特許第5976022号(P5976022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976022
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】冷凍車等の箱型荷台におけるドレン装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20160809BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20160809BHJP
   B60P 3/20 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   B60H1/32 613K
   F24F1/00 361B
   B60H1/32 611Z
   B60P3/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-2458(P2014-2458)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-131506(P2015-131506A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】丸山 毅
(72)【発明者】
【氏名】今里 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 文男
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼村 泰
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−271802(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0007797(US,A1)
【文献】 実開昭59−136516(JP,U)
【文献】 実開昭60−014444(JP,U)
【文献】 実開昭56−172613(JP,U)
【文献】 特開2000−186831(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0087035(US,A1)
【文献】 実開平6−28581(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60P 3/20
F24F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された箱型荷台のドレン装置であって、
前記ドレン装置は、前記箱型荷台の床部の隅部に設けられるドレン孔と、前記ドレン孔の下方に取り付けられた、金属製の板材からなる樋部材とを備え、
前記樋部材は、車両の幅方向の外方に向けて低くなるよう傾斜した底部と、前記底部の両側に形成された側壁部とを有し、かつ、車両の側方端部よりも突出しないように装着されており、
前記ドレン孔から流出するドレン水が、前記樋部材により車両の側方端部よりも外方に導かれることを特徴とするドレン装置。
【請求項2】
前記樋部材の底部は、その断面がV字状をなし、底部の中央が断面の最下部に位置する請求項1に記載のドレン装置。
【請求項3】
前記ドレン孔の下部に、先端が扁平に成形された弾性材のホースが接続される請求項1又は請求項2に記載のドレン装置。
【請求項4】
請求項1に記載のドレン装置であって、
前記樋部材の底部は、その断面がV字状をなし、底部の中央が断面の最下部に位置するとともに、前記ドレン孔の下部に、先端が扁平に成形された弾性材のホースが接続されており、さらに、
前記ホースは、その扁平に成形された平面が、前記樋部材の底部の中央を結ぶ線と平行となるように接続されるドレン装置。
【請求項5】
前記樋部材における車両の幅方向の外方側の先端には、180°の折り返し加工が施されている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のドレン装置。
【請求項6】
前記樋部材が、車両の排気系部品の上方に設置された遮熱板に装着される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のドレン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍品等の貨物を運搬するバン形トラック等の箱型荷台において、荷室内の結露などに起因して荷台の床部に溜まるドレン水を、荷台外部に排水するドレン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の消費生活の多様化あるいは利便性の追求に伴い、トラック、トレーラ等の車両による貨物輸送の分野では、冷凍品又は生鮮食料品の輸送の需要が増加している。冷凍品等の貨物の輸送には、断熱パネルにより囲まれた密閉式の箱型荷台を備え、その荷室内の温度を冷凍装置によって低温に保つ冷凍車等が使用されることから、このような箱型荷台に対する需要も高まっている。荷室内の温度を、積載する冷凍品等の貨物に応じた適正な範囲から外れないよう厳格に管理する、温度管理車と呼ばれる車両も増加している。
