特許第5975425号(P5975425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975425
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   E03D13/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-215101(P2012-215101)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-70343(P2014-70343A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋和
(72)【発明者】
【氏名】新川 真弘
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 智明
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3150343(JP,U)
【文献】 特開2003−301504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向け開口し洗浄水の供給を受けるボウル部と、
このボウル部の底部に設けられた凹部と、
この凹部の底面に立設され上下開口した排水筒と、
前記凹部に取り付けられ前記排水筒及び前記凹部を覆う天板部を有する目皿と、
前記目皿と前記凹部の開口縁部との間に形成されて前記凹部内に洗浄水を流入させる複数の流入口と、
を備えた小便器において、
前記排水筒の上側の開口端の最も高い位置は、前記複数の流入口の中で最も低い位置にある流入口よりも上方の位置であり、
前記排水筒の上側の開口端の最も低い位置は、前記目皿の天板部の下面において最も低い位置となる下面下端よりも下方の位置であることを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記排水筒の上側の開口端の開口端面は、水平面に対して所定角度傾斜しており、
前記所定角度は、
前記開口端の最も高い位置が前記複数の流入口の中で最も低い位置にある流入口よりも上方の位置となる角度であるとともに、
前記開口端の最も低い位置が前記目皿の天板部の下面において最も低い位置となる下面下端よりも下方の位置となる角度であることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
前記排水筒の上端部には、前記排水筒の上側の開口端を部分的に低くする切欠き部が設けられており、
前記開口端の最も低い位置は、前記切欠き部の底の位置であることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目皿を備えた小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器のボウル部の底部に着脱可能に取り付けられる目皿は、陶器にて形成されていた。目皿を陶器で形成した場合、掃除等のメンテナンスのために目皿を着脱する際に、目皿がボウル部の底部等と当たって破損しやすく、また、重量が重いため作業がしにくいといった問題があった。そのため、近年では、陶器で形成した場合に比べて破損しにくく、重量が軽い上に、製造コストの低い合成樹脂で形成された目皿が利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−021163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目皿の材料となる合成樹脂としては、例えばポリ塩化ビニルやメラミン樹脂等が用いられる。これらの合成樹脂は撥水性を備えていることから、目皿の表面に接触する水は、目皿の表面で弾かれ、水自身の表面張力により水玉となりやすい。そのため、合成樹脂で形成された目皿は、小便器において供給される洗浄水による洗浄の際に、目皿上面の全体に万遍なく洗浄水が行き渡らず、洗浄されない部分ができやすいという問題があった
