(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0022】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0023】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0024】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0025】
また、以下の実施の形態において、構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲等についても同様である。
【0026】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0027】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の半導体装置の構造の一例を樹脂部を透過して示す平面図、
図2は
図1に示すA−A線に沿って切断した構造を示す断面図、
図3は
図1に示す半導体装置の焼結Ag層形成時の焼結Ag層の表面の構造の一例を示す部分模式図、
図4は
図1に示す半導体装置の第1樹脂部形成時の接合層の構造の一例を示す部分断面図である。また、
図5は
図1に示す半導体装置の接合層のフィレット形状を示す部分断面図、
図6は
図1に示す半導体装置の接合層に樹脂を含浸させた場合の効果を示す図である。
【0028】
本実施の形態1の半導体装置は、高温(200〜250℃)で動作するワイドギャップ半導体チップを搭載したものである。なお、本実施の形態1の上記ワイドギャップ半導体チップは、主面と裏面のそれぞれに電極を有する縦型半導体チップであり、本実施の形態1では、トランジスタデバイスを樹脂封止型の半導体パッケージに実装した場合を例に取り上げて説明する。
【0029】
また、本実施の形態1では、上記ワイドギャップ半導体チップとして、SiC(炭化珪素)からなる半導体チップ(SiCデバイスとも言う)の場合を取り上げて説明するが、上記ワイドギャップ半導体チップは、GaN(窒化ガリウム)等からなる半導体チップであってもよい。
【0030】
図1および
図2に示すように、本実施の形態1の半導体パッケージ(半導体装置)20には、SiCデバイスであるSiCチップ(ワイドギャップ半導体チップ)1が搭載されている。SiCチップ1は、主面1aと、その反対側の裏面1bと、主面1aと裏面1bの間の位置に配置された4つの側面1cとを有しており、主面1aは、例えば、2.5mm×2.5mmの大きさである。さらに、SiCチップ1の厚さは、例えば、0.35mmである。
【0031】
また、SiCチップ1の主面1aには、最表面がAl(アルミニウム)膜で構成された主電極であるソース電極(第1電極)2が形成されており、一方、裏面1bには、最表面がAu(金)またはAg(銀)膜で構成された多層膜構造のドレイン電極(第2電極)4が形成されている。なお、主面1aにはソース電極2より小さな面積のゲート電極(第3電極)3が形成されており、このゲート電極3の最表面もAl膜で構成されている。
【0032】
また、主面1aの電極間とチップ外周部には、保護膜であるパッシベーション膜5が形成されている。
【0033】
このようなSiCチップ1が、チップ搭載部であるダイパッド6の上面(チップ搭載面)6aに搭載されている。
【0034】
なお、本実施の形態1の半導体パッケージ20では、ダイパッド6の上面6aとSiCチップ1との間には、ダイパッド6とSiCチップ1とを接合するポーラスな(多孔質の)第1焼結Ag層16がダイボンド材として設けられている。
【0035】
また、SiCチップ1は、その主面1aのソース電極2が、金属ワイヤの一例としてのアルミニウムよりなるワイヤ(以下、アルミワイヤという)18を介してソースリード(第1リード)9と電気的に接続されている。その際、アルミワイヤ18は、ソースリード9と一体に形成されたソースボンドパッド8に電気的に接続されており、本実施の形態1の半導体パッケージ20では、ソース電極2に比較的大きな電流が印加されるため、2本のアルミワイヤ18によってソース電極2とソースリード9とが電気的に接続されている。
【0036】
また、主面1aのゲート電極3は、アルミワイヤ18より細いアルミワイヤ19を介してゲートリード(第3リード)11と電気的に接続されている。その際、アルミワイヤ19は、ゲートリード11と一体に形成されたゲートボンドパッド10に電気的に接続されている。
【0037】
一方、裏面1bのドレイン電極4は、第1焼結Ag層16を介してダイパッド6に電気的に接続し、さらにこのダイパッド6と一体に形成されたドレインリード(第2リード)7と電気的に接続されている。
【0038】
なお、半導体パッケージ20では、ダイパッド6、ソースリード9、ソースボンドパッド8、ドレインリード7、ゲートリード11およびゲートボンドパッド10は、Cu(銅)を主成分とする材料からなる。さらに、ダイパッド6およびドレインリード7のそれぞれの表面には、Niめっき膜12が形成され、また、ソースリード9、ソースボンドパッド8、ゲートリード11およびゲートボンドパッド10のそれぞれの表面にもNiめっき膜13が形成されている。すなわち、ダイパッド6を含む各リード部材のそれぞれの表面にはNiめっき膜が形成されている。
【0039】
したがって、SiCチップ1の主面1aのソース電極2と、Niめっき膜13が施されたソースボンドパッド8とが、2本のアルミワイヤ18が超音波ボンディングされたことで電気的に接続されている。また、主面1aのゲート電極3と、Niめっき膜13が施されたゲートボンドパッド10とが、アルミワイヤ19が超音波ボンディングされたことで結線されて電気的に接続されている。
【0040】
また、ダイパッド6の上面6aのチップ搭載領域の表面には、Niめっき膜12上にAgめっき膜(第1貴金属めっき膜)15が形成されている。ここでのNiめっき膜12の膜厚は、例えば2.0μmであり、一方、Agめっき膜15の膜厚は、例えば5.0μmであるが、ただし、これらの膜厚は、上記数値に限定されるものではなく、自由に選択することが可能である。
【0041】
なお、アルミワイヤ18,19は、それぞれの表面が、Au膜またはAg膜等の第2貴金属めっき膜で覆われていてもよく、これにより、アルミワイヤ18,19とSiCチップ1の電極との接続部や各リードとの接続部におけるそれぞれの接続強度を高めることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態1の半導体パッケージ20では、SiCチップ1は、粘度の高い焼結Agペーストを無加圧で焼結させて形成した多孔質の(ポーラスな)第1焼結Ag層16を介してダイパッド6上に搭載されている。この時、SiCチップ1の裏面1bには、最表面がAuまたはAg膜で構成された多層膜構造のドレイン電極4が形成されており、一方、ダイパッド6の上面6aには、Agめっき膜15が形成されているため、裏面1bのドレイン電極4のAuまたはAg膜がダイパッド6上のAgめっき膜15と金属接合している。
【0043】
なお、ダイボンド材として用いられる第1焼結Ag層16の厚さは、50μm以上が必要であり、ここでは150μm厚さとしている。また、ポーラスな第1焼結Ag層16の空孔率は20〜60vol%の範囲で調整し、ここでは、例えば40vol%としている。なお、SiCチップ1の裏面1bのドレイン電極4は、焼結Agとの相互拡散反応が少なく、多層膜構造が初期の状態のまま保たれている。
