(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976080
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】自動車用ハイブリッドシートフレーム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
B60N2/68
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-237836(P2014-237836)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-101339(P2015-101339A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2014年11月25日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0145672
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513031968
【氏名又は名称】ロッテケミカルコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リ ギョミン
(72)【発明者】
【氏名】李 宗▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】蘇 哲園
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−500198(JP,A)
【文献】
特表2013−537152(JP,A)
【文献】
特開平10−156881(JP,A)
【文献】
実開昭55−114261(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維材質のメインフレームと、
前記メインフレームに結合される炭素繊維材質の補強フレームと、
を含み、
前記メインフレームおよび前記補強フレームはそれぞれ、シート前方側が開放されシート後方側が閉じた、対向する一対の側面部を含む溝形の断面構造を有し、
前記メインフレームは、前記補強フレームの開口を通して前記補強フレームの内周面に設けられ、
前記補強フレームには、前記補強フレームの長手方向に沿って複数の孔が前記補強フレームの前記一対の側面部に設けられ、
前記メインフレームは、前記補強フレームの前記複数の孔の各々に挿入される複数のリベットを含み、
前記複数のリベットは、射出溶液を硬化した前記ガラス繊維材質により形成され、
前記複数のリベットは、前記射出溶液を用いて形成された前記メインフレームの前記一対の側面部において、前記補強フレームの前記一対の側面部に設けられた前記複数の孔の各々の位置に対応して、前記メインフレームと一体的に設けられる、
自動車用ハイブリッドシートフレーム。
【請求項2】
前記メインフレームが有する前記溝形の断面構造の内部に、補強リブが形成される、請求項1に記載の自動車用ハイブリッドシートフレーム。
【請求項3】
前記ガラス繊維材質は、ポリアミド基材とガラス短繊維強化材で形成され、
前記炭素繊維材質は、熱可塑性アクリル基材と炭素連続繊維強化材で形成される、請求項1または2に記載の自動車用ハイブリッドシートフレーム。
【請求項4】
自動車と前記自動車用ハイブリッドシートフレームの連結部位には、スチール材質の締結具が形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用ハイブリッドシートフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ハイブリッドシートフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車に搭載されるシートは、搭乗者が着席するための部品であり、車体に固定されるシートフレームとシートフレームを包むカバーで構成される。
【0003】
従来は、シートフレームはスチールのような金属材で形成されるため、車両の全体的な重量が増加してしまい、その結果、燃費が低下する問題があった。そのため、現在において、完成車メーカや関連企業は、低重量、高剛性仕様のシートフレームの開発に集中している。
【0004】
例えば、スチールシートフレームの分野では、ハイドロフォーミングなどの多様な成形工法を適用して、低重量および高剛性のシートフレームを開発することに励んでいるが、得られる性能に比較して、コストに見合わない追加的な価格上昇が発生するという問題が存在する。一方、高分子複合素材のシートフレームの場合、剛性が優れているため、軽量化が可能であると予想されているだけではなく、追加的な価格上昇も発生しないため、多くの企業が開発に参加している状況である。
【0005】
なお、本発明の背景となる技術は、以下の特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許出願第10−0321425号
