(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高速増殖炉の原子炉容器の上部を塞いでいる遮蔽プラグ上に不活性ガスバウンダリ形成設備によって形成された不活性ガスバウンダリ内へ、棒状で且つ断面が円形状の作業用部材を導入するための作業用部材導入装置であって、
前記不活性ガスバウンダリ形成設備に挿通され、先端側が前記不活性ガスバウンダリ内に位置している円筒状の作業用部材導入管と、
前記作業用部材導入管に設けられた円板状で且つ可撓性のものであり、中央部には前記作業用部材の外径よりも小さな円形状の挿通孔を有し、前記作業用部材を前記挿通孔に挿通したときに内側部分が前記挿通方向に撓んで前記作業用部材の外周面に密着する構成の仕切り弁と、
を有することを特徴とする作業用部材導入装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、既設の高速増殖炉においては、炉心上部機構の交換作業が計画されている。この交換作業では炉心上部機構を遮蔽プラグ(小回転プラグ)に形成されている搬出孔(貫通孔)から出し入れする必要があり、このときに原子炉容器内に充填されている不活性ガスが前記搬出孔から流出する。このため、作業員が不活性ガスを吸い込んで酸欠状態になることや、放射性の塵を含んでいる可能性のある不活性ガスがそのまま大気中に放出されるのを防止する必要がある。
【0006】
そして、この交換作業においては、例えば炉心上部機構と搬出孔の間にどの程度の隙間があるかを観察するため、不活性ガスバウンダリ内にファイバースコープを挿入する必要がある。しかしながら、これまでは不活性ガスバウンダリ内から不活性ガスを漏洩させずに不活性ガスバウンダリ内にファイバースコープを挿入する手段がなかったため、不活性ガスバウンダリの内部観察が困難であった。
【0007】
従って本発明は上記の事情に鑑み、不活性ガスバウンダリ内から不活性ガスを漏洩させずに不活性ガスバウンダリ内にファイバースコープなどのような棒状で且つ断面が円形状の作業用部材を挿入することができ、且つ、装置構成が簡素なファイバースコープ導入装置などの作業用部材導入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1発明の作業用部材導入装置は、高速増殖炉の原子炉容器の上部を塞いでいる遮蔽プラグ上に不活性ガスバウンダリ形成設備によって形成された不活性ガスバウンダリ内へ、棒状で且つ断面が円形状の作業用部材を導入するための
作業用部材導入装置であって、
前記不活性ガスバウンダリ形成設備に挿通され、先端側が前記不活性ガスバウンダリ内に位置している円筒状の作業用部材導入管と、
前記
作業用部材導入管に設けられた円板状で且つ可撓性のものであり、中央部には前記作業用部材の外径よりも小さな円形状の挿通孔を有し、前記作業用部材を前記挿通孔に挿通したときに内側部分が前記挿通方向に撓んで前記作業用部材の外周面に密着する構成の仕切り弁と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、第2発明の作業用部材導入装置は、第1発明の作業用部材導入装置において、
前記作業用部材導入管の先端には、弾性部材の弾性力によって前記作業用部材導入管の開口を塞ぐようにキャップが取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、第3発明の作業用部材導入装置は、
第2発明の作業用部材導入装置において、
前記作業用部材導入管には、前記作業用部材導入管における前記仕切り弁と前記キャップの間の空間部に不活性ガスであるシールガスを注入するためのシールガス注入装置が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、第4発明の作業用部材導入装置は、第1〜第3発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、
前記作業用部材導入管は複数の導入管部に分割され、
前記仕切り弁の外周部の一方の側面には円環状の凹部である第1嵌合部が形成され、且つ、前記外周部の他方の側面には円環状の凹部である第2嵌合部が形成されており、
前記第1嵌合部には前記導入管部の端部が嵌合され、前記第2嵌合部には他の前記導入管部の端部が嵌合されていること、
を特徴とする。
【0012】
また、第5発明の作業用部材導入装置は、第1〜第4発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、
前記仕切り弁は、中央部に向かうにしたがって肉厚が薄くなっていることを特徴とする。
