特許第5975560号(P5975560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975560
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】潤滑グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/04 20060101AFI20160809BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20160809BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20160809BHJP
   C10M 169/02 20060101ALI20160809BHJP
   C10M 117/00 20060101ALN20160809BHJP
   C10M 115/08 20060101ALN20160809BHJP
   C10M 113/12 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20160809BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20160809BHJP
【FI】
   C10M105/04
   F16C33/66 Z
   F16H57/04
   C10M169/02
   !C10M117/00
   !C10M115/08
   !C10M113/12
   C10N40:02
   C10N40:04
   C10N50:10
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-35294(P2012-35294)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170230(P2013-170230A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月20日
【微生物の受託番号】FERM  T-22046
(73)【特許権者】
【識別番号】000162423
【氏名又は名称】協同油脂株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】羽山 誠
(72)【発明者】
【氏名】久野 斉
(72)【発明者】
【氏名】永久保 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】池島 昌三
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 信
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/071629(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0120643(US,A1)
【文献】 特開2010−252700(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077801(WO,A1)
【文献】 米国特許第9328308(US,B2)
【文献】 P.Metzger、C.Largeau,Botryococcus Braunii:a rich source for hydrocarbons and related ether lipids,Appl.Microbiol.biotechnol.,2004年12月 4日,66,486-496
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 105/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増ちょう剤と基油を含むグリース組成物において、基油が、
(a)ボトリオコッカスブラウニーの抽出炭化水素油、及び/又は
(b)前記抽出炭化水素油の水素添加油
を含有し、
前記抽出炭化水素油(a)が、受託番号がtsukuba-1 FERM T-22046であるボトリオコッカスブラウニーの抽出炭化水素油であることを特徴とする前記グリース組成物。
【請求項2】
前記抽出炭化水素油(a)が、イソプレンを構成単位とするトリテルペン構造を有する分岐炭化水素油である請求項記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記抽出炭化水素油(a)が、メチル基を含有する炭化水素油である請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記炭化水素抽出油(a)が、下記化学式1で表される炭化水素を含有する請求項1〜のいずれか1項記載のグリース組成物。
【化1】
【請求項5】
前記炭化水素抽出油(a)及び/又は前記水素添加した炭化水素油(b)の濃度が、基油全体に対して10質量%以上である請求項1〜のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項6】
