特許第5975904号(P5975904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59759041対多通信システム、1対多通信方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975904
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】1対多通信システム、1対多通信方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/20 20090101AFI20160809BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20160809BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20160809BHJP
   H04W 28/10 20090101ALI20160809BHJP
【FI】
   H04W28/20
   H04W4/06 150
   H04W72/04 150
   H04W28/10
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-38356(P2013-38356)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-165906(P2014-165906A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】河合 直樹
【審査官】 ▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/001928(WO,A1)
【文献】 特開2009−246526(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0253435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信端末と、無線ネットワーク装置と、複数の基地局とからなる1対多通信システムであって、
前記無線ネットワーク装置が、
過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベースと、
前記複数の基地局のユニキャスト通信の使用容量を取得し、該取得したユニキャスト通信の使用容量を前記データベースに記録する使用容量取得手段と、
前記送信端末から前記1対多通信の送信情報を受信する1対多通信情報受信手段と、
受信した1対多通信情報と前記データベース内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する推定手段と、
前記送信端末に前記使用可能な容量情報を送信する使用可能容量情報送信手段と、
前記送信端末が、
前記無線ネットワーク装置に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する1対多通信情報送信手段と、
前記無線ネットワーク装置に、前記使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、前記1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、前記1対多通信情報を変更する登録手段と、
前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する1対多通信データ送信手段と、
を備え、
前記無線ネットワーク装置が、
該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する通知手段と、
前記送信端末から、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する1対多データ受信手段と、
前記受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する配信手段と、
を備え、
前記基地局が、前記配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信することを特徴とする1対多通信システム。
【請求項2】
前記1対多通信の送信情報には、少なくとも、日時、配信エリア、スループットの情報が含まれ、前記無線ネットワーク装置の使用可能容量情報送信手段は、配信日時に対して、所定期間前に、使用可能容量情報を前記送信端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の1対多通信システム。
【請求項3】
前記1対多通信の送信情報に、優先度を付した複数の送信希望日時を含むことを特徴とする請求項2に記載の1対多通信システム。
【請求項4】
前記データベースは、少なくとも、カレンダー情報、時間帯情報と過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況とを対応付けて記憶することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の1対多通信システム。
【請求項5】
前記データベースは、さらに、気候条件、イベント情報と過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況とを対応付けて記憶することを特徴とする請求項4に記載の1対多通信システム。
【請求項6】
前記推定手段は、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行って得られた伝送容量と前記取得したユニキャスト通信の使用容量とに基づいて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の1対多通信システム。
【請求項7】
前記推定手段は、さらに、ユニキャスト通信のための容量マージンを加えて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする請求項6に記載の1対多通信システム。
【請求項8】
前記推定手段は、過去のユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行う際の前記イベント情報に関する重み係数をイベントの有無による使用容量の違いに基づいて、可変して用いることを特徴とする請求項6に記載の1対多通信システム。
【請求項9】
送信端末と、無線ネットワーク装置と、複数の基地局とからなる1対多通信システムにおける1対多通信方法であって、
前記無線ネットワーク装置が、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベースを備え、
前記無線ネットワーク装置が、前記複数の基地局のユニキャスト通信の使用容量を取得する第1のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、該取得したユニキャスト通信の使用容量を前記データベースに記録する第2のステップと、
