特許第5975612号(P5975612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975612
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】仮固定用のボス及び電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/08 20060101AFI20160809BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20160809BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   H02G3/08
   H02G3/16
   B60R16/02 610J
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-182187(P2011-182187)
(22)【出願日】2011年8月24日
(65)【公開番号】特開2013-46483(P2013-46483A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年7月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正信
(72)【発明者】
【氏名】白岩 浩記
(72)【発明者】
【氏名】津久井 重治
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−166780(JP,A)
【文献】 特開平09−190860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
B60R 16/02
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱本体を取付け側の第1の取付け部に取り付ける第1の被取付け部と、
前記取付け側の第2の取付け部に取り付けられるとともに、該第2の取付け部に取り付けられるまでの間、前記第1の取付け部に取り付けられた前記第1の被取付け部を支点として回動する第2の被取付け部と、を具備してなり、
前記取付け側に設けられた挿入孔の径よりも小さい径を有する軸部と、
該軸部の一端部において該軸部の外周面上から全周に亘って一ないし複数段に張り出されて設けられており、前記軸部の径よりも大きく、且つ前記挿入孔の径よりも小さい径を有する張出し部と、
該張出し部の外周面上から突設されており、前記軸部の径方向における前記軸部の軸芯から最も突出した先端までの距離が、前記軸芯から前記張出し部の最も張り出した先端までの距離よりも大きく、且つ前記軸芯を前記挿入孔の中心に揃えて配置した際の前記軸芯から前記挿入孔の内縁までの距離よりも小さい爪部と、
を備える仮固定用のボスが、前記第2の被取付け部に近接して設けられているとともに、前記取付け側の前記第2の取付け部に近接して設けられた仮固定用の前記挿入孔に前記ボスが前記一端部側から挿入されて前記第2の被取付け部の回動が抑制されることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記第1の被取付け部及び前記第2の被取付け部は、前記電気接続箱本体を間に介して互いに反対側に位置して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記爪部は、前記軸部の径方向のうち前記第1の被取付け部から前記第2の被取付け部に向かう方向に沿った方向の両外側に少なくとも1個ずつ突設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記各爪部のうち前記第1の被取付け部からより遠い側の前記爪部が前記ボスの先端側に設けられているとともに、前記第1の被取付け部により近い側の前記爪部が前記ボスの基端側に設けられており、前記ボスの軸芯と前記挿入孔の中心との位置ずれに応じて、前記先端側の爪部及び前記基端側の爪部のいずれか一方が前記基端側から前記挿入孔の内縁部と当接することを特徴とする請求項3に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば自動車などの車両への各種装置の取り付け技術に係り、特にリレーやヒューズなどの電気部品を収容する電気接続箱の取り付け技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図示を伴う具体的かつ詳細な説明は省略するが、例えば自動車メーカーの車両生産ラインにおいて、ジャンクションボックス(J/B)などの電気接続箱を車体に取り付ける際には、通常、下足(下側)からネジ締めを行う。この際、電気接続箱自身の重みにより、上足側が車体側の取付け箇所から離れてしまう。また、例えば下記特許文献1に開示されているように、構造上の理由などにより電気接続箱を車体に直接取り付けることができない場合には、板金ブラケットなどを介して電気接続箱を車体に間接的に取り付ける。しかし、この場合においても、電気接続箱をその下足(下側)から板金ブラケットに組み付けるので、上足側の板金ブラケットが電気接続箱から浮き上がってしまう。これらの結果、現場の作業員が自分の手で電気接続箱を支えつつ取り付け作業を行う必要が生じ、作業性が悪かった。
【0003】
この問題を解決するために、現状では、例えば下記特許文献2、3に開示されているように、電気接続箱の乖離や板金ブラケットの浮き上がりを防止する技術が提案されている。これらの技術においては、電気接続箱をブラケットや車体に仮固定させるための係止突起やボスを設けるとともに、それらに外れ防止のための爪やリングを形成している。このような構造により、板金ブラケットの浮き上がり等は生じ難くなっている。
【0004】