増ちょう剤が、金属石鹸、複合金属石鹸、ウレア化合物及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項7】
増ちょう剤が、下記式(2)で表されるウレア化合物である、請求項1〜のいずれか1項記載のグリース組成物。
1−NHCONH−R2−NHCONH−R3 (2)
(式中、R1及びR3は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜20の炭化水素基を示す。R2は炭素数6〜15の芳香族系炭化水素基を示す。)
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した動力伝達機構。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑藻類である「botoryococcus braunii」(以下ではボトリオコッカスと表記する)から抽出したボトリオコッカスオイル(ボトリオオイルと称することもある)及び/又はその水素添加油を含有するグリース組成物に関する。本発明のグリース組成物は、クラッチやトルクリミッタ機構または動力伝達機構用の潤滑部に好適に使用される。本発明のグリース組成物は、軸受の潤滑にも好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
地球の環境問題を考慮して、環境への負荷が少ないカーボンニュートラルに代表される動植物由来の油脂の検討やバイオ燃料の研究が進められている。微細藻類に属する緑藻ボトリオコッカスから得られる炭化水素は大量生産が可能で純度も高く、石油の代替油として期待されている(例えば、特許文献1)。
環境問題への対応としては、温室効果ガスの削減を目的とする自動車の軽量化も進んでおり、従来よりも多様な箇所にクラッチやトルクリミッタ機構の適用が行われ、またそれらの作動回数が増加してきている。クラッチまたはトルクリミッタ機構に使用されるグリース組成物は、トルク伝達性の優れるシリコーン油や合成ナフテン油等のトラクション油を基油としたグリース組成物が主に使用されている(特許文献2、3)。しかし、シリコーングリースは摩耗が大きいことが問題であり、合成ナフテン油等トラクション油は耐熱性に問題がある。摩耗や耐熱性の対策として鮫の肝臓から抽出されるスクワレンやスクワランが検討されているが(特許文献4)、シリコーン油や合成ナフテン油等トラクション油に比べるとトラクション係数の低いことが懸念される。
自動車には燃費をはじめ省エネルギーも求められるが、潤滑剤としては低トルクが要求され、基油の低粘度化が進んでいる。しかし、低粘度の油は油膜厚が薄くなり、潤滑性や寿命(はくり寿命)の低下を引き起こす。そこで低粘度でも油膜が厚い、つまり粘度圧力係数(α値)が高い油剤が求められている。最近の研究では、粘度圧力係数(α値)が高い油剤は、軸受の電食防止に効果があることも分かってきている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-252700号公報
【特許文献2】特許3223210号
【特許文献3】特公平3-23593号公報
【特許文献4】特開2007-321042号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】砂原賢治ら、日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集、(東京2011-5)P239〜240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の潤滑剤又はグリース組成物と同等以上のトルク伝達性を有しながらも、従来の潤滑剤又はグリース組成物よりも耐摩耗性及び耐熱性に優れ、その上、潤滑性に優れ、はくり寿命が長く、軸受の電食を防止できるグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、基油にボトリオコッカスオイル及び/又はその水素添加油を含ませることにより、従来のシリコーングリースやトラクション油と同等のトルク伝達性を有し、かつ耐摩耗性及び耐熱性に優れたグリース組成物が得られることを見出した。本発明者らは更に、ボトリオコッカスオイル及び/又はその水素添加油は、25℃における粘度圧力係数(α値)が20以上と高いことも確認し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明により、以下のグリース組成物を提供する:
1.増ちょう剤と基油を含むグリース組成物において、基油が、
(a)ボトリオコッカスブラウニーから抽出される炭化水素油、及び/又は
(b)前記炭化水素油に水素添加することにより得られる炭化水素油
を含有することを特徴とする前記グリース組成物。
2. 前記炭化水素油(a)が、ボトリオコッカスブラウニーをヘキサンで抽出することにより製造される炭化水素油である前記1項記載のグリース組成物。
3. 前記炭化水素油(a)が、受託番号がtsukuba-1 FERM T-22046であるボトリオコッカスブラウニーから抽出される炭化水素油である前記1又は2項記載のグリース組成物。
4. 前記炭化水素油(a)が、イソプレンを構成単位とするトリテルペン構造を有する分岐炭化水素油である前記1〜3のいずれか1項記載のグリース組成物。
