特許第5976106号(P5976106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5976106ポリマーエステルをポリマー酸に変換するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976106
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月23日
(54)【発明の名称】ポリマーエステルをポリマー酸に変換するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/12 20060101AFI20160809BHJP
【FI】
   C08F8/12
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-518962(P2014-518962)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公表番号】特表2014-518324(P2014-518324A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】US2012044404
(87)【国際公開番号】WO2013003463
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】61/501,625
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508246489
【氏名又は名称】レリプサ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コナー, エリック
(72)【発明者】
【氏名】サライメー, ファーレ
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−037231(JP,A)
【文献】 米国特許第03519589(US,A)
【文献】 特表2012−500806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスであって、
5ppm未満の酸素濃度を有する無酸素の雰囲気を有する反応混合物であって、強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する、前記酸基のペンダントエステルを有するポリマーと、を含む、反応混合物を形成することを含み、前記ポリマーは、ビーズ形態である、プロセス。
【請求項2】
前記反応混合物を、最大14時間反応させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応混合物は、酸基のペンダントエステルを有する少なくとも10kgのポリマーを含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応混合物の温度は、5℃〜5℃である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリマーが、疎水性ポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ポリマーが、架橋される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式1および2、式1および3、または式1、2、および3に対応する構造単位を含み、
式1、式2、および式3が、次の構造
【化101】

により表され、式中、
およびRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
31が、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基のエステルであり、
が、アリーレンであり、
が、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式1、2、および3に対応する構造単位を含み、
式1、2、および3により表される前記構造単位が、次の構造
【化102】

により表される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、(i)式11および22、(ii)式11および33、または(iii)式11、22、および33のいずれかのモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含み、
式11、式22、および式33が、次の構造
【化103】

により表され、式中、
およびRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
31が、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基のエステルであり、
が、アリーレンであり、
が、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記疎水性ポリマーが、式11、22、および33のモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含む酸基のペンダントエステルを有し、
式11、22、および33が、次の構造
【化104】

により表される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、ポリ−α−フルオロアクリル酸のメチルエステルを含み、架橋モノマーで架橋され、
前記架橋モノマーが、ジビニルベンゼン、1,7−オクタジエン、またはそれらの組み合わせである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項12】
前記強塩基水溶液、アルコールをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記強塩基水溶液が、重量%〜5重量%のアルコールを含む、請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
前記無酸素の雰囲気が、不活性ガスを含み、前記不活性ガスが、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、酸基のペンダントエステルを有するポリマーの、エステル基を酸基に変換するためのプロセスに関する。このプロセスは、概して、水性強塩基を使用して行われる。
【背景技術】
【0002】
高カリウム血症は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に開示されるポリフルオロアクリル酸(ポリFAA)を含む様々なカチオン交換ポリマーで治療され得ることが一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、以前のこれらのポリマーを製造する方法では、大気空気下でのより長い反応時間が使用された。そのようなプロセスは、費用および不純物の存在の増加により、商業的な生産に適さない。ポリマーがビーズ形態で加水分解されるとき、ビーズの内側上のエステル基を加水分解することが困難であるため、エステル基を酸基に完全に加水分解することが困難であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2005/097081号
【特許文献2】国際公開第WO2010/022381号
【特許文献3】国際公開第WO2010/022382号
【特許文献4】国際公開第WO2010/022383号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、強塩基水溶液と、酸基のペンダントエステルを有するポリマーを含む反応混合物を形成することにより、ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスを提供し、反応混合物は、(i)実質的に不活性の雰囲気を有する、(ii)最大14時間反応させる、および/または(iii)酸基のペンダントエステルを有する少なくとも1kgのポリマーを含有する、のいずれかである。追加の態様は、ポリマーがビーズ形態であることである。
【0006】
本発明の多くの態様のうちの1つは、ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスである。本プロセスは、実質的に不活性の雰囲気を有する反応混合物を形成することを含み、反応混合物は、強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する酸基のペンダントエステルを有するポリマーとを含む。
【0007】
別の態様は、反応混合物を形成することを含む、ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスであり、反応混合物は、強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する酸基のペンダントエステルを有するポリマーとを含み、反応混合物は、最大14時間反応する。
【0008】
また別の態様は、反応混合物を形成することを含む、ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスであり、反応混合物は、強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する酸基のペンダントエステルを有する少なくとも1kgのポリマーとを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスであって、
実質的に無酸素の雰囲気を有する反応混合物であって、強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する、前記酸基のペンダントエステルを有するポリマーと、を含む、反応混合物を形成することを含む、プロセス。
(項目2)
ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスであって、
強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する、前記酸基のペンダントエステルを有するポリマーと、を含む、反応混合物を形成することを含み、
前記反応混合物を、最大14時間反応させる、プロセス。
(項目3)
ポリマーのエステル基を酸基に変換するためのプロセスであって、
強塩基水溶液と、加水分解して、ペンダント酸基またはその塩含むポリマーおよびアルコールを生成する、前記酸基のペンダントエステルを有する少なくとも1kgのポリマーと、を含む、反応混合物を形成することを含む、プロセス。
(項目4)
前記ポリマーが、疎水性ポリマーである、項目1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目5)
前記酸基が、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基、スルファミン酸基、またはそれらの塩である、項目1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目6)
前記ポリマーが、ビーズ形態である、項目1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目7)
前記ポリマーが、架橋される、項目1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目8)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式1および2、式1および3、または式1、2、および3に対応する構造単位を含み、
式1、式2、および式3が、次の構造
【化101】


