(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルアセタールのアセチル化度が8モル%以下であり、かつアセタール化度が70モル%以上であるか、又は前記ポリビニルアセタールのアセチル化度が8モル%を超える、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、合わせガラスを得るために用いられる。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含む第1の層が10層以上積層されている積層体を有する。このように、多くの第1の層を積層して合わせガラス用中間膜を作製することにより、中間膜の引き裂き強度を高めることができる。上記積層体の厚みが同じであるときに、上記第1の層の積層数が5層以上である場合には、上記第1の層の積層数が4層以下である場合と比べて、中間膜の引き裂き強度が高くなり、更に、上記第1の層の積層数が10層以上である場合には、上記第1の層の積層数が9層以下である場合と比べて、中間膜の引き裂き強度がより一層高くなる。本発明では、中間膜の引き裂き強度を高くするために、上記第1の層の積層数は10層以上である。また、引き裂き強度を高めることで、合わせガラス用中間膜を備えた合わせガラスの耐貫通性が上昇する。よって、同等の耐貫通能力を維持したままで、従来のガラス板より薄いガラス板を、合わせガラスを得るために用いることが可能となり、自動車の軽量化を図ることができる。さらに、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含む第1の層が10層以上積層されている積層体を有するので、中間膜の遮音性も高めることができる。
【0035】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記積層体と他の層とを含んでいてもよい。上記積層体自体が、本発明に係る合わせガラス用中間膜であってもよい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記積層体単体であってもよく、上記積層体に他の層が積層された複合積層体であってもよい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記積層体であるか、又は上記積層体を少なくとも含む。
【0036】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含む第1の層が10層以上積層されている積層体を有することが好ましい。このようにポリビニルアセタールと可塑剤とを含む多くの第1の層を積層して合わせガラス用中間膜を作製することにより、中間膜の引き裂き強度を高めることができ、更に、中間膜の遮音性も高めることができる。
【0037】
中間膜の引き裂き強度をより一層高める観点からは、上記第1の層が、20層以上積層されていることが好ましく、40層以上積層されていることがより好ましく、80層以上積層されていることが最も好ましい。この理由は、層が増えるほど応力集中点が分散され、破断起点が生じにくいために引き裂き強度が高くなるためである。上記積層数の上限は特に限定されないが、中間膜の透明性がより一層向上することから、上記積層数は20000層以下であることが好ましく、5000層以下であることがより好ましく、1000層以下であることが更に好ましい。この理由は、各層が平滑になりやすく、応力集中点が分散されるためである。
【0038】
熱可塑性樹脂を含有する第1の層が10層以上積層されており、該第1の層の平均厚みが100μm以下である場合にも、引き裂き強度を高めることができる。上記積層体の厚みが同じであるときに、上記第1の層の積層数が多くなるように上記第1の層の平均厚みが100μm以下である場合には、上記第1の層の積層数が少なくなるように上記第1の層の平均厚みが100μmを超える場合と比べて、引き裂き強度がより一層高くなる。
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0040】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0041】
図1に示す中間膜1は、複数の第1の層11A〜11Kが積層されている積層体2である。積層体2は、少なくとも10層の第1の層11A〜11Kが積層されて構成されている。具体的には、積層体2は、11層の第1の層11A〜11Kが積層されて構成されている。第1の層11A〜11Kは、熱可塑性樹脂を含む。第1の層11A〜11Kは、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことが好ましい。第1の層11A〜11Kは、積層体2の厚み方向に積層されている。第1の層11A〜11Kの組成は同一であってもよく、異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0042】
中間膜1では、積層体2の第1の表面2aと第1の表面2aとは反対の第2の表面2bとがそれぞれ、合わせガラス部材が積層される面である。
【0043】
図2に、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0044】
図2に示す中間膜21は、複数の第1の層31A〜31F,32A〜32Eが積層されている積層体22である。積層体22は、少なくとも10層の第1の層31A〜31F,32A〜32Eが積層されて構成されている。具体的には、積層体22は、11層の第1の層31A〜31F,32A〜32Eが積層されて構成されている。第1の層31A〜31F,32A〜32Eは、熱可塑性樹脂を含む。第1の層31A〜31F,32A〜32Eは、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことが好ましい。第1の層31A〜31Fと32A〜32Eとの組成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。第1の層31A〜31Fの組成は、同一であってもよく、異なっていてもよく、同一であることが好ましい。第1の層32A〜32Eの組成は、同一であってもよく、異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0045】
第1の層31A〜31Fと第1の層32A〜32Eとは厚みが異なる。第1の層31A〜31Fの厚みは、第1の層32A〜32Eの厚みよりも薄い。このように複数の第1の層の厚みは同一であってもよく、異なっていてもよい。第1の層31A〜31Fと第1の層32A〜32Eとは交互に、積層体22の厚み方向に積層されている。