5. 前記炭化水素油(a)が、メチル基を含有する炭化水素油である前記1〜4のいずれか1項記載のグリース組成物。
6. 前記炭化水素油(a)が、下記化学式1で表される炭化水素を含有する前記1〜5のいずれか1項記載のグリース組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
7. 前記炭化水素油(a)及び/又は前記水素添加した炭化水素油(b)の濃度が、基油全体に対して10質量%以上である前記1〜6のいずれか1項記載のグリース組成物。
8. 増ちょう剤が、金属石鹸、複合金属石鹸、ウレア化合物及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1つである、前記1〜7のいずれか1項記載のグリース組成物。
9. 増ちょう剤が、下記式(2)で表されるウレア化合物である、前記1〜8のいずれか1項記載のグリース組成物。
1−NHCONH−R2−NHCONH−R3 (2)
(式中、R1及びR3は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜20の炭化水素基を示す。R2は炭素数6〜15の芳香族系炭化水素基を示す。)
10. 前記1〜9のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した動力伝達機構。
11. 前記1〜9のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した軸受。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグリース組成物は、従来の潤滑剤又はグリース組成物と同等以上のトルク伝達性を有しながらも、従来の潤滑剤又はグリース組成物よりも耐摩耗性及び耐熱性に優れる。本発明のグリース組成物は、25℃における粘度圧力係数(α値)が高い基油を含むため、潤滑性に優れ、はくり寿命が長く、軸受の電食を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔基油〕
本発明において用いる基油は、(a)ボトリオコッカスブラウニーから抽出される炭化水素油(ボトリオコッカスオイル又はボトリオオイルと称する)、及び/又は(b)前記炭化水素油を水素添加することにより得られる炭化水素油(水素添加又は水添ボトリオコッカスオイル、水素添加又は水添ボトリオオイルと称する)を含有する。
抽出溶媒としては、ヘキサン等の疎水性有機溶媒を使用することができるが、ヘキサンが好ましい。炭化水素油(a)としては、イソプレンを構成単位とするトリテルペン構造を有する分岐炭化水素油であるのが好ましい。メチル基を有するのがより好ましい。炭化水素油(a)が、下記化学式1で表される炭化水素を含有するのが特に好ましい。炭化水素油(a)が、下記化学式1で表される炭化水素を98質量%以上含有するのがさらに特に好ましい。
【0011】
【化2】
【0012】
基油は、上記ボトリオコッカスオイル又は水添ボトリオコッカスオイルを単独で使用しても、その他の基油を加えて使用しても良い。ボトリオコッカスオイル又は水添ボトリオコッカスオイルと併用する基油は特に限定されない。具体的には、鉱油;ジオクチルセバケート等のジエステル、ポリオールエステルに代表されるエステル系合成油;ポリαオレフィン、ポリブテンに代表される合成炭化水素油;アルキルジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールに代表されるエーテル系合成油;シリコーン油;フッ素化油など各種合成油基油等を使用することができる。
他の基油を含む場合、基油の全量を基準にして、前記(a)成分及び/又は前記(b)成分を、10質量%以上含むのが好ましいが、ボトリオコッカスオイル又は水添ボトリオコッカスオイル100質量%の基油が最も好ましい。
【0013】
基油の40℃における動粘度は、10〜120mm2/sであることが好ましく、10〜100mm2/sであることがより好ましく、10〜30mm2/sであることがさらに好ましい。粘度が低すぎると、十分な厚さの油膜を形成できず、疲労寿命への悪影響が懸念され、粘度が高すぎると、トルク性能への悪影響が懸念される。
【0014】
基油の粘度圧力係数αは、20〜70GPa-1であることが好ましく、25〜65GPa-1であることがより好ましい。αが20GPa-1以上であると、低粘度の基油でありながら、十分な油膜厚さを確保できるため、潤滑性に優れ、はくり寿命が長いグリース組成物を提供できるので好ましい。更に、αが20GPa-1以上である基油を含有するグリース組成物は、効果的に軸受の電食を防止できるので好ましい。
粘度圧力係数αは、下記Hamrock-Dowsonの式により求められる。
【0015】
【数1】
【0016】
基油の引火点は、170℃以上であるのが好ましく、200℃以上であるのがより好ましい。このような範囲の引火点を有する基油を用いると、耐熱性に特に優れたグリースとなる。
【0017】
ボトリオコッカスオイルは、例えば以下のようにして得ることができる。
(1)炭化水素油の抽出
