【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的は請求項1の特徴を有する拡張アンカーによって達成される。好適な特定の形態は、従属請求項から明らかになる。
【0010】
本発明によると、拡張アンカーであって、拡張部分を有するアンカーボルトと、拡張スリーブであって、アンカーボルトを包囲するとともに拡張部分の引き込みによって拡張可能である、拡張スリーブと、アンカーボルト上に設けられたばね要素であって、アンカーボルトを貫通孔内に挿入することで張設され得るとともに、続いて張力が解除されるとアンカーボルトの拡張部分を拡張スリーブ内に引き込ませることができる、ばね要素と、を備えるものに、指標要素が設けられており、この指標要素は、ばね要素の設定張力が達成されたときを示す。
【0011】
本発明に係る第1の基本的な概念は、拡張アンカーにばね要素を嵌合させることであろう。ばね要素は、アンカーが貫通孔に挿入されると圧縮し、その工程中のエネルギーを吸収する。この吸収されたエネルギーは、後続のばね要素の解放およびアンカーの貫通孔への固定の際に拡張アンカーの拡張機構を作動させる。したがって、アンカーの挿入も拡張機構の活性化も、本発明によれば、軸方向力のみによって行うことができる。したがって、アンカーを設置するために、唯一のツール、たとえばハンマーのみが必要となり、レンチなどは不要にすることができる。このようにして、ナットなどを用いるトルク制御による設置操作と比べて、設置操作を大幅に簡略化することができる。
【0012】
これに基づいて、本発明によれば、本発明に係るばね要素の状態を計測することによって、特に簡単かつ信頼できる方法で、拡張機構が正しく作動されたかどうか、つまり、アンカーが適切に設置されたかどうかを確忍できる。いったんアンカーが設置されると、拡張機構の中核部分、つまり拡張部分および拡張スリーブは、実際には、貫通孔に少なくとも部分的に隠れ、手が届かないところにあるので、直接の設置チェックは簡単ではない。しかしながら、本発明によれば、一方では、本発明に係るばね要素によって、設置操作に関与する追加の部材がもたらされるので、設置操作について結論を出すことができる、また他方では、設置操作中に少なくとも部分的にばね要素が貫通孔の外側に存在し続けるので、設置チェックには特に便利である。このような知見に基づいて、本発明は、ばね要素を計測するとともに特にばね要素内で設定張力が達成されたかどうかを示す指標要素を開示する。本発明によると、拡張機構は少なくとも部分的にばね要素内に蓄積されたエネルギーによって作動されるので、ばね要素内の最大張力は、拡張機構がどの程度まで作動したかということに関して特に信頼できる指標である。ばね張力は基本的にばねたわみに直接関連してもいるので、ばね要素のたわみを計測することによって特に簡単な方法で設置操作をチェックし得る。したがって、ばね要素に関連する本発明に係る指標要素は、特に簡素な手段を用いて特に信頼性の高い設置チェックを行うことを可能にする。
【0013】
本発明によると、ばね要素がその設定張力に達したことを示す指標要素が設けられる。一般に、ばね張力はばねのたわみに直接関連しているので、代替的な記載では、設定のためのばねたわみに達したことを示す指標要素を設け得る。
【0014】
指標要素は、拡張アンカーの一体化された一部であるのが好ましい。したがって、中核部分となるアンカーはそれ自体の指標要素を有しており、これによって取り扱いが極めて簡単になる。したがって、特に、指標要素がアンカーボルトに機械的に接続されるようにしてもよい。
【0015】
指標要素がばね要素上に設けられていることが特に好ましい。これによって、高い信頼性を持つとともに、構造的に特に簡素で小型の設計が可能になり得る。
【0016】
ばね要素が少なくとも1つの円板ばねを有するものであっても都合がよい。円板ばねは、拡張部分と拡張スリーブとから成る拡張機構が信頼性高く作動するのに特に適したばね特性を有する。さらに、円板ばね上で設定のためのばね張力に達したことを特に簡単に確忍できる。
【0017】
たとえば、指標要素が指標リングを有するようにしてもよい。この指標リングは、円板ばねに連結されており、設定張力に達すると少なくとも部分的に円板ばねから離脱する。たとえば、指標リングは、円板ばねに接着されていてもよい。円板ばねに張力をかけると、結果として、円板ばねの変形につながり、よって、指標リングと円板ばねとの間の結合部分の緊張(stress)となる。設定張力に達すると、指標リングと円板ばねとの間の一体状の結合部が弛緩し、指標リングは、少なくとも部分的に解放される。このことは、適切な設定操作がなされたことを示す。しかしながら、指標要素は、設定されたばねのたわみに達するとアンカーボルトに接続された指標要素に打撃を与える所定の要素、たとえばナットなどの結果として作動されてもよい。その結果、たとえば、指標要素の一部が分離されるか、色カートリッジが破壊され得る。したがって、指標要素は、本発明によると、ばね要素の変形によって、または、アンカーボルトに連結される要素、特にアンカーボルトに設けられているナットの衝撃によって作動されてもよい。
【0018】
円板ばねおよび/または指標リングがアンカーボルトを包囲するようにすると特に都合がよい。このようにして、特に小型の構成が達成できる。
【0019】