【0013】
また、第6発明の作業用部材導入装置は、第1〜第5発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、
前記作業用部材は、ファイバースコープであることを特徴とする。
【0014】
また、第7発明の作業用部材導入装置は、第1〜第6発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、
前記不活性ガスバウンダリ形成設備は、金属製で円環状に形成され、前記遮蔽プラグの上面における
搬出孔の周縁部に配設されて前記搬出孔の周囲を囲んでいるカラーと、金属製で円筒状に形成され、前記搬出孔の上方に配設されている案内管と、可撓性の材料製で円筒状に形成され、上端部が前記案内管の下端部に接続され、下端部が前記カラーに接続された可撓性バックとを有するものであり、
前記作業用部材導入管は、前記可撓性バックの側面に挿通されて、先端側が前記不活性ガスバウンダリ内に位置していること、
を特徴とする。
【0015】
また、第8発明の作業用部材導入装置は、第7発明の作業用部材導入装置において、
前記可撓性バックは、上端部に設けられた蛇腹状で上下方向へ伸縮可能な上側伸縮部と、下端部に設けられた蛇腹状で上下方向へ伸縮可能な下側伸縮部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の作業用部材導入装置によれば、高速増殖炉の原子炉容器の上部を塞いでいる遮蔽プラグ上に不活性ガスバウンダリ形成設備によって形成された不活性ガスバウンダリ内へ、棒状で且つ断面が円形状の作業用部材を導入するための
作業用部材導入装置であって、前記不活性ガスバウンダリ形成設備に挿通され、先端側が前記不活性ガスバウンダリ内に位置している円筒状の作業用部材導入管と、前記
作業用部材導入管に設けられた円板状で且つ可撓性のものであり、中央部には前記作業用部材の外径よりも小さな円形状の挿通孔を有し、前記作業用部材を前記挿通孔に挿通したときに内側部分が前記挿通方向に撓んで前記作業用部材の外周面に密着する構成の仕切り弁とを有することを特徴としているため、不活性ガスバウンダリ内の不活性ガスが作業用部材導入管を通って外へ漏れるのを仕切り弁によって防止することができる。しかも、装置構成が簡素であるため、作業にかかる費用を低減することもできる。
【0017】
第2発明の作業用部材導入装置によれば、第1発明の作業用部材導入装置において、前記作業用部材導入管の先端には、弾性部材の弾性力によって前記作業用部材導入管の開口を塞ぐようにキャップが取り付けられていることを特徴としているため、不活性ガスバウンダリ内の不活性ガスが作業用部材導入管を通って外へ漏れるのを仕切り弁とキャップによって防止することができる。このため、不活性ガス漏洩防止の信頼性が向上する。しかも、不活性ガスバウンダリ内に不活性ガスが流入している状態でも、不活性ガスを漏洩させずに作業用部材を不活性ガスバウンダリ内に導入することができる。従って、不活性ガスバウンダリ内に不活性ガスが流入する前でも後でも、任意の時期に作業用部材を不活性ガスバウンダリ内へ導入することができるため、作業手順の決定が容易になる。
【0018】
第3発明の作業用部材導入装置によれば、
第2発明の作業用部材導入装置において、前記作業用部材導入管には、前記作業用部材導入管における前記仕切り弁と前記キャップの間の空間部に不活性ガスであるシールガスを注入するためのシールガス注入装置が設けられていることを特徴としているため、仕切り弁とキャップの間の空間部に流入した不活性ガスの漏洩も確実に防止することができる。
【0019】
第4発明の作業用部材導入装置によれば、第1〜第3発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、前記作業用部材導入管は複数の導入管部に分割され、前記仕切り弁の外周部の一方の側面には円環状の凹部である第1嵌合部が形成され、且つ、前記外周部の他方の側面には円環状の凹部である第2嵌合部が形成されており、前記第1嵌合部には前記導入管部の端部が嵌合され、前記第2嵌合部には他の前記導入管部の端部が嵌合されていることを特徴としているため、作業用部材導入管(導入管部)への仕切り弁の装着を、簡易な構成で容易且つ確実に行うことができる。
【0020】
第5発明の作業用部材導入装置によれば、第1〜第4発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、前記仕切り弁は、中央部に向かうにしたがって肉厚が薄くなっていることを特徴としているため、仕切り弁の内側部分を確実に撓ませて作業用部材導入管の外周面に密着させることができる。
