(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プレート回転手段を制御して、前記接液維持工程と並行して、前記プレートを、前記液保持面と前記基板の主面との間に前記処理液を保持可能な低回転速度で回転させる低速回転制御手段をさらに含む、請求項2に記載の基板処理装置。
前記プレート回転手段を制御して、前記接液維持工程の終了後、前記プレートを、前記液保持面から処理液を振り切ることが可能な高回転速度で回転させる高速回転制御手段をさらに含む、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、少ない処理液流量で、基板の主面全域に処理液を行き渡らせることができる。そのため、処理液の消費量を抑制することができ、ランニングコストの低減を実現することができる。
しかしながら、吐出口が基板対向面の回転中心に対向しており、吐出口から吐出される処理液は先ず基板対向面に当たる。そのため、次に述べるように、処理の面内均一性を実現することができない。
【0005】
図29は、処理液としてエッチング液を用いる場合において、基板の回転中心(センター)と周端部(エッジ)とでのエッチング処理の差を説明するためのモデル図である。横軸は、エッチング液吐出開始からの時間、縦軸はエッチング量である。
エッチング液(処理液)が基板の回転中心に供給されると、そのエッチング液が遠心力によって基板の周端部に達するまでに時間差が生じる。そのため、周端部でのエッチングの開始は、回転中心でのエッチングの開始から遅れることになる。この遅れ時間の間に、回転中心ではエッチング量ΔEだけのエッチングが進行し、このエッチング量ΔEはエッチング液吐出時間を長くしても解消しない。
【0006】
一方、本件発明者らは、エッチング液(処理液)の吐出流量を少なく(たとえば0.25リットル/分)してエッチング液の消費量低減を図る場合に、基板面内におけるエッチング均一性には、基板の回転速度が関与していることを発見している。具体的には、基板の回転速度が速い(たとえば1000rpm程度)と、
図30に示すように、基板の回転中心(センター)でのエッチング量直線と、基板の周端部(エッジ)におけるエッチング量直線とが平行にならない。換言すれば、回転中心におけるエッチングレートが、周端部におけるエッチングレートよりも大きくなる。そのため、エッチング液吐出時間が長くなるにつれて、エッチング量の差が大きくなる。
【0007】
このような課題は、処理液としてエッチング液を用いる場合だけでなく、処理液として洗浄液やレジスト剥離液等を用いる場合にも共通する課題である。
そこでこの発明は、ランニングコストを低減しつつ、面内均一性の高い基板処理を実現できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を水平姿勢に保持する基板保持手段(5;105)と、前記基板保持手段に保持された基板の主面と同等かあるいは大径を有し、前記基板の主面の下方に対向
する水平かつ平坦な液保持面(11)を有するプレート(8;8A;8B;8C)
であって、前記液保持面に、基板の主面の中心部に対向する処理液吐出口(14)が形成されたプレートと、前記処理液吐出口に処理液を供給す
る処理液供給手段(15〜20)と、前記基板保持手段および前記プレートを相対的に移動させて、前記基板の主面と前記液保持面とを接近/離反させる移動手段(29;129)と、前記処理液供給手段および前記移動手段を制御して、前記処理液供給手段によって前記液保持面に処理液を供給して、前記液保持面に処理液液膜を形成する処理液液膜形成工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に前記処理液液膜に接触させる接触工程と、前記接触工程の後、処理液が前記基板の主面に接液した状態に維持させる接液維持工程とを実行する制御手段(50)とを含む、基板処理装置(1;1A)である。
【0009】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符
号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
この構成によれば、基板の主面に対向するプレートの液保持面に、処理液の液膜を形成しておく一方で、基板の主面と液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に処理液の液膜に接触
(接液)させる
。これにより、基板主面の全面(全域)において、処理液による処理を実質的に同時に開始させることができる。その後、その処理液の接液状態をそのまま維持させることにより、基板の主面で、処理液による処理が進行する。基板の主面が処理液に接液された後は、処理液供給手段から小流量で処理液を供給するか、あるいは処理液供給手段からの処理液の供給を停止することもできるから、基板主面内における処理の均一性を犠牲にすることなく、処理液の消費量を抑制することができる。これにより、ランニングコストを低減しつつ、面内均一性の高い基板処理を実現できる。
【0010】
また、液保持面に形成された処理液吐出口から液保持面に処理液が供給されるので、液撥ねすることなく速やかに、処理液の液膜が液保持面に形成される。
【0011】
また、前記液保持面には、薬液を吐出するための薬液吐出口(14)が形成されており、前記処理液供給手段は、前記薬液吐出口から薬液を吐出させる薬液供給手段(15〜17)を含んでいてもよい。さらに、前記液保持面には、リンス液を吐出するためのリンス液吐出口(14)が形成されており、前記処理液供給手段は、前記リンス液吐出口からリンス液を吐出させるリンス液供給手段(18)を含んでいてもよい。
【0012】
請求項
2に記載のように、前記プレートを、前記液保持面に垂直な回転軸線まわりに回転させるためのプレート回転手段をさらに含んでいてもよい。
なお
、前記処理液吐出口は、前記プレート回転手段による前記プレートの回転軸線上に形成されていてもよい。
請求項
3に記載の発明は、前記プレート回転手段を制御して、前記接液維持工程と並行して、前記プレートを、前記液保持面と前記基板の主面との間に前記処理液を保持可能な低回転速度で回転させる低速回転制御手段(50)をさらに含む、請求項
2に記載の基板処理装置である。
【0013】
この構成によれば、プレート回転手段によってプレートを低速回転させることにより、処理液を攪拌することができる。これにより、基板主面内の処理ムラをなくすことができ、処理の面内均一性をより一層向上させることができる。
請求項
4に記載の発明は、前記プレート回転手段を制御して、前記接液維持工程の終了後、前記プレートを、前記液保持面から処理液を振り切ることが可能な高回転速度で回転させる高速回転制御手段をさらに含む、請求項
2または
3に記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、プレート回転手段によってプレートを高速回転させることにより、液保持面上の処理液はプレートの回転により振り切られて、液保持面から除去される。これにより、液保持面における処理液の残留を防止することができる。
請求項
5に記載の発明は、前記制御手段は、前記接触工程の実行と同期して、あるいは前記接触工程の実行に先立って、前記液保持面への処理液の供給を停止させる手段(50)を含む、請求項1〜
4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、処理液の液膜の形成後は、液保持面への処理液の供給を停止させる。そして、処理液の供給停止と同期して、または処理液の供給停止後に、基板の主面と処理液の液膜に接触させる。これにより、基板の主面に対する処理に影響を与えることなく、処理液の消費量をより一層抑制できる。
請求項
6に記載のように、前記液保持面には、乾燥ガスを吐出する乾燥ガス吐出口(14)が形成されていてもよい。なお、請求項
6と請求項
2とが組み合わされる場合、前記乾燥ガス吐出口は、前記プレート回転手段による前記プレートの回転軸線上に形成されていてもよい。
【0016】
請求項
7に記載の発明は、前記液保持面を加熱する加熱手段(40)をさらに含む、請求項1〜
6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、液保持面に供給された処理液を加熱することができる。これにより、温められた処理液で基板の主面を処理できるから、処理効率が向上し、その結果処理時間の短縮を図ることができる。これにより、処理の面内均一性をより一層向上させることができる。
【0017】
請求項
8に記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記液保持面に薬液を供給するための薬液供給手段(15〜17)と、前記液保持面にリンス液を供給するためのリンス液供給手段(18)とを含み、前記薬液供給手段、前記リンス液供給手段および前記移動手段を制御して、前記薬液供給手段によって前記液保持面に薬液を供給して、前記液保持面に薬液液膜(51)を形成する薬液液膜形成工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に前記薬液液膜に接触させる薬液接触工程と、前記薬液接触工程の後、薬液が前記基板の主面に接液した状態に維持させる薬液接液維持工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを離反させる離反工程と、前記離反工程の後、前記リンス液供給手段によって前記液保持面にリンス液を供給して、前記液保持面にリンス液液膜(52)を形成するリンス液液膜形成工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に前記リンス液液膜に接触させるリンス液接触工程と、前記リンス液接触工程の後、リンス液が前記基板の主面に接液した状態に維持させるリンス液接液維持工程とを含む、請求項1〜
7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、基板の主面に対向するプレートの液保持面に、薬液の液膜を形成しておく一方で、基板の主面と液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に薬液の液膜に接触させることによって、基板の主面の全域が薬液に同時に接液される。これにより、薬液による処理を、基板主面の全域において実質的に同時に開始させることができるから、基板主面内における薬液処理の均一性を犠牲にすることなく、薬液の消費量を抑制することができる。
【0019】
また、基板の主面に対向するプレートの液保持面に、リンス液の液膜を形成しておく一方で、基板の主面と液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時にリンス液の液膜に接触させることによって、基板の主面の全域がリンス液に同時に接液される。これにより、リンス液の消費量を抑制することができる。
これにより、薬液処理およびリンス処理のそれぞれで、ランニングコストを低減しつつ、面内均一性の高い基板処理を実現できる。
【0020】
請求項
