特許第5975925号(P5975925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5975925
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】電池制御装置、蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20160809BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160809BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20160809BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G01R31/36 AZAB
   H01M10/48 PZHV
   H01M10/48 301
   H02J7/02 X
   H02J7/00 Y
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73182(P2013-73182)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196967(P2014-196967A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸治
(72)【発明者】
【氏名】大川 圭一朗
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 直行
【審査官】 居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−093551(JP,A)
【文献】 特開2006−242880(JP,A)
【文献】 特開2008−305752(JP,A)
【文献】 特開2007−057385(JP,A)
【文献】 特開平07−140216(JP,A)
【文献】 特開2005−341760(JP,A)
【文献】 特開2010−210457(JP,A)
【文献】 特開2009−204320(JP,A)
【文献】 特開2006−017544(JP,A)
【文献】 特開2005−331482(JP,A)
【文献】 特開平06−342044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/32−31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサにより二次電池の温度を検出して得られた温度検出値と、電圧センサにより前記二次電池の電圧を検出して得られた電圧検出値とに基づいて、前記二次電池の充放電電流の推定値を求める電流推定部と、
前記電流推定部により求められた充放電電流の推定値と、電流センサにより前記二次電池の充放電電流を検出して得られた電流検出値とに基づいて、前記二次電池の充放電電流を求める電流演算部と、
前記電流演算部により求められた充放電電流に基づいて、前記二次電池の充電状態を推定する充電状態推定部と、を備え
前記電流推定部は、温度と充電状態に応じて予め設定された前記二次電池の内部抵抗値と、前記温度検出値と、前記充電状態推定部により推定された前記二次電池の充電状態と、所定時間当たりの前記電圧検出値の差分とに基づいて、前記充放電電流の推定値を求めることを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記電流センサの異常を検知する電流センサ状態検知部をさらに備え、
前記電流演算部は、前記電流センサ状態検知部による前記電流センサの異常の検知結果に基づいて、前記充放電電流の推定値または前記電流検出値のいずれか一方を、前記二次電池の充放電電流として前記充電状態推定部に出力することを特徴とする電池制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記電流演算部は、前記温度検出値に基づいて設定した重み付け係数に従って前記充放電電流の推定値と前記電流検出値をそれぞれ重み付けして合計した値を、前記二次電池の充放電電流として前記充電状態推定部に出力することを特徴とする電池制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電池制御装置において、
前記二次電池の劣化状態を推定する劣化状態推定部をさらに備え、
前記電流推定部は、前記劣化状態推定部により推定された前記二次電池の劣化状態に基づいて、前記内部抵抗値を補正することを特徴とする電池制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電池制御装置と、
二次電池と、を備え、