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、目皿の表面において、洗浄水により洗浄されない部分をできにくくすることが可能な小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上方に向け開口し洗浄水の供給を受けるボウル部と、このボウル部の底部に設けられた凹部と、この凹部の底面に立設され上下開口した排水筒と、前記凹部に取り付けられ前記排水筒及び前記凹部を覆う天板部を有する目皿と、前記目皿と前記凹部の開口縁部との間に形成されて前記凹部内に洗浄水を流入させる複数の流入口と、を備えた小便器において、前記排水筒の上側の開口端の最も高い位置は、前記複数の流入口の中で最も低い位置にある流入口よりも上方の位置であり、前記排水筒の上側の開口端の最も低い位置は、前記目皿の天板部の下面において最も低い位置となる下面下端よりも下方の位置であることを特徴とする小便器である。
【0007】
このように構成された本発明においては、排水筒の上側の開口端の最も高い位置は、複数の流入口の内で最も低い位置にある流入口よりも上方に位置するため、ボウル部に洗浄水が供給されたときに、凹部に留まる洗浄水の水位は最も低い位置にある流入口よりも上昇する。そのため、洗浄水が目皿の上面に溜まりやすいとともに、溜まった洗浄水に向けて洗浄水が供給され続けることで洗浄水を目皿上面の全体へと行き渡りやすくすることができる。また、排水筒の上側の開口端の最も低い位置は、目皿の天板部の下面において最も低い位置となる下面下端よりも下方に位置するため、ボウル部に洗浄水が供給されていないときには、凹部に留まる洗浄水の水位を目皿の上面よりも下方にすることができる。そのため、洗浄水が供給されていない状態で目皿の上に水が存在する状況を避けることができ、使用者に違和感を与えることがない。
【0008】
本発明においては、前記排水筒の上側の開口端の開口端面は、水平面に対して所定角度傾斜してもよく、前記所定角度は、前記開口端の最も高い位置が前記複数の流入口の中で最も低い位置にある流入口よりも上方の位置となる角度であるとともに、前記開口端の最も低い位置が前記目皿の天板部の下面において最も低い位置となる下面下端よりも下方の位置となる角度である。
【0009】
このように構成された本発明においては、排水筒の上側の開口端面の傾斜形状によって、ボウル部内に洗浄水が供給されたときに凹部に留まる洗浄水の水位を最も低い位置にある流入口よりも上昇させ、ボウル部に洗浄水が供給されていないときには凹部に溜まる洗浄水の水位を目皿の天板部の下面下端よりも下方にすることができる。
【0010】
本発明は、また、前記排水筒の上端部には、前記排水筒の上側の開口端を部分的に低くする切欠き部が設けられてもよく、前記開口端の最も低い位置は、前記切欠き部の底の位置である。
【0011】
このように構成された本発明においては、排水筒の上側の開口端によって、ボウル部に洗浄水が供給されたときに凹部に留まる洗浄水の水位を最も低い位置にある流入口よりも上昇させ、切り欠き部により、ボウル部に洗浄水が供給されていないときには凹部に留まる洗浄水の水位を目皿の天板部の下面下端よりも下方にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の小便器によれば、目皿の表面において、洗浄水により洗浄されない部分をできにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における小便器を示す正面図。
図2】本発明の一実施形態における小便器の目皿を外した状態を示す上面図。
図3図1のA―A断面図。
図4】(a)本発明の一実施形態における小便器の目皿を示す上面図。(b)本発明の一実施形態における小便器の目皿を示す右側面図。(c)本発明の一実施形態における小便器の目皿を示す底面図。
図5図3のB−B断面図。
図6図3の部分拡大図。
図7】(a)本発明の一実施形態における小便器の洗浄時の水位を示す断面図。(b)本発明の一実施形態における小便器の止水時の水位を示す断面図。
図8】本発明の一実施形態における小便器の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による小便器について説明する。図1は本発明の一実施形態における小便器を示す正面図であり、図2は本発明の一実施形態における小便器の目皿を外した状態を示す上面図、図3図1のA−A断面図である。
【0015】
図1図3に示すように、本発明の一実施形態による小便器1は、ボウル部2と、このボウル部2の底部2aに設けられた凹部4と、この凹部4の底面に立設され上下開口した排水筒6と、ボウル部2へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段8と、凹部4に取り付けられ排水筒6及び凹部4を覆う合成樹脂製の目皿10とを備える。
【0016】
