特許第5976102号(P5976102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976102
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】2部材からなる歯科用部品
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【請求項の数】25
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-513081(P2014-513081)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公表番号】特表2014-516716(P2014-516716A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012002303
(87)【国際公開番号】WO2012163528
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】11004473.2
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512007270
【氏名又は名称】ストローマン ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】クールボアジェ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー、ヨスト
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−538706(JP,A)
【文献】 特開平06−078936(JP,A)
【文献】 特開平01−151453(JP,A)
【文献】 特開昭46−004095(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01943978(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0130629(US,A1)
【文献】 特表平06−505645(JP,A)
【文献】 国際公開第92/010145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔(24)を有する歯科用インプラント(20)に接続するための二次部品(10)であって、
前記二次部品は、
ヘッド部(40)とベース部(30)とを含み、
前記ヘッド部は、
使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部(45)と、
前記歯冠部の歯根側の連結部(46)とを含み、
前記ベース部は、
インプラントに接続するためのインプラント接続手段(32)と、
締付手段とを含み、
前記連結部と前記締付手段は回転可能に直接連結させることができ、それにより、前記ヘッド部と前記ベース部を軸方向に連結させ、同時に前記ヘッド部に対して前記ベース部が回転可能であるため、前記インプラント接続手段を前記インプラントに係合させて前記二次部品を前記インプラントに固定することができ、
前記ヘッド部は、前記歯冠部から前記連結部まで延びる貫通路(43)をさらに含み、前記ベース部は、前記ベース部にトルクを伝達することが可能な非円形の断面を有する駆動手段(34)であって、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段(34)をさらに含むことを特徴とする二次部品。
【請求項2】
前記ヘッド部(40)および前記ベース部(30)は、それぞれ一体部品である請求項1に記載の二次部品(10)。
【請求項3】
前記連結部(46)および前記締付手段は、連結が、正確な位置合わせによってのみ得られるように構成されている請求項1または2に記載の二次部品(10)。
【請求項4】
前記連結部(46)および前記締付手段は、スナップ嵌合接続によって直接連結される請求項3に記載の二次部品(10)。
【請求項5】
前記連結部(46)は、前記ヘッド部(40)の先端部に配置されている請求項1〜4のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項6】
前記締付手段は、前記ベース部(30)の歯冠側端部に配置されている請求項1〜5のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項7】
前記連結部(46)および前記締付手段の一方は、少なくとも1つのレール(47)を含み、前記連結部および前記締付手段の他方は、前記レールに係合するように形成された1つ以上のランナー(31)を含む請求項1〜6のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレール(47)は、前記連結部(46)および前記締付手段の一方の外面に形成されており、前記1つ以上のランナー(31)は、連結された状態において、部分的に前記レールを取り囲んでいる請求項7に記載の二次部品(10)。
【請求項9】
前記1つ以上のランナー(31)は、軸方向に延伸するアームの形をとり、その遠端には、前記レールの輪郭に対して相補的な輪郭を備えた窪みまたは突起(33)が設けられている請求項7または8に記載の二次部品(10)。
【請求項10】
前記1つ以上の軸方向に延伸するアーム(31)は、長手方向軸の周りに等間隔に配置されている請求項9に記載の二次部品(10)。
【請求項11】
前記連結部(46)は、その外面に配置された少なくとも1つのレール(47)を含み、前記締付手段は、前記連結部の前記レールの輪郭に対して相補的に形成された遠端を備え、軸方向に延伸するアームの形をとる少なくとも1つのランナー(31)を含む請求項7〜10のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのレール(47)は、前記連結部(46)の、前記歯冠部(45)の歯根側先端よりも径が狭い部分に配置されている請求項11に記載の二次部品(10)。
【請求項13】
1つのレール(47)および複数のランナー(31)を含む請求項7〜12のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項14】
前記レール(47)は、連続溝を含む請求項7〜13のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項15】
前記インプラント接続手段は、雄ねじを含む請求項1〜14のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項16】
前記駆動手段は、前記ベース部(30)の長手方向軸に沿って延びる通路(34)を含む請求項1〜15のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項17】
前記貫通路(43)は、前記ベース部(30)よりも狭い請求項1〜16のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項18】
前記締付手段は、前記連結部(46)の外側に直接連結されることができる請求項1〜16のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項19】
前記ヘッド部(40)は、インプラント(20)と協働するための回転防止手段を含む請求項1〜18のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項20】
前記連結部(46)の歯冠側端部は、歯冠に向かう方向の外側にテーパーが付けられたテーパー部(42)を含む請求項1〜19のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項21】
前記部品は、アバットメントである請求項1〜20のいずれかに記載の二次部品(10)。
【請求項22】
内腔(24)を有する歯科用インプラント(20)に接続するための二次部品(10)であって、
前記二次部品は、ヘッド部(40)とベース部(30)とを含み、
前記ヘッド部は、
使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部(45)と、
前記歯冠部の歯根側の連結部(46)とを含み、
前記ベース部は、
インプラントに接続するためのインプラント接続手段(32)と、
締付手段とを含み、
前記締付手段は、前記連結部の外側に回転可能に固定されるように構成され、それにより、前記ヘッド部に対して前記ベース部が回転可能であり、前記インプラント接続手段を前記インプラントに係合させて、前記二次部品を前記インプラントに固定することができ、
前記ヘッド部は、前記ヘッド部を通って延びる貫通路(43)をさらに含み、前記ベース部は、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段を含むことを特徴とする二次部品。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の二次部品(10)と、
駆動工具(90)とを含む歯科用インプラントシステムであって、
前記駆動工具は、前記ヘッド部(40)の前記貫通路(43)を挿通するような寸法にされたシャフト(92)を含み、その末端において、前記ベース部(30)の前記駆動手段に形状嵌合接続(form fit connection)するための駆動要素(93)をさらに含むことを特徴とする歯科用インプラントシステム。
【請求項24】
