【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0009】
(基本形態)
本発明の吸収性物品は、前後方向に伸縮可能な伸縮シートと、その表面側に吸収体とを有するものである。
前記伸縮シートにおいて、伸縮性を有しない例えば不織布からなる第1シート層と、伸縮性を有しない例えば不織布からなる第2シート層との間に、前記前後方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されている。
前記伸縮シートは、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、前記前後方向に外力を加えると伸長可能である。
この伸縮シートにおいて、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が、前記伸縮シートの幅方向について中間領域と両側領域とで異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違している。
【0010】
本発明において接合部の配置パターンに限定はない。その一例は、好適な見栄えを示す千鳥状配置である。
【0011】
使い捨ておむつ、特にテープタイプ使い捨ておむつは、腰周りをテープで固定し、一般的には前身頃及び後身頃全体にフィットさせる部材は設けられていない。
すなわち、腰の動きに良好に追従するものではないために、着用者が起き上がる際又は屈む際に、おむつの主に前後が体面から浮き上がる(離れる)、あるいは前後方向にずれることがあり、その結果、いわゆる前後漏れの原因となる。
しかるに、本発明に係る吸収性物品、例えばテープタイプ使い捨ておむつにおいては、少なくとも前後方向に伸縮可能であり、少なくとも幅方向中間領域に伸縮領域を有する伸縮シートを備えたものであるから、着用者が起き上がる際又は屈む際に、着用者による体圧が中間領域の前後方向に移動させるように作用するとき、テープタイプ使い捨ておむつの中間領域が前後方向に伸縮するので、前後が体面から浮き上がる(離れる)、あるいは着用者に対して前後方向にずれることを防止でき、前後漏れを抑制できる。さらに、特に伸縮シートが外形シートを構成する場合、幅方向中間領域に伸縮領域を有するので、その前後方向の収縮により皺又は凹凸が形成されるので、おむつの着用者が仰向け状態から起き上がるとき、すべり止め機能を発揮するので、前後方向のずれを防止する利点をもたらす。
【0012】
本発明の吸収性物品の他の態様は、前記伸縮シートにおいて、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が、伸縮シートの幅方向について中間領域と両側領域とで異なり、かつ、前記中間領域内においても異なっていることにより、幅方向相互間で、前後方向の伸縮応力が相違している吸収性物品である。この例の代表例が
図16及び
図17に示すものである。
【0013】
本発明の吸収性物品の別の態様は、少なくとも前後方向に伸縮可能であり、幅方向中間領域の前後方向中間領域に第1の伸縮領域を、前記前後方向中間領域の前後に第2の伸縮領域を有する伸縮シートを備えた吸収性物品であって、
前記伸縮シートは、伸縮性を有しない第1シート層と、第2シート層との間に、前記少なくとも前後方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されており、
前記伸縮シートは、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、前後方向に外力を加えると伸長可能であり、
伸縮シートにおいて、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が、前記伸縮シートの幅方向について幅方向中間領域の前後方向中間領域と両側領域とで異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違し、かつ、前記前後方向中間領域とその前後領域とで異なっている構成の吸収性物品である。
この例の代表例が
図14及び
図15に示すものである。
【0014】
本発明の吸収性物品のさらに異なる態様は、前後方向に伸縮可能な伸縮シートと、その表面側に吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記伸縮シートは、伸縮性を有しない第1シート層と、第2シート層との間に、前記少なくとも前後方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されており、
前記伸縮シートは、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、前後方向に外力を加えると伸長可能であり、
伸縮シートにおいて、前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が、前記伸縮シートの幅方向について中間領域と両側領域とで異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違している構成の吸収性物品である。
【0015】
伸縮領域の伸縮が前後方向のみならず、幅方向にも伸縮可能であることは、特におむつの場合において、腰周り又はウエスト周りのフィット性を高めることに寄与する。
なお、この場合において、前後方向の伸縮応力は、幅方向の伸縮応力より大きいことが望ましい。
【0016】
本発明の伸縮シートでは、その第1シート層及び第2シート層に貫通する孔は形成されない。この点は、特許第4562391号公報の
図5又は
図7で示される伸縮シートと異なる。
【0017】
本発明の伸縮領域の接合部においては、例えば次の接合形態例がある。
(1)第1シート層及び第2シート層が部分溶融し、弾性フィルムに接合する、すなわち第1シート層及び第2シート層が弾性フィルムを介して接合する形態。
(2)弾性フィルムが溶融し、第1シート層及び第2シート層中に移行し、第1シート層及び第2シート層が、弾性フィルムを介在させることなく、直接接合する形態。
(3)(1)の形態と(2)の形態との中間の形態であって、弾性フィルムの両表面部分が溶融して第1シート層及び第2シート層中に移行し、しかし、弾性フィルムは部分的に残存していることにより、第1シート層及び第2シート層が残存弾性フィルムを介して接合する形態。
【0018】
これらの形態のうち、特に、(2)の形態及び(3)の形態では、接合部と非接合部とで弾性フィルム強度の差異が生じる。したがって、伸長を保持した伸縮シートの伸長状態を、一旦開放して収縮させて製品とした後;あるいは、伸長を保持した伸縮シートを他の部材と結合した後、伸長状態を一旦開放して収縮させて製品した後;伸縮方向に機械的にあるいは人力で伸長させると、接合部と非接合部との境界部分で破断が生じる。
その結果、貫通孔が形成される。
【0019】
このような場合、少なくとも前後方向に伸縮可能であり、少なくとも幅方向中間領域に伸縮領域を有する伸縮シートを備えた吸収性物品であって、前記伸縮領域において、前記伸縮シートは、伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、前記少なくとも前後方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、間隔を開けた多数の接合部で、前記弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合され形成された態様となる。
