこで、本実施形態では、運転強度の変更対象とするファンフィルタユニット220を全体における一部のみとすることで、循環する空気の流れを必要以上に攪拌しないようにして空気清浄度が過剰に劣化しないようにする。
【0024】
そのうえで、本実施形態においては、図3に例示したように、第1群のファンフィルタユニット220−1と第2群のファンフィルタユニット220−2とについて互いに千鳥格子に配列させたパターンとすることで、その配置分布に偏りが無いようにしている。これにより、第2群のファンフィルタユニット220−2の運転強度を変更した際にクリーンルーム200内を循環する空気の流れについての場所ごとの偏りが少なくなり、例えば空気清浄度の劣化をさらに有効に抑えることができる。
【0025】
また、本実施形態においては、例えば1日において予測される建屋100などにおける消費電力に基づいて、1日分のファンフィルタユニット220の運転計画を予め作成する。このように作成される1日分の運転計画においては、消費電力が最も高くなると予測されるのに応じて消費電力を節約すべき節電時間帯と、この節電時間帯の直前における一定期間である節電前時間帯とが設定される。
そして、制御装置300は、上記のように作成された運転計画にしたがってファンフィルタユニット220の運転制御を実行する。
【0026】
図4(a)と図4(b)は、それぞれ、運転計画にしたがって制御装置300が運転制御を行った場合のクリーンルーム200の空気清浄度と、クリーンルーム200におけるファンフィルタユニット(FFU)220の消費電力についての時間経過に応じた変化例を示している。
また、この図においては、節電前時間帯T1と節電時間帯T2が示されている。また、この図の空気清浄度の値は、一定体積の空気中における粒子数を示す。つまり、この図に示す空気清浄度は、その値が大きくなるのに応じて空気の清浄性が劣化していくことを示す。
【0027】
制御装置300は、運転計画にしたがって、節電前時間帯T1よりも前の時間帯においては、第1群のファンフィルタユニット220−1とともに第2群のファンフィルタユニット220−2についても標準の運転強度により運転させる。
そして、節電前時間帯T1に至ると、制御装置300は、第2群のファンフィルタユニット220−2を標準よりも高い所定の運転強度で運転させる。なお、このように運転強度を変更するには、制御装置300は、ファンフィルタユニット220のファンの回転速度(周波数)を高くするように変更する。これに応じて、風量も増加し、空気がより強力に清浄化されるようになる。
【0028】
上記ように運転強度を高く設定して運転を行うことで、図4(b)に示すように、第2群のファンフィルタユニット220−2それぞれの消費電力は標準の運転強度により運転されていたときよりも高くなる。これに伴い、ファンフィルタユニット220全体での消費電力も、節電前時間帯T1以前の時間帯より増加する。しかし、節電前時間帯T1は、全体における消費電力が少ないことから、ファンフィルタユニット220−2の運転強度を高く設定したとしても、予め定めておいた消費電力の許容限度値を越えることはない。
また、節電前時間帯T1において運転強度が高く設定されることにより、図4(a)に示すように、クリーンルーム200の空気清浄度の値(空気中の粒子数)は、標準の運転強度により運転していたときよりも少なくなり、空気の清浄性は高くなる。節電前時間帯T1における高い運転強度による運転は、このように、節電時間帯T2において運転強度が低下して空気清浄機能が弱まることを考慮して、事前に空気の清浄性を高めておくことを目的として行われる。
【0029】
次に、節電前時間帯T1を終了して節電時間帯T2に至ると、制御装置300は、第2群のファンフィルタユニット220−2を標準よりも低い所定の運転強度で運転させる。これにより、図4(b)に示すように、節電時間帯T2における第2群のファンフィルタユニット220−2それぞれの消費電力は低下する。これに伴い、ファンフィルタユニット220全体での消費電力も、節電前時間帯T1以前の時間帯より減少する。つまり、節電時間帯T2においてファンフィルタユニット220の消費電力についての節減が図られる。
【0030】
一方、節電時間帯T2における空気清浄度は、運転強度が低下されたことに応じて、その値が大きくなる。つまり、空気の清浄さが低下していく。ただし、節電前時間帯T1により標準より高い運転強度によってファンフィルタユニット220−2を運転させて事前に空気の清浄さを高めているため、節電時間帯T2において空気清浄度の値(空気中の粒子数)が増加していくとしても、予め規定した許容限度値LMを越える可能性は著しく低い。