【0044】
また、本実施の形態1の半導体パッケージ20では、第1焼結Ag層16の上とその近傍に、液状の樹脂を塗布・硬化処理して形成したポリアミド樹脂やポリイミド樹脂、もしくはガラス転移温度が190℃以上の高耐熱のエポキシ樹脂からなる補強樹脂部(第1樹脂部)17が形成されている。
【0045】
すなわち、補強樹脂部17は、平面視で、SiCチップ1の周囲全体に亘って第1焼結Ag層16の表面を覆うように形成され、かつダイパッド6の上面6aのAgめっき膜15に対してフィレット状に形成されている。
【0046】
さらに、補強樹脂部17は、SiCチップ1の各側面1cそれぞれの一部を覆っている。すなわち、補強樹脂部17は、フィレット状に形成され、フィレットの上端部はSiCチップ1の各側面1cに到達しており、第1焼結Ag層16の保護層としての機能も有している。
【0047】
なお、補強樹脂部17を形成する樹脂は、第1焼結Ag層16の空孔部分の一部にも含浸しており、第1焼結Ag層16の強度(剛性)を高めているが、第1焼結Ag層16の全ての空孔部分に含浸しているものではない。
【0048】
また、半導体パッケージ20では、SiCチップ1、アルミワイヤ18,19、第1焼結Ag層16、補強樹脂部17、ソースボンドパッド8、ゲートボンドパッド10およびダイパッド6の一部が封止体(第3樹脂部)14によって覆われている。
【0049】
すなわち、ダイパッド6の下面6bと各リードの一部(ソースリード9、ドレインリード7、ゲートリード11)が露出した状態となるように、封止体14が全体を覆っており、封止体14の実装面側には、ダイパッド6の下面6bが露出している。なお、封止体14は、例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂等からなるものである。
【0050】
次に、
図3〜
図5を用いて、本実施の形態1の半導体パッケージ20に設けられた補強樹脂部17について詳しく説明する。
【0051】
図3に示す構造では、SiCチップ1が、
図5に示すAgめっき膜15が形成されたダイパッド6に、粒径0.5〜2.0μmのAg粒子からなるペーストを焼成して形成した多孔質の(ポーラスな)第1焼結Ag層16によって金属接合されている。なお、第1焼結Ag層16は、SiCチップ1の外周にフィレット部16aを形成している。
【0052】
フィレット部16aの断面形状は、
図3に示すように、チップ下から押し出された粘度の高い焼結Agペーストによって凹凸形状が形成され、さらに焼結過程では初期形状が保持されて焼結が進行するため、凸部Pを有する形状となる。
【0053】
このフィレット部16aに液状樹脂を塗布して硬化処理し、
図4に示すように、ポーラスな第1焼結Ag層16内に浸入させて樹脂が含浸した第1焼結Ag層16を形成すると同時に、第1焼結Ag層16のフィレット部16a上では表面張力の効果によって凹部に多くの樹脂が集まった状態で補強樹脂部17を形成している。
【0054】
図3に示すように、フィレット部16a上の
図4の補強樹脂部17の厚さは、凸部Pの両側のフィレット部16a上の2点Q,Rを結ぶ直線のうち、最下端にある第1直線L0をフィレット部16aの凸部Pの先端まで平行移動した第2直線L1を基準にして、第2直線L1からフィレット部16aやダイパッド6までの距離の1/4以上の厚さとする。さらに、フィレット部16aで第2直線L1から最も凹んだ箇所の樹脂層の厚さを10μm以上としている。
【0055】
なお、
図4に示すように、液状の樹脂を塗布し、さらに樹脂の硬化処理を行うと、第1焼結Ag層16内には、樹脂が浸入できなかった未充填部16bも存在している。
【0056】
また、
図5は、チップ側面の近傍に初期の縦クラック16cが存在する第1焼結Ag層16のフィレット部16aに補強樹脂部17を形成した構造を示すものである。
図5に示すように、SiCチップ1の裏面1bにはチタン等のコンタクト膜1d、ニッケル等の下地膜1e、AuまたはAg等の貴金属膜1fが形成されている。
【0057】
さらに、ダイパッド6の上面6aのチップ搭載領域にはAgめっき膜15が形成されており、SiCチップ1とダイパッド6は第1焼結Ag層16で接合されている。なお、SiCチップ1の側面1cの第1焼結Ag層16のフィレット部16aには、焼結過程で形成された初期の縦クラック16cが存在し、縦クラック16cの内部および上記で定義した第1直線L1に対して凹んだ第1焼結Ag層16の領域および表面には補強樹脂部17が形成されている。
【0058】
詳細には、ダイボンド工程で、半導体チップをダイパッド6上に配置した際に、押し出された焼結Agペーストは、チップ側面に近い領域で凹部を形成し、ペースト焼結過程の体積収縮によってチップ側面の近傍に縦方向のクラック(縦クラック16c)を形成し易く、このパッケージ完成時の初期の縦クラック16cがフィレットによる接合部の補強効果を弱めてしまう。
【0059】
その結果、封止樹脂が剥離し、その後の接合部の温度サイクルテストの耐性を低下させるという課題が発生する。
【0060】
また、初期の縦クラック16cは、チップ裏面の電極の耐湿信頼性を低下させるという課題もある。
【0061】
そこで、本実施の形態1の半導体パッケージ20では、SiCチップ1とCu合金からなるダイパッド6を厚さ150μm程度の第1焼結Ag層16でダイボンディングし、凸形状となった第1焼結Ag層16のフィレット部16aの凹部やSiCチップ1の側面1cの近傍の縦クラック16cに、高耐熱・高強度の樹脂を充填して補強した構造としている。
【0062】
これにより、SiCチップ1の動作温度が200〜250℃の高温となって封止樹脂(封止体14)がダイパッド6と剥離した状態になった場合においても、SiCとCuの熱膨張差により発生する熱応力が、第1焼結Ag層16のフィレット部16aの特定箇所に集中することが無くなり、フィレット部16aにおけるクラック発生時期を遅らせることが可能になる。
【0063】
その結果、ダイボンド部(SiCチップ1とダイパッド6の接合部)の温度サイクルテストにおける信頼性を大幅に向上させることができ、半導体パッケージ20の信頼性を向上させることができる。
【0064】
さらに、補強樹脂部17は、SiCチップ1の側面1cの一部を覆っているため、SiCチップ1と補強樹脂部17の密着度を高めることができる。すなわち、SiC(炭化珪素)と焼結Agは接着強度が然程高くないため、補強樹脂部17のフィレットの上端部がSiCチップ1の側面1cに到達していることにより、SiCチップ1と補強樹脂部17の密着度を高めることができ、SiCチップ1と第1焼結Ag層16の界面での剥離の抑制化を図ることができる。
【0065】
その結果、半導体パッケージ20の信頼性を向上させることができる。
【0066】
また、第1焼結Ag層16のフィレット部16aのチップ側面の近傍に縦クラック16cが形成された場合においても、縦クラック16cとそのフィレット部16aの上部および近傍の第1焼結Ag層16内の空孔部分を補強樹脂部17で埋めているため、チップ側面の多層電極膜の界面に水分が直接触れることを無くすことができる。
【0067】
すなわち、封止樹脂(封止体14)がダイパッド6と剥離して高湿度の外気がフィレット部16aの周囲まで浸入してきた場合であっても、チップ側面の多層電極膜の界面に水分が直接触れることが無いため、酸化や腐食等の作用により多層電極膜の界面の強度が低下して剥離してダイボンド部の耐湿信頼性が低下することを抑制化できる。