【0046】
中間膜21では、積層体22の第1の表面22aと第2の表面22bとはそれぞれ合わせガラス部材が積層される面である。
【0047】
図3に、本発明の第3の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0048】
図3に示す中間膜41は、
図1に示す積層体2と、積層体2の第1の表面2aに積層された第2の層42と、積層体2の第2の表面2bに積層された第2の層43とを備える。第2の層42,43は、第1の層31A〜31F,32A〜32Eとは異なる。第2の層42,43は表面層である。第2の層42と第2の層43との組成は同一であってもよく、異なっていてもよい。1つの第2の層42が、積層体2の第1の表面2aのみに積層されていてもよく、第2の表面2bに第2の層43が積層されていなくてもよい。すなわち、上記中間膜は、上記第1の層とは異なる第2の層を1つ又は2つ有し、上記積層体の一方の表面又は両方の表面に、上記第2の層が積層されていてもよい。2つの第2の層42,43が、積層体2の第1の表面2aと第2の表面2bとに1層ずつ積層されていることが好ましい。
【0049】
第2の層42,43の積層体2側とは反対の外側の表面42a,43aは、図示しないが、エンボス加工されている。外側の表面42a,43aは、必ずしもエンボス加工されていなくてもよい。第2の層を設けて、第1の層よりも第2の層の厚みを厚くすることで、第2の層の外側の表面を容易にエンボス加工することができ、更にエンボス加工による凹凸模様を第1の層に形成せずに第2の層のみに形成することが容易になる。中間膜41では、第2の層42,43の外側の表面42a,43aは合わせガラス部材が積層される面である。
【0050】
なお、積層体2の引き裂き強度が高いほど、積層体2と第2の層42,43とを有する中間膜41の引き裂き強度が高くなる。また、積層体2の遮音性が高いほど、積層体2と第2の層42,43とを有する中間膜41の遮音性が高くなる。
【0051】
図4に、本発明の第4の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0052】
図4に示す中間膜51は、
図2に示す積層体22と、積層体22の第1の表面22aに積層された第2の層42と、積層体22の第2の表面22bに積層された第2の層43とを備える。中間膜51では、第2の層42,43の外側の表面42a,43aは合わせガラス部材が積層される面である。
【0053】
上記中間膜の引き裂き強度をより一層高める観点からは、上記第1の層の平均厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下である。最も薄い上記第1の層の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは50nm以上である。最も厚い上記第1の層の厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上記中間膜の引き裂き強度をより一層高める観点からは、上記第1の層の1層当たりの厚み(全ての第1の層の各厚み)は、好ましくは5nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下である。上記第1の層の1層当たりの厚み(全ての第1の層の各厚み)は、100μm未満であってもよい。上記積層体の最表面に位置する2つの第1の層の1層当たりの厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下である。上記積層体の最表面に位置する2つの第1の層の1層当たりの厚みは、100μm未満であってもよい。
【0054】
隣接する上記第1の層の厚み比の内の少なくとも1つは、1.1を超えることが好ましく、1.2を超えることがより好ましい。また、隣接する上記第1の層の厚み比の内の少なくとも1つは、10以下であってもよく、5以下であることが好ましく、2以下であってもよい。少なくとも1つの厚み比が上記下限以上及び上記上限以下であっても、引裂き強度及び遮音性に優れた中間膜が得られる。また、例えば、引き裂き強度又は遮音性を効果的に高める層の厚みを厚くすることで、上記中間膜の引き裂き強度又は遮音性をより一層高めることができる。隣接する上記第1の層の厚み比は、厚い方の厚みAの薄い方の厚みBに対する比(A/B)を示す。隣接する上記第1の層の上記厚み比(A/B)の内の少なくとも1つの厚み比(A/B)が上記下限以上であることが好ましく、上記上限以下であることが好ましい。
【0055】
上記積層体の厚みは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。上記積層体の厚みが上記下限以上であると、中間膜の引き裂き強度及び耐貫通性がより一層高くなる。上記積層体の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0056】
上記中間膜の厚みは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。上記中間膜の厚みが上記下限以上であると、中間膜の引き裂き強度及び耐貫通性がより一層高くなる。上記中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0057】
中間膜の遮音性をより一層良好にする観点からは、上記第2の層の1層当たりの厚み(全ての第2の層の各厚み)は好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。上記第2の層の厚みが上記下限以上であると、中間膜の厚みが厚くなりすぎず、中間膜及び合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、更に可塑剤のブリードアウトを抑制できる。上記第2の層の1層当たりの厚み(全ての第2の層の各厚み)は、10μmを超えていてもよく、50μmを超えていてもよく、100μm以上であってもよい。
【0058】
上記積層体の厚みをTとしたときに、上記第2の層全体の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1Tを超え、より好ましくは0.2T以上、好ましくは0.9T以下、より好ましくは0.8T以下である。上記第2の層全体の厚みは、1つの第2の層を用いる場合には1つの第2の層の厚みであり、2つの第2の層を用いる場合には2つの第2の層の厚みである。上記第1の層と上記第2の層との組成は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記第1の層と上記第2の層との組成は異なることが好ましい。上記第2の層の厚みは、全ての上記第1の層の各厚みよりも厚く、第1の層の最大厚みよりも厚い。
