特許第5975725号(P5975725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 多田電機株式会社の特許一覧

特許5975725レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法
<>
  • 特許5975725-レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法 図000002
  • 特許5975725-レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法 図000003
  • 特許5975725-レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法 図000004
  • 特許5975725-レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法 図000005
  • 特許5975725-レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法 図000006
  • 特許5975725-レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975725
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】レーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20160809BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20160809BHJP
   B23D 15/06 20060101ALI20160809BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20160809BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B23K26/70
   B23K26/21 F
   B23D15/06 Z
   B23D33/02 B
   B23K26/10
   B23K26/21 W
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-110261(P2012-110261)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-237057(P2013-237057A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591041369
【氏名又は名称】多田電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 峰人
(72)【発明者】
【氏名】井上 秋雄
(72)【発明者】
【氏名】宮田 淳二
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−200986(JP,A)
【文献】 特開2001−030070(JP,A)
【文献】 特開2000−158189(JP,A)
【文献】 特開2007−203327(JP,A)
【文献】 特開2012−000635(JP,A)
【文献】 特表2010−503541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅寸法を有する複数の金属板を該金属板の幅方向と直交する方向に水平移動させる搬送手段、
先行金属板を拘束保持する出側クランプ及びこれを支持する出側クランプ支持手段、
後行金属板を拘束保持する入側クランプ及びこれを支持する入側クランプ支持手段、
それぞれ昇降可能に設けられた下部切断手段と上部切断手段を有し、前記出側クランプに拘束保持された先行金属板の後端部と、前記入側クランプに拘束保持された後行金属板の先端部を、該金属板の幅方向と平行な方向に同時切断する切断手段、
先行金属板と後行金属板の切断端面の突き合わせ部に沿ってレーザを照射するレーザ照射手段、
前記入側クランプ支持手段を金属板の移動方向に対して前後に水平移動させるインデックス機構移動手段、
前記出側クランプ支持手段と前記下部切断手段の間に配置され、前記下部切断手段を上昇端まで上昇させた時に前記出側クランプ支持手段と前記下部切断手段の位置関係を固定する出側固定手段、
前記入側クランプ支持手段と前記下部切断手段の間に配置され、前記下部切断手段を上昇端まで上昇させ、且つ前記インデックス機構移動手段により前記入側クランプ支持手段を水平前進させた時に、前記入側クランプ支持手段と前記下部切断手段の位置関係を固定する入側固定手段を備え、