【特許文献2】韓国特許出願第10−1013904号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、剛性が優れておりかつ軽量な素材であっても、材料費が高価である素材をシートフレーム全体に用いることは、製造コストおよび価格の上昇を招くという問題点も存在した。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、高剛性で軽量であり、かつ安価なコストで大量生産が可能な、新規かつ改良された自動車用ハイブリッドシートフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ガラス繊維材質のメインフレームと、前記メインフレームに結合される炭素繊維材質の補強フレームと、を含む自動車用ハイブリッドシートフレームが提供される。
【0010】
前記メインフレームと前記補強フレームは、溝形の断面構造を有してもよい。
【0011】
前記メインフレームの溝形の断面構造の内部に、補強リブが形成されてもよい。
【0012】
前記メインフレームは前記補強フレームの溝形の断面構造の内側に挿入されてもよい。
【0013】
前記メインフレームと前記補強フレームは、リベットによって互いに締結されてもよい。
【0014】
前記ガラス繊維は、ポリアミド基材とガラス短繊維強化材で形成され、前記炭素繊維は、熱可塑性アクリル基剤と炭素連続繊維強化材で形成されてもよい。
【0015】
前記自動車と前記シートフレームの連結部位には、スチール材質の締結具が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高剛性で軽量であり、かつ安価なコストで大量生産することが可能な自動車用ハイブリッドフレームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車用ハイブリッドシートフレームの斜視図である。
【
図2】
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームを構成するメインフレームと補強フレームの斜視図である。
【
図4】
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームの正面図である。
【
図5】
図4に示した自動車用ハイブリッドシートフレームのA−Aの断面斜視図である。
【
図6】
図4に示した自動車用ハイブリッドシートフレームのB部分の拡大図である。
【
図7】
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームのマウンティング部位の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る自動車用ハイブリッドシートフレームの斜視図であり、
図2は
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームの分解斜視図であり、
図3は
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームを構成するメインフレームと補強フレームの斜視図であり、
図4は
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームの正面図であり、
図5は
図4に示した自動車用ハイブリッドシートフレームのA−Aの断面斜視図であり、
図6は
図4に示した自動車用ハイブリッドシートフレームのB部分の拡大図であり、
図7は
図1に示した自動車用ハイブリッドシートフレームのマウンティング部位の拡大図である。
【0020】
<1.本発明における実施形態の構成>
図1〜
図7に示したように、本発明の実施形態による自動車用ハイブリッドシートフレーム100は、メインフレーム110および補強フレーム120を含む。
【0021】
図3(a)にメインフレーム110の構造を示す。メインフレーム110は、外部から加えられる主要荷重を支持する。具体的には、メインフレーム110は、車体とメインフレーム110とを固定する下端部と、下端部の両端から高さ方向に延設された左右一対の中間部と、延設された各々の中間部の端部とを架設する上端部とが、一体となって形成される構造を有する。また、メインフレーム110の中間部は、搭乗者の腰や背を安定的に支持できるように、S字のような流線型構造を有してもよい。
【0022】
なお、本発明におけるメインフレーム110は、ガラス繊維で形成される。このガラス繊維は、例えば、ベース樹脂であるポリアミド基材に、ガラス短繊維強化材が30〜50%付加されたガラス繊維であってもよい。
【0023】
図3(b)に補強フレーム120の構造を示す。補強フレーム120は、メインフレーム110の有する剛性を補完する役割を有し、メインフレーム110に結合される。具体的には、
図2に示されるように、補強フレーム120が複数用意され、各々の補強フレーム120が、メインフレーム110の中間部と下端部を被せるような形態で結合されてもよい。この結合によって、補強フレーム120が、メインフレーム110の中間部における長さ方向に沿って、部分的にメインフレーム110を補強支持する。したがって、メインフレーム110がガラス繊維のみで形成される場合において、メインフレーム110の中間部における長さ方向の垂直成分に対する剛性が脆弱となる、という問題が解決される。また、補強フレーム120は、メインフレーム110の中間部の有する流線型構造に対応する構造を有してもよい。
【0024】
なお、本発明における補強フレーム120は、炭素繊維で形成される。この炭素繊維は、例えば、ベース樹脂である熱可塑性アクリル基材に炭素連続繊維強化材が付加された炭素繊維であってもよい。