特に、円板ばねは、設定張力に達すると完全に平坦になるように構成され得る。このようにして、設定張力に達したことを確忍することが特に簡単になり得る。
【0020】
アンカーボルトを貫通孔に挿入することでばね要素に張力をかけることができるようにするために、また、続いて弛緩したときにばね要素によってアンカーボルトの拡張部分が拡張スリーブに引き込まれることができるようにするために、アンカーボルトは、本発明によると、ばね要素用の支持部を有する。ばね要素は、留付される部材との接触のためのまたは貫通孔の開口部に直接接触するための支持部とは反対側に設けられると都合がよく、それにより、ばね要素は、アンカーボルトの支持部と部材または貫通孔の開口部との間で締め付けられ得る。
【0021】
支持部は、アンカーボルト上に配置されているナットによって形成されることが好ましい。したがって、アンカーボルト上に配置されているばね要素を張設するためのナットは、ばね要素に対して作用する。同じナットが、指標要素も作動させ得ることが好ましい。しかしながら、基本的に、他の要素を支持部として用いてもよい。追加の要素、たとえば座金を、支持部とばね要素との間に設けてもよい。
【0022】
本発明は、特に拡張アンカーに適している。この拡張アンカーは、いわゆるスタッドアンカーとして構成されている。このスタッドアンカーでは、拡張スリーブは、比較的短尺であり、意図した設置操作の後に貫通孔を超えることがない。拡張スリーブを拡張するために必要となる拡張スリーブの貫通孔への軸方向の固定は、スタッドアンカーにおいては、主に、貫通孔内壁とスリーブとの間の接触、特に摩擦力によって行われる。このようなスタッドアンカーの場合、拡張スリーブは設置後にはほぼ完全に貫通孔の内部に存在するので、このような種類のアンカーについて、拡張スリーブ自体の設置をチェックすることは特に難しい。本発明に係る外部ばね要素の上の支持要素による設置チェックは、そのような場合においても、簡素な設置チェックを実行する可能性を生み出す。
【0023】
スタッドアンカーは、一般的に、特に成形された停止部が、アンカーボルトの特に拡張部分とは反対側にある拡張スリーブの側面に設けられており、拡張部分を超える拡張スリーブのずれを限定するという点で特徴づけられる。つまり、このことによって、アンカーボルトとともに比較的短尺の拡張スリーブが貫通孔に深く挿入できるようになる。本発明にかかるアンカーは、この特徴を備えることができると都合がよい。停止部は、構成上環状だと都合がよく、たとえば環状停止部または環状縁部として形成され得る。
【0024】
ばね要素が漸減ばね特性(degressive spring characteristic)を有することも好ましい。つまり、漸減ばね特性の場合、広いばねたわみにわたって強い力を保持することができ、よって、たとえ拡張スリーブが設置の間貫通孔に向かってある程度すべり戻ったとしても、拡張機構が高い信頼性で作動することが保証され得る。特にこれを背景として、ばね要素は少なくとも1つの円板ばねを有すると効果的であり得る。この1つの円板ばねによって漸減ばね特性を特に簡単な方法で得ることができるからである。
【0025】
アンカーボルトは、負荷付与手段、たとえばねじ山、または、アンカーボルト内に軸方向張力を導入するための頭部を有することが好ましい場合があり得る。負荷付与手段は、アンカーボルトの拡張部分とは反対側の端部部分に配置されていると効果的である。アンカーを設置するために、特にアンカーボルトを拡張スリーブとともに貫通孔に挿入することおよび/またはばね装置を締め付けるために、アンカーボルト内に軸方向衝撃力を加えることは、アンカーボルトの正面に、たとえばハンマーの一撃をそのアンカーボルトの正面に与えることによって行い得る。
【0026】
アンカーボルトは、拡張部分内で拡張スリーブまたは負荷付与手段に向かって徐々に細くなっていると都合がよい。アンカーボルトの拡張部分は、特に円錐形であり得る。拡張部分が拡張スリーブを変形させることができるようにするために、アンカーボルトは断面外周を有する。これは、拡張スリーブの変形されていない断面内周よりも大きい。
【0027】
「軸方向」および「径方向」という言葉が本明細書で使用された場合、これらは、特に通常の技術的な意味におけるアンカーボルトの長手方向軸に関してであり得る。
【0028】
本発明は、貫通孔が形成された基材、特にコンクリート基材から成る構成と、貫通孔内に格納される本発明に係る拡張アンカーと、にも関する。この構成における拡張スリーブは、貫通孔内の拡張アンカーを固定するのに都合がよい。
【0029】
本発明は、さらに、本発明に係る拡張アンカーを設置するための方法に関する。貫通孔が基材に設けられており、拡張アンカーの拡張スリーブが、軸方向力をアンカーボルトに加えることによって貫通孔に打ち込まれ、拡張アンカーのばね要素が、軸方向力をアンカーボルトに与えることによって設定張力まで張設され、設定張力に達したことを指標要素が示し、アンカーボルトの拡張部分は、ばね要素に蓄積されたエネルギーによって拡張スリーブ内に引き込まれ、それにより、拡張スリーブが径方向に拡張するとともに貫通孔内で拡張アンカーを固定する。
【0030】
以下、添付の図面に概略的に示す例示的な好適な実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。