前記切断手段による切断動作時には、前記下部切断手段を上昇端まで上昇させた後、前記インデックス機構移動手段により前記入側クランプ支持手段を継続して水平前進させ、前記出側クランプ支持手段、前記下部切断手段、及び前記入側クランプ支持手段の互いの位置関係を固定した状態で切断することを特徴とするレーザビーム溶接装置。
【請求項2】
前記出側固定手段は、前記下部切断手段の前記出側クランプ支持手段と対向する面に設けられた第1の出側パッドを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザビーム溶接装置。
【請求項3】
前記出側固定手段は、前記出側クランプ支持手段の前記下部切断手段と対向する面に設けられた第2の出側パッドを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザビーム溶接装置。
【請求項4】
前記出側固定手段は、前記下部切断手段の前記出側クランプ支持手段と対向する面に設けられた第1の出側パッドと、前記出側クランプ支持手段の前記下部切断手段と対向する面に設けられ前記第1の出側パッドと当接する第2の出側パッドを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザビーム溶接装置。
【請求項5】
前記出側クランプ支持手段は、前記下部切断手段の上昇時に前記下部切断手段を前記入側クランプ支持手段の方向に押圧して前記第1の出側パッドと前記第2の出側パッドが干渉しないようにし、前記下部切断手段の上昇が停止すると前記下部切断手段の押圧を開放して前記第1の出側パッドと前記第2の出側パッドを当接させるガイドローラを備えたことを特徴とする請求項4記載のレーザビーム溶接装置。
【請求項6】
前記入側固定手段は、前記下部切断手段の前記入側クランプ支持手段と対向する面に設けられた第1の入側パッドを含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザビーム溶接装置。
【請求項7】
前記入側固定手段は、前記入側クランプ支持手段の前記下部切断手段と対向する面に設けられた第2の入側パッドを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレーザビーム溶接装置。
【請求項8】
所定の幅寸法を有する複数の金属板を該金属板の幅方向と直交する方向に水平移動させる搬送手段と、先行金属板を拘束保持する出側クランプ及びこれを支持する出側クランプ支持手段と、後行金属板を拘束保持する入側クランプ及びこれを支持する入側クランプ支持手段と、それぞれ昇降可能に設けられた上部切断手段と下部切断手段を有する切断手段と、先行金属板と後行金属板の切断端面の突き合わせ部に沿ってレーザを照射するレーザ照射手段と、前記入側クランプ支持手段を金属板の移動方向に対して前後に水平移動させるインデックス機構移動手段を備えたレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法であって、
前記搬送手段により搬送され定位置で停止した先行金属板と後行金属板を、それぞれ出側クランプと入側クランプで拘束保持する第1のステップ、
前記第1のステップに続いて、前記下部切断手段を上昇端まで上昇させ、前記下部切断手段に設けられた第1の出側パッドと、前記出側クランプ支持手段に設けられた第2の出側パッドを当接させる第2のステップ、
前記第2のステップに続いて、前記入側クランプ支持手段を前記インデックス機構移動手段により水平前進させ、前記入側クランプ支持手段に設けられた第2の入側パッドを前記下部切断手段に設けられた第1の入側パッドに当接させる第3のステップ、
前記第3のステップに続いて、前記インデックス機構移動手段により前記入側クランプ支持手段を継続して水平前進させ、前記出側クランプ支持手段、前記下部切断手段、及び前記入側クランプ支持手段の互いの位置関係を固定した状態で前記上部切断手段を下降させ、先行金属板の後端部と後行金属板の先端部を該金属板の幅方向と平行な方向に同時切断する第4のステップ、を含むことを特徴とするレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行金属板と後行金属板の切断端面を突き合わせて溶接するレーザビーム溶接装置及びレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザビーム溶接装置には、特許文献1に提示されているように、被溶接材である先行金属板と後行金属板をそれぞれ出側クランプと入側クランプによりクランプした状態で、それぞれの端部をダブルカットシャー(ギロチンシャー)で切断した後、互いの切断端面を突き合わせてレーザビームで溶接するものがある。
【0003】
また、特許文献2には、切断方式としてロータリーシャーを採用し、切断時にロータリーシャーと出側及び入側クランプ間を機械的に結合させて、互いの位置関係を一定に拘束する「ころがりガイド手段」を備え、両金属板の突き合わせ部の品質向上を図ったレーザビーム溶接装置が提示されている。
【0004】