しかし、爪やリングを形成する際にそれらの大きさにばらつきが生じて、爪やリングを挿入する孔の縁部との重なり(ラップ量)が大きくなると、挿入時の抵抗が大きくなる。すると、大きな挿入力が必要となり、挿入し難くなってしまう。場合によっては、爪やリングが潰れてしまい、再利用できなくなってしまう。また逆に、爪やリングが小さ過ぎると、挿入し易いが十分な保持力を発揮することができない。このため、製品によっては板金ブラケットの浮き上がり等が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186083号公報
【特許文献2】特開平8−256419号公報
【特許文献3】特開2010−166780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、これまでの技術では、電気接続箱を仮固定する部材の大きさや形状のばらつきに応じて、挿入時の抵抗が大きくなったり、あるいは保持力が弱くなったりするおそれがあった。挿入時の抵抗が大きくなると、より大きな力が必要となるので取り付け作業を行い難くなる。また、保持力が弱くなると、板金ブラケットが外れ易くるので、同様に取り付け作業を行い難くなる。このように、これまでの技術では、電気接続箱を取り付ける際の作業性が悪かった。
【0007】
本願発明は、以上説明した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、作業性の向上が図られた仮固定用のボス及び電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項に係る電気接続箱は、電気接続箱本体を取付け側の第1の取付け部に取り付ける第1の被取付け部と、前記取付け側の第2の取付け部に取り付けられるとともに、該第2の取付け部に取り付けられるまでの間、前記第1の取付け部に取り付けられた前記第1の被取付け部を支点として回動する第2の被取付け部と、を具備してなり、前記取付け側に設けられた挿入孔の径よりも小さい径を有する軸部と、該軸部の一端部において該軸部の外周面上から全周に亘って一ないし複数段に張り出されて設けられており、前記軸部の径よりも大きく、且つ前記挿入孔の径よりも小さい径を有する張出し部と、該張出し部の外周面上から突設されており、前記軸部の径方向における前記軸部の軸芯から最も突出した先端までの距離が、前記軸芯から前記張出し部の最も張り出した先端までの距離よりも大きく、且つ前記軸芯を前記挿入孔の中心に揃えて配置した際の前記軸芯から前記挿入孔の内縁までの距離よりも小さい爪部と、を備える仮固定用のボスが、前記第2の被取付け部に近接して設けられているとともに、前記取付け側の前記第2の取付け部に近接して設けられた仮固定用の前記挿入孔に前記ボスが前記一端部側から挿入されて前記第2の被取付け部の回動が抑制されることを特徴とするものである。
【0019】
このような構造からなる本願請求項に係る電気接続箱においては、取付け側の第2の取付け部に取り付けられるまでの間、取付け側の第1の取付け部に取り付けられた第1の被取付け部を支点として回動する第2の被取付け部に近接して、仮固定用のボスが設けられている。そして、取付け側の第2の取付け部に近接して設けられた仮固定用の挿入孔に、仮固定用のボスを一端部側から挿入することにより、第2の被取付け部の回動を抑制する。ここで、仮固定用のボスは、挿入孔に挿入し易く、且つ挿入孔から抜け難い構造となっている。これにより、第2の被取付け部は、その回動を抑制され易くなっているので、第2の取付け部に取り付け易くなっている。ひいては、仮固定された電気接続箱の回動を抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業が行い易くなっている。
【0020】
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項に係る電気接続箱は、本願の請求項に記載の電気接続箱において、前記第1の被取付け部及び前記第2の被取付け部は、前記電気接続箱本体を間に介して互いに反対側に位置して設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
このような構造からなる本願請求項に係る電気接続箱においては、第1の被取付け部及び第2の被取付け部は、第2の被取付け部が第1の被取付け部を支点として回動する場合、その回動の量が最も大きくなる位置にそれぞれ設けられている。しかし、挿入孔に挿入し易く、且つ挿入孔から抜け難い仮固定用のボスが、第2の被取付け部に近接して設けられているとともに、仮固定用の挿入孔が第2の取付け部に近接して設けられている。これにより、回動の量が最も大きくなる場合においても、第2の被取付け部は、その回動をより抑制され易くなっているので、第2の取付け部により取り付け易くなっている。ひいては、仮固定された電気接続箱の回動をより抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業がより行い易くなっている。
【0022】
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項に係る電気接続箱は、本願の請求項1または2に記載の電気接続箱において、前記爪部は、前記軸部の径方向のうち前記第1の被取付け部から前記第2の被取付け部に向かう方向に沿った方向の両外側に少なくとも1個ずつ突設されていることを特徴とするものである。
【0023】
このような構造からなる本願請求項に係る電気接続箱においては、少なくとも2個の爪部が軸部の周方向において互いに180°ずらされて設けられている。そして、それら2個の爪部は共に、第1の被取付け部を支点とする第2の被取付け部の回動の径方向に沿った方向上に配置されている。これにより、第1の被取付け部を支点として第2の被取付け部が回動した場合においても、仮固定用の挿入孔の内縁部がボスにより引っ掛かり易くなり、ボスが挿入孔からより抜け難くなる。したがって、第2の被取付け部は、その回動をより抑制され易くなっているので、第2の取付け部により取り付け易くなっている。ひいては、仮固定された電気接続箱の回動をより抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業がより行い易くなっている。