【0059】
中間膜と合わせガラス部材との接着性をより一層高くし、合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記エンボス加工された第2の層の外側の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上記十点平均粗さRzは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
【0060】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。引き裂き強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよく良好にする観点からは、上記熱可塑性樹脂が、第1のポリビニルアセタールと第2のポリビニルアセタールとであり、上記第1のポリビニルアセタールを含む第1の層と上記第2のポリビニルアセタールを含む第1の層とが交互に合計で10層以上積層されており、上記第1のポリビニルアセタールと上記第2のポリビニルアセタールとの重合度が10以上異なることが好ましい。
【0061】
以下、本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0062】
(熱可塑性樹脂)
上記第1の層は、熱可塑性樹脂を含む。上記第2の層は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール(ポリビニルアセタール樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル共重合体、ポリウレタン及びポリビニルアルコール等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0064】
引き裂き強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよく良好にする観点からは、上記熱可塑性樹脂はポリビニルアセタールであることが好ましい。引き裂き強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよくより一層良好にする観点からは、上記第1の層は上記熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことがより好ましい。引き裂き強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよくより一層良好にする観点からは、上記第2の層は上記熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタールを含むことが好ましく、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことがより好ましい。
【0065】
上記第1,第2の層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に、70〜99.9モル%の範囲内である。
【0066】
上記第1,第2の層に含まれる上記ポリビニルアセタールを得るためのポリビニルアルコールの重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1700を超え、特に好ましくは2000以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、より一層好ましくは3000以下、更に好ましくは3000未満、特に好ましくは2800以下である。上記ポリビニルアセタールは、重合度が上記下限以上及び上記上限以下であるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られるポリビニルアセタールであることが好ましい。上記重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0067】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタールを得るためのポリビニルアルコールの重合度は、好ましくは1700を超え、より好ましくは2000以上、好ましくは3000未満である。
【0068】
上記ポリビニルアルコールの重合度は平均重合度を示し、該平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0069】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記第1,第2の層に含まれる上記ポリビニルアセタールはそれぞれ、ポリビニルブチラールであることが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第1,第2の層に含まれる上記ポリビニルアセタールとしてそれぞれ、ポリビニルブチラールを含むことが好ましい。ポリビニルブチラールの使用により、合わせガラス部材に対する中間膜の接着力がより一層適度に発現する。さらに、中間膜の耐光性及び耐候性等がより一層高くなる。
【0071】
上記第1の層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基の含有率(水酸基量)は、31モル%以下であることが好ましい。ポリビニルアセタールの水酸基の含有率が低いと、ポリビニルアセタールの親水性が低くなり、可塑剤の含有量を多くすることができる。この結果、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0072】
上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率は好ましくは13モル%以上、より好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21.5モル%以上、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは28モル%以下、特に好ましくは26モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、上記第1の層の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性がより一層良好になる。
【0073】