【0031】
しかし、なんらかの原因によって、節電時間帯T2における空気清浄度の値が許容限度値LMを越えてしまう可能性は避けられない。
そこで、制御装置300は、節電時間帯T2において、清浄度センサ230が検出する空気清浄度を監視し、この空気清浄度の値と、許容限度値LMに基づいて予め設定した閾値とを比較する。
そして、検出された空気清浄度の値が閾値以上となった場合、制御装置300は、空気清浄度の値が閾値未満となるように、第2群のファンフィルタユニット220−2の運転強度を現在よりも高く変更して運転させる。なお、この際においては、節電時間帯T2に至ったときに設定される所定の運転強度よりも高くするように変更すればよく、必ずしも標準よりも高い運転強度を設定する必要はない。
【0032】
そして、節電時間帯T2を経過すると、制御装置300は、第2群のファンフィルタユニット220−2の運転強度を標準に設定する。これにより、クリーンルーム200の空気清浄度は節電前時間帯T1より前の時間帯と同等に戻る。また、第2のファンフィルタユニット220−2それぞれの消費電力も節電前時間帯T1より前の時間帯と同等になり、結果として、ファンフィルタユニット220全体による消費電力も節電前時間帯T1以前の時間帯と同等になる。
【0033】
[処理手順例]
図5のフローチャートは、制御装置300がファンフィルタユニット220の運転制御のために実行する処理手順例を示している。
【0034】
まず、制御装置300は、第1群のファンフィルタユニット220−1と第2群のファンフィルタユニット220−2とについて、標準の運転強度により運転させる(ステップS101)。これにより、例えば、1日における運転制御の開始から節電前時間帯T1に至るまでの時間帯と、節電時間帯T2を経過した後の時間帯において、第1群のファンフィルタユニット220−1と第2群のファンフィルタユニット220−2は標準の運転強度により運転される。
【0035】
次に、制御装置300は、節電前時間帯T1に至ったか否かについて判定する(ステップS102)。節電前時間帯T1に至っていない場合(ステップS102−NO)、制御装置300はステップS104に進む。一方、節電前時間帯T1に至ると(ステップS102−YES)、制御装置300は、標準より高い所定の運転強度により第2群のファンフィルタユニット220−2を運転させる(ステップS103)。
なお、図3にて説明したように、制御装置300は、第1群のファンフィルタユニット220−1については、節電前時間帯T1においても標準の運転強度により継続して運転させる。この点については、節電時間帯T2においても同様である。
【0036】
また、制御装置300は、節電時間帯T2に至ったか否かについて判定する(ステップS104)。節電時間帯T2に至っていない場合(ステップS104−NO)、制御装置300はステップS101に戻る。そして、節電時間帯T2に至ると(ステップS104−YES)、制御装置300は、標準より低い所定の運転強度により第2群のファンフィルタユニット220−2を運転させる(ステップS105)。
【0037】
また、上記のように節電時間帯T2における運転を実行させた状態において、制御装置300は、この節電時間帯T2において、清浄度センサ230により検出される空気清浄度の値が閾値以上であるか否かについて判定する(ステップS106)。
前述のように、空気清浄度の値は、一定体積の空気中における粒子数を示す。したがって、空気清浄度度の値が閾値以上である場合とは、空気清浄度の値が許容限度値を越える可能性が高くなった状態である。そこで、空気清浄度の値が閾値以上となった場合(ステップS106−YES)、制御装置300は、空気清浄度の値が閾値以下となるように、現在よりも高い所定の運転強度を設定して第2群のファンフィルタユニット220−2を運転させたうえで(ステップS107)、ステップS104に戻る。
また、空気清浄度の値が閾値未満である場合には(ステップS106−NO)、制御装置300はステップS104に戻る。
【0038】
[変形例1]
次に第1の実施形態における変形例1について図6を参照して説明する。
図6(a)、(b)は、それぞれ、変形例1における制御装置300が運転制御を行った場合のクリーンルーム200の空気清浄度と、クリーンルーム200におけるファンフィルタユニット220の消費電力についての時間に応じた変化例を示している。
【0039】