により表され、式中、
およびRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
31が、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基のエステルであり、
が、アリーレンであり、
が、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である、項目4〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目9)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式1、2、および3に対応する構造単位を含む、項目8に記載のプロセス。
(項目10)
式1、2、および3により表される前記構造単位が、次の構造
【化102】


により表される、項目8に記載のプロセス。
(項目11)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式1A、2A、および3Aに対応する構造単位を含む、項目10に記載のプロセス。
(項目12)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、(i)式11および22、(ii)式11および33、または(iii)式11、22、および33のいずれかのモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含み、
式11、式22、および式33が、次の構造
【化103】


により表され、式中、
およびRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、
31が、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基のエステルであり、
が、アリーレンであり、
が、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である、項目4〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目13)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式11、22、および33のモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含む、項目12に記載のプロセス。
(項目14)
式11、22、および33が、次の構造
【化104】


により表される、項目12に記載のプロセス。
(項目15)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、式11A、22A、および33Aのモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含む、項目14に記載のプロセス。
(項目16)
前記エステルの前記アルキル基が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1,1−ジメチル−1−プロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、または2−エチル−1−ブチルエステルである、項目1〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目17)
前記エステルの前記アルキル基が、メチルエステルである、項目16に記載のプロセス。
(項目18)
酸基のペンダントエステルを有する前記疎水性ポリマーが、ポリ−α−フルオロアクリル酸のメチルエステルを含む、項目4〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目19)
前記ポリ−α−フルオロアクリル酸のメチルエステルが、架橋モノマーで架橋される、項目18に記載のプロセス。
(項目20)
前記架橋モノマーが、ジビニルベンゼン、1,7−オクタジエン、またはそれらの組み合わせである、項目19に記載のプロセス。
(項目21)
前記反応混合物が、酸基のペンダントエステルを有する少なくとも1kgの前記疎水性ポリマーを含む、項目1、2、および4〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目22)
前記反応混合物が、酸基のペンダントエステルを有する少なくとも5kgのポリマーを含む、項目21に記載のプロセス。
(項目23)
前記反応混合物が、酸基のペンダントエステルを有する少なくとも10kgのポリマーを含む、項目21に記載のプロセス。
(項目24)
前記反応混合物に添加される酸基のペンダントエステルを有する前記ポリマーの水性懸濁液の前記ポリマー含量が、約15重量%〜約30重量%である、項目1〜23のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目25)
前記反応混合物に添加される酸基のペンダントエステルを有する前記ポリマーの前記水性懸濁液の前記ポリマー含量が、約20重量%である、項目24に記載のプロセス。
(項目26)
前記強塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化物ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、またはそれらの組み合わせである、項目1〜25のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目27)
前記強塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、項目26に記載のプロセス。
(項目28)
前記強塩基が、水酸化ナトリウムである、項目27に記載のプロセス。
(項目29)
前記反応混合物に添加される前記強塩基水溶液の前記濃度が、約15重量%〜約50重量%である、項目1〜28のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目30)
前記反応混合物に添加される前記強塩基水溶液の前記濃度が、約25重量%である、項目29に記載のプロセス。
(項目31)
前記反応混合物に添加される前記強塩基水溶液の前記濃度が、約10mol%〜約20mol%である、項目1〜28のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目32)
前記強塩基の、酸基のペンダントエステルを有する前記ポリマーに対するモル比が、約0.8〜約1.5である、項目1〜31のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目33)
前記強塩基の、酸基のペンダントエステルを有する前記ポリマーに対するモル比が、約1.22である、項目32に記載のプロセス。
(項目34)
前記強塩基水溶液が、アルコールをさらに含む、項目1〜33のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目35)
前記水性反応溶液が、アルコールをさらに含む、項目1〜33のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目36)
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、またはそれらの組み合わせである、項目34および35に記載のプロセス。
(項目37)
前記反応混合物を最大約14時間反応させる、項目1〜36のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目38)
前記反応混合物を最大約10時間反応させる、項目37に記載のプロセス。
(項目39)
前記反応混合物を最大約8時間反応させる、項目37に記載のプロセス。
(項目40)
前記反応混合物を最大約6時間反応させる、項目37に記載のプロセス。
(項目41)
前記反応混合物を最大約5時間反応させる、項目37に記載のプロセス。
(項目42)
前記反応混合物を最大約4時間反応させる、項目37に記載のプロセス。
(項目43)
前記強塩基水溶液が、約5重量%〜約25重量%のアルコールを含む、項目34〜42のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目44)
前記強塩基水溶液が、約10重量%のアルコールを含む、項目43に記載のプロセス。(項目45)
前記水性反応溶液が、約5重量%〜約15重量%のアルコールを含む、項目35〜42のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目46)
前記水性反応溶液が、約7重量%のアルコールを含む、項目45に記載のプロセス。
(項目47)
前記反応混合物が、実質的に無酸素の雰囲気を有する、項目2〜46のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目48)
前記無酸素雰囲気が、不活性ガスを含み、前記不活性ガスが、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、またはそれらの組み合わせである、項目1および4〜47のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目49)
前記不活性ガスが、窒素、アルゴン、またはそれらの組み合わせである、項目48に記載のプロセス。
(項目50)
前記反応混合物中の酸素の濃度が、約5ppm未満である、項目1および4〜49のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目51)
前記強塩基水溶液が、前記反応混合物に添加される前に不活性ガスでパージされる、項目1〜50のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目52)
前記反応混合物の温度が、約55℃〜約95℃である、項目1〜51のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目53)
前記反応混合物の温度が、約80℃〜約85℃である、項目52に記載のプロセス。
(項目54)
前記強塩基水溶液が、約1〜3時間にわたって前記反応混合物に添加される、項目1〜53のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目55)
前記強塩基水溶液が、約2時間にわたって前記反応混合物に添加される、項目54に記載のプロセス。
(項目56)
前記強塩基水溶液が、前記反応混合物が約80℃〜約85℃の温度を有するとき、前記反応混合物に添加される、項目54または55に記載のプロセス。
(項目57)
前記ポリマーの前記エステル基の前記酸基への前記変換が、前記反応混合物からのサンプルを酸で滴定することにより監視される、項目1〜56のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ペンダントエステル基を有するポリマーは、ポリマー主鎖に結合されるエステル基の立体効果のため、水性塩基との加水分解により酸基に変換することがより困難であり得る。ペンダントエステル基を有するポリマーはビーズの形態であり、ビーズの内側上のポリマーに結合されるエステル基は、ビーズの外側上のエステル基より酸基に変換することがより困難である。さらに、本明細書に記載されるプロセスは、酸基のペンダントエステルを有するポリマーの、ペンダント酸基を有するポリマーへの変換を厳密に制御することにより、ペンダント酸基を有する生成物ポリマーのカチオン交換能を制御するための改善された方法を提供する。
【0010】
さらに、反応における酸素の存在が、酸基のペンダントエステルを有するポリマーの加水分解時、酸基を有するポリマーにおいて不純物を生じさせる可能性があることが発見された。高温への曝露とともに、比較的長い反応時間も、酸基を有するポリマーにおいてより多くの不純物をもたらす可能性があることも分かった。加水分解反応が大規模な反応として行われるとき、より多くの不純物が生成物ポリマーに生じた。不純物の存在は、ポリマーが実質的に無酸素(例えば不活性)の雰囲気において強塩基水溶液と加水分解反応を行うことによって、および/または反応時間を減少させることによってキログラム規模の量で生成されるときでも、得られるポリマーにおいて最小にされ得る。本明細書に記載される加水分解プロセスは、より一定の色を有し、ポリマーロット間の色差を最小にするペンダント酸基を有するポリマーを提供する。
【0011】
ペンダントエステル基を有するポリマーは、エステル基が酸基に変換され、アルコールが生成される、水性強塩基との反応を受けることができる。一般的に、この反応は次のように説明され、
【化1】

式中、Rは、アルキル等のヒドロカルビル基であり、Mは、一価のカチオンである。Mは、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca2+、Sr2+、Ba2+、またはそれらの組み合わせの群から選択され得る。様々な好ましい反応において、Mは、H、Ca2+、またはそれらの組み合わせである。反応は、ポリマーに結合されるペンダントエステル基上で生じ、ポリマー結合は、上記の波線の結合で生じる。
【0012】
ペンダントエステル基を有するポリマーは、疎水性ポリマーであり得る。この疎水性ポリマーは、水をはじく、水と混合しない、または水に溶解しない傾向がある。よって、塩基水溶液は水を含むため、疎水性ポリマーの加水分解は、水をはじく、水と混合しない、または水に溶解しないこの傾向のため、より困難である。
【0013】
酸基は、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基、スルファミン酸基、またはそれらの塩であり得る。好ましくは、酸基は、カルボン酸基である。
【0014】
酸基のペンダントエステルを有する疎水性ポリマーは、ポリ−α−フルオロアクリル酸のメチルエステルを含む。好ましくは、ポリ−α−フルオロアクリル酸のメチルエステルは、架橋モノマーで架橋される。
【0015】
ポリ−α−フルオロアクリル酸のメチルエステルが架橋モノマーで架橋されるとき、架橋モノマーは、好ましくはジビニルベンゼン、1,7−オクタジエン、またはそれらの組み合わせである。
【0016】
酸基のペンダントエステルを有する架橋された疎水性ポリマーは、式1および2、式1および3、または式1、2、および3に対応する構造単位を含むことができ、式1、式2、および式3は、次の構造
【化2】

により表され、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、A31は、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基のエステルであり、Xは、アリーレンであり、Xは、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である。
【0017】
好ましい実施形態のいくつかでは、架橋された疎水性ポリマーは、式1A、2A、および3A
【化3】