前記電池制御装置により前記二次電池の充電状態を推定することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置と、この電池制御装置を用いた蓄電装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球環境問題が大きくクローズアップされる中、地球温暖化防止の為に、炭酸ガスの排出削減が求められている。たとえば、炭酸ガスの大きな排出源となっているガソリンエンジンの自動車については、ハイブリッド電気自動車や電気自動車などへの代替が始まっている。ハイブリッド電気自動車や電気自動車の動力用電源として代表的な大型二次電池は、高出力、大容量であることが必要である。そのため、これを構成する蓄電池モジュールは、一般的に、複数の電池セルを直並列接続して構成されている。
【0003】
大容量の二次電池としては、リチウムイオン電池が広く知られている。リチウムイオン電池の取扱いでは、高電圧充電の防止や過放電による性能低下の防止などの措置が必要となる。そのため、ハイブリッド電気自動車や電気自動車に搭載され、各電池セルにリチウムイオン電池を用いて構成される蓄電池モジュールは、一般に、電圧、電流、温度などの電池状態を電池セルごとに監視し、各電池セルの充電状態(SOC:State of Charge)や劣化状態(SOH:State of Health)を推定する機能を持っている。
【0004】
各電池セルの充電状態を推定する装置として、たとえば下記の特許文献1に開示されるような装置が知られている。この装置は、充放電電流検出手段が故障したことを検知すると、故障する直前の二次電池の内部状態パラメータに基づいて充放電電流を推定し、その推定した充放電電流に基づいて充電状態を推定する。これにより、充放電電流検出手段の故障時にも、充電状態の推定精度の悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−204320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の装置では、充放電電流検出手段が故障する直前の二次電池の内部状態パラメータを用いて充電状態を推定している。そのため、充放電電流検出手段の故障後に二次電池の内部状態が変化すると、その変化の度合いに応じて充電状態の推定精度が悪化するという問題がある。
【0007】
上記のような問題に鑑みて、本発明の主な目的は、正確な充放電電流の検出結果が得られない場合においても、二次電池の充電状態を精度よく推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電池制御装置は、温度センサにより二次電池の温度を検出して得られた温度検出値と、電圧センサにより二次電池の電圧を検出して得られた電圧検出値とに基づいて、二次電池の充放電電流の推定値を求める電流推定部と、電流推定部により求められた充放電電流の推定値と、電流センサにより二次電池の充放電電流を検出して得られた電流検出値とに基づいて、二次電池の充放電電流を求める電流演算部と、電流演算部により求められた充放電電流に基づいて、二次電池の充電状態を推定する充電状態推定部と、を備え、電流推定部は、温度と充電状態に応じて予め設定された二次電池の内部抵抗値と、温度検出値と、充電状態推定部により推定された二次電池の充電状態と、所定時間当たりの電圧検出値の差分とに基づいて、充放電電流の推定値を求めることを特徴とする。
本発明による蓄電装置は、上記の電池制御装置と、二次電池とを備え、電池制御装置に
より二次電池の充電状態を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正確な充放電電流の検出結果が得られない場合においても、二次電池の充電状態を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】蓄電装置を含む車載システムの構成を示す図である。
図2】二次電池の種類に応じた電圧特性の例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るバッテリコントローラの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るバッテリコントローラの構成を示すブロック図である。
図5】温度と電流検出値Iに含まれる電流誤差の関係の一例を示す図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るバッテリコントローラの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による蓄電装置を含む車載システムの構成を示す図である。図1に示す車載システムは、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等の車両に搭載されるものであり、蓄電装置1、インバータ2、モータ3、リレーボックス4および上位コントローラ5を備える。
【0012】
蓄電装置1は、二次電池セルを直並列に複数個ずつ接続してそれぞれ構成される複数のセルグループ10と、各セルグループ10に対応して設けられた複数のセルコントローラ100と、バッテリコントローラ200とを備える。各セルコントローラ100は、互いに直列に接続されることでデイジーチェーン接続を形成している。このデイジーチェーン接続の両端に位置するセルコントローラ100は、バッテリコントローラ200に接続されている。