内腔(24)を有するインプラント(20)をさらに含み、前記内腔は、その歯根側先端に向かってねじを備えるとともに、前記ベース部(30)および前記ヘッド部(40)の少なくとも前記連結部(46)を収容するような寸法にされている請求項23に記載の歯科用インプラントシステム。
【請求項25】
歯科用インプラント(20)に接続するための二次部品(10)と歯科用インプラント(20)とを含む歯科用インプラントシステムであって、
前記二次部品は、ヘッド部(40)とベース部(30)とを含み、
前記ヘッド部は、
使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部(45)と、
前記歯冠部の歯根側の連結部(46)とを含み、
前記ベース部は、
インプラントに接続するためのインプラント接続手段(32)と、
締付手段とを含み、
前記連結部と前記締付手段は回転可能に直接連結させることができ、それにより、前記ヘッド部と前記ベース部を軸方向に連結させ、同時に前記ヘッド部に対して前記ベース部が回転可能であるため、前記インプラント接続手段を前記インプラントに係合させて前記二次部品を前記インプラントに固定することができ、
前記ヘッド部は、前記歯冠部から前記連結部まで延びる貫通路(43)をさらに含み、前記ベース部は、前記ベース部にトルクを伝達することが可能な非円形の断面を有する駆動手段(34)であって、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段(34)をさらに含み、
前記インプラントは、前記ベース部の前記インプラント接続手段に対して相補的な構造を有する内腔を含むので、前記二次部品を前記インプラントに軸方向に固定するために、前記インプラント構造に対して前記インプラント接続手段が回転すると、前記ベース部と前記インプラントとの係合が実現することを特徴とする歯科用インプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材からなる歯科用部品、特に、歯科用インプラントと組み合わせて用いるための歯科用アバットメントに関する。上記部品は、使用時にインプラントから突出し、部品の主な機能を担う1部分と、インプラントに部品を強固に固定する別の部分からなる。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラントは、個々の歯の代わりに用いられたり、一般的には、いくつかの歯または全ての歯でさえも取り替えるような、より複雑な構造を固定するために用いられたりする。歯科用インプラントの材料は、チタンおよびチタン合金が多いが、セラミック材料もますます増えている。これらの材料は、発生する機械的負荷に耐えるのに必要な強度を有すると同時に、オッセオインテグレーションおよび口内における長期使用に対する十分な生体適合性も有している。
【0003】
インプラントは2部材から構成されることが多く、その場合、しばしば単独でインプラントと称されるアンカー部と、別個のアバットメントからなる。アンカー部は、骨内に、すなわち歯槽頂の高さに完全に埋設されるか、または歯槽頂から数ミリだけ突出して、軟部組織に達する。アバットメントは、アンカー部が骨に組み込まれた(骨と一体化された)後、またはアンカー部が挿入された直後に、アンカー部に装着される。挿入前に、アンカー部にアバットメントを取り付けることもできる。最も一般的には、アバットメントは、オッセオインテグレーション後まで装着されない。そのような場合、軟部組織がインプラント部位の上に侵入することを防ぐために、オッセオインテグレーションプロセスの間、ヒーリングキャップと称される部品がインプラントに装着されることが多い。最後に、所望の補綴要素(例えば、ブリッジまたはクラウン)がアバットメントに接続される。
【0004】
補綴要素は、アバットメントに接着接合するか、セメントで固定するか、ねじ止めするか、または直接張り合わせることができる。
【0005】
インプラントは、アンカー部およびアバットメントが1つの一体型部品として作成された1部分から構成されることも可能である。従って、そのようなインプラントシステムにおいては、一体化されたアンカー部およびアバットメントは、必ず同時に口内に配置されることになる。
【0006】
1部分からなるインプラントとは異なり、2部材からなるインプラントは、アンカー部およびアバットメントを個別の要求に適合させることができるため、多用途である。特に、アンカー部に対するアバットメントの形状および角度調整は、インプラント挿入後に選択することができる。これは、外科医に対して、高い融通性およびインプラントの設置における誤りの余地をもたらす。2部材からなるインプラントのさらなる利点は、アバットメントがアンカー部とは異なる材料で作成できることである。
【0007】
2部材からなる歯科用インプラントは、その多様性により、1部分からなるインプラントよりも一般に用いられており、本発明が扱っているのは、この形のインプラントである。従って、本明細書では、以下において、「インプラント」とは、2部材からなるインプラントのアンカー部、すなわち、使用時に骨内に固定される要素を示す用語であり、「二次部品(secondary component)」とは、使用時にインプラントに固定され、かつインプラントから突出して歯茎内に入り、場合によっては歯茎を通る要素を示す用語である。二次部品は、義歯の土台となるアバットメントでもよく、ある場合には、一体型アバットメントおよび最終的な義歯を含んでもよい。また、ヒーリングキャップまたはインプレッションポスト(impression post)等のインプラントに仮に固定される部品であってもよい。
【0008】
全ての二次部品は、部品の緩みおよび潜在的損失を防ぐために、インプラントに強固に固定されることができなければならない。これは、例えば圧縮嵌合(compression fit)またはセメント接合を介する多くの方法によって実現できる。しかし、螺合接続が一般に好ましい。取り付け中に、十分に高いトルクをかけることにより、インプラントと二次部品との強固な接続が実現される。
【0009】
従って、いくつかのシステムにおいて、インプラントが雌ねじ付き内腔を含み、二次部品が対応する先端のねじ山を含むことにより、二次部品をインプラントに直接螺合させる。しかし、これには、最終的に固定するまで、インプラントに対する二次部品の正確な角度位置が分からないという短所がある。このことは、特に1つの義歯を支えるのに用いられるアバットメントに関して不利になり得る。
【0010】
従って、多くのインプラントシステムは、回転防止手段を含む。回転防止手段は、インプラントとアバットメントまたは他の二次部品との相対的回転を防ぎ、二次部品がインプラントに対して取り得る限られた数の回転位置を設定する。
【0011】
このような回転防止手段は、インプラントおよび二次部品の相補的な非円形部分からなり、通常、六角形または八角形等の多角形の形状を有する。例えば、インプラントの内腔は、断面が六角形の部分を含み、アバットメントまたは他の二次部品は、同じように断面が六角形の部分を含むことができる。あるいは、インプラントは、その歯冠側端部から突出する雄型多角形突起を含んでもよい。使用時に、この突起は、それに応じて二次部品内に形成された多角形状の穴に収容される。
【0012】
上記システムによれば、固定する前に、インプラントに対するアバットメントまたは他の二次部品の正確な回転位置が確実に分かり、インプラントの耐用期間中、アバットメントの緩みを防ぐのに役立つ。
【0013】
もちろん、上記回転防止手段が用いられると、インプラントに対して二次部品を回転することは不可能になる。ゆえに、二次部品は、もはやインプラントに直接ねじ込ませることができない。そこで、第三の部品、多くの場合「基部ねじ」として知られるねじを用いて、二次部品をインプラントに接続する。
【0014】
基部ねじが用いられる場合、アバットメントまたは他の二次部品は、通常、当該部品を通って延び、ねじ座を備えたねじ溝を含む。これにより、ねじ頭がねじ座に接するまで、二次部品に基部ねじを通すことができ、さらにねじ溝にねじ回しを挿入してねじに接続させ、このねじをインプラントの内腔に固定することができる。
【0015】
上記公知のインプラントシステムの一例は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0016】
上記システムの1つの問題は、ねじ溝の存在により、アバットメントの体積が減少するため、アバットメントが脆弱化することである。この影響は、ねじ溝の幅を最小に保つことによって抑えられるが、ねじ溝の径は、ねじの径によって設定される。その結果、最初は組み立て時に作用し、後にインプラントシステムの使用時、強い咀嚼力が及ばされるときに作用するトルクおよび曲げ力に耐えられるほど頑丈なねじであることを確保するように、ねじ溝の径は十分に大きくなければならない。従って、ねじ溝の幅を小さくする可能性は制限される。
【0017】
既存の歯との干渉を防ぎ、骨量の低下を抑える必要性から、インプラント(アンカー部)の径が制限されるため、インプラントに固定される二次部品の先端部も制限される。これは、アバットメントの先端部がインプラントに挿入される大きさに作られている場合に特に当てはまる。このため、ねじ座は、通常、二次部品内のより高い位置に設けられている。この位置は、体積が大きく、ゆえにねじ溝の最大径部、すなわち、ねじ座の上部による脆弱化の影響をより受けにくい。これは、より長いねじ軸を必要とするため、使用時に、より大きな曲げ力がねじに及ぼされることになる。ねじ溝の幅も、アバットメントの最小形状を制限し、その結果、個別化された患者専用の形状に研削する可能性が制限される。
【0018】
上記問題は、セラミックアバットメントに関して、特に関係がある。このようなアバットメントには、着色による審美的な利点がある。しかし、これらの材料は、特に薄肉領域において、脆く、欠けやすい。