上記第2の層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基の含有率は好ましくは26モル%以上、より好ましくは27モル%以上、更に好ましくは28モル%以上、好ましくは35モル%以下、より好ましくは33モル%以下、更に好ましくは32モル%以下、特に好ましくは31.5モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性がより一層良好になる。
【0074】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基の含有率は、上記第2の層に含まれるポリビニルアセタールの水酸基の含有率よりも、低いことが好ましく、1モル%以上低いことがより好ましく、3モル%以上低いことがより一層好ましく、5モル%以上低いことが更に好ましく、7モル%以上低いことが特に好ましい。
【0075】
上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して、又はASTM D1396−92に準拠して測定することにより求めることができる。
【0076】
上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタールのアセチル化度(アセチル基量)は好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.4モル%以上、更に好ましくは0.8モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下である。上記第2の層に含まれるポリビニルアセタールのアセチル化度は好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.4モル%以上、好ましくは20モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは2モル%以下、特に好ましくは1.5モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタールと可塑剤との相溶性がより一層高くなり、かつ中間膜のガラス転移温度が十分に低くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の耐湿性がより一層高くなる。
【0077】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれるポリビニルアセタールのアセチル化度は、上記第2の層に含まれるポリビニルアセタールのアセチル化度よりも、高いことが好ましく、0.1モル%以上高いことがより好ましく、0.5モル%以上高いことがより一層好ましく、1モル%以上高いことが更に好ましく、5モル%以上高いことが特に好ましく、10モル%以上高いことが最も好ましい。
【0078】
また、合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれるポリビニルアセタールのアセタール化度は、上記第2の層に含まれるポリビニルアセタールのアセタール化度よりも高いことが好ましい。
【0079】
上記アセチル化度は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して又はASTM D1396−92に準拠して測定できる。
【0080】
上記第1の層に含まれるポリビニルアセタールのアセタール化度は好ましくは50モル%以上、より好ましくは53モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、特に好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは83モル%、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは78モル%以下である。上記第2の層に含まれるポリビニルアセタールのアセタール化度は好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、特に好ましくは67モル%以上、好ましくは80モル%以下、より好ましくは78モル%以下、更に好ましくは76モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタールと可塑剤との相溶性がより一層高くなり、かつ中間膜のガラス転移温度が十分に低くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタールを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0081】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0082】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法又はASTM D1396−92に準拠した方法により、アセチル化度(アセチル基量)と水酸基の含有率(ビニルアルコール量)とを測定し、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0083】
なお、ポリビニルアセタールがポリビニルブチラールである場合には、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」又はASTM D1396−92に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。ASTM D1396−92に準拠した方法による測定が好ましい。
【0084】
上記第1の層の遮音性がより一層高くなることから、上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、アセチル化度aが8モル%以下であり、かつアセタール化度aが70モル%以上であるポリビニルアセタールAであるか、又はアセチル化度bが8モル%を超えるポリビニルアセタールBであることが好ましい。上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタールは、上記ポリビニルアセタールAであってもよく、上記ポリビニルアセタールBであってもよい。
【0085】
上記ポリビニルアセタールAのアセチル化度aは8モル%以下、好ましくは7.5モル%以下、より好ましくは7モル%以下、更に好ましくは6.5モル%以下、特に好ましくは5モル%以下、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは0.8モル%以上、特に好ましくは1モル%以上である。上記アセチル化度aが上記上限以下及び上記下限以上であると、可塑剤の移行を容易に制御でき、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0086】