【0021】
第6発明の作業用部材導入装置によれば、第1〜第5発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、前記作業用部材は、ファイバースコープであることを特徴としているため、ファイバースコープによる不活性ガスバウンダリの内部観察を、不活性ガスを漏洩させることなく容易且つ確実に行うことができる。
【0022】
第7発明の作業用部材導入装置によれば、第1〜第6発明の何れか1つの作業用部材導入装置において、前記不活性ガスバウンダリ形成設備は、金属製で円環状に形成され、前記遮蔽プラグの上面における
搬出孔の周縁部に配設されて前記搬出孔の周囲を囲んでいるカラーと、金属製で円筒状に形成され、前記搬出孔の上方に配設されている案内管と、可撓性の材料製で円筒状に形成され、上端部が前記案内管の下端部に接続され、下端部が前記カラーに接続された可撓性バックとを有するものであり、前記作業用部材導入管は、前記可撓性バックの側面に挿通されて、先端側が前記不活性ガスバウンダリ内に位置していることを特徴としているため、必要に応じて可撓性バックを撓ませることにより、作業用部材の向きを変えて作業を行うことができ、作業性が向上する。
【0023】
第8発明の作業用部材導入装置によれば、第7発明の作業用部材導入装置において、前記可撓性バックは、上端部に設けられた蛇腹状で上下方向へ伸縮可能な上側伸縮部と、下端部に設けられた蛇腹状で上下方向へ伸縮可能な下側伸縮部とを有することを特徴としているため、必要に応じて可撓性バックの上側伸縮部及び下側伸縮部を上下方向へ伸縮させることにより、作業用部材の上下方向の位置を変えることができ、作業性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
まず、
図1及び
図2に基づき、高速増殖炉の原子炉容器付近及び本発明の実施の形態例に係るファイバースコープ導入装置(作業用部材導入装置)を備えた不活性ガスバウンダリ形成設備の概要について説明する。
【0027】
高速増殖炉の原子炉容器4内には、炉心部5と、この炉心部5の上方に配設された炉心上部機構2などの炉内構造物(他の炉内構造物については図示を省略している)が設けられている。また、原子炉容器4内には不活性ガス(アルゴンガス)が充填されている。
炉心部5には、ウランとプルトニウムの混合酸化物を燃料として用いた燃料集合体が複数体装荷されている。遮蔽プラグ3は大回転プラグ3Aとそれに偏心して組み込まれた小回転プラグ3Bとを有して成る二重回転プラグ式のものであり、原子炉容器4の上部を塞いで原子炉容器4内に不活性ガスバウンダリ
1aを形成している。
【0028】
プラグ駆動装置(図示省略)によって大回転プラグ3Aと小回転プラグ3Bを回転させることにより、炉心上部機構2の位置決めや燃料交換機(図示省略)の位置決めなどを行うことができる。
図1には大回転プラグ3Aと小回転プラグ3Bの回転により、炉心上部機構2を炉心5からずらした状態を示している。
【0029】
原子炉容器4はその上端部4aが炉上部ピット6の床面7に支持され、この床面7の貫通孔7aに挿入されて下方へ延びている。炉上部ピット6の上部には、炉心上部機構2の交換作業などを行うための仮設の炉上部ピット蓋8が設けられている。
【0030】
炉心上部機構2の交換作業を行うため、遮蔽プラグ3上には不活性ガスバウンダリ1aを形成するための不活性ガスバウンダリ形成設備1が仮設されている。そして、この不活性ガスバウンダリ形成設備1にはファイバースコープ導入装置21が取り付けられている。
【0031】
次に、
図1〜
図13に基づき、不活性ガスバウンダリ形成設備1及びファイバースコープ導入装置21の構成などについて詳述する。
【0032】
炉心上部機構2は円筒状の胴部2a内に制御棒案内管や計装管など(図示省略)を設けたものであり、遮蔽プラグ3(小回転プラグ3B)に形成されている円形状(即ち上面視が円形状)の搬出孔31に挿通されて下方へ延びている。炉心上部機構2の胴部2aの上端にはフランジ部2bが設けられ、このフランジ部
2bが搬出孔31内に形成された段部31aに支持されている。フランジ部
2bと段部31aの間には2重のOリング41が介設されており、通常は、炉心上部機構2(胴部2a)と搬出孔31の隙間から原子炉容器4内の不活性ガスが漏れるのを2重のOリング41によって防止している。
【0033】
しかし、交換作業時には、図示しない引き上げ手段(クレーンやジャッキなど)により炉心上部機構2を