ボウル部2は、上方に向けて開口したボウル形状であり、使用者が排泄した排泄物等を受ける。ボウル部2は、排泄物等を洗浄するため、洗浄水供給手段8から洗浄水の供給を受ける。凹部4は、ボウル部2の底部2aの略中央に形成される凹みであり、開口端面が、前方から後方に向けて上昇するように傾斜している。さらに、凹部4の上端周縁には段差4aが形成されている。
【0017】
また、排水筒6は、詳細は後述するが、上下開口した略円筒形状で、凹部4の底面を貫通するように、凹部4の中央に立設されている。すなわち、排水筒6の上端の開口は、凹部4の底面よりも上方に位置し、排水筒6の下端の開口は、凹部4の底面よりも下方に位置しており、排水筒6が凹部4の底面を介して凹部4の内外を連通している。なお、本実施形態では排水筒6をボウル部2の底部2a及び凹部4と一体に形成した場合を示しているが、このような実施形態に限定されるものではなく、例えば、排水筒6を樹脂等で形成し別体としてもよい。
【0018】
洗浄水供給手段8は、ボウル部2の上部に設けられる。洗浄水供給手段8は、水道管等の図示しない水源から、使用者による洗浄開始操作を検出して動作するフラッシュバルブ等の図示しない開閉弁を介して供給される洗浄水を、ボウル部2の壁面に沿って下方へ向けて吐水する。
【0019】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の一実施形態における目皿10の詳細を説明する。図4(a)は本発明の一実施形態における小便器の目皿を示す上面図、(b)は本発明の一実施形態における小便器の目皿を示す右側面図、(c)は本発明の一実施形態における小便器の目皿を示す底面図、図5図2のB−B断面図である。
図4に示すように、目皿10は、略平板状の目皿本体部10a(天板部)と、この目皿本体部10aの下面から下方に突出する筒状部10bとを有する。
【0020】
目皿本体部10aは、上面が前方から後方に向けて上昇するように傾斜して形成される。目皿本体部10aの後端は左右にまっすぐな直線状であり、左端及び右端は後端の左右端部から前後方向略中央部までそれぞれ直線状に左右方向の幅を拡大させるように前方へと延び、前後方向略中央部から前半部分は前方に向けて弧を描く半円状になっている。目皿本体部10aの下面の左前端近くと右前端近くには、それぞれにリブ10c、10cが形成されている。
【0021】
また、図5に示すように、目皿本体部10aの下面の端部には目皿凹部10d1〜10d4が形成されている。目皿凹部10d1、10d2は、リブ10c、10cよりも後方側の左右両端に形成され、目皿凹部10d3、10d4は、リブ10cよりも前方側の左右両端に形成されている。目皿凹部10d1〜10d4は、いずれも目皿本体部10aの端部下面において、略中心に向けて凹む形状であり、下端が開放されている。これら目皿凹部10d1〜10d4が形成されることにより、目皿10を凹部に取り付けた状態では、左右両端のリブ10cと目皿本体部10aの後方側下面とが凹部4の段差4aに当接しつつ、目皿本体部10a前方側の下面と凹部4前方側の段差4aとの間に隙間12が生じる(図3参照)。この隙間12及び目皿凹部10d1〜10d4が、凹部4内に洗浄水を流入させる流入口として機能する。
【0022】
また、目皿本体部10aの上面中央には、上方に向けて突出する着脱操作部10eが形成されている。着脱操作部10eの左側面から右側面に向けて貫通する貫通孔10fが開設されており、この貫通孔10fにフック等を掛けられるようになっている。これにより、凹部4に対して目皿10を容易に着脱できるようになっている。
【0023】
筒状部10bは、上端が目皿本体部10aの下面に連接されており、下端が開口した略円筒状である。このため、筒状部10bの上端は、目皿本体部10aの傾斜に沿うように、前方から後方に向けて上昇するように傾斜している。また、筒状部10bは、目皿本体部10aを凹部4に取り付けたときに、凹部4の内周壁面及び底面、排水筒6の外周壁面とで形成される凹状の空間に嵌り込む。
【0024】
また、筒状部10bの内径は、排水筒6の外径よりも大きく、筒状部10bは、目皿本体部10aを凹部4に取り付けたときに、排水筒6の外側を囲うように配置され、筒状部10bの下端は、排水筒6の上端の何れの部位よりも下方に位置し、凹部4の底面に届かない程度の長さである。そして、排水筒6の全周には、筒状部10bとの間には略一定の隙間が形成され、排水筒6と筒状部10bは、略同軸状の位置関係となる。これにより、筒状部10bと、凹部4の内周壁面及び底面と排水筒6の外周壁面とで、排水トラップを形成する。
【0025】
次に、図6を参照して、本発明の一実施形態における排水筒6の詳細を説明する。