上記ポリビニルアセタールAのアセタール化度aは70モル%以上、好ましくは70.5モル%以上、より好ましくは71モル%以上、更に好ましくは71.5モル%以上、特に好ましくは72モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは83モル%以下、更に好ましくは81モル%以下、特に好ましくは79モル%以下である。上記アセタール化度aが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度aが上記上限以下であると、ポリビニルアセタールAを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0087】
上記ポリビニルアセタールAの水酸基の含有率aは好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは29モル%以下、特に好ましくは28モル%以下である。上記水酸基の含有率aが上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率aが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0088】
上記ポリビニルアセタールAはポリビニルブチラールであることが好ましい。
【0089】
上記ポリビニルアセタールBのアセチル化度bは、8モル%を超え、好ましくは9モル%以上、より好ましくは9.5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは10.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは26モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記アセチル化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセチル化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタールBを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0090】
上記ポリビニルアセタールBのアセタール化度bは好ましくは50モル%以上、より好ましくは53モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、好ましくは80モル%以下、より好ましくは78モル%以下、更に好ましくは76モル%以下、特に好ましくは74モル%以下である。上記アセタール化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタールBを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0091】
上記ポリビニルアセタールBの水酸基の含有率bは好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは29モル%以下、特に好ましくは28モル%以下である。上記水酸基の含有率bが上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率bが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0092】
上記ポリビニルアセタールBはポリビニルブチラールであることが好ましい。
【0093】
また、引き裂き強度がより一層高い合わせガラス用中間膜が得られることから、上記第1の層に含まれるポリビニルアセタールとして、アセタール化度とアセチル化度との合計が65モル%以上であるポリビニルアセタールCを含むことが好ましい。
【0094】
上記ポリビニルアセタールCのアセタール化度cは好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、更に好ましくは66モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは82モル%以下、更に好ましくは79モル%以下である。上記アセタール化度cが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度aが上記上限以下であると、ポリビニルアセタールCを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0095】
上記ポリビニルアセタールCのアセチル化度cは好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは0.8モル%以上、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、更に好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度cが上記上限以下及び上記下限以上であると、可塑剤の移行を容易に制御でき、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0096】
引き裂き強度及び遮音性をより一層良好にする観点からは、上記積層体は、上記ポリビニルアセタールA又は上記ポリビニルアセタールBを含有する第1の層Xと、上記ポリビニルアセタールCを含有する第1の層Yとを有することが好ましく、上記ポリビニルアセタールA又は上記ポリビニルアセタールBを含有する第1の層Xと上記ポリビニルアセタールCを含有する第1の層Yとが交互に積層されていることが好ましい。上記ポリビニルアセタールA又はポリビニルセタールBとポリビニルアセタールCとは、重合度が異なることが好ましく、重合度が10以上異なることがより好ましい。
【0097】
(可塑剤)
上記第1の層は可塑剤を含むことが好ましい。上記第2の層は可塑剤を含むことが好ましい。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル可塑剤、並びに有機リン酸エステル可塑剤及び有機亜リン酸エステル可塑剤などの有機リン酸エステル可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機酸エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0099】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0100】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0101】