図3に一点鎖線で示すように引き上げると、Oリング41によるシールが開放されて原子炉容器4内の不活性ガスが搬出孔31から流出する。このとき作業員が不活性ガスを吸い込んで酸欠状態になることや、放射性の塵を含んでいる可能性のある不活性ガスがそのまま大気中に放出されるのを防止するため、遮蔽プラグ3(小回転プラグ3B)上に不活性ガスバウンダリ形成設備1を設置する。
【0034】
不活性ガスバウンダリ形成設備1は、案内管11と可撓性バック12(一般にはプラバックとも称される)とカラー13とを有するものであり、これらの内部が不活性ガスバウンダリ1aとなる。不活性ガスバウンダリ形成設備
1の外側は空気雰囲気である。
図3などには、原子炉容器4内から流出して不活性ガスバウンダリ形成設備1(不活性ガスバウンダリ1a)内に流入した不活性ガスの中に放射性の塵42が含まれている状態を例示している。
【0035】
カラー13は金属製(図示例ではSUS製)で円環状に形成されており、遮蔽プラグ3(小回転プラグ3B)の上面3aにおける搬出孔31の周縁部3a−1に配設されて搬出孔31の周囲を囲んでいる。カラー13は搬出孔31の周縁部3a−1に点付溶接によって固定され、且つ、この点付溶接部の間がコーキングによって塞がれているため、搬出孔31の周縁部3a−1に密着されている。なお、このような固定方法に限定するものではなく、カラー13が搬出孔31の周縁部3a−1に密着していればよい。
【0036】
案内管11は金属製(図示例ではSUS製)で円筒状に形成され、搬出孔31の上方に配設されている。詳述すると、案内管11は炉上部ピット蓋8に形成されている貫通孔32に挿通されて下方へ延びており、上端に形成されたフランジ部11aが、炉上部ピット蓋8の上面8aにおける貫通孔32の周縁部8a−1に支持されている。また、案内管11の上端は蓋部材14によって塞がれている。この蓋部材14としては、例えば引き上げ手段を搭載した台座部材やドアバルブなどを用いることができる。蓋部材14に搭載された引き上げ手段や案内管11の上方に設置された引き上げ手段によって、炉心上部機構2を引き上げることができるようになっている。
【0037】
可撓性バック12は、可撓性の材料製(図示例ではビニール製)で円筒状に形成されている。可撓性バック12の上端部12aは案内管11の下端部11bに接続され、可撓性バック12の下端部12bはカラー13に接続されている。
詳述すると、可撓性バック12の下端部12bをカラー13の外周面13aに嵌合し、可撓性バック12の下端部12bの外周面12c側からバンド43によって締め付けることにより、可撓性バック12の下端部12bをカラー13に密着させて不活性ガスが漏れるのを防止している。更には、可撓性バック12の下端部12b及びカラー13に外側からアルミニウム製などの接着テープ44を巻き付けることにより、より確実に不活性ガスの漏洩を防止している。
【0038】
同様に、可撓性バック12の上端部12aを案内管11の下端部11bの外周面11cに嵌合し、可撓性バック12の上端部12aの外周面12c側からバンド45によって締め付けることにより、可撓性バック12の上端部12aを案内管11の下端部11bに密着させて不活性ガスが漏れるのを防止している。更には、可撓性バック12の上端部12a及び案内管11の下端部11bに外側からアルミニウム製などの接着テープ46を巻き付けることにより、より確実に不活性ガスの漏洩を防止している。
【0039】
また、可撓性バック12は、上端部12aに設けられた蛇腹状で矢印D1の如く上下方向へ伸縮可能な上側伸縮部12dと、下端部12bに設けられた蛇腹状で矢印D2の如く上下方向へ伸縮可能な下側伸縮部12eとを有している。
上側伸縮部12dは、複数(図示例では5つ)の襞12d−1を有する蛇腹状のものであり、案内管11の下端部11bの外周面11cに配設されている。このため、上側伸縮部12dは、上下方向へは伸縮可能である一方、水平方向への変位は案内管11の下端部11bによって阻止される。このため、炉心上部機構2を引き上げる際、可撓性バック12の上側伸縮部12dが水平方向の内側へ変位して炉心上部機構2と干渉するのを防止することができる。
下側伸縮部12eは、可撓性バック12の外側に突き出た1つの襞12e−1のみを有している。このため、下側伸縮部12eは、上下方向へは容易に伸縮可能である一方、水平方向へは容易には変位し難い構造になっている。このため、炉心上部機構2を引き上げる際、可撓性バック12の下側伸縮部12eが水平方向の内側へ変位して炉心上部機構2と干渉するのを防止することができる。
【0040】
図3には可撓性バック12の上側伸縮部12d及び下側伸縮部12eが伸縮する前の状態を一点鎖線で示しているが、この状態において作業員による不活性ガスバウンダリ1aの内部観察作業などにより、例えば下向き力が働くと、
