【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人科学技術振興機構、先端計測分析技術・機器開発プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記条件式(2)及び(4)におけるベクトルyのL0ノルムをベクトルyのL1ノルムに置き換えて計算することを特徴とする、請求項1に記載の生体計測装置の計測データ選択方法。
前記複数の光出射位置、前記複数の光検出位置、及び前記時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる前記計測データを、前記複数の分解時刻毎に分類して前記ベクトルy1〜yN2とすることを特徴とする、請求項4に記載の生体計測装置の計測データ選択方法。
前記演算部は、前記条件式(2)及び(4)におけるベクトルyのL0ノルムをベクトルyのL1ノルムに置き換えて計算することを特徴とする、請求項7に記載の生体計測装置の計測データ選択方法。
前記演算部は、前記複数の光出射位置、前記複数の光検出位置、及び前記時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる前記計測データを、前記複数の分解時刻毎に分類して前記ベクトルy1〜yN2とすることを特徴とする、請求項10に記載の生体計測装置。
前記演算部は、前記複数の光出射位置、前記複数の光検出位置、及び前記時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる前記計測データを、前記複数の光出射位置毎に分類して前記ベクトルy1〜yN2とし、前記条件式(6)及び(7)、若しくは条件式(8)を満たす前記ベクトルyを逆算して求め、
当該生体計測装置は、該ベクトルyの零ではない成分に対応する前記光出射位置に、前記光を出射する光出射手段を移動可能若しくは選択的に配置可能なように構成された光出射位置可変手段を更に備えることを特徴とする、請求項10に記載の生体計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、拡散光トモグラフィにおける画像データ作成のための計算(画像再構成)は、次の数式(1)のような線形方程式によって定式化される。ここで、ベクトルxは画像データを表すn次元ベクトル(nは画素数)であり、ベクトルyは計測データを表すm次元ベクトル(mはデータ数)であり、行列Aはベクトルx、yを関係付けるm行n列のシステム行列である。
【数1】
拡散光トモグラフィにおける画像再構成とは、この数式(1)からベクトルxを逆算することを意味する。
【0005】
ここで、拡散光トモグラフィには、X線CTやポジトロン断層法(PET)といった他の方式と比較して、計測データの数が極めて多いという特徴がある。特に、時間分解分光法(Time Resolved Spectroscopy;TRS)を利用する拡散光トモグラフィでは、計測データの量は光検出位置の個数と時間分解ステップの数との積となり、二次元再構成の場合、一例では28800個ものデータ数となる。このようなデータ数は、画像データの大きさ(一例では64行64列すなわち4096画素)よりも格段に大きく、画像データの算出に長時間を要する原因となっている。三次元再構成の場合は更にデータ量が膨大となる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、画像データの作成に必要な計測データの数を減じて画像データの作成時間を短縮することができる生体計測装置の計測データ選択方法、生体計測装置の光出射位置決定方法、および生体計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明による生体計測装置の計測データ選択方法は、複数の光出射位置から被検者の被計測部位へパルス状の光を出射し、複数の光検出位置において得られる被計測部位からの拡散光の時間分解波形に基づいて被計測部位の内部画像データを作成する生体計測装置において、内部画像データを作成するために使用される計測データを選択する方法であって、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる計測データy
1〜y
N1(但し、N1は2以上の整数)からなるベクトルを
【数2】
とし、内部画像データの例として予め用意される学習用画像データの画素値を成分とするベクトルをxとし、計測データy
1〜y
N1から内部画像データを算出するためのシステム行列をA
1としたときに、以下の条件式(3)及び(4)
【数3】
【数4】
(但し、εは任意の定数)を満たすか、若しくは次の条件式(5)
【数5】
(但し、βは任意の定数)を満たすベクトルyを逆算して求め、被検者を計測する際に、該ベクトルyの零ではない成分に対応する計測データのみを用いて内部画像データを作成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による生体計測装置は、複数の光出射位置から被検者の被計測部位へパルス状の光を出射する光出射部と、複数の光検出位置において得られる被計測部位からの拡散光の時間分解波形に基づいて被計測部位の内部画像データを作成する演算部とを備える生体計測装置であって、演算部が、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる計測データy
1〜y
N1(但し、N1は2以上の整数)からなるベクトルを