【0068】
さらに、第1焼結Ag層16の縦クラック16cに補強樹脂部17の樹脂が埋め込められるため、縦クラック16cからの外気や水分の浸入も低減化することができ、SiCチップ1の裏面1bの電極の耐湿信頼性の低下を抑制化することができる。
【0069】
また、半導体パッケージ20は、液状樹脂をポーラスな第1焼結Ag層16内に含浸させて、ポ−ラスな内部のAg骨格の表面を樹脂で覆った構造としているため、250℃の高温に数千時間の長期間保持された場合であっても、Agの表面拡散による焼結Agの組織変化が抑制され、ダイボンド部の高温信頼性を向上させることができる。
【0070】
ここで、
図6は、ダイボンド材として用いるポーラスな焼結Ag層において、その空孔部分に樹脂(例えばエポキシ系樹脂)を含浸させた場合Aと含浸させない場合Bとで、所望回数の温度サイクルを行った際の剪断強度を測定したものである。
図6に示すように、多孔質の焼結Ag層では、空孔部分に樹脂を含浸させた場合Aは、空孔部分に樹脂を含浸させない場合Bに比べて、温度サイクル数に対する剪断強度が高くなるという結果が得られている。
【0071】
以上のことから、ダイボンド部を150μmの厚いポーラスな第1焼結Ag層16で形成し、第1焼結Ag層16のフィレット部16aの凹部の応力が集中する箇所を、10μm以上の厚さの高耐熱・高強度の補強樹脂部17で覆って補強することにより、200〜250℃の高温領域で動作するSiCチップ1を搭載した半導体パッケージ20においても、その信頼性を高めることができる。
【0072】
すなわち、200〜250℃の高温領域で動作するSiCチップ1を搭載し、かつ温度サイクル信頼性、高温・高湿信頼性および高温信頼性に優れたダイボンド部を備えた半導体パッケージ20を実現することができる。
【0073】
その結果、長期的に信頼性に優れた樹脂封止型の半導体パッケージ20を実現することができる。
【0074】
なお、
図2に示す第1焼結Ag層16の厚さは、焼結Agペーストの粘度を高くすることで500μmを超えて厚くすることも可能であるが、材料コストを考慮して400μmを上限としている。なお、接合厚さが50μm以下の場合には、十分な樹脂補強を行っても、必要な温度サイクル信頼性が得られなくなるため、下限を50μmとしている。
【0075】
また、本実施の形態1の半導体パッケージ20では、第1焼結Ag層16がポーラス(多孔質)な構造であるため、SiCチップ1との熱膨張差によって発生する熱歪を自らの低弾性な特性によって吸収することができ、裏面1bの電極と焼結Ag層の接合界面が熱疲労破壊等で損傷することを回避することができる。
【0076】
また、SiCチップ1の裏面1bの電極と焼結Ag層の接合界面が熱疲労破壊等で損傷することを回避できるため、ダイパッド6とSiCチップ1の間の電流の通電ルートを確保することができる。これにより、200℃を越える高温動作が繰り返されても、上記電極の接合部の短時間での断線による不良の発生を無くすことができ、その結果、長期に亘るパッケージ製品としての信頼性を確保することができる。
【0077】
また、
図2に示す構造では、補強樹脂部17が1層からなる場合を示しているが、焼結Ag層の表面に金属との密着性に優れるポリイミド系の第1補強樹脂部を形成し、さらにその上にエポキシ系の第2補強樹脂部を形成して2層構造としてもよい。上記2層構造では、各層を接する材料に合わせることや最適厚さに調整することが容易となり、2層構造とすることで、半導体装置において、より高い信頼性を得ることが可能になる。
【0078】
次に、本実施の形態1の半導体装置(半導体パッケージ20)の組み立てについて説明する。
図7は
図1に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示すフロー図である。
【0079】
ここでは、
図7に示すフローに沿って、かつ
図1および
図2を用いて説明する。
【0080】
まず、部材として、全面にNiめっきを施し、かつその上に部分Agめっきを施したリードフレーム21と、裏面1bのドレイン電極4の表面にAuまたはAg等の貴金属膜が形成され、かつ主面1aのソース電極2およびゲート電極3それぞれの表面をAl膜で構成した縦型のSiCチップ(ワイドギャップ半導体チップ)1を準備する。
【0081】
ここで、リードフレーム21は、上面6aを有するダイパッド6と、ダイパッド6の近傍に配置されたソースリード9およびゲートリード11と、ダイパッド6と連結し、かつダイパッド6に一体で形成されたドレインリード7と、を備えている。
【0082】
次に、リードフレーム21のダイパッド6の上面6aのAgめっき領域上に、搭載するチップサイズに対応して微細なAg粒子と、揮発性の溶剤を主成分とする第1焼結Agペースト(焼結Agペースト)22をディスペンサーにより供給する。この時の供給形状は、SiCチップ1を搭載して押し込んだ時に、押し出される第1焼結Agペースト22がチップコーナーと辺とで同サイズのフィレットを形成するようなパターン、例えばチップコーナーと中央の5点にドットを形成するパターンで供給する。
【0083】
また、SiCチップ1は、マウンタでダイパッド6の上面6aから所定の高さとなるように押し込んで搭載する。この時、第1焼結Agペースト22の供給量は、チップ下が第1焼結Agペースト22で全面埋り、さらに押し出された第1焼結Agペースト22にSiCチップ1の側面1cが中腹くらいまで埋まる程度の適当な量とする。多過ぎるとSiCチップ1の主面(上面)1aまで焼結Agが回り込み、少な過ぎると十分な大きさのフィレットが形成できなくなるため、上記適当な量を供給する。
【0084】
チップ搭載後、大気雰囲気のベーク炉で200〜300℃、例えば250℃−1時間の条件で無加圧の状態で第1焼結Agペースト22の焼成処理を行い、第1焼結Ag層16を形成する。なお、加熱過程で溶剤成分や微小なAg粒子が表面に付着していた有機成分は、揮発や熱分解・酸化による分解で消失し、微細なAg粒子が接触した箇所でAgの表面拡散による粒子同士の連結が始まってAgのネットワークを形成し、第1焼結Ag層16におけるポーラス(多孔質)なAgのネットワークを介してSiCチップ1とダイパッド6とを金属的に接合する。
【0085】
次に、チップ上の、表面がAl膜で構成されたソース電極2と、Niめっき膜13が施されたソースリード9のソースボンドパッド8間を太いアルミワイヤ18を用いて超音波ボンディングによって結線する。さらに、同じく表面がAl膜で構成されたゲート電極3と、Niめっき膜13が施されたゲートリード11のゲートボンドパッド10間を細いアルミワイヤ19を用いて超音波ボンディングによって結線する。
【0086】
すなわち、SiCチップ1の主面1aのソース電極2とソースリード9とを、超音波ボンディングによって太いアルミワイヤ18を介して電気的に接続(結線)し、さらに主面1aのゲート電極3とゲートリード11とを、超音波ボンディングによって、アルミワイヤ18よりも細いアルミワイヤ19を介して電気的に接続(結線)する。
【0087】
次に、ダイボンド部の焼結Agフィレットである第1焼結Ag層16の表面上に、液状の第1高耐熱・高強度樹脂である補強樹脂(第1樹脂)23をディスペンサーで供給(塗布)する。この時、補強樹脂23をポーラスな第1焼結Ag層16内に含浸させ、かつフィレット上の凹部に補強樹脂23の樹脂層が所定の厚さ以上となるようにする。