図6においては、ピーク時間帯Tpが示されている。ピーク時間帯Tpは、例えば図4の節電時間帯T2に相当するもので、1日において消費電力がピークとなるのに応じて消費電力の抑制が必要となる時間帯である。
そして、変形例1における制御装置300は、ピーク時間帯Tp以外は、第1群のファンフィルタユニット220−1とともに第2群のファンフィルタユニット220−2も標準の運転強度により運転させる。そして、ピーク時間帯Tpにおいて、制御装置300は、第2群のファンフィルタユニット220−2を標準よりも低い運転強度により運転させる。なお、このような時間帯ごとの運転制御は、先の第1の実施形態と同様に、予め作成された運転計に基づくものである。
【0040】
また、変形例1の制御装置300は、先の第1の実施形態と同様に、ピーク時間帯Tpにおいて清浄度センサ230が検出した空気清浄度を監視する。そして、この空気清浄度が閾値以上となった場合、制御装置300は、現在よりも高い運転強度により第2群のファンフィルタユニット220−2を運転させることで、空気清浄度が閾値未満となるように制御する。
【0041】
このように運転制御が行われることで、図6(b)に示すように、ピーク時間帯Tpにおける消費電力が低減される。また、これに伴って、図6(a)に示すように、ピーク時間帯Tpにおけるクリーンルーム200内の空気清浄度の値は高くなってしまうが、上記のように空気清浄度に基づく運転強度の変更が行われることで、空気清浄度が許容限度値LMを越えることはない。
【0042】
[変形例2]
次に、第1の実施形態における変形例2について説明する。
図7は、変形例2に対応して設定される、クリーンルーム200のエリアと清浄度センサ230の配置例とを示している。なお、この図において、図3と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
この図においては、一例として、クリーンルーム200が4つのエリア201−1〜201−4に分割される。また、これらのエリア201−1〜201−4ごとに、各1つの清浄度センサ230−1〜230−4が配置される。清浄度センサ230−1は、エリア201−1の空気清浄度を検出する。同様に、清浄度センサ230−2〜230−4は、それぞれ、エリア201−1〜201−4の空気清浄度を検出する。
【0044】
変形例2における制御装置300は、節電時間帯T2またはピーク時間帯Tpにおいて、エリア201−1〜201−4のそれぞれにおける第2群のファンフィルタユニット220−2を標準より低い所定の運転強度により運転させる。
そのうえで、制御装置300は、清浄度センサ230−1〜230−4により検出された空気清浄度をそれぞれ個別に入力する。そして、この入力した空気清浄度に基づく第2群のファンフィルタユニット220−2の運転強度の変更を、エリア201−1〜201−4ごとに個別に行う。
【0045】
一例として、清浄度センサ230−1と230−4が検出した空気清浄度が閾値以上で、清浄度センサ230−2と230−3が検出した空気清浄度が閾値未満の状態になった場合、制御装置300は、以下のように運転制御を実行する。
つまり、制御装置300は、エリア201−1とエリア201−4のそれぞれにおける第2群のファンフィルタユニット220−2の運転強度を現在よりも高く設定することで、エリア201−1とエリア201−4の空気清浄度を閾値未満となるようにする。
一方、制御装置300は、エリア201−2とエリア201−3のそれぞれにおける第2群のファンフィルタユニット220−2については、節電時間帯T2またはピーク時間帯Tpの開始時において設定した標準より低い所定の運転強度のままで運転させる。
【0046】
このように、変形例1においては、クリーンルーム200を複数のエリアに分割したうえで、エリアごとの空気清浄度に基づいてエリアごとに個別に運転強度を調整する。これにより、空気清浄度の分布のばらつきにも対応して個々のファンフィルタユニット220を効率的に制御することができる。
【0047】
<第2の実施形態>
[電力制御システムの構成]
次に、第2の実施形態について説明する。
クリーンルーム200における塵埃発生源は、主に、生産装置210と、クリーンルーム200内の作業者である。生産装置210が稼働している限り、生産装置210から発生する塵埃の量は一定であるが、クリーンルーム200における作業者の人数や各人の位置は変化する。つまり、作業者を発生源とする塵埃に関しては、クリーンルーム200における作業者の人数や各人の位置に応じて、その発生量や分布などの状態が変化する。
【0048】