ボトリオコッカスを、所定の濃度まで培養した後、濃縮する。ここで、濃縮とは、水分と藻体とを可能な範囲で分離することを意味する。また、ボトリオコッカスは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号「tsukuba-1 FERM T-22046」において寄託されている。なお、このボトリオコッカスは、RaceBと称されるものである。
【0018】
濃縮したボトリオコッカスを、上方が開口した、浅い容器(バット等)に展開し、乾燥させる。乾燥の方法は、温風乾燥であっても、天日乾燥であってもよい。温風乾燥であれば、例えば70〜80℃の温風を20〜40時間ボトリオコッカスにあてるとよい。
乾燥したボトリオコッカスをはさみを用いて細断し、ヘキサンに浸漬する。ヘキサンの量は、乾燥したボトリオコッカスの藻体の体積に対して通常1倍程度とする。浸漬後、数時間放置する。浸漬中のヘキサンの温度は特に限定されない。浸漬すると、ボトリオコッカスのオイル分がヘキサンに溶出する。そのヘキサンをエバポレータで分留し、オイル分(炭化水素油とトリグリセリド等の脂質)を抽出する。抽出したオイル分を、シリカゲルカラムに通す。このとき、炭化水素油のみがシリカゲルカラムを通過する。そして、シリカゲルカラムを通過した炭化水素油を得る。これがボトリオコッカスオイルである。
【0019】
(2)水素を添加した炭化水素油の製造
前記(1)で得られた炭化水素油を、オートクレーブ反応容器に、Ar気流下、触媒(例えば、Pd−C)及び溶媒(例えば、酢酸エチル)と共に投入する。このとき、例えば、投入する炭化水素油の体積は、オートクレーブ反応容器の容積のおよそ1/10、触媒の体積は、投入する炭化水素油のおよそ1/10、溶媒の体積は、オートクレーブ反応容器のおよそ1/3とすることができる。その次に、オートクレーブ反応容器に水素を充填し、攪拌する。水素の消費とともに水素を追加充填しながら、攪拌を続ける。
反応は、水素の吸収がそれ以上見られなくなったところで停止するのが好ましいが、途中で停止してもよい。後者の場合、炭化水素油の構造には二重結合が残っている。オートクレーブ反応容器内をArガスで置換した後、反応液をセライトでろ過し、また、触媒(Pd−C)をろ過して酢酸エチル等で十分に洗浄する。ろ液を減圧濃縮し、残渣を得る。この残渣が、水素添加したボトリオコッカスオイルである。
【0020】
〔増ちょう剤〕
本発明において用いる増ちょう剤は、グリース組成物に通常使用される増ちょう剤であれば特に制限なく使用することができる。具体的には金属石鹸、複合金属石鹸、ウレア化合物、ウレタン化合物、カーボンブラック、ベントナイト、シリカ化合物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。金属石鹸、複合金属石鹸、ウレア化合物及びシリカ(二酸化ケイ素)からなる群から選ばれる増ちょう剤が好ましい。
金属石鹸の具体例としては、アルミニウム石鹸、カルシウム石鹸、リチウム石鹸、ナトリウム石鹸、バリウム石鹸等が挙げられる。リチウム石鹸が好ましい。
複合金属石鹸の具体例としては、リチウムコンプレックス石鹸、カルシウムコンプレックス石鹸、アルミニウムコンプレックス石鹸等が挙げられる。
ウレア化合物としては、ジウレア化合物、特にジウレア化合物、例えば、芳香族ジイソシアネートに芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環式アミン、これらの2種以上の混合物を反応させて得られるジウレア化合物が挙げられる。ジウレア化合物は、例えば下記式(2)で表すことができる。このうち、脂肪族アミン、脂環式アミンまたはこれらの混合物を反応させて得られるジウレア化合物が好ましい。

1−NHCONH−R2−NHCONH−R3 (2)

(式中、R1及びR3は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜20の炭化水素残を示し、例えば脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基である。R2は炭素数6〜15の芳香族系炭化水素基を示す。)

芳香族ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等があげられる。芳香族アミンの具体例としては、パラトルイジン、アニリン、ナフチルアミン等があげられる。脂肪族アミンの具体例としては、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノニルデシルアミン、エイコシルアミン等があげられる。脂環式アミンの具体例としては、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。このうち、芳香族ジイソシアネートと脂肪族アミン、脂環式アミンまたはこれらの混合物とから得られるウレア化合物が好ましい。特に、芳香族ジイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートであり、脂肪族アミン、脂環式アミンまたはこれらの混合物がオクタデシルアミン、シクロヘキシルアミンまたはこれらの混合物であるウレア化合物が好ましい。