【0019】
特許文献2は、金属嵌め込みにより、アバットメントのねじ溝内にねじが保持されているアバットメントを開示している。このアバットメントは、ねじ頭上のねじ溝の径を小さくして、ねじが落下することを防いでいる。特許文献3は、ねじ頭の下の、ねじ溝の先端部に嵌め込みが配置されている同様のシステムを開示している。
【0020】
上記システムのどちらにおいても、アバットメントおよびねじは、3部分からなる組立体を形成しており、最終的な要素、嵌め込みは、ねじがアバットメントに挿入された後でしか取り付けられない。これらのシステムでは、インプラントに接続される前に、アバットメント内にねじを保持することができるが、ねじ溝の幅を小さくしてアバットメントの強度を向上させる機能は制限される。
【0021】
上記システムはどちらも、ねじ回しの頭が通って、標準的な基部ねじの頭に係合することができるほど十分に大きな幅を有する冠状ねじ溝を備えることを要件としている。さらに、別個の嵌め込みを備えることで、アバットメントのコストおよび複雑さが増加する。また、特許文献2は、アバットメントの最小形状を減少させるという課題を解決していない。安定性については、嵌め込みは、アバットメントの歯冠側端部内に入れたままでなければならない。特許文献3に関して、嵌め込みは、この配置において、ねじ座を効果的に形成しているため、嵌め込みの損傷を招くことがある高い引張応力を受けやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0031748号
【特許文献2】欧州特許第2036515号
【特許文献3】欧州特許第1139906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の少なくとも好ましい実施形態の目的は、歯科用インプラントとともに用いられる二次部品、特に、アバットメントを提供することである。本発明の二次部品によれば、ねじ溝の径を小さくすることができるため、システムの部品数を増加させることなく、強度が向上した二次部品を作成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
一態様によると、本発明は、内腔を有する歯科用インプラントに接続するための二次部品であって、前記二次部品は、ヘッド部とベース部とを含み、前記ヘッド部は、使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部と、前記歯冠部の歯根側の連結部とを含み、前記ベース部は、インプラントに接続するためのインプラント接続手段と、締付手段とを含み、前記連結部と前記締付手段は回転可能に直接連結させることができ、それにより、前記ヘッド部と前記ベース部を軸方向に連結させ、前記ヘッド部は、前記歯冠部から前記連結部まで延びる貫通路をさらに含み、前記ベース部は、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段を含むことを特徴とする二次部品を提供する。
【0025】
「直接連結」とは、嵌め込み(inlay)等の付加的部品を必要とせずに、ヘッド部およびベース部が結合されることを意味する。上記連結は、ヘッド部の連結部とベース部の締付手段との相互作用によって起こり、2つの部分の軸方向の位置合わせ(axial alignment)を保持する。従って、連結された状態において、ヘッド部およびベース部は軸方向に結合されるが、いくつかの実施形態では、軸方向の遊びがあることもある。
【0026】
ヘッド部およびベース部は、回転可能に連結するように配置されているため、これらが連結された状態でも、両者の間の少なくとも部分的な相対的回転が可能となっている。
【0027】
従って、本発明は、ベース部がヘッド部に対して回転することができる、2部材からなる二次部品を提供する。実際には、2部材からなる二次部品は、組込式(in-built)インプラント接続手段を備えた二次部品であると考えられる。インプラント接続手段は二次部品の歯根側の端部に直接連結されるので、二次部品のヘッド部の貫通路内に、インプラント接続手段を通す、または収容する必要がない。
【0028】
従って、この貫通路は、ベース部の駆動手段に係合するための駆動工具を挿入できる大きさに作られてさえいればよい。ゆえに、二次部品を通る通路の径を大幅に減少することができる。その結果としての体積の増加により、二次部品が強化される。さらに、通路の径が減少すると、二次部品の歯冠部を個別化された形状に研削する性能が向上する。また、別個のねじ部品がないため、この小さな部品の取り扱いに起因する汚染または吸引の危険性が排除される。
【0029】
ヘッド部およびベース部の直接連結により、簡素な構成になる。各部分を互いに結合するのに嵌め込みまたは他の第3の部品を必要としないので、部分間の接続が時間とともに緩くまたは弱くなりにくい。
【0030】
連結部および締付手段は、互いに協働してヘッド部およびベース部を軸方向に連結し、同時にヘッド部およびベース部がベース部の長手方向軸の周りを少なくとも部分的に相互に回転できるようにもする。
【0031】
連結部および締付手段は、それぞれヘッド部およびベース部の組立済み部品を構成する。連結部および/または締付手段は、ヘッド部およびベース部が連結される前に、製造時において、それぞれヘッド部およびベース部に、接着される、接合される、成型される、またはそうでなければ永久的に結合されてもよい。しかし、本発明によれば、ヘッド部およびベース部を連結可能にするために、これらの部分が互いに接触して配置された後、ヘッド部にもベース部にも、付加的部品を加えてはならない。
【0032】
構成の容易にし、かつ構造上の完全性を高めるために、ヘッド部およびベース部は、それぞれ単一部品、すなわち、一体型部品からなることが好ましい。これらの部分は、例えば焼結、射出成形および機械加工等の公知の方法で形成することができる。上記部品の一方のみを一体的に形成することも可能である。
【0033】
いくつかの実施形態において、直接連結は、連結部および締付手段が接触して配置された後、連結部および/または締付手段の改良または変更を介して実現されてもよい。すなわち、連結可能にするために、組立体に付加的要素は加えられないが、組立済み要素を作り直すことはできる。例えば、締付手段および連結部は、塑性変形、圧着(crimping)および焼ばめ等を介して直接連結されてもよい。しかし、連結は、連結部および締付手段の正確な位置合わせによってのみ得られることが好ましい。これは、連結可能にするために、ヘッド部またはベース部の変更または改良が不要であることを意味する。そのような連結の例としては、上記部品の形状嵌合(form fit)、バヨネット結合または弾性変形が挙げられる。
【0034】
連結部および締付手段は、好ましくはスナップ嵌合接続によって直接連結される。これは、弾性変形の一形態であり、それ自体では、ベース部およびヘッド部は、連結部および締付手段を一直線に並べるだけで連結される。スナップ嵌合連結を行うために、連結部および締付手段の少なくとも一方は、弾性的に柔軟でなければならない。これにより、連結部および締付手段の少なくとも一方を変形させることができるため、元の形状にスプリングバックあるいはスナップバックする前に、ヘッド部およびベース部を動かして一直線にすることができ、その結果、これらの部品が一直線に並んだ位置に保持される。
【0035】
好ましくは、連結部は、ヘッド部の歯根側端部に配置される。さらに好ましくは、締付手段は、ベース部の歯冠側先端部に配置される。すなわち、ヘッド部は、連結部の先端部に位置するさらなる部分を含まず、ベース部は、締付手段の上に歯冠側端部に位置するいかなる部分も含まない。連結部および締付手段は、それぞれヘッド部の歯根側端部の表面およびベース部の歯冠側端部の表面を形成する。これは、上記部品の構成を容易にするとともに、連結された状態において、部分間の重なりを最小にする。従って、ベース部の長さを短くしておくことができるため、使用時に、ベース部に及ぼされる曲げ力が低減される。
【0036】
従来の歯科用語によると、「歯根側(apical)」とは、骨に向かう方向を示しており、「歯冠側(coronal)」とは、歯に向かう方向を示している。従って、部品の歯根側端部は、使用時に、顎骨に向けられる端部であり、歯冠側端部は、口腔に向けられる端部である。
【0037】
連結された状態において、ベース部は、一部の角度範囲にわたって、その長手方向軸の周りを自由に回転できなければならない。これにより、ヘッド部に対してベース部を回転させることができるため、インプラント接続手段がインプラントに係合して、二次部品をインプラントに固定することができる。従って、ベース部のインプラント接続手段は、インプラントに対する相対的回転によって、インプラントに軸方向に安定して固定されるように配置されている。このようにして、上述したように、二次部品は、基部ねじ等の付加的な固定部品を必要とせずに、インプラントに固定されることができる。インプラント接続手段により、回転を介して実現される、インプラントへの軸方向の固定が行われる。
【0038】
軸方向に固定されているが、回転可能なヘッド部とベース部との連結を実現するために、ヘッド部およびベース部は、ねじによって連結されることができる。しかし、連結部および締付手段の一方が少なくとも1つのレールを含み、他方がこのレールに係合するように形成された1つ以上のランナーを含むことが好ましい。
【0039】