【0024】
さらに、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項に係る電気接続箱は、本願の請求項に記載の電気接続箱において、前記各爪部のうち前記第1の被取付け部からより遠い側の前記爪部が前記ボスの先端側に設けられているとともに、前記第1の被取付け部により近い側の前記爪部が前記ボスの基端側に設けられており、前記ボスの軸芯と前記挿入孔の中心との位置ずれに応じて、前記先端側の爪部及び前記基端側の爪部のいずれか一方が前記基端側から前記挿入孔の内縁部と当接することを特徴とするものである。
【0025】
このような構造からなる本願請求項に係る電気接続箱においては、少なくとも2個の爪部が、軸部の周方向において互いに180°ずらされて、第1の被取付け部を支点とする第2の被取付け部の回動の径方向に沿った方向上に配置されている。その上、ボスの挿入方向と実質的に略同一の軸部の軸方向において、径方向外側の爪部がより先端側に、また径方向内側の爪部がより基端側にずらされて設けられている。そして、先端側の爪部及び基端側の爪部のいずれか一方が、ボスの軸芯と挿入孔の中心との位置ずれに応じて、各爪部の基端側から挿入孔の内縁部と当接する。これにより、第1の被取付け部を支点として第2の被取付け部が回動した場合においても、仮固定用の挿入孔の内縁部がボスにさらに引っ掛かり易くなり、ボスが挿入孔からさらに抜け難くなる。したがって、第2の被取付け部は、その回動をさらに抑制され易くなっているので、第2の取付け部にさらに取り付け易くなっている。ひいては、仮固定された電気接続箱の回動をさらに抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業がさらに行い易くなっている。
【発明の効果】
【0026】
前述したように、本願請求項1に係る発明は、挿入孔に挿入し易く、且つ挿入孔から抜け難い。したがって、本願請求項1に係る発明によれば、作業性の向上が図られた仮固定用のボスを提供することができる。
【0027】
また、本願請求項2に係る発明は、挿入孔により挿入し易く、且つ挿入孔からより抜け難い。したがって、本願請求項2に係る発明によれば、作業性の向上がより図られた仮固定用のボスを提供することができる。
【0028】
また、本願請求項3に係る発明は、挿入孔により挿入し易く、且つ挿入孔からより抜け難い。したがって、本願請求項3に係る発明によれば、作業性の向上がより図られた仮固定用のボスを提供することができる。
【0029】
また、本願請求項4に係る発明は、挿入孔により挿入し易く、且つ挿入孔からより抜け難い。したがって、本願請求項4に係る発明によれば、作業性の向上がより図られた仮固定用のボスを提供することができる。
【0030】
また、本願請求項5に係る発明は、挿入孔により挿入し易く、且つ挿入孔からより抜け難い。したがって、本願請求項5に係る発明によれば、作業性の向上がより図られた仮固定用のボスを提供することができる。
【0031】
また、本願請求項6に係る発明は、仮固定された電気接続箱の回動を抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業が行い易くなっている。したがって、本願請求項6に係る発明によれば、作業性の向上が図られた電気接続箱を提供することができる。
【0032】
また、本願請求項7に係る発明は、仮固定された電気接続箱の回動をより抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業がより行い易くなっている。したがって、本願請求項7に係る発明によれば、作業性の向上がより図られた電気接続箱を提供することができる。
【0033】
また、本願請求項8に係る発明は、仮固定された電気接続箱の回動をより抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業がより行い易くなっている。したがって、本願請求項8に係る発明によれば、作業性の向上がより図られた電気接続箱を提供することができる。
【0034】
さらに、本願請求項9に係る発明は、仮固定された電気接続箱の回動をさらに抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業がさらに行い易くなっている。したがって、本願請求項9に係る発明によれば、作業性の向上がさらに図られた電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本願発明の一つの実施形態に係る仮固定用のボスを板金ブラケットの挿入孔に挿入した状態を示す側面図である。
図2図1に示す仮固定用のボスの軸芯と挿入孔の中心とが揃った状態で板金ブラケットが浮き上がる場合を示す側面図である。
図3図1に示す仮固定用のボスの軸芯に対して挿入孔の中心が上方にずれた状態で板金ブラケットが浮き上がる場合を示す側面図である。
図4図1に示す仮固定用のボスの軸芯に対して挿入孔の中心が下方にずれた状態で板金ブラケットが浮き上がる場合を示す側面図である。
図5】本願発明の一つの実施形態に係る電気接続箱を板金ブラケットに仮固定する前の状態を示す斜視図である。
図6】本願発明の一つの実施形態に係る電気接続箱を板金ブラケットに仮固定した状態を示す斜視図である。
図7図6に示す状態における仮固定用のボスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本願発明の一つの実施形態に係る仮固定用のボス及び電気接続箱について、図1図7を参照しつつ説明する。先ず、本願発明の一実施形態に係る仮固定用のボスの構成及び構造について、主に図1を参照して説明する。
【0037】
[仮固定用のボスの構成及び構造]