【0088】
この時、補強樹脂23が、SiCチップ1の各側面1cそれぞれの一部を覆うように供給する。すなわち、補強樹脂23のフィレットの上端部(チップ側端部)が、SiCチップ1の各側面1cに到達するように補強樹脂23を供給する。
【0089】
供給後は、供給した補強樹脂23に合わせた最適な硬化条件で加熱処理を行って硬化処理し、第1焼結Ag層16の表面を覆い、かつフィレット状を成す補強樹脂部17を形成する。
【0090】
これにより、補強樹脂部17は、SiCチップ1の各側面1cそれぞれの一部を覆うように形成される。すなわち、補強樹脂部17のフィレットの上端部(チップ側端部)が、SiCチップ1の各側面1cに到達するように補強樹脂部17が形成される。
【0091】
次に、実装したリードフレーム21を樹脂成形金型にセットし、その後、低熱膨張フィラーを含むエポキシ系の封止樹脂を用いてトランスファーモールドし、加熱保持して硬化処理を行って封止体14を形成する。
【0092】
樹脂封止後、必要に応じて金属露出部(ここでは、ソースリード9、ドレインリード7およびゲートリード11)に半田めっきを行う。ただし、上記半田めっきの形成は、必ずしも行わなくても良い。
【0093】
次に、リードフレーム21を切断成形してパワー半導体パッケージである半導体パッケージ20が完成する。すなわち、リードフレーム21からソースリード9、ドレインリード7およびゲートリード11を切断分離し、かつこれらリードに所望の曲げ成形を行って半導体パッケージ20の組み立て完了となる。
【0094】
本実施の形態1の半導体装置の製造方法によれば、焼結Ag層によるダイボンド部の応力の集中箇所に高耐熱・高強度な補強樹脂部17を形成した構造を量産可能なプロセスで製造できるため、SiCチップ1の動作温度が200〜300℃の高温領域であっても、長期に渡って特性不良等の不具合を生じない高い信頼性を有する樹脂封止型の半導体パッケージ20を組み立てることが可能になる。この時、本実施の形態1の半導体パッケージ20を、従来品と同等の生産性で量産することが可能になる。
【0095】
なお、本実施の形態1では、ダイボンド補強用の補強樹脂23をワイヤボンディング後に塗布・硬化処理する場合を説明したが、この補強樹脂23を塗布・硬化処理する工程は、ダイボンディング後(ワイヤボンディング前)に行ってもよい。特にワイヤボンディング部の樹脂補強を行わない製品あるいは金属部材で補強する製品では、いずれの工程を採用しても生産性にほとんど差は生じない。
【0096】
また、ダイパッド6とボンドパッドに部分Agめっきを施したリードフレーム21に対して、第1焼結Agペースト22を供給する前に、加熱UV照射処理を行ってAgめっき面を酸化する工程を加えてもよい。この加熱UV照射処理を行うと、リードフレーム21の表面の有機汚染物を分解除去して清浄化できること、Agめっきの酸化膜は焼結Agペーストの焼結温度で還元される時にナノ粒子化され、ペーストのAg粒子との焼結接合を促進する働きをすることの2点から、焼結Ag層とリードフレーム間の接合強度をさらに高めることができる。
【0097】
また、補強樹脂23を塗布して硬化処理する工程を半硬化までに留めて、エポキシ系の封止樹脂を硬化処理する工程で本硬化を行う工程とすることも可能である。補強樹脂23を半硬化状態に留めて封止樹脂をモールド成形すると、補強樹脂23と封止樹脂間の密着力が向上し、フィレット近傍の封止樹脂がダイパッド6や焼結Ag層と剥離しなくなるため、ダイボンド部の温度サイクルテストの信頼性をさらに向上させることができる。
【0098】
次に、本実施の形態1の変形例について説明する。
【0099】
図8は実施の形態1の第1変形例の半導体装置の構造を樹脂部を透過して示す平面図、
図9は
図8に示すA−A線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【0100】
図8および
図9に示す第1変形例は、実施の形態1の
図1および
図2に示す半導体パッケージ20と略同様の構造の半導体パッケージ24を示すものであり、ここでは、半導体パッケージ24の半導体パッケージ20との相違点のみについて説明する。
【0101】
本第1変形例の半導体パッケージ24では、まず、SiCチップ1とリードとを電気的に接続するワイヤとして、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ(金属ワイヤの一例であり、銅(Cu)よりなるワイヤ)25,26が用いられ、超音波ボンディングによってそれぞれのワイヤが接続されている。あるいは、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25,26の代わりとして、Agワイヤ(金属ワイヤの一例であり、銀(Ag)よりなるワイヤ)を用いてもよい。
【0102】
ここでは、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25,26を用いた場合を説明する。すなわち、SiCチップ1のソース電極2とソースリード9とを電気的に接続するワイヤが、太い銅ワイヤ25であり、SiCチップ1のゲート電極3とゲートリード11とを電気的に接続するワイヤが、銅ワイヤ25より細い銅ワイヤ26であり、それぞれのワイヤとワイヤ接合部の耐熱性が高められている。
【0103】
そして、銅ワイヤ25,26はその表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われている。表面が貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26は、超音波ボンディングによって結線することが可能であるため、量産性に優れているという利点がある。
【0104】
また、SiCチップ1の主面1aのソース電極2とゲート電極3のそれぞれの最表面は、Ni/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されており、したがって、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26のそれぞれと、ソース電極2、ゲート電極3との接続性が高められている。
【0105】
さらに、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26を用いているため、銅ワイヤ25が接続されるソースリード9のソースボンドパッド8、および銅ワイヤ26が接続されるゲートリード11のゲートボンドパッド10のそれぞれのパッドの表面にはAgめっき27が形成されている。
【0106】
これにより、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26のそれぞれと、上記それぞれのパッドとの接続性を高めることができる。
【0107】
また、封止体14から露出した金属部分、すなわち、ダイパッド6の下面6bを含む一部と、ソースリード9、ドレインリード7およびゲートリード11とのそれぞれの表面に半田めっき28が形成されている。なお、各リードの端面は切断加工が施されているため、端面にはコアの銅リードとNiめっきと半田めっきそれぞれの断面が露出した状態となっている。
【0108】
