【文献】
堀井大輔 他,“寄生容量の影響を補償した単一演算増幅器形高次スイッチトキャパシタフィルタの導出”,電気学会電子回路研究会資料,日本,電気学会,2011年10月20日,vol.ECT-11, no.73 ,pp.31-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサー回路により角速度を検出するために用いる圧電素子(例えば、振動子)においては、駆動方向の共振周波数及びコリオリ力による振動を検出する検出方向の共振周波数について、互いの干渉を避けるために差を設けている。ところが、外乱の影響等により、この共振周波数の差(離調周波数)に相当する振動が圧電素子に加わると、不要な信号となる離調周波数の角速度信号が出力されてしまう。このような不要な信号を抑制するためには、離調周波数を十分大きくすることが考えられるが、駆動方向と検出方向の振動周波数が離れ、共振による感度増大の効果が得られなくなるという問題がある。そのため、この種の不要な信号は、ローパスフィルター回路により抑制する必要が生じる。このようなローパスフィルター回路は、できるだけ面積が小さく、且つ、低消費電力で動作することが望まれる。従って、ローパスフィルター回路を、できるだけ総容量値が小さく、できるだけ少ない数の演算増幅器を備えたスイッチトキャパシター積分回路により構成することが望ましい。
【0007】
しかしながら、スイッチトキャパシター積分回路は、容量素子の寄生容量の影響を受けるという問題があり、所望の伝達特性を高精度に実現することが難しい。
【0008】
また、スイッチトキャパシター積分回路により構成されるローパスフィルター回路のみならず、その他のフィルター回路(例えばバンドパスフィルター回路)についても、できるだけ高精度で、面積が小さく、且つ、低消費電力で動作することが望まれる。
【0009】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は態様として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の第1の態様では、スイッチトキャパシター積分回路が、第1の容量及び第2の容量を有する第1の電圧電荷変換正相積分回路と、第3の容量、第1の端子に前記第3の容量の一端が接続され第2の端子に所定の電圧が供給される演算増幅手段、及び前記演算増幅手段の出力と前記第1の端子との間に接続された第4の容量を有する電荷逆相積分回路とを含み、前記第1の電圧電荷変換正相積分回路は、充電された電荷が第1の期間において放電される前記第1の容量を介し、前記第1の期間経過後の第2の期間において印加された第1の入力電圧に比例した電荷を前記第2の容量に充電し、前記電荷逆相積分回路は、前記第2の期間経過後の第3の期間において、前記第2の容量に充電された電荷の一部を前記第3の容量に転送する。
【0011】
本態様においては、第1の容量を介して、第2の期間において印加された第1の入力電圧に比例した電荷を第2の容量に充電し、第2の期間経過後の第3の期間において、第2の容量に充電された電荷の一部を第3の容量に転送する。そして、電荷逆相積分回路の演算増幅手段と第4の容量とにより、第3の容量に充電された電荷に対して積分動作を行うことができるので、単一の演算増幅手段で、2重逆相積分を行うことができるようになる。従って、より小さい面積で、低消費電力で動作可能な2重積分回路を提供することができる。
【0012】
(2)本発明の第2の態様に係るスイッチトキャパシター積分回路は、第1の態様において、前記第1の容量の容量値Aに対する前記第1の容量の第1の寄生容量の容量値の比、前記第2の容量の容量値Bに対する前記第2の容量の第2の寄生容量の容量値の比、及び前記第3の容量の容量値Cに対する前記第3の容量の第3の寄生容量の容量値の比が同一となるように形成し、前記第1の入力電圧をV1、前記第2の容量に充電された電荷をQbとしたとき、Qbは、V1×(A×B)/(A+B)に対応した電荷であり、前記電荷逆相積分回路は、(Qb×C)/(B+C)に対応した電荷を前記第3の容量に転送する。
【0013】
本態様によれば、スイッチトキャパシター積分回路を構成する容量に付加する寄生容量の影響を補償することができるので、単一の演算増幅器で、寄生容量の影響を補償することができる2重積分回路を提供することができるようになる。
【0014】
(3)本発明の第3の態様に係るスイットキャパシター積分回路は、第1の態様又は第2の態様において、第5の容量を有する第2の電圧電荷変換正相積分回路を含み、前記第2の電圧電荷変換正相積分回路は、充電された電荷が第1の期間において放電される前記第5の容量を介し、前記第2の期間において印加された第2の入力電圧に比例した電荷を前記第2の容量に充電する。
【0015】
本態様においては、上記の2重積分回路を実現する構成に、第2の電圧電荷変換正相積分回路が追加される。従って、本態様においては、第2の期間において第2の入力電圧に比例した電荷を第2の容量に充電し、電荷逆相積分回路が、第3の期間において、第2の容量に充電された電荷の一部を第3の容量に転送する。そのため、単一の演算増幅器で、2入力2重積分回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する2入力2重積分回路を提供することができるようになる。
【0016】
(4)本発明の第4の態様は、スイッチトキャパシター積分回路が、第1の容量及び第2の容量を有する電圧電荷変換逆相積分回路と、第3の容量、第1の端子に前記第3の容量の一端が接続され第2の端子に所定の電圧が供給される演算増幅手段、及び前記演算増幅手段の出力と前記第1の端子との間に接続された第4の容量を有する電荷逆相積分回路と、第5の容量を有する電圧電荷変換正相積分回路とを含み、前記電圧電荷変換逆相積分回路は、第1の期間において第1の入力電圧に比例した電荷を前記第1の容量に充電し、前記第1の容量に充電された電荷を前記第1の期間経過の第2の期間において前記第2の容量に転送し、前記電圧電荷変換正相積分回路は、充電された電荷が前記第1の期間において放電される前記第5の容量を介し、前記第2の期間において印加された第2の入力電圧に比例した電荷を前記第2の容量に充電し、前記電荷逆相積分回路は、前記第2の期間経過後の第3の期間において、前記第2の容量に充電された電荷の一部を前記第3の容量に転送する。
【0017】
本態様においては、電圧電荷変換逆相積分回路が、第1の期間において第1の入力電圧に比例した電荷を第1の容量に充電し、第1の容量に充電された電荷を第2の期間において第2の容量に転送する。そして、電圧電荷変換正相積分回路は、第5の容量を介し、第2の期間において印加された第2の入力電圧に比例した電荷を第2の容量に充電する。電荷逆相積分回路は、第3の期間において、第2の容量に充電された電荷の一部を第3の容量に転送し、電荷逆相積分回路の演算増幅手段と第4の容量とにより、第3の容量に充電された電荷に対して積分動作を行う。従って、単一の演算増幅手段で、2重正相積分を行うことができるようになる。従って、より小さい面積で、低消費電力で動作可能な2重積分回路を提供することができる。
【0018】
(5)本発明の第5の態様は、スイッチトキャパシター積分回路が、第1の容量及び第2の容量を有する差動積分回路と、第3の容量、第1の端子に前記第3の容量の一端が接続され第2の端子に所定の電圧が供給される演算増幅手段、及び前記演算増幅手段の出力と前記第1の端子との間に接続された第4の容量を有する電荷逆相積分回路とを含み、前記差動積分回路は、第1の期間において前記第1の容量を介して印加された第1の入力電圧と、前記第1の期間経過後の第2の期間において前記第1の容量を介して印加された第2の入力電圧との差に比例した電荷を、前記第2の期間において前記第2の容量に充電し、前記電荷逆相積分回路は、前記第2の期間経過後の第3の期間において、前記第2の容量に充電された電荷の一部を前記第3の容量に転送する。
【0019】
本態様においては、差動積分回路が、第1の期間において第1の容量を介して印加された第1の入力電圧と、第2の期間において第1の容量を介して印加された第2の入力電圧との差に比例した電荷を、第2の期間において第2の容量に充電する。そして、電荷逆相積分回路は、第3の期間において、第2の容量に充電された電荷の一部を第3の容量に転送し、電荷逆相積分回路の演算増幅手段と第4の容量とにより、第3の容量に充電された電荷に対して積分動作を行う。従って、単一の演算増幅手段で、2重逆相積分を行うことができるようになる。従って、より小さい面積で、低消費電力で動作可能な2重積分回路を提供することができる。
【0020】
(6)本発明に係る第6の態様は、スイッチトキャパシター積分回路が、第1の容量及び第2の容量を有する微分回路と、第3の容量、第1の端子に前記第3の容量の一端が接続され第2の端子に所定の電圧が供給される演算増幅手段、及び前記演算増幅手段の出力と前記第1の端子との間に接続された第4の容量を有する電荷逆相積分回路とを含み、前記微分回路は、第2の期間において前記第1の容量を介して印加された第1の入力電圧と、前記第2の容量に充電された電荷に対応した電圧との差の微分を前記第2の容量に充電し、前記電荷逆相積分回路は、前記第2の期間経過後の第3の期間において、前記第2の容量に充電された電荷の一部を前記第3の容量に転送する。