【0013】
各セルコントローラ100は、バッテリコントローラ200からの指令に応じて、対応するセルグループ10の各電池セルの状態(電圧、電流、温度等)を測定する。そして、上記のデイジーチェーン接続を介して、各電池セルの状態測定結果をバッテリコントローラ200へ送信する。
【0014】
バッテリコントローラ200は、各セルコントローラ100から、対応するセルグループ10の各電池セルの状態測定結果を取得する。そして、取得した各電池セルの状態測定結果に基づいて、各電池セルの充電状態(SOC:State of Charge)や劣化状態(SOH:State of Health)を推定し、その推定結果を上位コントローラ5へ送信する。
【0015】
上位コントローラ5は、バッテリコントローラ200から送信された各電池セルの充電状態や劣化状態の推定結果に基づいて、インバータ2やリレーボックス4を制御する。インバータ2は、リレーボックス4が導通状態のときに各セルグループ10から供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータ3へ供給することにより、モータ3を回転駆動させて車両の駆動力を発生させる。また、車両の制動時には、モータ3により発生された三相交流回生電力を直流電力に変換して各セルグループ10へ出力することにより、各セルグループ10の電池セルを充電する。こうしたインバータ2の動作は、上位コントローラ5によって制御される。
【0016】
バッテリコントローラ200において各電池セルのSOCを推定する場合、各電池セルの電圧に基づくSOC推定方法と、各電池セルの充放電電流に基づくSOC推定方法とのいずれかを用いることができる。これらのSOC推定方法は、以下のように、各電池セルの電圧特性に応じて使い分けられる。
【0017】
図2は、二次電池の種類に応じた電圧特性の例を示す図である。上記の二種類のSOC推定方法のうち、前者のSOC推定方法は、図2において実線で示すような電圧特性を有する二次電池のSOCを推定する場合に好適な方法である。すなわち、0%(完全放電状態)から100%(満充電状態)までのSOCの全範囲において、SOCの変化に対して各電池セルの出力電圧が図2の実線のように単調に変化する場合は、各電池セルの電圧測定結果からSOCを推定することができる。こうした電圧特性を持つ二次電池は、たとえば、電池容量が比較的小さなハイブリッド電気自動車(HEV)用の電池として用いられる。
【0018】
一方、後者のSOC推定方法は、図2において破線で示すような電圧特性を有する二次電池のSOCを推定する場合に好適な方法である。すなわち、特定のSOC範囲(図2では、約20%〜80%)において、SOCの変化に対する各電池セルの出力電圧の変動が比較的小さい場合、上記のような各電池セルの電圧に基づくSOC推定方法では、正確なSOCの推定が困難である。したがってこのような場合は、各電池セルの充放電電流に基づいてSOCを推定するのが好ましい。こうした電圧特性を持つ二次電池は、たとえば、電池容量が比較的大きなプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)や、電気自動車(EV)用の電池として用いられる。
【0019】
以上説明したように、各電池セルの充放電電流に基づいてSOCを推定する場合、各電池セルの充放電電流の値は、電流センサを用いて検出することができる。しかし、電流センサに異常や故障が発生すると、正しい充放電電流の検出値が得られないため、SOCを正確に推定するのが困難となる。そこで本実施形態では、このような場合でも、バッテリコントローラ200においてSOCを正確に推定できるように工夫している。この点について、以下詳細に説明する。
【0020】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るバッテリコントローラ200の構成を示すブロック図である。バッテリコントローラ200は、電流センサ状態検知部201、電流推定部202、電流演算部203およびSOC推定部204を機能的に有する。これらの各部分は、たとえば、マイクロコンピュータを用いて構成されたバッテリコントローラ200において、マイクロコンピュータの演算処理として実現される。
【0021】
なお、バッテリコントローラ200には、図3に示した各部分以外にも、セルグループ10やセルコントローラ100を制御するための様々な機能が搭載されている。しかし、図3では、SOCの推定に用いられる充放電電流の演算に関する部分以外については、本発明に直接関係ないため図示を省略している。
【0022】
電流センサ20、温度センサ30および電圧センサ40は、図1のセルグループ10の各電池セルに対応してそれぞれ設けられている。電流センサ20は、各電池セルの充放電電流を検出し、電流検出値Iをバッテリコントローラ200に出力する。温度センサ30は、各電池セルの温度を検出し、温度検出値Tをバッテリコントローラ200に出力する。電圧センサ40は、各電池セルの電圧を検出し、電圧検出値Vをバッテリコントローラ200に出力する。なお、これらの各センサからバッテリコントローラ200への各検出値の出力は、図1のセルコントローラ100を介して行われる。