【0003】
荷室内を低温に保つ冷凍車等の箱型荷台では、貨物の搬入・搬出に際して侵入する高温の外気等により荷室内に結露が生じ易く、その結露は、水滴(ドレン)となって荷台の床部に溜まることとなる。結露の水滴に限らず、冷凍品の氷が融解した水等も荷台の床部に溜まる。冷凍車等では、箱型荷台の床部の隅部にドレンを排水するためのドレン孔が設けてあり、ドレン孔の入り口には、開口部を塞ぐプラグが取り付けられている。ドレンを排水するには、車両の停車中において、ドレン孔のプラグを取り外し、床部に溜まったドレンを箱型荷台の外部に排出する。
なお、こうしたドレン孔は、箱型荷台の内部が汚染し易い魚介類などの貨物を運搬する場合に、荷室内を清掃した水を外部に排出するためにも使用される。冷凍車の箱型荷台において、ドレンを排水するドレン穴を設けることは、一例として特開平8−258752号公報に開示されている。
【0004】
ところで、箱型荷台は、トラックのシャーシフレームの上部に置かれた荷台フレーム上に載置されるので、箱型荷台の床部はかなり地上高の大きな位置にある。箱型荷台の床部に設けたドレン孔からドレンを直接外部に排出すると、塵埃等で汚染されたドレンが周囲に飛散して、シャーシフレームに取り付けられたエンジンの補機や車両装備品に付着し、これらの物品を汚してしまう。これを防ぐため、箱型荷台の床部に設けたドレン孔の排出側には、ドレンを地面の近くまで導くドレンホースが接続される。
【0005】
図4には、トラックに積載された箱型荷台の前方右側に設けられるドレン孔及びドレンホースを示す。この図は、前輪を備えたトラックの運転台及び箱型荷台の下方部分の概略図になっている。
トラックの運転台CNあるいは前輪FWが装着されるシャーシフレームは、2本のメインフレームMF(図4には1本のみが表されている)を備えており、このメインフレームMFは、車両の幅方向の中央部付近を前後方向のほぼ全長に亘って延びている。シャーシフレーム上には荷台フレームVFが設置され、荷台フレームVFは、メインフレームMF上に置かれたメインレールMRと、メインレールMRの上に配置された複数のクロスメンバCMとを備え、クロスメンバCMは、メインレールMRと直交する方向に車両の幅方向の両端まで延びている。箱型荷台VBは、荷台フレームVFのクロスメンバCMの上方に載置される(こうした荷台フレームの構造については、例えば、特許第4562651号公報参照)。また、箱型荷台VBの下方の車両右方側面部には、ブレーキ用圧縮空気を貯蔵するエアタンクAT、車両用電源となるバッテリーケースBC等が設置してあり、これらは取り付けブラケットによりシャーシフレームや荷台フレームに固着される。車両の幅方向の側方端部には、装備品等を保護するサイドバンパSBが置かれている。
【0006】
箱型荷台VBの前方の右隅部には、ドレン孔DRが設けてある。この箱型荷台VBは冷凍車用のものであって床部にも断熱パネルが敷設されており、ドレン孔DRは断熱パネルの上面に開口する。開口部には取り外し可能なプラグ(図示省略)が装着されている。そして、ドレン孔DRの下方の排出側には、地面の付近まで延びるドレンホースDHが接続されており、ドレンの排出時には、ドレンが地面の近くで放出されるため、シャーシフレーム等に取り付けられた装備品などが汚れるのを防止できる。ドレンホースDHは、箱型荷台VBの床下部分のスペースへの配置、取り付けが容易となるよう弾性材であるゴムなどで製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−258752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冷凍車等の箱型荷台のドレンを確実に効率よく排水するには、箱型荷台の前方及び後方の床部隅部など、ドレンの溜まり易い個所にそれぞれドレン孔を設け、ここからなるべく短い配管やドレンホースを介してドレンを地面まで導くことが望ましい。このとき、ドレンホースは、箱型荷台の床下に配置されたエンジン付属品、車両装備品等と干渉しないよう、これらの装備品の存在しないスペースに配設する必要がある。
【0009】