【数6】
とし、内部画像データの例として予め用意される学習用画像データの画素値を成分とするベクトルをxとし、計測データy
1〜y
N1から内部画像データを算出するためのシステム行列をA
1としたときに、以下の条件式(7)及び(8)
【数7】
【数8】
(但し、εは任意の定数)を満たすか、若しくは次の条件式(9)
【数9】
(但し、βは任意の定数)を満たすベクトルyを逆算して求め、被検者を計測する際に、該ベクトルyの零ではない成分に対応する計測データのみを用いて内部画像データを作成することを特徴とする。
【0009】
上述した生体計測装置の計測データ選択方法および生体計測装置では、上記の条件式(3)及び(4)、若しくは条件式(5)を満たす(又は、条件式(7)及び(8)、若しくは条件式(9)を満たす)ベクトルyを求めている。条件式(3)及び(7)は、ベクトルyのL0ノルムを最小化するための条件であり、また、条件式(4)及び(8)は、学習用画像データと同一の画像データを再構成したときの再構成誤差ε
2を所定の値以下に抑えるための制約条件である。また、条件式(5)及び(9)は、制約条件付きの問題である条件式(3)及び(4)並びに(7)及び(8)を、制約条件無しの問題に書き換えたものである。
【0010】
したがって、条件式(3)及び(4)、若しくは条件式(5)を満たす(又は、条件式(7)及び(8)、若しくは条件式(9)を満たす)ベクトルyは、再構成誤差を許容範囲内に抑えつつ、計測データy
1〜y
N1のうち零ではない計測データの個数が最小化されたものとなる。このようなベクトルyにおいて、零である計測データは、再構成誤差が許容範囲内である画像データを得るために不要であり、零ではない計測データは、必要最小限の計測データである。
【0011】
上述した計測データ選択方法および生体計測装置では、このような必要最小限の計測データを示すベクトルyを算出した上で、被検者を計測する際に、その必要最小限の計測データのみを用いて内部画像データを作成する。したがって、計測データの数を減じて画像データの作成時間を短縮することができる。
【0012】
また、上述した生体計測装置の計測データ選択方法および生体計測装置では、条件式(3)及び(5)(又は条件式(7)及び(9))におけるベクトルyのL0ノルムをベクトルyのL1ノルムに置き換えて計算してもよい。これにより、ベクトルyのノルムの算出が容易となり、必要最小限の計測データの算出時間を短縮することができる。
【0013】
また、上述した生体計測装置の計測データ選択方法および生体計測装置では、予めM枚(Mは2以上の整数)の学習用画像データを用意し、該M枚の学習用画像データの画素値を成分とするベクトルをx
1〜x
Mとして、条件式(4)及び(5)(又は条件式(8)及び(9))における
【数10】
を
【数11】
に置き換えて計算してもよい。これにより、特定の学習用画像データに限らず、様々な学習用画像データに対して好適な計測データを選択することができる。
【0014】
また、上述した生体計測装置の計測データ選択方法および生体計測装置では、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる計測データを所定のルールに従ってN2個(但し、N2は2以上の整数)の組に分類し、N2個の組毎の計測データを成分とするベクトルy
1〜y
N2からなるベクトルを
【数12】
とし、内部画像データの例として予め用意される学習用画像データの画素値を成分とするベクトルをxとし、ベクトルy
1〜y
N2から内部画像データを算出するためのシステム行列をA
2としたときに、条件式(3)〜(5)に代えて、以下の条件式(13)及び(14)
【数13】
【数14】
(但し、εは任意の定数)を満たすか、若しくは次の条件式(15)
【数15】
(但し、βは任意の定数)を満たすベクトルyを逆算して求め、被検者を計測する際に、該ベクトルyの零ではない成分に対応する計測データのみを用いて内部画像データを作成してもよい。
【0015】
上述した生体計測装置の計測データ選択方法および生体計測装置では、計測データを成分とするベクトルyに代えて、計測データを所定のルールに従って複数の組に分類し、該複数の組毎の計測データを成分とするベクトルy
1〜y
N2からなるベクトルyを用いて上記の条件式演算を行う。これにより、所定のルールに従って分類された複数の組のうち、再構成誤差が許容範囲内である画像データを得るために不要である組を知ることができる。なお、計測データは、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られたものなので、上記所定のルールの典型例としては、光出射位置による分類、光検出位置による分類、および分解時刻による分類が挙げられる。
【0016】
上述した計測データ選択方法および生体計測装置では、このような必要最小限の計測データの組を示すベクトルyを算出した上で、被検者を計測する際に、その必要最小限の計測データの組のみを用いて内部画像データを作成する。したがって、計測データの数を減じて画像データの作成時間を短縮することができる。
【0017】
また、上述した生体計測装置の計測データ選択方法および生体計測装置では、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる計測データを、複数の分解時刻毎に分類してベクトルy
1〜y
