特許第5975587号(P5975587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975587
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】拡張ボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/06 20060101AFI20160809BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20160809BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   F16B13/06 A
   E04B1/41 503F
   F16B31/02 Q
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-519033(P2015-519033)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公表番号】特表2015-527539(P2015-527539A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】EP2013063192
(87)【国際公開番号】WO2014005876
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2015年2月11日
(31)【優先権主張番号】102012211418.1
(32)【優先日】2012年7月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス エクスタイン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゴルト
(72)【発明者】
【氏名】マルタ シェーファ−
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ アプル
(72)【発明者】
【氏名】アルゲン デートマー ディクイス
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−014232(JP,A)
【文献】 特開2002−122120(JP,A)
【文献】 特開2000−230530(JP,A)
【文献】 特開昭54−148956(JP,A)
【文献】 特開2001−187911(JP,A)
【文献】 特開2003−106318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/00−13/14
F16B 23/00−43/02
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張アンカー(1)を設置するための方法であって、当該拡張アンカー(1)は、
拡張部分(13)を有するアンカーボルト(10)と、
拡張スリーブ(30)であって、当該アンカーボルト(10)を包囲するとともに当該拡張部分(13)の引き込みによって拡張可能である、拡張スリーブと、
当該アンカーボルト(10)上に設けられたばね要素(50)であって、当該アンカーボルト(10)を貫通孔(4)内に挿入することで張設され得るとともに、続いて張力が解除されると当該アンカーボルト(10)の当該拡張部分(13)を当該拡張スリーブ(30)内に引き込ませることができる、ばね要素と
を備えるものに於いて、
貫通穴(4)が基材(3)内に設けられ、
前記拡張アンカー(1)の前記拡張スリーブ(30)が、前記アンカーボルト(10)に軸方向力を付与することによって前記貫通孔(4)内に挿入され、
前記アンカーボルト(10)の前記拡張部分(13)は、前記ばね要素(50)内に蓄積されているエネルギーによって前記拡張スリーブ(30)内にひきこまれ、それにより、前記拡張スリーブ(30)が、径方向に拡張するとともに前記貫通孔(4)内に前記拡張アンカー(1)を固定する
方法であって
前記拡張アンカー(1)の前記ばね要素(50)が、前記アンカーボルト(10)に対して軸方向力を付与することによって設定張力になるよう張設されており、設けられた指標要素(60)が前記設定張力に達したことを示す、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記指標要素(60)は前記拡張アンカー(1)に一体化されている、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記指標要素(60)は前記ばね要素(50)上に配置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ばね要素(50)が、少なくとも1つの円板ばね(51)を含み、前記指標要素(60)が、前記円板ばね(51)に連結されるとともに設定張力が達成されると前記円板ばね(51)から少なくとも部分的に離脱する指標リング(61)を有する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記円板ばね(51)と前記指標リング(61)とが前記アンカーボルト(10)を包囲する、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記指標要素(60)は、前記ばね要素(50)の変形によって、または前記アンカーボルト(10)に関連する要素(20)の衝撃によって、作動され得る、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アンカーボルト(10)は、前記アンカーボルト(10)上に配置されるナット(20)によって形成される前記ばね要素(50)の軸方向支持部を含む、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
停止部(12)が、前記アンカーボルト(10)上に設けられており、前記停止部は、前記拡張部分(13)を超える前記拡張スリーブ(30)の変位を制限する、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の拡張アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
アンカーボルトおよび拡張スリーブを有する拡張アンカーが、たとえば特許文献1から公知となっている。これら拡張アンカーは、部材を基材に固定するために使用される。拡張アンカーを基材に固設するために、アンカーボルトとともに拡張スリーブが、準備された孔に挿入、特に打設される。その後、アンカーボルトは、孔から所定の分だけ引き抜かれる。この際、拡張スリーブは、周囲の孔内壁との相互作用(接触)により所定の位置に概ね固定されたままとなる。その結果、拡張スリーブに対するアンカーボルトの軸方向変位が生じて、アンカーボルトの拡張部分が、拡張スリーブに軸方向に進入する。この進入の結果、拡張スリーブの方も径方向に拡張し、これによってアンカーが穴内壁に固設される。この原理は、本発明の基礎にもなっている。
【0003】
特許文献1によると、拡張スリーブを拡張するためのアンカーボルトの抜き出しは、たとえば、アンカーボルトに設けられているナットを緊締することによって達成される。特に均一で信頼度の高い結果を得るべく、この場合はたとえばトルクレンチによって、ナットに対して所定のトルクを与えるべきである。これは一方では拡張スリーブの十分な拡張を確実なものにするために、また他方では拡張機構に対する潜在的に不利になる余分な応力を防ぐためである。
【0004】
特許文献2から、別の拡張アンカーが公知となっている。この拡張アンカーにおいて、拡張スリーブを拡張するためのアンカーボルトの抜き出しは、ばね要素によって達成される。公知の拡張アンカーは、付勢されたばね要素によって貫通孔に挿入される。保持機構が続いて解除され、ばね要素が解放される。
【0005】
包括的な(generic)拡張アンカーは特許文献3から知ることができる。この文献は、アンカーが挿入された時に貫通孔内に張設されて拡張機構を作動させるばね要素を有する登山スポーツ用の拡張アンカーを記載している。
【0006】
特許文献4、特許文献5および特許文献6は、たとえ設置操作の後で基材内の構造的な変化が生じた場合でもアンカー内の付勢を保持することができるばね要素を有する拡張アンカーを記載する。別のばね要素を有する拡張アンカーは特許文献7および特許文献8から公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許公開公報第1892424号明細書
【特許文献2】独国特許公開公報第10106844号明細書
【特許文献3】国際公開第9732631号明細書
【特許文献4】独国特許第3331097号明細書
【特許文献5】米国特許公開公報第1583849号明細書
【特許文献6】独国特許公開公報第3022011号明細書
【特許文献7】欧州特許第0461790号明細書
【特許文献8】独国実用新案第7334026号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に最低限の労力と低いコストで、特に簡単に、しかし高い信頼性で設置することができる拡張アンカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的は請求項1の特徴を有する拡張アンカーによって達成される。好適な特定の形態は、従属請求項から明らかになる。
【0010】
本発明によると、拡張アンカーであって、拡張部分を有するアンカーボルトと、拡張スリーブであって、アンカーボルトを包囲するとともに拡張部分の引き込みによって拡張可能である、拡張スリーブと、アンカーボルト上に設けられたばね要素であって、アンカーボルトを貫通孔内に挿入することで張設され得るとともに、続いて張力が解除されるとアンカーボルトの拡張部分を拡張スリーブ内に引き込ませることができる、ばね要素と、を備えるものに、指標要素が設けられており、この指標要素は、ばね要素の設定張力が達成されたときを示す。