9記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記液保持面に第1薬液を供給するための第1薬液供給手段と、前記液保持面に第2薬液を供給するための第2薬液供給手段とを含み、前記第1薬液供給手段、前記第2薬液供給手段および前記移動手段を制御して、前記第1薬液供給手段によって前記液保持面に第1薬液を供給して、前記液保持面に第1薬液液膜を形成する第1薬液液膜形成工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に前記第1薬液液膜に接触させる第1薬液接触工程と、前記第1薬液接触工程の後、第1薬液が前記基板の主面に接液した状態に維持させる第1薬液接液維持工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを離反させる離反工程と、前記離反工程の後、前記第2薬液供給手段によって前記液保持面に第2薬液を供給して、前記液保持面に第2薬液膜を形成する第2薬液膜形成工程と、前記移動手段によって前記基板の主面と前記液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に前記第2薬液液膜に接触させる第2薬液接触工程と、前記第2薬液接触工程の後、第2薬液が前記基板の主面に接液した状態に維持させる第2薬液接液維持工程とを含む、請求項1〜
8のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、基板の主面に対向するプレートの液保持面に、第1薬液の液膜を形成しておく一方で、基板の主面と液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に第1薬液の液膜に接触させることによって、基板の主面の全域が第1薬液に同時に接液される。これにより、第1薬液による処理を、基板主面の全域において実質的に同時に開始させることができるから、基板主面内における第1薬液処理の均一性を犠牲にすることなく、第1薬液の消費量を抑制することができる。
【0022】
また、基板の主面に対向するプレートの液保持面に、第2薬液の液膜を形成しておく一方で、基板の主面と液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に第2薬液の液膜に接触させることによって、基板の主面の全域が第2薬液に同時に接液される。これにより、第2薬液処理を、基板主面の全域において実質的に同時に開始させることができるから、基板主面内における第2薬液処理の均一性を犠牲にすることなく、第2薬液の消費量を抑制することができる。
【0023】
これにより、第1薬液処理および第2薬液処理のそれぞれで、ランニングコストを低減しつつ、面内均一性の高い基板処理を実現できる。
前記の目的を達成するための請求項2記載の発明は、基板
(W)を水平姿勢に保持する基板保持手段
(5;105)を備える基板処理装置
(1;1A)において実行される基板処理方法であって、前記基板の主面の下方に
おいて当該主面の全域に対向する水平かつ平坦な液保持面
(11)であって、当該主面の中心部に対向する処理液吐出口(14)が形成された液保持面に処理液を供給して、前記液保持面に処理液液膜を形成する液膜形成工程と、前記基板の主面と前記液保持面とを接近させて、基板の主面
の中心部および周縁部を同時に前記処理液液膜に接触させる接触工程と、前記接触工程の後、処理液が前記基板の主面に接液した状態に維持させる接液維持工程とを含む、基板処理方法である。
【0024】
この発明の方法によれば、請求項1に関連して説明した発明と同様の作用効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す図である。
基板処理装置1は、処理液(薬液(たとえば第1薬液、第2薬液および第3薬液の3種類の薬液)ならびにリンス液(脱イオン水:deionized water))を用いて基板の一例としての円形の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。
【0027】
基板処理装置1は、隔壁(図示しない)によって区画された処理室3内に、下方からウエハWを水平姿勢に保持しつつ回転させるための基板下保持機構4と、基板下保持機構4の上方に配置されて、ウエハWを水平姿勢に保持しつつ回転させるための基板上保持機構(基板保持手段)5と、基板下保持機構4を収容するカップ6とを備えている。
基板下保持機構4は、鉛直に延びる筒状の下回転軸7と、下回転軸7の上端に水平姿勢に取り付けられた円板状の下スピンベース8と、この下スピンベース8の周縁に配置された複数個(3個以上。たとえば6個)の下挟持部材10とを備えている。複数個の下挟持部材10は、下スピンベース8の上面(液保持面)11の周縁部においてウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。下スピンベース8は、たとえばSiCやガラスカーボンなどを用いて形成されている。下スピンベース8の上面11は、ほぼ水平な平坦面を有し、ウエハWよりもやや大径を有している。
【0028】
さらに、下スピンベース8の内部には、下スピンベース8の上面11を加熱するためのヒータ40が備えられている。ヒータ40としては、たとえば加熱抵抗式のヒータが備えられており、ヒータ40は、上面11の全域を均一温度に加熱できるように構成されている。ヒータ40に通電することにより、ヒータ40が発熱し、上面11の全域を均一に加熱する。下スピンベース8の内部には、下スピンベース8の温度(上面11近傍の温度)を検出するための温度センサ39が設けられている。
【0029】
複数の下挟持部材10には下挟持部材駆動機構22が結合されている。下挟持部材駆動機構22は、複数の下挟持部材10を、ウエハWの端面と当接してウエハWを挟持することができる挟持位置と、この挟持位置よりもウエハWの径方向外方の開放位置とに導くことができるようになっている。下スピンベース8の上面11がウエハWの下面に対向しつつ、複数の下挟持部材10によってウエハWが挟持されることにより、ウエハWが基板下保持機構4に保持される。ウエハWが基板下保持機構4に保持された状態では、ウエハWの中心が、下回転軸7の中心軸線上に位置する。
【0030】
下回転軸7は中空軸となっていて、下回転軸7の内部には、ヒータ40への給電線(図示せず)が挿通されているとともに、下面供給管12が挿通されている。下面供給管12は、下スピンベース8の中心部をその厚み方向に貫通する貫通孔13に連通している。また、この貫通孔13は、下スピンベース8の上面11の中心部で開口する下吐出口(処理液吐出口、薬液吐出口、リンス液吐出口、乾燥ガス吐出口)14に連通している。
【0031】
下面供給管12には、第1薬液下バルブ(薬液供給手段)15、第2薬液下バルブ(薬液供給手段)16、第3薬液下バルブ(薬液供給手段)17、リンス液下バルブ(リンス液供給手段)18、乾燥ガス下バルブ(処理液供給手段)19および有機溶剤下バルブ(処理液供給手段)20を介して、常温(約25℃)の第1薬液、常温の第2薬液、常温の第3薬液、常温のDIW等のリンス液、乾燥ガスおよび常温のIPA有機溶剤が、それぞれ供給されるようになっている。下面供給管12に供給された第1薬液、第2薬液、第3薬液、リンス液、乾燥ガスおよび有機溶剤は、下吐出口14から上方に向けて吐出されるようになっている。なお、
図1では、下吐出口14は1つのみ図示されているが、下吐出口14が複数の吐出口を有していてもよい。この場合、処理流体毎に吐出口が設けられていてもよいし、複数の処理流体間で吐出口を共有してもよい。たとえば、液系の処理流体(第1〜第3薬液、リンス液および有機溶剤)は一の吐出口から吐出され、ガス系の処理流体(乾燥ガス)は他の吐出口から吐出されるようになっていてもよい。ただし、下吐出口14に含まれるいずれの吐出口も、次に述べる回転軸7の中心軸線、すなわち下スピンベース8の上面11の中心かその近傍位置に配置されているものとする。
【0032】
また、下回転軸7には、モータなどの駆動源を含む下回転駆動機構21が結合されている。この下回転駆動機構21から下回転軸7に駆動力を入力することにより、下スピンベース8が回転され、これによりウエハWの中心を通る鉛直な回転軸線(下回転軸7の中心軸線)まわりにウエハWが回転される。
基板上保持機構5は、下回転軸7と共通の回転軸線(同一直線上の回転軸線)を有する上回転軸24と、上回転軸24の下端に水平姿勢に取り付けられた円板状の上スピンベース25と、この上スピンベース25の周縁に配置された複数個(3個以上。たとえば6個)の上挟持部材27とを備えている。上スピンベース25は、下スピンベース8の上方で、下スピンベース8と対向している。複数個の上挟持部材27は、上スピンベース25の下面26の周縁部においてウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。上スピンベース25の下面26は、ほぼ水平な下向きの平坦面を有し、ウエハWよりもやや大径を有している。ウエハWが基板上保持機構5に保持された状態では、ウエハWの中心が、上回転軸24の中心軸線上、すなわち下回転軸7の中心軸線上に位置している。
【0033】
上挟持部材27は、上スピンベース25が後述する近接位置で、下スピンベース8の上面11の周縁部に設けられた下挟持部材10と接触しないように、下挟持部材10と対向しない位置に設けられている。
複数の上挟持部材27には、上挟持部材駆動機構28が結合されている。上挟持部材駆動機構28は、複数の上挟持部材27を、ウエハWの端面と当接してウエハWを挟持することができる挟持位置と、この挟持位置よりもウエハWの径方向外方の開放位置とに導くことができるようになっている。
【0034】
上スピンベース25の下面26がウエハWの上面に対向しつつ、複数の上挟持部材27によってウエハWが挟持されることにより、ウエハWが基板上保持機構5に保持される。
上回転軸24には、上スピンベース25を昇降させるための上昇降駆動機構(移動手段)29が結合されている。上昇降駆動機構29により、上スピンベース25は、下スピンベース8の上方に離間した離間位置(上スピンベース25の下面26が、下スピンベース8の上面からたとえば15〜20mm隔てた上方にある位置。後述する
図5(d)等に示す位置)と、基板下保持機構4に保持されたウエハWの上面に間隔を隔てて近接する近接位置(後述する
図4(c)等に示す位置)との間で昇降される。この実施形態では、基板上保持機構5の近接位置は、基板上保持機構5に保持されるウエハWの下面と、下スピンベース8の上面11との間隔が、上面11に形成される第1薬液の液膜(薬液液膜)51の厚み(たとえば2mm程度)よりも狭い微小な間隔(たとえば1.5mm程度)になるような高さ位置である。
【0035】
基板上保持機構5が近接位置に配置された状態で、基板下保持機構4と基板上保持機構5との間でウエハWの受渡しが行われるようになっている。また、上スピンベース25が搬送位置(後述する
図4(a)等に示す位置)に配置された状態で、基板上保持機構5と搬送アームARとの間でウエハWの受渡しが行われるようになっている。この基板上保持機構5の搬送位置は、搬送アームARが、基板上保持機構5の上スピンベース25と基板下保持機構4の下スピンベース8との間に進入して、ウエハWの引渡し動作および受取り動作を行うことができるような高さ位置に設定されている。この実施形態では、搬送位置は離間位置よりも上方に設定されており、この搬送位置上スピンベース25の下面26と下スピンベース8の上面11との間隔が15〜20mmになるような高さ位置に設定されている。搬送位置と離間位置とはできるだけ近い位置に設定されていることが望ましい。この場合、離間位置と搬送位置との間の基板上保持機構5の移動のための所要時間を短縮することができる。
【0036】
上昇降駆動機構29は、上スピンベース25をウエハWごと鉛直方向に移動させるので、ウエハWが基板上保持機構5に保持された状態では、近接位置、離間位置および搬送位置のいずれに基板上保持機構5が位置する場合であっても、ウエハWの中心が、上回転軸24の中心軸線上に位置している。
また、上回転軸24には、モータなどの駆動源を含む上回転駆動機構30が結合されている。この上回転駆動機構30から上回転軸24に駆動力を入力することにより、上スピンベース25が回転され、これによりウエハWの中心を通る鉛直な回転軸線(上回転軸24の中心軸線)まわりにウエハWが回転される。
