(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力プーリは、前記突出端部分に対する前記第2外壁部分の外側からの取り付けが可能で、かつ、前記突出端部分に取り付けた状態では、その組み付け方向において複数の前記螺合部材のうちの少なくとも一つと重なる構成とした請求項6に記載の作業車の伝動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静油圧式無段変速装置は、その内部にアキシャルプランジャ形の可変容量ポンプやアキシャルプランジャ形の定変容量モータなどを備えることによって左右幅が嵩張るようになっている。そのため、静油圧式無段変速装置側からボルト連結する際には、静油圧式無段変速装置が邪魔になってインパクトなどの工具を使用し難くなっている。その結果、組み付け性の低下を招き易くなっていた。
【0005】
又、組み付け性の向上を図るために、静油圧式無段変速装置及び伝動ケースに取り付け用のフランジなどを形成すると、静油圧式無段変速装置及び伝動ケースが大型化する不都合を招くことになる。
【0006】
本発明の目的は、無段変速装置や伝動ケースの大型化を招くことなく、伝動ケースに対する無段変速装置の組み付け性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題解決手段は、
油圧ポンプ及び油圧モータが設けられた静油圧式の無段変速装置と、入力ギヤを備えた伝動系を収容する伝動ケースと、前記
油圧モータの出力軸と前記入力ギヤとが連動可能な状態で前記無段変速装置と前記伝動ケースとを連結する連結手段とを備え、
前記伝動ケースは、前記入力ギヤを支持する第1外壁部分と第2外壁部分とを備え、かつ、
前記第1外壁部分を有する第1ケース部材と前記第2外壁部分を有する第2ケース部材とに分割可能に構成され、かつ、前記第1外壁部分の外面に形成した連結面への前記無段変速装置の連結を可能にする複数の貫通孔を備え、
前記無段変速装置は、
前記伝動ケースとは別体である変速ケースを備え、
前記変速ケースは、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータを収容する収容凹部が形成されると共に前記第1外壁部分に連結されるケース部材と、前記ケース部材に対して前記第1外壁部分とは反対側に位置して前記収容凹部を塞ぐポートブロックとを備え、
前記ケース部材のうち前記ポートブロックとは反対側に位置する外壁部に、前記連結面に接合
される接合面
が形成
され、
前記ケース部材に、前記貫通孔のそれぞれに対応する複数の螺合部
が備え
られ、
前記連結手段は、
前記複数の螺合部と、対応する前記螺合部に螺合する複数の螺合部材とから構成
されており、
前記無段変速装置は、前記連結面に前記接合面を接合した状態で前記第2外壁部分の外側から前記螺合部材のそれぞれ
を対応する前記螺合部に螺合することにより
、前記第1外壁部分の外面に連結
されている。
【0008】
この手段によると、伝動ケースに無段変速装置を連結する場合には、先ず、伝動ケースの第1外壁部分に形成した連結面に、無段変速装置の変速ケースに形成した接合面を接合して、伝動ケースの各貫通孔と変速ケースの各螺合部との位置合わせを行う。そして、この位置合わせ後に、螺合部材のそれぞれを第2外壁部分の外側から対応する螺合部に螺合することにより、連結面に接合面を接合した状態で、伝動ケースにおける第1外壁部分の外面に無段変速装置を連結することができる。
この手段によると、高圧で昇温し易いポートブロックが伝動ケースから離れた外側に位置することになる。これにより、ポートブロックからの放熱を促進させることができ、油温の上昇を抑制することができる。
【0009】
つまり、無段変速装置及び伝動ケースに取り付け用のフランジなどを形成することなく、伝動ケースに対する無段変速装置の組み付けを簡単に行うことができる。
【0010】
従って、無段変速装置や伝動ケースの大型化を招くことなく、伝動ケースに対する無段変速装置の組み付け性を向上させることができる。
【0011】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記伝動ケースは、前記入力ギヤを収容する第1ケース部を備え、
前記第1ケース部は、前記第1外壁部分と前記第2外壁部分とを前記入力ギヤに隣接させて幅狭に形成した。
【0012】
この手段によると、無段変速装置の連結箇所となる伝動ケースの第1ケース部を幅狭に形成したことにより、第1ケース部に形成する各貫通孔の長さを短くすることができる。これにより、連結に使用する螺合部又は螺合部材の長さも短くすることができ、連結手段による無段変速装置所と伝動ケースとの連結を、より強固にすることができる。
【0013】
【0014】
【0015】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記連結面は、前記第1外壁部分における前記入力ギヤの周辺に位置する入力ギヤ周辺部位に形成し、
前記接合面は、前記
ケース部材における前記出力軸の周辺に位置する出力軸周辺部位に形成した。
【0016】
この手段によると、入力ギヤ周辺部位の連結面に出力軸周辺部位の接合面を接合することから、出力軸と入力ギヤとを連動可能な状態に維持し易くなる。
【0017】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記貫通孔のそれぞれは、前記第1外壁部分及び前記第2外壁部分における前記入力ギヤの周辺に位置する入力ギヤ周辺部位に備え、