図6は、図3の部分拡大図である。
排水筒6の上側の開口端の開口端面6aは、前方から後方に向けて上昇するように水平面に対して所定角度R傾斜している。
【0026】
所定角度Rは、傾斜する開口端面6aの上端の高さ位置L6が、流入口として機能する隙間12及び目皿凹部10d(10d1〜10d4)の中で最も低い位置となる隙間12の最下端の高さ位置L2よりも、上方となる角度である。さらに、所定角度Rは、傾斜する開口端面6aの下端の高さ位置L0が、傾斜する目皿本体部10a下面において最も低い位置となる下面下端、即ち目皿本体部10aの最前下端の高さ位置L4よりも下方となる角度である。なお、高さ位置L4は高さ位置L2と同一の高さ位置である。即ち、開口端面6aの傾斜によって排水筒6の上側の開口端の最も高い位置となる高さ位置L6が、複数の流入口の中で最も低い位置にある流入口である隙間12よりも上方の位置となり、かつ、開口端面6aの傾斜によって排水筒6の上側の開口端の最も低い位置となる高さ位置L0が、目皿本体部10aの最前下端の高さ位置L4よりも下方の位置となるように、開口端面6aの傾斜角度(所定角度R)が設定される。また、所定角度Rは目皿本体部10aの傾斜角度と略同角度である。なお、本実施形態において、高さ位置L2と高さ位置L4とは同一の高さとなるが、本発明はこのような形態に限定されず、高さ位置L2と高さ位置L4とを互いに異なる高さとしてもよい。
【0027】
排水筒6の下端の開口は建物の壁面内等に配置された図示しない配管と連通し排泄物等を排出することができるようになっている。
【0028】
以下、図7(a)及び(b)を参照して本発明の一実施形態における小便器1の動作について説明する。図7(a)は本発明の一実施形態における小便器の洗浄時の水位を示す断面図、(b)は本発明の一実施形態における小便器の止水時の水位を示す断面図である。
使用者がフラッシュバルブ等の開閉弁(図示せず)に対して洗浄開始操作を行うと、ボウル部2の上方位置に設けられた洗浄水供給手段8へと水源(図示せず)から洗浄水が開閉弁を介して供給される。供給された洗浄水が、洗浄水供給手段8によってボウル部2へと吐水され、ボウル部2の内面全体に洗浄水が行き渡る。ボウル部2にて受けた排泄物等は洗浄水とともにボウル部2の底部2aへと流れていく。
【0029】
ボウル部2の底部2a流れてきた排泄物等を含む洗浄水の一部が、目皿本体部10a上面の後方側から前方側へと流れるとともに、目皿本体部10aの前方側と凹部4の段差4aとの間の隙間12と、目皿本体部10a下面の目皿凹部10d(10d1〜10d4)とから凹部4内へと流れ込む。凹部4内へと流れ込んだ洗浄水は、排水筒6内を通り、排水筒6の下端開口から配管(図示なし)へと排出される。また、凹部4内では、排水筒6の上端の開口端面6aが後方に向けて上昇傾斜しており、目皿本体部10a下面に近接しているため、特に後方側にて洗浄水が排水筒6内へと流れ込みにくくなっており、凹部4内の水位が徐々に上昇していく。この水位の上昇により、図7(a)に示すように、洗浄水の水位は、目皿本体部10a上面の下側の一部を越える位置である洗浄時水位WL2となり、目皿本体部10a上面の前側部分の上には洗浄水が溜まる。このように目皿本体部10a上に溜まる洗浄水により、隙間12及び目皿凹部10dから洗浄水が凹部4内へ流入しにくくなるとともに、溜められた洗浄水と洗浄水供給手段8から吐水された洗浄水とが合流することで、目皿本体部10a上面の全体へと洗浄水が行き渡る。
【0030】
洗浄水供給手段8による洗浄水の吐水が停止すると、ボウル部2の底部2aにおける洗浄水の水位は徐々に下降していく。この水位の下降により、洗浄水の水位は、図7(b)に示すように、排水筒6の上端の開口端面6aの下端の高さ位置、つまり排水筒6の上側の開口端の最も低い位置と同じ高さ位置である止水時水位WL0となる。
【0031】