このことは、それ自体独創的であると考えられるため、別の態様から見ると、本発明は、内腔を有する歯科用インプラントに接続するための二次部品であって、前記二次部品は、ヘッド部とベース部とを含み、前記ヘッド部は、使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部と、前記歯冠部の先端の連結部とを含み、前記ベース部は、インプラントに接続するためのインプラント接続手段と、締付手段とを含み、前記ヘッド部と前記ベース部を軸方向に連結するために、前記連結部および前記締付手段の一方は、少なくとも1つのレールを含み、他方は、前記レールに回転可能に係合するように形成された1つ以上のランナーを含んでおり、前記ヘッド部は、前記歯冠部から前記連結部まで延びる貫通路をさらに含み、前記ベース部は、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段を含むことを特徴とする二次部品を提供する。
【0040】
本発明の上記態様の好ましい特徴は、第1の態様に関連して上述したこと、および後述することに対応する。
【0041】
レールは、ヘッド部またはベース部の内面または外面において、一定の角度範囲にわたって延びる突起または溝のいずれの形をとることもできる。例えば、連結部または締付手段は、当該部分の周囲に延在し、空胴を形成する環状壁を含んでもよい。その場合、レールは、内壁内部または内壁上に形成される。あるいは、レールは、ヘッド部またはベース部の外面上における、狭窄、溝、拡幅または突起によって形成されてもよい。1つのレールが設けられてもよく、または複数のレールが角度的に間隔をあけて配置されることにより、「断続的な」または「破線状の」レールが形成されるようにしてもよい。
【0042】
1つ以上のランナーは、レールに係合するように形作られている。すなわち、ランナーは、レールの輪郭に対して相補的な輪郭を有する窪みまたは突起を含む。これにより、ランナーがレールに接することができるため、ヘッド部に対してベース部を軸方向に固定することになるが、ランナーは当該レールに沿って動くことができるので、必要な相対的回転がなされる。ランナーは、レールの輪郭にちょうど逆に一致するように形作られてもよく、その結果、正確な軸方向の固定が得られる。あるいは、ランナーは、ヘッド部およびベース部が連結されたとき、両者の間に軸方向の遊びを可能にする輪郭を有することもできる。後者の選択肢は、インプラント内に二次部品を設置する際に有益となり得る。
【0043】
一般的には、1つ以上のランナーは、少なくとも1つのレールよりも角度範囲(angular extension)が小さいので、レールに沿って動くことができる。従って、少なくとも1つのレールおよび1つ以上のランナーが互いに異なる角度範囲を有するあらゆる実施形態において、角度範囲が小さい方の特徴を「ランナー」とする。二次部品は、好ましくはレールよりもランナーを多く含む。特に好ましい実施形態において、二次部品は、1つのレールと、このレールに係合するように形成された複数のランナーとを含む。しかし、とりわけレールおよびランナーがどちらも連結部および締付手段の長手方向軸の周りに360度にわたって延在している場合、レールおよびランナーは、両方とも同じ角度範囲を有することが可能である。この場合、どちらの部品をレールまたはランナーとしてもよい。
【0044】
複数のランナーは、軸方向に延伸するアームの形をとることができ、それらの遠端には、レールの輪郭に対して相補的な輪郭を備えた窪みまたは突起が設けられている。
【0045】
ヘッド部またはベース部の内腔にレールが形成される場合、ランナーは、この内腔に挿入されるように配置された、軸方向に延伸するアームを含んでもよい。あるいは、半径方向に延伸するランナーを遠端に備えた中心軸(central stem)を設けてもよい。
【0046】
しかし、少なくとも1つのレールは、連結部または締付手段の外面に形成されていることが好ましい。従って、1つ以上のランナーは、連結された状態において、少なくとも部分的にレールを取り囲んでいる。
【0047】
1つ以上のランナーは、複数(例えば2、3または4)の等間隔に配置された同一のアームを含むことができる。好ましい実施形態において、6以上のアームが設けられるが、さらに好ましくは、少なくとも10(例えば12)のアームが設けられる。しかし、アームの十分な強度を確保するために、15未満のアームを設けることが好ましい。これらのアームは、どの部品がランナーを含むかによって、連結部または締付手段の長手方向軸の周りに等間隔に配置される。
【0048】
しかし、さらに好ましい実施形態において、1つ以上のランナーは、1つ以上の軸方向に延伸するアームを含み、これらのアームが組み合わされて「馬蹄」形または「C」形の側壁を形成している。このような側壁は、少なくとも約180度の角度にわたって延在する1つのアームによって形成することもできる。あるいは、側壁は、複数の密接に配置された軸方向に延伸するアームによって形成されてもよい。これらのアームは、軸方向に延伸する1対のアームの間の間隙が軸方向に延伸する他の対のアームの間の間隙よりも大きくなるように配置されている。実際には、これによって「断続的な」または「破線状の」側壁が形成される。側壁は、好ましくは180度を超える角度、より好ましくは200度を超える角度にわたって延在している。側壁にとって特に好ましい角度範囲は、190度〜220度である。
【0049】
側壁を備えることにより、横方向の開口が設けられるとともに、連結部および締付手段がヘッド部とベース部との相対的な横方向の動きによって連結されることが可能になるので、少なくとも1つのレールは、横方向の開口を通過して、側壁によって規定された空胴内に押し込められる。これは、簡単な接続方法を提供するものである。断続的な側壁を備えれば、柔軟度がより高くなるため、横方向の開口に連結部または締付手段を通過させることがさらに容易になる。
【0050】
特に好ましい実施形態において、1つ以上のランナーは、3つの軸方向に延伸するアームを含み、これらのアームが組み合わされて「C」形を形成し、中央のアームは、両端の各アームの角度の少なくとも2倍の角度にわたって延在している。このようにして、ランナー表面の大部分が1つのアームによって設けられているため、その安定性が向上する一方、両端のアームからなる側壁の端部においては、柔軟性が向上して、ヘッド部およびベース部を連結するのに役立つ。好ましい一実施形態において、両端のアームは、それぞれ10度〜15度の角度にわたって延在しているが、中央のアームは、約180度の角度範囲を有する。
【0051】
より一般的には、相対的な横方向の動きを介して部品の連結が起こるように、連結部および締付手段の一方は、連結部および締付手段の他方が挿入されるように形成された横方向の開口を含むことが好ましい。
【0052】
このことは、それ自体独創的であると考えられるため、別の態様によると、本発明は、内腔を有する歯科用インプラントに接続するための二次部品であって、前記二次部品は、ヘッド部とベース部とを含み、前記ヘッド部は、使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部と、前記歯冠部の先端の連結部とを含み、前記ベース部は、インプラントに接続するためのインプラント接続手段と、締付手段とを含み、前記連結部および前記締付手段の一方は、前記連結部および前記締付手段の他方が挿入されるように形成された横方向の開口を含み、それにより、前記ヘッド部と前記ベース部が相対的な横方向の動きを介して回転可能に連結させることができ、前記ヘッド部は、前記歯冠部から前記連結部まで延びる貫通路をさらに含み、前記ベース部は、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段を含むことを特徴とする二次部品を提供する。
【0053】
上述したように、横方向の開口は、「C」形環状側壁によって規定されてもよい。
【0054】
連結部および締付手段は、好ましくは直接連結される。
【0055】
さらに、本発明の上記態様の好ましい特徴は、第1の態様に関連して上述したこと、および後述することに対応する。
【0056】
連結部は、その外面に配置された少なくとも1つのレールを含むことが好ましい。これにより、ヘッド部が空胴または薄肉アームを含む必要がなくなるため、この部品の強度が向上する。また、レールは、連結部の、歯冠部の先端部よりも径が狭い部分に配置されていることが好ましい。すなわち、レールは、歯冠部の歯根側先端部よりも細径化されている。連結部が細径化されているので、締付手段は、二次部品の全径を増加させることなく、少なくとも部分的にレールを取り囲むことができる。これにより、本発明の二次部品は、既存のインプラントとともに用いることが可能になる。
【0057】
レールは、好ましくは連続溝の形をしている。上記実施形態において、連続溝は、連結部の細径部そのものとして形成されてもよく、この細径部内に形成されてもよい。別の実施形態において、連続突起の形をしたレールは、細径部上に配置することができる。
【0058】
連結部がレールを含む場合、締付手段は、このレールの輪郭に対して相補的に形成された遠端を備え、軸方向に延伸するアームの形をとる少なくとも1つのランナーを含むことが好ましい。従って、レールが溝によって形成されるならば、上記アームの遠端は、この溝に収容されるように形成された突起を含むことになる。上述したように、(複数の)軸方向に延伸するアームは、「C」形側壁を形成するか、または複数のアームが長手方向軸の周りに等間隔に配置されることが好ましい。
【0059】
上述したように、ヘッド部およびベース部は、スナップ嵌合接続によって連結されることが好ましい。従って、1つ以上のランナーは、1つ以上のレールにスナップ嵌合接続されるために、弾性的に柔軟であることが好ましい。しかし、他の接続方法も可能である。例えば、(複数の)レールおよび(複数の)ランナーが一直線に並んだ後、(複数の)ランナーは、塑性変形によって(複数の)レールに連結されることができる。
【0060】