図1に示すように、本実施形態に係る仮固定用のボス1は、軸部2、張出し部3、及び爪部4を備えている。軸部2は、取付け側としての板金ブラケット5の仮固定部6に形成されている仮固定用の挿入孔7の径よりも小さい径を有している。また、本実施形態においては、軸部2は円柱形状に形成されている。それとともに、軸部2は、ボス1を挿入孔7に挿入し終えた状態においては、挿入孔7から突出する長さを有している。
【0038】
なお、図1及び後に参照する図2図4は、後述する電気接続箱8の第1の被取付け部11を支点とする第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向から臨んで示す側面図である。そして、図1図4に示す破線は、板金ブラケット5を電気接続箱8に取り付ける際の、挿入孔7の径方向における内縁部の両端7a,7bの移動軌跡を示している。また、図1図4に示す一点鎖線は、軸部2の軸芯Xを示している。さらに、図3及び図4に示す二点鎖線は、挿入孔7の中心の移動軌跡もしくは中心軸Yを示している。ただし、図1及び図2は、軸部2の軸芯Xが挿入孔7の中心軸Yに略一致している場合を示している。このため、図1及び図2においては、軸部2の軸芯Xを指す一点鎖線を用いて、軸芯Xと併せて挿入孔7の中心軸Yも表すこととする。それとともに、図1においては、破線は、挿入孔7の径方向における内縁部の両端7a,7bの移動軌跡を示すとともに、併せて挿入孔7の径方向の大きさを示すこととなる。
【0039】
張出し部3は、軸部2の一端部としての先端部2aにおいて、軸部2の外周面上から全周に亘って一ないし複数段に張り出されて設けられている。本実施形態においては、張出し部3は、ボス1の軸方向に沿って連続して3段に張り出されて、いわゆる蛇腹形状に形成されている。図1に示すように、張出し部3は、軸部2の径よりも大きく、且つ挿入孔7の径よりも小さい径を有している。それとともに、張出し部3は、軸部2の先端部2a側から他端部としての基端部2b側に向かうにつれて径が大きくなって形成されている。したがって、図1および後に参照する図7に示すように、本実施形態の張出し部3は、軸部2の先端部2a側から基端部2b側に向かって裾を引いて広がる円錐台を3段に重ねた形状に形成されている。それとともに、張出し部3は、図1に示すように、ボス1を挿入孔7に挿入し終えた状態においては、最も基端部2b側の張出し部3cが挿入孔7から突出する位置で軸部2に形成されている。
【0040】
爪部4は、張出し部3の外周面上から部分的に突出して設けられている。図1に示すように、突起形状からなる爪部4は、軸部2の軸芯Xから軸部2の径方向において最も突出した先端までの距離が、軸芯Xから張出し部3の最も張り出した先端までの距離よりも大きく形成されている。それとともに、爪部4は、軸部2の軸芯Xから軸部2の径方向において最も突出した先端までの距離が、軸芯Xを挿入孔7の中心軸Yに揃えて配置した際の軸芯Xから挿入孔7の内縁部7a,7bまでの距離よりも小さく形成されている。
【0041】
また、爪部4は、軸芯Xを対称中心として軸部2の径方向の両外側に少なくとも1個ずつ設けられている。それとともに、爪部4は、軸部2の軸方向に沿って互いにずらされて少なくとも2個設けられている。さらに、爪部4は、軸部2の先端部2a側から基端部2b側に向かうにつれて軸芯Xからの突出量が大きくなって形成されている。
【0042】
本実施形態においては、図1に示すように、2個の爪部4a,4bが、第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向上において、軸部2の軸芯Xを対称中心として互いに反対側に配置されている。したがって、2個の爪部4a,4bは、軸部2の周方向において互いに約180°ずらされて設けられている。また、各爪部4a,4bのうち、第2の被取付け部12の回動の径方向においてより外側の爪部4aが、軸部2のより先端部2a側に設けられている。そして、各爪部4a,4bのうち、第2の被取付け部12の回動の径方向においてより内側の爪部4bが、軸部2のより基端部2b側に設けられている。
【0043】
具体的には、外側の爪部4aは、3段からなる張出し部3a,3b,3cのうち最も先端部2a側の張出し部3aの外周面上に突設されている。これに対して、内側の爪部4bは、各張出し部3a,3b,3cのうち中間の張出し部3bから最も基端部2b側の張出し部3cにかけて、それら各張出し部3b,3cの外周面上に突設されている。また、各爪部4a,4bは、第2の被取付け部12の回動の径方向を中心として、ボス1の軸部2の周方向においてその順方向及び逆方向に沿ってそれぞれ所定の幅で広げられている。この所定の幅は、例えば第2の被取付け部12が回動する際にその径方向に直交する横方向にずれたとしても、そのずれを吸収して各爪部4a,4bが挿入孔7の内縁部のどこかに接触することができる大きさに設定されていればよい。このような構造によれば、各爪部4a,4bは、それらのいずれか一方が、ボス1の軸芯Xと挿入孔7の中心Yとの位置ずれに応じて挿入孔7の内縁部7a,7bと当接することができる。この際、各爪部4a,4bは、それらの基端部2b側から挿入孔7の内縁部7a,7bと当接する。
【0044】
より具体的には、先端側かつ外側の爪部4aは、挿入孔7の径方向両端の各内縁部7a,7bのうち、第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向上においてより外側の内縁部7aと基端部2b側から当接する。また、基端側かつ内側の爪部4bは、各内縁部7a,7bのうち、第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向上においてより内側の内縁部7bと基端部2b側から当接する。以下の説明においては、先端側かつ外側の爪部4aを外側爪部4aと称し、基端側かつ内側の爪部4bを内側爪部4bと称することとする。また、挿入孔7の径方向両端の各内縁部7a,7bのうち、内縁部7aを外側内縁部7aと称し、内縁部7bを内側内縁部7bと称することとする。
【0045】