前記螺合部のそれぞれは、
前記ケース部材における前記出力軸の周辺に位置する出力軸周辺部位に備えた。
【0018】
この手段によると、入力ギヤ周辺部位に出力軸周辺部位を連結することから、出力軸と入力ギヤとを連動可能な状態に維持し易くなる。
【0019】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記第2外壁部分の外側からの前記螺合部材の前記螺合部への螺合により、前記第1外壁部分の外面への前記無段変速装置の連結とともに、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との連結を行うように構成した。
【0020】
この手段によると、無段変速装置と伝動ケースとを連結する連結手段を、伝動ケースの第1ケース部材と第2ケース部材とを連結する連結手段に兼用することができる。これにより、部品点数の削減による構成の簡素化、又は、伝動ケースにおける第1ケース部材と第2ケース部材との連結強度の向上、などを図ることができる。
【0021】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記無段変速装置に備えた入力軸は、前記伝動ケースと前記無段変速装置とを連結した状態では、前記伝動ケースとの対向箇所から外れた位置に位置し、
前記変速ケースから突出する前記入力軸の突出部は、その突出端部分が前記第2外壁部分よりも突出方向の外側に位置する長さを有し、かつ、前記突出端部分に入力プーリを備え、
前記変速ケースは、前記入力軸の突出端側を支持する軸支部を備え、
前記軸支部は、前記突出端部分の近くまで延出している。
【0022】
この手段によると、入力プーリとして、伝動ケースとの干渉を考慮する必要のない大径のものを採用することができ、入力段階において大きく減速することができる。これにより、伝動ケース内の伝動系を小径ギヤによる小さい減速比でコンパクトにすることができる。又、延出長さの長い無段変速装置の入力軸を軸支部によって安定性良く支持することができる。
【0023】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記入力プーリは、前記突出端部分に対する前記第2外壁部分の外側からの取り付けが可能で、かつ、前記突出端部分に取り付けた状態では、その組み付け方向において複数の前記螺合部材のうちの少なくとも一つと重なる構成とした。
【0024】
この手段によると、伝動ケースに対する無段変速装置の組み付け性を低下させることなく、無段変速装置の入力プーリと伝動ケースとが重なり合う状態にコンパクトに構成することができる。
【0025】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記連結面と前記接合面との一方に位置決めピンを備え、他方に位置決め孔を形成した。
【0026】
この手段によると、伝動ケースに対する無段変速装置の位置決めを適正に行うことができる。これにより、例えば、無段変速装置として静油圧式無段変速装置を採用し、伝動ケース内のオイルの静油圧式無段変速装置への補給を可能にする鋼管製の油圧管を、伝動ケースから静油圧式無段変速装置にわたって架設する構成を採用した場合などにおいて、伝動ケース側の油圧管接続部と静油圧式無段変速装置側の油圧管接続部との距離に、ばらつきが生じることを防止することができ、油圧管による伝動ケースと静油圧式無段変速装置との接続を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車の伝動装置を、作業車の一例である普通形コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、本実施形態で例示する普通形コンバインは、走行車体1における前端部の左側箇所に、作業走行時に車体の前方に位置する収穫対象の未刈り穀稈を刈り取って後方に搬送する刈取搬送装置2を、走行車体1の前方に向けて延出する状態で昇降可能に連結している。走行車体1の左半部には、刈取搬送装置2が搬送した刈取穀稈に扱き処理を施し、この扱き処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置3を搭載している。走行車体1における右半部の後側箇所には、脱穀装置3の底部から揚送コンベヤ4を介して揚送した穀粒を貯留する穀粒タンク5を搭載している。穀粒タンク5には、穀粒タンク5に貯留した穀粒を機外に排出するスクリュ搬送式の穀粒排出装置6を装備している。そして、これらにより、稲や麦あるいは大豆などの収穫を行うように構成している。
【0030】
尚、走行車体1に、穀粒タンク5及び穀粒排出装置6に代えて、揚送コンベヤ4にて揚送した穀粒の籾袋への詰め込みを可能にする袋詰め装置を装備してもよい。
【0031】
走行車体1は、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成した車体フレーム7の下部に、左右の走行装置Aとして左右一対のクローラ8を配備している。そして、車体フレーム7における右半部の前側箇所に搭乗運転部9を形成し、搭乗運転部9の後部側に備えた運転座席10の下方に水冷式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)11などを配備している。
【0032】
尚、走行装置Aとして、左右一対の前輪と左右一対の後輪とを採用してもよく、又、左右一対の前輪と左右一対の後部クローラとを採用してもよい。