前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する第3のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から前記1対多通信の送信情報を受信する第4のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、受信した1対多通信情報と前記データベース内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する第5のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末に前記使用可能な容量情報を送信する第6のステップと、
前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に、前記使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、前記1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、前記1対多通信情報を変更して、前記第3のステップに戻る第7のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する第8のステップと、
前記送信端末が、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する第9のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する第10のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する第11のステップと、
前記基地局が、前記配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信する第12のステップと、
を備えたことを特徴とする1対多通信方法。
【請求項10】
前記第2のステップにおいて、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行って得られた伝送容量と前記取得したユニキャスト通信の使用容量とに基づいて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする請求項9に記載の1対多通信方法。
【請求項11】
前記第2のステップにおいて、過去のユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行う際の前記イベント情報に関する重み係数をイベントの有無による使用容量の違いに基づいて、可変して用いることを特徴とする請求項9に記載の1対多通信方法。
【請求項12】
送信端末と、無線ネットワーク装置と、複数の基地局とからなる1対多通信システムにおける1対多通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記無線ネットワーク装置が、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベースを備え、
前記無線ネットワーク装置が、前記複数の基地局のユニキャスト通信の使用容量を取得する第1のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、該取得したユニキャスト通信の使用容量を前記データベースに記録する第2のステップと、
前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する第3のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から前記1対多通信の送信情報を受信する第4のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、受信した1対多通信情報と前記データベース内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する第5のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末に前記使用可能な容量情報を送信する第6のステップと、
前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に、前記使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、前記1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、前記1対多通信情報を変更して、前記第3のステップに戻る第7のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する第8のステップと、
前記送信端末が、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する第9のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する第10のステップと、
前記無線ネットワーク装置が、前記受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する第11のステップと、
前記基地局が、前記配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信する第12のステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
前記第2のステップにおいて、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行って得られた伝送容量と前記取得したユニキャスト通信の使用容量とに基づいて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記第2のステップにおいて、過去のユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行う際の前記イベント情報に関する重み係数をイベントの有無による使用容量の違いに基づいて、可変して用いることを特徴とする請求項12に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信分野における1対多通信システム、1対多通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信では多くがユニキャスト方式による双方向通信であったが、近年、1対多通信方式による一方向性の通信サービスが導入されようとしている。例えば、最新の移動通信方式としてLTE(Long Term Evolution)が開始されている。このLTEにはマルチキャスト方式によるeMBMS(Evolved Multimedia Broadcast/Multicast Service)というサービスを行うことが可能となっている。このeMBMSの方式は、下記の非特許文献1〜非特許文献6にあるように既に3GPPで標準化されており、今後、LTEの移動通信システムの中で、ユニキャスト通信とeMBMSによるマルチキャスト通信の両方を行うことになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/23246.htm