本第1変形例の半導体パッケージ24のその他の構造については、実施の形態1の半導体パッケージ20と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0109】
本第1変形例の半導体パッケージ24においては、ダイボンド構造が
図1の半導体パッケージ20と同じ構成であるため、ダイボンド部の長期信頼性等の効果については、
図1の半導体パッケージ20によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0110】
さらに、大きな電流が流れるソース電極2とソースリード9間を、アルミワイヤに比べて高導電かつ高熱伝導で、低熱膨張のAgまたはCuワイヤの超音波ボンディングによって結線しているため、ワイヤ自体からの発熱を小さくすることができ、さらにSiCチップ1の表面からの放熱性向上によってワイヤボンド部の温度上昇を抑制することができる。
【0111】
その結果、ワイヤ接合部の温度サイクルテストの信頼性を向上でき、さらに半導体パッケージ24の電力損失を小さくすることが可能となり、高性能で高信頼な樹脂封止型の半導体パッケージ24を実現することができる。
【0112】
次に、本第1変形例の半導体パッケージ24の組み立てについて説明する。
図10は
図8に示す半導体装置(半導体パッケージ24)の組み立て手順の一例を示すフロー図である。半導体パッケージ24の組み立ては、
図7に示す半導体パッケージ20の組み立てとほぼ同じであるため、その相違点のみを
図8〜
図10を用いて説明する。
【0113】
半導体パッケージ24の組み立ての半導体パッケージ20の組み立てとの異なる点は、ワイヤボンディング工程のみである。
【0114】
半導体パッケージ24の組み立てのワイヤボンディング工程では、まず、SiCチップ1の主面1aの最表面がNi/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されたソース電極2と、Agめっき27が施されたソースリード9のソースボンドパッド8間を、AgワイヤもしくはAg膜等の貴金属めっき膜が施された太い銅ワイヤ25を用いて、超音波ボンディングによって結線する。
【0115】
さらに、最表面がNi/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されたゲート電極3と、Agめっき27が施されたゲートリード11のゲートボンドパッド10間を、AgワイヤもしくはAg膜等の貴金属めっき膜が施された、銅ワイヤ25より細い銅ワイヤ26を用いて、超音波ボンディングによって結線する。
【0116】
これにより、半導体パッケージ24のワイヤボンディングにおいても、銅ワイヤ25,26を用いてソース電極2とソースリード9間を、さらにゲート電極3とゲートリード11間を結線することができる。
【0117】
本第1変形例の半導体パッケージ24の組み立てにおいても、
図7に示す半導体パッケージ20の組み立てと同様の効果を得ることができるため、その重複説明は省略する。
【0118】
次に、本実施の形態1の第2変形例について説明する。
【0119】
図11は実施の形態1の第2変形例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0120】
図11に示す第2変形例は、実施の形態1の
図1および
図2に示す半導体パッケージ20と略同様の構造の半導体パッケージ29を示すものであり、ここでは、半導体パッケージ29の半導体パッケージ20との相違点のみについて説明する。
【0121】
図11に示す本第2変形例の半導体パッケージ29では、SiCチップ1の主面1aのソース電極2とソースリード9とがアルミワイヤ18によって電気的に接続され、さらにソース電極2上において、アルミワイヤ18とのワイヤ接合部が補強樹脂部(第2樹脂部)30によって覆われているものである。
【0122】
すなわち、SiCチップ1の主面1aのソース電極2におけるワイヤ接合部とその周辺部を補強樹脂部30によって覆い、ワイヤ接合部の隙間状の切り欠き部18aを含む先端部付近が補強樹脂部30内に埋め込まれた構造となっており、これにより、アルミワイヤ18のワイヤボンディング部の接続を補強して接続強度を高めたものである。
【0123】
なお、補強樹脂部30は、アルミニウムとの接着性に優れた高耐熱・高強度のイミド系樹脂からなることが好ましい。これにより、アルミワイヤ18の接合界面の端部への応力集中を緩和することができ、さらにイミド系樹脂はエポキシ封止樹脂との密着性にも優れているため、アルミワイヤ18のワイヤ接合部に補強樹脂部30の収縮による押しつけ力が加わることによってワイヤ接合部におけるクラック発生の低減化とクラックの進展速度を遅くすることができる。
【0124】
その結果、アルミワイヤ18のワイヤ接合部のパワーサイクルテストの信頼性、ダイボンド部の高温・高湿信頼性、さらに温度サイクルテストの信頼性を向上させることができ、これにより、長期信頼性に優れる樹脂封止型の半導体パッケージ29を実現することができる。
【0125】
なお、半導体パッケージ29におけるその他の構造とその他の効果については、実施の形態1の半導体パッケージ20と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0126】
次に、本第2変形例の半導体パッケージ29の組み立てについて説明する。
図12は
図11に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示すフロー図である。半導体パッケージ29の組み立ては、
図7に示す半導体パッケージ20の組み立てとほぼ同じであるため、その相違点のみを
図11および
図12を用いて説明する。
【0127】
半導体パッケージ29の組み立てにおける半導体パッケージ20の組み立てとの異なる点は、樹脂塗布・樹脂硬化工程のみである。
【0128】
すなわち、超音波ボンディングによるワイヤボンディングを行った後の樹脂塗布・樹脂硬化工程において、第1焼結Ag層16上およびアルミワイヤ18のワイヤ接合部上に、液状の高耐熱・高強度樹脂を塗布し、この樹脂を加熱して硬化処理する。
【0129】
具体的には、第1焼結Ag層16上に補強樹脂23を塗布(供給)し、かつ補強樹脂23を第1焼結Ag層16の空孔部分に含浸させる。さらに、ソース電極2のワイヤ接合部上に補強樹脂(第2樹脂)31を塗布(供給)し、その後、補強樹脂23および補強樹脂31を加熱することにより、第1焼結Ag層16を覆う補強樹脂部17と、ソース電極2上のアルミワイヤ18のワイヤ接合部を覆う補強樹脂部30を形成する。
【0130】
したがって、補強樹脂23と補強樹脂31は、液状の高耐熱・高強度樹脂であり、同じ樹脂であることが好ましいが、必ずしも同じ樹脂でなくてもよい。
【0131】
なお、ソース電極2上のワイヤ接合部では、アルミワイヤ18と電極膜間(ワイヤ接合部)の隙間状の切り欠き部18aを含む先端部付近が補強樹脂31で埋まる状態となるように補強樹脂31を塗布し、補強樹脂部30を形成する。
【0132】
本第2変形例の半導体パッケージ29の組み立てでは、焼結Ag層によるダイボンド部と、SiCチップ1上のアルミワイヤ18のワイヤ接合部のそれぞれの応力の集中箇所に高耐熱・高強度な補強樹脂部17および補強樹脂部30を形成した構造を量産可能なプロセスで製造することができる。その結果、SiCチップ1の動作温度が200〜300℃の高温領域であっても、長期に渡って特性不良等の不具合を生じない高い信頼性を有する樹脂封止型の半導体パッケージ29を組み立てることが可能になる。さらに、この半導体パッケージ29を、従来品と同等の生産性で量産することが可能になる。