【0021】
本態様においては、微分回路が、第2の期間において第1の容量を介して印加された第1の入力電圧と、第2の容量に充電された電荷に対応した電圧との差の微分を第2の容量に充電する。そして、電荷逆相積分回路は、第3の期間において、第2の容量に充電された電荷の一部を前記第3の容量に転送し、電荷逆相積分回路の演算増幅手段と第4の容量とにより、第3の容量に充電された電荷に対して積分動作を行う。従って、単一の演算増幅手段で、微分と積分とを行うことができるようになる。従って、より小さい面積で、低消費電力で動作可能な微分積分回路を提供することができる。
【0022】
(7)本発明の第7の態様に係るスイッチトキャパシター積分回路は、第6の態様において、第5の容量を有する電圧電荷変換正相積分回路を含み、前記電圧電荷変換正相積分回路は、充電された電荷が前記第2の期間以前の第1の期間において放電される前記第5の容量を介し、前記第2の期間において印加された第2の入力電圧に比例した電荷を前記第2の容量に充電する。
【0023】
本態様によれば、単一の演算増幅器で、2入力微分積分回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する2入力2重積分回路を提供することができるようになる。
【0024】
(8)本発明の第8の態様に係るスイッチトキャパシター積分回路では、第1の態様乃至第7の態様のいずれかにおいて、前記第1の期間及び前記第2の期間は、2相クロックにより規定され、前記第2の期間は、前記第1の期間と逆相の期間であり、前記第3の期間は、前記第1の期間と同相の期間である。
【0025】
本態様によれば、2相クロックによりスイッチ動作を行うスイッチを用いて2重積分を行うスイッチトキャパシター積分回路を提供でき、構成及び制御を大幅に簡素化することができるようになる。
【0026】
(9)本発明の第9の態様は、フィルター回路が、第3の態様記載のスイッチトキャパシター積分回路を含み、前記第1の入力電圧又は前記第2の入力電圧として前記演算増幅手段の出力電圧を供給する。
【0027】
本態様によれば、単一の演算増幅器で、2次のローパスフィルター回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する2次のローパスフィルター回路を提供することができるようになる。
【0028】
(10)本発明の第10の態様は、フィルター回路が、第4の態様又は第5の態様記載のスイッチトキャパシター積分回路を含み、前記第2の入力電圧として前記演算増幅手段の出力電圧を供給する。
【0029】
本態様によれば、単一の演算増幅器で、2次のローパスフィルター回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する2次のローパスフィルター回路を提供することができるようになる。
【0030】
(11)本発明の第11の態様は、フィルター回路が、第1のローパスフィルター回路と、前記第1のローパスフィルター回路の出力に縦続接続され、前記第1のローパスフィルター回路と逆相で動作する第2のローパスフィルター回路とを含み、前記第1の期間及び前記第2の期間は、2相クロックにより規定され、前記第2の期間は、前記第1の期間と逆相の期間であり、前記第3の期間は、前記第1の期間と同相の期間であり、前記第1のローパスフィルター回路及び前記第2のローパスフィルター回路の各々は、第10の態様記載のフィルター回路を含み、前記第1のローパスフィルター回路を構成する演算増幅手段、及び前記第2のローパスフィルター回路を構成する演算増幅手段は、時分割使用される単一の演算増幅器により実現される。
【0031】
本態様によれば、単一の演算増幅器で、4次のローパスフィルター回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する4次のローパスフィルター回路を提供することができるようになる。
【0032】
(12)本発明の第12の態様は、フィルター回路が、第7の態様記載のスイッチトキャパシター積分回路を含み、前記第2の入力電圧として前記演算増幅手段の出力電圧を供給する。
【0033】
本態様によれば、単一の演算増幅器で、2次のバンドパスフィルター回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する2次のバンドパスフィルター回路を提供することができるようになる。
【0034】
(13)本発明の第13の態様は、フィルター回路が、第1のバンドパスフィルター回路と、前記第1のバンドパスフィルター回路の出力に縦続接続され、前記第1のバンドパスフィルター回路と逆相で動作する第2のバンドパスフィルター回路とを含み、前記第1の期間及び前記第2の期間は、2相クロックにより規定され、前記第2の期間は、前記第1の期間と逆相の期間であり、前記第3の期間は、前記第1の期間と同相の期間であり、前記第1のバンドパスフィルター回路及び前記第2のバンドパスフィルター回路の各々は、第12の態様記載のフィルター回路を含み、前記第1のバンドパスフィルター回路を構成する演算増幅手段、及び前記第2のバンドフィルター回路を構成する演算増幅手段は、時分割使用される単一の演算増幅器により実現される。
【0035】
本態様によれば、単一の演算増幅器で、4次のバンドパスフィルター回路を提供することができるようになる。しかも、寄生容量の容量値を工夫して形成することで、寄生容量の影響を補償し、高精度で、所望の伝達特性を有する4次のバンドパスフィルター回路を提供することができるようになる。
【0036】
(14)本発明は、物理量測定装置が、振動子と、前記振動子と発振ループを形成し、該振動子に駆動信号を励振する駆動回路と、第9の態様乃至第13の態様のいずれか記載のフィルター回路を有し、前記振動子に励振される駆動振動及び測定すべき物理量に応じて検出信号を出力する検出回路とを含む。
【0037】
本態様によれば、小さい面積で、低消費電力で動作可能で、高精度な測定が可能な物理量測定装置の提供に寄与することができるようになる。
【0038】
(15)本発明の第15の態様は、電子機器が、第14の態様記載の物理量測定装置を含む。
【0039】
本態様によれば、小さい面積で、低消費電力で動作可能で、高精度な測定が可能な物理量測定装置が適用された電子機器の提供に寄与することができるようになる。
【0040】
(16)本発明の第16の態様は、電子機器が、第1の態様乃至第8の態様のいずれか記載のスイッチトキャパシター積分回路を含む。
【0041】
本態様によれば、小さい面積で、低消費電力で動作可能な電子機器の提供に寄与することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0044】
1. 第1の実施形態
1.1 2重積分回路
図1(A)、
図1(B)に、本発明の第1の実施形態におけるスイッチトキャパシター(Switched
Capacitor:以下、SC)積分回路により構成される2重逆相積分回路の構成例を示す。
図1(A)は、第1の実施形態における2重逆相積分回路の構成例を表し、
図1(B)は、
図1(A)の2重逆相積分回路の動作説明図を表す。
【0045】
2重逆相積分回路10は、
図1(B)に示す正相積分回路としての電圧電荷変換正相積分回路20(第1の電圧電荷変換正相積分回路)と、
図1(B)に示す逆相積分回路としての電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。電圧電荷変換正相積分回路20は、第1の容量C1(容量値A)と、第2の容量C2(容量値B)とを備えている。電荷逆相積分回路30は、第3の容量C3(容量値C)と、演算増幅器AMP(広義には、演算増幅手段)と、第4の容量C4(容量値G)とを備えている。第3の容量C3の一端は、スイッチを介して演算増幅器AMPの反転入力端子(第1の端子)への接続が可能に構成され、第3の容量C3の他端は接地される。この演算増幅器AMPの反転入力端子には、第4の容量C4の一端が接続され、非反転入力端子(第2の端子)には、接地電圧(所定の電圧)が供給される。第4の容量C4は、演算増幅器AMPの出力と反転入力端子との間に接続される。
【0046】
電圧電荷変換正相積分回路20は、充電された電荷が第1の期間T1において放電される第1の容量C1を介し、第1の期間T1経過後の第2の期間T2において印加された第1の入力電圧V1に比例した電荷を第2の容量C2に充電する。具体的には、電圧電荷変換正相積分回路20は、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4を有する。スイッチSW1は、2重逆相積分回路10の入力端と第1の容量C1の一端との間に設けられる。スイッチSW2は、第1の容量C1の一端と接地との間に設けられる。スイッチSW3は、第1の容量C1の他端と接地との間に設けられる。スイッチSW4は、第1の容量C1の他端と第2の容量C2の一端との間に設けられる。第2の容量C2の他端は、接地される。各スイッチは、オンのとき両端を電気的に接続し、オフのとき両端を電気的に切断する。第1の期間T1では、スイッチSW2,SW3がオン、スイッチSW1,SW4がオフとなり、第2の期間T2では、スイッチSW1,SW4がオン、スイッチSW2,SW3がオフとなる。