そこで、第2の実施形態においては、この点に着目し、クリーンルーム200における作業者の状態に応じてファンフィルタユニット220の運転強度を変更するように運転制御を行う。これにより、第2の実施形態においては、クリーンルーム200における作業者の分布に応じて効率的に空気清浄度を維持しながら節電を図ることができる。
【0049】
図8は、第2の実施形態における電力制御システムの構成例を示している。なお、この図において、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図に示す電力制御システムは、複数の人センサ(人検出装置)240をさらに備える。これらの人センサ240は、クリーンルーム200を複数に分割したエリア201ごとに対応してそれぞれが異なる位置に配置される。そして、人センサ240は、それぞれ、配置されたエリア201における人(作業者)の数と、各人の位置を検出する。
【0050】
人センサ240には、例えば赤外線や超音波による反射を利用したセンサを採用できる。また、撮像装置と、この撮像装置により撮像された画像から人を認識する画像処理装置などを採用できる。
さらに、例えばIMES(Indoor MEssaging System)などの屋内GPS(Global Positioning System)に対応する送受信機によりエリア201ごと人を検出する構成としてもよい。この屋内GPSを採用する場合には、エリア201ごとに送信機を配置し、作業者のそれぞれに受信機を携帯させる。そして、制御装置300は、受信機の各々から無線で送信される位置情報を受信する。このように受信した受信機ごとの位置情報に基づいて、制御装置300は、クリーンルーム200におけるエリア201ごとの人の数と各人の位置の情報を取得できる。
【0051】
[制御パターンテーブル作成手順]
第2の実施形態の制御装置300は、エリア201ごとの作業者の人数と各人の位置とに基づいて、エリア201に配置されるファンフィルタユニット220の各々の運転を制御する。
このために、本実施形態の電力制御システムにおいては、制御パターンテーブルを予め作成し、制御装置300に記憶させる。
制御パターンテーブルは、エリア201ごとにおける作業者の人数と各人の位置の組み合わせと、そのエリア201におけるファンフィルタユニット220ごとの運転強度とを対応付けた情報である。制御装置300は、制御パターンテーブルを参照して、現在におけるエリア201ごとの作業者の人数と各人の位置に対応するファンフィルタユニット220ごとの運転強度を決定し、決定した運転強度により各ファンフィルタユニット220を運転させる。
【0052】
図9のフローチャートは、制御装置300が実行する制御パターンテーブルの作成手順例を示している。
制御装置300は、クリーンルーム200内に作業者が存在せずに生産装置210が稼働している状態において、清浄度センサ230により検出される空気清浄度を監視しながらファンフィルタユニット220の運転強度を変更していく。これにより、制御装置300は、クリーンルーム200内に作業者が存在せずに生産装置210が稼働している状態のもとで、必要な空気清浄度が維持できる運転強度(風量)を決定する(ステップS201)。
制御装置300は、クリーンルーム200内に作業者が立ち入っていないときには、ステップS201により決定された運転強度によりすべてのファンフィルタユニット220を運転させる。
【0053】
次に、制御装置300は、クリーンルーム200内に作業者が立ち入って作業を行っているときには、エリア201ごとの人センサ240からの検出信号に基づいて、そのときの作業者の人数と各人の位置の情報をエリア201ごとに取得する(ステップS202)。
【0054】
そのうえで、制御装置300は、エリア201ごとの清浄度センサ230により検出される空気清浄度を監視しながら、作業者の存在による空気清浄度の低下が補償されるように、エリア201ごとに個別にファンフィルタユニット220の運転制御を行う(ステップS203)。
例えば、制御装置300は、検出された作業者の位置に近いファンフィルタユニット220の運転強度を高くする。また、ほぼ同じ位置に複数の作業者が存在しているような状態では、その近傍のファンフィルタユニット220の運転強度をより高くするように制御する。このような運転制御を、制御装置300はエリア201ごとに行う。
【0055】