【0133】
なお、半導体パッケージ29の組み立てにおけるその他の製造方法とその他の効果については、実施の形態1の半導体パッケージ20の組み立ておよびその効果と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0134】
次に、本実施の形態1の第3変形例について説明する。
【0135】
図13は実施の形態1の第3変形例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0136】
図13に示す第3変形例は、実施の形態1の
図1および
図2に示す半導体パッケージ20と略同様の構造の半導体パッケージ32を示すものであり、ここでは、半導体パッケージ32の半導体パッケージ20との相違点のみについて説明する。
【0137】
本第3変形例の半導体パッケージ32は、少なくとも第1焼結Ag層16と補強樹脂部17との界面に酸化Zn膜等の有機Zn膜33が形成されているものであり、補強樹脂部17と金属部材(第1焼結Ag層16およびAgめっき膜15)の接着強度を向上させたものである。
【0138】
詳細には、金属部材である第1焼結Ag層16およびダイパッド6上のAgめっき膜15のそれぞれの表面上に有機Zn膜33が形成され、この有機Zn膜33上に補強樹脂23が塗布されて加熱・硬化処理により補強樹脂部17が形成されたものである。
【0139】
この有機Zn膜33は、有機Zn化合物溶液34を第1焼結Ag層16に塗布し、大気中で200〜350℃に加熱焼成する方法で形成する。有機Zn化合物溶液34は、低粘度のため、第1焼結Ag層16の空孔部内に浸透して内部のAgの表面にも形成され、AgやNiの金属種によらず、いずれの金属表面にも密着した有機Zn膜33が形成される。その際、塗布量や塗布液のZn含有量によるが、有機Zn膜33の膜厚は数nm〜数百nmの範囲で形成する。
【0140】
また、半導体パッケージ32では、SiCチップ1とリードとを電気的に接続するワイヤとして、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25が用いられ、超音波ボンディングによって銅ワイヤ25が接続されている。なお、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25の代わりとして、Agワイヤを用いてもよい。
【0141】
そして、銅ワイヤ25はその表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われている。
【0142】
また、SiCチップ1の主面1aのソース電極2とゲート電極3のそれぞれの最表面は、Ni/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されており、したがって、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25と、ソース電極2やゲート電極3との接続性が高められている。
【0143】
本第3変形例の半導体パッケージ32によれば、有機Zn膜33が設けられたことで、第1焼結Ag層16や周辺の金属面と補強樹脂部17との接着強度を高めることができ、剥離することが無くなるため、外側の封止体14の樹脂が剥離したとしても補強樹脂部17の保護効果によって第1焼結Ag層16にクラックが形成されることを無くすことができる。
【0144】
その結果、温度サイクルテストの信頼性や高温・高湿信頼性に優れた高耐熱のダイボンド構造を備えた半導体パッケージ32を実現することができる。
【0145】
なお、半導体パッケージ32におけるその他の構造とその他の効果については、実施の形態1の半導体パッケージ20と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0146】
次に、本第3変形例の半導体パッケージ32の組み立てについて説明する。
図14は
図13に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示すフロー図である。半導体パッケージ32の組み立ては、
図7に示す半導体パッケージ20の組み立てとほぼ同じであるため、その相違点のみを
図13および
図14を用いて説明する。
【0147】
半導体パッケージ32の組み立てにおける半導体パッケージ20の組み立てとの異なる点は、ワイヤボンディング工程と、ワイヤボンディング工程後の樹脂塗布・樹脂硬化工程の前に、有機Zn膜形成工程を設けたことである。
【0148】
まず、ワイヤボンディング工程では、SiCチップ1の主面1aの貴金属めっき膜(例えばNi/Au膜)が形成されたソース電極2とソースリード9との間、およびゲート電極3とゲートリード11(
図8参照)との間を、Agめっきが施された銅ワイヤ25(もしくはAgワイヤ)の超音波ボンディングによって結線する(電気的に接続する)。
【0149】
ワイヤボンディング後、樹脂塗布・樹脂硬化工程の前に有機Zn膜形成工程を行う。
【0150】
有機Zn膜形成工程では、ダイパッド6および第1焼結Ag層16上に有機Zn化合物溶液34を塗布(供給)し、酸化雰囲気中で200〜350℃の温度に加熱して焼成処理を行い、これにより、第1焼結Ag層16のフィレット部16aや内部のAg骨格表面およびダイパッド6の上面6aのAgめっき膜15(およびNiめっき膜12)の表面に有機酸化膜等の有機Zn膜33を形成する。
【0151】
有機Zn膜形成後、
図7の半導体パッケージ20の組み立ての樹脂塗布・樹脂硬化工程と同様の樹脂塗布・樹脂硬化工程を行って第1焼結Ag層16を覆う補強樹脂部17を形成する。
【0152】
なお、半導体パッケージ32の組み立てにおけるその他の製造方法とその他の効果については、実施の形態1の半導体パッケージ20の組み立ておよびその効果と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0153】
(実施の形態2)
図15は実施の形態2の半導体装置の構造の一例を樹脂部を透過して示す平面図、
図16は
図15に示すA−A線に沿って切断した構造を示す断面図、
図17は
図15に示す半導体装置の半導体チップの第1電極のワイヤ接合部の構造の一例を示す部分平面図、
図18は
図17に示すA−A線に沿って切断した構造を示す部分断面図である。
【0154】
図15および
図16に示す本実施の形態2の半導体パッケージ(半導体装置)35は、実施の形態1の
図1および
図2に示す半導体パッケージ20と略同様の構造のものであり、ここでは、半導体パッケージ35の半導体パッケージ20との相違点のみについて説明する。
【0155】
本実施の形態2の半導体パッケージ35では、まず、SiCチップ1とリードとを電気的に接続するワイヤとして、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25,26が用いられ、超音波ボンディングによってそれぞれのワイヤが接続されている。あるいは、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25,26の代わりとして、Agワイヤを用いてもよい。
【0156】