スナップ接続を可能にするために、1つ以上のランナーが弾性的に柔軟である場合、1つ以上のランナーは、少なくとも部分的にレールを取り囲んでいることが特に好ましい。これにより、二次部品がインプラントに接続されたとき、1つ以上のランナーの外面と、インプラントの内腔またはインプラントシステムの他の部分とが近接する、または接触するようにシステムを設計することができる。その結果、ヘッド部の緩みまたは分離を招くことがある、(複数の)ランナーの不要な外側への屈曲の可能性を防ぐことができる。その代わりに、またはそれに加えて、(複数の)ランナーの突起または窪みは、スナップ接続の分離が阻止される鏃形(barb shaped)でもよい。
【0061】
連結部および締付手段は、ヘッド部とベース部との相対的回転を360度にする、または部分的回転のみにすることができるように構成されてもよい。部分的回転のみが必要な場合、連結部および/または締付手段は、相対的な回転運動を制限する止め具を備えることができる。例えば、レールおよびランナーが用いられる場合、少なくとも1つのレールが(複数の)ランナーの動きを制限する止め具を備えていればよい。また、レールが1つ以上の溝の形をしている場合、これらの溝が360度未満の角度に対していればよく、溝の間の領域が相対的回転を制限する止め具として機能する。あるいは、レールの端部に、(複数の)ランナーが接することになる突出フランジを配置してもよい。
【0062】
ベース部の駆動手段は、ヘッド部およびベース部が連結されたとき、ヘッド部の貫通路に連通する。これにより、駆動工具が貫通路を挿通して駆動手段に係合することができるため、ヘッド部に対してベース部を回転させることができる。いくつかの実施形態において、駆動手段は、2部材からなる二次部品の連結時に、貫通路の下または内部に位置する突起を含む。他の実施形態において、駆動手段は、窪みを含む。駆動手段は、ベース部にトルクを伝達することが可能な非円形形状であればよく、例えば、十字形、棒形、星形またはトルクス(TORX(登録商標))形等が挙げられる。従って、駆動手段は、ベース部にトルクを伝達することが可能な非円形の断面を有することが好ましい。駆動手段は、好ましくはベース部の内壁に形成される、すなわち、駆動手段は、突起ではなく窪み、穴または通路からなる。そのため、駆動工具は、駆動手段の上方に位置するのではなく、駆動手段の内部に挿入される。
【0063】
特に好ましい実施形態において、駆動手段は、ベース部の長手方向軸に沿って延びる通路を含む。本発明の文脈では、通路と窪みとは、通路については、その幅よりも深さが大きいが、窪みについては、反対のことが当てはまるという点で区別される。これにより、トルクの伝達が生じる長さが大きくなるため、良好な力の配分が得られる。好ましくは、駆動手段は、多角形の断面を有する。最も好ましくは、製造を容易にするため、駆動手段は、正方形または矩形の断面を有する通路を含む。また、多角形の断面の角が丸められていることが好ましい。矩形の断面の場合、矩形は、各短辺の全長にわたって丸められる。その結果、対向する2つの平面状側部が湾曲部によって相互に接続された断面となる。好ましくは、上記通路は、ベース部内に少なくとも0.5mm及んで、貫通路を形成してもよい。
【0064】
ヘッド部の貫通路は、駆動工具が挿入され、かつ支障なく回転できるような寸法にされなければならない。従って、貫通路の幅は、少なくとも駆動手段の最大幅に等しいことが好ましい。また、貫通路は、できる限り寸法を狭くすることから、回転対称であることが好ましい。
【0065】
貫通路の幅は、好ましくは2mm未満であり、より好ましくは0.8〜1.5mmである。これは、ねじ頭径が約2.5mmの標準的な基部ねじを用いるシステムと比較して、幅の著しい減少を示している。
【0066】
締付手段および駆動手段に加えて、ベース部は、インプラントに接続するためのインプラント接続手段をさらに含む。上述したように、インプラント接続手段は、ベース部とインプラントとの相対的回転を介して、インプラントに軸方向に安定して接続されるように設計されている。従って、インプラント接続手段とは、相対的回転と同時に、インプラントに二次部品を軸方向に固定する手段である。
【0067】
インプラント接続手段は、好ましくは締付手段の先端に配置されるが、これらのベース部の構成要素が重複することも可能である。例えば、締付手段が中心軸を含み、インプラント接続手段がこの中心軸を取り囲む環状壁の形をとり、連結された状態において、締付手段とインプラント接続手段との間の環状間隙に連結部が嵌合するようにしてもよい。あるいは、締付手段は、インプラント接続手段の一部を構成してもよい。例えば、締付手段が環状壁の形をとり、環状壁の内側が連結部に係合する場合、環状壁の外側にねじ山または他の刻印を施して、インプラントの内腔に係合し、固定するようにしてもよい。
【0068】
ベース部がヘッド部の連結部に直接連結されるので、ヘッド部の貫通路にベース部を通す必要がない。従って、ベース部の径および貫通路の径は相互に依存しないため、貫通路を狭くすることができる。ゆえに、好ましい実施形態によると、ヘッド部の貫通路は、インプラント接続手段の径よりも狭くなる。この通路は、好ましくはベース部の最小径よりも狭い。ヘッド部の貫通路にベース部を通すことができないため、二次部品は、インプラントへの取り付け前に、必ず予め組み立てられていなければならない。これは、標準的な基部ねじを用いるシステム、すなわち、二次部品がインプラントに配置されれば、この二次部品に基部ねじを挿通することができるシステムとは異なる。
【0069】
ヘッド部の貫通路は、歯冠部から連結部まで延びており、どちらの端部も開口している。貫通路の一端部は歯冠部に配置されているので、二次部品がインプラントに配置された後に接触可能である。
【0070】
ベース部の駆動手段に連通するために、貫通路は、連結部を通って延びることができ、または連結部の空胴もしくは穴に通じることもできる。貫通路はヘッド部の先端部まで延びるのか、それとも連結部までだけなのかは、連結部がベース部の締付手段を取り囲むように設計されているのか、またはベース部の締付手段に取り囲まれるように設計されているのかによる。ヘッド部内の空胴を最小に保つために、締付手段は、連結部の外側に連結することが好ましい。このようにすれば、連結部は、内部空胴を備える必要がない。そのような空胴があると、ヘッド部の体積が減少することから、上記構成は有利である。従って、連結部は、ヘッド部およびベース部が連結されたとき、締付手段によって少なくとも部分的に取り囲まれることが好ましい。ゆえに、このような実施形態において、ベース部のいずれもヘッド部内に収容されず、貫通路は、ヘッド部の先端部の表面まで達している。
【0071】
このことは、それ自体独創的であると考えられるため、別の態様から見ると、本発明は、内腔を有する歯科用インプラントに接続するための二次部品であって、前記二次部品は、 ヘッド部とベース部とを含み、前記ヘッド部は、使用時に前記歯科用インプラントから突出する歯冠部と、前記歯冠部の先端の連結部とを含み、前記ベース部は、インプラントに接続するためのインプラント接続手段と、締付手段とを含み、前記締付手段は、前記連結部の外側に回転可能に固定されるように配置され、前記ヘッド部は、前記ヘッド部を通って延びる貫通路をさらに含み、前記ベース部は、前記ヘッド部と前記ベース部が連結されたとき、前記貫通路に連通する駆動手段を含むことを特徴とする二次部品を提供する。
【0072】
本発明の上記さらなる態様の好ましい特徴は、第1の態様に関連して上述したこと、および後述することに対応する。
【0073】
貫通路は、連結部の長手方向軸に対して傾斜させることも、屈曲させることさえできるが、好ましくは連結部の長手方向軸に沿って延びる。
【0074】
歯冠部の長手方向軸は、連結部の長手方向軸と同軸であってもよく、連結部の長手方向軸に対して角度をなしてもよい。これは、二次部品がアバットメントである場合に特に当てはまるが、なぜなら、歯冠部の角形成は、最終的な義歯の所望の向きによって決まるからである。しかし、連結部の長手方向軸およびベース部の長手方向軸は同軸であるため、ベース部が連結部に連結されると、ベース部は、その長手方向軸の周りを回転することができる。
【0075】
インプラント接続手段は、ベース部をインプラントに確実に固定できるようにするために、インプラントの設計に合わせた設計および寸法にされている。好ましい一実施形態において、インプラント接続手段は、雌ねじ付きインプラント内腔と協働するための雄ねじを含む。ベース部のねじがインプラントのねじに係合すると、ベース部および連結されたヘッド部は、インプラントに軸方向に固定される、すなわち、それらは、ねじが抜けるまでインプラントから取り外すことができない。しかし、別の好ましい実施形態において、インプラント接続手段は、角度的に間隔をあけて配置されたナブまたは溝を含み、これらがインプラント内腔における相補的な溝またはナブと協働するため、バヨネット嵌合により、インプラントとアバットメントとを接続することができる。「バヨネット嵌合」とは、周知の用語であり、最初に軸方向、次に周方向に延びて、ほぼ「L」形となる溝穴を用いた接続を意味する。この溝穴の軸方向に延伸する部分は、周方向部分への進入路となるが、くびれを含むことが多い。ゆえに、ピンまたは他の突起を、溝穴の軸方向部分を通して周方向の通路内に押し込まなければならず、その後、ピンまたは他の突起が溝穴の周方向部分に保持される。これにより、バヨネット嵌合の特徴である「差し込んでひねる」動作となる。ある場合には、溝穴の周方向部分が螺旋状もしくは傾斜した経路をたどることがあり、および/または周方向部分自体がくびれを有することにより、ピンをこの溝穴の部分に保持できるようにすることがある。本発明において、ベース部は、バヨネット嵌合の溝穴またはピンのいずれかを含むように設計することができる。