しかし、近年のトラックには、エンジンの排気ガス規制に伴って排気ガス浄化用の様々な後処理装置が搭載される。トラックのエンジンは、その大多数のものはディーゼルエンジンであり、また、大多数のトラックはいわゆるキャブオーバタイプであって、ディーゼルエンジンが運転台の下部に装備されている。そのため、運転台の後方の、箱型荷台の前方の床下の下方には、エアタンク、燃料タンクなどの従来からの装備品ばかりでなく、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)、NO(窒素酸化物)を処理するSCR(選択還元式)触媒やそれに使用する尿素水のタンクなど、エンジン排気系部品を配置するケースが増加しており、これらの機器が、従来ドレンホースを配設していたスペースを占めることが多くなった。ことに、DPF、触媒装置などのエンジン排気系部品は、容積が大きいとともに排気ガスの熱で高温となる部品であって、ゴム製のドレンホースは、排気系部品と一定の距離を離して設置しないと熱による劣化を生じてしまうことから、配設のスペースを確保するのはより一層困難となる。
本発明の課題は、冷凍車の箱型荷台等、トラックの荷台の下部にエンジン付属品や車両装備品が存在する場合であっても、ドレンにより装備品等の機器を汚すことなく、ドレンを確実にかつ効率よく排水するドレン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、冷凍車等の車両に搭載された箱型荷台において、荷台床部の隅部に設けたドレン孔の下方に、車両の幅方向の外方に向けて低くなるよう傾斜した金属製の樋部材を取り付け、この桶部材に集められたドレン水を、車両の側方端部よりも外方に導くようにしたものである。すなわち、本発明は、
「車両に搭載された箱型荷台のドレン装置であって、
前記ドレン装置は、前記箱型荷台の床部の隅部に設けられるドレン孔と、前記ドレン孔の下方に取り付けられた、金属製の板材からなる樋部材とを備え、
前記樋部材は、車両の幅方向の外方に向けて低くなるよう傾斜した底部と、前記底部の両側に形成された側壁部とを有し、かつ、車両の側方端部よりも突出しないように装着されており、
前記ドレン孔から流出するドレン水が、前記樋部材により車両の側方端部よりも外方に導かれる」
ことを特徴とするドレン装置となっている。
【0011】
請求項2に記載のように、前記樋部材の底部は、その断面がV字状をなし、底部の中央が断面の最下部に位置するように形成することが好ましい。
【0012】
請求項3に記載のように、前記ドレン孔の下部に、先端が扁平に成形された弾性材のホースを接続することが好ましい。そして、このような弾性材のホースを請求項2のドレン装置に適用する場合には、請求項4に記載のように、扁平に成形された平面が前記樋部材の底部の中央を結ぶ線と平行となるよう、ホースを前記ドレン孔の下部に接続することが好ましい。
【0013】
また、請求項5に記載のように、前記樋部材における車両の幅方向の外方側の先端に、板材の180°折り返し加工、つまり、ヘミング加工を施すことが好ましい。
【0014】
車両の排気系部品の上方に遮熱板が設置されているときは、請求項6に記載のように、前記樋部材をその遮熱板に装着することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドレン装置は、冷凍車等の箱型荷台の床部の隅部に設けたドレン孔の下方に、金属製の板材からなり、車両の幅方向の外方に向けて低くなるよう傾斜した底部を備えた樋部材を設置するものである。この樋部材は、車両の幅方向の寸法が増加するのを防ぐため、車両の側方端部よりも突出しないように装着されているが、樋部材の設置位置は箱型荷台の床部の隅部である。したがって、ドレン孔から樋部材に落下したドレン水は、樋部材にガイドされて車両の側方端部よりも外方に放出され、箱型荷台の下方に搭載されたDPFあるいはエアタンクなどの車両装備品に付着することはない。
【0016】
本発明の樋部材は、ドレン水を車両の側方端部の外方に導くものであるから、上下方向の寸法が小さく、箱型荷台の下部と車両装備品との間隙に十分に設置することが可能である。ドレン水を地面に導くドレンホース等を設置する必要はなく、箱型荷台の隅部のドレン孔下方に車両装備品が存在する場合であっても、ドレン水を容易に箱型荷台の外部に排出することができる。
そして、本発明の樋部材は、金属製の板材を加工して樋の形状としたものであり、ステンレス鋼等の板材にプレス加工を施して容易に製作することができる。樋部材は金属製であって、その近傍にDPF等の高温となるエンジン排気系部品が置かれている場合でも、熱による変形、劣化を起こすことはない。
【0017】
請求項2の発明は、樋部材の底部の断面形状をV字状とし、底部の中央が断面の最下部に位置するように形成したものである。こうすると、樋部材に落下したドレン水が底部の中央付近に集合して、ドレン水の水量に対する樋部材の底部との接触面積の割合が少なくなり、ドレン水が受ける粘性抵抗も減少する。そのため、樋部材を流れるドレン水の流速が増加し、ドレン水は、車両の側方端部から距離の大きい位置に放出されることとなる。この効果は、特に、ドレン水の水量が少量であるときに大きく、ドレン水の付着による車両装備品の汚れがより確実に防止される。
