特許第5975384号(P5975384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975384
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】合成樹脂製成形品
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20160809BHJP
   B65D 51/18 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B65D41/04 F
   B65D51/18 H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-124912(P2012-124912)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249093(P2013-249093A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】淀川 秀美
(72)【発明者】
【氏名】古原 裕嗣
【審査官】 佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−160157(JP,A)
【文献】 実開昭62−013852(JP,U)
【文献】 特開2006−273383(JP,A)
【文献】 実開昭57−131437(JP,U)
【文献】 特開2011−213403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
B65D 51/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な合成樹脂製の有頂筒状をした外筒体(7)と、該外筒体(7)内に、アンダーカット結合部(A)のアンダーカット結合により嵌入組付きする有頂筒状をした内筒体(2)と、該内筒体(2)と外筒体(7)の間に組付けられるシール材としての軟質材製のシールリング体(10)とから構成され、前記内筒体(2)および外筒体(7)の下端部の全周に亘り、前記アンダーカット結合部(A)のアンダーカット結合により当接する周方向に平坦な当接面部(B)形成され、該当接面部(B)の全周シールリング体(10)が挟持されていることを特徴とする合成樹脂製成形品。
【請求項2】
アンダーカット結合部(A)、内筒体(2)の周壁(4)の外周面下端部と、外筒体(7)の筒壁(9)の内周面下端部のそれぞれに形成され、当接面部(B)を、前記周壁(4)の外周面下端に外鍔状に周設されたフランジ片(5)の上面と、前記筒壁(9)の下端面とで構成した請求項1に記載の合成樹脂製成形品。
【請求項3】
内筒体(2)の当接面部(B)と外筒体(7)の当接面部(B)の何れか一方が、シールリング体(10)が一体的に固着された構成である請求項1または2に記載の合成樹脂製成形品。
【請求項4】
成形品を、キャップ体(1)とした請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂製成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側の壁を透明とした二重壁を有する有頂筒状の合成樹脂製成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壜体容器の口筒部に使用されるキャップ体を二重壁構造に構成し、加飾の目的で外側の壁を透明にしたものがあるが、その殆どのものが、特許文献1等の従来技術に示されるように、内側部分である内筒体と外側部分である外筒体を予め別々に成形しておき、この成形したものを嵌合組付けして構成されている。このように、内筒体と外筒体を別々に成形しておくことにより、内筒体の表面、特に周壁の外周面に金属蒸着や印刷による装飾を適正にかつ簡単に施すことができ、この内筒体の表面に施された装飾を、透明体である外筒体のクリスタル効果等の光学的な効果により、立体感に富んで深みのあるものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−213403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、嵌合組付けされた内筒体と外筒体の間には、意図するかしないかに関わらず、必ず間隙が存在するため、内筒体と外筒体の間に水分が接触すると、この水分が毛細管現象により内筒体と外筒体の間、すなわち間隙に侵入する。この間隙に浸入した水分は、間隙内で拡散した斑状に広がり、装飾の色合いを変化させたり、透過光の屈折程度を不規則に変化させたりして、内筒体の表面に施された加飾状態を大幅に劣化させる、と云う問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、外側壁を透明とした二重壁構造の成形品において、嵌合組付けされた内筒体と外筒体の間の間隙に水分が侵入しないようにすることを技術的課題とし、もって間隙に浸入した水分による装飾劣化の発生を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の合成樹脂製成型品の主たる手段の構成は、
透明な合成樹脂製の有頂筒状をした外筒体と、この外筒体内に、アンダーカット結合部のアンダーカット結合により嵌入組付きする有頂筒状をした内筒体と、この内筒体と外筒体の間に組付けられるシール材としての軟質材製のシールリング体とから構成されること、