【0037】
カップ6は、鉛直な方向に延びる筒状の外壁33および内壁34と、外壁33と内壁34との間でこれらの下端を連結する環状の底部35とを含む。外壁33は、下スピンベース8を取り囲んでおり、その上部は上方に向かって先細りとなっている。底部35には、底部35に貯留された処理液を廃液タンク(図示しない)に導くための廃液配管37が接続されている。下スピンベース8の周縁部から飛散した処理液は、外壁33によって受け止められた後に底部35に導かれて廃液される。これにより、カップ6の周囲への処理液の飛散防止が図られている。
【0038】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置50を備えている。制御装置50は、上昇降駆動機構29、上回転駆動機構30、下回転駆動機構21、上挟持部材駆動機構28、下挟持部材駆動機構22などの動作を制御する。また、制御装置50は、第1薬液下バルブ15、第2薬液下バルブ16、第3薬液下バルブ17、リンス液下バルブ18、乾燥ガス下バルブ19、有機溶剤下バルブ20の開閉動作を制御する。
【0039】
また、制御装置50には、温度センサ39からの検出出力が入力されるようになっており、制御装置50は、温度センサ39からの検出出力に基づいて、このヒータ40への通電と、その供給電流とを制御する。制御装置50がヒータ40に通電させることにより、ヒータ40が発熱する。また、制御装置50がヒータ40への供給電流を制御することにより、下スピンベース8の上面11をヒータ40によって加熱して所定の温度に昇温させることができる。
【0040】
図3は、基板処理装置1で行われる第1処理例を説明するためのフローチャートである。
図4〜
図8は、基板処理装置1で行われる第1処理例を説明するための模式的な図である。第1処理例は、1種類の薬液とリンス液とを用いた処理の例である。薬液として第1薬液を用いる場合を例に挙げて説明する。以下、第1処理例を、
図1〜
図9を参照して説明する。
【0041】
図4(a)に示すように、処理に際して、搬送アームARによって、処理室3に未処理のウエハWが搬入されてくる(
図3のステップS1)。ウエハWの搬入時においては、基板上保持機構5が搬送位置に配置されている。搬送アームARは、ウエハWをその処理対象面(主面)を下方に向けた状態で基板上保持機構5に受け渡す。ウエハWの受渡しの際には、基板上保持機構5の上挟持部材駆動機構28が駆動されて、複数の上挟持部材27が開放位置から挟持位置に導かれて、ウエハWが基板上保持機構5に保持される。これにより、搬送アームARから基板上保持機構5へのウエハWの受渡しが達成される。
【0042】
また、
図4(a)に示すように、ウエハWの搬入と並行して、制御装置50は、第1薬液下バルブ15を開く。これにより、下吐出口14から第1薬液の吐出が開始される。このときの下吐出口14からの第1薬液の吐出流量はたとえば0.1〜1(リットル/分)程度である。
また、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を下回転軸7の中心軸線まわりに所定の第1薬液パドル回転速度(たとえば10〜100rpm)で回転させる。
【0043】
下吐出口14からの第1薬液の吐出により、
図4(a)に示すように、下スピンベース8の上面11に、ほぼ円形の第1薬液の液膜51が形成される。下吐出口14から吐出された第1薬液は、後続の第1薬液によって押されて下スピンベース8の上面11を外方に広がっていく。しかしながら、第1薬液パドル回転速度が比較的低速であるために上面11上の第1薬液に作用する遠心力が小さいので、下スピンベース8の周縁から排出される第1薬液の流量は少なく、多量の第1薬液が上面11上に溜まる。したがって、
図4(b)に示すように、下スピンベース8の上面11の全域を覆う、所定厚み(たとえば2mm程度)の第1薬液の液膜(処理液の液膜)51が形成される。上面11の略中心に形成された下吐出口14から上面11に第1薬液が供給されるので、液撥ねすることなく速やかに、第1薬液の液膜51を上面11の全域に形成することができる。
【0044】
図9に示すように、第1薬液の液膜51は、その周縁部(周端面から幅W0の範囲)に形成される湾曲部55を除いて、水平平坦面をなす上面51Aを有している。ここで言う「平坦面」とは、
図29に示すように、ウエハWの下面の中央部と周縁部とで処理開始時間に差が生じない程度に実質的な平坦面のことをいう。なお、第1薬液パドル回転速度は、下スピンベース8の上面11の全域を第1薬液の液膜51で覆うことが可能な速度である。
【0045】
第1薬液下バルブ15の開成から、予め定める液膜形成時間が経過すると、制御装置50は第1薬液下バルブ15を閉じるとともに、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8の回転を停止させる。この液膜形成時間は、第1薬液下バルブ15の開成後、下スピンベース8の上面11の全域を覆う第1薬液の液膜51が形成されるのに十分な期間に設定されている。
【0046】
また、
図4(b)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを保持する基板上保持機構5を近接位置に向けて下降させる。これによりウエハWの下面と下スピンベース8の上面11とが接近する。前述のように、基板上保持機構5が近接位置に配置された状態では、ウエハWの下面と下スピンベース8の上面11との間隔が、第1薬液の液膜51の厚みよりも狭く設定されている。そのため、基板上保持機構5を近接位置まで下降させることにより、
図4(c)に示すように、ウエハWの下面を、上面11に形成された第1薬液の液膜51の上面51A(
図9参照)に接触させることができる。
【0047】
第1薬液の液膜51がウエハWと同心であり、かつウエハWよりやや大径を有しており、しかもウエハWが水平姿勢に保持されているので、ウエハWの下面の全域において、第1薬液の液膜51の上面51Aと同時に接触する。すなわち、ウエハWの下面の全域が第1薬液に同時に接液される。この状態で、ウエハWの下面と上面11との間には第1薬液が満たされており、その後も、ウエハWの下面に対する第1薬液の接液状態は維持され、これにより、ウエハWの下面における第1薬液による処理が進行する(S2:薬液処理)。
【0048】
なお、基板上保持機構5の下降開始タイミングは、上面11の全域を覆う第1薬液の液膜51の形成完了直後(形成完了後、たとえば5秒以内)に、ウエハWの下面が第1薬液の液膜51の上面51Aに接触するようなタイミングに設定されていることが望ましい。第1薬液の液膜51形成後に長時間に亘って処理室3内の雰囲気に曝露されていると、処理室3内の雰囲気中に含まれる空気によって第1薬液の液膜51の表面が酸化されるおそれがある。基板上保持機構5の下降開始タイミングをこのようなタイミングに設定することにより、第1薬液の液膜51の表面における酸化を防止することができ、第1薬液の液膜51に含まれる第1薬液の劣化を防止することができる。
【0049】
基板上保持機構5が近接位置に達すると、基板上保持機構5から基板下保持機構4にウエハWが受け渡される。基板上保持機構5が近接位置に配置された状態では、上挟持部材27と下挟持部材10との高さが略等しい。そのため、複数の下挟持部材10がウエハWの周縁の側方に位置している。
具体的には、下挟持部材駆動機構22が駆動されて、複数の下挟持部材10が開放位置から挟持位置に導かれる。また、上挟持部材駆動機構28が駆動されて、複数の上挟持部材27が挟持位置から開放位置に導かれる。これにより、基板上保持機構5によるウエハWの保持が解除されて、ウエハWが基板下保持機構4に保持される。これにより、基板上保持機構5から基板下保持機構4へのウエハWの受渡しが達成される。なお、基板上保持機構5と基板下保持機構4との間のウエハWの受渡しは、第1薬液のウエハWの下面への接液状態を維持しながら行われる。以上により、接液時の液流動によるウエハWの微動や揺れを防止し、周縁部での空隙の発生を防止しつつ、確実にウエハWを受け渡しすることができる。
【0050】
次いで、
図5(d)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを非保持の基板上保持機構5を、近接位置から離間位置まで上昇させる。
また、
図5(d)に示すように、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を、ウエハWごと下回転軸7の中心軸線まわりに所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させる。これにより、上面11とウエハWの下面との間に挟まれた第1薬液を流動させて攪拌することができ、ウエハWの下面の面内での処理ムラを防止することができる。このような低回転速度であれば、ウエハWを回転させても、ウエハWの下面と上面11との間の第1薬液(第1薬液の液膜51)内に空隙はほとんど発生しない。なお、このときに、ウエハWの下面と上面11との間に第1薬液を供給してもよい。
【0051】
基板下保持機構4がウエハWを受け取ってから予め定める第1薬液処理時間が経過すると、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8の回転を停止させる。また、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡される。基板下保持機構4から基板上保持機構5へのウエハWの受渡しに先立って、
図5(e)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、基板上保持機構5を離間位置から近接位置まで下降させる。基板上保持機構5が近接位置に達すると、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡される。この近接位置では、複数の上挟持部材27がウエハWの周縁の側方に位置している。
【0052】
具体的には、上挟持部材駆動機構28が駆動されて、複数の上挟持部材27が、開放位置から挟持位置に導かれるとともに、下挟持部材駆動機構22が駆動されて、複数の下挟持部材10が、挟持位置から開放位置に導かれる。これにより、基板下保持機構4によるウエハWの保持が解除されて、ウエハWが基板上保持機構5に保持される。以上により、基板下保持機構4から基板上保持機構5へのウエハWの受渡しが達成される。
【0053】
次いで、
図5(f)に示すように、制御装置50は上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを受け取った後の基板上保持機構5を、離間位置まで上昇させる。
また、
図5(f)に示すように、制御装置50は下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を下回転軸7の中心軸線まわりに高回転速度(たとえば1000rpm以上)で回転させる。この高回転速度は、下スピンベース8の上面11から第1薬液を振り切ることが可能な速度である。この下スピンベース8の高速回転により、下スピンベース8の上面11から第1薬液が振り切られて除去される。
【0054】
また、