N2としてもよい。これにより、内部画像データの各画素値への影響が小さい分解時刻に得られた計測データを排除し、各画素値への影響が大きい分解時刻に得られた計測データのみを用いることができ、内部画像データの作成時間を効果的に短縮することができる。
【0018】
また、上述した生体計測装置は、演算部が、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる計測データを、複数の光出射位置毎に分類してベクトルy
1〜y
N2とし、条件式(13)及び(14)、若しくは条件式(15)を満たすベクトルyを逆算して求め、当該生体計測装置が、該ベクトルyの零ではない成分に対応する光出射位置に、光を出射する光出射手段を移動可能若しくは選択的に配置可能なように構成された光出射位置可変手段を更に備えることを特徴としてもよい。これにより、内部画像データの各画素値への影響が小さい光出射位置を排除し、各画素値への影響が大きい光出射位置のみから光を出射するように装置を構成できるので、光出射手段の数を減じて装置構成を簡素化するとともに、内部画像データの作成時間を効果的に短縮することができる。
【0019】
また、本発明による生体計測装置の光出射位置決定方法は、上述した生体計測装置の計測データ選択方法を用いて光出射位置を決定する方法であって、複数の光出射位置、複数の光検出位置、及び時間分解波形における複数の分解時刻の組み合わせ毎に得られる計測データを、複数の光出射位置毎に分類してベクトルy
1〜y
N2とし、条件式(13)及び(14)、若しくは条件式(15)を満たすベクトルyを逆算して求め、被検者を計測する際、若しくは生体計測装置を製造する際に、該ベクトルyの零ではない成分に対応する光出射位置のみに、光を出射する光出射手段を配置することを特徴とする。これにより、内部画像データの各画素値への影響が小さい光出射位置に対応する計測データを排除し、各画素値への影響が大きい光出射位置に対応する計測データのみを用いることができ、内部画像データの作成時間を効果的に短縮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による生体計測装置の計測データ選択方法、生体計測装置の光出射位置決定方法、および生体計測装置によれば、画像データの作成に必要な計測データの数を減じて画像データの作成時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明による生体計測装置の計測データ選択方法、生体計測装置の光出射位置決定方法、および生体計測装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体計測装置10の構成を示す図である。本実施形態の生体計測装置10は、いわゆるTRSによる拡散光トモグラフィ装置であって、計測対象である被検者の被計測部位Bに光を照射し、拡散光(戻り光)を検出し、その検出位置と計測された光量データ(例えば時間分解光子ヒストグラム)とに基づいて、光子の平均飛行経路と平均光路長を推定し、画像再構成問題として体内の情報を画像化する。この装置によって得られる画像は、例えば腫瘍の位置や酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンの分布を可視化したものであり、体組織の機能画像である。なお、被計測部位Bとしては、例えば頭部や女性の乳房等が想定される。
【0024】
生体計測装置10は、計測光を被計測部位Bの内部に照射する光照射部と、光照射部からの光の照射により被計測部位Bから生じた拡散光を検出する光検出部と、光検出部からの出力信号に基づいて被計測部位Bの吸収係数の空間的分布を計算し、被計測部位Bの再構成画像を作成する演算部14とを備えている。
【0025】
光照射部は、複数の光出射位置から被検者の被計測部位Bへ光を出射するための部分である。本実施形態の光照射部は、被計測部位Bに取り付けられるn個(nは2以上の整数)の光出射/計測端16それぞれが有する光出射端(光出射手段)、光源22、および光スイッチ24によって構成されている。光源22としては、例えばレーザダイオードを使用することができる。計測光の波長としては、生体の透過率と定量すべき吸収体の分吸収係数との関係等から、700nm〜900nm程度の近赤外線領域の波長が好ましい。
【0026】
計測光は、例えば連続光として光源22から出射される。光源22から出射された計測光は、光出射/計測端16から被計測部位Bへ照射される。光スイッチ24は、1入力n出力の光スイッチであり、光源22から光源用光ファイバ26を介して光を入力し、この光を上記n個の光出射/計測端16それぞれに対して順に供給する。すなわち、光スイッチ24は、各光出射/計測端16に接続されたn本の出射用光ファイバ28を1本ずつ順に選択し、当該出射用光ファイバ28と光源22とを光学的に接続する。
【0027】
光検出部は、被計測部位Bからの拡散光の強度を複数の光検出位置において検出する部分である。本実施形態の光検出部は、前述したn個の光出射/計測端16それぞれが有する光計測端と、n個の光出射/計測端16それぞれに対応するn個の光検出器30と、各光検出器の入力部前段に配置されたn個のシャッター32とによって構成されている。n個の光検出器30それぞれには、各光出射/計測端16の光計測端に出射した被計測部位Bからの拡散光が、検出用光ファイバ34を介して入力される。光検出器30は、対応する光出射/計測端16に到達した拡散光の光強度に応じてアナログ信号を生成する。光検出器30としては、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)の他、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード等、様々なものを使用することができる。被計測部位Bからの拡散光が微弱であるときは、高感度あるいは高利得の光検出器を使用することが好ましい。