ここでは、表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成された銅ワイヤ25,26を用いた場合を説明する。すなわち、SiCチップ1のソース電極2とソースリード9とを電気的に接続するワイヤが、太い銅ワイヤ25であり、SiCチップ1のゲート電極3とゲートリード11とを電気的に接続するワイヤが、銅ワイヤ25より細い銅ワイヤ26であり、それぞれのワイヤとワイヤ接合部の耐熱性が高められている。
【0157】
そして、銅ワイヤ25,26はその表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われている。表面が貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26は、超音波ボンディングによって結線することが可能であるため、量産性に優れているという利点がある。
【0158】
また、SiCチップ1の主面1aのソース電極2とゲート電極3のそれぞれの最表面は、Ni/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されており、したがって、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26のそれぞれと、ソース電極2、ゲート電極3との接続性が高められている。
【0159】
さらに、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26を用いているため、銅ワイヤ25が接続されるソースリード9のソースボンドパッド8、および銅ワイヤ26が接続されるゲートリード11のゲートボンドパッド10のそれぞれのパッドの表面にはAgめっき27が形成されている。
【0160】
これにより、表面がAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で覆われた銅ワイヤ25,26のそれぞれと、上記それぞれのパッドとの接続性が高めることができる。
【0161】
また、SiCチップ1の主面1aの主電極であるソース電極2上には、銅ワイヤ25のワイヤ接合部(一部)を覆う状態で、かつソース電極2の表面の7割以上、好ましくは略全面の領域(表面全体)に厚さ30μm以上の多孔質の(ポーラスな)第2焼結Ag層36が形成されている。
【0162】
なお、第2焼結Ag層36は、ソース電極2の表面の全体を覆っていることが好ましいが、
図15に示すように、ソース電極2の表面の外周部から僅かに内側の領域までを覆っていてもよい。すなわち、ソース電極2の表面の100%全体を覆うように制御することは困難なため、表面の外周部からはみ出さないように、僅かに内側の領域までを覆うようにしてもよい。
【0163】
また、半導体パッケージ35では、SiCチップ1の主面1aのゲート電極3の表面のワイヤ接合部にも、このワイヤ接合部を覆う状態で多孔質の(ポーラスな)第2焼結Ag層36が形成されている。
【0164】
本実施の形態2の半導体パッケージ35によれば、大きな主電流が流れるソース電極2とソース電極用のソースリード9間を電気抵抗が小さく熱伝導性に優れた銅ワイヤ25で結線しているため、アルミワイヤに比べてワイヤ自体の発熱が小さく、かつリード側への放熱効果が大きいため、ワイヤ接合部の温度上昇を低く抑えることができる。
【0165】
また、ワイヤ接合部を多い、かつソース電極2の表面の略全面(表面全体)に、熱および電気伝導性に優れた多孔質の(ポーラスな)第2焼結Ag層36が形成されていることにより、
図17および
図18に示すように、銅ワイヤ25から供給される電流Dが低抵抗の焼結Ag層(第2焼結Ag層36)を通ってSiCチップ(SiCデバイス)1に分散されて均一に供給される。
【0166】
これにより、SiCチップ1内での発熱分布が均一化され、局所的な過熱が発生することを抑制できる。
【0167】
また、局所的な過熱が発生することを抑制できるため、デバイスのセル損傷の危険性が減り、デバイス起因の不良発生を低減することができる。
【0168】
さらに、熱伝導性に優れた第2焼結Ag層36が主電極であるソース電極2上に形成されているため、ソース電極2上のワイヤ接合部で発熱が大きくなった場合でも、周囲に瞬時に熱を分散することができ、これにより、ワイヤ接合部の温度上昇を低く抑えることが可能となる。
【0169】
また、ワイヤ自体の発熱の抑制化やデバイス内の発熱の均一化、第2焼結Ag層36による熱の分散効果によって、ワイヤ接合部の温度上昇が抑制されてワイヤ接合部の熱疲労によるクラックの進展を遅くさせることができる。その結果、ワイヤ接合部の破断に関するパワーサイクルテストの寿命の向上化を図ることができる。
【0170】
さらには、多孔質の(ポーラスな)第2焼結Ag層36は貴金属めっきが施された銅ワイヤ25と金属接合しており、ソース電極2の表面の貴金属めっき膜とも金属接合している。
【0171】
したがって、銅ワイヤ25とソース電極2の接合界面が熱膨張差による熱疲労で破断が進行した場合でも、多孔質の第2焼結Ag層36とソース電極2間は、低弾性率の焼結Agが歪を吸収するため、接合界面が破断することが無く、さらに銅ワイヤ25と第2焼結Ag層36の接合界面も破断することが無い。
【0172】
これにより、銅ワイヤ25から供給される電流Dの通路を焼結Ag層(第2焼結Ag層36)によって確保することができ、長期間に渡って製品性能を維持できる信頼性の高い半導体パッケージ35を実現することができる。
【0173】
また、本実施の形態2の半導体パッケージ35においては、ダイボンド構造が
図1の半導体パッケージ20と同じ構成であるため、ダイボンド部の長期信頼性等の効果については、
図1の半導体パッケージ20によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0174】
さらに、大きな電流が流れるソース電極2とソースリード9間を、アルミワイヤに比べて高導電かつ高熱伝導で、低熱膨張のAgまたは銅ワイヤ25の超音波ボンディングによって結線しているため、ワイヤ自体からの発熱を小さくすることができ、さらにSiCチップ1の表面からの放熱性向上によってワイヤボンド部の温度上昇を抑制することができる。
【0175】
その結果、ワイヤ接合部の温度サイクルテストの信頼性を向上でき、さらに半導体パッケージ35の電力損失を小さくすることが可能となり、高性能で高信頼な樹脂封止型の半導体パッケージ35を実現することができる。
【0176】
本実施の形態2の半導体パッケージ35のその他の構造とその他の効果については、実施の形態1の半導体パッケージ20と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0177】
次に、本実施の形態2の半導体パッケージ35の組み立てについて説明する。
図19は
図15に示す半導体装置の組み立て手順の一例を示すフロー図である。半導体パッケージ35の組み立ては、
図7に示す半導体パッケージ20の組み立てとほぼ同じであるため、その相違点のみを
図15、
図16および
図19を用いて説明する。
【0178】
本実施の形態2の半導体パッケージ35の組み立ての半導体パッケージ20の組み立てとの異なる点は、ワイヤボンディング工程と、チップ上の焼結Ag層形成工程および樹脂塗布・樹脂硬化工程である。
【0179】