【0023】
電流センサ状態検知部201は、電流センサ20から入力された電流検出値Iに基づいて、電流センサ20に異常が発生した場合にはこれを検知し、異常検知信号DSを電流演算部203に出力する。なお、電流センサ状態検知部201をバッテリコントローラ200ではなく、電流センサ20に内蔵させてもよい。
【0024】
電流推定部202は、温度センサ30から入力された温度検出値Tと、電圧センサ40から入力された電圧検出値Vとに基づいて、各電池セルの充放電電流の推定値を求める部分である。電流推定部202により求められた充放電電流の推定値は、電流推定値Iとして、電流推定部202から電流演算部203に出力される。なお、電流推定部202における充放電電流の具体的な推定方法については、後で詳細に説明する。
【0025】
電流演算部203は、電流センサ20から入力された電流検出値Iと、電流推定部202から入力された電流推定値Iとに基づいて、各電池セルの充放電電流を求める部分である。電流演算部203により求められた充放電電流は、充放電電流値Iとして、電流演算部203からSOC推定部204に出力される。
【0026】
本実施形態において、電流演算部203は、電流センサ状態検知部201から入力される異常検知信号DSに基づいて、電流センサ20における異常の有無を判断し、その判断結果に応じて電流検出値Iまたは電流推定値Iのいずれか一方を選択する。そして、選択した方の値を充放電電流値Iとして出力する。たとえば、電流センサ20が正常であることを示す「1」の信号が異常検知信号DSとして入力されたとする。この場合、電流演算部203は、電流検出値Iを選択し、これを充放電電流値Iとして出力する。一方、電流センサ20が異常であることを示す「0」の値が異常検知信号DSとして入力されたとする。この場合、電流演算部203は、電流推定値Iを選択し、これを充放電電流値Iとして出力する。これにより、電流センサ20の異常時においても、各電池セルの充放電電流を得ることが可能となる。
【0027】
SOC推定部204は、電流演算部203から入力された充放電電流値Iに基づいて、各電池セルのSOCを推定する。たとえば、充放電電流値Iを積算することにより、SOCの推定を行うことができる。SOC推定部204において推定されたSOCの値は、電流推定部202に出力されると共に、不図示の通信インタフェースを介して、図1の上位コントローラ5にも送信される。
【0028】
ここで、電流推定部202における充放電電流の推定方法について説明する。電流推定部202は、以下の式(1)に従って電流推定値Iを演算することにより、各電池セルの充放電電流を推定することができる。
=ΔV/Rt+I´ ・・・・・・・・(1)
【0029】
式(1)において、ΔVは所定時間当たりの電圧検出値の差分を表しており、電圧センサ40からの電圧検出値Vに基づいて求められる。すなわち、電圧センサ40から所定周期間隔で入力される電圧検出値Vにおいて、最後に入力された値からその1つ前に入力された値を差し引くことにより、電圧検出値の差分ΔVを求めることができる。
【0030】
また、式(1)において、Rtは各電池セルの内部抵抗値を表している。電流推定部202には、温度とSOCに応じて予め設定された内部抵抗値Rtのパラメータ情報が記憶されている。このパラメータ情報を参照することにより、温度センサ30からの温度検出値Tと、SOC推定部204により推定された直近のSOCの値とに基づいて、電流推定部202において内部抵抗値Rtを決定することができる。あるいは、予め設定された固定の内部抵抗値Rtを用いてもよい。
【0031】
また、式(1)において、I´は直近の充放電電流値を表している。電流推定部202は、前回演算した電流推定値Iに基づいて電流演算部203から出力された充放電電流値Iを、直近の充放電電流値I´として用いることができる。
【0032】
充放電電流の検出結果に基づく従来の方法でSOCの推定を行うバッテリコントローラを図1のバッテリコントローラ200として用いた場合、電流センサ20からバッテリコントローラ200への出力を遮断すると、車両においてバッテリの充電状態を正しく表示することができない。しかし、以上説明したような本発明の第1の実施形態による方法でSOCの推定を行うバッテリコントローラを図1のバッテリコントローラ200として用いた場合、電流センサ20からバッテリコントローラ200への出力を遮断しても、車両においてバッテリの充電状態を正しく表示することができる。車載システムにおける本発明の適用の有無は、このようにして確認することができる。
【0033】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0034】
(1)バッテリコントローラ200において、電流推定部202は、温度センサ30からの温度検出値Tと、電圧センサ40からの電圧検出値Vとに基づいて、各電池セルの充放電電流の推定値Iを求める。この電流推定値Iと、電流センサ20からの電流検出値Iとに基づいて、電流演算部203は、各電池セルの充放電電流値Iを求める。こうして求められた充放電電流値Iに基づいて、SOC推定部204は、各電池セルのSOCを推定する。このようにしたので、正確な充放電電流の検出結果が得られない場合においても、二次電池である各電池セルの充電状態を精度よく推定することができる。