上記有機酸エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機酸エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0102】
上記有機リン酸エステル可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0103】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤を含むことが好ましい。このジエステル可塑剤の使用により、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0105】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
【0106】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0107】
上記第1の層及び上記積層体全体に関しては、上記ポリビニルアセタール100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは40重量部以上、特に好ましくは50重量部以上、好ましくは80重量部以下、より好ましくは78重量部以下、更に好ましくは75重量部以下、特に好ましくは72重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、中間膜の引き裂き強度及び合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0108】
上記第2の層に関しては、上記ポリビニルアセタール100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは35重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは43重量部以下、特に好ましくは38重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、中間膜の接着力が高くなり、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0109】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層及び上記積層体のポリビニルアセタール100重量部に対する可塑剤の各含有量は、上記第2の層のポリビニルアセタール100重量部に対する可塑剤の含有量よりも、多いことが好ましく、5重量部以上多いことがより好ましく、10重量部以上多いことがより一層好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましく、20重量部以上多いことが特に好ましい。
【0110】
また、引き裂き強度及び遮音性をより一層良好にする観点からは、上記積層体が、上記ポリビニルアセタールA又は上記ポリビニルアセタールBを含有する第1の層Xと、上記ポリビニルアセタールCを含有する第1の層Yとを有する場合、上記第1の層Xに含まれるポリビニルアセタールA又はポリビニルアセタールB100重量部に対する可塑剤の含有量は、上記第1の層Yに含まれるポリビニルアセタールC100重量部に対する可塑剤の含有量よりも、多いことが好ましく、5重量部以上多いことがより好ましく、10重量部以上多いことが更に好ましく、15重量部以上多いことが特に好ましい。
【0111】
(他の成分)
本発明に係る合わせガラス用中間膜における上記第1,第2の層はそれぞれ、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0112】
(合わせガラス用中間膜の製造方法)
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法としては、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、押出コーティング法、多層溶融押出成形法、ホットメルトラミネーション法及びヒートラミネーション法等が挙げられる。
【0113】
製造が容易であり、かつ引き裂き強度及び遮音性により一層優れた中間膜が得られるため、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、多層溶融押出成形法により得られていることが好ましい。上記多層溶融押出成形法としては、例えば、マルチマニホールド法及びフィードブロック法等が挙げられる。
【0114】
中間膜を容易に製造し、引き裂き強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよく良好にする観点からは、本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む第1の層が10層以上積層されている積層体を、多層溶融押出成形法により成形する工程を備えることが好ましい。中間膜をより一層容易に製造し、引き裂き強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよくより一層良好にする観点からは、上記積層体を、マルチマニホールド法又はフィードブロック法により成形することが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は、1つ又は2つの上記第2の層を、上記積層体の一方の表面又は両方の表面に積層する工程を備えることが好ましい。
【0115】
上記第2の層の上記積層体側とは反対の外側の表面にエンボス加工する方法としては、エンボスロール法及びリップエンボス法等が挙げられる。中でも定量的に一定の凹凸模様が形成されるようにエンボス加工を行うことができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0116】
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、合わせガラスを得るために用いられる。
【0117】
図5に、
図1に示す中間膜1を用いた合わせガラスの一例を模式的に断面図で示す。
【0118】
図5に示す合わせガラス61は、第1の合わせガラス部材62と、第2の合わせガラス部材63と、中間膜1とを備える。中間膜1は、第1,第2の合わせガラス部材62,63の間に挟み込まれている。
【0119】