図5(f)に示すように、制御装置50は上回転駆動機構30を制御して、離間位置に配置された上スピンベース25を、ウエハWごと上回転軸24の中心軸線まわりに中回転速度(たとえば500rpm程度)で回転させる。この中回転速度は、ウエハWの下面から第1薬液を完全には振り切らず、第1薬液を薄く残留させることが可能な速度である。これにより、第1薬液が薬液残渣として固着するのを防止することができる。なお、第1薬液が薬液残渣として悪影響を及ぼすような種類の薬液でない場合には、上スピンベース25を高速(たとえば1000rpm以上)で回転させて、第1薬液をウエハWの下面から完全に振り切るようにしてもよい。そのため、第1薬液処理に次いで実行されるリンス処理(
図3のステップS3)の開始時にウエハWの下面に第1薬液が付着していないから、リンス液への第1薬液の混入を抑制することができる。その結果、リンス処理効率を高めることができ、これにより、リンス処理時間を短縮させることも可能である。
【0055】
下スピンベース8の高速回転により、
図6(g)に示すように、下スピンベース8の上面11の第1薬液が下スピンベース8の回転により振り切られて、上面11から除去される。これにより、上面11における第1薬液の残留を防止することができる。とくに上面11は、その全域に亘って平坦面に形成されているので、第1薬液の振り切りの際に第1薬液が残留し難い。そのため、第1薬液処理に次いで実行されるリンス処理において、上面11自体も効率良くリンスされる。
【0056】
次に、リンス処理(
図3のステップS3)が実行される。
図6(h)に示すように、制御装置50は、リンス液下バルブ18を開く。これにより、下吐出口14からのリンス液の吐出が開始される。このときの下吐出口14からのリンス液の吐出流量はたとえば0.1〜1(リットル/分)程度である。
また、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を下回転軸7の中心軸線まわりに所定のリンス液パドル回転速度(たとえば10〜100rpm)で回転させる。
【0057】
下吐出口14からのリンス液の吐出により、
図6(h)に示すように、下スピンベース8の上面11にほぼ円形のリンス液の液膜52が形成される。下吐出口14から吐出されたリンス液は、後続のリンス液によって押されて下スピンベース8の上面11を外方に広がっていく。しかしながら、リンス液パドル回転速度が比較的低速であるために上面11上のリンス液に作用する遠心力が小さいので、下スピンベース8の周縁から排出される第1薬液の流量は少なく、多量のリンス液が上面11上に溜まる。したがって、
図6(i)に示すように、下スピンベース8の上面11の全域を覆う、所定厚み(たとえば2mm程度)のリンス液の液膜(処理液の液膜)52が形成される。上面11の略中心に形成された下吐出口14から上面11にリンス液が供給されるので、液撥ねすることなく速やかに、リンス液を上面11全域に形成することができる。
【0058】
図9に示すように、リンス液の液膜52は、その周縁部(周縁から幅W0の範囲)に形成される湾曲部55を除いて、水平平坦面をなす上面52Aを有している。ここで言う「平坦面」とは、
図29に示すように、ウエハWの下面の中央部と周縁部とで処理開始時間に差が生じない程度に実質的な平坦面のことをいう。なお、リンス液パドル回転速度は、下スピンベース8の上面11の全域をリンス液の液膜52で覆うことが可能な速度である。
【0059】
リンス液下バルブ18の開成から、予め定める液膜形成時間が経過すると、制御装置50はリンス液下バルブ18を閉じるとともに、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8の回転を停止させる。この液膜形成時間は、リンス液下バルブ18の開成後、下スピンベース8の上面11の全域を覆うリンス液の液膜52が形成されるのに十分な期間に設定されている。
【0060】
また、
図6(i)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを保持する基板上保持機構5を近接位置に向けて下降させる。これによりウエハWの下面と下スピンベース8の上面11とが接近する。基板上保持機構5が近接位置に配置された状態でウエハWの下面と下スピンベース8の上面11との間隔が、リンス液の液膜52の厚みよりも狭く設定されている。そのため、基板上保持機構5を近接位置まで下降させることにより、
図7(j)に示すように、ウエハWの下面を、上面11に形成されたリンス液の液膜52の上面52A(
図9参照)に接触させることができる。
【0061】
リンス液の液膜52がウエハWと同心であり、かつウエハWよりやや大径を有しており、しかもウエハWが水平姿勢に保持されているので、ウエハWの下面の全域において、リンス液の液膜52の上面52Aと同時に接触する。すなわち、ウエハWの下面の全域がリンス液に同時に接液される。この状態で、ウエハWの下面と上面11との間にはリンス液が満たされており、その後も、ウエハWの下面に対するリンス液の接液状態は維持され、ウエハWの下面に付着している第1薬液が、リンス液によって洗い流される。リンス液の液膜52により、下スピンベース8の上面11自体にもリンス処理が施される。
【0062】
基板上保持機構5が近接位置に達すると、基板上保持機構5から基板下保持機構4にウエハWが受け渡される。基板上保持機構5と基板下保持機構4との間のウエハWの受渡しは、リンス液のウエハWの下面への接液状態を維持しながら行われる。
次いで、
図7(k)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを非保持の基板上保持機構5を、近接位置から離間位置まで上昇させる。
【0063】
また、
図7(k)に示すように、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を、ウエハWごと下回転軸7の中心軸線まわりに所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させる。これにより、リンス液を攪拌することができる。このような低回転速度であれば、ウエハWを回転させても、ウエハWの下面と上面11との間のリンス液(リンス液の液膜52)内に空隙はほとんど発生しない。なお、このときに、ウエハWの下面と上面11との間にリンス液を供給してもよい。
【0064】
基板下保持機構4がウエハWを受け取ってから予め定めるリンス処理時間が経過すると、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8の回転を停止させる。また、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡される。基板下保持機構4から基板上保持機構5へのウエハWの受渡しに先立って、
図7(l)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、基板上保持機構5を離間位置から近接位置まで下降させる。基板上保持機構5が近接位置に達すると、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡される。
【0065】
次いで、
図8(m)に示すように、制御装置50は上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを受け取った後の基板上保持機構5を、離間位置まで上昇させる。
また、
図8(m)に示すように、制御装置50は下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を下回転軸7の中心軸線まわりに高回転速度(たとえば1000rpm以上)で回転させる。この高回転速度は、下スピンベース8の上面11からリンス液を振り切ることが可能な速度である。下スピンベース8の高速回転により、
図8(n)に示すように、下スピンベース8の上面11のリンス液が下スピンベース8の回転により振り切られて、上面11から除去される。これにより、上面11におけるリンス液の残留を防止することができる。とくに上面11は、その全域に亘って平坦面に形成されているので、リンス液の振り切りの際にリンス液が残留し難い。
【0066】
次に、ウエハWの乾燥について説明する。
ウエハWを、その下面に付着しているリンス液を振り切る回転速度で回転させるスピンドライが施される(
図3のステップS4。
図8(n)参照)。制御装置50は上回転駆動機構30を制御して、離間位置に配置された上スピンベース25に保持されているウエハWを、所定の高回転速度(たとえば、1000rpm以上)で回転させる。この高速回転により、ウエハWの下面のリンス液が振り切られて、ウエハWの下面からリンス液が完全に除去される。
【0067】
また、
図8(n)に示すように、スピンドライと並行して、制御装置50は乾燥ガス下バルブ19を開き、下吐出口14から上方に向けて乾燥ガスが吐出する。これにより、離間位置に配置された基板上保持機構5に保持されているウエハWの下面に乾燥ガスが吹き付けられる。このときの乾燥ガスの吐出流量はたとえば100〜200(リットル/分)である。この乾燥ガスの吹付けにより、ウエハWの下面の乾燥が促進される。また、この場合、窒素ガスに代えてまたは窒素ガスに併せて、IPA等の有機溶剤の蒸気などをウエハWの下面に吹き付けることもでき、ウエハWの下面の乾燥をさらに促進させることができる。なお、この乾燥処理時には、ウエハWを保持する基板上保持機構5を離反位置に配置するのではなく、近接位置よりもやや上方に配置させて、基板上保持機構5と基板下保持機構4とが干渉しない位置に基板上保持機構5を配置してもよい。
なお、
図8(m)に示す下スピンベース8の高速回転と、
図8(n)に示すスピンドライとは、並行して実行させることが望ましい。この場合、リンス処理後に直ちにスピンドライを実行することが可能であり、その結果、全体の処理時間を短縮することができる。
【0068】
スピンドライが所定時間にわたって行われると、制御装置50は上回転駆動機構30を制御して、上スピンベース25およびウエハWの回転を停止させる。その後、制御装置50は上昇降駆動機構29を制御して、上スピンベース25を搬送位置に移動させる。そして、搬送アームARがウエハWを保持可能な状態で、制御装置50は、基板上保持機構5の上挟持部材駆動機構28を制御して、複数の上挟持部材27を挟持位置から開放位置に導く。これにより、基板上保持機構5とウエハWとの係合が解除されて、基板上保持機構5から搬送アームARへのウエハWの受渡しが達成される。その後、一連の処理が施されたウエハWが搬送アームARによって搬出されていく(
図3のステップS5)。
【0069】
以上により、処理例1では、ウエハWの下面に対向する下スピンベース8の上面11に、第1薬液の液膜51を形成しておく一方で、ウエハWの下面と上面11とを接近させて、ウエハWの下面を第1薬液の液膜51に接触させることによって、ウエハWの下面の全域が第1薬液に同時に接液される。これにより、ウエハWの下面の全域において、薬液処理(第1薬液処理)を実質的に同時に開始させることができる。第1薬液のウエハWへの接液に先立って、下吐出口14からの第1薬液の吐出を停止するから、ウエハW下面の面内における処理の均一性を犠牲にすることなく、第1薬液の消費量を抑制することができる。ウエハWの下面の全域に実質的に同時に薬液処理が開始されるため、ウエハWの中央部と周縁部との処理時間を均一化させることができる。
【0070】
また、処理例1では、ウエハWの下面に対向する上スピンベース25の上面11に、リンス液の液膜52を形成しておく一方で、ウエハWの下面と上面11とを接近させて、ウエハWの下面をリンス液の液膜52に接触させることによって、ウエハWの下面の全域がリンス液に同時に接液される。これにより、ウエハWの下面の全域において、リンス処理を実質的に同時に開始させることができる。リンス液のウエハWへの接液に先立って、下吐出口14からのリンス液の吐出を停止するから、リンス液の消費量を抑制することができる。ウエハWの下面の全域に実質的に同時にリンスが開始されるため、ウエハWの中央部と周縁部との処理時間を均一化させることができる。
