特許第5976034号(P5976034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976034
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】定着装置及びそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20160809BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20160809BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
   G03G21/00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-97366(P2014-97366)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-215435(P2015-215435A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年3月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100134821
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 信行
(72)【発明者】
【氏名】岡島 靖人
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−074006(JP,A)
【文献】 特開2013−092571(JP,A)
【文献】 特開2010−134035(JP,A)
【文献】 特開2011−081159(JP,A)
【文献】 特開2007−114524(JP,A)
【文献】 特開2003−156952(JP,A)
【文献】 特開2009−139635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材の外周面に対向配置され前記ベルト部材を加熱する加熱装置と、
前記ベルト部材の外周面に圧接される回転可能な加圧ローラーと、
を備え、前記ベルト部材と前記加圧ローラーとにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通して、前記記録媒体上の未定着トナー像を定着する定着装置であって、
前記ベルト部材の抵抗値、前記ベルト部材に所定電圧を印加した際に流れる電流値、又は前記ベルト部材に所定電流を通電した際の電位差、を検知する検知器に電気的に接続されるとともに、前記ベルト部材の内周面のベルト幅方向両端の端部領域にそれぞれ接触される2つの端子部をさらに備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ベルト部材は、前記加熱装置により電磁誘導加熱される誘導発熱層を有し、
前記誘導発熱層は、前記ベルト部材の内周面側に露出するとともに、前記端子部に接触されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ベルト部材を挟んで前記加熱装置に対向配置されるとともに、前記ベルト部材の内周面に接して前記ベルト部材をガイドする、磁性を有するベルトガイド部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ベルトガイド部材と前記ベルト部材との接触部分には、第1絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ベルト部材の内周面の両端の前記端部領域の少なくとも一方には、周方向の長さが同一の第2絶縁層が、周方向に所定のピッチで設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2絶縁層は、前記加圧ローラーの軸方向に対して傾斜する第1方向に延びる第1領域と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2領域と、を含み、
前記第1領域および前記第2領域は、周方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第2絶縁層は、前記ベルト部材の内周面の両端の前記端部領域の一方のみに設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記端子部は、導電性ブラシ、導電性板バネまたは導電性シートを用いて形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記端子部は、前記ベルト部材の内周面のうちの記録媒体通過領域の外側の非通過領域に接触されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の定着装置と、