【0035】
(2)バッテリコントローラ200は、電流センサ20の異常を検知する電流センサ状態検知部201を備える。この電流センサ状態検知部201による電流センサ20の異常の検知結果に基づいて、電流演算部203は、電流推定値Iまたは電流検出値Iのいずれか一方を、充放電電流値IとしてSOC推定部204に出力する。このようにしたので、電流センサ20における異常の発生状態に応じて、電流推定値Iまたは電流検出値Iのうち最適な方に基づいてSOCの推定を行うことができる。
【0036】
(3)電流推定部202は、温度と充電状態に応じて予め設定された内部抵抗値Rtと、温度検出値Tと、SOC推定部204により推定されたSOCと、所定時間当たりの電圧検出値Vの差分ΔVとに基づいて、式(1)により充放電電流の推定値Iを求める。このようにしたので、温度検出値Tと電圧検出値Vから充放電電流の推定値Iを正確に求めることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
以上説明した第1の実施形態では、電流センサ20の異常を検知し、その検知結果に応じて、電流推定値Iまたは電流検出値Iのいずれか一方を充放電電流値IとしてSOC推定部204に出力する例を説明した。これに対して、以下に説明する本発明の第2の実施形態では、電流推定値Iと電流検出値Iをそれぞれ重み付けして合計し、その合計値を充放電電流値IとしてSOC推定部204に出力する例を説明する。
【0038】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るバッテリコントローラ200aの構成を示すブロック図である。本実施形態の蓄電装置には、図1のバッテリコントローラ200に替えて、このような構成のバッテリコントローラ200aが備えられている。なお、バッテリコントローラ200aには、図4に示した各部分以外にも、セルグループ10やセルコントローラ100を制御するための様々な機能が搭載されている。しかし、図4では、SOCの推定に用いられる充放電電流の演算に関する部分以外については、本発明に直接関係ないため図示を省略している。
【0039】
図4のバッテリコントローラ200aにおいて、第1の実施形態で説明したバッテリコントローラ200との違いは、電流センサ状態検知部201が設けられていない点と、電流演算部203に替えて電流演算部203aが設けられている点である。これらの各部分は、たとえば、マイクロコンピュータを用いて構成されたバッテリコントローラ200において、マイクロコンピュータの演算処理として実現される。
【0040】
本実施形態において、電流演算部203aには、電流センサ20からの電流検出値Iおよび電流推定部202からの電流推定値Iに加えて、温度センサ30から温度検出値Tが入力される。この温度検出値Tに基づいて、電流演算部203aは、電流検出値Iと電流推定値Iに対する重み付け係数を設定する。そして、設定した重み付け係数に応じて、電流検出値Iと電流推定値Iをそれぞれ重み付けし、その合計値を充放電電流値IとしてSOC推定部204に出力する。
【0041】
たとえば、温度検出値Tに応じて設定した重み付け係数をwとすると、以下の式(2)に従って充放電電流値Iを算出することができる。
=w×I+(1−w)×I ・・・・・・・・(2)
【0042】
電流センサ20からの電流検出値Iには誤差が含まれており、この誤差は温度によって変動する。図5は、温度と電流検出値Iに含まれる電流誤差の関係の一例を示す図である。図5において、実線は電流検出値Iに含まれる電流誤差の大きさを示しており、これは温度に応じて変動する。一方、破線は電流推定値Iに含まれる電流誤差の平均的な大きさを示している。
【0043】
図5に示すように、温度によっては、電流センサ20により検出された電流検出値Iよりも電流推定部202により推定された電流推定値Iの方が、電流誤差が小さく高精度な場合がある。したがって、温度検出値Tに応じて重み付け係数wを設定し、式(2)に従って充放電電流値Iを求めることにより、充放電電流値Iの精度を高めることが可能となる。
【0044】
たとえば、図5に基づいて重み付け係数wを設定する場合、温度T〜Tの範囲では、電流推定値Iよりも電流検出値Iの方が電流誤差が小さい。したがって、この温度範囲では、式(2)の重み付け係数wを0.5から1.0の間で設定し、電流検出値Iの重み付けを大きくする。このとき、電流検出値Iの電流誤差が最小となる温度25℃に温度検出値Tが近づくほどwの値を大きくし、T=25℃においてw=1となるようにすることが好ましい。
【0045】
一方、温度T未満の範囲および温度Tよりも大きい範囲では、電流推定値Iよりも電流検出値Iの方が電流誤差が大きい。したがって、これらの温度範囲では、式(2)の重み付け係数wを0.5未満で設定し、電流検出値Iの重み付けを小さくする。このとき、温度検出値Tが温度Tまたは温度Tから離れるほどwの値を小さくすることが好ましい。