【0047】
電荷逆相積分回路30は、第2の期間T2経過後の第3の期間T3において、第2の容量C2に充電された電荷の一部を第3の容量C3に転送する。そして、電荷逆相積分回路30は、第3の期間T3経過後の第4の期間において、第4の容量C4と演算増幅器AMPとにより積分動作を行う。具体的には、電荷逆相積分回路30は、スイッチSW5,SW6を有する。スイッチSW5は、第2の容量C2の一端と第3の容量C3の一端との間に設けられる。スイッチSW6は、第3の容量C3の一端と演算増幅器AMPの反転入力端子との間に設けられる。第2の期間T2では、スイッチSW6がオン、スイッチSW5がオフとなり、第3の期間T3では、スイッチSW5がオン、スイッチSW6がオフとなる。第4の期間T4では、スイッチSW6がオンとなる。
【0048】
図1(A)の各スイッチは、2相クロックによりオンオフ制御される。そのため、第2の期間T2は、第1の期間T1と逆相の期間であり、第3の期間T3は、第1の期間T1と同相の期間であり、第4の期間は、第2の期間T2と同相の期間である。
【0049】
図2に、
図1の各スイッチの動作タイミングの説明図を示す。
図2は、
図1(A)の各スイッチのオンオフを制御する2相クロックのタイミングの一例を表す。
【0050】
2相クロックCLK1,CLK2は、互いに重複してHレベルとならないように変化する。クロックCLK1がHレベルの期間が、第1のフェーズスイッチとして
図1(A)において「1」と表記されるスイッチがオンとなる第1の期間T1(又は第3の期間T3)に対応する。クロックCLK2がHレベルの期間が、第2のフェーズスイッチとして
図1(A)において「2」と表記されるスイッチがオンとなる第2の期間T2に対応する。第1の期間T1から第2の期間T2に移行するとき、又は第2の期間T2から第1の期間T1に移行するとき、いわゆるオフオフ期間Toffとして、第1のフェーズスイッチ及び第2のフェーズスイッチが共にオフとなる期間が設けられる。
【0051】
図3(A)、
図3(B)に、
図1(A)の2重逆相積分回路10の動作説明図を示す。
図3(A)は、第1の期間T1における2重逆相積分回路10の等価回路を表す。
図3(B)は、第2の期間T2における2重逆相積分回路10の等価回路を表す。
図3(A)及び
図3(B)において、
図1(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0052】
第1の容量C1とスイッチSW3,SW4との接続ノードの電圧をVx、第2の容量C2の一端の電圧をVyとし、第2の容量C2及び第3の容量C3が接続される時刻をnとすると、式(1)及び式(2)が成立する。
【数1】
【数2】
【0053】
式(1)及び式(2)を用いて式(3)のようにVx
(2)を消去して、z関数のVy
(1)を求めると、式(4)のようになる。
【数3】
【数4】
【0054】
一方、Vy
(1)(z)とVo(z)との関係は、式(5)のように表すことができる。
【数5】
【0055】
従って、
図1(A)の2重逆相積分回路10の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(4)及び式(5)を用いて、式(6)及び式(7)のように表すことができる。
【数6】
【数7】
【0056】
この種のSC積分回路については、スイッチ及び容量の接続ノードと接地との間に付加される寄生容量の影響を受けることが知られている。しかしながら、
図1(A)の2重逆相積分回路10は、構成要素である容量素子の寄生容量の影響を補償することができる。
【0057】
図4に、
図1(A)の2重逆相積分回路10の寄生容量の説明図を示す。
図4において、
図1(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
2重逆相積分回路10において第1の入力電圧V1が印加される入力端側の第1の容量C1の寄生容量は、入力側から電荷の充放電が行われ、第1の入力電圧V1の電位は寄生容量の影響を受けない。同様に、出力電圧Voが印加される出力端側の第4の容量C4の寄生容量は、演算増幅器AMPの出力端子から電荷の充放電が行われ、出力電圧Voの電位は寄生容量の影響を受けない。更に、演算増幅器AMPの反転入力端子側の第4の容量C4の寄生容量は、演算増幅器AMPの反転入力端子が仮想接地点となるため、この寄生容量は両端の電圧が同電位となり、演算増幅器AMPの反転入力端子の電位も寄生容量の影響を受けない。従って、2重逆相積分回路10は、
図4に示すような寄生容量Cpa,Cpb,Cpcの影響を受ける可能性があると考えられる。
【0059】
寄生容量Cpaは、第1の容量C1の第1の寄生容量として、スイッチSW3,SW4の接続ノードと接地との間に付加される。寄生容量Cpbは、第2の容量C2の第2の寄生容量として、スイッチSW4,SW5の接続ノードと接地との間に付加される。寄生容量Cpcは、第3の容量C3の第3の寄生容量として、スイッチSW5,SW6の接続ノードと接地との間に付加される。
【0060】
ここで、寄生容量Cpa,Cpb,Cpcの各々の容量値が、第1の容量C1、第2の容量C2、及び第3の容量C3の各々の容量値に対して一定の比率p(0<p)を有するものとする。即ち、第1の容量C1の容量値Aに対する寄生容量Cpaの容量値の比、第2の容量C2の容量値Bに対する寄生容量Cpbの容量値の比、及び第3の容量C3の容量値Cに対する寄生容量Cpcの容量値の比が同一となるように形成する。このとき、寄生容量Cpaの容量値はp×A、寄生容量Cpbの容量値はp×B、寄生容量Cpcの容量値はp×Cとなる。
【0061】
図4に示す寄生容量を考慮すると、式(1)及び式(2)の各々は、式(8)、式(9)のようになる。
【数8】
【数9】
【0062】
上記と同様に計算すると、式(4)は、上記のような寄生容量を考慮すると式(10)のように求められる。
【数10】
【0063】
一方、Vy
(1)(z)とVo(z)との関係は、式(11)のように表すことができる。
【数11】
【0064】
従って、
図1(A)の2重逆相積分回路10の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(10)及び式(11)を用いて、式(12)及び式(7)のように表すことができ、式(6)及び式(7)と同様になることがわかる。
【数12】
【0065】
この結果、寄生容量Cpa,Cpb,Cpcの各々の容量値を、対応する容量素子の容量値に対して一定の比率pを有するように形成することで、上記のように寄生容量の影響が相殺され、寄生容量の影響を補償することができる。このとき、第2の容量C2に充電された電荷をQbとしたとき、Qbは、V1×(A×B)/(A+B)に対応した電荷であり、電荷逆相積分回路30は、(Qb×C)/(B+C)に対応した電荷を第3の容量C3に転送する。
【0066】
図1(A)に示す2重逆相積分回路10の構成によれば、スイッチの動作タイミングを変更することで、2重正相積分回路を簡単に構成することができる。
【0067】
図5(A)、
図5(B)に、第1の実施形態におけるSC積分回路により構成される2重正相積分回路の構成例を示す。
図5(A)は、第1の実施形態における2重正相積分回路の構成例を表し、
図5(B)は、
図5(A)の2重正相積分回路の動作説明図を表す。
図5(A)において、
図1(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0068】
2重正相積分回路10aは、
図5(B)に示す逆相積分回路としての電圧電荷変換逆相積分回路20aと、
図5(B)に示す逆相積分回路としての電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。
図5(A)に示す2重正相積分回路10aの構成が
図1(A)に示す2重逆相積分回路10の構成と異なる点は、スイッチSW1,SW2の動作タイミングを入れ替えた点である。即ち、2重正相積分回路10aでは、第2のフェーズスイッチのスイッチSW1に代えて第1のフェーズスイッチのスイッチSW1aが設けられ、第1のフェーズスイッチのスイッチSW2に代えて第2のフェーズスイッチのスイッチSW2aが設けられる。
【0069】
第1の容量C1とスイッチSW3,SW4との接続ノードの電圧をVx、第2の容量C2の一端の電圧をVyとし、第2の容量C2及び第3の容量C3が接続される時刻をnとすると、式(13)及び上記の式(2)が成立する。
【数13】
【0070】
式(13)及び式(2)を用いてVx
(2)を消去して、z関数のVy
(1)を求めると、式(14)のようになる。