半導体パッケージ35の組み立てのワイヤボンディング工程では、まず、SiCチップ1の主面1aの最表面がNi/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されたソース電極2と、Agめっき27が施されたソースリード9のソースボンドパッド8間を、AgワイヤもしくはAg膜等の貴金属めっき膜が施された太い銅ワイヤ25を用いて、超音波ボンディングによって結線する。
【0180】
さらに、最表面がNi/Au膜またはAg膜等の貴金属めっき膜で構成されたゲート電極3と、Agめっき27が施されたゲートリード11のゲートボンドパッド10間を、AgワイヤもしくはAg膜等の貴金属めっき膜が施された、銅ワイヤ25より細い銅ワイヤ26を用いて、超音波ボンディングによって結線する。
【0181】
これにより、半導体パッケージ35のワイヤボンディングにおいても、銅ワイヤ25,26を用いてソース電極2とソースリード9間を、さらにゲート電極3とゲートリード11間を結線することができる。
【0182】
ワイヤボンディング後、SiCチップ1の主面1aのソース電極2の表面におけるワイヤ接合部およびその周囲を含む7割以上の領域、好ましくは表面の略全体の領域に第2焼結Agペースト37を50μm以上の厚さで供給し、さらに大気中で200〜350℃に加熱し、0.5〜2時間保持してAgペーストを焼成処理する。すなわち、ソース電極2上およびゲート電極3上に多孔質の第2焼結Ag層36を形成する。
【0183】
この時、Agペースト中の樹脂は揮発や分解や流出によって消失し、残ったAg粒子同士やAg粒子と銅ワイヤ25や電極の貴金属膜との間で連結・融合が進行し、第2焼結Ag層36は網目状のネツトワークを形成して貴金属膜と金属接合した状態となる。
【0184】
つまり、SiCチップ1のソース電極2と銅ワイヤ25が、およびゲート電極3と銅ワイヤ26が、それぞれ第2焼結Ag層36を介して電気的に接続された状態となっている。
【0185】
次に、ダイパッド6と、SiCチップ1の裏面1bのドレイン電極4の接合部と、SiCチップ1の主面1aのソース電極2およびゲート電極3上の多孔質の第2焼結Ag層36とにエポキシ樹脂などの液状の熱硬化性樹脂(補強樹脂23)を供給し、第2焼結Ag層36内に熱硬化性樹脂を含浸させ、かつ第1焼結Ag層16の表面を上記熱硬化性樹脂で覆った状態にする。
【0186】
この状態で加熱・硬化処理を行って、ダイボンド部の第1焼結Ag層16の表面を覆う補強樹脂部17を形成する。
【0187】
本実施の形態2の半導体パッケージ35のその他の組み立てについては、実施の形態1の半導体パッケージ20の組み立てと同様であるため、その重複説明は省略する。
【0188】
本実施の形態2の半導体装置の組み立てによれば、ダイボンディングやワイヤボンディング工程は、加熱温度や荷重・超音波の出力条件が従来品の組み立てと異なっているが、組み立てプロセスは、従来品の組み立てと同じプロセスを用いることができる。また、ワイヤ接合部の焼結Ag層形成工程や補強樹脂の含浸・硬化処理工程が増えるものの、量産性を妨げる工程は含まれていないため、新たな設備投資は必要とせず、従来品の生産ラインを使用して高信頼な半導体パッケージ35を生産性を向上させて製造することができる。
【0189】
本実施の形態2の半導体パッケージ35の組み立てのその他の効果については、実施の形態1の
図7に示す半導体パッケージ20の組み立てと同様であるため、その重複説明は省略する。
【0190】
次に、本実施の形態2の変形例について説明する。
【0191】
図20は実施の形態2の変形例の半導体装置の構造を樹脂部を透過して示す平面図、
図21は
図20に示すA−A線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【0192】
図20および
図21に示す本実施の形態2の変形例の半導体装置は、SiCダイオードタイプの半導体パッケージ38である。
【0193】
半導体パッケージ38の構造について説明すると、SiCダイオードデバイスであるSiCチップ1の主面1aには、最表面が貴金属膜で構成された主電極1gが形成され、さらに主電極1gの周囲にはSiCチップ1の端部まで絶縁性のパッシベーション膜5が形成されている。一方、裏面1bには、最表面が貴金属膜で構成された多層膜からなる裏面電極1hが形成されている。
【0194】
一方、Cuリードフレーム側は、SiCチップ1を搭載するダイパッド6、外部に電流を取り出す裏面電極用リード41と裏面電極用ボンドパッド42、主電極用リード39と主電極用ボンドパッド40から構成されており、ダイパッド6のチップ搭載領域にはAgめっき膜15が形成されている。
【0195】
また、ダイパッド6上のAgめっき面とSiCチップ1の裏面電極1hは、ZnAl系またはSnSbAgCu系またはAuSn系の高温Pbフリー半田43を介して金属接合されている。すなわち、SiCチップ1は、高温Pbフリー半田43を介してダイパッド6上に搭載されている。
【0196】
さらに、SiCチップ1の主電極1gと主電極用ボンドパッド40間、およびダイパッド6と裏面電極用ボンドパッド42間は、表面にAgまたはAuまたはPdめっきが施された複数の銅ワイヤ25,26を用いた超音波ボンディングによって結線されている。
【0197】
また、SiCチップ1の主電極1g上には、銅ワイヤ25の一部を覆う状態で主電極1gの表面の7割以上の領域、好ましくは表面の略全体の領域に厚さ30μm以上の多孔質の第2焼結Ag層36が形成されている。
【0198】
すなわち、主電極1g上において、銅ワイヤ25のワイヤ接合部とその周辺、および主電極1gの表面の略全体が第2焼結Ag層36によって覆われている。
【0199】
なお、第2焼結Ag層36は、主電極1gの表面の全体を覆っていることが好ましいが、
図20に示すように、主電極1gの表面の外周部から僅かに内側の領域までを覆っていてもよい。すなわち、主電極1gの表面の100%全体を覆うように制御することは困難なため、表面の外周部からはみ出さないように、僅かに内側の領域までを覆うようにしてもよい。
【0200】
また、ダイパッド6と各リードの一部を外部に露出させ、さらにSiCチップ1と半田接合層(高温Pbフリー半田43)と複数の銅ワイヤ25,26と第2焼結Ag層36の全体を覆うように、樹脂モールドで封止樹脂によって形成された封止体14が設けられている。
【0201】
また、封止体14から露出したダイパッド6の下面6bおよび他の一部や、各リードの金属面には、SnベースのPbフリー半田膜44,45がめっき形成されている。
【0202】
本実施の形態2の半導体パッケージ38によれば、高温動作環境でも長期的に信頼性が高く、かつ低損失で小型のダイオードタイプの半導体パッケージ38を実現することができる。
【0203】
すなわち、銅ワイヤ25から供給される電流の通路を第2焼結Ag層36によって確保することができるため、長期間に渡って製品性能を維持できる信頼性の高いダイオードタイプの半導体パッケージ38を実現することができる。
【0204】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0205】
例えば、前記実施の形態1(変形例)では、金属ワイヤに銅ワイヤを採用する場合に、その表面にAu膜またはAg膜等の貴金属めっき膜が形成されている場合を説明したが、前記貴金属めっき膜は、Pdめっき膜であってもよい。また、実施の形態1(変形例含む)や実施の形態2で示すSiCチップに替えてGaNチップを用いても良い。