図3に実線で示すように上側伸縮部12dが下方へ伸び、下側伸縮部12eが下方へ縮む。
【0041】
なお、カラー13は、
図5〜
図7に例示するように上側の本体部13Aと下側のアダプタ部13Bとを有するものであってもよい。
この場合、可撓性バック12の下端部12bはカラー13の本体部13Aに接続される。具体的には、可撓性バック12の下端部12bをカラー13の本体部13Aの外周面13A−1に嵌合し、可撓性バック12の下端部12bの外周面12c側からバンド43によって締め付けることにより、可撓性バック12の下端部12bをカラー13の本体部13Aに密着させて不活性ガスが漏れるのを防止する。更には、可撓性バック12の下端部12b及びカラー13の本体部13Aに外側から接着テープ44を巻き付けることにより、より確実に不活性ガスの漏洩を防止する。
アダプタ部13Bは円環状であり、且つ、その円周方向の一部に障害物回避部13B−1が突設されている。障害物回避部
13B−1は、遮蔽プラグ3(小回転プラグ3B)の上面3aにおける搬出孔31の周縁部3a−1に存在している障害物(例えばフランジ)47を避けて外側に膨らんでいる。
【0042】
そして、本実施の形態例ではファイバースコープ導入装置21が、可撓性バック12の側面に取り付けられている。ファイバースコープ導入装置21は、ファイバースコープ導入管22(作業用部材導入管)と、複数(図示例では2体)の仕切り弁23と、キャップ24とを有している(特に
図8〜
図13を参照)。
【0043】
ファイバースコープ導入管22は、可撓性バック12の側面に設けられたSUS等の金属製の導入管取り付け部12fの貫通孔12f−1に挿通されている。従って、ファイバースコープ導入管22の基端側は不活性ガスバウンダリ形成設備1の外側に位置している一方、ファイバースコープ導入管22の先端側は不活性ガスバウンダリ形成設備1によって形成された不活性ガスバウンダリ1a内に位置している。ファイバースコープ導入管22はビニール製(ビニールチューブ)で円筒状に形成されており、接着剤や接着テープなどの固定手段によって導入管取り付け部12fに固定されている。なお、ファイバースコープ導入管22はビニール製に限らず、例えばプラスチック製やSUS等の金属製などであってもよい。導入管取り付け部12fも金属製に限らず、例えばプラスチック製などであってもよい。
【0044】
また、ファイバースコープ導入管22は、複数の円筒状の導入管部22Aに分割されている。図示例では仕切り弁23を2体用いているため、これに合わせてファイバースコープ導入管22を3体の導入管部22Aに分割している。
【0045】
仕切り弁23は可撓性の材料製(ゴム製、ビニール製など)であり、円板状に形成されている。仕切り弁23の中央部には、ファイバースコープ51(棒状で且つ断面が円形状の作業用部材:
図11〜
図12を参照)の外径よりも小さな挿通孔23aを有している(
図11,
図12を参照)。
【0046】
従って、通常、
図10に実線で示すように仕切り弁23は径方向に真直ぐになっているが、一点鎖線で示すようにファイバースコープ51を、矢印S1の如く仕切り弁23の挿通孔23aに挿通させたときには、仕切り弁23の内側部分23bが、
図10に一点鎖線で示すように前記挿通方向(矢印S1方向)へ撓んでファイバースコープ51の外周面に密着する。また、ファイバースコープ51を、矢印S2の如く挿通孔23aから引き抜くときには、仕切り弁23の内側部分23bが、
図10に一点鎖線で示すように前記引き抜き方向(矢印S2方向)へ撓んでファイバースコープ51の外周面に密着する。
【0047】
また、仕切り弁23は、内側部分23bが前記挿通方向や前記引き抜き方向に撓み易くなるようにするため、中央部に向かうにしたがって肉厚が薄くなっている。更に、仕切り弁23の内側部分23bには、挿通孔23aから径方向へ放射状に延びたしわ23fを有しており、このことによって内側部分
23bが、より撓み易くなっている。
【0048】
また、仕切り弁23はその外周部23cが内側に比べて肉厚が厚くなっており、外周部23cの一方の側面には円環状の凹部である第1嵌合部23dが形成され、外周部23cの他方の側面には円環状の凹部である第2嵌合部23eが形成されている。そして、第1嵌合部23dには導入管部22Aの端部22A−1が嵌合され、第2嵌合部23eには他の導入管部22Aの端部22A−1が嵌合されている。
【0049】