【数14】
【0071】
従って、
図5(A)の2重正相積分回路10aの伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(14)及び式(5)を用いて、式(15)及び式(7)のように表すことができる。
【数15】
【0072】
図5(A)に示す構成においても、寄生容量の各々の容量値を、対応する容量素子の容量値に対して一定の比率を有するように形成することで、上記と同様に寄生容量の影響が相殺され、寄生容量の影響を補償することができる。
【0073】
以上説明したように、
図1(A)又は
図5(A)に示す構成によれば、単一の演算増幅器で、寄生容量の影響を補償することができる2重積分回路を提供することができるようになる。
【0074】
1.2 2入力2重積分回路
上記の2重逆相積分回路10又は2重正相積分回路10aに対して、1個の容量素子及び複数のスイッチを追加することで、2入力2重積分回路を構成することができる。
【0075】
図6(A)、
図6(B)に、第1の実施形態における2入力2重積分回路の第1の構成例を示す。
図6(A)は、
図1(A)の2重逆相積分回路10を適用した2入力2重積分回路の構成例を表し、
図6(B)は、
図6(A)の2入力2重積分回路の動作説明図を表す。
図6(A)において、
図1(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0076】
2入力2重積分回路50は、電圧電荷変換正相積分回路20と、
図6(B)に示す正相積分回路としての電圧電荷変換正相積分回路22(第2の電圧電荷変換正相積分回路)と、電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。電圧電荷変換正相積分回路22は、第5の容量C5(容量値D)を備えている。
【0077】
電圧電荷変換正相積分回路22は、充電された電荷が第1の期間T1において放電される第5の容量C5を介して印加された第2の入力電圧V2に比例した電荷を、第2の期間T2において第2の容量C2に充電する。具体的には、電圧電荷変換正相積分回路22は、スイッチSW7,SW8,SW9,SW10を有する。スイッチSW7は、第2の電圧電荷変換正相積分回路22の入力端と第5の容量C5の一端との間に設けられる。スイッチSW8は、第5の容量C5の一端と接地との間に設けられる。スイッチSW9は、第5の容量C5の他端と接地との間に設けられる。スイッチSW10は、第5の容量C5の他端と第2の容量C2の一端との間に設けられる。第1の期間T1では、スイッチSW8,SW9がオン、スイッチSW7,SW10がオフとなり、第2の期間T2では、スイッチSW7,SW10がオン、スイッチSW8,SW9がオフとなる。
【0078】
電荷逆相積分回路30は、第1の期間T1(第3の期間T3)において、第2の容量C2に充電された電荷の一部を第3の容量C3に転送する。
【0079】
図6(A)に示す2入力2重積分回路50の伝達関数Vo(z)/V1(z)、Vo(z)/V2(z)は、式(6)と同様に求めると、式(16)のようになる。
【数16】
【数17】
【0080】
図7(A)、
図7(B)に、第1の実施形態における2入力2重積分回路の第2の構成例を示す。
図7(A)は、
図5(A)の2重正相積分回路10aを適用した2入力2重積分回路の構成例を表し、
図7(B)は、
図7(A)の2入力2重積分回路の動作説明図を表す。
図7(A)において、
図5(A)又は
図6(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0081】
2入力2重積分回路60は、電圧電荷変換逆相積分回路20aと、電圧電荷変換正相積分回路22と、電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。電圧電荷変換逆相積分回路20aは、第1の容量C1と、第2の容量C2とを備えている。電圧電荷変換逆相積分回路20aは、第1の期間T1において第1の入力電圧V1に比例した電荷を第1の容量C1に充電し、第2の期間T2において第1の容量C1に充電された電荷を第2の容量C2に転送する。具体的には、電圧電荷変換逆相積分回路20aは、
図5(A)と同様に、スイッチSW1a,SW2a,SW3,SW4を有する。
【0082】
電圧電荷変換正相積分回路22は、第5の容量C5を備えている。電圧電荷変換正相積分回路22は、充電された電荷が第1の期間T1において放電される第5の容量C5を介し、第2の期間T2において印加された第2の入力電圧V2に比例した電荷を第2の容量C2に充電する。具体的には、電圧電荷変換正相積分回路22は、
図6(A)と同様に、スイッチSW7,SW8,SW9,SW10を有する。
【0083】
電荷逆相積分回路30は、第1の期間T1(第3の期間T3)において、第2の容量C2に充電された電荷の一部を第3の容量C3に転送する。具体的には、電荷逆相積分回路30は、
図6(A)と同様に、スイッチSW5,SW6を有する。
【0084】
図7(A)に示す2入力2重積分回路60の伝達関数Vo(z)/V1(z)、Vo(z)/V2(z)は、式(6)及び式(15)から、式(18)のようになる。
【数18】
【0085】
以上説明したように、
図6(A)又は
図7(A)に示す構成によれば、単一の演算増幅器で、寄生容量の影響を補償することができる2入力2重積分回路を提供することができるようになる。
【0086】
1.3 フィルター回路
1.3.1 2次のローパスフィルター回路
上記の2入力2重積分回路を用いることで、次のように2次のローパスフィルター回路を構成することができる。
【0087】
図8(A)、
図8(B)に、第1の実施形態における2次のローパスフィルター回路の第1の構成例を示す。
図8(A)は、
図6(A)の2入力2重積分回路50を適用した2次のローパスフィルター回路の構成例を表し、
図8(B)は、
図8(A)の2次のローパスフィルター回路の動作説明図を表す。
図8(A)において、
図6(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0088】
ローパスフィルター回路100は、電圧電荷変換正相積分回路20と、電圧電荷変換正相積分回路22と、電荷逆相積分回路30とを備えている。ローパスフィルター回路100は、
図6(A)に示す2入力2重積分回路50の構成において、演算増幅器AMPの出力端子が第2の入力電圧V2の入力端に接続される構成を有している。即ち、ローパスフィルター回路100は、
図6(A)に示す2入力2重積分回路50の構成において、第2の入力電圧V2として出力電圧Voを供給するように構成される。また、ローパスフィルター回路100は、第1の入力電圧V1として出力電圧Voを供給するように構成されてもよい。
【0089】
図8(A)に示すローパスフィルター回路100の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(19)において式(16)の右辺を代入することにより、式(20)及び式(17)のように求められる。
【数19】
【数20】
【0090】
ローパスフィルター回路100によれば、単一の演算増幅器を用い、寄生容量の影響を補償することができるので、高精度で、面積が小さく、且つ、低消費電力で動作し、直流で入力信号と逆相の信号を出力する2次のローパスフィルター回路を提供することができる。このようなローパスフィルター回路100は、他のフィルター回路と組み合わせることで、種々の伝達特性の実現に寄与することができる。
【0091】
図9(A)、
図9(B)に、第1の実施形態における2次のローパスフィルター回路の第2の構成例を示す。
図9(A)は、
図7(A)の2入力2重積分回路60を適用した2次のローパスフィルター回路の構成例を表し、
図9(B)は、
図9(A)の2次のローパスフィルター回路の動作説明図を表す。
図9(A)において、
図7(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0092】
ローパスフィルター回路110は、電圧電荷変換逆相積分回路20aと、電圧電荷変換正相積分回路22と、電荷逆相積分回路30とを備えている。ローパスフィルター回路110は、
図7(A)に示す2入力2重積分回路60の構成において、演算増幅器AMPの出力端子が第2の入力電圧V2の入力端に接続される構成を有している。即ち、ローパスフィルター回路110は、
図7(A)に示す2入力2重積分回路60の構成において、第2の入力電圧V2として出力電圧Voを供給するように構成される。
【0093】
ローパスフィルター回路110の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(19)において式(18)の右辺を代入することにより、式(21)のように求められる。
【数21】
【0094】
ローパスフィルター回路110によれば、単一の演算増幅器を用い、寄生容量の影響を補償することができるので、高精度で、面積が小さく、且つ、低消費電力で動作し、直流で入力信号と逆相の信号を出力する2次のローパスフィルター回路を提供することができる。