上述した本発明の一実施形態における小便器1においては、排水筒6の開口端面6aが所定角度R傾斜している。この所定角度Rは、排水筒6の上側の開口端の最も高い位置、つまり開口端面6aの上端の高さ位置L6が、隙間12及び目皿凹部10dの中で最も低い位置となる隙間12の最下端の高さ位置L2よりも上方に位置する角度である。そのため、排水筒6内へ洗浄水が入りにくく、排水筒6から洗浄水が排出されにくくなることで、凹部4内の水位を上昇させて洗浄水の水位が目皿本体部10aの上面の一部よりも上方へと上昇させることができる。この洗浄水の水位の上昇により、目皿本体部10a上面の前側部分には洗浄水が溜まる。この溜まった洗浄水により、洗浄水が隙間12及び目皿凹部10dから凹部4内へ流入しにくくなるとともに、溜まった洗浄水と洗浄水供給手段8から吐水された洗浄水とが合流し、目皿本体部10a上面へと洗浄水が広がりやすくなる。そのため、目皿10の上面全体へと洗浄水を万遍なく行き渡らせることができ、撥水性を備える目皿10上面において洗浄されない部分をできにくくすることが可能となる。また、所定角度Rは、排水筒6の上側の開口端の最も低い位置、つまり開口端面6aの下端の高さ位置L0が、目皿10の目皿本体部10a下面において最も低い位置となる最前下端の高さ位置L4(L2)よりも下方に位置する角度であるため、洗浄水供給手段8により洗浄水が供給されていないときには、凹部4に溜まる洗浄水の水位を目皿10の上面よりも下方にすることができる。そのため、洗浄水が供給されていない状態で目皿10の上に水が存在する状況を避けることができ、使用前及び使用後において、使用者に違和感を与えることがない。
【0032】
さらに、排水筒6の開口端面6aの傾斜角度である所定角度Rは、目皿本体部10aの傾斜角度と略同角度である。これにより、目皿10を着脱する際に、筒状部10b上面と排水筒6の上端とが接触しにくいため、作業がしやすく、接触による破損も生じにくい。また、排水筒6の上側の開口端面を水平面に対して傾斜させる構成によれば、排水筒6の上側の開口端の高さ位置に高低をつけるに際し、開口端面6aが傾斜するという簡易な形状であるため、排水筒6を含む便器部分を作製しやすい。
【0033】
なお、本実施形態においては、排水筒6の開口端面6aを所定角度R傾斜させることにより、排水筒6上端の一部を複数の流入口(隙間12、目皿凹部10d(10d1〜10d4))の内で最も低い位置にある流入口(隙間12の最下端)よりも上方に位置させるとともに、排水筒6上端の他の一部を目皿10の目皿本体部10a下面において最も低い位置となる下面下端(目皿本体部10aの最前下端)よりも下方に位置させているが、本発明はこのような形態に限定されない。
【0034】
本実施形態に係る小便器の変形例について、図8を用いて説明する。図8(a)は本発明の一実施形態における小便器の変形例を示す断面図、(b)は(a)のP視図である。
【0035】
この変形例の小便器においては、上述したように排水筒6の開口端面に傾斜をつける代わりに、排水筒6の上端部に切欠き部6bを設けることで、排水筒6の上側の開口端の高さ位置に高低差を設けている。つまり、この変形例の小便器においては、排水筒6の上端部に、排水筒6の上側の開口端を部分的に低くする切欠き部6bが設けられており、排水筒6の上側の開口端の最も低い位置が、切欠き部6bの底(底面)の位置となっている。
【0036】
具体的には、図8(a)及び(b)に示すように、排水筒6の上端を隙間12の最前端よりも上方に位置させるとともに、排水筒6上端から目皿本体部10aの最前下端よりも下方の位置にまで及ぶ切欠き部6bが設けられている。そして、排水筒6においては、切欠き部6bの底(底面)の位置が、排水筒6の上側の開口端の最も低い位置であり、目皿本体部10aの下面下端よりも下方の位置となる。ここで、この場合、洗浄水供給手段8から洗浄水が供給されたときには、洗浄水の水位は目皿10上面の一部よりも上方の洗浄時水位WL2となり、洗浄水が供給されないときには、切欠き部6bの下端位置である止水時水位WL0となる。これにより、上述したように排水筒6の開口端面に傾斜をつけることで排水筒6の上側の開口端の高さ位置に高低を設ける構成の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
なお、図8に示す例では、切欠き部6bは、略矩形状であって、排水筒6の上側の開口端部において後側(図8(a)において右側)に設けられているが、切欠き部6bの形状や配置位置は特に限定されない。また、排水筒6の上側の開口端の高さ位置に高低を設けるための構成としては、この変形例のように切欠き部を設ける構成と、上述したように排水筒6の開口端面6aに傾斜をつける構成とを組み合わせた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…小便器
2…ボウル部
2a…底部
4…凹部
4a…段差
6…排水筒
6a…開口端面
6b…切欠き部
8…洗浄水供給手段
10…目皿
10a…目皿本体部
10b…筒状部
10c…リブ
10d…目皿凹部
10e…着脱操作部
10f…貫通孔
12…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8