特許文献2に示された「ころがりガイド手段」は、ロータリーシャーフレームに取り付けられた出側ガイドローラ及び入側ガイドローラと、出側及び入側クランプにそれぞれ取り付けられた出側案内ガイドレールと入側案内ガイドレールから構成されている。切断時には、出側ガイドローラは出側案内ガイドレールによって、入側ガイドローラは入側案内ガイドレールによって、互いに位置関係を拘束される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−119483号公報
【特許文献2】特公平7−63860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなレーザビーム溶接装置において高い溶接品質を得るためには、切断の直線性が高く、突き合せギャップ値が小さいことが重要である。しかしながら、特許文献1に提示された従来のレーザビーム溶接装置では、出側及び入側クランプとダブルカットシャーが各々機械的に独立した機構となっていた。このため、金属板を切断すると、切断反力により例えば出側及び入側クランプの傾斜や、下部シャーの昇降機構による入側または出側方向のガタが発生し、高い切断精度が得られなかった。
【0007】
従って、切断の直線性が低く、先行金属板と後行金属板の突き合わせギャップ値にばらつきが生じ、突き合わせ時に接触しない箇所が生じることがあった。また、突き合わせ基準となる出側切断線位置が入側または出側方向にばらつくことがあった。これらの理由により、従来のレーザビーム溶接装置では、高い溶接品質が得られないという問題があった。
【0008】
特許文献2では、切断時にロータリーシャーと出側及び入側クランプ間を機械的に結合させて互いの位置関係を一定に拘束するようにしているが、それらが拘束された状態で切断進行とともに案内ガイドレールを移動するので、機械的に十分な剛性を得ることは難しい。また、ロータリーシャーは、切断精度がダブルカットシャーに比べて劣ること、機械動作時間がダブルカットシャーに比べて長いという欠点があり、実績としてダブルカットシャー方式が圧倒的に採用されている。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ダブルカットシャーを採用したレーザビーム溶接装置において、出側及び入側クランプと下部切断装置の変位を抑制し、金属板の切断精度を向上させ、溶接品質を向上させることを目的とする。
【0010】
また、ダブルカットシャーを採用したレーザビーム溶接装置において、出側及び入側クランプと下部切断装置の変位を抑制し、金属板の切断精度を向上させることが可能な金属板の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレーザビーム溶接装置は、所定の幅寸法を有する複数の金属板を該金属板の幅方向と直交する方向に水平移動させる搬送手段と、先行金属板を拘束保持する出側クランプ及びこれを支持する出側クランプ支持手段と、後行金属板を拘束保持する入側クランプ及びこれを支持する入側クランプ支持手段と、それぞれ昇降可能に設けられた下部切断手段と上部切断手段を有し、出側クランプに拘束保持された先行金属板の後端部と、入側クランプに拘束保持された後行金属板の先端部を、該金属板の幅方向と平行な方向に同時切断する切断手段と、先行金属板と後行金属板の切断端面の突き合わせ部に沿ってレーザを照射するレーザ照射手段と、入側クランプ支持手段を金属板の移動方向に対して前後に水平移動させるインデックス機構移動手段と、出側クランプ支持手段と下部切断手段の間に配置され、下部切断手段を上昇端まで上昇させた時に出側クランプ支持手段と下部切断手段の位置関係を固定する出側固定手段と、入側クランプ支持手段と下部切断手段の間に配置され、下部切断手段を上昇端まで上昇させ、且つインデックス機構移動手段により入側クランプ支持手段を水平前進させた時に、入側クランプ支持手段と下部切断手段の位置関係を固定する入側固定手段を備え、切断手段による切断動作時には、下部切断手段を上昇端まで上昇させた後、インデックス機構移動手段により入側クランプ支持手段を継続して水平前進させ、出側クランプ支持手段、下部切断手段、及び入側クランプ支持手段の互いの位置関係を固定した状態で切断するものである。
【0012】