【0076】
別の実施形態において、インプラント接続手段は、先端に向かって延びる軸を含み、この軸の末端に、軸よりも径が大きく、多角形等の非円形の断面を有するディスクを設けてもよい。インプラント内腔は、上記ディスクに対応する断面を有する部分を含み、この部分の先端に、より大きな断面積を有するチャンバーが設けられている。ベース部およびインプラントが正確に位置合わせされると、ディスクが内腔の同じ断面を有する部分を挿通して、チャンバー内に入る。次に、ベース部が回転することにより、ディスクは、インプラント内腔との一直線上からずれるため、ベース部をチャンバーから取り外すことができなくなる。
【0077】
連結時のヘッド部とベース部の回転の遊びは、インプラント接続手段がインプラントに完全に係合することができるほど十分でなければならない。ベース部とヘッド部との連結によって、約360度の相対的回転が妨げられないことが好ましい。しかし、いくつかの実施形態において、例えばバヨネット嵌合では、好ましくは少なくとも45度、より好ましくは90度〜180度の部分的な相対的回転のみを可能にするような接続であってもよい。
【0078】
本発明によれば、インプラントと二次部品とを接続するために、ベース部しか回転させる必要がないアバットメントまたは他の二次部品を作成することが可能になる。これにより、インプラント内に二次部品を固定する前に、インプラントに対するヘッド部の角度位置を設定することができる。
【0079】
従って、ヘッド部は、インプラントとの協働のために、回転防止手段を含むことが好ましい。このようにすれば、ヘッド部は、インプラントに対して正確に位置付けられることができ、同時にベース部を介して、回転によって二次部品をインプラントに固定することができるようにもなる。上述したように、回転防止手段は、インプラントの相補的な回転防止手段に非回転で嵌るように適合された非円形の断面を有する。
【0080】
回転防止手段は、好ましくはインプラントの内腔と協働するために配置される。従って、回転防止手段は、ヘッド部の外面に形成される。回転防止手段の好ましい形状としては、インプラント内の多角形の空胴とかみ合うような六角形または八角形等の多角形、またはインプラントの内腔における突起と協働するように形成された溝もしくは平坦面が挙げられる。逆に、ヘッド部の回転防止手段は、インプラント内の溝または窪みに挿入するための突起を含むことがある。インプラントおよび二次部品のそれぞれの回転防止手段の形状は、これらが互いに非回転で係合できる限り、同一である必要はない。例えば、インプラントが正方形の空胴を含む一方、二次部品は、八角形の部分を含んでもよい。あらゆる公知の回転防止手段を用いることができる。
【0081】
体組織にさらされる界面の数を最小にするために、ヘッド部とベース部との接続は、二次部品がインプラントに装着されたとき、インプラントの内腔の中に配置されることが好ましい。これにより、インプラント−二次部品表面上の微小間隙の数が減少する。従って、ヘッド部は、インプラントの歯冠側端部に密封係合するように形作られることが好ましい。密封係合は、連結部の歯冠側端部によってなされる。すなわち、連結部の歯冠側端部の外面の形状寸法を、インプラント内腔の歯冠側端部の断面に対して相補的にすることで、連結部が内腔に挿入されたとき、この歯冠側端部がインプラント内腔を密封することになる。その代わりに、またはそれに加えて、ヘッド部の歯冠部の先端部は、インプラント内腔を取り囲む、インプラントの冠状表面に接するように形作られてもよい。ベース部がヘッド部の先端部に連結されるので、連結部と締付手段との界面は、インプラント内に配置される。
【0082】
好ましい実施形態において、連結部の歯冠側端部は、歯冠に向かう方向において、外側についたテーパーが歯冠部の先端部につながっているテーパー部を含む。このテーパー部は、インプラントの内腔の対応するテーパー部に係合して、これらの2つの部品の間を良好に密封することができる。
【0083】
ヘッド部が回転防止手段を含む場合、この回転防止手段は、好ましくはテーパー部の内部および/または先端に配置される。
【0084】
ベース部は、ヘッド部の回転防止手段の先端に連結することが好ましい。これは、ベース部の長さを短くするとともに、回転防止手段および密封係合が押し下げられるのではなく、インプラント上に下ろされることを意味する。ベース部の長さが短くなるため、この部品に作用する曲げ力が低減される。
【0085】
ヘッド部の歯冠部は、使用時に、インプラントから歯冠に向かう方向に延びて軟部組織にまで及ぶ。多くの場合、歯冠部は、軟部組織を通って患者の口腔に達する大きさに作られている。好ましい実施形態において、二次部品はアバットメントである。そのような場合、歯冠部は、義歯を支えるのに適するように設計される。従って、歯冠部は、使用時に、軟部組織を通って口腔にまで及ぶことにより、義歯の芯支持体となる。歯冠部は、連結部の長手方向軸と同軸か、または連結部の長手方向軸に対して角度をなして延びる円筒形または円錐形の支柱を含んでもよい。歯冠部の先端領域において、円筒形または円錐形の支柱の下に、外側にテーパーのついた部分をさらに設けてもよく、この部分の末端は、波形状もしくはホタテ貝状または連結部の軸に垂直なプラットフォームとなる。この部分は、アバットメントの周りに歯肉を形成し、天然歯のエマージェンスプロファイル(emergence profile)を模倣するのに役立つ。プラットフォームは、最終的な義歯の土台を提供する。あるいは、歯冠部は、患者の特定の口腔状態に応じて個別に形作ることもできる。そのような成形は、例えば計算機支援設計・製造(CAD-CAM)技術によって実現できる。使用時に、義歯は、歯冠部にねじ止めする、接着する、または直接張り合わせるこができる。アバットメントは、永久的または一時的なアバットメントでもよい。
【0086】
他の実施形態において、二次部品は、例えばヒーリングキャップまたは取り外し可能な義歯用基質(matrix for removable prosthesis)でもよく、いずれの場合も、歯冠部は、二次部品がその機能を果たすことができるようにする公知の方法で形作られる。
【0087】
二次部品の2部材は、例えばチタン、金属合金、プラスチック、セラミックまたは複合材料等の好適な生体適合性材料から作成される。2部材は、同じ材料で作成されてもよく、異なる材料で作成されてもよい。例えば、一実施形態において、ヘッド部は、セラミック材料またはプラスチック材料からなり、ベース部は、例えばチタンまたはチタン合金等の金属材料からなる。ヘッド部をセラミックまたはプラスチックから形成すると、審美的に優れた方法で着色できるので、特に有利である。一方、ベース部を金属から形成すると、二次部品と金属インプラントとの金属間接続が可能になるが、そのような部品は、セラミックインプラントとも同じように良好に接続される。上記好ましい実施形態において、締付手段は、好ましくはランナーを形成する1つ以上のアームを含む。金属はセラミックよりも柔軟性があるため、金属ベース部にアームを作成することが有利である。これらのアームは、連結部の周りにスナップ嵌合される、圧締めされる、焼ばめされる、またはそうでなければ結合されてもよい。これにより、セラミックまたはプラスチック連結部の形状を、例えばその外面に1つのレールを有するような、より単純なものにすることができ、また貫通路を除いて中実にすることができる。
【0088】
別の態様によると、本発明は、前記二次部品と駆動工具とを含む歯科用インプラントシステムであって、前記駆動工具は、前記ヘッド部の前記貫通路を挿通するような寸法にされたシャフトを含み、その末端において、前記ベース部の前記駆動手段に形状嵌合接続(form fit connection)するための駆動要素を含むことを特徴とする歯科用インプラントシステムを提供する。
【0089】
駆動要素は、好ましくは形状が多角形であり、より好ましくは正方形または矩形であり、ベース部の駆動手段と同じ断面形状を有する。いくつかの実施形態において、シャフトは、全体として、駆動要素の断面を有すればよい。シャフトおよび駆動要素の径は、好ましくは0.8〜1.5mmである。駆動工具は、口内に短時間とどまるだけなので、材料の選択に対する制限が少ない。従って、高いねじり強さを備えた材料を選択することにより、その狭い径ににもかかわらず、工具は、歪みまたは剪断を生じることなく、インプラントに十分なトルクを伝達することができる。好適な材料としては、ステンレス鋼もしくは硬化鋼、繊維強化ポリマーまたはチタン合金が含まれる。
【0090】
この工具は、ヘッド部の通路を挿通してベース部の駆動手段に係合することができるため、トルクがベース部に伝達され、ベース部の回転を介して二次部品がインプラントに固定される。いくつかの実施形態において、シャフトは、湾曲した通路に挿通可能なように、柔軟であってもよい。
【0091】
前記システムは、内腔を有するインプラントをさらに含み、前記内腔は、その先端部に向かってねじを備えるとともに、前記ベース部および前記ヘッド部の前記連結部を収容するような寸法にされていることが好ましい。内腔は、ねじの歯冠側端部に、二次部品のヘッド部と協働するための回転防止手段を備え、この回転防止手段の歯冠側端部に、テーパー部を備えることが好ましい。また、二次部品のヘッド部およびベース部は、互いに連結され、インプラントに挿入されたとき、ベース部が内腔内に完全に収容されるように構成されていることが好ましい。
【0092】
別の態様から見ると、本発明は、前記二次部品および前記インプラントの組み合わせを提供する。
【0093】