【0011】
本発明に係る第1の基本的な概念は、拡張アンカーにばね要素を嵌合させることであろう。ばね要素は、アンカーが貫通孔に挿入されると圧縮し、その工程中のエネルギーを吸収する。この吸収されたエネルギーは、後続のばね要素の解放およびアンカーの貫通孔への固定の際に拡張アンカーの拡張機構を作動させる。したがって、アンカーの挿入も拡張機構の活性化も、本発明によれば、軸方向力のみによって行うことができる。したがって、アンカーを設置するために、唯一のツール、たとえばハンマーのみが必要となり、レンチなどは不要にすることができる。このようにして、ナットなどを用いるトルク制御による設置操作と比べて、設置操作を大幅に簡略化することができる。
【0012】
これに基づいて、本発明によれば、本発明に係るばね要素の状態を計測することによって、特に簡単かつ信頼できる方法で、拡張機構が正しく作動されたかどうか、つまり、アンカーが適切に設置されたかどうかを確忍できる。いったんアンカーが設置されると、拡張機構の中核部分、つまり拡張部分および拡張スリーブは、実際には、貫通孔に少なくとも部分的に隠れ、手が届かないところにあるので、直接の設置チェックは簡単ではない。しかしながら、本発明によれば、一方では、本発明に係るばね要素によって、設置操作に関与する追加の部材がもたらされるので、設置操作について結論を出すことができる、また他方では、設置操作中に少なくとも部分的にばね要素が貫通孔の外側に存在し続けるので、設置チェックには特に便利である。このような知見に基づいて、本発明は、ばね要素を計測するとともに特にばね要素内で設定張力が達成されたかどうかを示す指標要素を開示する。本発明によると、拡張機構は少なくとも部分的にばね要素内に蓄積されたエネルギーによって作動されるので、ばね要素内の最大張力は、拡張機構がどの程度まで作動したかということに関して特に信頼できる指標である。ばね張力は基本的にばねたわみに直接関連してもいるので、ばね要素のたわみを計測することによって特に簡単な方法で設置操作をチェックし得る。したがって、ばね要素に関連する本発明に係る指標要素は、特に簡素な手段を用いて特に信頼性の高い設置チェックを行うことを可能にする。
【0013】
本発明によると、ばね要素がその設定張力に達したことを示す指標要素が設けられる。一般に、ばね張力はばねのたわみに直接関連しているので、代替的な記載では、設定のためのばねたわみに達したことを示す指標要素を設け得る。
【0014】
指標要素は、拡張アンカーの一体化された一部であるのが好ましい。したがって、中核部分となるアンカーはそれ自体の指標要素を有しており、これによって取り扱いが極めて簡単になる。したがって、特に、指標要素がアンカーボルトに機械的に接続されるようにしてもよい。
【0015】
指標要素がばね要素上に設けられていることが特に好ましい。これによって、高い信頼性を持つとともに、構造的に特に簡素で小型の設計が可能になり得る。
【0016】
ばね要素が少なくとも1つの円板ばねを有するものであっても都合がよい。円板ばねは、拡張部分と拡張スリーブとから成る拡張機構が信頼性高く作動するのに特に適したばね特性を有する。さらに、円板ばね上で設定のためのばね張力に達したことを特に簡単に確忍できる。
【0017】
たとえば、指標要素が指標リングを有するようにしてもよい。この指標リングは、円板ばねに連結されており、設定張力に達すると少なくとも部分的に円板ばねから離脱する。たとえば、指標リングは、円板ばねに接着されていてもよい。円板ばねに張力をかけると、結果として、円板ばねの変形につながり、よって、指標リングと円板ばねとの間の結合部分の緊張(stress)となる。設定張力に達すると、指標リングと円板ばねとの間の一体状の結合部が弛緩し、指標リングは、少なくとも部分的に解放される。このことは、適切な設定操作がなされたことを示す。しかしながら、指標要素は、設定されたばねのたわみに達するとアンカーボルトに接続された指標要素に打撃を与える所定の要素、たとえばナットなどの結果として作動されてもよい。その結果、たとえば、指標要素の一部が分離されるか、色カートリッジが破壊され得る。したがって、指標要素は、本発明によると、ばね要素の変形によって、または、アンカーボルトに連結される要素、特にアンカーボルトに設けられているナットの衝撃によって作動されてもよい。
【0018】
円板ばねおよび/または指標リングがアンカーボルトを包囲するようにすると特に都合がよい。このようにして、特に小型の構成が達成できる。
【0019】
特に、円板ばねは、設定張力に達すると完全に平坦になるように構成され得る。このようにして、設定張力に達したことを確忍することが特に簡単になり得る。
【0020】