前記検知器と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特にベルト部材と加圧ローラーとにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通して、記録媒体上の未定着トナー像を定着する定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた従来の画像形成装置においては、定着ローラーに熱源を内蔵させるか、或いは外部に熱源を配置して加熱ローラーとし、加熱ローラーと加圧ローラーとにより形成された定着ニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙(記録媒体)を挿通して加熱、及び加圧することによって、用紙にトナー画像を定着する熱ローラー定着方式が広く用いられている。
【0003】
また、加熱ローラーに代えて、熱源により加熱される無端状の定着ベルト(ベルト部材)を用い、定着ベルトとこれに圧接される加圧部材との定着ニップ部に未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによって、用紙にトナー画像を定着するベルト定着方式が開発されている。このベルト定着方式では、熱ローラー定着方式に比べ熱容量を小さくしてウォームアップ時間を短縮するとともに、消費電力を低減することができる。
【0004】
このような加熱ローラーや定着ベルトの加熱方式として、ハロゲンランプ等のランプで加熱するランプ方式が知られているが、近年のウォームアップ時間の短縮や、省エネルギーの要請から、交番磁界を磁性導体に鎖交させ、渦電流を発生させることによって加熱する誘導加熱(IH:Induction Heating)方式が提案されている。
【0005】
ところで、定着ベルトに亀裂が生じると、亀裂部分周辺で急激な異常発熱が生じる場合がある。特に熱容量の小さい加熱方式ではより急激な異常発熱が生じやすい。
【0006】
そこで、例えば特許文献1には、フィルム(ベルト部材)の外周面の両端に導電ブラシを接触させ、その2点間の電圧差もしくは電流値を検出することによって、フィルムの亀裂等を検知する定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−156952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、フィルム(ベルト部材)の周囲に導電ブラシを配置するためのスペースが必要なので、定着装置が大型化するという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、大型化を抑制しながら、ベルト部材の亀裂を検知することが可能な定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の定着装置は、無端状のベルト部材と、ベルト部材の外周面に対向配置されベルト部材を加熱する加熱装置と、ベルト部材の外周面に圧接される回転可能な加圧ローラーと、を備え、ベルト部材と加圧ローラーとにより形成された定着ニップ部に記録媒体を挿通して、記録媒体上の未定着トナー像を定着する定着装置であって、ベルト部材の抵抗値、ベルト部材に所定電圧を印加した際に流れる電流値、又はベルト部材に所定電流を通電した際の電位差、を検知する検知器に電気的に接続されるとともに、ベルト部材の内周面のベルト幅方向両端の端部領域にそれぞれ接触される2つの端子部をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検知器に電気的に接続されるとともに、ベルト部材の内周面の両端の端部領域にそれぞれ接触される2つの端子部を設ける。これにより、ベルト部材の抵抗値、ベルト部材に所定電圧を印加した際に流れる電流値、又はベルト部材に所定電流を通電した際の電位差、を検知することができるので、ベルト部材の亀裂を検知することができる。
【0012】
また、端子部をベルト部材の内周面に接触させることによって、端子部をベルト部材の外周面に接触させる場合と異なり、ベルト部材の内部に端子部を配置することができ、定着装置が大型化するのを抑制することができる。
【0013】
また、端子部をベルト部材の内周面に接触させることによって、ベルト部材にテンションがかかり、ベルト部材が端子部から逃げる(離れる)のを抑制することができるので、端子部とベルト部材とを安定して接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態の定着装置を備えた画像形成装置の全体構造を概略的に示した断面図である。
図2】本発明の第1実施形態の定着装置の構造を示した側面断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の定着装置のベルト部材周辺の構造を示した断面図である。
図4】本発明の第1実施形態の定着装置のベルト部材の内周面の絶縁層の形状を示した図である。
図5】本発明の第2実施形態の定着装置のベルト部材の内周面の絶縁層の形状を示した図である。
図6】本発明の第2実施形態の定着装置のベルト部材の内周面の絶縁層の形状の他の例を示した図である。
図7】本発明の第3実施形態の定着装置の構造を示した側面断面図である。