以上説明した構成及び構造から成る仮固定用のボス1は、図1に示すように、電気接続箱8の箱本体9に設けられた被仮固定部10に、その基端部2b側から取り付けられている。被仮固定部10は、第2の被取付け部12に近接した位置に設けられている。ここで、近接した位置とは、一旦挿入孔7にボス1が挿入された後は、たとえ第2の被取付け部12の回動が生じても、ボス1が挿入孔7から抜けることなく第2の被取付け部12の回動を抑制することができる位置を意味する。あるいは、挿入孔7にボス1が挿入されているならば、第2の被取付け部12のずれや浮き上がり等の動きを抑制して第2の被取付け部12を第2の取付け部14に対向させて配置及び保持することができる位置を意味する。ひいては、ボス1を介して板金ブラケット5に電気接続箱8を仮固定したならば、第2の取付け部14に第2の被取付け部12を円滑に取り付けることができる位置を意味する。
【0046】
また、第2の被取付け部12の回動とは、具体的には、後述する取付け側5の第1の取付け部13に取り付けられた第1の被取付け部11を中心として、第2の被取付け部12が取付け側5の第2の取付け部14から離接する方向に沿って動くことを指す。この際、第1の被取付け部11から第2の被取付け部12に向かう方向が第2の被取付け部12の回動の径方向となる。さらに、この第2の被取付け部12の回動には、その径方向に直交する径方向の周りの360°の各方向に向かう横方向のずれや振動等も含まれる。かかる回動を抑制するためには、被仮固定部10が第2の被取付け部12に対して、例えば次に述べる要素を勘案して設けられていることが好ましい。
【0047】
被仮固定部10は、第1の被取付け部11から被仮固定部10までの距離と第1の被取付け部11から第2の被取付け部12までの距離との差を勘案して、第2の被取付け部12に近接して設けられることが好ましい。あるいは、被仮固定部10は、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向と第1の被取付け部11から第2の被取付け部12に向かう方向との角度の差を勘案して、第2の被取付け部12に近接して設けられることが好ましい。なお、これらの条件は、実際の製品の大きさや重さ、形状、あるいは予め決められた取り付け作業上の精度等に応じて、回動を抑制しうるべく適宜、適正な値に設定されればよい。すなわち、許容誤差の範囲内で適宜、適正な値に設定されればよい。
【0048】
また、軸部2の軸芯Xはボス1の軸芯でもある。また、軸部2の先端部2aおよび基端部2bは、それぞれボス1の先端部2aおよび基端部2bを指すものとする。さらに、本実施形態においては、挿入孔7は、第1の被取付け部11を支点とする第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向に延ばされた長円形状もしくは小判形状に形成されている。したがって、図1図4においては、挿入孔7の外側内縁部7aから内側内縁部7bまでの直線距離は、挿入孔7の長軸方向における径の大きさを示す。
【0049】
次に、仮固定用のボス1の作用について、図1図4を参照しつつ説明する。
【0050】
[仮固定用のボスの作用]
先ず、図1に示すように、板金ブラケット5を電気接続箱8に取り付ける場合について説明する。この場合、板金ブラケット5を図1中白抜き矢印で示す向きに沿って電気接続箱8に接近させ、ボス1を挿入孔7に挿入する。この際、ボス1の軸芯Xと挿入孔7の中心Yとを略一致させておく。前述した構造からなるボス1においては、その軸部2の径の大きさ、張出し部3の径の大きさ、及び軸部2の径方向に沿った外側爪部4aの外側面から内側爪部4bの外側面までの距離が、第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った挿入孔7の径の大きさよりも小さい。特に、ボス1の径方向において軸芯Xから最も外側に突出した各爪部4a,4bの外側面までの長さが、挿入孔7の中心軸Yから各内縁部7a,7bまでの距離よりも短く設定されている。また、各爪部4a,4bは、軸部2の先端部2a側から基端部2b側に向かうにつれて軸芯Xからの突出量が大きくなっている。さらには、各張出し部3a,3b,3cも、軸部2の先端部2a側から基端部2b側に向かうにつれて径が大きくなっている。
【0051】
このような構造によれば、ボス1を挿入孔7に挿入する際に、ボス1の各爪部4a,4bは挿入孔7の各内縁部7a,7bに接触し難い。すなわち、ボス1は、挿入孔7に挿入する際の抵抗が生じ難く、挿入力が増大するおそれが殆どない。したがって、ボス1は、挿入孔7に挿入し易い。
【0052】
図1に示すように、ボス1の張り出し部3のうち最も基端部2b側の張り出し部3cが挿入孔7から突出するまで板金ブラケット5を電気接続箱8に接近させる。続けて、電気接続箱8の第1の被取付け部11を板金ブラケット5にネジ止め等により固定する。これにより、電気接続箱8の板金ブラケット5への仮固定が完了する。
【0053】
次に、図2図4に示すように、電気接続箱8の板金ブラケット5への仮固定が完了した状態について説明する。先ず、図2に示すように、ボス1の軸芯Xと挿入孔7の中心Yとが略一致している状態について説明する。この状態を、電気接続箱8に対して板金ブラケット5がノミナルな位置にある、ともいう。このような状態において、電気接続箱8の重みで板金ブラケット5が撓んだりすると、第2の被取付け部12が第1の被取付け部11を支点として回動する。すると、板金ブラケット5は電気接続箱8から相対的に離れる。ここで、図2中白抜き矢印は、第2の被取付け部12が第1の被取付け部11を支点として回動する際に、板金ブラケット5が電気接続箱8から相対的に離れる向きを示す。かかる場合、挿入孔7の各内縁部7a,7bは、図2中破線で示す軌跡を描いて動く。すると、挿入孔7の内側内縁部7bはボス1とは接触しないが、外側内縁部7aはボス1の外側爪部4aにその基端部2b側から接触する。
【0054】