【0095】
ここで、s平面における2次のローパスフィルター回路の一般的な伝達関数は、次式で表される。以下の式において、ω
cはs平面におけるカットオフ角周波数、QはQ値、Kは直流利得を表す。
【数22】
【0096】
式(22)に対して双一次変換を行い、2次のローパスフィルター回路の伝達関数をz変換した結果T(z)は、次式のように求められる。次式において、Tは、スイッチのスイッチング周波数の逆数、ω
0はz平面におけるカットオフ角周波数である。
【数23】
【0097】
式(21)と式(23)の係数を比較することにより、容量値(A,B,C,D,G)を決定することができる。例えば、カットオフ角周波数を200Hz、スイッチング周波数を50kHz、K=1、Q=2
(−1/2)とすると、A=C=D=0.1pF、B=8.4pF、G=1.9pFとすることができる。この場合、総容量値は、10.6pFとなる。
【0098】
図10に、
図9(A)のローパスフィルター回路110の周波数特性の計算結果の一例を示す。
図10は、横軸に周波数、縦軸に利得をとり、計算結果を実線で示し、シミュレーション結果を点で示している。
【0099】
図10は、K=0[dB],ω
0=2π×200[rad/s]、T=1/50000[s]、Q=2
(−1/2)、A=C=D=0.1pF、B=8.4pF、G=1.9pFとしたときの計算結果を表す。
図9(A)に示す構成によれば、単一の演算増幅器を用いて、−40[dB/DEC]で減衰する2次のローパスフィルター回路として動作させることができる。
【0100】
〔比較例〕
図9(A)のローパスフィルター回路110の比較例として、公知のFleisher & Lakerのフィルター回路を考える。
【0101】
図11に、第1の実施形態の比較例としてのFleisher & Lakerの2次のローパスフィルター回路の構成を示す。
【0102】
図11に示すローパスフィルター回路150は、単一の演算増幅器を用いて2次のローパスフィルター回路として構成される。
図11に示す構成は公知であるため、詳細な説明を省略する。Fleisher
& Lakerのローパスフィルター回路では、一般的に
図11に示すような容量素子の容量値を用いて説明されるため、説明の便宜上、各容量素子の容量値は
図11に示す値を有するものとする。このようなローパスフィルター回路150の伝達関数は、次式で与えられることが知られている。
【数24】
【0103】
式(24)についても式(23)の係数を比較することにより、式(25)に示すように容量値を決定することができる。
【数25】
【0104】
例えば、カットオフ角周波数を200Hz、スイッチング周波数を50kHz、K=1、Q=2
(−1/2)とすると、A=0.1pF、B=2.8pF、C=0.1pF、D=5.6pF、F=0.1pF、G=0.1pFとすることができる。この場合、総容量値は、9.4pFとなる。
【0105】
図12に、
図9(A)のローパスフィルター回路110と
図11のローパスフィルター回路150の比較説明図を示す。
図12は、横軸にオーバーサンプリングレシオ、縦軸に正規化された総容量値を表す。
【0106】
オーバーサンプリングレシオは、カットオフ角周波数とスイッチのスイッチング周波数との比であり、オーバーサンプリングレシオを大きくすればするほど容量の総容量値が大きくなり面積が大きくなる。ローパスフィルター回路110の特性(Q1)と、ローパスフィルター回路150の特性(Q2)とを比較すると、
図12に示すように実質的には同程度であると考えることができる。即ち、ローパスフィルター回路110は、ローパスフィルター回路150と同程度の容量値で構成することができる。
【0107】
ところが、ローパスフィルター回路150は、ローパスフィルター回路110と比較して、2次のローパスフィルター回路を構成する際に必要となる容量の素子数及びスイッチの素子数が多くなってしまう。また、ローパスフィルター回路150では演算増幅器が第1の期間T1及び第2の期間T2で動作するため、4次のローパスフィルター回路を構成する際に、2つの演算増幅器が必要となる。これに対して、ローパスフィルター回路110では、演算増幅器が第2の期間T2でのみ動作するため、4次のローパスフィルター回路を構成する際に、演算増幅器を時分割使用することにより単一の演算増幅器で済む。
【0108】
1.3.2 4次ローパスフィルター回路
図9(A)の2次のローパスフィルター回路110を用いることで、次のように4次のローパスフィルター回路を構成することができる。
【0109】
図13に、
図9(A)の2次のローパスフィルター回路110を用いて構成される4次のローパスフィルター回路の構成例を示す。
図13において、
図9(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0110】
図13に示す4次のローパスフィルター回路200は、第1のローパスフィルター回路202と、第1のローパスフィルター回路202と逆相で動作する第2のローパスフィルター回路204とを備えている。第1のローパスフィルター回路202は、2次のローパスフィルター回路110により構成される。第2のローパスフィルター回路204は、2次のローパスフィルター回路110と同様に構成され、各スイッチが第1のローパスフィルター回路202の逆相で動作する。即ち、ローパスフィルター回路200は、ローパスフィルター回路110を縦続接続することにより構成される。
【0111】
図13では、第1のローパスフィルター回路202は、電圧電荷変換逆相積分回路20aと、電圧電荷変換正相積分回路22と、電荷逆相積分回路30とを備えている。第2のローパスフィルター回路204は、電圧電荷変換逆相積分回路20a´と、電圧電荷変換正相積分回路22´と、電荷逆相積分回路30´とを備えている。電圧電荷変換逆相積分回路20a´は、電圧電荷変換逆相積分回路20aと逆相で動作する。電圧電荷変換正相積分回路22´は、電圧電荷変換正相積分回路22と逆相で動作する。電荷逆相積分回路30´は、電荷逆相積分回路30と逆相で動作する。
【0112】
第1のローパスフィルター回路202を構成する容量の素子値は、例えばQ値を「1.3065」、直流利得を「1」として計算することで求められる。同様に、第2のローパスフィルター回路204を構成する容量の素子値は、例えばQ値を「0.541196」、直流利得を「1」として計算することで求められる。
【0113】
図14に、
図13の4次のローパスフィルター回路200の構成の変形例を示す。
図14において、
図13と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0114】
図14に示す4次のローパスフィルター回路250では、
図13に示す4次のローパスフィルター回路200を構成する演算増幅器AMP,AMP´を時分割使用することで、単一の演算増幅器AMPにより実現される。そのため、ローパスフィルター回路250では、第4の容量C4の両端に第2のフェーズスイッチであるスイッチSW20,SW21が設けられている。また、ローパスフィルター回路250では、第4の容量C4´の両端に第1のフェーズスイッチであるスイッチSW22,SW23が設けられている。また、演算増幅器AMPの出力と、出力電圧Voの出力端との間に、第1のフェーズスイッチであるスイッチSW30が設けられている。
【0115】
図15に、
図14の4次のローパスフィルター回路250の構成の変形例を示す。
図15において、
図14と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0116】
図15に示す4次のローパスフィルター回路260は、ローパスフィルター回路250に補償回路262が追加された構成を有している。補償回路262は、第1の補償容量CX(容量値X)と、第2の補償容量CY(容量値Y)と、スイッチSW24,SW25とを備えている。第1の補償容量CXの一端は演算増幅器AMPの反転入力端子に接続され、他端は第2の補償容量CYの一端に接続される。第2の補償容量CYの他端は、演算増幅器AMPの出力端子に接続される。第1の補償容量CX及び第2の補償容量CYの接続ノードと接地との間には、スイッチSW24,SW25の各々が接続される。スイッチSW24は、第1のフェーズスイッチであり、スイッチSW25は、第2のフェーズスイッチである。
【0117】
補償回路262は、第1の期間T1から第2の期間T2に移行するときのオフオフ期間Toff、又は第2の期間T2から第1の期間T1に移行するときのオフオフ期間Toffにおいて、演算増幅器AMPの出力の発散を防止する。そのため、第1の補償容量CXの容量値X及び第2の補償容量CYの容量値Yは、最小容量値でよい。また、演算増幅器AMPの仮想接地点と出力端子とに接続されるため、第1の補償容量CX及び第2の補償容量CYの寄生容量は伝達特性に影響を与えることがない。
【0118】
図16に、
図15のローパスフィルター回路260と