【非特許文献2】http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/36300.htm
【非特許文献3】http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/36211.htm
【非特許文献4】http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/36331.htm
【非特許文献5】http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/36440.htm
【非特許文献6】http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/26346.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユニキャスト方式の通信と1対多通信方式の通信の両方を同時に行う場合、通信基地局では両者に伝送容量を配分する必要がある。ここでの伝送容量の配分は周波数分割と時間分割の両方によるものを意味する。現在、ほとんどのサービスがユニキャスト通信であるため、ユニキャスト通信の呼損や遅延が無いように伝送容量を確保するよう、基地局のリソースを設定している。今後サービスが行われる1対多通信の伝送容量を十分確保、あるいは固定的に伝送容量を設定しようとすると、使用できる移動通信用の周波数資源には限りがあるとともに、基地局の伝送容量を増加させるため設備投資をしなければならないという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ユニキャスト通信、1対多通信の両方を同時に行う場合、両者への伝送容量の割り当てを自動化し、基地局に設備されている移動通信用の周波数資源を有効に活用することにより、基地局の伝送容量を増加させるための設備投資を抑える1対多通信システム、1対多通信方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
(1)本発明は、送信端末(例えば、図1の送信端末100に相当)と、無線ネットワーク装置(例えば、図1の無線ネットワーク装置200に相当)と、複数の基地局(例えば、図1の基地局310、320、330に相当)とからなる1対多通信システムであって、前記無線ネットワーク装置が、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベース(例えば、図3のデータベース210に相当)と、前記複数の基地局のユニキャスト通信の使用容量を取得し、該取得したユニキャスト通信の使用容量を前記データベースに記録する使用容量取得手段(例えば、図3の使用容量取得部220に相当)と、前記送信端末から前記1対多通信の送信情報を受信する1対多通信情報受信手段(例えば、図3の1対多通信情報受信部240に相当)と、受信した1対多通信情報と前記データベース内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する推定手段(例えば、図3の推定部230に相当)と、前記送信端末に前記使用可能な容量情報を送信する使用可能容量情報送信手段(例えば、図3の使用可能容量情報送信部250に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する1対多通信情報送信手段(例えば、図2の1対多通信情報送信部110に相当)と、前記無線ネットワーク装置に、前記使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、前記1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、前記1対多通信情報を変更する登録手段(例えば、図2の登録部140に相当)と、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する1対多通信データ送信手段(例えば、図2の1対多通信データ送信部130に相当)と、を備え、前記無線ネットワーク装置が、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する通知手段(例えば、図3の通知部260に相当)と、前記送信端末から、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する1対多データ受信手段(例えば、図3の1対多データ受信部270に相当)と、前記受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する配信手段(例えば、図3の配信部280に相当)と、を備え、前記基地局が、前記配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信することを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0008】
(2)本発明は、(1)の1対多通信システムについて、前記1対多通信の送信情報には、少なくとも、日時、配信エリア、スループットの情報が含まれ、前記無線ネットワーク装置の使用可能容量情報送信手段は、配信日時に対して、所定期間前に、使用可能容量情報を前記送信端末に送信することを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0009】
(3)本発明は、(2)の1対多通信システムについて、前記1対多通信の送信情報に、優先度を付した複数の送信希望日時を含むことを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0010】
(4)本発明は、(1)または(2)の1対多通信システムについて、前記データベースは、少なくとも、カレンダー情報、時間帯情報と過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況とを対応付けて記憶することを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0011】
(5)本発明は、(1)から(4)の1対多通信システムについて、前記データベースは、さらに、気候条件、イベント情報と過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況とを対応付けて記憶することを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0012】