図8】本発明の第3実施形態の定着装置のベルト部材周辺の構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1図4を参照して、本発明の第1実施形態による定着装置5を備えた画像形成装置1について説明する。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の側方に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上方に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着装置5と、画像形成部4及び定着装置5の上方に配設された画像読取部6とを備えている。
【0017】
給紙部2は、記録媒体である用紙9を収容する複数の給紙カセット7と、手差しの用紙を供給する手差しトレイ22とを備えている。給紙ローラー8の回転により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から用紙9を1枚ずつ用紙搬送部3に送り出す。手差しトレイ22は、給紙カセット7に収容された用紙9とは異なるサイズの用紙、または封筒やOHPシート等の記録媒体が載置され、それらの記録媒体を用紙搬送部3に送り出す。
【0018】
用紙搬送部3に送られた用紙9は、用紙搬送経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙9にトナー像を形成するものであり、図1の矢印方向に回転可能に支持された感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像部14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
【0019】
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ローラーを備えており、感光体11表面に接触する帯電ローラーから感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13から感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。
【0020】
次いで、現像部14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給される用紙9に転写される。
【0021】
トナー像が転写された用紙9は、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着装置5に向けて搬送される。定着装置5では用紙9が加熱及び加圧され、用紙9上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙9は、排出ローラー対20によって排出トレイ21上に排出される。
【0022】
転写部15による用紙9へのトナー像の転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0023】
次に、定着装置5の詳細構造について説明する。定着装置5は図2に示すように、電磁誘導加熱方式を用いたものであり、ベルト部材26と、加圧ローラー19と、ベルト部材26を加熱する誘導加熱部(加熱装置)30と、温度検知部であるサーミスター25と、ベルトガイド部材59と、押圧パッド60と、を備える。
【0024】
ベルト部材26は図2および図3に示すように、無端状の耐熱ベルトであり、内周側から順に、例えば40μmの厚みの電鋳ニッケルからなる誘導発熱層26aと、例えば200μmの厚みのシリコーンゴム等からなる弾性層26bと、例えば30μmの厚みのPFA等のフッ素系樹脂からなり定着ニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させる離型層26cと、が積層されて構成される。
【0025】
ベルト部材26の幅方向両側には、例えばPPS樹脂からなるフランジ51が設けられており、これにより、ベルト部材26の斜行が抑制される。フランジ51は、例えばSUSやSUM等からなるシャフト52に取り付けられている。
【0026】
ベルトガイド部材59は、磁性を有し、例えば0.8mmの厚みの磁性SUS等からなる。このため、ベルトガイド部材59は、ベルト部材26で吸収しきれなかった磁束(ベルト部材26を通過した磁束)によって加熱される。また、ベルトガイド部材59は断面視で円弧状をなし、ベルト部材26を誘導加熱部30に対して所定の間隔を隔てて保持する。
【0027】
図3に示すように、ベルト部材26には、ベルトガイド部材59との接触部分に、例えば20μmの厚みのPTFE等からなる絶縁層53が設けられている。
【0028】
押圧パッド60は図2に示すように、パッド保持部材(図示せず)により保持されているとともに、ベルト部材26の内周面に配設され、ベルト部材26を介して加圧ローラー19に対向している。尚、ベルトガイド部材59とパッド保持部材(図示せず)とを一体的に設けてもよいし、別体で設けてもよい。
【0029】
また、押圧パッド60はベルト部材26を加圧ローラー19側に押圧する。また、押圧パッド60は、液晶ポリマー樹脂等の耐熱性樹脂やシリコーンゴム等の弾性材料で構成されており、ベルト部材26に対向する摺動面にはエラストマーを配置する場合もある。また、摺動面には、ベルト部材26との接触面の摺動負荷を低減するために、PTFEシート等のフッ素樹脂系の摺動シート61(図3参照)が設けられている。