【0033】
刈取搬送装置2は、その前端部の左右両端箇所に、車体の走行に伴って、未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分ける左右一対のデバイダ12を配備している。刈取搬送装置2の前部上方には、左右のデバイダ12によって梳き分けた収穫対象穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込む回転リール13を配備している。刈取搬送装置2の底部には、収穫対象穀稈の株元側を切断するバリカン形の切断機構14を装備し、その切断機構14の後方箇所に、切断機構14による切断後の刈取穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めた後、その所定箇所から後方に向けて送り出すオーガドラム15を配備している。そして、その所定箇所の真後ろには、その所定箇所から後方に送り出された刈取穀稈を脱穀装置3の穀稈投入口(図示せず)に向けて供給搬送するスラットコンベヤからなるフィーダ16を装備している。
【0034】
刈取搬送装置2は、車体フレーム7とフィーダ16とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ17の作動により、フィーダ16の後端部に備えた刈取搬送装置2の入力軸を兼ねる左右向きのフィーダ駆動軸(図示せず)を支点にして昇降揺動する。昇降シリンダ17の作動は、搭乗運転部9の前部に配備した十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー18を前後方向に揺動操作して、昇降シリンダ17に対する操作圧を変更する刈り取り昇降用のバルブユニット(図示せず)の作動状態を切り換えることによって制御することができる。つまり、操縦レバー18を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置2を昇降させることができ、収穫対象穀稈に対する切断機構14の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行うことができる。
【0035】
図1及び
図3〜7に示すように、エンジン11からの動力は、ベルト式伝動装置19、無段変速装置Bの一例である静油圧式無段変速装置(以下、HSTと称する)20、及び、伝動ケース21に内蔵した走行伝動系22、などを介して左右のクローラ8に伝達している。HST20及び伝動ケース21は、走行車体1における前部の左右中央箇所に、搭乗運転部9の左端部に配備したサイドパネル23の下方に位置するように配備している。
【0036】
尚、無段変速装置20として、ベルト式無段変速装置や油圧機械式無段変速装置〔HMT〕などを採用してもよい。
【0037】
HST20は、変速ケース24の内部に油圧ポンプ25と油圧モータ26とを備えて構成している。そして、油圧ポンプ25のポンプ軸がHST20の入力軸20Aを兼ねるように、又、油圧モータ26のモータ軸がHST20の出力軸20Bを兼ねるように構成している。変速ケース24は、油圧ポンプ25と油圧モータ26とを収容する収容凹部27Aを形成したケース部材27と、収容凹部27Aを塞ぐポートブロック28とを備えている。油圧ポンプには、アキシャルプランジャ形の可変容量ポンプを採用している。油圧モータには、アキシャルプランジャ形の定変容量モータを採用している。
【0038】
尚、油圧モータとして、アキシャルプランジャ形の可変容量モータを採用してもよい。
【0039】
図1、
図6及び
図7に示すように、走行伝動系22は、HST20の出力軸20Bにスプライン嵌合する筒軸部29Aを一体形成した小径の入力ギヤ29を配備している。つまり、入力ギヤ29の筒軸部29Aが走行伝動系22の入力軸となるように構成している。そして、入力ギヤ29により取り込んだHST20による変速後の動力を、減速ユニット30、左右のサイドクラッチブレーキユニット31、左右の出力ギヤ32、及び、対応する出力ギヤ32と一体回転する左右の出力軸33、を介して左右のクローラ8に伝達するように構成している。
【0040】
尚、走行伝動系22は、複数段に変速可能な副変速装置を備えた構成であってもよい。又、左右の対応するクローラ8に逆転動力の伝達を可能にする左右の逆転伝動ユニットを備えた構成であってもよい。
【0041】
減速ユニット30は、入力ギヤ29に噛合する大径の第1減速ギヤ34、第1減速ギヤ34とともに第1中継軸35にスプライン嵌合した小径の第2減速ギヤ36、及び、第2減速ギヤ36に噛合する大径の第3減速ギヤ37、などから構成している。第3減速ギヤ37は、ストッパ38により摺動不能に固定した状態で第2中継軸39にスプライン嵌合している。
【0042】
左右のサイドクラッチブレーキユニット31は、噛み合い式のサイドクラッチ40と多板式のサイドブレーキ41とから構成している。左右のサイドクラッチ40は、第2中継軸39の中央側に相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌した筒状の可動爪軸42、第2中継軸39の端部側に摺動不能な状態でスプライン嵌合したリング状の固定爪軸43、及び、可動爪軸42を固定爪軸43と噛み合う方向に摺動付勢する圧縮バネ44、などから構成している。可動爪軸42は、固定爪軸43に噛合する噛合位置と、固定爪軸43との噛合を解除する解除位置とにわたって摺動変位する。左右のサイドブレーキ41は、可動爪軸42にスプライン嵌合した複数のブレーキディスク45、ブレーキディスク45と交互に可動爪軸42に外嵌した複数のセパレータプレート46、及び、プレッシャプレート47、などから構成している。各可動爪軸42の外端部には、可動爪軸42及びプレッシャプレート47の一連の摺動操作を可能にするカラー48を外嵌している。