により表される。
【0018】
酸基のペンダントエステルを有するポリマーは、(i)式11および22、(ii)式11および33、または(iii)式11、22、および33のいずれかのモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含むことができ、式11、式22、および式33は、次の構造
【化4】

により表され、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、A31は、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基であり、Xは、アリーレンであり、Xは、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である。
【0019】
好ましいポリマーは、式11A、22A、および33A
【化5】

のモノマーを含む重合混合物の反応生成物を含むことができる。
【0020】
エステルのアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1,1−ジメチル−1−プロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、または2−エチル−1−ブチルエステルを含む。好ましくは、エステルのアルキル基は、メチルである。
【0021】
本発明のプロセスに関して、反応混合物は、酸基のペンダントエステル、および塩基水溶液を有するポリマーを含む水性懸濁液であり得る。この水性懸濁液において、酸基のペンダントエステルを有するポリマーの固体含量は、懸濁液中のポリマーの総量に基づき、約15重量%〜約30重量%、好ましくは20重量%〜約30重量%、より好ましくは20重量%である。
【0022】
酸基またはその塩を含む生成物ポリマーは、式15および25、式15および35、または式15、25、および35に相当する構造単位を含むことができ、式15、式25、および式35は、次の構造
【化6】

により表され、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、A41は、カルボン酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基であり、Xは、アリーレンであり、Xは、アルキレン、エーテル部分、またはアミド部分である。
【0023】
好ましくは、酸基を有する生成物ポリマーは、式15A、25A、および35A
【化7】