アンカーボルトを貫通孔に挿入することでばね要素に張力をかけることができるようにするために、また、続いて弛緩したときにばね要素によってアンカーボルトの拡張部分が拡張スリーブに引き込まれることができるようにするために、アンカーボルトは、本発明によると、ばね要素用の支持部を有する。ばね要素は、留付される部材との接触のためのまたは貫通孔の開口部に直接接触するための支持部とは反対側に設けられると都合がよく、それにより、ばね要素は、アンカーボルトの支持部と部材または貫通孔の開口部との間で締め付けられ得る。
【0021】
支持部は、アンカーボルト上に配置されているナットによって形成されることが好ましい。したがって、アンカーボルト上に配置されているばね要素を張設するためのナットは、ばね要素に対して作用する。同じナットが、指標要素も作動させ得ることが好ましい。しかしながら、基本的に、他の要素を支持部として用いてもよい。追加の要素、たとえば座金を、支持部とばね要素との間に設けてもよい。
【0022】
本発明は、特に拡張アンカーに適している。この拡張アンカーは、いわゆるスタッドアンカーとして構成されている。このスタッドアンカーでは、拡張スリーブは、比較的短尺であり、意図した設置操作の後に貫通孔を超えることがない。拡張スリーブを拡張するために必要となる拡張スリーブの貫通孔への軸方向の固定は、スタッドアンカーにおいては、主に、貫通孔内壁とスリーブとの間の接触、特に摩擦力によって行われる。このようなスタッドアンカーの場合、拡張スリーブは設置後にはほぼ完全に貫通孔の内部に存在するので、このような種類のアンカーについて、拡張スリーブ自体の設置をチェックすることは特に難しい。本発明に係る外部ばね要素の上の支持要素による設置チェックは、そのような場合においても、簡素な設置チェックを実行する可能性を生み出す。
【0023】
スタッドアンカーは、一般的に、特に成形された停止部が、アンカーボルトの特に拡張部分とは反対側にある拡張スリーブの側面に設けられており、拡張部分を超える拡張スリーブのずれを限定するという点で特徴づけられる。つまり、このことによって、アンカーボルトとともに比較的短尺の拡張スリーブが貫通孔に深く挿入できるようになる。本発明にかかるアンカーは、この特徴を備えることができると都合がよい。停止部は、構成上環状だと都合がよく、たとえば環状停止部または環状縁部として形成され得る。
【0024】
ばね要素が漸減ばね特性(degressive spring characteristic)を有することも好ましい。つまり、漸減ばね特性の場合、広いばねたわみにわたって強い力を保持することができ、よって、たとえ拡張スリーブが設置の間貫通孔に向かってある程度すべり戻ったとしても、拡張機構が高い信頼性で作動することが保証され得る。特にこれを背景として、ばね要素は少なくとも1つの円板ばねを有すると効果的であり得る。この1つの円板ばねによって漸減ばね特性を特に簡単な方法で得ることができるからである。
【0025】
アンカーボルトは、負荷付与手段、たとえばねじ山、または、アンカーボルト内に軸方向張力を導入するための頭部を有することが好ましい場合があり得る。負荷付与手段は、アンカーボルトの拡張部分とは反対側の端部部分に配置されていると効果的である。アンカーを設置するために、特にアンカーボルトを拡張スリーブとともに貫通孔に挿入することおよび/またはばね装置を締め付けるために、アンカーボルト内に軸方向衝撃力を加えることは、アンカーボルトの正面に、たとえばハンマーの一撃をそのアンカーボルトの正面に与えることによって行い得る。
【0026】
アンカーボルトは、拡張部分内で拡張スリーブまたは負荷付与手段に向かって徐々に細くなっていると都合がよい。アンカーボルトの拡張部分は、特に円錐形であり得る。拡張部分が拡張スリーブを変形させることができるようにするために、アンカーボルトは断面外周を有する。これは、拡張スリーブの変形されていない断面内周よりも大きい。
【0027】
「軸方向」および「径方向」という言葉が本明細書で使用された場合、これらは、特に通常の技術的な意味におけるアンカーボルトの長手方向軸に関してであり得る。
【0028】
本発明は、貫通孔が形成された基材、特にコンクリート基材から成る構成と、貫通孔内に格納される本発明に係る拡張アンカーと、にも関する。この構成における拡張スリーブは、貫通孔内の拡張アンカーを固定するのに都合がよい。
【0029】
本発明は、さらに、本発明に係る拡張アンカーを設置するための方法に関する。貫通孔が基材に設けられており、拡張アンカーの拡張スリーブが、軸方向力をアンカーボルトに加えることによって貫通孔に打ち込まれ、拡張アンカーのばね要素が、軸方向力をアンカーボルトに与えることによって設定張力まで張設され、設定張力に達したことを指標要素が示し、アンカーボルトの拡張部分は、ばね要素に蓄積されたエネルギーによって拡張スリーブ内に引き込まれ、それにより、拡張スリーブが径方向に拡張するとともに貫通孔内で拡張アンカーを固定する。
【0030】
以下、添付の図面に概略的に示す例示的な好適な実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】設置操作中の特定の時点における本発明に係る拡張アンカーの実施例を概略的に示す図である。