【0043】
左右のサイドクラッチブレーキユニット31には、カラー48を介した可動爪軸42及びプレッシャプレート47の油圧操作を可能にする筒状のピストン49を備えている。左右のピストン49は、昇圧に伴って、可動爪軸42を圧縮バネ44の作用に抗する方向に摺動操作して噛合位置から解除位置に摺動変位させることにより、対応するサイドクラッチ40を伝動可能な伝動状態から伝動を断つ遮断状態に切り替え、その後、可動爪軸42とともにプレッシャプレート47を圧縮バネ44の作用に抗する方向に摺動操作して各セパレータプレート46及びプレッシャプレート47を押圧することにより、対応するサイドブレーキ41を制動解除状態から制動状態に切り替えるように構成している。又、減圧に伴って、圧縮バネ44の作用による可動爪軸42の摺動操作を許容することにより、プレッシャプレート47による各セパレータプレート46及びプレッシャプレート47の押圧を解除して、対応するサイドブレーキ41を制動状態から制動解除状態に切り替え、その後、可動爪軸42を解除位置から噛合位置に摺動変位させて、対応するサイドクラッチ40を遮断状態から伝動状態に切り替えるように構成している。
【0044】
つまり、左右のサイドクラッチブレーキユニット31は、昇圧により、サイドクラッチ40が伝動状態から遮断状態に切り替わった後にサイドブレーキ41が制動解除状態から制動状態に切り替わり、減圧により、サイドブレーキ41が制動状態から制動解除状態に切り替わった後にサイドクラッチ40が遮断状態から伝動状態に切り替わる油圧式に構成している。
【0045】
尚、左右のサイドクラッチブレーキユニット31は、例えば、電動シリンダの作動によってサイドクラッチ40及びサイドブレーキ41の作動状態を上記のように切り替える電動式などに構成してもよい。
【0046】
左右の出力ギヤ32は、対応するサイドクラッチブレーキユニット31の可動爪軸42に噛合している。そして、対応する出力軸33を介して左右のクローラ8に動力又は制動力を伝達するように構成している。
【0047】
図3〜7及び
図9に示すように、伝動ケース21は、左側の第1ケース部材51及び右側の第2ケース部材52などから左右に分割可能な左右分割構造に構成している。そして、第1ケース部材51の外周部と第2ケース部材52の外周部とを接合した状態で、それらの外周部の複数個所をボルト連結することにより、走行伝動系22の入力ギヤ29を収容する第1ケース部21Aと、走行伝動系22の減速ユニット30及び左右の出力ギヤ32などを収容する第2ケース部21Bとを形成している。又、第1ケース部材51の外側面に第3ケース部材53をボルト連結することにより、左側のサイドクラッチブレーキユニット31などを収容する第3ケース部21Cを形成し、第2ケース部材52の外側面に第4ケース部材54をボルト連結することにより、右側のサイドクラッチブレーキユニット31などを収容する第4ケース部21Dを形成している。第3ケース部材53及び第4ケース部材54には、第3ケース部21C及び第4ケース部21Dに対する左右の横外方からの対応するサイドクラッチブレーキユニット31の組み付けを可能にする開口部53A,54Aを形成し、それらの開口部53A,54Aを塞ぐ左右兼用のカバー部材55をボルト連結している。左右のカバー部材55は、第2中継軸39の端部及びピストン49を支持し、対応する第3ケース部材53又は第4ケース部材54との間に、ピストン操作用の油室21Eを形成している。第1ケース部材51の下部及び第2ケース部材52の下部には、伝動ケース21から左右に延出する出力軸33を外囲する左右兼用の出力軸ケース56をボルト連結している。
【0048】
図3〜6に示すように、伝動ケース21の第1ケース部21Aは、入力ギヤ29を支持する左側の第1外壁部分21aと右側の第2外壁部分21bとを入力ギヤ29に隣接させて幅狭に形成している。第1外壁部分21aの中央部位には、入力ギヤ29の筒軸部29AとHST20の出力軸20Bとのスプライン嵌合を許容する開口を形成している。第1外壁部分21aの外面における入力ギヤ29の周辺に位置する入力ギヤ周辺部位には、HST20の連結を可能にする連結面21cを形成している。第1外壁部分21a及び第2外壁部分21bにおける入力ギヤ29の周辺に位置する入力ギヤ周辺部位には、連結面21cへのHST20の連結を可能にする4つの貫通孔21dを形成している。HST20のケース部材27は、ポートブロック28の反対側に位置する右側の外壁部における出力軸の周辺に位置する出力軸周辺部位に、第1外壁部分21aの連結面21cに接合する接合面27aと、第1ケース部21Aの各貫通孔21dに対応する4つの螺合部としてのネジ孔27bとを形成している。第1ケース部21Aの連結面21cには、HST20のケース部材27に対する位置決めピン57を備え、ケース部材27の接合面27aには、伝動ケース21の第1ケース部21Aに対する位置決め孔27cを形成している。
【0049】