【0028】
光検出器30の信号出力端には信号処理回路36が接続されており、信号処理回路36は、光検出器30から出力されたアナログ信号をディジタル化するとともに時間分解して、TRS演算の元となる計測データを生成する。信号処理回路36は、生成した計測データを演算部14へ提供する。
【0029】
演算部14は、信号処理回路36から提供された計測データに基づいて、被計測部位B内の光吸収係数分布を演算し、被計測部位Bの内部に関する再構成画像(以下、内部画像データという)を作成する。演算部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)といった演算手段及びメモリなどの記憶手段を有するコンピュータによって実現される。なお、演算部14は、光源22の発光、光スイッチ24の動作及びシャッター32の開閉を制御する機能を更に有するとよい。また、演算部14には記録/表示部38が接続されており、演算部14における演算結果、すなわち被計測部位Bの内部画像データを可視化することが可能となっている。
【0030】
被計測部位Bの内部情報の算出すなわち内部情報計測は、例えば次のようにして行われる。n個の光出射/計測端16のそれぞれから被計測部位Bの内部へ計測光を順に出射させ、被計測部位Bを通過して拡散した光の強度を、n個の光出射/計測端16を介してn個の光検出器30により検出する。この検出結果に基づいて、被計測部位Bの内部における吸収係数の空間的分布を演算し、腫瘍などの吸収体の位置や形状に関する情報(内部情報)を含む内部画像データを作成する。
【0031】
なお、演算部14における吸収係数分布の算出には、例えば非特許文献1に詳しく説明されているような周知の方法を用いるとよい。
【0032】
ここで、本実施形態の演算部14は、光検出部から得られた複数の計測データのうち、内部画像データの各画素値への影響が小さい計測データを排除し、内部画像データの各画素値への影響が大きい計測データのみを選択的に使用する機能を備えている。以下、演算部14におけるこのような計測データの選択方法について説明する。なお、以下に説明する計測データの選択方法は、生体計測装置10の製造時に行われてもよい。その場合、被計測部位Bを計測する際に、選択された計測データのみを使用して内部画像データを作成するように、演算部14が製造時に予めプログラムされてもよい。
【0033】
図2は、被計測部位Bおよび複数の光出射/計測端16を概略的に示す図である。
図2に示されるように、被計測部位Bの周囲に、m個(但し、mは2以上の整数、
図2ではm=16)の光出射位置に光出射/計測端16が配置されているものとする。まず、m個の光出射/計測端16のそれぞれから被計測部位Bに計測光を出射させるとともに、各光出射/計測端16において散乱光を計測し、複数の計測データを得る。ここで、複数の計測データとは、各光検出位置において時間分解された各時刻における計測データである。
【0034】
図3(a)は、或る光出射位置から出射される測定光P1の波形と、被計測部位B内部を伝搬した後に或る光検出位置において検出される散乱光P2の波形との一例を概略的に示す図である。また、
図3(b)は、
図3(a)に示された散乱光P2の強度を検出し、時間分解したときの各時刻毎のデータ値を示す図である。
図3(a)及び
図3(b)において、横軸は時間を表している。
図3(a)の縦軸は光強度を表し、
図3(b)の縦軸はデータ値の大きさを表している。
【0035】
図3(a)に示されるように、測定光P1は被計測部位Bにパルス状の光として出射するが、被計測部位Bの内部において拡散されて様々な長さの光路を通過するため、散乱光P2の波形は時間的に前後に伸びた形状となる。この散乱光P2の波形をk個(但し、kは2以上の整数(時間分解ステップ数))の区間に時間分解すると、
図3(b)に示されるように、各時刻t
1,t
2,・・・,t
kにおける計測データd
1,d
2,・・・,d
kが得られる。このような計測データd
1,d
2,・・・,d
kは、m個の光計測位置のそれぞれにおいて、m個の光出射位置のそれぞれについて得られる。すなわち、計測データは、m個の光出射位置、m個の光検出位置、及びk個の分解時刻の組み合わせ毎に得られ、総計して(m×m×k)個の計測データが得られることとなる。
【0036】
ここで、これら(k×m×m)個の計測データを、計測データy
1〜y
N1(但し、N1は2以上の整数であり、N1=k×m×mである)とする。そして、N1個の計測データy
1〜y
N1からなる次のベクトルyを定義する。
【数16】
また、内部画像データの複数の画素値を成分とするベクトルをxとし、ベクトルyからベクトルxを算出するためのシステム行列をA
1とする(前述した数式(1)を参照)。
【0037】
また、本実施形態では、学習用画像データが予め用意される。学習用画像データは、内部画像データの例として予め用意されるものであって、例えば、演算部14において作成される内部画像データ内において比較的明瞭な画質が必要な領域、例えば被計測部位Bにおいて腫瘍ができやすい領域内に光吸収体が存在するような画像データである。そして、上述したベクトルxに、この学習用画像データの複数の画素値を成分とするベクトルを適用する。