また、本発明に係るレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法は、所定の幅寸法を有する複数の金属板を該金属板の幅方向と直交する方向に水平移動させる搬送手段と、先行金属板を拘束保持する出側クランプ及びこれを支持する出側クランプ支持手段と、後行金属板を拘束保持する入側クランプ及びこれを支持する入側クランプ支持手段と、それぞれ昇降可能に設けられた上部切断手段と下部切断手段を有する切断手段と、先行金属板と後行金属板の切断端面の突き合わせ部に沿ってレーザを照射するレーザ照射手段と、入側クランプ支持手段を金属板の移動方向に対して前後に水平移動させるインデックス機構移動手段を備えたレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法であって、搬送手段により搬送され定位置で停止した先行金属板と後行金属板を、それぞれ出側クランプと入側クランプで拘束保持する第1のステップと、第1のステップに続いて、下部切断手段を上昇端まで上昇させ、下部切断手段に設けられた第1の出側パッドと、出側クランプ支持手段に設けられた第2の出側パッドを当接させる第2のステップと、第2のステップに続いて、入側クランプ支持手段をインデックス機構移動手段により水平前進させ、入側クランプ支持手段に設けられた第2の入側パッドを下部切断手段に設けられた第1の入側パッドに当接させる第3のステップと、第3のステップに続いて、インデックス機構移動手段により入側クランプ支持手段を継続して水平前進させ、出側クランプ支持手段、下部切断手段、及び入側クランプ支持手段の互いの位置関係を固定した状態で上部切断手段を下降させ、先行金属板の後端部と後行金属板の先端部を該金属板の幅方向と平行な方向に同時切断する第4のステップ、を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレーザビーム溶接装置によれば、出側クランプ支持手段と下部切断手段の間に配置された出側固定手段と、入側クランプ支持手段と下部切断手段の間に配置された入側固定手段を備えることにより、切断手段による切断動作時には、出側クランプ支持手段、下部切断手段、及び入側クランプ支持手段の変位を抑制することができ、互いの位置関係を固定した状態で切断することができる。これにより、切断精度が向上し金属板の切断端面の直線性が向上するため、溶接精度も向上し溶接品質が向上する。
【0014】
また、本発明に係るレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法によれば、第4のステップにおいて、インデックス機構移動手段により入側クランプ支持手段を継続して水平前進させ、出側クランプ支持手段、下部切断手段、及び入側クランプ支持手段の互いの位置関係を固定した状態で上部切断手段を下降させ、先行金属板の後端部と後行金属板の先端部を切断するようにしたので、切断精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置における金属板の切断前と切断後の状態を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置の切断機構において金属板が停止した状態を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置の切断機構において金属板がクランプされた状態を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置のガイドローラの動作を示す図である。
図6】本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置の切断動作と溶接動作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置の外観を示している。レーザビーム溶接装置は、ダブルカットシャーを採用した切断機構(切断手段)により先行金属板1の後端部と後行金属板2の先端部を同時切断した後、これらの切断端面の突き合わせ部に沿ってレーザを照射し溶接接合するものである。これにより、後の工程において金属板に対する酸洗浄、圧延、熱処理、鍍金処理等の処理を連続して行うことができる。
【0017】
被溶接材である金属板1、2は、所定の幅寸法を有しており、搬送手段(図示せず)により、該幅方向と直交する方向(図中、矢印Aで示す)に水平移動される。一般的な鉄鋼プロセスラインにおいては、金属板は、厚さ寸法0.2mm〜6.6mm、幅寸法600mm〜1900mm程度のコイル状の鋼板である。
【0018】
図2は、金属板1、2の切断前と切断後の状態を説明する図であり、(a)は切断前の状態、(b)は切断後に切断端面を突き合せた状態を示している。図2中、Wは金属板の幅寸法を示している。図2(a)に示すように、切断前の先行金属板1の後端部1aと後行金属板2の先端部2aは、端面の直線性が低い。
【0019】
一方、レーザビーム溶接装置の切断機構により切断線1b、2bで切断した後は、図2(b)に示すように、切断端面の直線性が高くなり、突き合わせギャップ値が小さく、ばらつきも小さいものとなる。従って、これらの切断端面の突き合わせ部に沿ってレーザを照射することにより、安定した溶接を行うことができる。
【0020】
本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置の構成について、図3図5を用いて説明する。図3は、切断機構において金属板が停止した状態(クランプ前)、図4は、切断機構において金属板がクランプされた状態を示している。切断動作時(及び溶接時)に先行金属板1を拘束保持する出側クランプ3は、出側上部クランプ31と出側下部クランプ32から構成されている。出側クランプ3は、出側クランプ支持手段である出側クランプ支持フレーム15に支持されて共通ベース16に固定されている。