内筒体および外筒体の下端部の全周に亘り、アンダーカット結合部のアンダーカット結合により当接する周方向に平坦な当接面部を形成すること、
この当接面部の全周シールリング体を挟持したこと、
にある。
【0007】
内筒体と外筒体は、予め別々に成形されて嵌合組付けされるので、両者間には間隙が形成されることになるが、この間隙は、内筒体および外筒体が共に有頂筒状であることから、内筒体側の当接面部と外筒体側の当接面部の間を、唯一の開放部として形成される。また、内筒体側の当接面と外筒体側の当接面は、アンダーカット結合部のアンダーカット結合により、内筒体が外筒体に嵌合組付きした状態で互いに当接する。
【0008】
このため、この当接状態となる内筒体側および外筒体側の当接面部に配置されたシールリング体は、両当接面部から強力な挟持力を受け、この挟持によりシールリング体が両当接面部の全周に亘り密接触し、これにより間隙はシールリング体により外部から遮断され、外部から間隙に水分が浸入するのを防止することになる。
【0009】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、アンダーカット結合部を、内筒体の周壁の外周面下端部と、外筒体の筒壁の内周面下端部のそれぞれに形成し、当接面部を、内筒体の周壁の外周面下端に外鍔状に周設したフランジ片の上面と、外筒体の筒壁の下端面とで構成した、ものである。
【0010】
内筒体の周壁と外筒体の筒壁にアンダーカット結合部を形成し、内筒体の周壁に設けたフランジ片の上面と外筒体の筒壁の下端面で当接面部を構成したものにあっては、内筒体と外筒体のアンダーカット結合動作方向と、両当接面部の当接方向が同じであるので、内筒体と外筒体とシールリング体の組立て操作が簡単となると共に、アンダーカット結合部のアンダーカット結合力を、シールリング体に対する挟持力として直接作用させることができる。
【0011】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、内筒体側の当接面部と外筒体側の当接面部の何れか一方が、シールリング体を一体的に固着した構成である、としたものである。
【0012】
内筒体または外筒体の一方の当接面部に、シールリング体を一体的に固着したものにあっては、成形体の組立て操作において、軟質材製であることから自己形状保持能力が低く、組立て時の位置出しが容易でないシールリング体を、内筒体もしくは外筒体の一体物として取扱うことができるので、内筒体および外筒体に対するシールリング体の位置合せ処理や、そのための取扱いが省略できるので成形体の組立て操作処理がきわめて簡単となる。
【0013】
また、本発明の別の構成は、成形品を、キャップ体とした、ものである。
【0014】
成形品をキャップ体としたものにあっては、壜体容器に組付くことにより、この壜体容器の最も目に付く上端部に位置したキャップ体の高い装飾効果を、長期間に亘って安定して安全に維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の合成樹脂製成形品は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明における合成樹脂製成形品の主たる構成においては、内筒体と外筒体の間の間隙に外部から水分が浸入するのを防止するので、間隙に浸入した水分が、毛細管現象により斑模様状に拡散して装飾効果を劣化させることがなく、優れた装飾効果を安全に維持することができる。
【0016】
内筒体の周壁と外筒体の筒壁にアンダーカット結合部を形成し、内筒体の周壁に設けたフランジ片の上面と外筒体の筒壁の下端面で当接面部を構成したものにあっては、アンダーカット結合部のアンダーカット結合力を、シールリング体に対する挟持力として直接作用させることができるので、成形品の嵌合組立て処理を簡単なものとすることができる。
【0017】
内筒体または外筒体の一方の当接面部に、シールリング体を一体的に固着したものにあっては、成形体の組立て時における取扱い処理がきわめて簡単となるので、成形品の組立てを効率よくかつ精度よく達成することができる。
【0018】
成形品をキャップ体としたものにあっては、壜体容器の最も目に付く上端部に位置した状態で、その高い装飾効果を安定して安全に維持することができるので、長期間にわたり安心して、その高い装飾効果を有効に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の成形品の一実施形態例を示す、半縦断面図である。
図2図1中、丸印した要部の、拡大断面図である。
図3図2に示した拡大部分で示した、組立て説明図である。
図4】シールリング体のインサート成形を示す、拡大断面図である。
図5図4に示した拡大部分による、組立て説明図である。
図6】シールリング体の他のインサート成形を示す、拡大断面図である。
図7図6に示した拡大部分による、組立て説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を、図面に従って説明する。
合成樹脂製成形品の一実施例であるキャップ体1(図1参照)は、頂壁3と周壁4を有する有頂円筒状の内筒体2と、天壁8と筒壁9を有する有頂円筒状の外筒体7と、肉薄な円形リング状のシールリング体10の三つの部材から構成されている。内筒体2は不透明なポリプロピレン(PP)樹脂製であり、外筒体7は透明なポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂や、PCTA,PCTG等のポリエステル系の透明な樹脂製であり、そしてシールリング体10は、シール材として利用されるシリコン樹脂等の軟質材製である。
【0021】