【0038】
そして、演算部14は、以下の条件式(17)及び(18)を満たすベクトルyを求める。但し、εは任意の定数である。
【数17】
【数18】
条件式(17)は、本実施形態における目的関数である、計測データy
1〜y
N1からなるベクトルyのL0ノルムを最小化するための条件であり、画像再構成に用いられる計測データy
1〜y
N1のうち零ではない計測データの個数を最小にするための条件である。また、条件式(18)は、学習用画像データと同一の画像データを再構成したときの再構成誤差ε
2を所定の値以下に抑えるための制約条件である。すなわち、上記の条件式(17)及び(18)を解くことにより、典型的な学習用画像データが与えられたときにその学習用画像データの再構成誤差を一定値ε
2以下に抑え得るベクトルyの中で、最小のデータセットである必要最小限の計測データから成るものを決定することができる。
【0039】
また、演算部14は、上の条件式(17)及び(18)に代えて、以下の条件式(19)を満たすベクトルyを求めてもよい。但し、βは任意の定数である。
【数19】
条件式(19)は、制約条件付きの最小化問題である条件式(17)及び(18)を、制約条件無しの最小化問題に書き換えたものであり、条件式(17)及び(18)よりも演算が容易である。このような制約条件無しの最小化問題は、例えばコンプレストセンシング分野におけるiterative soft‐thresholding法と呼ばれる反復手法によって容易に解くことができる。なお、条件式(17)及び(18)では再構成誤差の上限がεによって規定されるが、条件式(19)では、再構成誤差の上限がβによって規定される。
【0040】
条件式(17)及び(18)、又は条件式(19)を満たすベクトルyは、再構成誤差を許容範囲内に抑えつつ、計測データy
1〜y
N1のうち零ではない計測データの個数が最小化されたものとなる。このようなベクトルyにおいて、零である計測データは、再構成誤差が許容範囲内である画像データを得るために不要であり、零ではない計測データは、再構成誤差が許容範囲内である画像データを得るために必要な最少限の計測データである。
【0041】
演算部14は、上記の演算ののち、計測データy
1〜y
N1のうち零ではない計測データに対応する光出射位置、光検出位置、及び分解時刻の計測データのみを、被計測部位Bの測定の際に使用して内部画像データを作成する。
【0042】
本実施形態の光出射位置決定方法および生体計測装置10では、このように必要最小限の計測データを示すベクトルyを算出した上で、被検者を計測する際に、その必要最小限の計測データのみを用いて内部画像データを作成する。したがって、計測データの数を減じて画像データの作成時間を短縮することができる。
【0043】
(第1変形例)
上記実施形態では、条件式(17)においてベクトルyのL0ノルムを最小化しており、また、条件式(19)においてもベクトルyのL0ノルムが含まれる式を最小化している。しかしながら、L0ノルムは非凸関数であることから、最小化のための計算量が多くなる。そこで、本変形例では、条件式(17)及び(19)のベクトルyのL0ノルムを、凸関数であるL1ノルムに置き換えることにより、近似的に最小化計算を行う。すなわち、演算部14は、以下の条件式(20)及び(21)を満たすベクトルyを求めるか、若しくは、条件式(22)を満たすベクトルyを求めるとよい。
【数20】
【数21】
【数22】
本変形例によれば、ベクトルyのノルムの算出が容易となり、必要最小限の計測データの選択に要する時間を短縮することができる。
【0044】
(第2変形例)
上記実施形態では、予め一つの学習用画像データを用意し、条件式(18)及び(19)を計算している。この場合、最終的に選択される計測データの光出射位置、光検出位置、及び分解時刻は、その学習用画像データにとって最適な光出射位置、光検出位置、及び分解時刻であり、その学習用画像データとは異なる画像データに関しては、再構成誤差が十分に小さくなるとは限らない。
【0045】
そこで、本変形例では、種々の画像データに対して再構成誤差を小さくするために、予め用意される学習用画像データの枚数を、2以上とする。すなわち、被計測部位Bにおいて想定される典型的なM枚(Mは2以上の整数)の学習用画像データを予め用意し、該M枚の学習用画像データの画素値を成分とするベクトルをx
1〜x
Mとして、各条件式中の
【数23】
を、
【数24】
に置き換えて計算する。これにより、特定の学習用画像データに限らず、様々な学習用画像データに対して好適な計測データを選択し、再構成誤差を小さくすることができる。
【0046】
(第3変形例)
本変形例では、上記実施形態においてm個の光出射位置、m個の光検出位置、及びk個の分解時刻の組み合わせ毎に得られる(m×m×k)個の計測データを、所定のルールに従ってN2個(但し、N2は2以上の整数)の組に分類する。そして、N2個の組毎の計測データを成分とするベクトルy
1〜y
N2を定義し、これらのベクトルy
1〜y
N2からなる次のベクトルyを定義する。
【数25】
また、内部画像データの複数の画素値を成分とするベクトルをxとし、ベクトルyからベクトルxを算出するためのシステム行列をA
2とする。
【0047】
また、本変形例においても、上記実施形態と同様の学習用画像データが予め用意される。そして、上述したベクトルxに、この学習用画像データの複数の画素値を成分とするベクトルを適用する。
【0048】