に相当する構造単位により表される。
【0024】
上述のように、酸基のペンダントエステルを有するポリマーは、水性強塩基と反応して、ペンダント酸基を有するポリマーを形成する。水性強塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化物ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、水性強塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはその組み合わせであり、より好ましくは、水性強塩基は、水酸化ナトリウムを含む。
【0025】
強塩基水溶液の濃度は、約15重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜約30重量%の範囲であり得る。より好ましくは、強塩基水溶液の濃度は、約25重量%である。強塩基水溶液の濃度は、モルパーセントの単位で表すこともでき、例えば、強塩基水溶液の濃度は、約10モル%〜約20モル%の範囲であり得る。好ましくは、強塩基水溶液の濃度は、約15モル%である。
【0026】
強塩基溶液の酸基のペンダントエステルを有するポリマーに対するモル比は、約0.8〜約1.5であり、好ましくは、その比率は約1.22である。
【0027】
強塩基の、酸基のペンダントエステルを有するポリマーに対するモル比を決定するための様々な方法がある。第1の方法では、強塩基(例えばNaOH)モル当量は、酸基のペンダントエステル(例えばポリ−α−フルオロアクリレートのメチルエステル)を有するポリマーの量のみを考慮することによって計算される。この計算により、NaOHの、ポリ−α−フルオロアクリレートのメチルエステルに対するモル比は1.22となる。第2の方法は、開始ポリマー組成物が、重合反応混合物に添加されて、酸基のペンダントエステルを有するポリマーを作製した、酸基のペンダントエステル(例えばポリ−α−フルオロアクリレートのメチルエステル)を有するモノマーの量と同じであると仮定することにより、塩基(例えばNaOH)のモル比を計算する。α−フルオロアクリレートのメチルエステルは、反応混合物の89重量%を成すため、NaOHの、ポリ−α−フルオロアクリレートのメチルエステルに対するモル比は、1.086:1である。
【0028】
強塩基溶液は、アルコールをさらに含むことができる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、またはそれらの組み合わせであり得、好ましくは、アルコールはメタノールを含む。
【0029】
塩基水溶液中のアルコールの濃度は、総塩基溶液質量の約5重量%〜約25重量%であり得、好ましくは、アルコール濃度は、約10重量%であり得る。
【0030】
反応溶液は、アルコールをさらに含むことができる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、またはそれらの組み合わせであり得、好ましくは、アルコールはメタノールを含む。
【0031】
水性反応溶液中のアルコールの濃度は、塩基溶液の添加後の最終総反応質量に基づき、5重量%〜約15重量%であり得、好ましくは、アルコール濃度は、約7重量%であり得る。
【0032】
反応混合物の雰囲気は、実質的に無酸素の雰囲気または不活性雰囲気であり得る。実質的に不活性の雰囲気は、約5ppm未満の酸素濃度を有する。反応混合物の実質的に不活性の雰囲気は、反応混合物に添加する前に、不活性ガスで塩基水溶液をパージすることによって提供される。ポリマー懸濁液も、塩基水溶液がポリマー懸濁液に添加される前に、不活性ガスでパージされ得る。不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、またはそれらの組み合わせであり得、好ましくは、不活性ガスは、窒素、アルゴン、またはそれらの組み合わせである。
【0033】
反応時間は、最大約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14時間であり得る。好ましいプロセスでは、反応時間は、最大5時間であり得る。反応時間は、ビーズ中のナトリウムイオンの濃度、および反応混合物中のポリマーの1グラムにつき消費されたナトリウムイオンの量を測定することにより最適化され得る。
【0034】
反応混合物は、少なくとも約1kg、少なくとも約5kg、少なくとも約10kg以上の酸基のペンダントエステルを有するポリマーを含有することができる。
【0035】
反応温度は、約55℃〜還流温度(例えば85℃)、好ましくは約80℃〜約85℃の範囲であり得る。反応混合物は約83℃に加熱され得、水性強塩基は、約1時間〜約3時間にわたって、好ましくは約2時間にわたって添加され得る。水性強塩基の添加が完了したら、反応混合物は、約80℃〜約85℃、好ましくは約83℃で、少なくともさらに2時間加熱される。反応混合物は、さらに少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5時間加熱され得る。反応混合物は約60℃に冷却され得、反応混合物の液体部分のナトリウムイオンの濃度が3重量%以下の場合、反応は完了である。あるいは、反応混合物が3重量%を超えるナトリウムイオン濃度を有する場合、反応混合物は約80℃〜約85℃に加熱され、さらに1時間その温度で維持され、その後約60℃に冷却され、反応混合物中の液体部分のナトリウムイオンの濃度が3重量%以下である、または2つの滴定値間の差が0.5重量%以下であると決定されると、反応は完了である。
【0036】
反応温度は、約55℃〜還流温度(例えば85℃)の範囲、好ましくは約85℃であり得る。反応混合物は約85℃に加熱され得、水性強塩基は、約1時間〜約3時間にわたって、好ましくは約2時間にわたって添加され得る。水性強塩基の添加が完了したら、反応混合物は、約85℃で、少なくともさらに30分間加熱される。反応混合物は、少なくともさらに30分間、または少なくともさらに1時間、少なくともさらに2時間、少なくともさらに3時間、少なくともさらに4時間、もしくは少なくともさらに5時間加熱され得る。反応混合物は約60℃に冷却され得、反応混合物の液体部分のナトリウムイオンの濃度が3重量%以下の場合、反応は完了である。あるいは、反応混合物が3重量%を超えるナトリウムイオン濃度を有する場合、反応混合物は約85℃に加熱され、さらに1時間その温度で維持され、その後約60℃に冷却され、反応混合物中の液体部分のナトリウムイオンの濃度が3重量%以下である、または2つの滴定値間の差が0.5重量%以下であると決定されると、反応は完了である。
【0037】
加水分解反応は、実質的に完全な変換を含む所望の変換が達成されたときを決定するために監視され得る。プロセス内制御は、反応時間および温度を含む、変換を制御するための反応パラメータの制御を可能にする。例えば、加水分解反応は、反応混合物からアリコートをサンプル採取し、それを0.05Mの塩酸に対して滴定することによって監視され得る。2つの連続した滴定値の差が0.55重量%未満、好ましくは0.5重量%未満を有する場合、反応混合物中の塩基の消費が安定状態に達し、塩基の濃度が一定に保たれる指標として解釈することができる。また、ポリマー中のメチルエステル基の実質的に全てがカルボン酸基に変換された指標であり得る。塩基の濃度が一定の値に達するのに必要とされる反応時間は、加水分解反応のエンドポイントに達した指標として使用され得る。
【0038】
加水分解反応の固体ポリマー含量が約18重量%〜約22重量%、好ましくは20重量%であるとき、反応混合物は塩酸で滴定され、反応は、塩基濃度が約4重量%、好ましくは3重量%以下であるとき、完了と見なされる。
【0039】
加水分解反応のポリマー固体含量が約28重量%〜約32重量%、好ましくは30重量%であるとき、反応混合物は塩酸で滴定され、反応は、塩基濃度が約6重量%、好ましくは5重量%以下であるとき、完了と見なされる。
【0040】
加水分解反応の固体含量が約24重量%〜約28重量%、好ましくは24重量%であるとき、反応混合物は塩酸で滴定され、反応は、塩基濃度が約5重量%、好ましくは4.5重量%以下であるとき、完了と見なされる。
【0041】
加水分解反応は、ごく一部のポリマーをサンプル採取し、過剰量の水で洗浄して、残留塩基を除去し、弱塩酸で抽出することによっても監視することができる。抽出された溶液は、ポリマーに結合された塩基からの対応するカチオンを含有する。抽出物のカチオン濃度は、イオンクロマトグラフィーによって分析され、サンプル重量に対して計算される。計算されたカチオン重量濃度は、加水分解反応の進行の程度の直接的な測定値である。完全に加水分解されたポリマーに結合されるカチオンの理論計算は、総ポリマー重量の約16重量%〜約19重量%、好ましくは19重量%に等しい。
【0042】
本発明に使用されるペンダントエステル基を有するポリマーは、実質的に球形の粒子の形態(すなわちビーズまたはビーズ形態)である。本明細書で使用される、用語「実質的に」とは、約1.0〜約2.0の平均アスペクト比を有するほぼ丸形の粒子を意味する。アスペクト比は、粒子の最大直線寸法の粒子の最小直線寸法に対する比である。アスペクト比は、当業者によって容易に決定され得る。この定義は、定義により、1.0のアスペクト比を有する球形粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は、約1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、または2.0の平均アスペクト比を有する。粒子は、視野が粒子の直径の少なくとも2倍である倍率で観察されるとき、円形または楕円であり得る。
【0043】
ポリマー粒子は、約20μm〜約200μmの平均直径を有する。特定の範囲は、ポリマー粒子が約20μm〜約200μm、約20μm〜約150μm、または約20μm〜約125μmの平均直径を有する場合である。他の範囲は、約35μm〜約150μm、約35μm〜約125μm、または約50μm〜約125μmを含む。平均直径、分布等を含む粒径は、当業者に既知の技法を用いて決定され得る。例えば、米国薬局方(U.S.Pharmacopeia(USP))<429>は、粒径を決定するための方法を開示する。
【0044】
ポリマー粒子は、約10μm未満の直径を有する約4容積百分率未満の粒子、具体的には約10μm未満の直径を有する約2容積百分率未満の粒子、より具体的には約10μm未満の直径を有する1容積百分率未満の粒子、さらにより具体的には約10μm未満の直径を有する約0.5容積百分率未満の粒子を有することもできる。粒径の特定の範囲は、約20μm未満の直径を有する約4容積百分率未満の粒子、具体的には約20μm未満の直径を有する約2容積百分率未満の粒子、約20μm未満の直径を有する約1容積百分率未満の粒子、約20μm未満の直径を有する約0.5容積百分率未満の粒子、約30μm未満の直径を有する約2容積百分率未満の粒子、約30μm未満の直径を有する約1容積百分率未満の粒子、約30μm未満の直径を有する約0.5容積百分率未満の粒子、約40μm未満の直径を有する約2容積百分率未満の粒子、約40μm未満の直径を有する約1容積百分率未満の粒子、または約40μm未満の直径を有する約0.5容積百分率未満の粒子であり得る。
【0045】
ペンダントエステル基を有するポリマーは、約5容積%以下の粒子が約30μm(すなわちD(0.05)<30μm)未満の直径を有する、約5容積%以下の粒子が約250μm(すなわちD(0.05)>250μm)を超える直径を有する、および少なくとも約50容積%の粒子が約70〜約150μmの範囲の直径を有する粒径分布を有することができる。
【0046】
ポリマーの粒子分布は、範囲として説明することができる。粒子分布の範囲は、レーザー回折によって測定される、値がD(0.9)である(この場合、粒子の90%がその値を下回る直径を有する)、値がD(0.1)であり(この場合、粒子の10%がその値を下回る直径を有する);そして値がD(0.5)である(この場合、粒子の50%がその値の上回る直径を有し、粒子の50%がその値を下回る直径を有する)、(D(0.9)−D(0.1))/D(0.5)として定義される。粒子分布の範囲は、典型的に、約0.5〜約1、約0.5〜約0.95、約0.5〜約0.90、または約0.5〜約0.85である。粒径分布は、Malvern Mastersizerを用いて、GEA Niro,Denmarkから入手可能なNiro Method No.A8d(2005年9月改訂)を用いて測定することができる。
【0047】
酸基のペンダントエステルを有するポリマーは、有機相および水相を調製することによって、懸濁重合反応において合成することができる。有機相は、典型的に、式11のモノマー、式22のモノマー、式33のモノマー、および重合開始剤を含有する。水相は、懸濁安定剤、水溶性塩、水、および任意に緩衝剤を含有する。有機相および水相は、次に、窒素下で混合され、攪拌される。一般的に、混合物を、約2.5〜約3.5時間、約60℃〜約80℃に加熱し、重合開始後最大95℃まで上昇させ、次に室温に冷却する。冷却後、水相を除去する。混合物に水を添加し、混合物を攪拌し、得られた固体を濾過する。固体を水、アルコール、またはアルコール/水混合物で洗浄する。
【0048】
ポリビニルアルコール等の重合懸濁安定剤は、重合プロセス中の粒子の融合を防止するために使用され得る。さらに、水相に塩化ナトリウムを添加することにより、融合および粒子凝集を減少させることが観察された。この目的に関する他の好適な塩は、水相に可溶性である塩を含む。好ましくは、これらの水溶性塩は、約0.1重量%〜約10重量%、具体的には約2重量%〜約5重量%、さらにより具体的には約3重量%〜約4重量%の濃度で添加される。
【0049】
好ましくは、メチル2−フルオロアクリレート(90重量%)、1,7−オクタジエン(5重量%)、およびジビニルベンゼン(5重量%)の有機相が調製され、重合反応を開始するために、0.5重量%のラウロイル過酸化物が添加される。加えて、水、ポリビニルアルコール、リン酸塩、塩化ナトリウム、および亜硝酸ナトリウムの水相が調製される。窒素下および約30℃を下回る温度を維持しながら、水相および有機相を一緒に混合する。完全に混合されたら、連続して攪拌しながら反応混合物を徐々に加熱する。重合反応開始後、反応混合物の温度を最大約95℃に上昇させる。重合反応か完了したら、反応混合物を室温に冷却し、水相を除去する。混合物に水を添加した後、濾過により固体を単離することができる。得られた生成物は、架橋された(メチル2−フルオロアクリレート)−ジビニルベンゼン−1,7−オクタジエンターポリマーである。
【0050】
本発明を詳細に説明したが、付属の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明らかである。
【実施例】
【0051】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに図示するために提供される。