(6)本発明は、(4)または(5)の1対多通信システムについて、前記推定手段は、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行って得られた伝送容量と前記取得したユニキャスト通信の使用容量とに基づいて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0013】
(7)本発明は、(6)の1対多通信システムについて、前記推定手段は、さらに、ユニキャスト通信のための容量マージンを加えて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0014】
(8)本発明は、(6)の1対多通信システムについて、前記推定手段は、過去のユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行う際の前記イベント情報に関する重み係数をイベントの有無による使用容量の違いに基づいて、可変して用いることを特徴とする1対多通信システムを提案している。
【0015】
(9)本発明は、送信端末と、無線ネットワーク装置と、複数の基地局とからなる1対多通信システムにおける1対多通信方法であって、前記無線ネットワーク装置が、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベースを備え、前記無線ネットワーク装置が、前記複数の基地局のユニキャスト通信の使用容量を取得する第1のステップ(例えば、図4のステップS110に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、該取得したユニキャスト通信の使用容量を前記データベースに記録する第2のステップ(例えば、図4のステップS120に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する第3のステップ(例えば、図4のステップS130に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から前記1対多通信の送信情報を受信する第4のステップ(例えば、図4のステップS140に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、受信した1対多通信情報と前記データベース内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する第5のステップ(例えば、図4のステップS150に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末に前記使用可能な容量情報を送信する第6のステップ(例えば、図4のステップS160に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に、前記使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、前記1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、前記1対多通信情報を変更して、前記第3のステップに戻る第7のステップ(例えば、図4のステップS170に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置が、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する第8のステップ(例えば、図4のステップS180に相当)と、前記送信端末が、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する第9のステップ(例えば、図4のステップS190に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する第10のステップ(例えば、図4のステップS200に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する第11のステップ(例えば、図4のステップS210に相当)と、前記基地局が、前記配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信する第12のステップ(例えば、図4のステップS220に相当)と、を備えたことを特徴とする1対多通信方法を提案している。
【0016】
(10)本発明は、(9)の1対多通信方法について、前記第2のステップが、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行って得られた伝送容量と前記取得したユニキャスト通信の使用容量とに基づいて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とする1対多通信方法を提案している。
【0017】
(11)本発明は、(9)の1対多通信方法について、前記第2のステップが、過去のユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行う際の前記イベント情報に関する重み係数をイベントの有無による使用容量の違いに基づいて、可変して用いることを特徴とする1対多通信方法を提案している。
【0018】
(12)本発明は、送信端末と、無線ネットワーク装置と、複数の基地局とからなる1対多通信システムにおける1対多通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記無線ネットワーク装置が、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベースを備え、前記無線ネットワーク装置が、前記複数の基地局のユニキャスト通信の使用容量を取得する第1のステップ(例えば、図4のステップS110に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、該取得したユニキャスト通信の使用容量を前記データベースに記録する第2のステップ(例えば、図4のステップS120に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する第3のステップ(例えば、図4のステップS130に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から前記1対多通信の送信情報を受信する第4のステップ(例えば、図4のステップS140に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、受信した1対多通信情報と前記データベース内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する第5のステップ(例えば、図4のステップS150に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末に前記使用可能な容量情報を送信する第6のステップ(例えば、図4のステップS160に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置に、前記使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、前記1