内筒体2の頂壁3下面には、内周面に螺条を形成した螺合筒6が垂下設されており、この螺合筒6により壜体容器(図示省略)の口筒部に着脱自在に螺合組付きする。この内筒体2の外表面には、金属蒸着や印刷等の手段により加飾が施されており、この加飾の装飾効果を光学的に高めるために外筒体7が外嵌状に嵌合組付けされるが、この嵌合組付きした内筒体2と外筒体7との間には間隙C(図1参照)が形成される。なお、この外筒体7は、内筒体2の加飾を保護することもできる。
【0022】
外筒体7は、無色透明または有色透明に成形されるが、場合によっては半透明としてもよく、高い光学的な装飾効果を得るために肉厚に成形されるのが有利である。
【0023】
シールリング体10は、当接面部B間で強力に挟持されて、押し潰された状態で両当接面部Bに強固に密接触するものであるが、両当接面部Bは、内筒体2と外筒体7がアンダーカット結合した状態で当接する部分であるので、その厚みが大きすぎると、アンダーカット結合部Aにおける係止状態が悪くなる恐れがあり、反対にその厚みが小さすぎると、両当接面部Bに対する密接触程度が不十分となる恐れがある。軟材質のシリコン樹脂による外径が44mm、幅が1.3mmのシールリング体10を使用して、当接面部Bのシール状態を実験した結果によると、シールリング体10の厚みは0.1〜0.2mmの範囲が適当で、特に0.15mmの厚みで良好なシール結果を得ることができた。
【0024】
内筒体2の周壁4の外周面下端部と、これに対向する外筒体7の筒壁9の内周面下端部には、互いに乗り越え係止してアンダーカット結合するアンダーカット結合部Aが形成されている。内筒体2側のアンダーカット結合部Aは、上面を傾斜面とした突片状(図2参照)に構成され、外筒体7側のアンダーカット結合部Aは、内筒体2側のアンダーカット結合部Aが嵌入する凹部状(図2参照)に構成されている。
【0025】
また、内筒体2の周壁4の外周面下端には、外筒体7の筒壁9の下端面と等しい上面幅寸法で、外鍔状のフランジ片5(図1および図2参照)が一体に周設されており、このフランジ片5の上面と筒壁9の下端面は、アンダーカット結合部Aがアンダーカット結合した状態で、互いに当接する位置関係に設定されて当接面部Bを構成している。
【0026】
次に、内筒体2と外筒体7とシールリング体10から構成されるキャップ体1の組立て操作例を説明する。
最も一般的な操作例は、図3に示すように、内筒体2とシールリング体10と外筒体7を上下方向に沿って順に配置し、シールリング体10を内筒体2側の当接面B(フランジ片5の上面)上に位置出ししてセットした状態で、外筒体7を内筒体2に上方から嵌合組付けし、この嵌合組付けに伴うアンダーカット結合部Aのアンダーカット結合により、シールリング体10を当接面部Bで強力に挟持する。このシールリング体10の挟持により、両当接面部B間が密閉されるので、間隙Cは外部から完全に遮断され、これにより間隙Cに水分が浸入するのを防止する。
【0027】
図4ないし図7は、単品での取り扱い性に劣るシールリング体10を、インサート成形技術を利用して、予め内筒体2もしくは外筒体7に一体的に固着したキャップ体1の組立て操作例を示すもので、シールリング体10は、当接面部Bをインサート材として、インサート成形用の金型(図示省略)に設けられたピンゲートから溶融樹脂を供給してインサート成形される。
【0028】
図4は、内筒体2側の当接面部Bであるフランジ片5の上面をインサート材として、シールリング体10をインサート成形する場合を、また図6は、外筒体7側の当接面部Bである筒壁9の下端面をインサート材として、シールリング体10をインサート成形する場合をそれぞれ示しており、これにより単品での取扱いがし難いシールリング体10を、内筒体2もしくは外筒体7と一体に取扱うことができる。
【0029】
シールリング体10を一体的に固着した内筒体2は、図5に示すように、そのまま外筒体7と嵌合組付けすればよく、同様にシールリング体10を一体的に固着した外筒体7は、図7に示すように、そのまま内筒体2と嵌合組付けすればよい。この嵌合組付けに際して、シールリング体10は、予め内筒体2または外筒体7に対して、正確に位置出しされた状態で固着されているので、内筒体2と外筒体7とシールリング体10の組立てを正確に達成することができると共に、取扱うのは内筒体2と外筒体7の二つだけであるので、正確にかつ効率よく組立て処理を行うことができる。
【0030】
なお、本発明の実施形態例は、上記した構成例に限定されるものではなく、成形品をキャップ体1としたが、キャップ体1の他にも、外壁を透明とした二重壁構造のカバー体等の合成樹脂製成形品に適用することができる。
【0031】
また、シールリング体10の成形樹脂材料としてシリコン樹脂を示したが、水分に対して高いバリヤー性を発揮するエチレンビニル酢酸共重合樹脂を、成形樹脂材料として使用することも有効であり、さらにはポリウレタン樹脂の利用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明の合成樹脂製成形品は、光学作用を用いた装飾効果を、長期間に亘って劣化させることなく安定的に維持することができるものであり、光学作用を用いた装飾効果を利用する加飾分野での幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1 ;キャップ体
2 ;内筒体
3 ;頂壁
4 ;周壁
5 ;フランジ片
6 ;螺合筒
7 ;外筒体
8 ;天壁
9 ;筒壁
10;シールリング体
A ;アンダーカット結合部
B ;当接面部
C ;間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7