より一般的には、本発明のさらなる態様は、前記二次部品およびインプラントの組み合わせであって、前記インプラントは、前記ベース部の前記インプラント接続手段に対して相補的な構造を有する内腔を含むので、前記二次部品を前記インプラントに軸方向に固定するために、前記インプラント構造に対して前記インプラント接続手段が回転すると、前記ベース部と前記インプラントとの係合が実現する組み合わせを提供する。
【0094】
本発明の上記さらなる態様の好ましい特徴は、上述したことに対応する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る2部材からなるアバットメントおよびインプラントの分解斜視図である。
図2図2は、図1のアバットメントおよびインプラントの組立後の断面図である。
図3図3は、本発明のさらなる実施形態に係る2部材からなるアバットメントの分解斜視図である。
図4図4は、本発明のさらなる実施形態に係る、2部材からなるアバットメントと、インプラントと、駆動工具とを含む歯科用インプラントシステムの斜視図である。
図5図5は、工具が使用されている、図4のシステムの組立後の断面図である。
図6図6は、本発明によるベース部のさらなる実施形態の斜視図である。
図7図7は、図6のベース部に連結されることができるヘッド部の斜視図である。
図8A図8Aは、本発明の別のベース部の斜視図である。
図8B図8Bは、図8Aのベース部の平面図である。
図8C図8Cは、図8Bの線A−Aについての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下に、添付の図面を参照しながら、あくまでも例示として、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0097】
図1は、インプラント20とともに、2部材からなるアバットメント10を示す分解斜視図である。インプラント20は、2部材からなるインプラントシステムの標準的な固着部である。インプラント20は、螺旋状の雄ねじ22を備えた略円筒部21を有する。使用時に、この略円筒部21が骨内に挿入されるとき、雄ねじ22は、重要な安定性をもたらすのに役立つ。本実施形態において、インプラント20は、いわゆる「組織レベル(tissue level)」のインプラントである。なぜなら、インプラント20は、使用時に、インプラントの最上部が骨から突出して軟部組織内に入るように配置されるからである。骨内に完全に位置するインプラントは、「骨レベル(bone level)」のインプラントとして知られている。
【0098】
図1に示されたインプラント20は、使用時に軟部組織に取り囲まれる、外見がテーパー状の先端部23を含む。本実施例において、テーパー部23は、細菌感染を予防するために平滑であるが、軟部組織との付着を高めるために、公知の方法で、この表面にテクスチャリングを施すことも、表面処理することも可能である。同様に、円筒部21も、オッセオインテグレーション(osseointegration)を向上させるために、例えば酸エッチングまたはプラズマ溶射等の公知の方法によって表面処理してもよい。
【0099】
インプラント20の外形およびテクスチャリングは、本発明とは関係が無く、あらゆる公知の設計を用いることができる。
【0100】
インプラント20の歯冠側端部から、非貫通内腔24がインプラントの内部に長手方向に延伸している。この非貫通内腔24は、アバットメント10が挿入されるソケットとして機能する。この内腔には、ヒーリングキャップ等の他の二次部品も挿入することができる。図1では見えないが、非貫通内腔は、その先端部に向かってねじ部を有する。
【0101】
アバットメント10は、ヘッド部40およびベース部30の2つの別々の部品からなる。ヘッド部40は、主として歯冠部45からなる。歯冠部45は、インプラント20から延び、軟部組織を通って、義歯の土台になるように形作られている。歯冠部45は、本明細書では円錐台状支柱として示されている。しかし、あらゆる標準的なアバットメント設計を用いることができ、例えば、支柱は、曲げられてもよく、および/またはその先端領域にショルダーを含んでもよい。
【0102】
歯冠部45の歯根側先端に、連結部46が設けられている。連結部46は、テーパー部42と、テーパー部の先端に連続溝47を形成する細径部とを含む。連続溝47は、レールとして機能する。
【0103】
ヘッド部40は、モノリシック構造、すなわち、一体的に形成されており、狭い円筒形の貫通路43を除いて中実である。貫通路43は、連結部46の長手方向軸に沿って延び、この場合は、歯冠部45の長手方向軸と同軸である。貫通路43は、どちらの端部も開口しており、ヘッド部40の歯冠側端部41から先端部49まで通っている。ヘッド部40は、セラミックまたはチタン合金等の好適な生体適合性材料から形成される。
【0104】
ベース部30も一体構造であり、円形プラットフォーム35を含む。このプラットフォームの下面または先端部からは、ねじ32が延びている。ねじ32は、インプラント内腔24の雌ネジに係合するような寸法にされている。プラットフォーム35の上端部または歯冠側端部から延びているのは、ランナー31の形をとる締付手段である。このランナー31は、軸方向に延伸するアームからなり、アームは、プラットフォーム35の周囲を少なくとも180度の角度にわたって取り囲んでいる。従って、ランナー31は、C形側壁を形成する。ランナー31の遠端には、内側に面したナブ33が設けられている。ナブ33は、ヘッド部40の溝47に対して相補的な形状を有する。ナブ33および溝47の相補的な形状により、これらの部品は、軸方向に安定して直接連結されることができる。ランナー31は、横方向、すなわち、アバットメント10の長手方向軸に垂直な方向に、連結部46に押し付けられるほどの十分な柔軟性を有する。このようなヘッド部とベース部とのスナップ接続を確実にするための付加的部品は一切必要ない。また、ヘッド部およびベース部を連結させるために、連結部または締付手段のいずれかを改良する必要もない。むしろ、本実施形態においては、締付手段の弾性変形によって直接連結が起こる。いったん連結されれば、溝47の平滑かつ連続的な性質により、ベース部30は、ヘッド部40に対して360度回転することができる。
【0105】
プラットフォーム35の中心には、正方形の通路34が設けられている。この通路は、ベース部30の長手方向軸に沿って延び、ヘッド部40と同軸である。そのため、ヘッド部40およびベース部30が上記のように連結されると、正方形の通路34は、ヘッド部40の円筒形の通路43と一直線になる。正方形の通路34の対角線の長さは、長くても通路43の径と同程度である。
【0106】
上述したように、ヘッド部40およびベース部30は、軸方向に固定されることができるが、同時に相互に回転可能でもあるように設計されている。これは、アバットメント10をインプラント20に螺合させるために、ヘッド部40およびインプラント20に対して、ベース部30を回転できるようにすることである。ベース部を回転させるには、通路43を挿通して正方形の通路34に係合することができる好適な工具が用いられる。通路43が大きく、かつ回転対称に設計されているので、工具は、通路内で自由に回転できる。しかし、この工具は、正方形の通路34に非回転で係合するように設計されているため、工具にかかるトルクがベース部30に伝達される。その結果、ベース部30が回転してインプラント20に螺合する。
【0107】
従って、2部材からなるアバットメントによれば、適切な強度および寸法のねじを、アバットメント内に同様の寸法の貫通孔を形成する必要なく、インプラントに係合させることができる。むしろ、本発明の貫通孔はねじ32よりもはるかに狭いため、アバットメントの安定性および強度が向上する。これは、ねじ32がアバットメントの底面に直接取り付けられるようにした、アバットメントの独自の構成によって可能になる。
【0108】
図2は、完全に組み立てられ、接続されたときのアバットメント10およびインプラント20を示す。図2から明らかなように、ナブ33は、溝47に形状嵌合係合(form fit engagement)している。従って、アバットメント10のヘッド部40およびベース部30は、軸方向に正確に固定される。しかし、ランナー31が溝47に沿って動くことができるので、上記2つの部品を連結しても、相対的な回転運動を妨げることはない。ゆえに、ねじ32をインプラント20の内腔24に螺合させるために、ベース部30は、ヘッド部40とは独立して回転することができる。
【0109】
この方法でアバットメント10がインプラント20に接続されると、ベース部30は、内腔24内に完全に収容される。ランナー31の外面がインプラント内腔の表面に極めて近接することにより、ヘッド部40およびベース部30を分離する恐れがある、ランナーの外側へのわずかな屈曲でも防ぐことができる。ヘッド部40の連結部46は、溝47の歯冠側端部に、外側テーパー42を備える。これは、内腔24の歯冠側端部にあるテーパーを補完するように形作られている。ねじ32を締めることにより、ヘッド部40が下に向かって内腔24に引き込まれ、2つのテーパー部の間に摩擦係合が生じる。その結果、インプラント20とアバットメント10との間に良好な封止接続が得られて、インプラント20への細菌の侵入を防ぐ。歯冠部45は、インプラント20から突出し、最終または仮の義歯の経粘膜的な土台を提供する。
【0110】
図3は、本発明の別の実施形態の分解図である。アバットメント50は、第1の実施形態のアバットメントに酷似しており、ヘッド部70およびベース部60を含む。これらは、図1を参照して詳しく説明したようなナブ63および溝77を用いる構成により、軸方向に固定されている。本実施形態において、インプラント80は、インプラント20とは外部設計がわずかに異なるが、ねじ部(図示せず)を備えた内腔84を含む。アバットメント50のベース部60は、インプラント80のねじに螺合するような寸法にされたねじ62を含む。本実施形態において、これは、図1に示されたねじよりも、ねじ62の径が大きいことを要件とするものである。さらに、本実施形態において、ねじのピッチが小さくなるため、ねじ62の縦方向の長さをより短くすることができる。