即ち、複数(図示例では3体)の導入管部22Aは、複数(図示例では2体)の仕切り弁23の外周部23c(第1嵌合部23d、第2嵌合部23e)を介して連結されている。かくして仕切り弁23がファイバースコープ導入管22に簡易且つ確実に装着され、導入管部22Aと導入管部22Aの間から不活性ガスが漏れるおそれもない。なお、図示例では更に仕切り弁23の外周部23c及び導入管部22Aの外周面にアルミニウム製などの接着テープ52を巻き付けることにより、より確実に不活性ガスの漏洩を防止している。
【0050】
キャップ24は、弾性部材25を介してファイバースコープ導入管22(最も先端側の導入管部22A)の先端に開閉可能に装着されており、弾性部材25の弾性力によってファイバースコープ導入管22の開口22aを塞いでいる。なお、図示例の弾性部材25はねじりコイルばねであるが、これに限定するものではなく、他の種類のばねやゴムなどを弾性部材25として用いてもよい。
【0051】
また、キャップ24と、複数体の仕切り弁23のうちのキャップ24に最も近い仕切り弁23との間では、ファイバースコープ導入管22(即ち最も先端側の導入管部22A)にシールガス注入装置26が設けられている。シールガス注入装置26は、ファイバースコープ導入管22(最も先端側の導入管部22A)の管壁22bに形成されたシールガス注入孔22cと、このシールガス注入孔22cに連通するようにファイバースコープ導入管22(最も先端側の導入管部22A)に先端部が接続されたシールガス注入管27とを有して成るものである。シールガス注入管27の基端側は、不活性ガスボンベなどを備えたシールガス供給装置28に接続さている。従って、シールガス供給装置28から送給されてくる不活性ガス(アルゴンガス)であるシールガスは、シールガス注入管27及びシールガス注入孔22cを介して、ファイバースコープ導入管22(最も先端側の導入管部22A)における仕切り弁23とキャップ24の間の空間部22dへ注入される。
【0052】
なお、不活性ガス漏洩防止の信頼性を高めるには複数体の仕切り弁23をファイバースコープ導入管22に設けることが望ましいが、必ずしもこれに限定するものではなく、ファイバースコープ導入管22に設ける仕切り弁23は1体でもよい。仕切り弁23が1体の場合には、当該仕切り弁23とキャップ24との間において、ファイバースコープ導入管22にシールガス注入装置26を設ければよい。
【0053】
次に、
図14〜
図16に基づき、不活性ガスバウンダリ1aの内部観察作業の手順を説明する。
【0054】
まず、
図14に示すように、作業員がファイバースコープ51を矢印S1方向に移動させることより、ファイバースコープ導入管22内に挿入して仕切り弁23の挿通孔23aに挿通させる。このときにはキャップ24がファイバースコープ導入管22の開口22aを塞いでいるため、不活性ガスバウンダリ形成設備1(不活性ガスバウンダリ1a)内の不活性ガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れるのをキャップ24によって防止することができる。
【0055】
作業員が更にファイバースコープ51を矢印S1方向へ移動させると、このファイバースコープ51はキャップ24に当接し、弾性部材25の弾性力に抗して矢印S3の如くキャップ24を押し開け、不活性ガスバウンダリ1a内に導入される。このときにはキャップ24が開いても、既に仕切り弁23の内側部分23bが挿通方向(矢印S1方向)に撓んでファイバースコープ51の外周面に密着しているため、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れるのを仕切り弁23によって防止することができる。
【0056】
そして、
図15に示すように、作業員はファイバースコープによって不活性ガスバウンダリ1a内を観察する。特に炉心上部機構2が遮蔽プラグ3(小回転プラグ3B)の
搬出孔31と干渉するおそれがあるか否かを確認することが重要であるため、炉心上部機構2と
搬出孔31の隙間がどの程度あるかを観察する。ここで用いるファイバースコープは一般的なものであり、ファイバースコープ51の先端部51aにはレンズと照明(図示省略)が設けられており、前記照明で不活性ガスバウンダリ1a内を照らしながら、前記レンズを介して不活性ガスバウンダリ1a内の状態を観察することができる。また、ファイバースコープ51の先端部51aの向きを、矢印S4の如く任意の方向に変えながら、内部観察を行うこともできる。
【0057】
また、このときには必要に応じて可撓性バック12を撓ませることにより、ファイバースコープ導入管22及びファイバースコープ51の向きを変えて内部観察を行うこともできる。更には、必要に応じて可撓性バック12の上側伸縮部12d及び下側伸縮部12eを上下方向へ伸縮させることにより、ファイバースコープ導入管22及びファイバースコープ51の上下方向の位置を変えて内部観察を行うこともできる。
