(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975898
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯機の梱包構造
(51)【国際特許分類】
B65D 81/127 20060101AFI20160809BHJP
B65D 85/68 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
B65D81/127 100Z
B65D85/68 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-20029(P2013-20029)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-151915(P2014-151915A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】伏木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 巨典
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−164176(JP,U)
【文献】
特開2002−211675(JP,A)
【文献】
実開昭63−042591(JP,U)
【文献】
特開2010−260558(JP,A)
【文献】
特開2006−321547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/02−81/17
B65D 85/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にタンクを有し、複数本の脚で架台に固定された柱形状を有する貯湯式給湯機を梱包材によって梱包する貯湯式給湯機の梱包構造であって、
前記貯湯式給湯機の端部である天井部に対向した基部と、前記貯湯式給湯機の側面を覆うように前記基部から延出した延出部とを有する端部被覆材と、
前記貯湯式給湯機の側面および前記端部被覆材の延出部を覆う梱包材と、
前記貯湯式給湯機の背面と前記梱包材との間の空間であって、前記延出部と干渉しない位置に設けられた緩衝材とを備え、
この緩衝材が設けられた側の前記梱包材に荷重を掛けることが許容される部分である旨の表示をなした貯湯式給湯機の梱包構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば貯湯式給湯機などの機器の梱包構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、貯湯式給湯機などの機器を移送する際、機器が変形、破損してしまうのを防止するため、このような機器を梱包対象物として梱包材によって梱包するものである。
【0003】
梱包材で梱包された梱包対象物は、運搬性や作業性などの種々の理由から、特定の部分に荷重が集中して掛かるような状態で移送されることがあり、その場合には、たとえ梱包材によって梱包された状態であっても、梱包材の荷重が集中して掛かった部分に対応する部分において梱包対象物が損傷してしまうおそれがある。
【0004】
例えば貯湯式給湯機は、内部にタンクを有するものであり、このタンクの容量を確保するために、背丈が高くなっている。このため、運搬時などに転倒や衝突する場合があり、貯湯式給湯機の変形や破損を防止するため、車輌による運搬時には車輌の荷台に横積みにする場合がある。車輌の荷台に横積みするときは、荷台上を滑らせたり、ずり上げやずり降ろしを行なうため、その際に荷台との摩擦などによって外装が変形や破損する場合があった。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば
図4に示すように、貯湯式給湯機の外周に梱包材を1周または複数周重ね巻き後に、更に1/4周重ね巻きするものがある。(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4948560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の梱包構造によれば、例えば貯湯式給湯機の外周に梱包材を1周または複数周重ね巻き後に、更に1/4周重ね巻きするものであるため、梱包対象物を良好に保護することができるものの、梱包材自体が嵩張るものとなってしまう。すると、梱包材自体を運搬、保管する際に場所やコストがかかるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、梱包対象物の周囲に配置される梱包材自体の寸法を小さくでき、且つ、梱包対象物を梱包した状態で移送される際に特定の部分に荷重が集中しても梱包対象物を良好に保護することができる梱包構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
内部にタンクを有し、複数本の脚で架台に固定された柱形状を有する貯湯式給湯機を梱包材によって梱包する貯湯式給湯機の梱包構造であって、前記貯湯式給湯機の端部である天井部に対向した基部と、前記貯湯式給湯機の側面を覆うように前記基部から延出した延出部とを有する端部被覆材と、前記貯湯式給湯機の側面および前記端部被覆材の延出部を覆う梱包材と、前記貯湯式給湯機の背面と前記梱包材との間の空間であって、前記延出部と干渉しない位置に設けられた緩衝材とを備え、この緩衝材が設けられた側の前記梱包材に荷重を掛けることが許容される部分である旨の表示をなした貯湯式給湯機の梱包構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、梱包対象物の周囲に配置される梱包材自体の寸法を小さくでき、且つ、梱包対象物を梱包した状態で移送される際に特定の部分に荷重が集中しても梱包対象物を良好に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3-A】本発明の実施形態に係る梱包構造に用いられる緩衝材の第1の変形例。
【
図3-B】本発明の実施形態に係る梱包構造に用いられる緩衝材の第2の変形例。
【
図3-C】本発明の実施形態に係る梱包構造に用いられる緩衝材の第3の変形例。
【
図3-D】本発明の実施形態に係る梱包構造に用いられる緩衝材の第4の変形例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る梱包構造は、