【0021】
また、切断動作時(及び溶接時)に後行金属板2を拘束保持する入側クランプ4は、入側上部クランプ41と入側下部クランプ42から構成されている。入側クランプ4は、入側クランプ支持手段である入側クランプ支持フレーム17に支持され、インデックス機構に搭載されている。
【0022】
本実施の形態1において、インデックス機構は、インデックス機構移動手段であるインデックス機構移動シリンダ18、インデックス機構フレーム19、及びインデックス機構ストッパ20から構成されている。インデックス機構移動シリンダ18は、入側クランプ支持フレーム17を金属板1、2の移動方向に対して前後に水平移動させる。切断動作前は、図3に示すように、入側クランプ支持フレーム17は後退端に位置し、インデックス機構ストッパ20に接して停止している。
【0023】
レーザビーム溶接装置の切断機構は、下部切断手段である下部切断装置6と、上部切断手段である上部切断装置7を有し、それぞれ下部切断装置昇降機構13と、上部切断装置昇降機構14により昇降可能に設けられている。切断動作を行わないときは、下部切断装置6は下降位置に、上部切断装置7は上昇位置に待機している。切断動作時には、下部切断装置6が上昇端まで上昇した状態で、上部切断装置7が下降することにより、先行金属板1の後端部1aと後行金属板2の先端部2aを、該金属板1、2の幅方向と平行な方向に同時切断する。
【0024】
下部切断装置6及び上部切断装置7は、図1に示すように、キャリッジフレーム5に搭載されている。また、キャリッジフレーム5には、レーザビームを照射する加工ヘッド8、金属板の突き合わせ部を溶接点の前後で上下方向より加圧するアジャスティングローラ9及びスエージングローラ10が搭載されている。キャリッジフレーム5は、金属板1、2の溶接方向(図1中、矢印Bで示す)とその逆方向に移動可能に設けられている。
【0025】
加工ヘッド8には、短波長固体レ−ザ発振器11からファイバケーブル12を通してレーザビームが供給されている。加工ヘッド8、アジャスティングローラ9、及びスエージングローラ10は溶接方向、すなわち金属板1、2の幅方向に直線状に配置され、キャリッジフレーム5の移動により溶接方向とその逆方向に移動可能である。
【0026】
さらに、レーザビーム溶接装置は、切断機構による金属板1、2の切断精度を向上させるために、切断動作時の出側クランプ3、下部切断装置6、及び入側クランプ4の変位を抑制する切断時変位抑制機構を備えたことを特徴としている。以下に、この切断時変位抑制機構について説明する。
【0027】
切断時変位抑制機構は、出側固定手段と入側固定手段から構成される。出側固定手段は、出側クランプ支持フレーム15と下部切断装置6の間に配置され、下部切断装置6を上昇端まで上昇させた時に、出側クランプ支持フレーム15と下部切断装置6の位置関係を固定するものである。本実施の形態1では、出側固定手段は、下部切断装置6の出側クランプ支持フレーム15と対向する面に設けられた第1の出側パッド21と、出側クランプ支持フレーム15の下部切断装置6と対向する面に設けられ第1の出側パッド21と当接する第2の出側パッド23を含んでいる。
【0028】
また、入側固定手段は、入側クランプ支持フレーム17と下部切断装置6の間に配置され、下部切断装置を上昇端まで上昇させ、且つインデックス機構移動シリンダ18により入側クランプ支持フレーム17を水平前進させた時に、入側クランプ支持フレーム17と下部切断装置6の位置関係を固定するものである。本実施の形態1では、入側固定手段は、下部切断装置6の入側クランプ支持フレーム17と対向する面に設けられた第1の入側パッド22と、入側クランプ支持フレーム17の下部切断装置6と対向する面に設けられ第1の入側パッド22と当接する第2の入側パッド24を含んでいる。
【0029】
切断動作時には、下部切断装置6を上昇端まで上昇させた後、インデックス機構移動シリンダ18により入側クランプ支持フレーム17を継続して水平前進させる。これにより、下部切断装置6は、出側クランプ支持フレーム15及び入側クランプ支持フレーム17とそれぞれ出側固定手段及び入側固定手段を介して機械的に拘束され、互いの位置関係が固定される。
【0030】
なお、本実施の形態1では、出側固定手段として第1の出側パッド21と第2の出側パッド23を備え、入側固定手段として第1の入側パッド22と第2の入側パッド24を備えた例について説明したが、出側固定手段と入側固定手段の構成はこれに限定されるものではない。例えば出側固定手段として第1の出側パッド21及び第2の出側パッド23のいずれか一方を有するものであってもよい。同様に、入側固定手段として、第1の入側パッド22及び第2の入側パッド24のいずれか一方を有するものであってもよい。
【0031】