【0071】
これにより、薬液処理(第1薬液処理)およびリンス処理のそれぞれで、ランニングコストを低減しつつ、面内均一性の高い基板処理を実現できる。
図10〜
図12は、第1処理例の変形例を説明するための模式的な図である。
図10に示す変形例は、下スピンベース8からの第1薬液の振り切り(
図5(f)に相当)を、ウエハWを基板上保持機構5に保持させた状態で行うのではなく、ウエハWが基板下保持機構4に保持された状態で行うものである。具体的には、ウエハWを下スピンベース8に保持した状態で、下スピンベース8が下回転軸7の中心軸線まわりに高回転速度(たとえば1000rpm以上)で回転させられる。下スピンベース8の回転に同伴してウエハWも回転させられる。これにより、下スピンベース8の上面11から第1薬液を振り切るだけでなく、ウエハWの下面からも第1薬液を振り切ることができる。
【0072】
この変形例を採用する場合には、下スピンベース8からの第1薬液の振り切り終了後に、上昇降駆動機構29が制御されて、基板上保持機構5が離間位置から近接位置まで下降させられ、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡された後に、ウエハWを受け取った後の基板上保持機構5が離間位置まで上昇させられてもよい。
また、この場合、ウエハWが基板下保持機構4に保持された状態のまま離間位置に配置されることなく、リンス液をウエハWの下面と上面11との間に供給することにより、そのままリンス処理に移行させることもできる。この場合、ウエハWの昇降動作を経ずにリンス処理が行われるので、処理時間を短縮することができる。
【0073】
図11に示す変形例では、下吐出口14から上方に吹き上げられたリンス液をウエハWの下面中心部に供給することによって、リンス処理(
図6(h)、
図6(i)、
図7(j)および
図7(k)に相当)を行っている。ウエハWの下面に供給されたリンス液はウエハWの回転に伴って、ウエハWの下面を伝ってウエハWの周縁部に向けて流れる。そのため、ウエハWの下面の中心に供給されたリンス液がウエハWの下面の全域に拡がる。これにより、ウエハWの下面に付着している第1薬液をリンス液によって良好に洗い流すことができる。
【0074】
図12に示す変形例は、下スピンベース8からのリンス液の振り切り(
図8(m)に相当)およびスピンドライ(
図8(n)に相当)を、ウエハWを基板上保持機構5に保持させた状態で行うのではなく、ウエハWを基板下保持機構4に保持させた状態で行うものである。具体的には、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を下回転軸7の中心軸線まわりに高回転速度(たとえば1000rpm以上)で回転させる。下スピンベース8の回転に同伴してウエハWも回転される。この高速回転により、下スピンベース8の上面11から第1薬液が振り切られるとともに、ウエハWの下面のリンス液が振り切られる。これにより、ウエハWの下面からリンス液が完全に除去される。これにより、下スピンベース8の上面11と、ウエハWの下面との双方からのリンス液を同時に振り切ることができる。
【0075】
この場合、下回転駆動機構21の駆動により、下スピンベース8とウエハWとが一体的に回転される。また、乾燥ガス下バルブ19が開かれて、下吐出口14から下スピンベース8の上面とウエハWの下面との間の狭空間に乾燥ガスが供給される。乾燥ガスの供給により、ウエハWの下面と上面11との間の狭空間に乾燥ガスの安定した気流が生じるので、ウエハWを効率よく乾燥させることができる。これにより、乾燥時間を短縮させることができる。
【0076】
また、第1薬液処理の終了後、下スピンベース8からの第1薬液の振り切りを行うことなく、次いで、リンス液を下吐出口14から吐出させることもできる。この場合、ウエハWの下面と上面11との間の狭空間に満たされた第1薬液をリンス液に置換することができる。
なお、処理例1では、上面11に対し第1薬液の供給を停止した後に、ウエハWの下面と上面11とを接近開始させる処理を例に挙げたが、上面11に対する第1薬液の供給停止と同期して、ウエハWの下面と上面11とを接近開始させてもよい。
【0077】
また、第1薬液の液膜51の形成後にも、小流量で第1薬液を供給するようにしてもよい。この場合、下スピンベース8の上面11を回転させることにより、上面11全域において、第1薬液の液膜51に継続して新液で供給することができる。この場合の第1薬液の供給流量は小流量で足りるので、第1薬液の消費量を抑制できる。
また、処理例1では、上面11に対しリンス液の供給を停止した後に、ウエハWの下面と上面11とを接近開始させる処理を例に挙げたが、上面11に対するリンス液の供給停止と同期して、ウエハWの下面と上面11とを接近開始させるようにしてもよい。
【0078】
また、リンス液の液膜52の形成後にも、小流量でリンス液を供給するようにしてもよい。この場合、下スピンベース8の上面11を回転させることにより、上面11全域において、リンス液の液膜52に継続して新液で供給することができる。この場合のリンス液の供給流量は小流量で足りるので、リンス液の消費量を抑制できる。
また、ウエハWの搬入と並行して、上面11への処理液(薬液)の供給を開始させるものとして説明したが、ウエハWの搬入に先立って、処理液の上面11への処理液(薬液)の供給が完了していてもよい。この場合、ウエハWが基板上保持機構5に保持された後直ちに、基板上保持機構5を近接位置に下降開始させることも可能である。これにより、搬送アームARと基板上保持機構5との間のウエハWの受渡し動作も含めた全体の処理時間を短縮することができる。
【0079】
次に、基板処理装置1の処理例1において、高温の第1薬液でウエハWに第1薬液処理を施す場合について検討する。
この実施形態では、下面供給管12に供給される処理液(第1〜第3薬液およびリンス液)は、いずれも常温である。そして、下スピンベース8の上面11は、ヒータ40により加熱可能に構成されている。そのため、下吐出口14から吐出される常温の第1薬液を上面11で昇温させることができる。
【0080】
制御装置50は、上面11の近傍に配置された温度センサ39の検出出力に基づいて、ヒータ40への供給電流を制御することにより、下スピンベース8の上面11を所定の設定温度に(常温以上の温度)に昇温させる。下スピンベース8の上面11が所定の設定温度に保たれた状態で、下吐出口14から常温の第1薬液が吐出されると、下吐出口14から吐出される多量の第1薬液が上面11上に溜まり、第1薬液の液膜51を形成する。そして、下スピンベース8の上面11との熱交換により、液膜51に含まれる第1薬液も温められ、上面11の設定温度か、あるいはそれに近い温度まで昇温される。そして、昇温された第1薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第1薬液処理が施される。このとき、上面11の温度は各所で均一であるので、第1薬液の液膜51の温度も、上面11上の各所で均一である。そのため、第1薬液による処理の面内均一性をより一層向上させることができる。また、高温の処理液を用いてウエハWに対する処理を行うので、処理時間を短縮することができる。
【0081】
次に、基板処理装置の処理例1において、高温のリンス液でウエハWにリンス処理を施す場合には、制御装置50は、温度センサ39の検出出力に基づいて、ヒータ40への供給電流を制御することにより、下スピンベース8の上面11を所定の設定温度に(常温以上の温度)に昇温させる。下スピンベース8の上面11が所定の設定温度に保たれた状態で、下吐出口14から常温のリンス液が吐出されると、下吐出口14から吐出される多量のリンス液が上面11上に溜まり、リンス液の液膜52を形成する。そして、下スピンベース8の上面11との熱交換により、液膜52に含まれるリンス液も温められ、上面11の設定温度か、あるいはそれに近い温度まで昇温される。そして、昇温されたリンス液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面にリンス処理が施される。
【0082】
図13は、基板処理装置1で行われる第2処理例を説明するためのフローチャートである。
図1、
図3、
図4および
図13を参照しつつ、第2処理例について説明する。
この第2処理例が、
図3等に示す第1処理例と相違する点は、ステップS14の有機溶剤置換処理が設けられた点である。
第2処理例の処理に際して、搬送アームAR(
図4(a)等参照)によって、処理室3に未処理のウエハWが搬入されてくる(
図13のステップS11)。次いで、第1薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第1薬液処理が施され(
図13のステップS12)、その後、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面から第1薬液が洗い流される(S13:リンス処理)。第2処理例では、次いで、ウエハWの下面に付着しているリンス液が、水よりも接触角の小さい(換言すると表面張力の小さい)有機溶剤で置換される(
図13のステップS14)。有機溶剤としてIPA(イソプロピルアルコール)などを例示することができる。
【0083】
有機溶剤による置換後、次いで、ウエハWを、その下面に付着している有機溶剤を振り切る回転速度で回転させるスピンドライが施される(
図13のステップS15)。その後、一連の処理が施されたウエハWが搬送アームARによって搬出されていく(
図3のステップS16)。これらステップS11,S12,S13,S15,S16の処理は、それぞれ、
図3のステップS1,S2,S3,S4,S5と同様の処理である。
【0084】
図14および
図15は、第2処理例を説明するための模式的な図である。以下、
図1、
図2、
図3、
図9、
図14および
図15を参照して、ステップS14の有機溶剤置換処理の流れを説明する。
また、
図14(a)に示すように、制御装置50は有機溶剤下バルブ20を開く。これにより、下吐出口14からの有機溶剤の吐出が開始される。このときの下吐出口14からの有機溶剤の吐出流量はたとえば0.1〜1(リットル/分)程度である。
【0085】
また、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を下回転軸7の中心軸線まわりに所定の有機溶剤パドル回転速度(たとえば10〜100rpm)で回転させる。
下吐出口14からの有機溶剤の吐出により、
図14(a)に示すように、下スピンベース8の上面11にほぼ円形の有機溶剤の液膜53が形成される。下吐出口14から吐出された有機溶剤は、後続の有機溶剤によって押されて下スピンベース8の上面11を外方に広がっていく。しかしながら、有機溶剤パドル回転速度が比較的低速であるために上面11上の有機溶剤に作用する遠心力が小さいので、下スピンベース8の周縁から排出される有機溶剤の流量は少なく、多量の有機溶剤が上面11上に溜まる。したがって、
図14(b)に示すように、下スピンベース8の上面11の全域を覆う、所定厚み(たとえば2mm程度)の有機溶剤の液膜(処理液の液膜)53が形成される。上面11の略中心に形成された下吐出口14から上面11に有機溶剤が供給されるので、液撥ねすることなく速やかに、有機溶剤の液膜53を上面11に形成することができる。
【0086】
図9に示すように、有機溶剤の液膜53は、その周縁部(周縁から幅W0の範囲)に形成される湾曲部55を除いて、水平平坦面をなす上面53Aを有している。ここで言う「平坦面」とは、