【0030】
加圧ローラー19は、ステンレス鋼等の円筒型の芯金19aと、芯金19a上に形成される例えばシリコーンゴム製の弾性層19bと、弾性層19bの表面を覆うフッ素樹脂等からなる離型層19cと、を備える。また、加圧ローラー19は図示しないモーター等の駆動源によって回転駆動させられ、加圧ローラー19の回転によってベルト部材26は従動回転する。加圧ローラー19とベルト部材26との圧接する部分に定着ニップ部Nが形成され、定着ニップ部Nでは、搬送される用紙9上の未定着トナー像が加熱及び加圧され、用紙9上にトナー像が定着される。
【0031】
誘導加熱部30は、励磁コイル37と、ボビン38と、磁性体コア39とを備え、電磁誘導によりベルト部材26を加熱するものである。誘導加熱部30は、ベルト部材26の幅方向(図2の紙面の表裏方向)に延びて、ベルト部材26の外周の略半分を囲うようにベルト部材26に対向して配設される。
【0032】
励磁コイル37は、ベルト部材26の幅方向(図2の紙面の表裏方向)に沿ってリッツ線をループ状に複数回巻回してボビン38に取り付けられる。また励磁コイル37は、図示しない電源に接続され、電源から供給される高周波電流により交流磁束を発生させる。励磁コイル37からの磁束は磁性体コア39を通過し、図2の紙面に平行な方向に導かれ、ベルト部材26の誘導発熱層26aに沿って通過する。誘導発熱層26aを通過する磁束の交流的な強さの変化によって誘導発熱層26aには渦電流が生じる。誘導発熱層26aに渦電流が流れると、誘導発熱層26aの電気抵抗によってジュール熱が発生して、ベルト部材26が発熱することになる。
【0033】
サーミスター25は、ベルト部材26の表面において幅方向の中央部及び両端部に対向するように配置され、夫々の領域の温度を検知する。サーミスター25の検知温度に基づいて誘導加熱部30の励磁コイル37に供給される電流が制御される。
【0034】
ベルト部材26が加熱手段である誘導加熱部30によって加熱され、定着可能温度になると、定着ニップ部Nで挟持された用紙9が加熱されるとともに、加圧ローラー19によって加圧されることにより、用紙9上の粉体状態のトナーが用紙9に溶融定着される。このように、ベルト部材26は薄肉の熱伝導性の良好な材質からなり熱容量が小さいため、短時間で定着装置5のウォーミングアップを行なうことができ、画像形成が迅速に開始される。定着処理後の用紙9は、ベルト部材26の表面に密着して搬送されるが、図示しない分離部材によってベルト部材26の表面から分離され、定着装置5の下流側に搬送される。
【0035】
また、絶縁層53は図4に示すように、本実施形態ではベルト部材26の内周面に設けられており、用紙通過領域(記録媒体通過領域)Rに配置される内側領域(第1絶縁層)53aと、用紙通過領域Rの外側に配置される複数の外側領域(第2絶縁層)53bと、を有する。なお、図4では、理解を容易にするために、絶縁層53、誘導発熱層26aにハッチングを施している。また、図4では、絶縁層53の内側領域53aは用紙通過領域Rと一致しているが、内側領域53aは用紙通過領域Rと比べて多少大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0036】
外側領域53bは、ベルト部材26の内周面のベルト幅方向(図4の左右方向)両端の端部領域のうちの一方(ここでは、右側の端部領域)に、周方向に所定のピッチで複数形成されている。これにより、ベルト部材26の内周面の一方の端部領域には、絶縁層53が設けられる複数の絶縁領域Raと、絶縁層53が設けられない複数の導電領域Rbと、が形成されている。端部領域のうちの絶縁層53が設けられていない領域では、誘導発熱層26aがベルト部材26の内周面側に露出している。
【0037】
複数の絶縁領域Raは、周方向の長さLaが全て同一の矩形状に形成されており、ベルト部材26の周方向に所定のピッチで配置されている。また、複数の導電領域Rbも、周方向の長さLbが全て同一の矩形状に形成されており、ベルト部材26の周方向に所定のピッチで配置されている。なお、絶縁領域Raの周方向の長さLaは、導電領域Rbの周方向の長さLbよりも小さい。また、絶縁領域Raは、本実施形態ではシャフト52の軸方向(加圧ローラー19の軸方向、ベルト幅方向)に平行に延びるように形成されている。
【0038】
また、図3に示すように、ベルト部材26の内周面の両端の端部領域(用紙通過領域Rの外側の非通過領域)の各々には、端子部56が接触されている。端子部56は、シャフト52や図示しない保持部材等により保持されている。また、端子部56は、導電性ブラシ、導電性板バネまたは導電性シート(例えば導電性ポリイミドシート)を用いて形成されている。
【0039】
端子部56には、図示しない配線を介して、抵抗値を検知する検知器65(図1参照)が電気的に接続されている。これにより、端子部56間のベルト部材26の抵抗値を検知することができる。この検知器65の測定結果が所定値以上になった場合、ベルト部材26に亀裂が生じている可能性が高いので、誘導加熱部30への通電が停止される。
【0040】