図1に示すように、梱包対象物としての貯湯式給湯機1を梱包材3によって梱包する梱包構造であり、この他に端部被覆材4、緩衝材5などで構成されている。
【0013】
まず、梱包材3は、貯湯式給湯機1を梱包した状態で移送される際に荷重を受ける荷重受け部3aを有する。荷重受け部3aは、梱包された貯湯式給湯機1を移送する際にその部分に荷重を掛けることが許容される部分であり、例えば「ずり降ろし面」といったような表示がなされている。この梱包材3は、荷重受け部3aとこの荷重受け部3aと対向する貯湯式給湯機1の対向部20との間に間隔を空けた状態で貯湯式給湯機1の周囲に配置される。なお、梱包材3の材質としては、ダンボールが用いられる。
【0014】
ここで、貯湯式給湯機1について説明すると、貯湯式給湯機1は、対向部20を側面に有する柱形状を有するものである。具体的には、貯湯式給湯機1は、直方体形状を有し、4つの方向を向く側面を有する。貯湯式給湯機1は、外装体などと呼ばれる筐体の内部にタンクや給湯に用いられる配管や弁といった機能部品が収容されており、これらの機能部品をメンテナンスしたり操作したりするために、筐体の一部が開放可能とされている。一般的には、このような筐体が開放可能とされた部分が前面と呼ばれ、これと対向する位置にある面が背面と呼ばれており、この背面が上述した対向部20に相当する。筐体は、一般的に金属板で構成され、その前面は、取り外し可能なパネルによって構成されている。貯湯式給湯機1の移送の際には、この筐体が変形、破損することがあるため、所定の梱包構造によって保護している。
【0015】
また、緩衝材5は、梱包材3の荷重受け部3aとこの荷重受け部3aと対向する貯湯式給湯機1の対向面との間に配置されるものであり、梱包材3とは別体で構成される。緩衝材5を梱包材3と別体とすることで、梱包材3自体の容積が増えてしまうのを防止できる。緩衝材5は、
図1に示すように、貯湯式給湯機1の対向面全体に対応して設けられる。材質としては、発泡スチロールが用いられる。なお、緩衝材5は、梱包に先立って梱包材3に固定される。
【0016】
また、端部被覆材4は、柱形状の貯湯式給湯機1の端部を覆うものである。ここで、この端部は、貯湯式給湯機1を設置した際に高さ方向上側に位置するため一般的に天井部などと呼ばれ、これに応じて端部被覆材4は一般的に天キャップなどと呼ばれる。端部被覆材4は、貯湯式給湯機1の端部に対向して配置される基部4aと、貯湯式給湯機1の側面を覆うように基部4aから延出する延出部4bとを有する。梱包材3を貯湯式給湯機1の周囲に配置した際には端部被覆材4の延出部4bが梱包材3で覆われる状態となる。
【0017】
なお、端部被覆材4で貯湯式給湯機1の端部を覆った状態で周囲に梱包材3を配置すると、梱包材3と貯湯式給湯機1の側面との間には空間が形成され、この空間に端部被覆材4の延出部4bと緩衝材5とが配置される状態となる。また、貯湯式給湯機1の背面側(対向部20側)では、端部被覆材4の延出部4bと緩衝材5とが配置されるが、これら端部被覆材4の延出部4b及び緩衝材5は、互いに干渉しない大きさに設定され、且つ、互いに干渉しないように配置される。
【0018】
図2に貯湯式給湯機1の外周を、梱包材3で梱包する手順を説明する。貯湯式給湯機1は、図示しない複数本の脚で架台2に固定されている。端部被覆材4は貯湯式給湯機1の天井部分に覆い被さるように取付けられる。このとき、貯湯式給湯機1の全体を被せるような袋(図示しない)を被せた後、端部被覆材4を取付けてもよい。なお、袋としては、ビニール袋が用いられる。
【0019】
端部被覆材4取付け後に、貯湯式給湯機1及び端部被覆材4の側壁外周を覆い被せるように梱包材3を取付ける。梱包材3には、接着剤や両面テープによって緩衝材5が予め取り付けられている。そして、梱包材3を取付ける際には、緩衝材5が貯湯式給湯機1の背面側(対向部20側)に位置するように(即ち、貯湯式給湯機1と梱包材3との間に入るように)梱包材3が配置される。
【0020】
緩衝材5を仮に梱包材3の外側に配置する場合には、緩衝材5が取れてしまわないような工夫や、荷扱いの工夫が必要であるが、緩衝材5を梱包材3の内側に配置すれば、緩衝材5を含めて梱包材3に覆われるため、緩衝材5が容易に脱落することがなく、取り扱い性も向上する。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、緩衝材5は、梱包材3に固定するのではなく、貯湯式給湯機1の全体を被せるような袋(図示しない)に取付けても良い。
【0022】
また、緩衝材5の貼付位置、形状は貯湯式給湯機1の背面側(対向部20側)などの1面に限定するものではなく、全周面、ある面、1部分でも良い。例えば、ずり上げやずり降ろしなどによる筐体の変形や破損の可能性が低いと判断されるところには緩衝材5を設けないが、悪路輸送が事前に想定される場合には、背面側(対向部20側)以外の部分にも事前に緩衝材を入れることとしても良い。
【0023】
その他、緩衝材5の貼付位置、形状に関する変形例について説明する。
図3(A)のように、貯湯式給湯機1の背面側(対向部20側)のほぼ全面を覆うように緩衝材5を設けてもよいし、
図3(B)、
図3(C)のように、貯湯式給湯機1の背面側(対向部20側)の一部を覆うように設けてもよい。また、
図3(D)のように緩衝材5を縦方向に分割して複数設けてもよい。なお、
図3(A)〜(D)は、緩衝材5及び対向部20の位置関係が分かりやすいように表示したものであり、実際には、緩衝材5は、上述のように梱包材3又は袋(図示しない)に取付けられる。
【0024】
図4に示すような従来の梱包構造は、貯湯式給湯機1の外装に梱包材13を1周または複数周重ね巻き後に、更に1/4周重ね巻きし、その上部に端部被覆材14を備えるものであった。このため、貯湯式給湯機1の外形寸法に対する梱包材を含めた外装寸法が大きく(b+b‘)なり、車輌への積載効率が低下するという問題があった。例えば工場出荷時には、多数の梱包された貯湯式給湯機1を一括して車輌で運搬することがあるが、積載効率が低下すると、車輌に積載することができる貯湯式給湯機の数が少なくなってしまうことがあり得た。一方、上記実施形態に係る梱包構造によれば、積載効率を低下させることなく、車輌の荷台に横積みするときの、ずり上げやずり降ろしの際に荷台との摩擦などによって荷重が掛かっても外装の変形や破損を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 貯湯式給湯機
2 架台
3 梱包材
4 端部被覆材
5 緩衝材