そして、制御装置300は、上記ステップS202とS203による運転制御結果を制御パターンテーブルに登録する(ステップS204)。つまり、制御装置300は、ステップS202により取得した人の数と各人の位置の組み合わせに対して、ステップS203の制御に際して設定したファンフィルタユニット220ごとの運転強度を対応させた制御パターン情報を作成する。
なお、制御装置300は、この制御パターン情報をエリア201ごとに対応して作成する。そして、制御装置300は、作成したエリア201ごとの制御パターン情報を制御パターンテーブルに追加するように記憶させる。
【0056】
制御装置300は、例えばステップS202〜S204の処理を一定期間にわたって作業者がクリーンルーム200内に立ち入るごとに行う。これにより、制御装置300は、上記の一定期間においてクリーンルーム200に立ち入った作業者の数と、その位置の組み合わせ応じたファンフィルタユニット220の制御パターン情報を制御パターンテーブルとして記憶することができる。
【0057】
なお、制御パターンテーブルにおける制御パターン情報は、複数のエリア201ごとに共通としてもよい。例えば、複数のエリア201ごとの生産装置210やファンフィルタユニット220などの配置パターンが同じであるような場合には、制御パターン情報を複数のエリア201に対して共通に利用しても特に問題は生じない。
しかし、例えば、複数のエリア201ごとにおける生産装置210やファンフィルタユニット220などの設備の配置パターンが大きく異なっていたりする場合、共通の制御パターン情報により各エリアの空気清浄度を適切に制御することが難しくなる。
そこで、このような場合には、エリア201ごとに制御パターン情報を作成して制御パターンテーブルを構築することにより、エリア201ごとに対応した適切な制御を容易に行うことができる。
【0058】
図10のフローチャートは、第2の実施形態における制御装置300が制御パターンテーブルに基づいてファンフィルタユニット220の運転を制御するための処理手順例を示している。
【0059】
まず、制御装置300は、エリア201ごとに1からの昇順で付した番号を示す変数nに1を代入する(ステップS301)。なお、以降において、n番目のエリア201については、第nエリア201−nと記載する。
【0060】
そのうえで、制御装置300は、第nエリア201−nに配置された人センサ240により検出された人の数と各人の位置の情報を取得する(ステップS302)。次に、制御装置300は、取得した人の数と各人の位置の組み合わせに対応付けられている第nエリア201−nについての制御パターン情報を制御パターンテーブルから読み出す(ステップS303)。
【0061】
そして、制御装置300は、読み出した制御パターン情報の内容にしたがって第nエリア201−nにおけるファンフィルタユニット220ごとに対する運転制御を実行する(ステップS304)。なお、ステップS302により取得された人の数が「0」とされて作業者が存在していないことを示す場合、制御装置300は、ステップS304においては、例えば第nエリア201−nにおける各ファンフィルタユニット220を標準強度により運転させる。つまり、制御パターンテーブルは、人の数「0」に対応付けられたファンフィルタユニット220の運転強度として「標準」が示されている。
【0062】
次に、制御装置300は、変数nが最大値に至ったか否かについて判定する(ステップS305)。変数nが最大値未満である場合(ステップS305−NO)、制御装置300は、変数nをインクリメントし(ステップS306)、ステップS302に戻る。これにより、制御装置300は、次の番号のエリア201を対象として、人の数と各人の位置に応じてファンフィルタユニット220の各々の運転を制御する。
【0063】
変数nが最大値に至ったことが判定された場合には(ステップS305−YES)、クリーンルーム200における各エリア201の運転制御が一巡したことになる。そこで、この場合の制御装置300は、ステップS301に戻る。これにより、エリア201ごとを対象とする運転制御が、1番目のエリア201から再開される。本実施形態の制御装置300は、例えばクリーンルーム200の稼働時において、ステップS301〜S305に示す一連の処理を、例えば一定時間ごとのタイミングで繰り返し実行する。これにより、クリーンルーム200内に立ち入った作業者の状態に応じて常に適切にファンフィルタユニット220ごとの運転強度が制御され、所要の空気清浄度を効率的に維持することができる。
【0064】
[運転制御結果例]