加水分解手順1
【0052】
架橋されたメチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)の加水分解は、ライブラリ形式で行われた。架橋されたメチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)は、米国第12/545,810号(米国特許出願公開第2010/0111891号として公開)に開示される、例えば実施例8の段落[0133]の加水分解ステップまでのパートAと同様に、メチル2−フルオロアクリレートと、1,7−オクタジエンおよびジビニルベンゼンの重合により調製された。米国特許出願公開第2010/0111891号は、全ての目的において、参照により本明細書に組み込まれる。サンプル1−Me(1.3g、11.1mmole)を8mLのバイアルに充填した。溶媒水(3.5g)および水酸化ナトリウム(NaOH、2.1g、13.6mmole、水中25重量%)は、自動液体分配ロボットを用いて分配された。バイアルをBiotage反応槽(Endeavorシリーズ)に設置し、密封した。特定の反応時間の間83℃に加熱する前に、反応混合物をオーバーヘッド攪拌棒で攪拌し、15分間不活性ガスでパージした。次に、平行濾過によりサンプルを収集した。個々の反応の上清溶液を収集し、残留塩基が洗浄されるまで、濾過ケーキを蒸留水で洗浄した。上清溶液を0.05Mの塩酸に対して滴定して、反応混合物に残った残留水酸化ナトリウムを測定した。3重量%未満の水酸化ナトリウムの滴定重量パーセント値は、完全な加水分解の指標であった。加水分解されたポリマーを酸性溶液で抽出し、完全な加水分解の程度の手段として、ポリマーに組み込まれたナトリウム(Na)の量を測定した。ポリマー中のNaの測定値が17〜18重量%の場合、加水分解の完了を示した。サンプル2−A1〜2−A8は、これらの実験の結果を報告する。