次に、図3に示すように、ボス1の軸芯Xが挿入孔7の中心Yに対して下方にずれた状態について説明する。ここで、下方とは、第1の被取付け部11を支点とする第2の被取付け部12の回動の径方向において、内側を指している。この状態は、電気接続箱8に対して板金ブラケット5が相対的に上方にずれた状態でもある。このような状態において、第2の被取付け部12が第1の被取付け部11を支点として回動すると、板金ブラケット5は図3中白抜き矢印で示す向きに沿って電気接続箱8から相対的に離れる。かかる場合、挿入孔7の各内縁部7a,7bは、図3中破線で示す軌跡を描いて動く。すると、板金ブラケット5がノミナルな位置にある場合とは逆に、挿入孔7の外側内縁部7aはボス1とは接触しないが、内側内縁部7bはボス1の内側爪部4bにその基端部2b側から接触する。
【0055】
次に、図4に示すように、ボス1の軸芯Xが挿入孔7の中心Yに対して上方にずれた状態について説明する。ここで、上方とは、第1の被取付け部11を支点とする第2の被取付け部12の回動の径方向において、外側を指している。この状態は、電気接続箱8に対して板金ブラケット5が相対的に下方にずれた状態でもある。このような状態において、第2の被取付け部12が第1の被取付け部11を支点として回動すると、板金ブラケット5は図4中白抜き矢印で示す向きに沿って電気接続箱8から相対的に離れる。かかる場合、挿入孔7の各内縁部7a,7bは、図3中破線で示す軌跡を描いて動く。すると、板金ブラケット5がノミナルな位置にある場合と同様に、挿入孔7の内側内縁部7bはボス1とは接触しないが、外側内縁部7aはボス1の最も基端部2b側の張り出し部3cにその基端部2b側から接触する。
【0056】
前述した構造からなるボス1においては、軸部2の先端部2aにおいてその外周面上から全周に亘って3段に張り出されて張出し部3が設けられている。それとともに、各張出し部3a,3b,3cの外周面上から2個の爪部4a,4bが突設されている。すなわち、ボス1には、張出し部3(3a,3b,3c)及び爪部4(4a,4b)が、ボス1と挿入孔7との隙間を狭める向きに突出して設けられている。このため、一旦ボス1を挿入孔7に挿入した後は、挿入孔7の内縁部7a,7bがボス1に引っ掛かり易くなり、ボス1が挿入孔7から抜け難い。
【0057】
特に、本実施形態のボス1においては、外側爪部4aと内側爪部4bとが、軸部2の周方向において互いに180°ずらされている。それとともに、外側爪部4aと内側爪部4bとは、挿入孔7へのボス1の挿入方向と実質的に略同一の軸部2の軸方向において互いにずらされている。また、外側爪部4a及び内側爪部4bは、軸部2の先端部2a側から基端部2b側に向かうにつれて軸芯Xからの突出量が大きくなっている。さらには、各張出し部3a,3b,3cも、軸部2の先端部2a側から基端部2b側に向かうにつれて径が大きくなっている。
【0058】
このような構造によれば、一旦ボス1を挿入孔7に挿入した後は、たとえ前述したように板金ブラケット5が電気接続箱8から上下方向にずれたり、あるいは傾いたりしても、挿入孔7の内縁部7a,7bがボス1により引っ掛かり易くなっている。すなわち、板金ブラケット5が電気接続箱8から浮き上がった場合でも、外側爪部4a及び内側爪部4bのロック形状により板金ブラケット5の保持力が向上されている。これにより、ボス1は挿入孔7からより抜け難くなっている。
【0059】
特に、外側爪部4a及び内側爪部4bを電気接続箱8の回動方向の上側及び下側にそれぞれ配置したことにより、板金ブラケット5が上下方向を含む様々な方向にずれたとしても、各爪部4a,4bは挿入孔7の内縁部のいずれかの箇所の移動軌跡上に位置することができる。このような各爪部4a,4bの引っ掛け構造によれば、板金ブラケット5の保持力をより向上させることができる。また、前述したように、3段構造の蛇腹形状からなる張り出し部3においても、各段の蛇腹部3a,3b,3cによって板金ブラケット5の保持力をさらに向上させることができる。したがって、本実施形態によれば、板金ブラケット5の仮固定部6が電気接続箱8の被仮固定部10から外れるおそれは殆どない。
【0060】
次に、本実施形態に係る電気接続箱8、ならびに電気接続箱8が取り付けられる板金ブラケット5のそれぞれの構成及び構造について、主に図5及び図6を参照しつつ説明する。
【0061】
[電気接続箱および板金ブラケットの構成及び構造]
電気接続箱としてのジャンクションボックス(J/B)8には、図1図6に示すように、第1の被取付け部11及び第2の被取付け部12が設けられている。図5及び図6に示すように、第1の被取付け部11は、板金ブラケット5の第1の取付け部13に取り付けられる。また、第2の被取付け部12は、板金ブラケット5の第2の取付け部14に取り付けられる。本実施形態においては、第1の被取付け部11及び第2の被取付け部12は、ジャンクションボックス8の本体9を間に介して互いに反対側に位置して設けられている。具体的には、第1の被取付け部11及び第2の被取付け部12は共に、ジャンクションボックス本体9の対角線上に位置して設けられている。
【0062】
前述した仮固定用のボス1が取り付けられる被仮固定部10は、第2の被取付け部12に近接して設けられている。ボス1は、図1図4に示すように、軸部2の径方向のうち第1の被取付け部11から第2の被取付け部12に向かう方向に沿った方向の両外側に各爪部4a,4bを向けた姿勢で被仮固定部10に取り付けられる。各爪部4a,4bのうち、第1の被取付け部11からより遠い側の外側爪部4aは、ボス1の先端部2a側に配置されている。また、第1の被取付け部11により近い側の内側爪部4bは、ボス1の基端部2b側に配置されている。
【0063】