【0046】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、電流演算部203aは、温度検出値Tに基づいて電流推定値Iと電流検出値Iをそれぞれ重み付けして合計した値を、充放電電流値IとしてSOC推定部204に出力する。このようにしたので、電流センサ20の温度特性を考慮して、電流推定値Iおよび電流検出値Iの両方を用いてSOCの推定を正確に行うことができる。
【0047】
(第3の実施形態)
前述の第1の実施形態では、温度検出値Tと直近のSOCの推定値に基づいて決定された内部抵抗値Rtに基づいて、電流推定値Iを演算する例を説明した。これに対して、以下に説明する本発明の第3の実施形態では、各電池セルのSOHを考慮して内部抵抗値Rtを補正し、この補正後の内部抵抗値Rtを用いて電流推定値Iを演算する例を説明する。
【0048】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るバッテリコントローラ200bの構成を示すブロック図である。本実施形態の蓄電装置には、図1のバッテリコントローラ200に替えて、このような構成のバッテリコントローラ200bが備えられている。なお、バッテリコントローラ200bには、図6に示した各部分以外にも、セルグループ10やセルコントローラ100を制御するための様々な機能が搭載されている。しかし、図6では、SOCの推定に用いられる充放電電流の演算に関する部分以外については、本発明に直接関係ないため図示を省略している。
【0049】
図6のバッテリコントローラ200bにおいて、第1の実施形態で説明したバッテリコントローラ200との違いは、SOH推定部205がさらに設けられている点と、電流推定部202に替えて電流推定部202bが設けられている点である。これらの各部分は、たとえば、マイクロコンピュータを用いて構成されたバッテリコントローラ200において、マイクロコンピュータの演算処理として実現される。
【0050】
SOH推定部205には、電圧センサ40からの電圧検出値Vと、SOC推定部204において推定されたSOCの値が入力される。SOH推定部205は、これらの値に基づいて、各電池セルのSOHを推定する。たとえば、充放電電流が流れていないときの電圧検出値Vに基づいて各電池セルの開放電圧を測定し、その測定結果とSOCを比較することにより、SOHを推定することができる。SOH推定部205において推定されたSOHの値は、電流推定部202bに出力されると共に、不図示の通信インタフェースを介して、図1の上位コントローラ5にも送信される。
【0051】
電流推定部202bは、第1の実施形態における電流推定部202と同様に、温度センサ30からの温度検出値Tと、SOC推定部204により推定された直近のSOCの値とに基づいて、予め設定されたパラメータ情報を参照し、内部抵抗値Rtを決定する。さらに、SOH推定部205により推定されたSOHの値に基づいて、以下の式(3)を用いて内部抵抗値Rtを補正し、補正後の内部抵抗値Rt´を算出する。なお、式(3)において、SOHは百分率で表したSOHの値である。
Rt´=Rt×SOH/100 ・・・・・・・・(3)
【0052】
式(3)により補正後の内部抵抗値Rt´を算出したら、電流推定部202bは、このRt´をRtの代わりに用いて、前述の式(1)により電流推定値Iを演算する。そして、電流推定値Iの演算結果を電流演算部203に出力する。
【0053】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、バッテリコントローラ200bは、各電池セルのSOHを推定するSOH推定部205を備える。このSOH推定部205により推定されたSOHの値に基づいて、電流推定部202bは、内部抵抗値Rtを補正する。このようにしたので、各電池セルの劣化状態を考慮して、電流推定値Iを正確に求めることができる。
【0054】
なお、以上説明した第3の実施形態では、第1の実施形態におけるバッテリコントローラ200にSOH推定部205をさらに設け、電流推定部202を電流推定部202bに置き換えた例を説明したが、第2の実施形態と組み合わせてもよい。すなわち、図4のバッテリコントローラ200aにSOH推定部205をさらに設け、電流推定部202を電流推定部202bに置き換えても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上説明した各実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
10・・・セルグループ
20・・・電流センサ
30・・・温度センサ
40・・・電圧センサ
100・・・セルコントローラ
200、200a、200b・・・バッテリコントローラ
201・・・電流センサ状態検知部
202、202b・・・電流推定部
203、203a・・・電流演算部
204・・・SOC推定部
205・・・SOH推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6