加水分解手順2
【0053】
メチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)の加水分解は、ライブラリ形式で行われた。メチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)(1.3g、11.1mmole)を8mLのバイアルに充填した。溶媒水(3.0g)、メタノール(0.51g、d:0.791)、および水酸化ナトリウム(NaOH、2.1g、13.6mmole、水中25重量%)は、自動液体分配ロボットを用いて分配された。バイアルをBiotage反応槽(Endeavorシリーズ)に設置し、密封した。特定の反応時間の間83℃に加熱する前に、反応混合物をオーバーヘッド攪拌棒で攪拌し、15分間不活性ガスでパージした。次に、平行濾過によりサンプルを収集した。個々の反応の上清溶液を収集し、残留塩基が洗浄されるまで、濾過ケーキを蒸留水で洗浄した。上清溶液を0.05Mの塩酸(HCl)に対して滴定して、反応混合物に残った残留水酸化ナトリウムを測定した。3重量%未満の水酸化ナトリウムの滴定重量パーセント値は、完全な加水分解の指標であった。加水分解されたポリマーを酸性溶液で抽出し、完全な加水分解の程度の手段として、ポリマーに組み込まれたナトリウム(Na)の量を測定した。ポリマー中のNaの測定値が17〜18重量%の場合、加水分解の完了を示した。サンプル3−A1〜3−A8は、これらの実験の結果を報告する。

加水分解手順3
【0054】
メチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)の加水分解は、ライブラリ形式で行われた。メチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)(1.3g、11.1mmole)を8mLのバイアルに充填した。溶媒水(2.2g)、メタノール(0.30g、d:0.791)、および水酸化ナトリウム(NaOH、1.1g、13.6mmole、水中50重量%)は、自動液体分配ロボットを用いて分配された。バイアルをBiotage反応槽(Endeavorシリーズ)に設置し、密封した。特定の反応時間の間83℃に加熱する前に、反応混合物をオーバーヘッド攪拌棒で攪拌し、15分間不活性ガスでパージした。次に、平行濾過によりサンプルを収集した。個々の反応の上清溶液を収集し、残留塩基が洗浄されるまで、濾過ケーキを蒸留水で洗浄した。上清溶液を0.05Mの塩酸(HCl)に対して滴定して、反応混合物に残った残留NaOHを測定した。5重量%未満の水酸化ナトリウムの滴定重量パーセント値は、完全な加水分解の指標であった。加水分解されたポリマーを酸性溶液で抽出し、完全な加水分解の程度の手段として、ポリマーに組み込まれたナトリウム(Na)の量を測定した。ポリマー中のNaの測定値が17〜18重量%の場合、加水分解の完了を示した。サンプル4−A1〜4−A8は、これらの実験の結果を報告する。