【0058】
内部観察が終了すると、
図16に示すように作業員がファイバースコープ51を、矢印S2の如くファイバースコープ導入装置21から引き抜く。このときにはシールガス供給装置28を作動させて当該シールガス供給装置28から送給されてくるシールガス(不活性ガス)を、シールガス注入装置26(シールガス注入管27、シールガス注入孔22c)によって矢印S6の如く仕切り弁23とキャップ24の間の空間部22dへ注入する。その結果、不活性ガスバウンダリ1a内から空間部22dへ流入していた不活性ガスが不活性ガスバウンダリ1a内へ押し出され、且つ、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスが新たに空間部22dへ流入することも防止される。
【0059】
また、このときには仕切り弁23の内側部分23bが引き抜き方向(矢印S2方向)に撓んでファイバースコープ51の外周面に密着しているため、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスやシールガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れるのを仕切り弁23によって防止することができる。
【0060】
ファイバースコープ51の先端部51aがファイバースコープ導入管22内に入ると、キャップ24が矢印S5の如く閉じてファイバースコープ導入管22の開口22aを塞ぐため、このキャップ24によって、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れるのを防止することができる。従って、作業員が更にファイバースコープ51を矢印S2方向へ移動させて仕切り弁23から引き抜いても、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスやシールガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れることはない。
【0061】
なお、炉心上部機構2を引き上げる前にも不活性ガスバウンダリ1a内の観察を行う必要がある場合には、炉心上部機構2を引き上げる前にファイバースコープ導入装置21によってファイバースコープ51を不活性ガスバウンダリ1a内に導入して内部観察を行い、その後、一旦、炉心上部機構2の引き上げに支障がないようするためにファイバースコープ51をファイバースコープ導入装置21から引き抜く。そして、炉心上部機構2をある程度引き上げた後、再度、ファイバースコープ51をファイバースコープ導入装置21によって不活性ガスバウンダリ1a内に導入して内部観察を行い、その後、再度、ファイバースコープ51をファイバースコープ導入装置21から引き抜く。
【0062】
また、不活性ガスバウンダリ1a内に不活性ガスが流入している状態においてファイバースコープ51を不活性ガスバウンダリ1a内に導入する場合にはキャップ24を設けることが必要であるが、作業手順によっては、必ずしもキャップ24を設ける必要がない場合もある。即ち、不活性ガスバウンダリ1a内に不活性ガスが流入する前にファイバースコープ51を不活性ガスバウンダリ1a内に導入するような作業手順とした場合には、ファイバースコープ導入管22にキャップ24を設けず、仕切り弁23だけを設けるようにしてもよい。
【0063】
以上のように、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、高速増殖炉の原子炉容器4の上部を塞いでいる遮蔽プラグ3上に不活性ガスバウンダリ形成設備1によって形成された不活性ガスバウンダリ1a内へ、ファイバースコープ51を導入するためのファイバースコープ導入装置
21であって、不活性ガスバウンダリ形成設備1に挿通され、先端側が不活性ガスバウンダリ1a内に位置している円筒状のファイバースコープ導入管22と、ファイバースコープ導入管22に設けられた円板状で且つ可撓性のものであり、中央部にはファイバースコープ51の外径よりも小さな円形状の挿通孔23aを有し、ファイバースコープ51を挿通孔23aに挿通したときに内側部分23bが前記挿通方向に撓んでファイバースコープ51の外周面に密着する構成の仕切り弁23とを有することを特徴としているため、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れるのを仕切り弁23によって防止することができる。しかも、装置構成が簡素であるため、内部観察作業にかかる費用を低減することもできる。
【0064】