シリカ(二酸化ケイ素)としては、一次粒子の平均粒子径が好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下のものが望ましい。
【0021】
〔添加剤〕
本発明の潤滑グリース組成物には、通常の潤滑グリース組成物に普通に使用されている酸化防止剤、極圧剤、錆止め剤、界面活性剤等の添加剤を添加しても良い。これらの添加量は通常0.01〜10質量%である。
【0022】
本発明のグリース組成物のちょう度は、200〜400が好適である。増ちょう剤の含有量はこのちょう度を得るのに必要な量となる。具体的には、グリース組成物全体に対して好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。
【0023】
本発明のグリース組成物は、クラッチやトルクリミッタ機構または動力伝達機構用の潤滑部に好適に使用される。本発明のグリース組成物は、軸受の潤滑にも好適に使用される。
【実施例】
【0024】
各実施例および比較例1において別紙表に示す配合成分につきグリースを製造し、次に示す方法により物性を評価した。なお、比較例2〜4は市販品である。比較例2,3はグリース、比較例4はオイルの状態で評価した。
【0025】
〔ボトリオコッカスオイルの製造〕
実施例で用いたボトリオコッカスオイルは、以下のようにして得た。
独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号「tsukuba-1 FERM T-22046」において寄託されているボトリオコッカスを、水中で、室温において30日間培養した。大型バットに移し天日乾燥により水分と藻体とを分離し、乾燥させた。
乾燥したボトリオコッカスを、はさみを用いて細断し、等倍量のヘキサン(室温)に浸漬した。その温度のまま約2時間放置して、ボトリオコッカス内に蓄積させていたオイル分をヘキサン中に溶出させた。そのヘキサンをエバポレータで分留し、オイル分(炭化水素油と脂質との混合物)を抽出した。抽出したオイル分をシリカゲルカラム(ワコーゲル C-100)に通し、炭化水素油を分離した。
【0026】
得られた炭化水素油の組成を、GC−FID(ガスクロマトグラフ−水素炎イオン化検出器)、GC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)により分析した。その結果、C3458なる式で表されることが分かった。
【0027】
組成分析及び分子構造解析の結果、得られた炭化水素は、以下に化学式1として示す分子構造を有するC3458であることが確認できた。
【0028】
【化3】
【0029】
実施例1、比較例1
反応容器に、表に示す基油の半量とジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート全量をとり、70〜80℃に加温した。別容器に、基油の半量とオクタデシルアミン、シクロヘキシルアミン全量をとり70〜80℃に加温し、これを反応容器に加え攪拌した。発熱反応のため、反応物の温度は上昇するが、約30分間この状態で攪拌し続け、反応を充分行なった後、155℃まで昇温し、冷却した。これを3段ロールミルで、混練し、目的のグリースを得た。
【0030】
実施例2
容器に、表に示す基油の全量と増ちょう剤成分全量をとり、攪拌しながら、約200〜210℃まで昇温し、増ちょう剤が完全溶解したところで昇温をやめ、その後冷却した。これを3段ロールミルで混練し、目的のグリースを得た。
【0031】
実施例3
容器に、表に示す基油の全量と増ちょう剤(シリカ(二酸化ケイ素)(一次粒子の平均粒子径 0.012μm)成分全量をとり、攪拌した後3段ロールミルで、混練し、目的のグリースを得た。
【0032】
試験方法
(1)基油の動粘度(40 ℃)JIS K2220.23
(2)基油の粘度圧力係数α値 GPa-1(25 ℃)
まず、光干渉式EHL油膜厚さ測定装置を用いてまず油膜厚さを求めた。
試験条件は、温度;25℃,面圧;0.56Gpa, 速度;1.0m/sとした。
次に、既述のHamrock-Dowsonの式に代入して粘度圧力係数α(GPa-1)を得た。
判定;α値が20以上(○)、20未満を不合格(×)とした。
(3)基油の引火点℃(クリーブランド開放式) JIS K2220.24
判定;200以上(○)、200未満を不合格(×)とした。
(4)混和ちょう度 JIS K2220.7
(5)最大トラクション係数
ボール/ディスクEHL試験機によりトラクション係数を測定した。
鋼製ディスクは回転速度Udで回転、ボールは回転速度Ubでフリー状態。ボール回転軸はディスク中心からずれている。滑り運動Us(ボール回転に対する滑り速度)の発生により、ボール軸方向のトラクションをロードセルで検出し、その最大値対荷重の比を最大トラクション係数とする。
試験条件
最大ヘルツ圧:0.711GPa 速度:0.5m/s 温度:25℃
判定; ○:0.070以上 △:0.030〜0.070 ×:0.030未満
【0033】
(6)SRV試験 ASTM D5707 準拠
試験条件、温度:50℃,振幅数:50Hz,振幅:1mm、時間:2時間、荷重:100N
判定;摩擦係数 : ○:0.250以下 ×:0.250以上
摩耗痕面積mm2: ○:1.0未満 ×:1.0以上
【0034】
【表1】