図2】設置操作中の特定の時点における本発明に係る拡張アンカーの実施例を概略的に示す図である。
図3】設置操作中の特定の時点における本発明に係る拡張アンカーの実施例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1ないし図3は、本発明に係る拡張アンカー1の実施例を示す。拡張アンカーは、長尺アンカーボルト10を含む。この長尺アンカーボルトの外側面には、外部ねじ山11として実施されている負荷付与手段11が存在する。対応のナット20が、アンカーボルト10のこのねじ山11にねじ込まれている。
【0033】
拡張アンカー1は、拡張スリーブ30も含む。この拡張スリーブは、アンカーボルト10を環状に包囲する。ねじ山11とは反対を向いている拡張スリーブ30の側面には、スリットによって間隔をあけて配置されている複数の拡張フラップ31が設けられている。この拡張フラップは、拡張アンカー1を固設させるために径方向外方に拡張可能に設けられている。
【0034】
アンカーボルト10は、ねじ山11と反対の端部部分に拡張部分13を含む。拡張部分13において、アンカーボルト10との横断面部は、たとえば、拡張スリーブ30から離れるにしたがって円錐形状に拡大し、それにより、拡張部分13が、拡張スリーブ30に軸方向に引き込まれると、拡張スリーブ30、特に拡張フラップ31を径方向に拡張できるようになる。
【0035】
拡張部分13とは反対側の拡張スリーブ30の側面に、アンカーボルト10はその外面にたとえば環状の段部として設計された拡張スリーブ30用の停止部12を備える。この停止部12は、アンカーボルト10の負荷付与手段、たとえばねじ山11に向かう拡張スリーブ30の軸方向運動を制限する。
【0036】
拡張アンカー1は、円板ばね51を有するばね要素50も備える。アンカーボルト10は、円板ばね51を通して導かれる。この場合、ナット20は、円板ばね51の軸方向支持部を形成する。円板ばね51は、図示の実施例では、ナット20に直接隣接して配置されている。基本的に、別の要素、たとえば座金が、円板ばね51とナット20との間に存在していてもよい。特に、円板ばね51は、アンカーボルト10上のねじ山11の位置に存在してもよい。図示の実施例では、円板ばね51は、径方向内方に延在する複数のばね舌部55を備えて成る(図3)。
【0037】
拡張アンカー1は、指標リング61を有する指標要素60も備える。この指標要素は、アンカーの配置状態(図1)では、ナット20に面する円板ばね51の側面上に存在する。いったん円板ばね51が設定張力になるよう付勢されると、指標リング61は、円板ばね51から離脱する(図2)。
【0038】
図1から図3までは、本発明に係る設置方法の範囲内での拡張アンカー1の設置操作を概略的に示している。
【0039】
貫通孔4が、当初から基材3に設けられている。拡張アンカー1のアンカーボルト10は、固定すべき部材7の開口部を通して導き入れられる。その後、アンカーボルト10は、たとえばハンマー正面の一撃によって貫通孔4内に挿入される。この工程中、拡張スリーブ30も、貫通孔4内に挿入される。なぜなら、ねじ山11に対する拡張スリーブ30の相対運動が、停止部12によって妨げられるからである。ばね要素50用の第1の支持部を形成するナット20は、挿入されると、基材3に次第に近づくように前進して、基材3が部材7を介して最終的にばね要素50用の対向支持部
となる。この状態が図1に示されている。
【0040】
仮に、たとえば、追加のハンマーの一撃を、図2に概略的に示すハンマー9によってアンカーボルト10の正面に対して加えると、その結果としてアンカーボルト10が貫通孔4により深く進入し、ばね要素50は、ナット20と基材3との間で圧縮される。つまり、ハンマーの一撃のエネルギーが、ばね要素50に蓄積される。この工程中に、ばね要素50内で設定張力に達すると、図2に示すように、指標リング61が、ばね要素50から離脱する。したがって、指標要素60の反応は、設定張力に達したという証拠である。
【0041】
ハンマーの一撃の終了時に、ばね要素50は、図3に示すように、再び弛緩してもよい。この場合、ばね要素は、ナット20を所定の間隔だけ基材3から離れるように動かす。そして、このようにして、アンカーボルト10は貫通孔4から所定の間隔だけ引き出される。しかしながら、この工程中、拡張スリーブ30は、貫通孔4の内壁との相互作用(接触)によって、貫通孔4の背後に存在し続ける。結果として、アンカーボルト10と拡張スリーブ30との間で軸方向相対運動が生じる。この間、拡張部分13は、拡張スリーブ30内に引き込まれる。このようにして、拡張スリーブ30は、径方向に拡張し、拡張アンカー1は、基材3に固定される。
【0042】
拡張スリーブ30の径方向に拡張するエネルギーは、ばね要素50から生じる。したがって、ばね要素50の状態を示す指標要素60の状態によって、設置操作の完全性に関する結論を出すことができる。
図1
図2
図3