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、前記1対多通信情報を変更して、前記第3のステップに戻る第7のステップ(例えば、図4のステップS170に相当)と、前記送信端末が、前記無線ネットワーク装置が、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する第8のステップ(例えば、図4のステップS180に相当)と、前記送信端末が、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する第9のステップ(例えば、図4のステップS190に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記送信端末から、前記使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する第10のステップ(例えば、図4のステップS200に相当)と、前記無線ネットワーク装置が、前記受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する第11のステップ(例えば、図4のステップS210に相当)と、前記基地局が、前記配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信する第12のステップ(例えば、図4のステップS220に相当)と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0019】
(13)本発明は、(12)のプログラムについて、前記第2のステップが、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行って得られた伝送容量と前記取得したユニキャスト通信の使用容量とに基づいて、1対多通信に使用できる今後の使用容量を推定することを特徴とするプログラムを提案している。
【0020】
(14)本発明は、(12)のプログラムについて、前記第2のステップが、過去のユニキャスト通信の伝送容量に対応付けられた前記情報ごとに重み付け演算を行う際の前記イベント情報に関する重み係数をイベントの有無による使用容量の違いに基づいて、可変して用いることを特徴とするプログラムを提案している。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マルチキャスト通信を導入する場合に、現在行われているユニキャスト通信の伝送容量を下げてサービスの低下を招くことなく、周波数資源を有効に使用して現在の基地局の伝送容量を増加させる設備投資を抑え、マルチキャスト通信にできるだけ多くの伝送容量を配分できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る1対多通信システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る送信端末の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る無線ネットワーク装置の構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る1対多通信システムの処理を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る1対多通信システムにおけるサービス登録処理を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る1対多通信システムにおけるユニキャスト通信の使用量データの蓄積処理を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る1対多通信システムにおける1対多通信の使用容量の予測処理を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る1対多通信システムにおける1対多通信の使用容量について、イベント可変係数の候補を算出する処理を示す図である。
図9】ある一日のユニキャスト通信の使用容量の変動例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0024】
<1対多通信システムの概要および構成>
一般に、基地局の伝送容量は、時々刻々と変化するユニキャスト通信が使用する最大の伝送容量を想定して、そのサービスに呼損や遅延ができるだけ生じないように確保されている。しかし、図9に示すように、一日の時刻の中では、ユニキャスト通信が使用する伝送容量は変動し、時刻によっては伝送容量が使用されていない部分も多くある。そこで、1対多通信を導入する場合、ユニキャスト通信が使用していないと予想される伝送容量を割り当てるようにすれば、基地局に設定されている伝送容量を有効に活用できる。
【0025】
本発明の1対多通信システムは、上記に鑑みて、ユニキャスト通信を阻害しない範囲で、効率的に、1対多通信を行うものである。なお、本発明の通信方式は、マルチキャスト通信に類するものであり、不特定多数の受信端末にデータをPush型で分配するものであるが、その通信方式をより明確化するために、ここでは、本通信方式を1対多通信と呼ぶ。
【0026】
本実施形態に係る1対多通信システムは、図1に示すように、送信端末100と、無線ネットワーク装置200と、複数の基地局310、320、330と、図示しない複数の受信端末とから構成されている。なお、送信端末100は、無線ネットワーク装置200と無線で接続されるスマートフォンや携帯電話等携帯端末でもよいし、パーソナルコンピュータ等の無線ネットワーク装置200と無線で接続される機器であってもよい。また、送信端末として携帯端末を使用する場合に、送信端末から事前に1対多通信データを無線ネットワーク装置に設けられたサーバに送付し、蓄積しておき、当該時刻に無線ネットワーク装置のサーバから送信してもよい。
【0027】
通信業者の無線ネットワーク装置200は、複数の基地局310、320、330のユニキャスト通信の使用容量データを入手することができる。1対多通信は下り回線のみを用いるため、ユニキャスト通信の下り回線の使用容量データを無線ネットワーク装置200で蓄積して統計処理することにより、今後の日時の使用容量を予測することができる。この予測値を基地局の下り回線の全伝送容量から差し引くことにより、残りの空いている伝送容量をマルチキャスト通信に割り当てることができる。
【0028】
この場合、通常上り回線として使用されていても適応的に下り回線として用いることがある場合は、その回線を含む全伝送容量として予測しても良い。このようにすれば、ユニキャスト通信の伝送容量を確保してサービスの低下を招くことなく、1対多通信は空いている伝送容量を使用してサービスできるため、電波の利用費用を抑えて実施することが可能になる。
【0029】
<送信端末の構成>
本実施形態に係る送信端末は、図2に示すように、1対多通信情報送信部110と、1対多通信データ送信部130と、登録部140とから構成されている。
【0030】