【0018】
請求項3の発明は、ドレン孔の下部に、先端が扁平に成形された弾性材のホースを接続するものであり、こうすると、ホースの先端が直線状に潰されて内側の通路が閉鎖され、冷凍車等の車両走行中あるいは停車中において、箱型荷台の荷室内の冷気がドレン孔から外部に漏洩するのを防止できる。なお、ドレン水に比較的大きな塵埃又は屑等が混入し、これがホースの先端部に詰まった場合には、弾性材のホースを手で変形させて内側の通路を開き、塵埃等を取り除く。
ここで、ドレン孔の下方に底部の断面形状をV字状とした樋部材を設置したドレン装置に対して、先端が扁平に成形された弾性材のホースを適用する場合には、請求項4の発明のように、先端の扁平な平面が樋部材の底部の中央を結ぶ線と平行となるよう、ホースをドレン孔の下部に取り付けることが好ましい。この場合には、ホースの先端から落下したドレン水が樋部材の上流側に広がり難くなり、効率的に樋部材の底部の中央に集中し、ドレン水の流速が増大して下流に向けスムースに流れることとなる。
【0019】
請求項5の発明のように、樋部材における車両の幅方向の外方側の先端に、板材の先端を180°折り返すヘミング加工を施したときは、ここに小さなR部が形成され、板材の先端の鋭いエッジ部が除去される。樋部材の車両幅方向の外方側先端は、車両の側方端部の直近に位置するため、作業者等が接近することが多いが、ここに鋭いエッジ部が存在しないと、作業の際の安全性が向上する。
【0020】
車両に装備されるDPF等の排気系部品の上方には、通常、輻射熱を遮断する遮熱板が取り付けられる。こうした車両では、請求項6の発明のように、本発明のドレン装置の樋部材を遮熱板に装着すると、樋部材を取り付けるためのブラケット等を省略することができる。樋部材は、金属製の板材からなる軽量なものであるから、樋部材を装着したときにも遮熱板に変形が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のドレン装置を取り付けたトラックの、右側の側方前部を示す概略図である。
図2】(a)は、本発明の桶部材の一実施例等を示す図であり、(b)は、ドレン装置の主要部の概略斜視図である。
図3】(a)は、本発明の桶部材の別実施例等を示す図であり、(b)は、その桶部材の単品図である。
図4】ドレンホースを配設した従来のトラックの、右側の側方前部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明のドレン装置について説明する。図1は、本発明のドレン装置を備えたトラックの運転台及び箱型荷台の下部部分の概略図である。この図1に示す部分は、図4に示すトラックの下方部分に対応するものであり、図1においては、図4の部品等に相当するものには同一の符号を付している。図2には、図1の実施例のドレン装置の詳細図及び要部の概略斜視図を示し、この図は、図1のA部を拡大して表した図となっている。
【0023】
図1に示すとおり、冷凍車等のシャーシフレーム上には、メインレールMRと複数のクロスメンバCMとを備えた荷台フレームVFが設置され、箱型荷台VBは、荷台フレームVFのクロスメンバCMの上方に載置される。そして、箱型荷台VBの前方の右隅部にはドレン孔DRが設けてあり、ドレン孔DRは、箱型荷台VBの床部に敷設された断熱パネルを貫通して、箱型荷台VBの下方に開口している。こうした点については、図4に示すドレンホースを配置した従来のトラックの構造と変わりはない。
【0024】
ただし、図1のトラックにおいては、ドレン孔DRの下方部位に、エンジン排気系部品である大容量のDPF01が配置されている(なお、図の01は、DPFに固着された遮熱カバーを表すもので、DPF本体は、遮熱カバーの背後に存在する)。そのため、エアタンクATやバッテリーケースBC等の車両装備品は、図4のトラックと比較すると、車両の後方に置かれ、また、DPF01の上方部位の、荷台フレームVFのクロスメンバCMの下方には、熱害防止のための遮熱板02(図2、3参照)が設けられる。
【0025】
本発明のドレン装置では、ドレン孔DRの下方の、箱型荷台VBの床部とDPF01との間に、金属製の薄い板材の樋部材1が設置してあり、ドレン孔DRから落下するドレン水が車両の側方端部よりも外方に導かれる。この樋部材1は、ステンレス鋼の薄い板材からなり、車両の幅方向の外方(側方)に向けて低くなるよう傾斜した底部11と、底部11の両側に形成された側壁部12とを有し、先端が車両の側方端部よりも突出しないように装着される(図2、3参照)。
【0026】
図1の実施例の樋部材1では、図2に示すように、傾斜した底部11が平面状に形成されていて、底部11と側壁部12とが存在する部分では、樋部材1の全体の断面がコ字状をなしている。車両の幅方向内側となる樋部材1の端部には、端壁13が設けられるとともに、側壁部12の上部には曲げ部14が形成され、樋部材1は、曲げ部14に設けたブラインドリベット等の固着具により、DPF01の上方の遮熱板02に取り付けられる。遮熱板が設けられていない車両では、クロスメンバCMに、直接あるいは取付用ブラケットを介して取り付けることができる。