そして、演算部14は、上記実施形態の条件式(17)及び(18)に代えて、以下の条件式(26)及び(27)を満たすベクトルyを求める。
【数26】
【数27】
条件式(26)は、本実施形態における目的関数である、ベクトルy
1〜y
N1からなるベクトルyのL0ノルムを最小化するための条件であり、画像再構成に用いられるベクトルy
1〜y
N1のうち零ベクトルではないベクトルの個数を最小にするための条件である。また、条件式(27)は、学習用画像データと同一の画像データを再構成したときの再構成誤差ε
2を所定の値以下に抑えるための制約条件である。すなわち、上記の条件式(26)及び(27)を解くことにより、典型的な学習用画像データが与えられたときにその学習用画像データの再構成誤差を一定値ε
2以下に抑え得るベクトルyの中で、最小のデータセットから成るものを決定することができる。
【0049】
また、演算部14は、上の条件式(26)及び(27)に代えて、以下の条件式(28)を満たすベクトルyを求めてもよい。
【数28】
条件式(28)は、制約条件付きの最小化問題である条件式(26)及び(27)を、制約条件無しの最小化問題に書き換えたものであり、条件式(26)及び(27)よりも演算が容易である。
【0050】
本変形例では、計測データを成分とする上記実施形態のベクトルyに代えて、計測データを所定のルールに従って複数の組に分類し、該複数の組毎の計測データを成分とするベクトルy
1〜y
N2からなるベクトルyを用いて上記の条件式演算を行う。これにより、所定のルールに従って分類された複数の組のうち、再構成誤差が許容範囲内である内部画像データを得るために不要である組を知ることができる。
【0051】
なお、計測データは、m個の光出射位置、m個の光検出位置、及びk個の分解時刻の組み合わせ毎に得られたものなので、上記所定のルールの典型例としては、光出射位置による分類、光検出位置による分類、および分解時刻による分類が挙げられる。光出射位置若しくは光検出位置により分類した場合、N2=mとなる。また、分解時刻により分類した場合、N2=kとなる。
【0052】
本変形例では、このように必要最小限の計測データの組を示すベクトルyを算出した上で、被検者を計測する際に、その必要最小限の計測データの組のみ(例えば、必要最小限の光出射位置に対応する計測データのみ、或いは必要最小限の分解時刻に得られた計測データのみ)を用いて、内部画像データを作成する。したがって、計測データの数を減じて画像データの作成時間を短縮することができる。
【0053】
(第1実施例)
上述した第3変形例において、分解時刻による分類を行った場合の実施例について説明する。
図4は、本実施例で用いられた学習用画像データD1を示す図であって、腫瘍等を模した複数のスポットSPが含まれている。また、本実施例では、計測条件を以下のように設定した。
画像サイズ:32×32
光出射位置の数:12個
光検出位置の数:12個
計測時間:20ナノ秒
分解時刻の数(時間サンプリング数):k=140
計測データの総数:20160個
【0054】
そして、上記条件で計測を行うことにより、20160個の計測データを得た。それらの計測データを分解時刻毎に分類してベクトルy
1〜y
140とし、これらのベクトルy
1〜y
140からなる次のベクトルyを定義した。
【数29】
なお、
図5は、複数の計測データを分解時刻毎に分類してベクトルy
1〜y
kとする操作を概念的に示す図である。
【0055】
そして、再構成誤差β=1.25として、条件式(28)を満たすベクトルyを求め、該ベクトルyの成分ベクトルy
1〜y
140のうち零ベクトルではないベクトルを求めた。その結果、計測開始時刻から数えて第2番目、第3番目、および第5〜25番目の23個の分解時刻に対応するベクトルが、零ベクトルではなく有意な値を持った。
【0056】
図6(a)は、この23個の分解時刻において得られた計測データのみを用いて再構成を行ったときの内部画像データを示す図である。また、
図6(b)は、比較例として、23個の分解時刻をランダムに選択した場合の内部画像データを示す図である。
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、本実施例では、23個の分解時刻を適切に選択することによって、比較例と比べて良好な画質を得られることがわかる。
【0057】
本実施例では、上記に加え、再構成誤差β=1.00として、条件式(28)を満たすベクトルyを求め、該ベクトルyの成分ベクトルy
1〜y
140のうち零ベクトルではないベクトルを求めた。その結果、計測開始時刻から数えて第6〜22番目の17個の分解時刻に対応するベクトルが、零ベクトルではなく有意な値を持った。
【0058】
図7(a)は、この17個の分解時刻において得られた計測データのみを用いて再構成を行ったときの内部画像データを示す図である。また、
図7(b)は、比較例として、17個の分解時刻をランダムに選択した場合の内部画像データを示す図である。
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、本実施例では、17個の分解時刻を適切に選択することによって、比較例と比べて良好な画質を得られることがわかる。
【0059】
本実施例では、更に、再構成誤差β=0.625として、条件式(28)を満たすベクトルyを求め、該ベクトルyの成分ベクトルy
1〜y
140のうち零ベクトルではないベクトルを求めた。その結果、計測開始時刻から数えて第8〜18番目の11個の分解時刻に対応するベクトルが、零ベクトルではなく有意な値を持った。