また、本実施の形態1における切断時変位抑制機構は、出側クランプ支持フレーム15に取り付けられたガイドローラ25を備えている。図5は、ガイドローラの動作を示す図であり、(a)は下部切断装置が上昇途中の状態、(b)は下部切断装置が上昇端に達し停止した状態を示している。
【0032】
図5(a)に示すように、下部切断装置6の上昇途中には、ガイドローラ25はガイドローラ用シリンダ26の前進により下部切断装置6を入側クランプ支持フレーム17の方向に押圧しながら回転し、第1の出側パッド21と第2の出側パッド23の間に例えば0.5mm程度(下部切断装置6の弾性歪許容値以内)の間隙を設け、互いに干渉しないようにしている。また、図5(b)に示すように、下部切断装置6が上昇端に達し停止すると、ガイドローラ25はガイドローラ用シリンダ26の後退により下部切断装置6の押圧を開放し、第1の出側パッド21と第2の出側パッド23が各々当り面で当接する。
【0033】
以下に、本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法について、簡単に説明する(後に、図6のフローチャートを用いて詳細に説明する)。本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法は、以下の4つのステップを含んでいる。
【0034】
まず、搬送手段により搬送され定位置で停止した先行金属板1と後行金属板2を、それぞれ出側クランプ3と入側クランプ4で拘束保持する(第1のステップ)。第1のステップに続いて、下部切断装置6を上昇端まで上昇させ、下部切断装置6に設けられた第1の出側パッド21と、出側クランプ支持フレーム15に設けられた第2の出側パッド23を当接させる(第2のステップ)。
【0035】
第2のステップに続いて、入側クランプ支持フレーム17をインデックス機構移動シリンダ18により水平前進させ、入側クランプ支持フレーム17に設けられた第2の入側パッド24を下部切断装置6に設けられた第1の入側パッド22に当接させる(第3のステップ)。
【0036】
第3のステップに続いて、インデックス機構移動シリンダ18により入側クランプ支持フレーム17を継続して水平前進させ、出側クランプ支持フレーム15、下部切断装置6、及び入側クランプ支持フレーム17の互いの位置関係を固定した状態で、上部切断装置7を下降させ、先行金属板1の後端部1aと後行金属板2の先端部2aを、該金属板1、2の幅方向と平行な方向に同時切断する(第4のステップ)。
【0037】
次に、本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置における金属板の切断方法と溶接方法について、図6を用いて詳細に説明する。図6は、本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置の切断動作と溶接動作の流れを示すフローチャートであり、図中S1、S2・・は、処理ステップを示している。
【0038】
レーザビーム溶接装置が使用される鉄鋼プロセスラインが運転中(通板中)から減速すると、図1に示す原点位置にて待機していたキャリッジフレーム5が溶接方向と逆方向に移動し、下部切断装置6及び上部切断装置7が出側クランプ3と入側クランプ機構4の間に配置される。先行金属板1の後端部1aがレーザビーム溶接装置の定位置(切断点)に到達すると、先行金属板1の走行が停止する。続いて後行金属板2の先端部2aがレーザビーム溶接装置の定位置(切断点)に到達すると、後行金属板2の走行も停止する(S1)。
【0039】
続いて、出側上部クランプ31を下降させ、出側クランプ3により先行金属板1をクランプする。同様に、入側上部クランプ41を下降させ、入側クランプ4により後行金属板2をクランプする(S2)。次に、図5(a)に示すように、出側クランプ支持フレーム15に取り付けられたガイドローラ25が、ガイドロ−ラ用シリンダ26の前進により下部切断装置6に設けられた第1の出側パッド21を押し付け、第1の出側パッド21と第2の出側パッド23が干渉しないようにする(S3)。この状態で、下部切断装置6を上昇させる(S4)。
【0040】
下部切断装置6が上昇端に達すると、図5(b)に示すように、ガイドローラ25を開放する(S5)。これにより、第1の出側パッド21と第2の出側パッド23が各々当り面で接触する。続いて、インデックス機構移動シリンダ18により入側クランプ支持フレーム17を水平前進させ(インデックス前進)、入側クランプ支持フレーム17に設けられた第2の入側パッド24を下部切断装置6に設けられた第1の入側パッド22に当接させ、押圧する(S6)。
【0041】
インデックス機構移動シリンダ18により入側クランプ支持フレーム17を継続して水平前進させることにより、第2の入側パッド24が第1の入側パッド22を押圧する状態が保持され、出側クランプ支持フレーム17、下部切断装置6、及び入側クランプ支持フレーム17の互いの位置関係が固定される。すなわち、出側クランプ3、下部切断装置6、及び入側クランプ4が機械的に拘束された状態となる。