貫通孔が形成されたものでは、通気性が確保される利点がある。貫通孔は、全ての接合部において形成される必要はなく、一部の接合部において形成されていても通気性を示す。弾性フィルムが前後方向のみに伸縮可能である場合、貫通孔は接合部の縁から前後方向に延びた形状となる。弾性フィルムが前後方向又はMD方向、及びこれに直交する方向(例えばCD方向)の両者に伸縮可能である場合、貫通孔は接合部の縁から両方向に延びた形状となり、場合により接合部の周りに環状の形状となることがある。
【0020】
先に述べたように、本発明の弾性フィルムは、前後方向(たとえばMD方向)に伸縮可能な場合と、前後方向及び直交方向(例えばCD方向)に伸縮可能の場合とがある。
後者の場合においては次の形態となる。
前後方向に伸縮可能な伸縮シートと、その表面側に吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記伸縮シートは、伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、前後方向及び幅方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、間隔を開けた多数の接合部で、前記弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合され形成されており、
前記伸縮領域は、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、前後方向に外力を加えると伸長可能であり、
伸縮シートにおいて、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が、前記伸縮シートの幅方向について中間領域と両側領域とで異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違していることを特徴とする吸収性物品。
【0021】
前記接合部は、前後方向長さより、直交方向(幅方向:CD方向)長さが長い形態が提供される。
【0022】
上記の前後方向に伸縮可能な伸縮シートは、例えば次の方法によって製造できる。
伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、少なくとも一方向(製品の前後方向)に伸縮可能な弾性フィルムを伸長状態で介在させる供給工程と、
この供給工程において、前記第1シート層と前記第2シート層との間に前記弾性フィルムが介在した状態で、前記第1シート層及び前記第2シート層の外方から、熱溶融装置によって間隔を開けた多数の熱溶融部により前記弾性フィルムに熱溶融エネルギーを与え、前記弾性フィルムを溶融し、前記第1シート層及び前記第2シート層を、直接又は弾性フィルムを介して多数の接合部で接合する接合工程と、
を含み、
前記接合工程において、前記接合部領域全体に孔が形成されておらず前記第1シート層及び前記第2シート層が残存している、伸縮シートを形成する。
【0023】
前記弾性フィルムを、対向する一対のニップが前後方向に配置されたニップロール段に通し、前後ニップロール段相互で、前方のニップロール段の周速を後方のニップロール段の周速より速めることにより、前記弾性フィルムを伸長状態にて前記供給工程に供給する方法が提供される。他の方法は、弾性フィルムを駆動ロールに例えばS字状に巻き掛けながら一対のニップロール段だけを通すものでもよい。
【0024】
前記熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、前記アンビルロールはその外表面にロール長方向及び外周方向に間隔を開けた多数の突部が形成され、この突部群と前記超音波ホーンとにより前記熱溶融部を構成する態様が提供される。
超音波熱溶融装置に替えて、他の熱溶融手段であってもよい。
【0025】
不織布からなる第1シート層の融点及び不織布からなる第2シート層の融点より、前記弾性フィルムの融点が低く、この融点より高く、かつ第1シート層の融点及び第2シート層の融点より低い温度に相当する溶融エネルギーを与えると、弾性フィルムは熱溶融する一方で、第1シート層及び第2シート層は全く溶融しないあるいは部分的に溶融する結果、接合部領域全体に孔が形成されておらず第1シート層及び第2シート層が残存している形態となる。
しかるに、伸縮シートの製造時におけるライン速度は高速である。したがって、第1シート層及び第2シート層の融点より高い温度に相当する溶融エネルギーを与えても、第1シート層及び第2シート層は全く溶融しないあるいは部分的に溶融するものの、接合部領域全体に孔が形成されていない形態を得ることができる。
【0026】
このような観点から、弾性フィルムの融点は80〜145℃程度のものが好ましく、第1シート層及び第2シート層の融点は85〜190℃程度、特に130〜190℃程度のものが好ましく、また、第1シート層及び第2シート層の融点と、より低い融点を示す弾性フィルム30の融点との差は50〜80℃程度であるのが好ましい。
好適な具体例としては、前記弾性フィルムの融点が95〜125℃であり、第1シート層の融点が125℃超〜160℃、より好ましくは130〜160℃、第2シート層の融点が125℃超〜160℃、より好ましくは130〜160℃である。
【0027】
接合部の好適例としては、伸縮領域における前記接合部の面積は0.14〜3.5mm
2であり、自然長状態における前記貫通孔の開口の面積は、前記接合部の面積の1〜1.5倍であり、伸縮領域における前記接合部の面積率は1.8〜22.5%である。
ここで、「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域)における対象部分(例えば接合部、貫通孔の開口)の総面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に「接合部の面積率」とは、伸縮方向に弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。また、貫通孔の開口の面積は、当該伸縮構造が自然長の状態における値を意味し、貫通孔の開口の面積が、弾性フィルムの表と裏で異なる等、厚み方向に均一でない場合には最小値を意味する。
本明細書における接合部面積率は、後に説明するアンビルロールの突起部の大きさ、形状、離間間隔、ロール長方向及びロール周方向の配置パターンなどを選定することにより選択できる。
【0028】
「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により測定される「弾性限界の50%まで伸ばしたときの応力(N/35mm)」を意味する。幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。
対象の領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合、伸縮応力の比較であれば、適宜小さい試験片でも、少なくとも比較できる。
また、領域内に複数の伸長応力が相違するので、試験片の採取をどうするかが問題となる。そこで、伸縮応力の絶対値を求めることから離れて、伸縮応力の比較のためには、伸縮シートの各部位について試験片を採取し、それぞれの試験片について、自然状態の100%長さから150%長さに伸長したときの応力によって大小を比較することも可能である。