【0060】
図8(a)は、この11個の分解時刻において得られた計測データのみを用いて再構成を行ったときの内部画像データを示す図である。また、
図8(b)は、比較例として、11個の分解時刻をランダムに選択した場合の内部画像データを示す図である。
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、本実施例では、11個の分解時刻を適切に選択することによって、比較例と比べて良好な画質を得られることがわかる。
【0061】
本実施例によって明らかなように、上記の第3変形例に係る計測データ選択方法において、例えば時間分解分光法の分解時刻毎に計測データを分類することにより、多数の分解時刻の中から最適な分解時刻を割り出すことができる。そして、その最適な分解時刻における計測データのみを用いて内部画像データを再構成することにより、良好な画質の内部画像データを得ることができる。特に、本実施例によれば、複数の分解時刻のうち比較的初期の分解時刻に得られた計測データが、内部画像データの画質を高めるために有用であることがわかる。
【0062】
ここで、生体計測装置10において任意の分解時刻の計測データを取り出す方式の一例について説明する。
図9(a)は、生体計測装置10が備える光検出器30、信号処理回路36、及び演算部14を示すブロック図である。本実施例のように、任意の分解時刻の計測データのみを取り出すには、同図に示されるように、信号処理回路36が時間ゲート回路(Time Gate Circuit;TGC)36aと、データ収集部36bとを有することが好ましい。なお、
図9(b)は、光検出器30において得られる散乱光の検出信号波形(典型的には、インパルス応答波形)の例を示しており、
図9(c)は、時間ゲート回路36aにおけるゲート信号の波形の例を示しており、
図9(d)は、データ収集部36bにおいて得られる計測データを示している。生体計測装置10がこのような構成を備えることにより、本実施例に係る計測データ選択方法を好適に実施することができる。
【0063】
(第2実施例)
上述した第3変形例において、光出射位置による分類を行った場合の実施例について説明する。本実施例では、第3変形例に係る計測データ選択方法を用いて、最適な光出射位置を決定する。
【0064】
図10は、本実施例で用いられた学習用画像データD2を示す図であって、腫瘍等を模した複数のスポットSPが含まれている。なお、
図10には、光出射/計測端16の位置(すなわち光出射位置および光検出位置)A
1〜A
20も併せて示されている。本実施例では、計測条件を以下のように設定した。
画像サイズ:32×32
光出射位置の数:m=20個
光検出位置の数:m=20個
計測時間:10ナノ秒
分解時刻の数(時間サンプリング数):50
計測データの総数:20000個
【0065】
そして、上記条件で計測を行うことにより、二万個の計測データを得た。それらの計測データを光出射位置毎に分類してベクトルy
1〜y
20とし、これらのベクトルy
1〜y
20からなる次のベクトルyを定義した。
【数30】
なお、
図11は、複数の計測データを光出射位置毎に分類してベクトルy
1〜y
mとする操作を概念的に示す図である。
【0066】
また、光出射位置による分類を行う場合、前述した条件式(28)を、次のように変形してもよい。
【数31】
ここで、ベクトルzは、学習用画像データD2の各画素値を示すベクトルxのうち、特定領域(特に画質を必要とする領域。腫瘍が出来やすい領域など)の画素値を示すベクトルである。なお、
図12は、学習用画像データD2の特定領域D3を一例として示す図である。また、システム行列Hは、システム行列A
2のうちベクトルzに関する部分を抽出したシステム行列である。
【0067】
そして、再構成誤差β=0.5として、条件式(31)を満たすベクトルyを求め、該ベクトルyの成分ベクトルy
1〜y
20のうち零ベクトルではないベクトルを求めた。その結果、
図13(a)に示されるように、特定領域D3に近い9個の光出射位置に対応するベクトルが、零ベクトルではなく有意な値を持った。
【0068】
図14(a)は、これら9個の光出射位置に対応する計測データのみを用いて再構成を行ったときの内部画像データを示す図である。また、
図14(b)は、比較例として、9個の光出射位置をランダムに選択した場合(具体的には、光出射位置A
2,A
3,A
5,A
8,A
12,A
15,A
17,A
18,A
20)の内部画像データを示す図である。
図14(a)及び
図14(b)に示されるように、本実施例では、9個の光出射位置を適切に選択することによって、比較例と比べて良好な画質を得られることがわかる。
【0069】
本実施例では、上記に加え、再構成誤差β=0.3として、条件式(31)を満たすベクトルyを求め、該ベクトルyの成分ベクトルy
1〜y
20のうち零ベクトルではないベクトルを求めた。その結果、
図13(b)に示されるように、特定領域D3に近い3個の光出射位置に対応するベクトルが、零ベクトルではなく有意な値を持った。
【0070】
図15(a)は、これら3個の光出射位置に対応する計測データのみを用いて再構成を行ったときの内部画像データを示す図である。また、
図15(b)は、比較例として、3個の光出射位置をランダムに選択した場合(具体的には、光出射位置A
15,A
17,A
18)の内部画像データを示す図である。
図15(a)及び