上記の構成から、伝動ケース21にHST20を連結する場合には、先ず、伝動ケース21の第1外壁部分21aに形成した連結面21cと、HST20のケース部材27に形成した接合面27aとを対向させ、この状態で、入力ギヤ29の筒軸部29AにHST20の出力軸20Bをスプライン嵌合させるとともに、連結面21cの位置決めピン57を接合面27aの位置決め孔27cに係入させる。これにより、伝動ケース21の各貫通孔21dとHST20の各ネジ孔27bとが適正に対向する状態で伝動ケース21に対してHST20を位置決めすることができる。この位置決め後、各ネジ孔27bに対する螺合部材としての4本のボルト58を、伝動ケース21の右外側から対応する貫通孔21dに挿入して対応するネジ孔27bに螺合することにより、伝動ケース21にHST20を、伝動ケース21の右外側から、第1外壁部分21aの連結面21cにケース部材27の接合面27aを適正に接合させた状態に簡単に連結することができる。又、この螺合により、伝動ケース21における第1ケース部材51と第2ケース部材52との第1ケース部21Aでの連結をより強固にすることができる。そして、この連結状態では、高圧で昇温し易いポートブロック28が伝動ケース21から離れた外側に位置することから、ポートブロック28からの放熱を促進させることができ、油温の上昇を抑制することができる。
【0050】
つまり、HST20のケース部材27に形成した4つのネジ孔27b、及び、これらに螺合する4本のボルト58により、HST20の出力軸20Bと伝動ケース21の入力ギヤ29とが連動可能な状態に、伝動ケース21とHST20とを適切に連結する連結手段Cを構成している。
【0051】
尚、伝動ケース21は、第2外壁部分21bの外面における入力ギヤ29の周辺に位置する入力ギヤ周辺部位に連結面21cを形成して、HST20を、伝動ケース21の左外側から、第2外壁部分21bの連結面21cにケース部材27の接合面27aを接合させた状態で連結するように構成してもよい。HST20は、ポートブロック28に接合面27aを形成して、伝動ケース21にポートブロック28を接合させた状態で伝動ケース21に連結するように構成してもよい。HST20の変速ケース24に、4つの螺合部27bとしてのスタッドボルトを備え、これらのスタッドボルトと各スタッドボルトに螺合する螺合部材58としての4個のナットとから連結手段Cを構成してもよい。螺合部27b及び螺合部材58の数量は、2つ又は3つあるいは5つ以上であってもよい。伝動ケース21の連結面21cに位置決め孔を形成し、HST20の接合面27aに位置決めピン57を備えてもよい。
【0052】
HST20の入力軸20Aは、HST20を伝動ケース21に連結した状態では、伝動ケース21との対向箇所から上方に外れた位置に位置している。変速ケース24のケース部材27から右外方に突出する入力軸20Aの突出部は、その突出端部分が伝動ケース21の第2外壁部分21bよりも右外側に位置する長さを有し、かつ、その突出端部分に、ベルト式伝動装置19の出力プーリを入力プーリ59として備えている。ケース部材27は、入力軸20Aの突出端部分の近くまで延出して、入力軸20Aの突出端側を支持する軸支部27Bを備えている。軸支部27Bには、HST20と入力プーリ59との間の空間を利用して複数のヒートシンク27Cを備えることにより、HST20の冷却効率を向上させている。入力プーリ59は、入力軸20Aの突出端部分に対する伝動ケース21の右外側からの取り付けが可能で、かつ、入力軸20Aの突出端部分に取り付けた状態では、その組み付け方向において4本のボルト58のうちの上側の2本と重なる構成としている。
【0053】
つまり、HST20と伝動ケース21との連結を、HST20と入力プーリ59との間の空間を利用して行うようにしているのであり、これにより、HST20の入力軸20Aから走行伝動系22の左右の出力軸33にわたる変速伝動系をコンパクトに構成することができる。
【0054】
図1〜
図8に示すように、左右のサイドクラッチブレーキユニット31は、制御ユニットDなどを介して操縦レバー18に連係している。制御ユニットDは、操縦レバー18の操作に基づいて左右のサイドクラッチブレーキユニット31に対するオイルの流れを切り替える切替バルブ60、操縦レバー18の操作に基づいて左右のサイドクラッチブレーキユニット31に対するリリーフ圧を変更する可変リリーフバルブ61、及び、左右のサイドクラッチブレーキユニット31の内圧が設定値を超えた場合に開弁するリリーフバルブ62、などを備えたバルブユニット63によって油圧式に構成している。
【0055】
尚、制御ユニットDは、電磁バルブを採用して電子油圧制御式に構成してもよい。又、左右のサイドクラッチブレーキユニット31を電動式に構成した場合は電子制御式を採用する。
【0056】
制御ユニットDは、操縦レバー18が直進位置に位置する場合は、左右のサイドクラッチブレーキユニット31を減圧する減圧状態を維持して、左右のサイドクラッチ40を伝動状態に維持し、かつ、左右のサイドブレーキ41を制動解除状態に維持する。これにより、左右のクローラ8を等速駆動して車体を直進させる直進状態を得ることができる。操縦レバー18が直進位置から左方に操作された場合は、減圧状態から左側のクローラ8に作用する左側のサイドクラッチブレーキユニット31を昇圧する左昇圧状態に切り替わることにより、左側のサイドクラッチ40を伝動状態から遮断状態に切り替えた後、操縦レバー18の左方への操作量に応じた操作量で左側のサイドブレーキ41を制動解除状態から制動状態に切り替える。これにより、直進状態から左側のクローラ8を従動又は制動させて車体を左方向に旋回させる左旋回状態に切り替えることができる。