図29に示すように、ウエハWの下面の中央部と周縁部とで処理開始時間に差が生じない程度に実質的な平坦面のことをいう。なお、有機溶剤パドル回転速度は、下スピンベース8の上面11の全域を有機溶剤の液膜53で覆うことが可能な速度である。
【0087】
有機溶剤下バルブ20の開成から、予め定める液膜形成時間が経過すると、制御装置50は有機溶剤下バルブ20を閉じるとともに、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8の回転を停止させる。この液膜形成時間は、有機溶剤下バルブ20の開成後、下スピンベース8の上面11の全域を覆う有機溶剤の液膜53が形成されるのに十分な期間に設定されている。
【0088】
また、
図14(b)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを保持する基板上保持機構5を近接位置に向けて下降させる。これによりウエハWの下面と下スピンベース8の上面11とが接近する。基板上保持機構5が近接位置に配置された状態でウエハWの下面と上面11との間隔が有機溶剤の液膜53の厚みよりも狭いので、基板上保持機構5を近接位置まで下げることにより、
図15(a)に示すように、ウエハWの下面を、上面11に形成された有機溶剤の液膜53の上面53A(
図9参照)に接触させることができる。
【0089】
有機溶剤の液膜53がウエハWと同心であり、かつウエハWよりやや大径を有しており、しかもウエハWが水平姿勢に保持されているので、ウエハWの下面の全域において、有機溶剤の液膜53の上面53Aと同時に接触する。すなわち、ウエハWの下面の全域が有機溶剤に同時に接液される。この状態で、ウエハWの下面と上面11との間には有機溶剤が満たされており、その後も、ウエハWの下面に対する有機溶剤の接液状態は維持され、ウエハWの下面に付着したリンス液が有機溶剤によって置換される。
【0090】
基板上保持機構5が近接位置に達すると、基板上保持機構5から基板下保持機構4にウエハWが受け渡される。基板上保持機構5と基板下保持機構4との間のウエハWの受渡しは、ウエハWの下面の有機溶剤の液膜53への接液状態を維持しながら行われる。
次いで、
図15(d)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを非保持の基板上保持機構5を、近接位置から離間位置まで上昇させる。
【0091】
また、
図15(d)に示すように、制御装置50は、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8を、ウエハWごと下回転軸7の中心軸線まわりに所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させる。これにより、リンス液を攪拌することができる。このような低回転速度であれば、ウエハWを回転させても、ウエハWの下面と上面11との間の有機溶剤(有機溶剤の液膜53)内に空隙はほとんど発生しない。なお、このときに、ウエハWの下面と上面11との間に有機溶剤を供給してもよい。
【0092】
基板下保持機構4がウエハWを受け取ってから予め定める有機溶剤処理時間が経過すると、下回転駆動機構21を制御して、下スピンベース8の回転を停止させる。また、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡される。基板下保持機構4から基板上保持機構5へのウエハWの受渡しに先立って、
図15(e)に示すように、制御装置50は、上昇降駆動機構29を制御して、基板上保持機構5を離間位置から近接位置まで下降させる。基板上保持機構5が近接位置に達すると、基板下保持機構4から基板上保持機構5にウエハWが受け渡される。
【0093】
制御装置50は上昇降駆動機構29を制御して、ウエハWを受け取った後の基板上保持機構5を、離間位置まで上昇させる。その後、ウエハWには、ステップS14のスピンドライが施される。
第2処理例によれば、リンス液を有機溶剤で置換した後にスピンドライが実行されるので、ウエハWのパターンの倒壊を抑制または防止することができる。
【0094】
図16は、基板処理装置1で行われる第3処理例を説明するためのフローチャートである。
図1、
図2、
図3、
図4および
図16を参照しつつ、第3処理例について説明する。
この第3処理例が、
図3等に示す第1処理例と異なる点は、互いに異なる2種類の薬液(たとえば第1薬液および第2薬液)ならびにリンス液を用いてウエハWに対して処理を施す点である。
【0095】
第3処理例の処理に際して、搬送アームAR(
図4(a)等参照)によって、処理室3に未処理のウエハWが搬入されてくる(
図16のステップS21)。次いで、第1薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第1薬液処理が施され(
図16のステップS22)、その後、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面から第1薬液が洗い流される(S23:中間リンス処理)。
【0096】
次いで、第2薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第2薬液処理が施され(
図16のステップS24)、その後、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面から第2薬液が洗い流される(S25:最終リンス処理)。
次いで、ウエハWを、その下面に付着しているリンス液を振り切る回転速度で回転させるスピンドライが施される(
図16のステップS26)。その後、一連の処理が施されたウエハWが搬送アームARによって搬出されていく(
図16のステップS27)。これらステップS21,S22,S25,S26,S27の処理は、それぞれ、
図3のステップS1,S2,S3,S4,S5と同様の処理である。
【0097】
また、ステップS23の中間リンス処理は、ステップS22の第1薬液処理後、ステップS24の第2薬液処理前に実行される中間リンス処理である点を除いて、ステップS3のリンス処理と同様の処理である。
ステップS24の第2薬液処理は、処理のために用いられる(ウエハWの下面に接液する)薬液が第1薬液でなく第2薬液である点において、
図3のステップS2の第1薬液処理と異なり、その点を除いて、
図3のステップS2の第1薬液処理と同様の処理である。ステップS24の第2薬液処理では、制御装置50は、第2薬液下バルブ16を選択的に開いて、下吐出口14からの第2薬液を吐出する。これにより、上面11に第2薬液の液膜を形成する。そして、ウエハWの下面と上面11とを接近させて、ウエハWの下面を第2薬液の液膜に接触させることによって、ウエハWの下面の全域が第2薬液に同時に接液される。これにより、ウエハWの下面の全域において、第2薬液処理を実質的に同時に開始させることができる。第2薬液のウエハWへの接液に先立って、下吐出口14からの第2薬液の吐出を停止するから、ウエハW下面の面内における処理の均一性を犠牲にすることなく、第2薬液の消費量を抑制することができる。
【0098】
以上のように、この第3処理例によれば、ステップS22の第1薬液処理と、ステップS24の第2薬液処理の間に、ステップS23の中間リンス処理を実行する。中間リンス処理時には、上面11に供給されるリンス液によって上面11に付着している薬液(第1薬液)も洗い流される。これにより、第1薬液と第2薬液との混触(コンタミ)を確実に防止することができる。
【0099】
図17は、基板処理装置1で行われる第4処理例を説明するためのフローチャートである。
図1、
図3、
図4、
図16および
図17を参照しつつ、第4処理例について説明する。
この第4処理例が、
図16に示す第2処理例と異なる点は、処理に用いる薬液がさらに1種類追加になり、互いに異なる3種類の薬液(たとえば第1薬液、第2薬液および第3薬液)ならびにリンス液を用いてウエハWに対して処理を施す点である。
【0100】
第4処理例の処理に際して、搬送アームAR(
図4(a)等参照)によって、処理室3に未処理のウエハWが搬入されてくる(
図17のステップS31)。次いで、第1薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第1薬液処理が施され(
図17のステップS32)、その後、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、第1薬液がウエハWの下面から洗い流される(S33:中間リンス処理)。
【0101】
次いで、第2薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第2薬液処理が施され(
図17のステップS34)、その後、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、第2薬液がウエハWの下面から洗い流される(S35:中間リンス処理)。
次いで、第3薬液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に第3薬液処理が施され(
図17のステップS36)、その後、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、第3薬液がウエハWの下面から洗い流される(S37:最終リンス処理)。
【0102】
次いで、ウエハWを、その下面に付着しているリンス液を振り切る回転速度で回転させるスピンドライが施される(
図17のステップS38)。その後、一連の処理が施されたウエハWが搬送アームARによって搬出されていく(
図17のステップS39)。これらステップS31,S32,S33,S34,S37,S38,S39の処理は、それぞれ、
図16のステップS21,S22,S23,S24,S25,S26,S27と同様の処理である。
【0103】
また、ステップS35の中間リンス処理は、ステップS33の中間リンス処理(
図16のステップS23の中間リンス処理)と同様の処理、すなわち、
図3のステップS3のリンス処理と同様の処理である。
ステップS36の第3薬液処理は、処理のために用いられる(ウエハWの下面に接液する)薬液が第1薬液でなく第3薬液である点において、
図3のステップS2の第1薬液処理と異なり、その点を除いて、
図3のステップS2の第1薬液処理と同様の処理である。ステップS36の第3薬液処理では、制御装置50は、第3薬液下バルブ17を選択的に開いて、下吐出口14からの第3薬液を吐出する。これにより、上面11に第3薬液の液膜を形成する。そして、ウエハWの下面と上面11とを接近させて、ウエハWの下面を第3薬液の液膜に接触させることによって、ウエハWの下面の全域を第3薬液に同時に接液させることができる。これにより、ウエハWの下面の全域において、第3薬液処理を実質的に同時に開始させることができる。第3薬液のウエハWへの接液に先立って、下吐出口14からの第3薬液の吐出を停止するから、ウエハW下面の面内における処理の均一性を犠牲にすることなく、第3薬液の消費量を抑制することができる。
【0104】
図18は、基板処理装置1で行われる第5処理例を説明するためのフローチャートである。第5処理例は、第4処理例を、RCA洗浄法を用いた洗浄処理に具体的に適用した場合の処理例である。ステップS41,S42,S43,S44,S45,S46,S47,S48,S49が、それぞれ、
図17のステップS31,S32,S33,S34,S35,S36,S37,S38,S39と対応している。以下、
図1、
図2および
図18を参照しつつ、第5処理例が第4処理例と異なる部分だけを説明し、その他は省略する。
【0105】
この処理例では、第1薬液として弗酸(HF)が用いられ、第2薬液として、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)が用いられる。また、第3薬液としてSC2(塩酸過酸化水素水混合液)が用いられる。