図11のローパスフィルター回路150により構成される4次のローパスフィルター回路との比較説明図を示す。
図16は、横軸にオーバーサンプリングレシオ、縦軸に正規化された総容量値を表す。
【0119】
ローパスフィルター回路260の特性(Q4)は、ローパスフィルター回路150を縦続接続して構成される4次のローパスフィルター回路の特性(Q3)と比較すると、オーバーサンプリングレシオが例えば50以上になると総容量値が大きくなる。しかしながら、
図11に示すローパスフィルター回路150を縦続接続した場合、演算増幅器を時分割使用することができず、演算増幅器の数が多くなる。従って、ローパスフィルター回路260の方が低消費電力で動作させることができる。また、ローパスフィルター回路260は、容量の素子数及びスイッチの素子数をより少なくすることができる。
【0120】
2. 第2の実施形態
2.1 2入力2重積分回路
図7(A)に示す2入力2重積分回路60において、第1の容量C1の容量値Aと、第5の容量C5の容量値Dとを等しくするように形成すると、第1の容量C1と第5の容量C5とを共有することができるようになる。この場合、2入力2重積分回路60と異なり、利得の調整ができずに設計の自由度が低下するが、より少ない素子数でできるだけ小さい面積が要求される用途によっては有用な2入力2重積分回路を提供することができるようになる。
【0121】
図17に、第2の実施形態における2入力2重積分回路の構成例を示す。
図17において、
図7(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0122】
第2の実施形態における2入力2重積分回路70は、差動積分回路72と、電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。差動積分回路72は、第1の容量C1と、第2の容量C2とを備えている。差動積分回路72は、第1の期間T1において第1の容量C1を介して印加された第1の入力電圧V1と、第2の期間T2において第1の容量C1を介して印加された第2の入力電圧V2との差に比例した電荷を、第2の期間T2に第2の容量C2に充電する。具体的には、差動積分回路72は、
図7(A)と同様に、スイッチSW1a,SW2a,SW3,SW4を有する。
【0123】
電荷逆相積分回路30は、第1の期間T1(第3の期間T3)において、第2の容量C2に充電された電荷の一部を第3の容量C3に転送する。
【0124】
2入力2重積分回路70の伝達関数についても、
図7(A)と同様に求めることができ、式(26)及び式(7)のようになる。
【数26】
【0125】
図17に示す構成においても、寄生容量の各々の容量値を、対応する容量素子の容量値に対して一定の比率を有するように形成することで、上記と同様に寄生容量の影響が相殺され、寄生容量の影響を補償することができる。従って、
図17に示す構成によれば、単一の演算増幅器で、寄生容量の影響を補償することができる2入力2重積分回路を提供することができるようになる。
【0126】
2.2 フィルター回路
2.2.1 2次のローパスフィルター回路
上記の2入力2重積分回路を用いることで、次のように2次のローパスフィルター回路を構成することができる。
【0127】
図18に、第2の実施形態における2次のローパスフィルター回路の構成例を示す。
図18は、
図17の2入力2重積分回路70を適用した2次のローパスフィルター回路の構成例を表す。
図18において、
図17と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0128】
図18に示すローパスフィルター回路120は、差動積分回路72と、電荷逆相積分回路30とを備えている。ローパスフィルター回路120は、
図17に示す2入力2重積分回路70の構成において、演算増幅器AMPの出力端子が第2の入力電圧V2の入力端に接続される構成を有している。即ち、ローパスフィルター回路120は、
図17に示す2入力2重積分回路70の構成において、第2の入力電圧V2として出力電圧Voを供給するように構成される。
【0129】
図18に示すローパスフィルター回路120の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(19)において式(26)の右辺を代入することにより、式(27)のように求められる。
【数27】
【0130】
式(27)と式(23)の係数を比較することにより、容量値(A,B,C,G)を決定することができる。例えば、カットオフ角周波数を200Hz、スイッチング周波数を50kHz、K=1、Q=2
(−1/2)とすると、A=C=0.1pF、B=5.6pF、G=2.8pFとすることができる。この場合、総容量値は、8.6pFとなる。
【0131】
図19に、
図18のローパスフィルター回路120の周波数特性の計算結果の一例を示す。
図19は、横軸に周波数、縦軸に利得をとり、計算結果を実線で示し、シミュレーション結果を点で示している。
【0132】
図19は、K=0[dB],ω
0=2π×200[rad/s]、T=1/50000[s]、Q=2
(−1/2)、A=C=0.1pF、B=5.6pF、G=2.8pFとしたときの計算結果を表す。
図18に示す構成によれば、単一の演算増幅器を用いて、−40[dB/DEC]で減衰する2次のローパスフィルター回路として動作させることができる。
【0133】
〔比較例〕
ここで、
図11のローパスフィルター回路150と比較すると、上記したように、同一条件において、ローパスフィルター回路120の総容量値が、ローパスフィルター回路150の総容量値より小さくなる。
【0134】
図20に、
図18のローパスフィルター回路120と
図11のローパスフィルター回路150との第1の比較説明図を示す。
図20は、横軸にオーバーサンプリングレシオ、縦軸に正規化された総容量値を表す。
【0135】
図20に示すように、ローパスフィルター回路120の特性(Q6)は、ローパスフィルター回路150の特性(Q5)とを比較すると、オーバーサンプリングレシオにかかわらず、ローパスフィルター回路150より小さい面積で構成することができる。しかも、ローパスフィルター回路110と同様に、ローパスフィルター回路120は、2次のローパスフィルター回路を構成する際に必要となる容量の素子数及びスイッチの素子数をより少なくすることができる。更に、ローパスフィルター回路120では、演算増幅器が第2の期間T2でのみ動作するため、4次のローパスフィルター回路を構成する際に、演算増幅器を時分割使用することにより単一の演算増幅器で済む。
【0136】
また、
図18のローパスフィルター回路120は、ローパスフィルター回路150と比較して、安定性が高いという性質を有する。ここで、容量素子Xのばらつきを式(28)のように定義する。ローパスフィルター回路120の伝達関数T(z)のばらつきε
|T(z)|は、各容量素子の相対素子感度と、各容量素子のばらつきとを用いて、式(29)のように表すことができる。なお、式(28)においてε
0は、最小容量のばらつきを表し、式(29)におけるS
|T(z)|を、回路全体の素子感度とする。
【数28】
【数29】
【0137】
図21に、
図18のローパスフィルター回路120と
図11のローパスフィルター回路150との第2の比較説明図を示す。
図21は、横軸に周波数、縦軸に回路全体の素子感度を表す。なお、
図21では、カットオフ角周波数が200Hz、スイッチング周波数が50kHz、Q=2
(−1/2)であるものとする。
【0138】
図21に示すように、ローパスフィルター回路120の素子感度(Q8)は、ローパスフィルター回路110の素子感度(Q7)より低い。特に低周波数帯域において、ローパスフィルター回路120の素子感度が低くなる。これは、低周波数帯域ではz
−1が1に近似されるため、式(27)より伝達関数がほぼ1になり、感度が0になることからも明らかである。従って、ローパスフィルター回路120により、特に低周波数帯域において素子感度を低くすることができるので、各容量素子の容量値のばらつきが生じたとしても、所望の伝達特性を実現することができるようになる。
【0139】
2.2.2 4次のローパスフィルター回路
図18の2次のローパスフィルター回路120を用いることで、次のように4次のローパスフィルター回路を構成することができる。
【0140】
図22に、
図18の2次のローパスフィルター回路120を用いて構成される4次のローパスフィルター回路の構成例を示す。
図22において、
図18と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0141】
図22に示す4次のローパスフィルター回路270は、第1のローパスフィルター回路272と、第1のローパスフィルター回路272と逆相で動作する第2のローパスフィルター回路274とを備えている。第1のローパスフィルター回路272は、2次のローパスフィルター回路120により構成される。第2のローパスフィルター回路274は、2次のローパスフィルター回路120と同様に構成され、各スイッチが第1のローパスフィルター回路272の逆相で動作する。即ち、ローパスフィルター回路270は、ローパスフィルター回路120を縦続接続することにより構成される。