図11図12は、図10の処理によるファンフィルタユニット220の運転結果例を示している。これら図11図12においては、クリーンルーム200が第1エリア201−1、第2エリア201−2、第3エリア201−3および第4エリア201−4の4つに分割されている。なお、図11図12の説明にあたり、第1〜第4エリア201−1〜201−4について特に区別しない場合には、エリア201と記載する。
【0065】
これら第1〜第4エリア201−1〜201−4には、それぞれ、6つのファンフィルタユニット220と、1つの清浄度センサ230と、1つの人センサ240が配置される。
【0066】
清浄度センサ230は、それぞれ、自己が配置されたエリア201における空気清浄度を検出する。
人センサ240は、それぞれ、自己が配置されたエリア201における人の数と各人の位置を検出する。
【0067】
まず、図11は、クリーンルーム200において以下のように作業者が分布している場合に対応している。
つまり、第2エリア201−2においては、複数の作業員が一部の場所に偏ることなく比較的均等に存在している。これに対して、残る第1エリア201−1、第3エリア201−3および第4エリア201−4においては作業員が存在していないという状態である。
【0068】
制御装置300は、図10のステップS302により上記のような第1〜第4エリア201−1〜201−4ごとの人の存在状況を、第1〜第4エリア201−1〜201−4の各人センサ240から人数および各人の位置の情報として取得する。次に、制御装置300は、ステップS303により、取得した人数および各人の位置の情報に基づいて制御パターン情報を読み出す。そして、制御装置300は、読み出した制御パターン情報の内容にしたがってステップS304による運転制御を行う。この結果、第1〜第4エリア201−1〜201−4のファンフィルタユニット220は、図11に示すように運転される。
【0069】
つまり、第2エリア201−2においては、すべてのファンフィルタユニット220が標準より高い所定の運転強度により運転される。また、第1エリア201−1、第3エリア201−3および第4エリア201−4においては、それぞれ、すべてのファンフィルタユニット220が標準の運転強度により運転される。
【0070】
また、図12は、クリーンルーム200において以下のように作業者が分布している場合に対応している。
つまり、第1エリア201−1においては、作業員が紙面の左上側に近い場所で作業している。また、第2エリア201−2と第3エリア201−3において、作業者は存在していない。また、第4エリア201−4には、作業者が紙面の左下に近い側において作業しているような状態である。
【0071】
制御装置300は、このような状態に対応して図10のステップS302〜S304の処理を実行する。
この結果、図12に示すように、第1エリア201−1においては、紙面の左上側に分布する3つのファンフィルタユニット220が標準より高い運転強度により運転される。具体的に、紙面において最も左上のファンフィルタユニット220と、その右と下とでそれぞれ隣接する2つのファンフィルタユニット220とが標準より高い運転強度により運転される。また、第1エリア201−1において、残る4つのファンフィルタユニット220については、標準の運転強度により運転される。
また、第2エリア201−2と第3エリア201−3におけるファンフィルタユニット220は、いずれも標準の運転強度により運転される。
また、第4エリア201−4においては、最も左下のファンフィルタユニット220と、その上において隣接するファンフィルタユニット220とが標準より高い運転強度により運転され、残る4つのファンフィルタユニット220については標準の運転強度により運転される。
【0072】
[作業計画スケジュール設定例]
図9の説明から理解されるように、第2の実施形態における制御パターンテーブルは、一定期間においてクリーンルーム200に立ち入った作業者の人数と例えば作業場所に応じて作業者が存在する位置の履歴を示す情報でもある。
【0073】
そこで、例えば制御パターンテーブルに制御パターン情報を登録する処理にあたって、そのときの時刻の情報も対応付けるようにする。これにより、制御パターンテーブルの内容から、定期巡回や定期メンテナンスなどの定期的に行うべき作業が行われるスケジュールの日時や、これらの定期的な作業を行う際におけるクリーンルーム200内の作業者の移動経路などを推定できる。
【0074】
制御装置300は、制御パターンテーブルの内容を解析して、例えば定期作業が行われる日時と、定期作業における作業者のクリーンルーム200内の移動経路を推定する。そして、制御装置300は、この推定結果に基づいて、定期作業に対応した運転計画を作成し、この作成した運転計画にしたがって各エリア201の運転計画を行うようにしてよい。