操縦レバー18が直進位置から右方に操作された場合は、減圧状態から右側のクローラ8に作用する右側のサイドクラッチブレーキユニット31を昇圧する右昇圧状態に切り替わることにより、右側のサイドクラッチ40を伝動状態から遮断状態に切り替えた後、操縦レバー18の右方への操作量に応じた操作量で右側のサイドブレーキ41を制動解除状態から制動状態に切り替える。これにより、直進状態から右側のクローラ8を従動又は制動させて車体を右方向に旋回させる右旋回状態に切り替えることができる。操縦レバー18が左右いずれかの操作位置から直進位置に向けて操作された場合は、左昇圧状態又は右昇圧状態から減圧状態に切り替わることにより、制動状態のサイドブレーキ41を制動解除状態に切り替えた後、遮断状態のサイドクラッチ40を伝動状態に切り替える。これにより、左旋回状態又は右旋回状態から直進状態に切り替えることができる。
【0057】
つまり、操縦レバー18が操舵用の第1操作具Eとして機能するように構成している。尚、第1操作具Eとして、旋回方向に回動操作するステアリングホイールなどを採用してもよい。
【0058】
図1〜4及び
図6〜8に示すように、搭乗運転部9の足元部には、駐車ブレーキ操作用の第2操作具Fとして駐車ブレーキペダル64を配備している。駐車ブレーキペダル64は、復帰バネ(図示せず)の付勢によって踏み込み解除位置に復帰し、復帰バネの作用に抗した踏み込み位置への踏み込み操作によって踏み込み位置に位置保持することができ、この位置保持状態での踏み込み操作によって踏み込み位置での位置保持を解除することができるように構成している。又、その踏み込み位置への踏み込み操作に連動して、右側のサイドブレーキ41が制動解除状態から制動状態に切り替わり、踏み込み解除位置への復帰に連動して、右側のサイドブレーキ41が制動状態から制動解除状態に切り替わるように、駐車ブレーキ切替機構65などを介して右側のサイドブレーキ41に連係している。つまり、右側のサイドブレーキ41が駐車ブレーキGとして機能するように構成している。
【0059】
尚、左側のサイドブレーキ41が駐車ブレーキGとして機能するように構成してもよい。又、左右のサイドクラッチブレーキユニット31を介して左右のクローラ8を制動する専用の駐車ブレーキGを備えてもよい。
【0060】
駐車ブレーキ切替機構65は、プレッシャプレート47に作用するようにカラー48に外嵌したリング状の操作部材66、操作部材66の回動操作が可能な状態で操作部材66に係合する回動軸67、回動軸67の右端部に連結した操作アーム68、及び、操作部材66の回動に伴って操作部材66を左右方向に摺動変位させるように第4ケース部材54と操作部材66との間に形成した乗り上げ式のカム機構69、などを備えている。そして、操作アーム68を駐車ブレーキペダル64に機械式連係機構(図示せず)を介して連係している。これにより、駐車ブレーキペダル64の踏み込み位置への踏み込み操作に連動して回動軸67が正転し、この正転に連動して操作部材66が正転して左方向に摺動変位することにより、プレッシャプレート47を押圧して右側のサイドブレーキ41を制動解除状態から制動状態に切り替えるように構成している。又、駐車ブレーキペダル64の踏み込み解除位置への復帰に連動して回動軸67が逆転し、この逆転に連動して操作部材66が逆転して右方向に摺動変位することにより、プレッシャプレート47の押圧を解除して右側のサイドブレーキ41を制動状態から制動解除状態に切り替えるように構成している。
【0061】
これにより、操縦レバー18を直進位置に位置させた状態で駐車ブレーキペダル64を踏み込み位置に位置保持することにより、右側のサイドブレーキ41による制動力を左右のサイドクラッチブレーキユニット31を介して左右のクローラ8に作用させることができ、車体を制動停止させた状態に維持する駐車状態に切り替えることができる。
【0062】
尚、第2操作具Fとして、駐車位置と駐車解除位置とに位置切り替え保持可能に構成した操作レバー、又は、スイッチなどを採用してもよい。又、駐車ブレーキ切替機構65は、通電の遮断により右側のサイドブレーキ41を制動解除状態から制動状態に切り替える電気式、又は、減圧により右側のサイドブレーキ41を制動解除状態から制動状態に切り替える油圧式に構成してもよい。
【0063】
図3〜9に示すように、伝動ケース21は、その右側部におけるサイドクラッチブレーキユニット組み付け用の開口部54Aとの隣接箇所に、伝動ケース21の右外方からの駐車ブレーキ切替機構65の回動軸67の内嵌装備を可能にする凹部21Fを形成している。そして、左右のカバー部材55には、回動軸67の右端部に係合装備したC形リング70を介して回動軸67の凹部21Fからの抜け出しを防止する抜出防止部55Aを一体形成している。
【0064】
図6〜8及び
図10に示すように、伝動ケース21には、駐車ブレーキペダル64の踏み込み操作によって右側のサイドブレーキ41(駐車ブレーキG)を制動状態に切り替えた場合に、制御ユニットDの作動状態にかかわらず、左右のサイドクラッチブレーキユニット31のサイドクラッチ40を接続状態に維持して左右のクローラ8を連動状態に維持する連動状態維持機構Hを備えている。
【0065】
連動状態維持機構Hは、駐車ブレーキペダル64の踏み込み操作によって右側のサイドブレーキ41を制動状態に切り替えた場合に、左右のサイドクラッチブレーキユニット31に備えたピストン操作用の油室21Eと排出油路72との連通を遮断して左右それぞれの油室21Eからのオイルの排出を停止する排出停止状態〔