第1の合わせガラス部材62は、中間膜1である積層体2の第1の表面2aに積層されている。第2の合わせガラス部材63は、中間膜1である積層体2の第2の表面2bに積層されている。従って、合わせガラス61は、第1の合わせガラス部材62と、中間膜1である積層体2と、第2の合わせガラス部材63とがこの順で積層されて構成されている。
【0120】
図6に、
図3に示す中間膜41を用いた合わせガラスの一例を模式的に断面図で示す。
【0121】
図6に示す合わせガラス71は、第1の合わせガラス部材62と、第2の合わせガラス部材63と、中間膜41とを備える。中間膜41は、第2の層42と積層体2と第2の層43とを有する。中間膜41は、第1,第2の合わせガラス部材62,63の間に挟み込まれている。
【0122】
第1の合わせガラス部材62は、第2の層42の外側の表面42aに積層されている。第2の合わせガラス部材63は、第2の層43の外側の表面43aに積層されている。
【0123】
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0124】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びアクリル樹脂板等が挙げられる。上記アクリル樹脂板としては、ポリメチルメタクリレート板等が挙げられる。
【0125】
上記第1,第2の合わせガラス部材の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは3mm以下である。合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0126】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、第1,第2の合わせガラス部材の間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記第2の層の上記積層体側とは反対の外側の表面がエンボス加工されている場合には、第1,第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気をより一層効果的に脱気できる。
【0127】
合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これら以外にも使用できる。合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0128】
合わせガラスのヘーズ値は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、より一層好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.4%以下である。合わせガラスのヘーズ値は、JIS K6714に準拠して測定できる。また、合わせガラスのヘーズを低くするために、上記第1の層はフィラーを含まないことが好ましく、上記第2の層はフィラーを含まないことが好ましい。
【0129】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0130】
実施例及び比較例で用いたポリビニルブチラールのブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はASTM D1396−92に準拠した方法により測定した。なお、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」により測定した場合も、ASTM D1396−92に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0131】
(実施例1)
ポリビニルブチラールB(n−ブチルアルデヒドを使用、平均重合度が2310であるポリビニルアルコールを使用、ブチラール化度64.2モル%、アセチル化度12.9モル%、水酸基の含有率22.9モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物Bを得た。
【0132】
主押出機に上記第1の層を形成するための組成物Bを供給した。また、副押出機にも上記第1の層を形成するための組成物Bを供給した。主押出機と副押出機との先端に多層用フィードブロックを取り付けた。主押出機及び副押出機から押し出された第1の層の厚みを下記の表1に示すように設定し、更に主押出機から押し出された第1の層と副押出機から押し出された第1の層とを交互に、第1の層を合計で10層積層することにより、下記の表1に示す厚みの積層体を中間膜として得た。
【0133】
(実施例2〜6)
実施例1と同様にして、押出成形により10層の積層体を得て、次いで下流部に分割積層可能な多層用ブロックを数セット取り付け、10層の積層体を複数積層することにより層数を下記の表1に示す層数に増加させて、下記の表1に示す厚みの積層体を中間膜として得た。
【0134】
(実施例7,8)
第1の層の厚みを下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0135】
(参考例1)
第1の層の厚みを下記の表1に示すように設定し、第1の層を合計で6層積層したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0136】
(実施例9)
ポリビニルブチラールX(n−ブチルアルデヒドを使用、平均重合度が1700であるポリビニルアルコールを使用、ブチラール化度68モル%、アセチル化度1モル%、水酸基の含有率31モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)38重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物Xを得た。
【0137】
主押出機に上記第1の層を形成するための組成物Bを供給し、副押出機に上記第1の層を形成するための組成物Xを供給したこと以外は実施例1と同様にして中間膜を得た。
【0138】
(実施例10〜14)
実施例9と同様にして、押出成形により10層の積層体を得て、次いで下流部に分割積層可能な多層用ブロックを数セット取り付け、10層の積層体を複数積層することにより層数を下記の表2に示す層数に増加させて、下記の表2に示す厚みの積層体を中間膜として得た。
【0139】
(実施例15,16)
第1の層の厚みを下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例9と同様にして、中間膜を得た。
【0140】
(参考例2)
第1の層の厚みを下記の表2に示すように設定し、第1の層を合計で6層積層したこと以外は実施例9と同様にして、中間膜を得た。
【0141】
(実施例17)