この場合には、例えば、作業者がクリーンルーム200に立ち入る前のタイミングで、作業者がクリーンルーム200内で作業しているときのファンフィルタユニット220の運転状態を事前に設定することができる。
例えば、作業者が立ち入ったことが人センサ240により検出されてから運転強度を変更する場合、空気清浄度をある程度急速に高める必要から、相当に強度な運転を必要とする可能性がある。これに対して、上記のように事前に運転を切り替えておけば、例えば作業者が立ち入ったときには既に十分に空気が清浄化されているので、運転強度を標準より高くするにあたっての変更量は少なくてすむため、消費電力を抑えることができる。
【0075】
また、例えば、2つの定期的な作業Aと作業Bとが同じ日時において行われている場合、制御装置300は、このことについても制御パターンテーブルを解析することによって推定できる。
図13(a)は、作業Aと作業Bにより発生する空気清浄度を示している。図13(a)は、作業Aと作業Bとが同じ時間帯において行われる場合に対応している。このように作業Aと作業Bが同じ時間帯において行われる場合、作業Aと作業Bにより発生する塵埃が同じ時間帯に発生するため、図13(a)に示すように、この時間帯における空気清浄度が大幅に劣化する。
このように劣化する空気清浄度を補償しようとした場合、制御装置300は、ファンフィルタユニット220についてもより高い運転強度により運転させたり、高い運転強度により運転させるファンフィルタユニット220を増加させたりするように運転制御を行う。
これにより、ファンフィルタユニット220全体としての消費電力も、図13(b)に示すように、この作業A、Bが行われる時間帯において大幅に増加する。この場合、例えば消費電力が、予め定めた許容値dmaxに近づくために好ましくない。
【0076】
そこで、このように複数の作業が同じ時間帯において重複して行われることを推定した場合、制御装置300は、管理者に対して複数の作業が同じ時間帯に行われていることを警告するメッセージを通知する。なお、この通知は、例えば制御装置300または中央監視装置400のモニタなどに画像として表示させればよい。
【0077】
このような通知に応じて、例えば作業者等が作業A、Bが異なる時間帯において行われるように業務計画を変更した場合、空気清浄度は、図13(a)から図13(c)に示すように変化する。つまり、作業Aに応じて発生する塵埃により空気清浄度が劣化する時間帯と、作業Bに応じて発生する塵埃により空気清浄度が劣化する時間帯とが分散され、各時間帯における空気清浄度の劣化の度合いは、例えば図13(a)の場合と比較すれば大幅に小さくなる。
【0078】
これに応じて、制御装置300は、作業Aが行われる時間帯においては、作業Aのみに対応した空気清浄度の劣化を補償するようにファンフィルタユニット220を運転させればよい。同じく、制御装置300は、作業Bが行われる時間帯においては、作業Bのみに対応した空気清浄度の劣化を補償するようにファンフィルタユニット220を運転させればよい。
これにより、ファンフィルタユニット220全体における消費電力は、図13(b)から図13(d)に示すように変化する。つまり、作業Aに対応する消費電力と作業Bに対応する消費電力は、それぞれ異なる時間帯に分散される。これにより、消費電力が許容値dmaxに近づく時間帯はなくなり、電力制御が容易になる。
【0079】
なお、図1および図8における制御装置300の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりファンフィルタユニット220に対する運転制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0080】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0081】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0082】
100 建屋
101 プレナム
110 ドライコイル
200 クリーンルーム
201 エリア
210 生産装置
220 ファンフィルタユニット
230 清浄度センサ
240 人センサ
300 制御装置
400 中央監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13