【0111】
しかし、第1の実施形態と第2の実施形態との主な相違は、ヘッド部70が回転防止手段を含むことである。この回転防止手段は、連結部76のテーパー72に形成された複数の縦方向の窪み78という形をとる。インプラント80の内腔84は、対応する複数の突起82を含む。使用時に、アバットメント50がインプラント80に挿入されると、窪み78が突起82上を摺動して、ヘッド部70とインプラント80との非回転関係を維持する。このように、インプラント80との正確に規定された角度関係において、ヘッド部70を位置付けることができる。これは、アバットメント−インプラント組立体を、単一の義歯(クラウン)に用いようとする場合に、特に有利である。そのような状況では、歯冠部75は、通常、少なくとも1つの平坦面74を含むため、義歯をこの平坦面に非回転で付着させることができる。アバットメントの角度位置と、それゆえの上記平坦面とを正確に規定することにより、義歯の最終的な外観を損なわずに、最終的にインプラントにアバットメントを取り付ける前に、予め義歯の模型を作ることができる。
【0112】
ヘッド部70とインプラント80との非回転係合にもかかわらず、ヘッド部70とベース部60との回転関係により、ねじ62を締めることができる。ねじ62は、従来技術部品におけるように、アバットメントの通路73に通す必要がないので、ねじの径および通路は相互に依存しない。従って、貫通路73は、径を小さくすることができるため、歯冠部75がより強くなる。また、ベース部60がヘッド部70の外側に連結されるので、ヘッド部70は、ベース部60を収容するための空胴を備える必要がなく、その結果、ヘッド部70の設計が強化され、かつ簡素化される。さらに、ベース部60がヘッド部70の先端部に連結されるので、従来技術の基部ねじと比較して、ねじ要素(ねじ部)の長さが短くなるため、ねじ要素に及ぼされる曲げ力が低減される。
【0113】
図4は、本発明のさらなる実施形態を示す。本実施形態は、図1を参照して説明したものと機能的に酷似しているインプラント200およびアバットメント100を含む。外部設計の細かい点が異なるが、本発明の文脈には何の関係もないため、ここでは論じない。
【0114】
アバットメント100は連結した形で示されており、ヘッド部140およびベース部130は軸方向に固定されているが、回転係合である。インプラント200に挿入されると、工具90を用いてベース部130を回転させて、アバットメント100をインプラント200に固定する。工具90は、駆動端部91を含む。本実施形態において、駆動端部91は、歯科用ハンドピースに接続するための標準的なラッチの形をとる。あるいは、駆動端部91は、ラチェットに取り付けられるように構成されてもよく、直接手動で回転されるように形作られてもよい。工具90は、アバットメント100の貫通路143に挿通可能な大きさのシャフト92をさらに含む。シャフト92の末端93は、断面が正方形であり、アバットメント100のベース部の通路134に係合するように形作られている。本実施形態において、シャフト92の上部は円筒状であるため、ヘッド部140の通路143に対して回転することができる。しかし、別の実施形態において、シャフト92の上部は、非円形であるが、貫通路143内で支障なく回転できるような寸法にされてもよい。
【0115】
このように、工具90により、ヘッド部に対してベース部を回転させて、アバットメントをインプラントに接続する。
【0116】
図5は、アバットメント100、インプラント200および工具90が接続されたときの断面を示す。図5は、ヘッド部140およびベース部130の通路143、134がどのように互いに連通し、工具90を通路134に係合させて、ベース部を回転させるかを示している。また、図5は、本実施形態において、ランナー131のナブ133が溝147の輪郭にどのように厳密に一致しないかについても実証している。これは、ヘッド部およびベース部が連結された状態で、両者の間に軸方向の遊びを可能にするものである。また、本実施形態において、回転防止手段がテーパー部142と溝147との間に形成されている。ヘッド部140の連結部の部分178は、非円形の断面(例えば八角形)を有し、インプラント内腔124の相補的部分182内に非回転で収容される。
【0117】
図6は、別のベース部160を示す。ベース部160は、その先端部にねじ162を含み、その歯冠側端部に締付手段を含む。締付手段は、3つの軸方向に延伸するアームで構成されており、これらのアームが組み合わされて「C」形または「馬蹄」形の側壁を形成している。これらのアームは、複数のランナー161a、161bおよび161cを形成し、各ランナーの遠端には、ヘッド部の溝に嵌合するように形成されたナブ163が設けられている。側壁が分裂して複数のアームを形成しているため、側壁の柔軟性が増加して、ベース部160をヘッド部に嵌めやすくなる。中央のランナー161bは、2つのサイドランナー161a、161cよりもはるかに大きい角度範囲を有する。側壁の横方向の開口、すなわちサイドランナー161aと161cとの間の間隙により、ヘッド部およびベース部は、相対的な横方向の動きを介して連結されることができる。
【0118】
通路164がベース部160の長手方向軸に沿って設けられている。本実施形態において、通路の断面形状は、角を丸めた矩形である。矩形の断面を用いれば、トルクの伝達にとって比較的大きな2つの表面が得られ、同様の寸法の正方形の断面よりも体積の減少が少なくて済む。ベース部160を回転させるために、通路164に係合することができる駆動工具が用いられる。
【0119】
図7は、図6のベース部160とともに用いることができる別のヘッド部170を示す。ヘッド部170は、歯冠側端部が丸くなっている、略円錐台状の歯冠部175を含む。連結部176は、3つの別個の部分、すなわち、テーパー部172、回転防止部192および細径部195からなる。図3に示されたヘッド部とは異なり、ここでは、ヘッド部の回転防止部192は、複数の突起198を含む。これらの突起は、インプラント内腔の対応する溝に嵌合するような寸法にされている。本実施形態において、突起198は、テーパー部172の先端に配置されているが、別の実施形態では、突起198がテーパー部172にまで及ぶことも可能である。
【0120】
細径部195は、溝177を形成する。溝177の先端において、ヘッド部は外見上は先細になり、複数のランナーが接することが可能な当接面を形成する。従って、ヘッド部の上記最先端部195は、レールとなる。貫通路173は、ヘッド部の歯冠側端部から先端部まで延び、使用時に上記レールに直接連結されるベース部を回転させる駆動工具が通る大きさに作られている。
【0121】
図8A図8Cは、図7のヘッド部とともに用いることができる別のベース部を示す。このベース部260は、複数のアーム261が長手方向軸の周りに等間隔に配置されていることを除いて、図6に示されたベース部160と基本的に同一である。その結果、横方向の開口がない代わりに、ヘッド部およびベース部は、これらの相対的な軸方向の動きを介して、アームによって規定された空胴265内に連結部を押し込むことにより、互いに連結される。従って、アーム261は、連結部が開口を通過できるように、外側に屈曲するだけの十分な柔軟性を備えていなければならない。ベース部の外面上の環状溝266により、アームの外側への柔軟性が向上する。ヘッド部の溝177がベース部のナブ263と一直線になると、アーム261が解放されて元の位置に戻り、ヘッド部およびベース部が連結される。
【0122】
ここでも、図6と同様に、駆動手段264は、角を丸めた矩形状の通路であるが、他の非円形形状を選択することもできる。駆動手段264は、ベース部260を通って延びていない代わりに、端ぐり267によって先端部が広げられている。この端ぐり267は、トルクの伝達プロセスに関与しないが、製造工程の副産物として形成される。アームの先端において、ベース部の外面は、インプラントの雌ねじに係合するねじ(図示せず)を含む。
【0123】
上記実施形態は、あくまでも例示を目的とするものであり、当業者は、特許請求の範囲内であれば、多くの別の配置が可能であることを理解するだろう。特に、ベース部は、バヨネット式等の別のインプラント接続手段を含んでもよい。さらに、上記実施形態のうちのいくつかにおいて、ベース部は、ヘッド部の連続するレールを部分的に取り囲む側壁を含む。他の実施形態において、逆の構成、すなわち、ベース部がその歯冠側端部に溝または突起を含み、これらの周りにヘッド部の側壁が嵌められるようにすることも可能である。あるいは、ランナーのナブが溝であってもよく、レールが突起によって形成されてもよい。他の実施形態において、レールおよびランナーの上記構成は、スナップ嵌合接続ではなく、塑性変形接続の一部となり得る。そのようなシステムにおいて、ランナーは、接続を可能にするために曲がる必要はないが、その代わりに、圧着、圧締めおよび焼ばめ等を介してレールに係合させることができる。
【0124】
反対の記載が明記されていない限り、本明細書に記載された好ましい特徴のそれぞれは、本明細書に記載された他の好ましい特徴のいくつか、または全てと組み合わせて用いることができる。
【0125】
請求項に記載された技術的特徴の参照符号が付けられているが、これらの参照符号は、請求項の理解度を高めることを唯一の目的として含まれているに過ぎないため、参照符号を用いて例示された各要素の範囲を限定する作用を持たない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C