検知器65は、2つの端子部56間の抵抗値を検知する抵抗値測定器によって構成されるが、2つの端子部56間に所定電圧を印加した際に流れる電流値を検知する装置であってもよいし、2つの端子部56間に所定電流を通電した際の電位差を検知する装置であってもよい。なお、これらの装置を用いて電流値や電位差を検知しても、ベルト部材26の亀裂を検知することが可能である。検知器65として電流値を検知する装置を用いた場合、測定結果が所定値以下になると、ベルト部材26に亀裂が生じている可能性が高くなる。また、検知器65として電位差を検知する装置を用いた場合、測定結果が所定値以上になると、ベルト部材26に亀裂が生じている可能性が高くなる。
【0041】
この亀裂検知を行うタイミングとしては、印字枚数が所定枚数に到達した時点で行うようにしてもよいし、印字時間が所定時間に到達した時点で行うようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、上記のように、検知器65に電気的に接続される2つの端子部56を、ベルト部材26の内周面の両端の端部領域にそれぞれ接触される。これにより、ベルト部材26の抵抗値、ベルト部材26に所定電圧を印加した際に流れる電流値、又はベルト部材26に所定電流を通電した際の電位差、を検知することができるので、ベルト部材26の亀裂を検知することができる。
【0043】
また、端子部56をベルト部材26の内周面に接触させることによって、端子部56をベルト部材26の外周面に接触させる場合と異なり、ベルト部材26の内部に端子部56を配置することができ、定着装置5が大型化するのを抑制することができる。
【0044】
また、端子部56をベルト部材26の内周面に接触させることによって、ベルト部材26にテンションがかかり、ベルト部材26が端子部56から逃げる(離れる)のを抑制することができるので、端子部56とベルト部材26とを安定して接触させることができる。
【0045】
また、上記のように、ベルト部材26の誘導発熱層26aは、ベルト部材26の内周面側に露出するとともに、端子部56に接触される。これにより、ベルト部材26に亀裂検知用の導電層等を別途設けることなく、ベルト部材26の亀裂を容易に検知することができる。
【0046】
また、上記のように、ベルト部材26と磁性を有するベルトガイド部材59とを設ける構成では、ベルト部材26に亀裂が生じると、その部分を磁束が通過する。これにより、ベルトガイド部材59が磁束を直接吸収するので、ベルトガイド部材59が急激に高温になる。このため、上記構成の場合に、ベルト部材26の亀裂を検知して誘導加熱部30への通電を停止することは特に有効である。
【0047】
また、上記のように、ベルトガイド部材59とベルト部材26との接触部分には、内側領域53a(絶縁層53)が設けられている。これにより、ベルトガイド部材59とベルト部材26とは導通しないので、ベルト部材26に亀裂が生じた場合にベルト部材26の亀裂を見逃してしまうのを抑制することができる。
【0048】
また、上記のように、ベルト部材26の内周面の両端の端部領域の一方には、周方向に所定のピッチで外側領域53b(絶縁層53)が設けられている。これにより、ベルト部材26の抵抗値等の変化の周期から、ベルト部材26の回転速度を検知することができる。すなわち、ベルト部材26の回転の有無やスリップを検知することができる。
【0049】
また、上記のように、外側領域53bは、ベルト部材26の内周面の両端の端部領域の一方のみに設けられている。これにより、ベルト部材26の抵抗値等の変化を精度良く検知することができる。
【0050】
また、上記のように、端子部56は、導電性ブラシ、導電性板バネまたは導電性シートを用いて形成されている。これにより、ベルト部材26の内周面に傷が付くのを抑制しながら、簡単な構成でベルト部材26の抵抗値等を検知することができる。
【0051】
また、上記の構成では、2つの端子部56間の抵抗値等を検知することができる。このため、上記のように、端子部56をベルト部材26の内周面のうちの用紙通過領域Rの外側の非通過領域に接触させることによって、ベルト部材26の用紙通過領域R内で生じる亀裂を容易に検知することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2実施形態の定着装置5について説明する。
【0053】
本発明の第2実施形態では図5に示すように、外側領域53bは、シャフト52の軸方向(図5の左右方向)に対して傾斜する第1方向に延びる第1領域Rcと、第1方向と交差する方向に延びる第2領域Rdと、を含んでいる。第2領域Rdは、例えば図5に示すようにシャフト52の軸方向に平行に延びるように形成されている。第1領域Rcおよび第2領域Rdは、ベルト部材26の周方向に所定のピッチで交互に配置されている。
【0054】
また、第1領域Rcおよび第2領域Rdの周方向の長さは、シャフト52の軸方向に沿って一定であり、Laである。一方、導電領域Rbは台形状に形成されており、導電領域Rbの周方向の長さは、シャフト52の軸方向に沿って大きく又は小さくなる。これにより、ベルト部材26がシャフト52の軸方向に移動する(ベルト部材26が斜行する)と、端子部56が導電領域Rbを通過するタイミングや時間が変化し、ベルト部材26の斜行が検知される。