図10の(A)参照〕から、左右それぞれの油室21Eを排出油路72に連通して左右それぞれの油室21Eからのオイルの排出を許容する排出状態〔
図10の(B)参照〕に切り替わることにより、制御ユニットDに優先して左右それぞれのサイドクラッチブレーキユニット31を減圧させる優先減圧手段Haとしての切替バルブ71によって構成している。切替バルブ71は、回動軸67と、この回動軸に形成した切替油路73とから構成している。
【0066】
上記の構成から、駐車ブレーキペダル64を踏み込み位置に位置保持して、右側のサイドブレーキ41による制動力を左右のサイドクラッチブレーキユニット31を介して左右のクローラ8に作用させた駐車状態において、誤操作などによって操縦レバー18が直進位置から左右に操作された場合であっても、操縦レバー18の操作に基づく左右いずれかのサイドクラッチブレーキユニット31の昇圧を阻止することができる。その結果、傾斜地での駐車状態において、操縦レバー18の誤操作に起因して、左右いずれかのサイドクラッチブレーキユニット31が昇圧して左右いずれかのサイドクラッチ40が接続状態から遮断状態に切り替わってしまい、右側のサイドブレーキ41による制動力が左側のクローラ8に作用しなくなって車体が旋回する、などの不都合が生じる虞を未然に回避することができる。
【0067】
尚、連動状態維持機構Hには、駐車状態において操縦レバー18の直進位置から左右方向への操作を阻止する構成などを採用してもよい。優先減圧手段Haは、回動軸67とは別体の専用の切替バルブによって構成してもよい。又、制御ユニットDの切替バルブ60に電磁バルブを採用して、操縦レバー18の操作に優先して切替バルブ60を減圧状態に維持するように構成してもよい。
【0068】
図3〜6及び
図8に示すように、HST20のポートブロック28には、HST20の入力軸20Aによって駆動するチャージ用の第1油圧ポンプ74と操舵用の第2油圧ポンプ75とを連結している。第1油圧ポンプ74は、伝動ケース21に貯留した潤滑用のオイルを吸込油路76やオイルフィルタ77などを介して吸い込み、チャージ油路78などを介してHST20に供給する。第2油圧ポンプ75は、伝動ケース21に貯留した潤滑用のオイルを吸込油路76やオイルフィルタ77などを介して吸い込み、給油路79などを介してバルブユニット63に供給する。バルブユニット63は、第2油圧ポンプ75からのオイルを、切替バルブ60や左右の給排油路80,81などを介して左右のサイドクラッチブレーキユニット31の油室21Eに供給する。又、左右のサイドクラッチブレーキユニット31の油室内のオイルを、切替バルブ60と左右の給排油路80,81と排出油路72、あるいは、リリーフ油路82と可変リリーフバルブ61又はリリーフバルブ62、もしくは、切替油路73と排出油路72、などを介して伝動ケース21の内部に排出する。
【0069】
吸込油路76は、その外部油路部分を、伝動ケース21の下部から変速ケース24の上部にわたる鋼管製の吸込用油圧管83によって形成している。給油路79は、その外部油路部分を、第2油圧ポンプ75からバルブユニット63にわたる鋼管製の供給用油圧管84によって形成している。左側の給排油路80は、その外部油路部分を、伝動ケース21の左側部とバルブユニット63とにわたる鋼管製の第1油圧管85によって形成している。右側の給排油路81は、その外部油路部分を、伝動ケース21の右側部とバルブユニット63とにわたる鋼管製の第2油圧管86によって形成している。
【0070】
前述したように、伝動ケース21にHST20を連結する際には、HST20の出力軸20Bと伝動ケース側の入力ギヤ29の筒軸部29Aとのスプライン嵌合、及び、HST20の位置決め孔27cと伝動ケース21の位置決めピン57との係合により、伝動ケース21に対するHST20の位置決めを適正に行うことができる。これにより、伝動ケース21の下部に備えた吸込用油圧管83に対する接続部21Hと、HST20の上部に備えた吸込用油圧管83に対する接続部20Cとの距離に、ばらつきが生じることを防止することができ、吸込用油圧管83による伝動ケース21とHST20との接続を容易にすることができる。
【0071】
図3〜6に示すように、伝動ケース21は、左右の出力ギヤ32を収納する下部側が、上部側よりも前方に向けて膨出する膨出部21Gとなるように形成している。バルブユニット63は、伝動ケース21における膨出部21Gよりも上部側の前面右側部位に、膨出部21Gの前端から前方にはみ出ない状態でボルト連結している。バルブユニット63のバルブケース87は、その左側面に、供給用油圧管84の接続を可能にする供給用接続部87Aと、第1油圧管85の接続を可能にする第1接続部87Bとを備えている。又、その上面に、第2油圧管86の接続を可能にする第2接続部87Cを備えている。供給用接続部87A及び第1接続部87Bには、それらに対する供給用油圧管84及び第1油圧管85の上方からの接続を可能にするエルボ88を接続している。
【0072】
第2油圧ポンプ75は、その前面に、供給用油圧管84の接続を可能にする供給用接続部75Aを形成している。伝動ケース21は、第3ケース部材53の前面に、第1油圧管85の接続を可能にする第1接続部53Bを備え、第4ケース部材54の前面に、第2油圧管86の接続を可能にする第2接続部54Bを備えている。第1接続部53B及び第2接続部54Bには、それらに対する第1油圧管85及び第2油圧管86の上方からの接続を可能にするエルボ88を接続している。
【0073】