また、ジャンクションボックス8が取り付けられる取付け側としての板金ブラケット5は、第1の取付け部13及び第2の取付け部14を、長尺形状のブラケット本体15の両端部に接続した形状に形成されている。板金ブラケット5の第1の取付け部13は、電気接続箱8の第1の被取付け部11に対応する位置に設けられている。それとともに、板金ブラケット5の第2の取付け部14は、ジャンクションボックス8の第2の被取付け部12に対応する位置に設けられている。さらに、板金ブラケット5の仮固定部6は、ジャンクションボックス8の被仮固定部10に対応して、板金ブラケット5の第2の取付け部14に近接して設けられている。第1の被取付け部11、第2の被取付け部12、第1の取付け部13、及び第2の取付け部14には、それぞれボルト16やナット17を用いてジャンクションボックス8を板金ブラケット5に取り付けるための取付け孔18が形成されている。また、仮固定部6には、前述した仮固定用のボス1が挿入される仮固定用の挿入孔7が形成されている。
【0064】
次に、本実施形態に係る電気接続箱8の板金ブラケット5への取り付け作業について、主に図5図7を参照しつつ説明する。
【0065】
[電気接続箱の取り付け作業]
先ず、図5に示すように、板金ブラケット5の第1の取付け部13及び第2の取付け部14を、ジャンクションボックス8の第1の被取付け部11及び第2の被取付け部12に対向させて配置する。続けて、図5中白抜き矢印で示す向きに沿って、ジャンクションボックス8に向けて板金ブラケット5を接近させて、ボス1を挿入孔7に挿入する。この際、図7に示すように、ボス1の張り出し部3のうち最も基端部2b側の張り出し部3cを挿入孔7から突出させる。
【0066】
このボス1の挿入作業が完了した状態においては、板金ブラケット5の第1の取付け部13に形成された取付け孔と、ジャンクションボックス8の第1の被取付け部11に形成された取付け孔18とは、それぞれの中心を略一致させて重なり合っている。同様に、板金ブラケット5の第2の取付け部14に形成された取付け孔18と、ジャンクションボックス8の第2の被取付け部12に形成された取付け孔18とは、それぞれの中心を略一致させて重なり合っている。
【0067】
次に、図6に示すように、板金ブラケット5の第1の取付け部13と、ジャンクションボックス8の第1の被取付け部11とを、ボルト16及びナット17を用いてネジ締めする。これにより、ジャンクションボックス8の板金ブラケット5への仮固定作業が完了する。
【0068】
次に、図示を伴う具体的かつ詳細な説明は省略するが、ジャンクションボックス8及び板金ブラケット5を、前述した仮固定状態のまま自動車の車両本体への搭載現場まで運ぶ。この際、第2の被取付け部12が第2の取付け部14に取り付けられるまでの間、第2の被取付け部12は実質的に自由な状態にある。すると、前述したように、板金ブラケット5が撓むなどして、板金ブラケット5は図6中白抜き矢印で示す向きに沿ってジャンクションボックス8から浮き上がろうとする。すなわち、第2の被取付け部12は、第1の取付け部13に取り付けられた第1の被取付け部11を支点として回動しようとする。しかし、ジャンクションボックス8は、前述した仮固定用のボス1を用いて板金ブラケット5に仮固定されているので、板金ブラケット5から外れるおそれは殆どない。すなわち、第2の被取付け部12は、その回動が抑制される。ひいては、ジャンクションボックス8は、第1の被取付け部11を支点とする回動を抑制される。
【0069】
続けて、ジャンクションボックス8を、板金ブラケット5と共に車両本体へ固定する。例えば、先ず、板金ブラケット5の第2の取付け部14に形成された取付け孔18、及びジャンクションボックス8の第2の被取付け部12に形成された取付け孔18に、車両本体から突設されているスタッドボルトを通す。この際、ジャンクションボックス8と板金ブラケット5とは、仮固定用のボス1を用いて仮固定されているので、スタッドボルトは各取付け孔18に容易に、且つ円滑に通すことができる。このため、仮固定用のボス1は、位置決めボスとも称される。
【0070】
続けて、第2の被取付け部12及び第2の取付け部14を介してスタッドボルトとは反対側からナットで締める。これにより、ジャンクションボックス8の板金ブラケット5への固定作業が完了する。それとともに、ジャンクションボックス8の板金ブラケット5への組み付け作業が完了する。さらに、板金ブラケット5の本体中間部に設けられた車両取付け部19を、車両側のスタッドボルト及びナットを用いて車両本体へ固定する。これにより、ジャンクションボックス8の自動車への搭載作業が完了する。すなわち、ジャンクションボックス8の取り付け作業が完了する。なお、ジャンクションボックス8には、第3の被取付け部20が設けられているが、板金ブラケット5を介してジャンクションボックス8を車両本体へ固定する場合には、敢えて使用する必要はない。
【0071】
前述した構造からなるジャンクションボックス8によれば、仮固定用のボス1を用いることにより、仮固定されたジャンクションボックス8の回動を極めて抑制し易くなっている。これにより、例えば自動車メーカーの生産ラインにおける、車両本体へのジャンクションボックス8の搭載現場において、ジャンクションボックス8の取り付け作業が極めて行い易くなっている。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係るボス1によれば、電気接続箱8の仮固定をより行い易くなっている。ひいては、電気接続箱8の取り付け作業が行い易く、その作業性が大いに向上されている。また、本実施形態に係るジャンクションボックス8によれば、その取り付け作業性の向上が大いに図られている。
【0073】
なお、本願発明に係る仮固定用のボス1及び電気接続箱8は、以上説明した一実施形態には制約されない。本願発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、その構成や形状あるいは設定等々を種々様々に変更したり、あるいは組み合わせたりして実施して構わない。
【0074】
例えば、前述した一実施形態においては、板金ブラケット5を介してジャンクションボックス8を自動車の車両本体に間接的に取り付けているが、これには限定されない。ジャンクションボックス8を車両本体に直接取り付けることができる場合には、敢えて板金ブラケット5を用いる必要はない。この場合、取付け側5は、自動車の車両本体となる。また当然、仮固定部6、第1の取付け部13、及び第2の取付け部14は、車両本体に設けられる。