【0142】
なお、
図18の2次のローパスフィルター回路120を用いて構成される4次のローパスフィルター回路は、
図13に示すように2つのローパスフィルター回路120を縦続接続することにより構成してもよい。
図22では、2つのローパスフィルター回路120の演算増幅器を時分割使用して、単一の演算増幅器により構成した例を表している。
【0143】
第1のローパスフィルター回路272を構成する容量素子の素子値は、例えばQ値を「1.3065」、直流利得を「1」として計算することで求められる。同様に、第2のローパスフィルター回路274を構成する容量素子の素子値は、例えばQ値を「0.541196」、直流利得を「1」として計算することで求められる。
【0144】
図23に、
図22の4次のローパスフィルター回路270の構成の変形例を示す。
図23において、
図22と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0145】
図23に示す4次のローパスフィルター回路280は、ローパスフィルター回路270に補償回路282が追加された構成を有している。補償回路282は、
図16の補償回路262と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0146】
図24に、
図22のローパスフィルター回路270と
図11のローパスフィルター回路150により構成される4次のローパスフィルター回路との比較説明図を示す。
図24は、横軸にオーバーサンプリングレシオ、縦軸に正規化された総容量値を表す。
【0147】
ローパスフィルター回路270の特性(Q9)は、ローパスフィルター回路150を縦続接続して構成される4次のローパスフィルター回路の特性(Q10)と比較すると、総容量値はほぼ同様に実現することができる。しかしながら、
図11に示すローパスフィルター回路150を縦続接続した場合、演算増幅器を時分割使用することができず、演算増幅器の数が2個になる。従って、ローパスフィルター回路270の方が低消費電力で動作させることができる。また、ローパスフィルター回路270は、容量の素子数及びスイッチの素子数をより少なくすることができる。
【0148】
3. 第3の実施形態
3.1 微分積分回路
図25に、本発明の第3の実施形態におけるSC積分回路により構成される微分積分回路の構成例を示す。
図25において、
図1(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0149】
図25に示す微分積分回路40は、微分回路42と、電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。微分回路42は、第1の容量C1と、第2の容量C2とを備えている。電荷逆相積分回路30は、第3の容量C3と、演算増幅器AMPと、第4の容量C4とを備えている。
【0150】
微分回路42は、第2の期間T2において第1の容量C1を介して印加された第1の入力電圧V1と、第2の容量C2に充電された電荷に対応した電圧との差の微分を第2の容量C2に充電する。具体的には、微分回路42は、スイッチSW1,SW4を有する。スイッチSW1は、微分積分回路40の入力端と第1の容量C1の一端との間に設けられる。スイッチSW4は、第1の容量C1の他端と、第2の容量C2の一端との間に設けられる。第2の容量C2の他端は、接地される。スイッチSW1,SW4は、第2のフェーズスイッチである。
【0151】
電荷逆相積分回路30は、第1の期間T1において、第2の容量C2に充電された電荷の一部を第3の容量C3に転送する。具体的に、電荷逆相積分回路30は、
図1と同様に、スイッチSW5,SW6を有する。
【0152】
第1の容量C1とスイッチSW3,SW4との接続ノードの電圧をVx、第2の容量C2の一端の電圧をVyとし、第2の容量C2及び第3の容量C3が接続される時刻をnとすると、式(30)が成立する。
【数30】
【0153】
従って、
図25の微分積分回路40の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、式(31及び式(32)のように表すことができる。
【数31】
【数32】
【0154】
3.2 2入力微分積分回路
上記の微分積分回路40に対して、1個の容量素子及び複数のスイッチを追加することで、2入力微分積分回路を構成することができる。
【0155】
図26に、第3の実施形態における2入力微分積分回路の構成例を示す。
図26において、
図25又は
図6(A)と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0156】
図26に示す2入力微分積分回路80は、微分回路42と、電圧電荷変換正相積分回路22と、電荷逆相積分回路30とを備えるSC積分回路である。電圧電荷変換正相積分回路22は、第5の容量C5を備えている。
【0157】
電圧電荷変換正相積分回路22は、充電された電荷が第1の期間T1において放電される第5の容量C5を介して、第2の期間T2において印加された第2の入力電圧V2に比例した電荷を第2の容量C2に充電する。具体的には、電圧電荷変換正相積分回路22は、
図6(A)と同様に、スイッチSW7,SW8,SW9,SW10を有する。
【0158】
電荷逆相積分回路30は、第1の期間T1において、第2の容量C2に充電された電荷の一部を第3の容量C3に転送する。
【0159】
図26に示す2入力微分積分回路80の伝達関数Vo(z)/V1(z)、Vo(z)/V2(z)は、式(31)及び式(16)と同様に求めることができる。
図26に示す構成においても、寄生容量の各々の容量値を、対応する容量素子の容量値に対して一定の比率を有するように形成することで、上記と同様に寄生容量の影響が相殺され、寄生容量の影響を補償することができる。従って、
図26の構成によれば、単一の演算増幅器で、寄生容量の影響を補償することができる2入力微分積分回路を提供することができるようになる。
【0160】
3.3 フィルター回路
3.3.1 2次のバンドパスフィルター回路
図26の2入力微分積分回路を用いることで、次のように2次のバンドパスフィルター回路を構成することができる。
【0161】
図27に、第3の実施形態における2次のバンドパスフィルター回路の構成例を示す。
図27において、
図26と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0162】
図27に示すバンドパスフィルター回路300は、微分回路42と、電圧電荷変換正相積分回路22と、電荷逆相積分回路30とを備えている。バンドパスフィルター回路300は、
図26に示す2入力微分積分回路80の構成において、演算増幅器AMPの出力端子が第2の入力電圧V2の入力端に接続される構成を有している。即ち、バンドパスフィルター回路300は、
図26に示す2入力微分積分回路80の構成において、第2の入力電圧V2として出力電圧Voを供給するように構成される。
【0163】
バンドパスフィルター回路300の伝達関数Vo(z)/V1(z)は、上記と同様に次式と同様に求められる。
【数33】
【数34】
【0164】
式(33)及び式(34)についても、一般的な2次のバンドパスフィルター回路の伝達関数の係数と比較することにより、容量値(A,B,C,D,G)を決定することができる。
【0165】
図28に、
図27のバンドパスフィルター回路300の周波数特性の計算結果の一例を示す。
図28は、横軸に周波数、縦軸に利得をとり、計算結果を実線で示し、シミュレーション結果を点で示している。
【0166】
図28は、オーバーサンプリングレシオが128、カットオフ角周波数が100Hz、Q=10、K=1、A=0.2pF、C=D=0.1pF、B=40.5pF、G=0.1pFとしたときの計算結果を表す。従って、
図27の構成によれば、単一の演算増幅器を用いて、2次のバンドパスフィルター回路を構成することができる。
【0167】
3.3.2 4次のバンドパスフィルター回路
図27の2次のバンドパスフィルター回路300を用いることで、次のように4次のバンドパスフィルター回路を構成することができる。
【0168】
図29に、
図27の2次のバンドパスフィルター回路300を用いて構成される4次のローパスフィルター回路の構成例を示す。
図29において、
図27と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0169】
図29に示す4次のバンドパスフィルター回路350は、第1のバンドパスフィルター回路と、第1のバンドパスフィルター回路と逆相で動作する第2のバンドパスフィルター回路とを備えることができる。第1のバンドパスフィルター回路は、2次のバンドパスフィルター回路300により構成される。第2のバンドパスフィルター回路は、2次のバンドパスフィルター回路300と同様に構成され、各スイッチが第1のバンドパスフィルター回路352の逆相で動作する。即ち、バンドパスフィルター回路350は、バンドパスフィルター回路300を縦続接続することにより構成される。