この場合、第1薬液下バルブ15が選択的に開かれることにより、下吐出口14から弗酸が吐出されるとともに、第2薬液下バルブ16が選択的に開かれることにより、下吐出口14からSC1が吐出される。また、第3薬液下バルブ17が選択的に開かれることにより、下吐出口14からSC2が吐出される。
【0106】
RCA洗浄法を用いた洗浄処理に際しては、搬送アームARによって、ウエハWが処理室3内に搬入され、その表面を下方に向けた状態で基板上保持機構5に保持される(ステップS41)。
ステップS42のHF処理では、弗酸がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面の全域に弗酸が行き渡る。これにより、ウエハWの下面の全域が洗浄されて、ウエハWの表面に形成された酸化膜が除去される。
【0107】
ステップS43の中間リンス処理では、リンス液がウエハWの下面を接液することにより、ウエハWの下面に付着したリンス液が洗い流される。
ステップS44のSC1処理時には、ヒータ40により、下スピンベース8の上面11全域が40〜80℃に温められ、その温度に維持されている。第1薬液下バルブ15の開成により上面11にSC1が供給されて、上面11に40〜80℃のSC1の液膜が形成される。SC1がウエハWの下面に接液することにより、そのSC1の化学的能力により、ウエハWの下面に付着しているパーティクルなどの異物を除去することができる。ヒータ40により、SC1の液膜全面に対して加熱できるから、その液膜の温度を、速やかに所定温度に均一に安定させることができる。これにより、SC1を用いた処理の面内均一性を向上させることができる。
【0108】
ステップS45の中間リンス処理では、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に付着したリンス液が洗い流される。
ステップS46のSC2処理時には、ヒータ40により、下スピンベース8の上面11全域が40〜80℃に温められ、その温度に維持されている。第2薬液下バルブ16の開成により上面11にSC2が供給されて、下スピンベース8の上面11に40〜80℃のSC2の液膜が形成される。SC2がウエハWの下面に接液させることにより、そのSC2の化学的能力により、ウエハWの表面に付着しているウエハWの表面から金属イオンを除去することができる。ヒータ40により、SC2の液膜全面に対して加熱できるから、その液膜の温度を、速やかに所定温度に均一に安定させることができる。これにより、SC2を用いた処理の面内均一性を向上させることができる。
【0109】
ステップS47の最終リンス処理では、リンス液がウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に付着したリンス液が洗い流される。
次いで、スピンドライ(
図18のステップS48)が施された後、レジスト除去処理の処理済みのウエハWが搬送アームARによって搬出されていく(
図19のステップS49)。
【0110】
図19は、基板処理装置1で行われる第6処理例を説明するためのフローチャートである。第6処理例は、第3処理例を、ウエハWの表面からレジスト膜を剥離するレジスト除去処理に具体的に適用した場合の処理例である。ステップS51,S52,S53,S54,S55,S56,S57が、それぞれ、
図16のステップS21,S22,S23,S24,S25,S26,S27と対応している。以下、第6処理例が第3処理例と異なる部分だけを説明し、その他は省略する。
【0111】
この処理例では、第1薬液としてSPM(硫酸過酸化水素水混合液)が用いられ、第2薬液としてSC1が用いられる。この場合、第1薬液下バルブ15が選択的に開かれることにより、下吐出口14からSPMが吐出されるとともに、第2薬液下バルブ16が選択的に開かれることにより、下吐出口14からSC1が吐出される。
レジスト除去処理に際しては、搬送アームARによって、イオン注入処理後のウエハWが処理室3内に搬入され、その表面を下方に向けた状態で基板上保持機構5に保持される(ステップS51)。
【0112】
ステップS52のSPM処理時には、ヒータ40により、下スピンベース8の上面が160〜200℃の高温に温められ、その温度に維持されている。第1薬液下バルブ15の開成により上面11にSPMが供給されて、上面11に160〜200℃のSPMの液膜が形成される。SPMがウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に形成されているレジストが剥離される。ヒータ40により、SPMの液膜全面に対して加熱できるから、その液膜の温度を、速やかに所定温度に均一に安定させることができる。これにより、SPMを用いた処理の面内均一性を向上させることができる。
【0113】
ステップS53の中間リンス処理では、ヒータ40により、下スピンベース8の上面11が約80℃に温められ、その温度に維持されている。リンス液下バルブ18の開成により上面11にリンス液が供給されて、上面11に約80℃のリンス液の液膜52が形成される。約80℃のリンス液が、ウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に付着したリンス液が洗い流される。ヒータ40により、リンス液の液膜全面に対して加熱できるから、その液膜の温度を、速やかに所定温度に均一に安定させることができる。これにより、リンス処理の面内均一性を向上させることができる。
【0114】
ステップS54のSC1処理では、SC1が、ウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面の全域にSC1が行き渡る。これにより、そのSC1の化学的能力により、ウエハWの下面に付着しているレジスト残渣およびパーティクルなどの異物を除去することができる。
ステップS55の最終リンス処理では、リンス液が、ウエハWの下面に接液することにより、ウエハWの下面に付着したリンス液が洗い流される。この最終リンス処理で用いられるリンス液は、ステップS53の中間リンス処理のように約80℃に温められたリンス液であってもよいし、常温のリンス液であってもよい。
【0115】
次いで、スピンドライ(
図19のステップS56)が施された後、レジスト除去処理の処理済みのウエハWが搬送アームARによって搬出されていく(
図19のステップS57)。
なお、第5処理例および第6処理例において、前液(第5実施例の場合はSC1であり、第6実施例の場合はSPMが相当)の処理温度より、後液(第5実施例の場合はSC2であり、第6実施例の場合はリンス液が相当)の処理温度よりも低い場合には、後液自身が下スピンベース8(上面11)を冷やす作用を有する。そのため、後液の液膜の温度を、速やかに所定温度に均一に安定させることができる。
【0116】
また、第5処理例および第6処理例において、加熱した処理液を、ヒータ40により加熱されている上面11に供給することもできる。この場合には、供給される処理液自身が、下スピンベース8(上面11)を温めて所定温度に近づける作用を有する。そのため、そのため、処理液の液膜の温度を、より一層速やかに所定温度に均一に安定させることができる。
【0117】
図20は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の基板下保持機構4Aの図である。第2実施形態の基板下保持機構4Aは、下スピンベース8Aの中央部に形成されて、基板下保持機構4または基板上回転保持機構5に保持されるウエハWの下面全域と対向する第1対向面56Aと、第1対向面56Aの外側に、当該第1対向面56Aに連続して形成された円環状の第1テーパ面57Aとを備えている。第1対向面56Aは下スピンベース8Aの中心と同心の円形をなす平坦面を有し、また、第1対向面56AはウエハWよりも大きな径を有している。第1テーパ面57Aは、第1対向面56Aの外周端から連続して、径方向外方に向かうに従って直線状に上がるテーパ面であり、下スピンベース8Aの中心を対称中心とする回転対称に形成されている。第1テーパ面57Aはその周端が最も高い。第1テーパ面57AはウエハWの周端からW1の距離(W1はたとえば3mm程度であり、
図9におけるW0と同程度かそれより小さい)に設定されている。また、第1テーパ面57Aの第1対向面56Aに対する傾斜角度は、たとえばθ1(θ1はたとえば30°)に設定されている。
【0118】
この場合、第1対向面56Aにある処理液(第1〜第3薬液、リンス液または有機溶剤)を第1テーパ面57Aによって、
図9における湾曲部55の幅を狭くしつつ堰き止めることができ、また、第1対向面56Aに供給された処理液が下スピンベース8Aの上面11から流出するのを防止することができる。これにより、第1対向面56Aに供給された処理液(第1〜第3薬液、リンス液または有機溶剤)の量を削減しつつも、液膜51,52,53の平坦領域(すなわち上面51A,52A,53A)を確保することができる。これにより、第1対向面56Aにおける処理液の液膜51〜53を効率的に形成することができる。
【0119】
図21は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の基板下保持機構4Bの図である。第3実施形態の基板下保持機構4Bは、下スピンベース8Bに中央部に形成されて、基板下保持機構4Bまたは基板上回転保持機構5に保持されるウエハWの下面全域と対向する第2対向面56Bと、下スピンベース8Bに周縁部に形成された円環状の第2テーパ面57Bとを備えている。第2対向面56Bは下スピンベース8の中心と同心の円形をなす平坦面を有し、また、第2対向面56BはウエハWよりも大きな径を有している。第2テーパ面57Bは、第2対向面56Bの外周端から連続して、径方向外方に向かうに従って直線状に下がるテーパ面であり、下スピンベース8Bの中心を対称中心とする回転対称に形成されている。第2テーパ面57Bは、その周端が最も低い。第2テーパ面57BはウエハWの周端からW2の距離(W2はたとえば3mm程度)に設定されている。また、第2テーパ面57Bの第2対向面56Bに対する傾斜角度は、たとえばθ2(θ2はたとえば30°)に設定されている。
【0120】
この場合、第2テーパ面57Bによって、第2対向面56Bに供給された処理液(第1〜第3薬液、リンス液または有機溶剤)の流出が促進される。これにより、第2対向面56Bからの処理液の排出をスムーズに行うことができる。とくに、下スピンベース8Bの上面11(第2対向面56B)が親液性面である場合において、処理液の液膜形成を促進し、液膜形成時間を短縮することができる。
【0121】
なお、下スピンベース8Bの上面(第2対向面56B)が疎水性面を有する場合には、第2対向面56Bの周端において、ピン止め効果が発揮され、処理液の液膜51〜53の周縁部(すなわち第2対向面56Bの周端)における見かけ上の接触角βが、平坦面からなる上面11における処理液の液膜51〜53の見かけ上の接触角αよりも大きくなっている。そのため、液膜51〜53の湾曲部55の幅W3を狭くすることができる。この場合、液膜51〜53の上面51A,52A,53Aの平坦部分の径(この場合半径)は、第2対向面56Bの径から湾曲部55の幅W3を差し引いた長さである。上面51A,52A,53Aの径がウエハWの径よりも大きくなるように、第2対向面52Bの径を設定すれば、ウエハWと液膜51〜53との接触時に、ウエハWと液膜51〜53の上面51A,52A,53Aの全域と接触するようになる。
【0122】
図22は、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置の基板下保持機構4Cの図である。