加水分解手順4
【0055】
メチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)の加水分解は、ライブラリ形式で行われた。メチルフルオロアクリレートポリマー(サンプル1−Me)(1.3g、11.1mmole)を8mLのバイアルに充填した。溶媒水(3.0g)、メタノール(0.51g、d:0.791)、および水酸化ナトリウム(NaOH、2.1g、13.6mmole、水中25重量%)は、自動液体分配ロボットを用いて分配された。バイアルをBiotage反応槽(Endeavorシリーズ)に設置し、密封した。加熱する前に、反応混合物をオーバーヘッド攪拌棒で攪拌し、15分間不活性ガスでパージした。このライブラリのバイアルは、特定の反応時間の間、異なる温度(60℃〜90℃)に加熱された。次に、平行濾過によりサンプルを収集した。 個々の反応の上清溶液を収集し、残留塩基が洗浄されるまで、濾過ケーキを蒸留水で洗浄した。上清溶液を0.05Mの塩酸(HCl)に対して滴定して、反応混合物に残った残留水酸化ナトリウムを測定した。3重量%未満の水酸化ナトリウムの滴定重量パーセント値は、完全な加水分解の指標であった。加水分解されたポリマーを酸性溶液で抽出し、完全な加水分解の程度の手段として、ポリマーに組み込まれたナトリウム(Na)の量を測定した。ポリマー中のNaの測定値が17〜18重量%の場合、加水分解の完了を示した。サンプル5−A1〜5−A8は、これらの実験の結果を報告する。
【表1】


加水分解手順5
【0056】
オーバーヘッド攪拌棒およびコンデンサを備えた反応槽に、20kgのメチルエステル中のサンプル1−Meポリマーを充填した。次に、メタノール(7.91kg)および水(46.3kg)をサンプル1−Meサンプルに添加した。加熱前に、得られた混合物を180rpmで攪拌し、窒素ガスで30〜45分間パージした。窒素ブランケット下で反応集合体を83℃に加熱した。反応混合物の温度が83℃に達したとき、水酸化ナトリウム(NaOH、26.53L、0.208モル、水中25重量%、d1.26)を2時間にわたってゆっくり添加した。サンプル1−Meポリマー中の塩基のメチルエステルモノマーに対するモル比は、1.22であった。水酸化ナトリウム溶液の添加後、さらに2.5時間、加熱を続けた。よって、加熱時間の合計は4.5時間であり、反応槽は、続いて、2時間で60℃に冷却され、最初のプロセス内制御(IPC)ポイントに達した。
【0057】
反応エンドポイントは、4.5時間の時点および以後60分の時点で200μlのアリコートを反応混合物からサンプル採取することにより決定された。抽出されたサンプルは、1.0μmのフィルタディスクに通し、次に、0.05MのHCl溶液に対して滴定された。滴定によって決定される、上清中の水酸化ナトリウム含量は、3重量%(2.6重量%と測定された)を下回ったことが分かった。2つの連続したサンプルが互いにナトリウムイオン含量中0.5重量%以内であった場合、反応は完了したと決定された。
【0058】
反応混合物を周囲温度に冷却し、加水分解された生成物を濾過により収集した。pHが7になるまで濾過したケーキを蒸留水で洗浄した。濾過したケーキを48時間凍結乾燥させた。

加水分解手順6
【0059】
オーバーヘッド攪拌棒およびコンデンサを備えた反応槽に、20gのメチルエステル中のサンプル1−Meポリマーを充填した。次に、メタノール(4.56g)および水(32.69g)をサンプル1−Meサンプルに添加した。加熱前に、得られた混合物を180rpmで攪拌し、窒素ガスで30〜45分間パージした。窒素ブランケット下で反応集合体を83℃に加熱した。反応混合物の温度が83℃に達したとき、水酸化ナトリウム(NaOH、11.033L、0.208mmole、水中50重量%、d、1.51)を2時間にわたってゆっくり添加した。1−Meポリマー中の塩基のメチルエステルモノマーに対するモル比は、1.22であった。水酸化ナトリウム溶液の添加後、さらに2.5時間、加熱を続けた。よって、加熱時間の合計は4.5時間であった。反応槽は、続いて、2時間で60℃に冷却され、最初のIPCポイントに達した。
【0060】
反応エンドポイントは、4.5時間の時点および以後60分の時点で200μlのアリコートを反応混合物からサンプル採取することにより決定された。抽出されたサンプルは、1.0μmのフィルタディスクに通し、次に、0.05MのHCl溶液に対して滴定された。滴定によって決定される、上清中の水酸化ナトリウム含量は、5重量%(4.65重量%と測定された)を下回ったことが分かった。2つの連続したサンプルが互いにナトリウムイオン含量中0.5重量%以内であった場合、反応は完了したと決定された。
【0061】
反応混合物を周囲温度に冷却し、加水分解された生成物を濾過により収集した。pHが7になるまで濾過ケーキを蒸留水で洗浄した。濾過ケーキを48時間凍結乾燥させた。
【0062】
上記を考慮して、本発明のいくつかの目的が達成され、他の有益な成果が達成されたことが分かる。
【0063】
様々な変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記のポリマー、薬学的組成物、および処理方法において行うことができるが、先の説明に含まれる全ての事柄は、図示的なものであり、制限する手段として解釈されるべきではないことが意図される。