【0055】
なお、図6に示すように、第2領域Rdも、シャフト52の軸方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されていてもよい。この場合、第2領域Rdの傾斜方向を、シャフト52の軸方向に対して第1領域Rcとは反対方向にすることが好ましい。
【0056】
第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態では、上記のように、外側領域53bは、加圧ローラー19の軸方向に対して傾斜する第1方向に延びる第1領域Rcと、第1方向と交差する第2方向に延びる第2領域Rdと、を含む。これにより、ベルト部材26がシャフト52の軸方向に移動した場合に、端子部56が導電領域Rbを通過するタイミングや時間が変化するので、ベルト部材26の斜行を検知することができる。
【0058】
また、上記のように、図6に示すように第2領域Rdの傾斜方向をシャフト52の軸方向に対して第1領域Rcとは反対方向にすれば、ベルト部材26がシャフト52の軸方向に移動した場合に、端子部56が導電領域Rbを通過するタイミングや時間がより大きく変化するので、ベルト部材26の斜行をより精度良く検知することが可能である。
【0059】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
(第3実施形態)
次に、図7および図8を参照して、本発明の第3実施形態の定着装置5について説明する。
【0061】
本発明の第3実施形態では図7に示すように、定着装置5は、ベルト部材26と、ベルト部材26の内周面に配設される定着ローラー18と、加圧ローラー19と、誘導加熱部30と、サーミスター25と、を備える。
【0062】
定着ローラー18は、ベルト部材26を一体回転可能とするために、ベルト部材26の内周面を張架している。例えば、定着ローラー18は、シャフト52上に厚み20mmのシリコーンスポンジからなる弾性層57を有し、弾性層57はベルト部材26を張架している。
【0063】
弾性層57は絶縁性であるので、弾性層57とベルト部材26との接触部分に絶縁層を設けなくてもよい。すなわち、絶縁層53の内側領域53aを設けなくてもよい。
【0064】
なお、ベルト部材26の幅方向両側には、例えばPPS樹脂からなるプーリー58が設けられており、これにより、ベルト部材26の斜行が抑制される。
【0065】
第3実施形態のその他の構造および効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0066】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0067】
例えば、モノクロ画像形成装置に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、言うまでもなく、カラー画像形成装置にも本発明を適用できる。
【0068】
また、上記実施形態では、加熱装置として誘導加熱部30を用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、加熱装置としてハロゲンランプ等からなるヒーターを用いてもよい。
【0069】
また、上記第1実施形態では、絶縁層53に内側領域53aと外側領域53bとを設けた例について示したが、本発明はこれに限らない。内側領域53aおよび外側領域53bは必要に応じて設けられるものであり、内側領域53aおよび外側領域53bのいずれか一方だけを設けてもよい。また、外側領域53bを設けない場合、内側領域(第1絶縁層)をベルトガイド部材59の外周面に設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ベルト部材26に誘導発熱層26aを設け、誘導発熱層26aに端子部56を接触させた例について示したが、本発明はこれに限らず、ベルト部材26に誘導発熱層26a以外の導電層等を設け、その層に端子部56を接触させることによって、ベルト部材26の亀裂を検知してもよい。
【0071】
また、上記第2実施形態では、ベルト部材26が定着ローラー18に張架される1軸型定着装置5に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、ベルト部材26が定着ローラー18及び加熱ローラー等によって懸架される多軸(2軸)型定着装置に本発明を適用してもよい。
【0072】
また、上述した実施形態および変形例の構成を適宜組み合わせて得られる構成についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
5 定着装置
9 用紙(記録媒体)
19 加圧ローラー
26 ベルト部材
26a 誘導発熱層
30 誘導加熱部(加熱装置)
53a 内側領域(第1絶縁層)
53b 外側領域(第2絶縁層)
56 端子部
59 ベルトガイド部材
65 検知器
N 定着ニップ部
R 用紙通過領域(記録媒体通過領域)
Ra 絶縁領域
Rb 導電領域
Rc 第1領域
Rd 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8