ポリビニルブチラールC(n−ブチルアルデヒドを使用、平均重合度が1720であるポリビニルアルコールを使用、ブチラール化度68.8モル%、アセチル化度0.8モル%、水酸基の含有率30.4モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)39.5重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の層を形成するための組成物Cを得た。
【0142】
得られた第2の層を形成するための組成物Cを押し出して、下記の表3に示す厚みの第2の層を得た。
【0143】
実施例1で得られた第1の層の積層体の第1の表面と第2の表面とに、2つの第2の層を1層ずつ積層して、積層体を得た。その後、得られた積層体をエンボスロール間を通過させ、第2の層の外側の表面に、下記の表3に示す十点平均粗さRzのエンボス加工を施し、中間膜を得た。
【0144】
(実施例18)
実施例1で得られた第1の層の積層体を、実施例9で得られた積層体に変更したこと以外は実施例17と同様にして、中間膜を得た。
【0145】
(実施例19)
実施例1で得られた第1の層の積層体を、実施例12で得られた積層体に変更したこと以外は実施例17と同様にして、中間膜を得た。
【0146】
(実施例20)
実施例18と同様にして、押出成形により10層の積層体を得て、次いで下流部に分割積層可能な多層用ブロックを数セット取り付け、10層の積層体を複数積層することにより層数を下記の表3に示す層数に増加させて、下記の表3に示す厚みの積層体を得た。得られた第1の層の積層体を用いたこと以外は実施例17と同様にして、中間膜を得た。
【0147】
(比較例1)
第1の層の厚みを下記の表3に示すように設定し、第1の層を合計で4層積層したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。
【0148】
(比較例2)
実施例1で得られた第1の層を形成するための組成物Bを押し出して、下記の表3に示す厚みの単層の中間膜を得た。
【0149】
(評価)
(1)引き裂き強度
得られた中間膜を長さ方向がMD方向となるように打ち抜きカットすることにより、
図7に示す形状の評価サンプルを得た。なお、
図7において、寸法の大きさの単位はmmである。JIS K6781に準拠して、オートグラフ「AG−1」(島津製作所社製)を用いて、得られた評価サンプルの引き裂き強度を測定し、破断点での最終応力を評価した。
【0150】
(2)遮音性
得られた中間膜を、縦30mm×横320mmに切り出した。次に、2枚の透明なフロートガラス(縦25mm×横305mm×厚み2.0mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、遮音性試験に用いる合わせガラスを得た。
【0151】
20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、多チャンネル分析処理器「SA−01」(リオン社製)を用いて、20℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の4次モード(3150Hz付近)での損失係数を評価した。
【0152】
(3)耐貫通性
得られた中間膜を縦30cm×横30cmの大きさに切断した。次に、透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバッグ内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、耐貫通性試験に用いる合わせガラスを得た。
【0153】
得られた合わせガラス(縦30cm×横30cm)を、表面温度が23℃となるように調整した。次いで、JIS R3212に準拠して、4mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させた。6枚の合わせガラス全てについて、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった合わせガラスが3枚以下であった場合は不合格とした。4枚の場合には、新しく6枚の合わせガラスの耐貫通性を評価した。5枚の場合には、新しく1枚の合わせガラスを追加試験し、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。同様の方法で、5m及び6m及び7mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させ、合わせガラスの耐貫通性を評価した。
【0154】
(4)へーズ値の測定
上記(2)遮音性の評価に用いた合わせガラスを用意した。ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIII PDK」)を用いて、JIS K6714に準拠して、得られた合わせガラスのヘーズ値を測定した。なお、下記の表1〜3では、ヘーズ値が3%を超える場合を「>3」と記載した。
【0155】
結果を下記の表1〜3に示す。下記の表1〜3において、「PVA」はポリビニルアルコールを示し、「3GO」はトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを示す。
【0156】
(実施例21〜24)
ポリビニルブチラールA(n−ブチルアルデヒドを使用、平均重合度が4000であるポリビニルアルコールを使用、ブチラール化度79モル%、アセチル化度0.8モル%、水酸基の含有率22.2モル%)100重量部に、可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物Aを得た。
【0157】
実施例21では、主押出機及び副押出機に供給した組成物Bを組成物Aに変更した。実施例22〜24では、主押出機に供給した組成物Bを組成物Aに変更した。また、実施例21では、組成物Bを組成物Aに変更したこと以外は実施例17と同様にして、中間膜を得た。実施例22では、組成物Bを組成物Aに変更したこと以外は実施例18と同様にして、中間膜を得た。実施例23では、組成物Bを組成物Aに変更したこと以外は実施例19と同様にして、中間膜を得た。実施例24では、組成物Bを組成物Aに変更したこと以外は実施例20と同様にして、中間膜を得た。
【0158】
実施例21〜24で得られた中間膜を実施例17〜20で得られた中間膜と同様にして、引き裂き強度及びヘーズ値を評価した。引き裂き強度及びヘーズ値に関しては、実施例21〜24の評価結果はいずれも良好であり、実施例21は実施例17と同様の評価結果を示し、実施例22は実施例18と同様の評価結果を示し、実施例23は実施例19と同様の評価結果を示し、実施例24は実施例20と同様の評価結果を示した。