【0025】
これまで説明したように、本発明は、自動車用ハイブリッドシートフレーム100の全体的な構造を構成する、ガラス繊維で形成されたメインフレーム110、および、剛性を補強するためにメインフレーム110に対して部分的に適用される、炭素繊維で形成された補強フレーム120で構成されることを、技術的特徴とする。剛性を単に向上させることを考慮すれば、メインフレーム110をすべて炭素繊維で形成することが望ましい。しかし、炭素繊維は非常に高価であるため、本発明に記載のシートフレームの製造コストも上昇し、よって商用化が困難となる。一方、本発明においては、炭素繊維に比べ非常に安価なガラス繊維がメインフレーム110の素材として選定されている。よって、メインフレーム110の剛性が足りない部分について、炭素繊維素材で形成された補強フレーム120を用いて補強することで、製造コストを抑えつつ、十分な剛性を確保することが可能である。同時に、重量の節減も達成することが可能であり、自動車の燃費改善という効果も確保され得る。
【0026】
<2.フレームの断面構造の変形>
従来のシートフレームは、フレーム中間部の長さ方向に対する垂直成分の荷重に対しては優れた剛性を有するが、ねじり剛性が低く、構造的に脆弱になるという問題点がある。これは従来のシートフレームが平面構造を有しているためである。
【0027】
そこで本発明において、具体的には、剛性と比例関係にある断面係数を極大化させるために、メインフレーム110の断面が、
図5に示されるように、溝形の構造を形成してもよい。また、補強フレーム120の断面が、メインフレーム110の形状に対応した溝形の構造を形成してもよい。これらの構造により、不足しているねじり剛性の問題は解決され得る。また、これらの溝形の断面構造の形状は、例えば、コの字型のような形状であってもよい。
【0028】
なお、通常のシートフレームのねじり剛性測定に関する試験規格は、4mm以下と定められている。シートフレームが平面構造である場合、ねじり荷重を適用すると、4.8mmの変位が測定されたので、規格を満たすことができなかった。一方で、本発明のフレーム構造の場合、1.4mmの変位が測定されたことから、優れたねじり剛性を得ることが確認された。
【0029】
また、さらに剛性を向上させるために、以下のような補強方法が考えられる。具体的には、
図6に示されるように、メインフレーム110の溝形構造の内部において、補強リブ111が、それぞれ水平になるように多数形成されてもよい。
【0030】
また、さらに剛性を向上させるために、具体的には、溝形の断面構造を有するメインフレーム110が、同じ溝形の断面構造を有する補強フレーム120の内側に挿入されてもよい。このように、メインフレーム110と補強フレーム120を溝形の断面構造を取るように互いを締結すると、自動車用ハイブリッドシートフレーム100の中間部の長さ方向に対する剛性が増大され得る。
【0031】
<3.リベットの設置>
また、自動車用ハイブリッドシートフレーム100の強度を向上させるために、例えば、メインフレーム110と補強フレーム120が、
図1に示されるように、リベット112によって互いに締結されてもよい。より具体的には、補強フレーム120にメインフレーム110が挿入された状態で、両フレームがリベット112を用いて締結されてもよい。これにより、両フレームの結合力を向上させることが可能であり、その結果、フレームの構造的強度が上昇し得る。
【0032】
本発明において、リベット構造は以下のような方法で形成され得る。具体的には、まず長さ方向に沿ってリベット用孔が形成された補強フレーム120が、メインフレーム用金型に接着したあと、例えばガラス繊維複合素材溶液などの射出溶液が金型に注入されることにより、射出成型が行われる。すると、メインフレーム110が形成されるとともに、補強フレーム120のリベット用孔から射出溶液が溢れ出る。この溢れ出た射出溶液が固化し、金型のリベット形状に合わせてリベットが形成され得る。
【0033】
なお、
図1で示されるリベット112は、説明の便宜上、三カ所に形成されているが、リベット112の数は例示した数に限られたものではなく、要求される強度や剛性を鑑みて、適切な数のリベット112が形成され得ると理解すべきである。
【0034】
<4.マウンティング部位における締結孔の補強>
一方、上述した自動車用ハイブリッドシートフレーム100は、下端部に形成された締結孔113にボルト(図示せず)などを車体と締結することで自動車に固定されるが、本発明の自動車用ハイブリッドシートフレーム100は、ガラス繊維および炭素繊維で形成されているため、車両に装着するためのマウンティング部位が、局所的に脆弱な構造となり得る。
【0035】
上記の問題を解決するために、具体的には、
図7で示されるように、自動車用ハイブリッドシートフレーム100と車体との連結部位である締結孔113にスチール材質の締結具114が設置されてもよい。このように構成することで、相対的に剛性が高いスチール材質の締結具114で荷重を支持することができ、より堅固な固定力を確保することが可能となる。
【0036】
<5.むすび>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0037】
100 自動車用ハイブリッドシートフレーム
110 メインフレーム
111 補強リブ
112 リベット
113 締結孔
114 締結具
120 補強フレーム