【0042】
続いて上部切断装置7を下降させ、先行金属板1の後端部1aと後行金属板2の先端部2aを、該金属板1、2の幅方向と平行な方向に同時切断する(S7)。切断動作が終了すると、上部切断装置7を上昇させる前に、インデックス機構移動シリンダ18を5mm程度の微小距離、後退させる(S8)。これにより、上部切断装置7の入側刃面と後行金属板2の切断端面の間に約5mmの間隙ができ、上部切断装置7の上昇時に入側刃面が該切断端面に接触しない。
【0043】
次に、ガイドロ−ラ用シリンダ26の前進によりガイドロ−ラ25を再度、下部切断装置6に設けられた第1の出側パッド21に押し付ける(S9)。これにより、上部切断装置7の出側刃面と先行金属板1の切断端面の間に約0.5mmの間隙ができ、上部切断装置7の上昇時に出側刃面が該切断端面に接触しない。この状態で、上部切断装置7を上昇させる(S10)。その後、下部切断装置6を下降端まで下降させ(S11)、ガイドロ−ラ用シリンダ26の後退によりガイドロ−ラ25を開放して(S12)、切断動作が終了する。
【0044】
続いて、インデックス機構移動シリンダ18を水平前進させ、図2に示すように、先行金属板1の後端部の切断端面と後行金属板2の先端部の切断端面を突き合わせる(S13)。この状態でキャリッジフレーム5に搭載された加工ヘッド8を溶接方向に移動させ、金属板1、2の突き合わせ部にレーザビームを照射する(S14)。溶接が完了しレーザビームの照射が停止すると、出側上部クランプ31と入側上部クランプ41が上昇し、金属板1、2のクランプが解除され(S16)、溶接動作が完了する。
【0045】
本実施の形態1に係るレーザビーム溶接装置及びその金属板の切断方法によれば、切断時変位抑制機構として、出側クランプ支持フレーム15と下部切断装置6の間に配置された出側固定手段(第1の出側パッド21、第2の出側パッド23)と、入側クランプ支持フレーム17と下部切断装置6の間に配置された入側固定手段(第1の入側パッド22、第2の入側パッド24)を備えることにより、ダブルカットシャーを採用した切断機構による金属板1、2の切断動作時に、出側クランプ支持フレーム15、下部切断装置6、及び入側クランプ支持フレーム17の変位を抑制することができ、互いの位置関係を固定した状態で切断することができる。
【0046】
これにより、金属板1、2の切断精度が向上するため、金属板1、2の切断端面の直線性が向上し、突き合せギャップ値のばらつきを抑制することができる。また、加工ヘッド8が移動する経路は、先行金属板1の切断線1bを基準にしているため、切断端面の直線性が向上することで、レーザビームが金属板1、2の突き合わせ部に高い精度で照射され、溶接品質が向上する。
【0047】
また、切断動作終了後、上部切断装置7が上昇する前に、インデックス機構移動シリンダ18を微小距離後退させると共に、ガイドロ−ラ25を下部切断装置6に設けられた第1の出側パッド21に押し付けることにより、上部切断装置7の上昇時に、上部切断装置7の入側刃面と出側刃面が、それぞれ後行金属板2の切断端面と先行金属板1の切断端面に接触しないようにしたので、切断端面の変形を生じることがなく、切断精度をさらに向上させることができる。
【0048】
なお、本実施の形態1では、レーザ溶接をするための発振器として、短波長固体レーザ発振器11を使用したレーザビーム溶接装置について説明したが、レーザの種類はこれに限定されるものではなく、例えば炭酸ガスレーザ発振器を使用したレーザビーム溶接装置であっても、本発明を適用することができる。また、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、鉄鋼プロセスラインに使用されるレーザビーム溶接装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 先行金属板、1a 後端部、1b 切断線、
2 後行金属板、2a 先端部、2b 切断線、
3 出側クランプ、4 入側クランプ、5 キャリッジフレーム、6 下部切断装置、
7 上部切断装置、8 加工ヘッド、9 アジャスティングローラ、
10 スエージングローラ、11 短波長固体レーザ発振器、12 ファイバケーブル、
13 下部切断装置昇降機構、14 上部切断装置昇降機構、
15 出側クランプ支持フレーム、16 共通ベース、
17 入側クランプ支持フレーム、18 インデックス機構移動シリンダ、
19 インデックス機構フレーム、20 インデックス機構ストッパ、
21 第1の出側パッド、22 第1の入側パッド、
23 第2の出側パッド、24 第2の入側パッド、
25 ガイドローラ、26 ガイドローラ用シリンダ、
31 出側上部クランプ、32 出側下部クランプ、
41 入側上部クランプ、42 入側下部クランプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6