ここで、1対多通信情報送信部110は、無線ネットワーク装置200に対して、1対多通信に関する送信情報を送信する。1対多通信データ送信部130は、受信した使用可能容量情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信する。登録部140は、無線ネットワーク装置200に、使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、1対多通信情報を変更する。
【0031】
<無線ネットワーク装置の構成>
本実施形態に係る無線ネットワーク装置は、図3に示すように、データベース210と、使用容量取得部220と、推定部230と、1対多通信情報受信部240と、使用可能容量情報送信部250と、通知部260と、1対多データ受信部270と、配信部280とから構成されている。
【0032】
データベース210は、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積している。使用容量取得部220は、複数の基地局310、320、330のユニキャスト通信の使用容量を取得する。推定部230は、受信した1対多通信情報とデータベース210内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定する。
【0033】
1対多通信情報受信部240は、送信端末100から1対多通信の送信情報を受信する。使用可能容量情報送信部250は、送信端末に使用可能な容量情報を送信する。
【0034】
通知部260は、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する。1対多データ受信部270は、送信端末100から、使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する。配信部280は、受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信する。
【0035】
具体的には、1対多通信を用いてサービスをする送信ユーザーは、図示しない、1対多通信登録入力装置を用いて通信業者の図示しない、1対多通信登録受付装置を介して無線ネットワーク装置200に登録する。通信業者は送信ユーザーから無線ネットワーク装置に登録された複数のサービスを管理するとともに、当該サービスを1対多通信するため、登録されたエリアの基地局に伝送容量の配分を設定する。そして、登録された1対多通信を実施する当該日時に、無線ネットワーク装置200に指示して各基地局の伝送容量を設定し、当該日時に、送信ユーザーは、用意したコンテンツを1対多通信データ送信部130から送信し、通信業者はそのコンテンツを1対多データ受信部270で受信する。受信した1対多データは無線通信ネットワークの当該エリアに関係する基地局から1対多通信される。
【0036】
<1対多通信システムの処理>
図4を用いて、本実施形態に係る1対多通信システムの処理について説明する。
【0037】
まず、無線ネットワーク装置200が、過去から現在までのユニキャスト通信の伝送容量の状況を蓄積するデータベース210を備え、複数の基地局310、320、330のユニキャスト通信の使用容量を取得し(ステップS110)、取得したユニキャスト通信の使用容量をデータベース210に記録する(ステップS120)。
【0038】
送信端末100が、無線ネットワーク装置200に対して、1対多通信に関する送信情報を送信し(ステップS130)、無線ネットワーク装置200が、送信端末100から1対多通信の送信情報を受信する(ステップS140)。
【0039】
無線ネットワーク装置200は、受信した1対多通信情報とデータベース210内のデータに基づいて、使用可能な容量情報を推定し(ステップS150)、送信端末100に使用可能な容量情報を送信する(ステップS160)。
【0040】
送信端末100は、無線ネットワーク装置200に、使用可能な容量情報以下の使用する容量とともに、1対多通信情報を登録し、登録できない場合には、1対多通信情報を変更して、ステップS130に戻る(ステップS170)。
【0041】
無線ネットワーク装置200は、該当する基地局に、登録された使用する容量と1対多通信情報に基づいて、容量を割り振って通知する(ステップS180)。
【0042】
送信端末100は、使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを送信し(ステップS190)、無線ネットワーク装置200は、送信端末100から、使用する容量と1対多通信情報に基づいて、1対多通信を行う1対多通信データを受信する(ステップS200)。
【0043】
無線ネットワーク装置200は、受信した1対多通信を行う1対多通信データを該当する基地局に、割り振った容量分配信し(ステップS210)、記基地局310、320、330が、配信された1対多通信を行う1対多通信データを配信する(ステップS220)。
【0044】
図5を用いて、1対多通信のサービス登録に関する処理について説明する。
【0045】
まず、送信ユーザーは1対多通信登録入力装置を用いて、例えば、数日あるいは数時間など設定された登録期限の前に1対多通信する「月日」、「時刻」、「エリア」、「スループット」を1対多通信登録受付装置に入力する(ステップS310)。送信ユーザーは1対多通信として使用できる伝送容量を越えない範囲で1対多通信のサービスを登録できる(ステップS320からステップS340)。送信ユーザーの1対多通信の登録は、基本的に先に登録したサービスが優先され、1対多通信の伝送容量が無くなった時点で、登録は受け付けない。
【0046】
ただし、災害などで公的機関が緊急に1対多通信をしなければならない場合は、先に登録されたサービスが当該日時に送信されず抹消されることも有り得るが、これは送信ユーザーと通信業者間の契約や運用により定める事項である。
【0047】
上記のように、1対多通信の送信ユーザーは放送局のような免許を受けた特定の法人などではなく、一般の通信利用者が電話やEメール、Web掲示などと同様に、自由にサービスを登録しコンテンツを発信することができることが基本である。一方、1対多通信が誹謗中傷や公序良俗に反して利用される場合も想定されるので、それを防ぐため、送信ユーザーと通信業者が事前にコンテンツ内容について契約を結び、公式サイトのように認定し登録を可能とする場合も考えられる。
【0048】
図6に示すように、無線ネットワーク装置200は、各基地局のユニキャスト通信で使用した伝送容量の一定の単位時間ごとのデータを入手する(ステップS410)。一定単位時間ごととは使用容量の変動の速さを考慮して1分毎から30分毎などが考えられる。
【0049】
その入手した過去のデータに一日の中の「時刻」、および休日、祝日などを含む「曜日」、季節にも関係する「月」などのカレンダー分類のカテゴリのメタデータを付与する。使用容量はこれらの各カテゴリにより異なる特徴がある。メタデータを付与した過去のデータは無線ネットワーク装置に蓄積される(ステップS420)。
【0050】
そして、無線ネットワーク装置は、今後の日時の使用容量を予測する。そのため、図7に示すように、予測する日時に一致したこのカテゴリに基づいて抽出された複数の過去データを統計処理して予測値を出力する。