また、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、ファイバースコープ導入管22の先端には、弾性部材25の弾性力によってファイバースコープ導入管22の開口22aを塞ぐようにキャップ24が取り付けられていることを特徴としているため、不活性ガスバウンダリ1a内の不活性ガスがファイバースコープ導入管22を通って外へ漏れるのを仕切り弁23とキャップ24によって防止することができる。このため、不活性ガス漏洩防止の信頼性が向上する。しかも、不活性ガスバウンダリ1a内に不活性ガスが流入している状態でも、不活性ガスを漏洩させずにファイバースコープ51を不活性ガスバウンダリ1a内に導入することができる。従って、不活性ガスバウンダリ1a内に不活性ガスが流入する前でも後でも、任意に時期にファイバースコープ51を不活性ガスバウンダリ1a内へ導入することができるため、作業手順の決定が容易になる。
【0065】
また、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、ファイバースコープ導入管22には、ファイバースコープ導入管22における仕切り弁23とキャップ24の間の空間部22dに不活性ガスであるシールガスを注入するためのシールガス注入装置26が設けられていることを特徴としているため、仕切り弁23とキャップ24の間の空間部22dに流入した不活性ガスの漏洩も確実に防止することができる。
【0066】
また、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、ファイバースコープ導入管22は複数の導入管部22Aに分割され、仕切り弁23の外周部23cの一方の側面には円環状の凹部である第1嵌合部23dが形成され、且つ、外周部23cの他方の側面には円環状の凹部である第2嵌合部23eが形成されており、第1嵌合部23dには導入管部22Aの端部22A−1が嵌合され、第2嵌合部23eには他の導入管部22Aの端部22A−1が嵌合されていることを特徴としているため、ファイバースコープ導入管22(導入管部22A)への仕切り弁23の装着を、簡易な構成で容易且つ確実に行うことができる。
【0067】
また、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、仕切り弁23は、中央部に向かうにしたがって肉厚が薄くなっていることを特徴としているため、仕切り弁23の内側部分23bを確実に撓ませてファイバースコープ51の外周面に密着させることができる。
【0068】
また、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、不活性ガスバウンダリ形成設備1は、金属製で円環状に形成され、遮蔽プラグ3の上面3aにおける搬出孔31の周縁部3a−1に配設されて搬出孔31の周囲を囲んでいるカラー13と、金属製で円筒状に形成され、搬出孔31の上方に配設されている案内管11と、可撓性の材料製で円筒状に形成され、上端部12aが案内管11の下端部11bに接続され、下端部12bがカラー13に接続された可撓性バック12とを有するものであり、ファイバースコープ導入管22は、可撓性バック12の側面に挿通されて、先端側が不活性ガスバウンダリ1a内に位置していることを特徴としているため、必要に応じて可撓性バック12を撓ませることにより、ファイバースコープ51の向きを変えて作業を行うことができ、作業性が向上する。
【0069】
また、本実施の形態例のファイバースコープ導入装置21によれば、可撓性バック12は、上端部12aに設けられた蛇腹状で上下方向へ伸縮可能な上側伸縮部12dと、下端部12bに設けられた蛇腹状で上下方向へ伸縮可能な下側伸縮部12eとを有することを特徴としているため、必要に応じて可撓性バック12の上側伸縮部12d及び下側伸縮部12eを上下方向へ伸縮させることにより、ファイバースコープ51の上下方向の位置を変えることができ、作業性が向上する。
【0070】
なお、上記では炉心上部機構2の交換を行う場合について説明したが、これに限定するものでなく、その他の炉内構造物の交換作業を行う場合にも、本発明のファイバースコープ導入装置や不活性ガスバウンダリ形成設備を適用することができる。
また、本発明は特にファイバースコープを不活性ガスバウンダリ内に導入する場合に適用して有用なものであるが、必ずしもこれに限定するものではなく、ファイバースコープ以外の棒状で断面が円形状の作業用部材(例えば棒状の部材の先端に照明みを設けたものや、カメラや照明以外の機器を設けたものなど)を、不活性ガスバウンダリ内に導入する場合にも適用することができる。