供給用油圧管84は、第2油圧ポンプ75の供給用接続部75Aとバルブケース87の供給用接続部87Aとを接続した状態においては、伝動ケース21における膨出部21Gの前端よりも後方に位置する状態で、HST20の左右幅内、及び、伝動ケース21の左右幅内に収まるように屈曲形成している。第1油圧管85は、上下逆向きの略U字状に屈曲形成している。第2油圧管86は、上下逆向きの略J字状に屈曲形成している。
【0074】
上記の構成から、伝動ケース21の第1接続部53B及びバルブケース87の第1接続部87Bに対する第1油圧管85の接続を、上方からの接続作業によって簡単に行うことができる。そして、第1油圧管85は、伝動ケース21の第1接続部53Bとバルブケース87の第1接続部87Bとに接続した状態では、伝動ケース21における膨出部21Gの前端よりも後方に位置する状態で、HST20の左右幅内、及び、伝動ケース21の左右幅内に収まるようになっている。又、伝動ケース21の第2接続部54B及びバルブケース87の第2接続部87Cに対する第2油圧管86の接続も、上方からの接続作業によって簡単に行うことができる。そして、第2油圧管86は、伝動ケース21の第2接続部54Bとバルブケース87の第2接続部87Cとに接続した状態では、伝動ケース21における膨出部21Gの前端よりも後方に位置する状態で、伝動ケース21の左右幅内に収まるようになっている。
【0075】
尚、バルブケース87は、その左側面と右側面と上面と底面のいずれか一つ又はいくつかに、供給用接続部87Aと第1接続部87Bと第2接続部87Cとを集中接続、又は、分散接続するように構成してもよい。バルブケース87は、その横側部から横外方に張り出す張出部を有する形状とし、そして、この張出部の上面に配管用の接続部を備える構成として、バルブケース87の横側部に配管用の接続部を備える構成でありながら、この接続部に対する油圧管の接続を上方から行えるように構成してもよい。バルブユニット63は、伝動ケース21における膨出部21Gよりも上部側の前面左側部位に、膨出部21Gの前端から前方にはみ出ない状態でボルト連結してもよい。
【0076】
図3〜5に示すように、伝動ケース21は、その内部へのオイルの補給を可能にする給油管89を備えている。給油管89は、HST20及び入力プーリ59から右前側に離れる傾斜姿勢で、その上端の給油口89A、及び、その給油口89Aを開閉するキャップ90に備えたブリーザ90Aが、HST20の上端よりも上方に位置するように上方に延出している。
【0077】
これにより、給油管89の給油口89Aから伝動ケース21の内部へのオイルの補給を、HST20及び入力プーリ59によって阻害されることなく、給油口89Aの前上方から容易に行うことができる。又、伝動ケース21からのオイルの吹き上がりをより効果的に抑制することができ、かつ、水の多い圃場でのブリーザ90Aなどからの泥水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0078】
尚、給油管89は、その上端の給油口89AがHST20の上端よりも上方に位置するように真上に延出してもよい。又、HST20及び入力プーリ59から前側に離れる傾斜姿勢で上方に延出してもよい。更に、
図13に示すように、搭乗運転部9に備えたサイドパネル23の左外側に位置し、かつ、その上端の給油口89Aがサイドパネル23の上端近くに位置するように上方に延出してもよい。
【0079】
図11に示すように、バルブユニット63は、その操作軸91が操縦レバー18の左右方向への揺動操作に連動して回動することにより、操作軸91に備えたカム92が、切替バルブ60のスプール93と可変リリーフバルブ61のスプール94とを摺動操作するように構成している。可変リリーフバルブ61のスプール94は、操縦レバー18の直進位置から左右方向への操作量が大きくなるほど、スプール94の一端部に備えた受動部材95がカム92によって押圧されることにより、圧縮バネ96の作用に抗する方向に大きく摺動変位して、左右のサイドクラッチブレーキユニット31に対するリリーフ圧を大きくするように構成している。そして、受動部材95が、バルブケース87に形成した弁座部87Dに当接した場合に、左右のサイドクラッチブレーキユニット31に対するリリーフ圧が最大になるように構成している。
【0080】
この構成から、操縦レバー18を操作して受動部材95を弁座部87Dに当接させた状態において所定の最大圧力が得られるように圧力調整することにより、例えば、操縦レバー18の左右双方での操作角を角度計によって測定しながら、同じ操作角において同じ圧力が得られるように圧力調整する場合に比較して、圧力調整に要する手間を大幅に削減しながら、操縦レバー18の操作方向によって、操縦レバー18の直進位置からの操作量とサイドクラッチブレーキユニット31に対するリリーフ圧との関係にばらつきが生じることを効果的に抑制することができる。尚、このばらつきは、受動部材95と弁座部87Dとの当接面の加工精度を上げることにより、より効果的に抑制することができる。
【0081】
図12に示すように、伝動ケース21におけるバルブユニット63の取り付け箇所には2本のスタッドボルト97を備えている。これにより、伝動ケース21にバルブユニット63をボルト連結する場合には、伝動ケース21とバルブユニット63のバルブケース87との間に介装するガスケット98を2本のスタッドボルト97によって支持することができ、ガスケット98の脱落や位置ズレを防止することができる。その結果、伝動ケース21に対するガスケット98を介したバルブユニット63の取り付けを容易にすることができる。