【0051】
具体的には、まず、予測する日時を指定し、予測する日時を時刻、曜日、月のカテゴリに分類する。そして、カテゴリに一致あるいは類似する過去のデータを抽出し、抽出した過去のデータに基づいて、統計処理を行う。
【0052】
なお、上記のカレンダー分類のカテゴリの他に、ユニキャスト通信の使用容量データの予測値に影響を与えるカテゴリを付加しえもよい。つまり、予測する日時の天気予報、あるいは祭り、花火大会、コンサート開催などのイベントにより、ユニキャスト通信の使用容量は異なる特徴があり、カレンダー分類とは異なるカテゴリとなる。
【0053】
これらのカテゴリについても、無線ネットワーク装置において使用容量データにメタデータとして付与する。また、これらのカテゴリを用いる場合、今後の週間天気予報やイベントスケジュールをWeb等から自動的に入手して、予測日時に関わるカテゴリの予定を抽出する。なお、これらのカテゴリの予定をWeb情報から自動的に抽出する方法として、既にWeb内のテキストを分析するための自然言語処理技術などを用いた情報抽出のツールが多数開発されている。
【0054】
また、過去の使用容量データを統計処理して予測する場合、カテゴリの重み付けを行い、複数のデータを加重平均してもよい。例えば、ある時刻、曜日について一致するn個の過去の使用容量データがあるとすると、予測値P(x,t,w)は以下の数1となる。
【0055】
【数1】
【0056】
ここで、tを時刻、wを曜日、xをそれぞれのカテゴリが付与された過去の使用容量とする。また、a、b、c、d、eはそれぞれ月、年、天気、イベント1、イベント2などのカテゴリを重み付けする係数であり、係数の合計値は1である。
【0057】
例えば、18時、土曜日に一致するデータがn個あるとすると、月、年が異なるデータについては、近い月、年ほど係数の重みを大きくする。また、予測する日時の天気やイベントについては使用容量への影響が大きいことが統計的に示される場合は重みを大きくする。このようにしてカテゴリの加重平均により予測値を算出する。なお、過去の使用容量データを抽出するために一致する要素を時刻だけ、あるいは時刻、曜日に加えて月まで含んでも良い。
【0058】
また、上記において数1の係数を可変としてもよい。これは、予測した使用容量と実際の使用容量を比較して重み付けする係数を常に実際の使用容量に近くなるようにするためである。花火、祭り、コンサートなどのイベントがあった場合の実際の使用容量とイベントが無い場合とを比較することにより、それらのイベントの重み付けを修正し、将来の予測精度を上げることができる。
【0059】
具体的には、図8に示すように、使用容量データの一致条件として、予測する日時の時刻t、曜日wとし、月mの可変係数を固定とし、イベントが無い場合すなわちイベント可変係数を0として予測使用容量を算出する。一方、イベントがあった場合の実際の使用容量と前記予測使用容量との差分を最少とするようにイベント可変係数の候補として設定する。この場合、可変係数の合計を1になるよう各カテゴリの重み付係数を正規化する。
【0060】
そして、今後、使用する新規のイベント可変係数を設定するには、例えば、数2に示すように前記イベント可変係数の候補とそれまでのイベント可変係数とをそれぞれ重み付した加重平均値として算出する。
【0061】
【数2】
【0062】
また、算出で得られた使用量の予測値に対して、実際のユニキャスト通信の使用量は変動があるため、変動を統計的に処理した偏差を一定のマージンとして加えてもよい。このようにすると変動するユニキャスト通信に対して容量割り当てを十分にし、サービス低下する確率をより少なくできる。
【0063】
さらに、1対多通信するエリアは、全国に展開している基地局を様々にグルーピングすることにより、小さな街から市町村、都道府県、全国など異なる広さの範囲を設定することができる。これにより“全国で展開するチェーン店舗がある街だけ”など、これまでの通信や放送ではできなかったPush配信のサービス形態が可能となる。
【0064】
それらの当該エリアでは、グルーピングした複数の基地局に対して1対多通信に同一の伝送容量の配分を設定する必要がある。そのため、当該エリアに関係する基地局におけるユニキャスト通信の使用容量の予測値は、1対多通信に用いるすべての基地局の予測値の中で最大値を使用する。このようにすると、ユニキャスト通信の伝送容量を十分に確保し、サービスの低下を招くことが少なくなる。
【0065】
また、LTEのeMBMSを用いた1対多通信ではSFN(単一周波数ネットワーク)を用いて、当該エリアにおける受信品質を向上する技術を用いている。当該エリアをSFNで1対多通信する場合には、当該エリアの外部にある基地局でも当該エリアに送信電波が指向しているセクターを用いる場合がある。したがって、ユニキャスト通信の予測する使用容量は、これらの1対多通信に用いる基地局のセクターも含んだすべての基地局の最大値として予測する必要がある。
【0066】
さらに、ここでは1対多通信に関係するすべての基地局の中で最大値としたが、近傍の基地局同士では伝送容量を補完し合う場合もあるので、ユニキャスト通信のサービスの低下を許容できる範囲内で、関係するすべての基地局の最大値ではなく一定の割合を乗じた低い値、あるいは平均値などを用いることも考えられる。
【0067】
なお、1対多通信システムの処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを送信端末および無線ネットワーク装置に読み込ませ、実行することによって本発明の1対多通信システムを実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0068】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0069】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0070】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
無線通信の分野では従来のユニキャスト方式の双方向通信だけでなく、1対多通信方式によるeMBMSなどの一方向性の通信サービスが導入されようとしている。それらの容量を固定的に配分することは余計なリソースを確保するための設備投資を必要とする。経済的な無駄が生じないよう、最小限のリソースの中で電波を十分に使い切ることが求められる。ユニキャスト通信のサービス低下を招かずに、新しいサービスである1対多通信を導入する場合に本発明を利用する可能性は高いと思われる。
【符号の説明】
【0072】
100;送信端末
110;1対多通信情報送信部
130;1対多通信データ送信部
140;登録部
200;無線ネットワーク装置
210;データベース
220;使用容量取得部
230;推定部
240;1対多通信情報受信部
250;使用可能容量情報送信部
260;通知部
270;1対多データ受信部
280;配信部
310;複数の基地局
320;複数の基地局
330;複数の基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9