図15(b)に示されるように、本実施例では、3個の光出射位置を適切に選択することによって、比較例と比べて良好な画質を得られることがわかる。
【0071】
本実施例では、更に、再構成誤差β=0.25として、条件式(31)を満たすベクトルyを求め、該ベクトルyの成分ベクトルy
1〜y
20のうち零ベクトルではないベクトルを求めた。その結果、
図13(c)に示されるように、特定領域D3に近い1個の光出射位置に対応するベクトルが、零ベクトルではなく有意な値を持った。
【0072】
図16(a)は、この1個の光出射位置に対応する計測データのみを用いて再構成を行ったときの内部画像データを示す図である。また、
図16(b)は、比較例として、1個の光出射位置をランダムに選択した場合(具体的には、光出射位置A
15)の内部画像データを示す図である。
図16(a)及び
図16(b)に示されるように、本実施例では、1個の光出射位置を適切に選択することによって、比較例と比べて良好な画質を得られることがわかる。
【0073】
本実施例によって明らかなように、上記の第3変形例に係る計測データ選択方法において、例えば光出射位置毎に計測データを分類することにより、多数の光出射位置の中から、画質を維持するために最適な光出射位置を割り出すことができる。そして、その最適な光出射位置における計測データのみを用いて内部画像データを再構成することにより、良好な画質の内部画像データを得ることができる。特に、がん細胞等の腫瘍は特定の領域に高い確率で発生する傾向があるが、本実施例によれば、複数の光出射位置のうち特定領域D3に近い光出射位置に対応する計測データが、内部画像データの画質を高めるために有用であることがわかる。
【0074】
なお、本実施例のような光出射位置毎の計測データの分類を行う場合、生体計測装置10は、光出射位置可変手段を更に備えることが好ましい。光出射位置可変手段は、計測光を出射する光出射/計測端16(
図1を参照)を、予め設定された複数の光出射位置の中から選択された2以上の光出射位置に移動可能若しくは選択的に配置可能なように構成される手段である。例えば、光出射位置可変手段は、予め配置されたm個の光出射/計測端16のうち、選択されたn個(nは1以上の整数、n<m)の光出射/計測端16のみから計測光を照射するように構成される。このような光出射位置可変手段は、例えば光スイッチ24によってn個の光出射/計測端16のみへ選択的に計測光を供給することによって好適に実現される。或いは、光出射位置可変手段は、例えば予め用意されたn個の光出射/計測端16が、m個の光出射位置の中から選択されたn個の光出射位置に移動するように、光出射/計測端16に取り付けられたアクチュエータ(不図示)を制御してもよい。或いは、光出射位置可変手段は、例えばn個の光出射/計測端16を、m個の光出射位置の中から選択されたn個の光出射位置に操作者が自在に脱着できるような機構であってもよい。
【0075】
図17は、光出射位置可変手段の一例を示す図である。同図に示される光出射位置可変手段は、光出射/計測端16の脱着が可能なm個のフォルダ17を備えている。m個のフォルダ17は、計測カップ40に所定の間隔で取り付けられている。なお、計測カップ40は、上端が開口した略半球状の容器であり、この計測カップ40には被計測部位Bとして例えば乳房が挿入される。また、被計測部位Bと計測カップ40との間には、光吸収係数や光散乱係数が被計測部位Bと同等である液状のインターフェース剤が注入される。
図18(a)及び
図18(b)は、計測対象である腫瘍Eが被計測部位B内に存在する場合における、腫瘍Eの存在場所に応じた光出射/計測端16の配置例を示す図である。
【0076】
このように、n個の光出射/計測端16を、m個の光出射位置の中から選択されたn個の光出射位置に操作者が自在に脱着できるような光出射位置可変手段によって、少数の光出射/計測端16を最適な位置に配置して高画質の内部画像データを作成することができる。なお、この場合、生体計測装置10の演算部14は、ディスプレイ等の表示手段を通じて最適な光出射位置を操作者に提示するとよい。また、光出射/計測端16の個数に制限がない場合には、図中のフォルダ17全てに光出射/計測端16を取り付け、得られた測定データの中から上記n個の光出射/計測端16に関わる測定データのみを用いて内部画像データを作成してもよい。
【0077】
図19は、光出射位置可変手段の別の例を示す図である。同図に示される光出射位置可変手段は、光出射/計測端16が固定された複数のホルダーリング19を備えている。複数のホルダーリング19は、被計測部位Bを囲んでおり、被計測部位Bの挿入方向に並んで配置されている。また、複数のホルダーリング19同士の間隔Fは可変となっており、m個の光出射位置の中から選択されたn個の光出射位置に光出射/計測端16が移動するように、アクチュエータ(不図示)によって駆動される。光出射/計測端16は、被計測部位Bに接触しつつその内部に測定光を照射する。
【0078】
本発明による生体計測装置の計測データ選択方法、生体計測装置の光出射位置決定方法、および生体計測装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態、各変形例および各実施例では、生体計測装置の演算部が条件式を演算して選択すべき計測データ若しくは光出射位置を求めているが、条件式の演算は、生体計測装置を製造する際に、製造者が行っても良い。その場合、選択された最適な光出射位置に光出射/計測端が予め配置された状態で生体計測装置が完成されるとよい。