【0075】
また、前述した一実施形態においては、挿入孔7は、第1の被取付け部11を支点とする第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向に延ばされた長円形状もしくは小判形状に形成されているが、これには限定されない。例えば、挿入孔7は、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向に沿って延ばされた長円形状もしくは小判形状に形成されても構わない。あるいは、挿入孔7は、真円形状に形成されても構わない。この場合、挿入孔7の径とは、挿入孔7の直径となる。
【0076】
また、前述した一実施形態においては、ボス1の各爪部4a,4bを第2の被取付け部12の回動の径方向に沿った方向に突出させて配置したが、これには限定されない。各爪部4a,4bは、ボス1の周方向のあらゆる向きに突出させて配置することができる。例えば、各爪部4a,4bを、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向に沿って突出させて配置しても構わない。この場合、ボス1の周方向に沿って広がる各爪部4a,4bの幅は、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向と第1の被取付け部11から第2の被取付け部12に向かう方向との角度の差に応じて適宜、適正な大きさに設定すればよい。
【0077】
具体的には、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向と第1の被取付け部11から第2の被取付け部12に向かう方向との角度の差が約45°だとする。この場合、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向を基準として、ボス1の周方向の順方向及び逆方向のうちの少なくとも一方向に沿って約45°の幅で各爪部4a,4bを広げればよい。より具体的には、第1の被取付け部11から被仮固定部10に向かう方向を基準として、ボス1の周方向において被仮固定部10から第2の被取付け部12に向けて約45°の幅で各爪部4a,4bを広げればよい。このように設定することでも、前述した一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、取付け側5の仮固定部6と第2の取付け部14との位置関係も、前述した電気接続箱8の被仮固定部10と第2の被取付け部12との位置関係に対応して適宜、適正な位置に設定されればよい。すなわち、仮固定用の挿入孔7は、これにボス1が円滑に挿入されて第2の被取付け部12の回動を抑制できるように、第2の取付け部14に近接して設けられればよい。
【0079】
また、爪部4の数は、前述した2個には限定されない。爪部4を、ボス1に3個以上設けても構わない。また、1段の張出し部3に設ける爪部4の数も、前述した1個には限定されない。爪部4を、1段の張出し部3に2個以上設けても構わない。また、張出し部3の数も、前述した3段には限定されない。ボス1に設ける張出し部3の数は、2個以下でもよいし、4個以上でもよい。また、張出し部3は、複数段に亘って連続して設けられる必要はない。張出し部3を、ボス1の軸方向に沿って断続的に複数段に亘って設けても構わない。また、張出し部3の形状は、前述した円錐台形状には限定されない。張出し部3は、三角錐台形状や四角錐台形状あるいは六角錐台形状等々の多角錐台形状に形成されても構わない。さらに、ボス1の軸部2も、前述した円柱形状には限定されない。ボス1の軸部2は、楕円柱形状や、挿入孔7の形状に相似した長円柱形状に形成されても構わない。あるいは、ボス1の軸部2は、三角錐柱形状や四角柱形状もしくは六角柱形状等々の多角柱形状に形成されても構わない。
【0080】
さらに、以上説明した各種の条件や設定値は、前述した内容には制約されない。それらは本願発明を円滑に実施することができる範囲内において適宜、適正に設定されればよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本願発明に係る仮固定用のボスにおいては、ボスを挿入孔に挿入する際の抵抗が生じ難いので、ボスを挿入孔に挿入し易い。また、一旦ボスを挿入孔に挿入した後は、挿入孔の内縁部がボスに引っ掛かり易いので、ボスが挿入孔から抜け難い。このように、本願発明に係る仮固定用のボスは、挿入孔に挿入し易く、且つ挿入孔から抜け難いので、作業性の向上が図られている。また、本願発明に係る電気接続箱においては、本願発明に係る仮固定用のボスを備えている。これにより、電気接続箱の回動を抑制し易くなっているので、電気接続箱の取り付け作業が行い易くなっている。すなわち、本願発明に係る電気接続箱は、作業性の向上が図られている。したがって、本願発明に係る仮固定用のボス及び電気接続箱は、作業性の向上を図るために利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 仮固定用のボス
2 軸部
2a 軸部の先端部(軸部の一端部)
2b 軸部の基端部(軸部の他端部)
3 張出し部
3a 最も先端部側の張出し部
3b 中間の張出し部
3c 最も基端部側の張出し部
4 爪部
4a 外側の爪部(先端側の爪部)
4b 内側の爪部(基端側の爪部)
5 板金ブラケット(取付け側)
6 仮固定部
7 仮固定用の挿入孔
7a 挿入孔の外側内縁部
7b 挿入孔の内側内縁部
8 ジャンクションボックス(電気接続箱)
9 ジャンクションボックス本体(電気接続箱本体)
10 被仮固定部
11 第1の被取付け部
12 第2の被取付け部
13 第1の取付け部
14 第2の取付け部
15 ブラケット本体
16 ボルト
17 ナット
18 取付け孔
19 車両取付け部
20 第3の被取付け部
X 軸部の軸芯(ボスの軸芯)
Y 挿入孔の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7