【0027】
箱型荷台VBの床部に設けたドレン孔DRの下部(床部に取り付けたドレン管の下方開口部)には、先端を扁平に成形した短いホース2が接続される。ホース2は、ゴム等の弾性材からなり、遮熱板02に設けた穴を通過して下方に突出しているが、高温のDPF01との間にはステンレス鋼製の樋部材1が存在するので、ホース2が熱による劣化を起こすことはない。
【0028】
箱型荷台VBの床部に溜まったドレン水を排出するときは、車両の停車時に、ドレン孔DRの上面のプラグ(図示省略)を取り外す。床部のドレン水は、先端が扁平なホース2を通過して樋部材1に落下し、下方に傾斜した樋部材1にガイドされて、図2(b)の矢印のように、車両の側方端部よりも外方に放出される。そのため、箱型荷台VBの下方に搭載されたDPFなどの車両装備品に付着することはなく、ドレン水による汚染が防止される。ホース2の先端に溜まった大きな塵埃や生鮮食料品の屑等は、弾性材のホース2の先端を変形し内側の通路を広げて取り除く。
本発明の樋部材1は、扁平な形状であって上下方向の寸法が小さく、ドレン孔DRの下部にDPF01が装着されている場合でも、箱型荷台VBの下方の間隙に十分に設置することが可能である。そして、樋部材1はステンレス鋼製の板材であるから、高温のDPF01が近傍に存在しても熱劣化を生じない。
【0029】
次いで、図3に示す、本発明の樋部材の別実施例について説明する。
図3の樋部材1Aは、図2の樋部材1と同じく、車両の幅方向の外方に向けて低くなるよう傾斜した底部11Aと、底部11Aの両側に形成された側壁部12Aとを有しているが、図3の樋部材1Aでは、その底部11Aの断面形状がV字状をなし、底部中央が断面の最下部に位置するように形成されている。底部11AがV字状の断面形状に形成してあるため、ホース2を通過して樋部材1Aに落下するドレン水は、底部11Aの中央付近に集合することとなり、図2の樋部材1と比較すると、ドレン水の水量に対する底部11Aとの接触面積の割合が少なくなる。したがって、底部11Aから受ける粘性抵抗も減少して、樋部材1Aを流れるドレン水の流速が増加し、ドレン水は、車両から遠く離れた位置にまで放出される。特に、ドレン水の水量が少量であるときには、流速の増大する効果が相対的に大きいので、DPF等車両装備品への付着が確実に防止される。
【0030】
ここで、図3に示す別実施例では、ドレン孔DRの下部に接続されるホース2は、先端部の扁平な平面が樋部材1Aの底部11Aの中央を結ぶ線Oと平行となるように接続される。そのため、ホース2の先端から樋部材1Aに流入したドレン水は、樋部材1の上流方向や横方向に拡散することなく、効率的に底部11Aの中央に集中して、流速が増大するようになる。
【0031】
また、図3に示す別実施例では、樋部材1Aにおける車両の外方側の先端部分に、ヘミング加工、つまり、板材の先端を180°折り返して小さなR部を形成する加工が施されている。具体的には、図3(b)のH部に示すとおり、樋部材1Aの底部11Aと側壁部12Aの先端が、断面の外側に重なるように折り返されており、板材の鋭いエッジ部が除去されている。これによって、車両側面で作業する際の安全性が向上するが、折り返し部は、ドレン水の流れる樋部材1Aの断面内側には存在しないので、ドレン水の流れの障害となることはない。このようなヘミング加工は、もちろん、図2に示す桶部材1の先端に施すこともできる。
【0032】
以上詳述したように、本発明のドレン装置は、車両に搭載された箱型荷台において、荷台床部の隅部に設けたドレン孔の下方に、車両の幅方向の外方に向けて低くなるよう傾斜した金属製の樋部材を取り付け、この桶部材に集められたドレン水を、車両の側方端部よりも外方に導いて放出するものである。前述の実施例では、DPFが装備される箱型荷台前部下方にドレン装置を設置するものについて説明したが、本発明のドレン装置は、箱型荷台の車両後方側に設けたドレン孔の下方に設置することもできる。また、家屋に設置される樋のように、桶部材の底部の断面を曲線状として側壁部と滑らかに連なるようにするなど、実施例に対して各種の変形が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1、1A 樋部材
11、11A 底部
12、12A 側壁部
2 ホース
VB 箱型荷台
DR ドレン孔
DH ドレンホース
MR メインレール(荷台フレームの)
CM クロスメンバ(荷台フレームの)
01 DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)
02 遮熱板
図1
図2
図3
図4