【0170】
なお、
図29の2次のバンドパスフィルター回路300を用いて構成される4次のバンドパスフィルター回路は、
図13に示すように2つのバンドパスフィルター回路300を縦続接続することにより構成してもよい。
図29では、2つのバンドパスフィルター回路300の演算増幅器を時分割使用して、単一の演算増幅器により構成し、更に、補償回路354が追加された構成例を表している。補償回路354は、
図16の補償回路262と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、
図29では、演算増幅器を時分割使用するために、スイッチSW1,SW4を共に第1のフェーズスイッチとして動作させている。
【0171】
図29の構成によれば、単一の演算増幅器を用いて、4次のバンドパスフィルター回路を構成することができる。
【0172】
4. その他
〔物理量測定装置〕
上記の2次のローパスフィルター回路、4次のローパスフィルター回路、2次のバンドパスフィルター回路、又は4次のバンドパスフィルター回路は、センサー回路に適用することにより、高精度なセンシングを行う物理量測定装置を提供することができる。
【0173】
図30に、上記のいずれかのフィルター回路が適用されたセンサー回路の構成例を示す。なお、この回路構成は一例であり、例えば回路の細部の構成が変形される場合もあり得る。
【0174】
センサー回路400は、角速度を測定対象の物理量とする物理量測定装置である。センサー回路400は、駆動回路(駆動装置)500と、検出回路(検出装置)600とを備えている。このセンサー回路400は、圧電材料で形成され、駆動振動片及び検出振動片を有する振動片(振動子、広義には圧電素子)510を含む。
【0175】
駆動回路500は、駆動振動片に設けられた駆動電極512a,512bを介して駆動振動片を発振ループ内に設け、駆動振動片(広義には振動子)を励振させる。駆動回路500は、電流電圧変換器520、オートゲインコントロール(Auto Gain Control:以下、AGC)回路530、バンドパスフィルター回路540を備えている。更に、駆動回路500は、ゲインコントロールアンプ(Gain Control Amplifier:以下、GCA)550、2値化回路560を備えている。
【0176】
駆動振動片の駆動電極512aは、電流電圧変換器520の入力に電気的に接続され、電流電圧変換器520の出力は、AGC回路530及びバンドパスフィルター回路540に入力される。バンドパスフィルター回路540は、発振ループ内の発振信号の位相調整回路として機能し、バンドパスフィルター回路540の出力は、GCA550及び2値化回路560に入力される。AGC回路530は、電流電圧変換器520の出力に基づいて、GCA550のゲインを制御する。GCA550の出力は、駆動振動片の駆動電極512bに電気的に接続される。2値化回路560は、発振ループ内の発振信号を2値化し、参照信号として検出回路600に出力する。なお、
図30では、駆動回路500の内部に振動片510の駆動振動片を設けるものとして説明したが、駆動回路500の外部に振動片510の駆動振動片が設けられていてもよい。
【0177】
検出回路600は、交流増幅回路610と、同期検波回路620と、直流増幅器630と、ローパスフィルター回路640とを備えている。交流増幅回路610は、第1の電流電圧変換器612と、第2の電流電圧変換器614と、交流増幅器616と、バンドパスフィルター回路618とを含む。
【0178】
駆動回路500では、上記の構成の発振ループ内のゲインが「1」より大きい状態で発振スタートする。この時点では、駆動振動片への入力は雑音のみであるが、この雑音は、目的とする駆動振動の固有共振周波数を含む幅広い周波数の波動を含む。振動片510の駆動振動片の周波数フィルター作用によって、目的とする固有共振周波数の波動を多く含む信号が出力され、この信号が電流電圧変換器520において電圧値に変換される。AGC回路530は、この電圧値に基づいてGCA550のゲインを制御することで発振ループ内の発振振幅を制御する。発振ループ内でこうした操作が繰り返されることにより、目的とする固有共振周波数の信号の割合が高くなる。そして、GCA550のゲイン制御によって、次第に発振ループを信号が1周する間の利得(ループゲイン)が「1」となり、この状態で駆動振動片が安定発振する。
【0179】
駆動振動片を励振させて安定発振状態になり、振動片510を所与の方向に回転させると、コリオリ力が振動片510に作用し、検出振動片が屈曲振動する。検出振動片には検出電極514a,514b,516a,516bが設けられる。検出電極514b,516bにはアナログ接地電位が供給され、検出電極514a,516aは、交流増幅回路610の第1の電流電圧変換器612及び第2の電流電圧変換器614に接続される。検出回路600は、検出電極514a,516aからの互いに極性が異なる検出信号を交流増幅した後、駆動回路500からの参照信号を用いて同期検波して、ローパスフィルター回路640で検出信号OUTを出力する。
【0180】
以上のように、センサー回路400は、振動片510と、駆動回路500と、検出回路600とを備えることができる。駆動回路500は、振動片510と発振ループを形成し、該振動片に駆動振動を励振する。検出回路600は、上記のいずれかのフィルター回路を有し振動片510に励振される駆動振動及び測定すべき物理量に応じて検出信号を出力する。
【0181】
〔電子機器〕
上記のセンサー回路は、次のような電子機器に搭載することができる。このような電子機器によれば、所望の伝達関数で動作し、且つ高精度なセンシングを低消費電力で実現できるようになる。
【0182】
図31に、本発明に係る電子機器のハードウェア構成例のブロック図を示す。
図31において、
図30と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0183】
電子機器700は、センサー回路400と、A/D変換回路710と、クロック生成回路720と、中央演算処理装置等の処理部730と、メモリー740と、操作部750と、表示部760とを備えている。電子機器700を構成する各部は、バス(BUS)によって相互に接続され、センサー回路400の出力はA/D変換回路710に供給される。なお、A/D変換回路710は、処理部730に内蔵されていてもよい。
【0184】
例えば、処理部730は、メモリー740から読み込んだプログラムに従って処理を実行し、センサー回路400で検出された検出信号の振幅又は感度に応じてA/D変換回路710で変換されたディジタル値を用いて積分を行う。こうすることで、角速度及び回転角度を算出する。そして、処理部730は、算出した角速度又は回転角度に対応した処理を実行し、該処理に対応した表示データを生成し、表示部760に表示させる処理を行う。
【0185】
以上、本発明に係るSC積分回路、フィルター回路、物理量測定装置及び電子機器等を上記のいずれかの実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記のいずれかの実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0187】
(2)上記のいずれかの実施形態では、フィルター回路として、2次のローパスフィルター回路、4次のフィルター回路、2次のバンドパスフィルター回路、又は4次のバンドパスフィルター回路を例に説明した。しかしながら、本発明に係るフィルター回路は、これらに限定されるものではない。例えば、上記の2次のローパスフィルター回路を備える3次以上のローパスフィルター回路、又は2次のバンドパスフィルター回路を備える3次以上のバンドパスフィルター回路に適用することができる。
【0188】
(3)上記のいずれかの実施形態における2重積分回路又は2入力2重積分回路は、上記のローパスフィルター回路又はバンドパスフィルター回路以外の他のフィルター回路に適用してもよい。
【0189】
(4)上記のいずれかの実施形態では、本発明に係るフィルター回路が物理量測定装置に適用される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0190】
(5)上記のいずれかの実施形態では、電子機器が、上記のローパフフィルター回路又はバンドパスフィルター回路が適用される例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る電子機器が、上記のSC積分回路としての2重積分回路や微分積分回路、2入力2重積分回路、2入力微分積分回路を備えていてもよい。
【0191】
(6)上記のいずれかの実施形態において、本発明をSC積分回路、フィルター回路、物理量測定装置及び電子機器等として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。