図23は、下スピンベース8Cの上面11Cに処理液の液膜が形成された状態を示す断面図である。
図22等に示す基板下保持機構4Cにおいて、第1実施形態の基板下保持機構4の各部に対応する部分には、
図1等と同一の参照符号を付して示し説明を省略する。第4実施形態の基板下保持機構4Cが第1実施形態の基板下保持機構4と相違する点は、下スピンベース8Cの上面11Cが、ウエハWの径や、上スピンベース25よりもさらに大径の円径を有している点、換言すると、上面11Cには、下挟持部材10の径方向外方に、十分な径方向幅を有する環状面58が形成されている点である。それ以外の点は、下スピンベース8Cは、第1実施形態の下スピンベース8と同等の構成である。
【0123】
この場合、液膜51〜53の上面51A〜53の径(この場合半径)は、第2対向面56Bの径から湾曲部55の径方向幅を差し引いた長さである。この上面51A〜53の径がウエハWの径よりも大きくなるように上面11Cの径を設定すれば、ウエハWと液膜51〜53との接触時に、ウエハWと液膜51〜53の上面51A〜53の全域と接触させることができる。これにより、ウエハWの下面の全域を処理液に同時に接液させることができる。
【0124】
図24は、本発明の第5実施形態に係る基板処理装置1Aの構成を模式的に示す図である。
図25は、基板処理装置1Aで行われる処理の一例を説明するための模式的な図である。
第5実施形態に係る基板処理装置1Aにおいて、第1実施形態の基板処理装置1の各部に対応する部分には、
図1等と同一の参照符号を付して示し説明を省略する。第5実施形態の基板処理装置1Aが基板処理装置1と相違する点は、挟持式チャックの基板上保持機構5に代えて、真空吸着式チャックの基板上保持機構(基板保持手段)105を備えた点である。基板上保持機構105は、下回転軸7(
図1参照)と共通の回転軸線(同一直線上の回転軸線)を有する上回転軸124と、この上回転軸124の下端に取り付けられて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその上面を吸着して保持する上スピンベース125とを備えている。上スピンベース125は、下スピンベース8の上方で、下スピンベース8と対向している。上スピンベース125の下面126は、ほぼ水平な下向きの平坦面を有し、ウエハWよりも小径を有している。
【0125】
上回転軸124には、上スピンベース125を昇降させるための上昇降駆動機構(移動手段)129が結合されている。上回転軸24には、モータなどの駆動源を含む上回転駆動機構130が結合されている。この上回転駆動機構130から上回転軸124に駆動力を入力することにより、上スピンベース125が回転され、これによりウエハWの中心を通る鉛直な回転軸線(上回転軸124の中心軸線)まわりにウエハWが回転される。
【0126】
上スピンベース125の下面126がウエハWの上面に接触しつつ、真空吸着により、ウエハWが基板上保持機構105に保持される。
基板処理装置1Aにおいて、各処理例(処理例1〜処理例6)と同様の処理をウエハWに施すことができる。この場合、薬液処理(ステップS2(
図1参照)、ステップS12(
図13参照)、ステップS22,S24(
図16参照)、ステップS32,S34,S36(
図17参照)、ステップS42,S44,S46(
図18参照)、ステップS52,S54(
図19参照))において、
図25(a)に示すように、薬液がウエハWの下面が接液を開始した後、基板上保持機構105がウエハWを保持し続け、基板上保持機構104にウエハWが引き渡されなくてもよい。薬液がウエハWの下面に接液した後は、下スピンベース8が下回転軸7の中心軸線まわりに所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させられる。このとき、上スピンベース25が、ウエハWごと上回転軸24の中心軸線まわりに下スピンベース8の回転方向と反対方向に、所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させられてもよいし、または静止したままの姿勢で維持されていてもよい。これにより、上面11とウエハWの下面とを相対回転させることができ、上面11とウエハWの下面との間に挟まれた薬液をより一層攪拌することができる。そして、このような低回転速度であれば、ウエハWを回転させても、ウエハWの下面と上面11との間の薬液(薬液の液膜)内に空隙はほとんど発生しない。
【0127】
また、リンス処理(ステップS3(
図1参照)、ステップS13(
図13参照)、ステップS23,S25(
図16参照)、ステップS33,S35,S37(
図17参照)、ステップS43,S45,S47(
図18参照)、ステップS53,S55(
図19参照))において、リンス液がウエハWの下面が接液を開始した後、基板上保持機構105がウエハWを保持し続け、基板上保持機構104にウエハWが引き渡されなくてもよい。この場合、リンス液がウエハWの下面に接液した後は、下スピンベース8が下回転軸7の中心軸線まわりに所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させられる。このとき、上スピンベース25が、ウエハWごと上回転軸24の中心軸線まわりに下スピンベース8の回転方向と反対方向に、所定の低回転速度(たとえば100rpm以下の所定の回転速度)で回転させられてもよいし、または静止したままの姿勢で維持されていてもよい。これにより、上面11とウエハWの下面とを相対回転させることができ、上面11とウエハWの下面との間に挟まれたリンス液をより一層攪拌することができる。そして、このような低回転速度であれば、ウエハWを回転させても、ウエハWの下面と上面11との間のリンス液(リンス液の液膜52)内に空隙はほとんど発生しない。
【0128】
以上、この発明の5つの実施形態について説明したが、この発明は他の実施形態で実施することもできる。
図26に示すように、第1実施形態の基板上保持機構5において、上スピンベース25の下面26の中心部に、下方に向けて乾燥ガスを吐出するための上吐出口202を形成してもよい。上回転軸24は中空軸となっていて、上回転軸24の内部には、上面供給管12が挿通されている。上面供給管12は、上スピンベース25の中心部をその厚み方向に貫通する貫通孔203に連通している。また、この貫通孔203は、上スピンベース25の下面26の中心部で開口する上吐出口202に連通している。
【0129】
この場合、
図5(d)に示す薬液処理、
図7(k)に示すリンス処理および
図15(d)に示す有機溶剤置換処理において、上吐出口202からの乾燥ガスをウエハWの上面に乾燥ガスを吹き付けることにより、薬液、リンス液および有機溶剤のウエハW上面への回込みを防止することができる。
また、
図10および
図12に示すスピンドライにおいて、上吐出口202からの乾燥ガスをウエハWの上面に乾燥ガスを吹き付けることにより、薬液等の跳ね返りミストなどの再付着を防止しつつ速やかに乾燥させることができる。
【0130】
また、上吐出口202から、乾燥ガスのほか、純水(DIW)が選択的に吐出可能な構成に設けられていてもよい。
下回転軸7は中空軸となっていて、下回転軸7の内部には、ヒータ(加熱手段)40への給電線(図示せず)が挿通されているとともに、下面供給管12が挿通されている。下面供給管12は、下スピンベース8の中心部をその厚み方向に貫通する貫通孔13に連通している。また、この貫通孔13は、下スピンベース8の上面11の中心部で開口する下吐出口14に連通している。
【0131】
第2実施形態において、
図27のように、第1対向面56Aよりも一段高い円筒400が第1対向面56Aを取り囲むように形成されており、円筒の内周壁が第1対向面56Aと直交し、第1対向面56Aの中心を、その中心とする円筒面401が形成されていてもよい。この場合、第1対向面56Aから円筒面401で堰き止めることができ、第1対向面56Aに供給された処理液(第1〜第3薬液、リンス液または有機溶剤)が下スピンベース8Aの上面11から流出するのを、より効果的に防止することができる。これにより、第1対向面56Aにおける処理液の液膜51〜53の形成が促進され、処理液の量を削減することができる。
【0132】
第3実施形態において、
図28のように、第2対向面56Bの周端面には、第2対向面56Bと直交し、下スピンベース8Bの周端面に接続する環状段部402が形成されていてもよい。この場合、第2対向面56Bに供給された処理液(第1〜第3薬液、リンス液または有機溶剤)の流出が、環状段部402によって促進される。これにより、第2対向面56Bからの処理液の排出をスムーズに行うことができる。とくに、下スピンベース8Bの上面(第2対向面56B)が親液性面である場合において、処理液の液膜の形成が促進され、処理液の量を削減することができる。
【0133】
なお、温度センサ39の検出出力が制御装置50に入力され、その検出出力に基づいて制御装置50がヒータ40を制御する構成を例に挙げたが、温度センサ39の検出出力が外部の温度調整器(図示しない)に入力され、その検出出力に基づいて温度調整器がヒータ40の制御を行う構成であってもよい。
前述の各実施形態では、基板上保持機構5,105の搬送位置(
図4(a)等に示す位置)が離間位置(
図5(d)等に示す位置)よりも上方に設定されていたが、搬送位置は近接位置(
図4(c)等に示す位置)と離間位置との間に設定されていてもよいし、また、離間位置と同じ位置に搬送位置が設定されていてもよい。離間位置と搬送位置が同じ位置に設定される場合には、基板上保持機構5,105の配置位置を、離間位置(搬送位置)と近接位置との2箇所だけに設定することも可能であり、この場合、基板上保持機構5の昇降制御を簡単に行うことができる。
【0134】
また、下スピンベース8の上面11に対向する吐出口を有するノズルを設け、そのノズルから上面に向けて処理液(薬液(第1〜第3薬液)、リンス液および有機溶剤)を供給する構成であってもよい。具体的には、上面11に向く吐出口を有する固定ノズルから処理液が供給されるようになっていてもよい。
さらに、下スピンベース8の上面11に供給される処理液(薬液(第1〜第3薬液)、リンス液および有機溶剤)は常温でなくてもよく、供給前に適宜加熱されてもよい。
【0135】
前述の基板処理装置1,1Aは、説明の便宜上第1薬液、第2薬液および第3薬液という3つの薬液を上面11に供給可能な構成を備えているが、薬液の種類の数は、基板処理装置が行う処理に応じて適宜選択可能である。また、前述の基板処理装置1,1Aは、有機溶剤を供給可能な構成を備えているが、有機溶剤を供給可能な構成を採用するか否かは、基板処理装置が行う処理に応じて適宜選択可能である。
【0136】
また、薬液としては、ウエハWの表面に対する処理の内容に応じて、前述した以外の薬液を用いることもできる。
また、各実施形態において、リンス液としてDIWを例に挙げて説明した。しかしながら、リンス液は、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)などをリンス液として採用することもできる。
【0137】
また、乾燥ガスとして、たとえば不活性ガスが用いられる。不活性ガスとしては、窒素ガス以外に、たとえば、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
また、水よりも接触角の小さい有機溶剤としては、IPA以外に、たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液等を用いることができる。
【0138】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。